説明

実装方法及び実装装置

【課題】複数のチップを基板上に順次実装するときに、チップを吸着する吸着ヘッドの厳密な位置の制御を行う必要がなく、実装装置の動作の回数を最小限に抑え、基板上に複数のチップの全てを載置するための時間を短縮できる実装方法及び実装装置を提供する。
【解決手段】複数の素子40を基板30上に順次実装する実装方法において、複数の素子40を収容した収容部20から取出部5により取り出した一の素子40−1を、基板30の表面であって液体32が塗布された一の領域31−1に載置する載置工程と、一の領域31−1に一の素子40−1を載置する際に、基板30の表面の一の領域31−1と異なる領域31−2に、取出部5と共に移動可能に設けられた塗布部6により液体32を塗布する塗布工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に素子を実装する実装方法及び実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の集積化の手法の一つとして、三次元実装技術が注目されている。三次元実装技術では、予め集積回路を作りこんだ基板をダイに個片化し、個片化前に行った良品判別試験によって良品であると確認されたダイ(Known Good Die;KGD)を選別し、選別した別の基板上に積層し、実装する技術が用いられている。
【0003】
このようなダイ(以下「チップ」又は「素子」という。)を基板上に積層し、実装する方法としては、複数のチップを一括して基板に載置する方法、あるいは、複数のチップを基板上に順次実装する方法がある。
【0004】
このうち、複数のチップを基板上に順次実装する実装装置としては、例えば特許文献1に開示された電子部品取り付け装置がある。電子部品取り付け装置は、チップを収容したトレイと、チップを吸着して保持する吸着ヘッドと、チップを基板上に接着するための接着剤を基板上に吐出するノズルとを備えている。電子部品取り付け装置は、チップを収容したトレイから真空吸引力を利用した吸着ヘッドによりチップを吸着して取り出し、チップを吸着したまま吸着ヘッドを基板の上方に移動させる。そしてチップを基板上へ載置する前に、チップを載置する位置に、ノズルから接着剤を吐出して塗布する。その後、チップを吸着した吸着ヘッドを下降させ、基板上の接着剤が塗布された位置にチップを載置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−186591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような複数のチップを基板上に順次実装する実装方法には、以下のような問題があった。
【0007】
特許文献1に開示された電子部品取り付け装置では、一つのチップを実装するために、まず、チップを吸着した吸着ヘッドとノズルとを共にトレイの上方から基板の上方に移動させる動作を行う。次に、ノズルから接着剤を吐出する動作を行う。次に、接着剤が塗布された位置に、吸着ヘッドの吸着を解除することによりチップを載置する動作を行う。次に、チップを載置した後の吸着ヘッドを基板上からトレイ上に移動する動作を行う。従って、吸着ヘッドをトレイと基板との間で移動させる動作の他に、接着剤を吐出する動作とチップを載置する動作とを行う必要がある。これらの動作を複数のチップを順次実装する度毎に行うため、基板上に複数のチップの全てを載置するのに長い時間を要するという問題があった。
【0008】
また、チップを載置する位置に接着剤を塗布する方法では、チップを吸着した吸着ヘッドを基板に対して厳密に位置の制御を行わなければならないという問題があった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、複数のチップを基板上に順次実装するときに、チップを吸着する吸着ヘッドの厳密な位置の制御を行う必要がなく、実装装置の動作の回数を最小限に抑え、基板上に複数のチップの全てを載置するための時間を短縮できる実装方法及び実装装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の一実施例によれば、複数の素子を基板上に順次実装する実装方法において、前記複数の素子を収容した収容部から取出部により取り出した一の素子を、前記基板の表面であって液体が塗布された一の領域に載置する載置工程と、前記一の領域に前記一の素子を載置する際に、前記基板の表面の前記一の領域と異なる領域に、前記取出部と共に移動可能に設けられた塗布部により液体を塗布する塗布工程とを有する、実装方法が提供される。
【0012】
本発明の一実施例によれば、複数の素子を基板上に順次実装する実装装置において、前記複数の素子を収容する収容部と、前記基板を保持する基板保持部と、前記収容部に収容された一の素子を取り出し、取り出した前記一の素子を、前記基板の表面であって液体が塗布された一の領域に載置する取出部と、前記取出部と共に移動可能に設けられ、前記一の領域に前記一の素子を載置する際に、前記基板の表面の前記一の領域と異なる領域に液体を塗布する塗布部と、前記一の素子を取り出した前記取出部を、前記塗布部と共に、前記収容部側から前記基板側へ移動させる移動部とを有する、実装装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のチップを基板上に順次実装するときに、チップを吸着する吸着ヘッドの厳密な位置の制御を行う必要がなく、実装装置の動作の回数を最小限に抑え、基板上に複数のチップの全てを載置するための時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係る実装装置の構成を示す一部断面を含む概略正面図である。
【図2】吸着ヘッド及びノズルの周辺を拡大して示す断面図である。
【図3】吸着ヘッドのヘッド先端部の形状の一例を示す正面図及び斜視図である。
【図4】トレイの構造を示す断面図である。
【図5】実施の形態に係る実装方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【図6】予め準備する基板及びチップの構成を示す断面図である。
【図7A】実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び基板の状態を示す概略断面図(その1)である。
【図7B】実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び基板の状態を示す概略断面図(その2)である。
【図7C】実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び基板の状態を示す概略断面図(その3)である。
【図7D】実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び基板の状態を示す概略断面図(その4)である。
【図8】チップが領域に対してねじれた状態で水の表面に接した状態から自己整合的に載置されるまでの状態を示す平面図及び断面図である。
【図9】チップが領域に対して水平方向にずれた状態で水の表面に接した状態から自己整合的に載置されるまでの状態を示す平面図及び断面図である。
【図10】チップの表面であって親水化処理された領域を示す平面図である。
【図11】実施の形態の変形例に係る実装方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【図12】実施の形態の変形例に係る実装方法の各工程におけるチップ及び基板の状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(実施の形態)
最初に、図1から図10を参照し、実施の形態に係る実装方法及び実装装置について説明する。
【0016】
始めに図1から図4を参照し、実装装置について説明する。図1は、本実施の形態に係る実装装置の構成を示す一部断面を含む概略正面図である。図2は、吸着ヘッド及びノズルの周辺を拡大して示す断面図である。図3(a)及び図3(b)は、吸着ヘッドのヘッド先端部の形状の一例を示す正面図及び斜視図である。図4は、トレイの構造を示す断面図である。図4(a)は、図1に示したトレイの構造の例を示し、図4(b)は、図1に示したトレイと異なる構造を有する別の例を示す。
【0017】
図1に示すように、実装装置100は、処理室1、トレイ台2、ステージ3、ロボット4、吸着ヘッド5、ノズル6を有する。また、実装装置100には、図示しない搬入出口や、トレイ20及び基板30を搬送するための図示しない搬送機も備えられている。
【0018】
図1に示すように、処理室1は、トレイ台2、ステージ3、ロボット4、吸着ヘッド5、ノズル6を囲むように設けられている。また、処理室1は、その囲まれた内部の雰囲気及び圧力を制御可能に設けられている。処理室1には、温度や湿度を制御した清浄空気や窒素などの気体を導入する図示しない供給器や、内部を排気可能な図示しないポンプが接続され、処理に応じて圧力も制御される。
【0019】
図1に示すように、トレイ台2は、処理室1の下方に設けられる。トレイ台2は、複数のチップ40を収容するトレイ20を固定して保持する。ステージ3も、処理室1の下方に、トレイ台2と水平方向に並ぶように配置されて設けられる。ステージ3は、基板30を固定して保持する。トレイ台2とステージ3とは、ロボット4の動作を最小限にするために、可能な限り同一平面上に置かれることが好ましい。
【0020】
なお、トレイ20は、本発明における収容部に相当する。また、ステージ3は、本発明における基板保持部に相当する。また、チップ40は、本発明における素子に相当する。
【0021】
図1に示すように、ロボット4は、後述する吸着ヘッド5及びノズル6を固定するように、処理室1内に設けられる。ロボット4は、吸着ヘッド5及びノズル6が、スペーサ7を介して隣接するように固定している。ロボット4は、処理室1内に設置されたレール部材8によって、平面方向だけではなく、上下方向にも自由に移動することができる。ロボット4は、吸着ヘッド5を、ノズル6と一体的に、トレイ20の上方からステージ3に保持された基板30の上方へ移動させる。なお、ロボットは多関節を有するアーム型のロボットを使用することも可能である。
【0022】
なお、ロボット4は、本発明における移動部に相当する。
【0023】
図1に示すように、吸着ヘッド5は、ロボット4に固定されている。吸着ヘッド5は、チップ40を吸着する。吸着ヘッド5は、トレイ20の上方で、トレイ20が収容したチップ40を吸着してトレイ20から取り出し、ステージ3が保持した基板30の上方で、吸着を解除して基板30の表面であってチップ40を載置するために水が塗布された後述する領域31にチップ40を載置する。
【0024】
図2に示すように、吸着ヘッド5は、ヘッド本体部51及びヘッド先端部52を有する。ヘッド本体部51は、図示しない排気部に接続されており、排気部がヘッド本体部51の内部を真空排気することにより、ヘッド先端部52でチップを真空吸引により吸着する。
【0025】
なお、吸着ヘッド5は、本発明における吸着部に相当する。また、吸着ヘッド5は、真空吸着に限定されず、静電吸着等の他の公知の吸着方法によりチップを吸着するものであってもよい。
【0026】
また、吸着ヘッドに代え、例えばアーム等によりチップを掴んでトレイから取り出し、基板上で掴んでいたチップを離して基板上に載置することができる取り出し用ヘッドを用いてもよい。取り出し用ヘッドは、本発明における取出部に相当する。また、本発明における取出部は、本発明における吸着部を含むものとする。
【0027】
ヘッド先端部52の形状は、図3に示すような例にしてもよい。図3に示す例では、ヘッド先端部52は、先端である下面53に形成された開口部54と連通するように、ヘッド先端部52の中心に排気孔55が形成されている。また、下面53には、開口部54を交点として十字形状に溝56が形成されている。排気孔55は、ヘッド本体部51を介し、前述した排気部に接続されている。吸着ヘッド5の真空吸着による吸着力を調節し、吸着を解除したときに吸着保持していたチップが落下しやすくなるように、溝56は、略円形である下面53の周縁まで連続して形成されている。
【0028】
図1に示すように、ノズル6は、ロボット4に固定されている。ノズル6は、基板30の表面に例えば水を塗布する。ただし、ノズル6は、水だけでなく、その他各種の液体又はある程度粘性の低いゲル状の物質を供給することができる。本実施の形態では、一例としてノズル6が水を吐出する場合について、説明する。また、ノズル6として、例えばディスペンサを用いることができる。
【0029】
図2に示すように、ノズル6は、ノズル本体部61及びノズル先端部62を有する。ノズル本体部61は、その内部に水63を貯留している。ノズル本体部61は、図示しない加圧部に接続されており、加圧部がノズル本体部61の内部の空間を加圧することにより、ノズル先端部62から水を吐出する。
【0030】
なお、ノズル6は、本発明における塗布部に相当する。また、ノズル6は、ディスペンサに限定されず、シリンジ、インクジェットヘッド等の他の公知の吐出方法又は塗布方法を用いて液体を塗布するものであってもよい。
【0031】
図1及び図2に示すように、吸着ヘッド5とノズル6とは、スペーサ7を介して隣接している。スペーサ7は、吸着ヘッド5が一のチップの上方に位置するときに、ノズル6が一のチップの隣のチップの上方に位置するように、設けられる。すなわち、スペーサ7は、ノズル6が、吸着ヘッド5が基板30の表面であって水が塗布された一の領域31に一のチップを載置する時に、一の領域の隣の領域31に、水を塗布することができるような幅寸法(図2に示す寸法D)で設けられる。
【0032】
なお、スペーサ7は、基板30に載置して実装するチップ40の大きさ、及び基板30上において複数のチップ40を載置する各領域31の所定のピッチPに応じて、最適な幅寸法Dのものと交換することができる。これにより、吸着ヘッド5のヘッド先端部52の中心位置と、ノズル6のノズル先端部62の中心位置との間の中心間距離Lを、所定のピッチPに略等しくすることができる。すなわち、ノズル6は、所定のピッチPに対応して、吸着ヘッド5との間隔Lを変更可能に設けられている。なお、ピッチPの変更は、小型のボールねじを使った可変構造を使用して実現することも可能であるが、構造を簡素化するという観点で、スペーサ7の使用が好ましい。
【0033】
図4(a)に示すように、トレイ20は、本体部21を有している。図4(a)では図示しないが、本体部21は、平面視において矩形形状を有する。本体部21の上壁23の表面は、仕切壁24によって矩形に仕切られ、チップ40を収容するための領域であるチップ収容領域25が複数個形成されている。トレイ20は、例えば石英や、より安価に製作が可能な透明プラスチックで形成されている。
【0034】
なお、吸着ヘッド5によりチップ40を真空吸着して取り出す際に容易に取り出すことができるように、図4(b)に示す別の例では、トレイ20aには、チップ収容領域25aの底面とトレイ20aの底面との間に、本体部21を貫通する貫通孔26が形成されていてもよい。
【0035】
次に、図5から図7Dを参照し、本実施の形態に係る実装装置における実装方法について説明する。
【0036】
図5は、本実施の形態に係る実装方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。図6は、予め準備する基板及びチップの構成を示す断面図である。図7Aから図7Dは、本実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び基板の状態を示す概略断面図である。
【0037】
本実施の形態に係る実装方法は、図5に示すように、搬入工程(ステップS11)、予備移動工程(ステップS12)、予備塗布工程(ステップS13)、戻し工程(ステップS14)、吸着工程(ステップS15)、取出工程(ステップS16)、移動工程(ステップS17)、接触工程(ステップS18)、塗布工程(ステップS19)、解除工程(ステップS20)を有する。
【0038】
本実施の形態では、予め、必要数の例えば半導体チップよりなるチップをすべて所望のレイアウトで収容できる大きさを持ち、且つ必要数のチップの重量に耐えられる十分な剛性を持つ基板30を用意する。基板30としては、例えば十分な剛性を持つガラス基板、半導体ウェハ等が使用可能である。
【0039】
図6(a)に示すように、基板30の表面には、基板30にチップ40を載置する領域31が形成されている。領域31の大きさと形状は、それぞれ、その上に載置されるチップ40の大きさと形状にほぼ一致している。
【0040】
本実施の形態では、チップ40を位置合わせする液体であるアライメント液として「水」を用いるため、領域31には親水性を持たせている。このような領域31は、例えば、親水性を持つ二酸化シリコン(SiO)膜を使って容易に実現できる。すなわち、公知の方法でSiO膜(厚さは例えば0.1μmとする)を基板30の搭載面全体に薄く形成した後、そのSiO膜を公知のエッチング方法で選択的に除去することによって容易に得ることができる。このように、領域31が親水性を持っていることから、少量の水を領域31の上に載せると、その水は領域31の表面全体に馴染んで(換言すれば、領域31の表面全体が濡れて)その表面全体を覆う薄い水の膜(水滴)32が形成されるようになっている。領域31はいずれも、島状に形成されていて互いに分離しているため、その水は領域31から外側には流出しない。
【0041】
親水性を持つ領域31として使用可能な材料としては、SiO以外にSiがあるが、アルミニウムとアルミナの二層膜(Al/Al)、タンタルと酸化タンタルの二層膜(Ta/Ta)等も使用可能である。
【0042】
水が領域31から外側に流出して溜まるのをより確実に防止するためには、基板30のチップ40を載置する側の面であって領域31以外の領域は親水性でない方が好ましい。例えば、基板30それ自体を、疎水性を持つ単結晶シリコン(Si)、弗素樹脂、シリコーン樹脂、テフロン樹脂、ポリイミド樹脂、レジスト、ワックス、BCB(ベンゾシクロブテン)等で形成するのが好ましい。又は、領域31が形成された基板30の搭載面を、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、弗素樹脂、シリコーン樹脂、テフロン樹脂、ポリイミド樹脂、レジスト、ワックス、BCB等で覆うのが好ましい。
【0043】
あるいは、インクジェット技術などによって、領域31に、選択的に親水化処理を行ってもよい。
【0044】
また、本実施の形態に係る実装方法では、予め、チップの表面を親水化処理しておいてもよい。
【0045】
図6(b)に示すように、各チップ40の一方の表面には、親水性を持つ領域41を形成しておく。領域41は、例えば、チップ40の表面全体を親水性を持つSiO膜で覆うことにより、容易に実現することができる。また、各チップ40の領域41が形成された面と反対面の表面には、チップ40を基板30から更に別の基板に転写する際に、その別の基板とチップ40とを電気的に接続するための接続部が形成されていてもよい。
【0046】
本実施の形態では、基板30として、例えば300mmφの半導体ウェハを用いることができる。チップ40として、例えば300mmφの半導体ウェハに形成され、ダイシングして得られた例えば5mm角の半導体チップを用いることができる。また、チップ40の領域41及び基板30の領域31には、例えば5μmφの貫通電極が形成されていてもよい。
【0047】
上記したような表面を親水化処理した基板30及びチップ40を準備した後、ステップS11の搬入工程を行う。ステップS11では、チップ40を収容したトレイ20と基板30とを実装装置100内に搬入する。図7A(a)は、ステップS11におけるチップ及び基板の状態を示す。図7A(a)に示すように、チップ40を収容したトレイ20と、チップ40を載置して実装する基板30とが、実装装置100の処理室1内に搬入される。基板30は、図1に示したように、ステージ3に固定保持される。なお、図7Aから図7Dでは、処理室1、トレイ台2、ステージ3の図示を省略している。
【0048】
次に、ステップS12の予備移動工程を行う。ステップS12では、吸着ヘッド5をノズル6と一体的に、基板30の上方へ移動させる。図7A(b)は、ステップS12におけるチップ及び基板の状態を示す。図7A(b)に示すように、ロボット4により、基板30の表面であって最初のチップ40−1を載置する領域31−1の上に、吸着ヘッド5をノズル6と一体的に移動させる。
【0049】
次に、ステップS13の予備塗布工程を行う。ステップS13では、最初のチップ40−1を載置するために水を塗布する。図7A(c−1)及び図7A(c−2)は、ステップS13におけるチップ及び基板の状態を示す。図7A(c−1)に示すように、基板30の表面であって最初のチップを載置する領域31−1に、ノズル6から水を吐出する。
【0050】
ここで、領域31は、予め親水化処理を施してある。このため、ノズル6から吐出された水は、図7A(c−2)に示すように、親水化処理された領域31の全面に広がり、領域31の全面を覆う薄い水の膜32が形成される。水の膜32は、表面張力によって自然に緩やかな凸形に湾曲する。水の量は、例えば、領域31の上に、図7A(c−2)に示すような水の膜32が形成される程度に調整するのが好ましい。
【0051】
本実施の形態で用いる「水」としては、従来の半導体製造工程で一般的に使用されている「超純水」が好ましい。また、基板30の領域31に対するチップ40の自己整合機能を強化するために、水の表面張力を増加させる適当な添加材を添加した「超純水」の方がより好ましい。自己整合機能を強化することにより、基板30の領域31に対するチップ40の位置精度が向上する。なお、前述したように、「親水性」を持つ物質としては、二酸化シリコン(SiO)が好適に使用できる。
【0052】
あるいは、「水」に代えて他の無機または有機の液体を使用することもできる。例えば、グリセリン、アセトン、アルコール、SOG(Spin On Glass)材料等の液体が好適である。さらに、適度な粘性を持つ接着剤の使用も可能であり、蟻酸などの還元性の液体の使用も可能である。この場合、領域31を形成するためにはそのような液体に対する「親液性」を持つ材料が必要であるが、そのような材料としては、例えば窒化シリコン(Si)、各種金属、チヨール、アルカンチヨール等が挙げられる。
【0053】
次に、ステップS14の戻し工程を行う。ステップS14では、吸着ヘッド5を、ノズル6と一体的に、トレイ20の上方へ戻す。図7B(d)は、ステップS14におけるチップ及び基板の状態を示す。図7B(d)に示すように、ロボット4は、水を吐出した後、トレイ20上の最初に取り出すチップ40−1の上方に吸着ヘッド5が位置するように移動し、吸着ヘッド5を、ノズル6と一体的に、トレイ20の上方へ戻す。
【0054】
次に、最初のチップ40−1に対して、ステップS15の吸着工程を行う。ステップS15では、トレイ20に収容したチップ40を吸着ヘッド5により吸着する。図7B(e)は、ステップS15におけるチップ及び基板の状態を示す。図7B(e)に示すように、ロボット4により、吸着ヘッド5をチップ40やトレイ20を破損しないように、最初のチップ40−1に接するまで下降させ、吸着ヘッド5により吸着する。
【0055】
チップ40に接したかどうかについては、予めトレイ20との位置関係を計算機によって制御することによる判別を行っても良いし、吸着ヘッド5に圧力検出器を設けて、チップと接したときに加わる圧力を検出して判別しても良い。また、光学的な距離測定器をロボット4や吸着ヘッド5に設けても良い。
【0056】
次に、最初のチップ40−1に対して、ステップS16の取出工程を行う。ステップS16では、吸着ヘッド5に吸着したチップ40をトレイ20から取り出す。図7B(f)は、ステップS16におけるチップ及び基板の状態を示す。吸着ヘッド5が最初のチップ40−1を吸着保持した後、図7B(f)に示すように、ロボット4により、吸着ヘッド5を、トレイ20の上方から基板30の上方へ平行移動する平行移動位置まで上昇させる。
【0057】
次に、ステップS17の移動工程を行う。ステップS17では、吸着ヘッド5を、ノズル6と一体的に、トレイ20の上方から基板30の上方へ移動させる。図7B(g)は、ステップS17におけるチップ及び基板の状態を示す。吸着ヘッド5を、平行移動位置まで上昇させた後、引き続いて、ロボット4により、吸着ヘッド5に吸着した最初のチップ40−1が、基板30の表面であって最初のチップ40−1を載置する領域31−1の上方に位置するように、吸着ヘッド5をノズル6と一体的に移動させる。このとき、移動した吸着ヘッド5が吸着している最初のチップ40−1の位置は、領域31−1の位置と厳密に整合していなくてもよい。すなわち、吸着ヘッド5の位置は、厳密に調整しなくてもよい。
【0058】
次に、ステップS18の接触工程とステップS19の塗布工程とを同時に行う。ステップS18では、吸着ヘッド5を基板30に近づけて、チップ40を水の膜32と接触させる。ステップS19では、次のチップ40を載置するために水の膜32を塗布する。図7B(h)は、ステップS18及びステップS19におけるチップ及び基板の状態を示す。
【0059】
図7B(h)に示すように、ロボット4により、基板30の表面であって最初のチップ40−1を載置する領域31−1の近くまで、吸着ヘッド5をノズル6と一体的に下降させて基板30に近づけ、最初のチップ40−1を領域31−1に塗布された水の膜32と接触させる。
【0060】
このとき、ロボット4により、吸着ヘッド5に吸着したチップ40が領域31に塗布した水の膜32の表面に接する程度の高さまで、吸着ヘッド5を下降させればよい。従って、吸着ヘッド5に吸着したチップ40が領域31に到達するまで吸着ヘッド5を下降させなくてもよい。
【0061】
吸着ヘッド5に吸着した最初のチップ40−1が領域31−1に塗布された水と接触したのと同時に、ノズル6からは、領域31−1の隣の領域であって、次のチップ40−2を載置する領域31−2に水を吐出する。
【0062】
次に、ステップS20の解除工程を同時に行う。ステップS20では、吸着ヘッド5の吸着を解除して基板30にチップ40を載置する。図7B(i)は、ステップS19及びステップS20におけるチップ及び基板の状態を示す。図7B(i)に示すように、吸着ヘッド5の吸着を解除し、最初のチップ40−1を吸着ヘッド5から離す。吸着ヘッド5への吸着を解除された最初のチップ40−1は、水の膜32の表面張力により、基板30の表面であって最初のチップ40−1を載置する領域31−1に吸着する。ただし、水の膜32は徐々に蒸発してなくなるため、図7B(i)では、水の膜32の図示を省略している。
【0063】
この際、チップ40の寸法と、領域31の寸法とを一致するようにしておくことにより、後述するように、水の表面張力によって、チップ40は所望の位置(領域31)に自己整合的に載置される。すなわち、本実施の形態では、ロボット4を精密に位置制御してチップ40と基板30との位置の整合を行う必要がない。このため、吸着ヘッド5が吸着を解除してチップ40を基板30上に載置した後、ロボット4により、吸着ヘッド5及びノズル6をトレイ20の上方へ移動させる動作に速やかに移行することができ、チップ40を基板30上に載置するのに要する時間を短縮することができる。
【0064】
なお、ステップS19は、ステップS17の後、ステップS20の次の工程を行うまでに行えばよく、ステップS18と同時ではなく、ステップS18の前、ステップS20と同時あるいはステップS20の直後に行ってもよい。すなわち、吸着ヘッド5の吸着を解除して領域31−1に最初のチップ40−1を載置する際に、次のチップ40−2を載置する領域31−2に、水を塗布すればよい。
【0065】
また、ステップS18からステップS20に代え、吸着ヘッド5に吸着したチップ40を、領域31に塗布した水の膜32の表面に接しない程度の上方(例えば基板30の表面から0.5mm程度の高さの位置)まで近づけ、その状態で、吸着ヘッド5の吸着を解除し、チップ40を領域31に塗布した水の膜32の表面に落下させるようにしてもよい。このときは、ステップS18に代え、吸着ヘッド5を基板30に近づけるだけでよい。
【0066】
このように、図7B(d)から図7B(i)に示す各工程を行うことにより、トレイ20から、基板30の表面であって最初のチップ40−1を載置するために水の膜32が塗布された領域(最初の領域)31−1に、最初のチップ40−1が吸着ヘッド5により載置される。また、吸着ヘッド5により最初の領域31−1に最初のチップ40−1を載置する際に、最初の領域31−1の隣の領域31−2に、2番目のチップ40−2を載置するために、ノズル6により水の膜32が塗布される。
【0067】
最初のチップ40−1に対してステップS14からステップS20までの各工程を行った後、再びステップS14に戻り、次のチップ40−2に対してステップS14からステップS20までの各工程を行って、次のチップ40−2をトレイ20から基板30に載置する。図7C(j)から図7C(o)は、次のチップに対して行うステップS14からステップS20の各工程におけるチップ及び基板の状態を示す。図7C(j)から図7C(o)は、最初のチップに対して行うか次のチップに対して行うかが相違する点を除き、図7B(d)から図7B(i)のそれぞれと同様である。また、各ステップにおける個々の動作は上述しているので省略する。
【0068】
このように、図7C(j)から図7C(o)に示す各工程を行うことにより、トレイ20から、最初の領域31−1の隣の領域であって2番目のチップ40−2を載置するために水の膜32が塗布された領域(2番目の領域)31−2に、2番目のチップ40−2が吸着ヘッド5により載置される。また、吸着ヘッド5により2番目の領域31−2に2番目のチップ40−2を載置する際に、2番目の領域31−2の隣の領域(3番目のチップを載置する領域)に、次のチップ40を載置するためにノズル6により水の膜32が塗布される。
【0069】
このようにして、最初(1番目)のチップ40−1から最後(n番目)のチップ40−nが1列に配列するように載置する場合には、1番目のチップ40−1からn−1番目のチップ40−n−1までは、以下同様に各工程を繰り返すことになる。
【0070】
ただし、その1列の最後(n番目)のチップ40−nに対しては、ステップS14からステップS17まで各工程を行った後の工程が異なる。最後(n番目)のチップ40−nに対しては、図5に示すように、ステップS18からステップS20の各工程のうち、ステップS19を行わず、ステップS18及びステップS20のみを行う。図7D(p)から図7D(r)は、それぞれ最後(n番目)のチップに対するステップS17、ステップS18、ステップS20におけるチップと基板の状態を示す。図7D(p)から図7D(r)に示すように、吸着ヘッド5により最後(n番目)の領域31−nに最後(n番目)のチップ40−nを載置する際に、次のチップを載置するためにノズル6により水を塗布しなくてもよいからである。
【0071】
以上のようにして、1列に配列する最初(1番目)のチップ40−1から最後(n番目)のチップ40−nまでが順次所定のピッチPで基板30上に載置される。そして、このような一連の動作を複数回(m回)繰り返すことにより、複数のチップ40が、基板30上にm行n列にマトリクス状に配列し、かつ、列方向に順次所定のピッチPで配列するように、載置される。
【0072】
このようにして、全てのチップ40の載置工程が終了した後、全てのチップ40を載置した基板30は、処理室1外に搬出される。また、ステージ3内に設けられた図示しないヒーターによって加熱されて吸着を強化した後に搬出してもよい。また、全てのチップ40を載置し終わって空になったトレイ20も処理室1の外に搬出される。
【0073】
次に、本実施の形態に係る実装方法により、実装装置の動作の回数を最小限に抑え、基板上に複数のチップの全てを載置するための時間を短縮できることについて、説明する。
【0074】
本実施の形態に係る実装装置では、ノズル6は、吸着ヘッド5と一体的に設けられている。そして、ノズル6は、吸着ヘッド5が水が塗布された領域(一の領域)31−1に一のチップ40−1を載置する際に、一の領域31−1と所定のピッチPで設けられている隣の領域31−2に、次のチップ40−2を載置するための水を塗布することができるように、設けられている。従って、一のチップ40−1を載置する位置(一の領域31−1)から、次のチップ40−2を載置するために水を塗布する位置(隣の領域31−2)に、ロボット4により、吸着ヘッド5及びノズル6を移動させる必要がない。
【0075】
例えば、一のチップ40−1を吸着した吸着ヘッド5とノズル6とを一体的に、ロボット4により、トレイ20の上方から基板30の上方へ移動させるのに要する時間(ステップS17に要する時間と同じ)を0.5秒とする。また、吸着ヘッド5がチップ40を載置した後、吸着ヘッド5とノズル6とを一体的に、ロボット4により、吸着ヘッド5がチップ40を載置した位置(一の領域31−1)からノズル6が次のチップ40−2を載置するために水を塗布する位置(隣の領域31−2)まで移動させるのに要する時間を0.5秒とする。また、チップ40を載置した後の吸着ヘッド5をノズル6と一体的に、ロボット4により、基板30の上方からトレイ20の上方へ移動させるのに要する時間(ステップS14に要する時間と同じ)を0.5秒とする。
【0076】
すると、本実施の形態では、ロボット4により、吸着ヘッド5とノズル6とを一体的に、一の領域31−1から隣の領域31−2まで移動させる動作及びその動作に要する時間を削減することができる。従って、1個のチップ40の基板30に載置するためのロボット4の動作及びロボット4の動作に要する時間を、従来の2/3に削減することができる。
【0077】
次に、図8から図10を参照し、本実施の形態に係る実装方法により、液体によりチップと基板との間で自己整合的に位置合わせが行われることについて、説明する。
【0078】
図8は、チップが領域に対してねじれた状態で水の表面に接した状態から自己整合的に載置されるまでの状態を示す平面図及び断面図である。図8(a)から図8(d)は、順番に時間の経過に伴う変化を示している。図8(a)から図8(d)のそれぞれにおいて、上段は平面図であり、下段は側面図である。図9は、チップが領域に対して水平方向にずれた状態で水の表面に接した状態から自己整合的に載置されるまでの状態を示す平面図及び断面図である。図9(a)から図9(d)は、順番に時間の経過に伴う変化を示している。図9(a)から図9(d)のそれぞれにおいて、上段は平面図であり、下段は側面図である。図8及び図9では、基板は領域の周囲のみを示している。図10は、チップの表面であって親水化処理された領域を示す平面図である。
【0079】
チップ40の領域41が基板30の領域31に対してねじれた状態で接したときは、図8(a)に示すように、領域31に形成された水の膜32からの水が親水性処理を施している領域41に濡れ拡がる。その後、チップ40は、水の表面張力によって、同一の寸法に設計された領域31と領域41とが重なるように、図8(b)から図8(c)へと回転しながら、且つ領域41と領域31との間隔を狭めながら移動する。そして、チップ40の領域41は、最終的には図8(d)に示すように、基板30の領域31と重なる。
【0080】
一方、チップ40の領域41が基板30の領域31に対して水平方向にずれた状態で接したときは、図9(a)に示すように、領域31に形成された水の膜32からの水が親水性処理を施している領域41に濡れ拡がる。その後、チップ40は、水の表面張力によって、同一の寸法に設計された領域41と領域31とが重なるように、図9(b)から図9(c)へと平行方向に移動しながら、且つ領域41と領域31との間隔を狭めながら移動する。そして、チップ40の領域41は、最終的には図9(d)に示すように、基板30の領域31と重なる。
【0081】
通常は、図10(a)に示すように、チップ40の表面の全面を領域41として親水化処理されるため、チップ40の周縁部における表面も親水化処理される。しかしながら、図10(b)に示すように、チップ40aの中心部を領域41aとし、チップ40aの周縁部に親水化処理しない疎水性の領域(疎水枠)41bを設けてもよい。周縁部に疎水枠41bを設けることにより、領域41aと疎水枠41bとの境界の形状により位置合わせができる。従って、チップをダイシングして個片化する際に、ダイシングに伴うバリ等によってチップの周縁部の形状が所望の形状とずれたときも、水によりチップを載置する領域にチップを精度よく位置合わせすることができる。
【0082】
疎水枠41bを形成する方法は限定されないが、領域41aの表面を例えば親水性を持つSiO膜とし、疎水枠41bの表面を例えばSiとすることができる。
【0083】
以上、本実施の形態によれば、複数のチップを収容したトレイから一のチップを吸着ヘッドにより吸着して取り出し、取り出した一のチップを、基板の表面であって水が塗布された一の領域に載置する載置工程を行う。また、一の領域に一のチップを載置する際に、基板の表面の次のチップを載置する領域に、ノズルにより水を塗布する。これにより、チップと基板との間で自己整合的に位置合わせが行われる。したがって、チップを吸着する吸着ヘッドの厳密な位置の制御を行う必要がなく、実装装置の動作の回数を最小限に抑え、基板上に複数のチップの全てを載置するための時間を短縮できる。
【0084】
なお、本実施の形態では、基板の表面のチップを載置する領域を親水化処理する例について説明した。しかし、チップを載置する領域の周囲に、バンク、溝等の凹凸形状を形成し、その領域以外の領域に液体が拡がらないようにできるのであればよく、チップを載置する領域を親水化処理しなくてもよい。
【0085】
また、本実施の形態では、最初のチップを載置するために、ステップS13を行った後、ステップS14を行って、吸着ヘッドを、ノズルと一体的に、トレイの上方へ移動して戻す。しかし、最初のチップに対しては、ステップS17とステップS18との間でステップS13を行うようにしてもよい。
【0086】
また、本実施の形態では、吸着ヘッドを、ノズルと一体的に移動させる例について説明した。しかしながら、吸着ヘッドを、ノズルと共に移動させることができればよく、吸着ヘッドを、ノズルと別体で、かつ、同じ移動動作をさせるものであってもよい。
【0087】
また、本実施の形態では、一の領域に一のチップを載置する際に、基板の表面の次のチップを載置する領域に、水を塗布する例について説明した。しかしながら、一の領域に一のチップを載置する際に、基板の表面の一の領域と異なる領域に、水を塗布することができればよい。例えば、一の領域に一のチップを載置する際に、基板の表面の2つ次のチップを載置する領域に、水を塗布するものでもよい。
【0088】
また、本実施の形態では、吸着ヘッドを、ノズルと一体的に、トレイの上方から基板の上方へ移動させる例について説明した。しかしながら、吸着ヘッドを、ノズルと一体的に、トレイ側から基板側へ移動させることができればよい。例えば、吸着ヘッドを、ノズルと一体的に、トレイの側方から基板の側方へ移動させるものでもよい。
(実施の形態の変形例)
次に、図11及び図12を参照し、実施の形態の変形例に係る実装方法について説明する。
【0089】
図11は、本変形例に係る実装方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。図12は、本変形例に係る実装方法の各工程におけるチップ及び基板の状態を示す概略断面図である。
【0090】
本変形例に係る実装方法は、親水化処理されたチップの表面に、水を塗布する点で、実施の形態に係る実装方法と相違する。
【0091】
本変形に係る実装方法は、図1を用いて説明した実施の形態に係る実装装置を用いて行うことができる。ただし、実装装置は、処理室の内部に、液体を塗布する図1では図示しないチップ側ノズルを有する。チップ側ノズルは、チップの表面であって基板上のチップを載置する領域に塗布された水と接触する領域に、液体を塗布する。
【0092】
本変形例に係る実装方法は、図11に示すように、搬入工程(ステップS31)、予備移動工程(ステップS32)、予備塗布工程(ステップS33)、戻し工程(ステップS34)、吸着工程(ステップS35)、取出工程(ステップS36)、素子側塗布工程(ステップS37)、移動工程(ステップS38)、接触工程(ステップS39)、塗布工程(ステップS40)、解除工程(ステップS41)を有する。
【0093】
予め準備する基板及びチップについては、実施の形態と同様にすることができる。
【0094】
始めに、ステップS31からステップS33を行う。ステップS31からステップS33の各工程は、実施の形態におけるステップS11からステップS13の各工程と同様である。また、ステップS31及びステップS32におけるチップ及び基板の状態は、図7A(a)及び図7A(b)に示した通りである。また、ステップS33におけるチップ及び基板の状態は、図7A(c−1)及び図7A(c−2)に示した通りである。
【0095】
次に、最初のチップ40−1に対して、ステップS34からステップS36を行う。ステップS34からステップS36の各工程は、実施の形態におけるステップS14からステップS16の各工程と同様である。また、ステップS34からステップS36におけるチップ及び基板の状態は、図7B(d)から図7B(f)のそれぞれと同様である図12(a)から図12(c)に示す通りである。
【0096】
次に、最初のチップ40−1に対して、ステップS37の素子側塗布工程を行う。ステップS37では、チップ40の表面に水を塗布する。図12(d)は、ステップS37におけるチップ及び基板の状態を示す。図12(d)に示すように、チップ40の表面であって、基板30の表面のチップ40の載置する領域31に塗布された水の膜32と接触する領域41に、水の膜(水滴)42を塗布する。
【0097】
例えば処理室1内に設けられたチップ側ノズルの上に、ロボット4により、最初のチップ40−1を吸着した吸着ヘッド5を移動させ、吸着ヘッド5に吸着した最初のチップ40−1の下面に、チップ側ノズルから水を吐出する。実施の形態と同様に、チップ40の表面であって、領域31に塗布された水の膜32と接触する領域41は、予め親水化処理を施してある。このため、チップ側ノズルから吐出された水は、図12(d)に示すように、チップ40の表面であって、領域31に塗布された水の膜32と接触する領域41に広がるように塗布される。
【0098】
次に、最初のチップ40−1に対して、ステップS38の移動工程を行う。ステップS38の工程は、実施の形態におけるステップS17の各工程と同様である。また、ステップS38におけるチップ及び基板の状態は、図12(e)に示す通りである。
【0099】
次に、ステップS39の接触工程とステップS40の塗布工程とを同時に行う。ステップS39では、吸着ヘッド5を基板30に近づけて、最初のチップ40−1に塗布された水の膜42と、領域31に塗布された水の膜32とを接触させる。ステップS40では、次のチップ40−2を載置するために水を塗布する。図12(f)は、ステップS39及びステップS40におけるチップ及び基板の状態を示す。
【0100】
吸着ヘッド5を領域31−1の上方まで移動させた後、引き続いて、図12(f)に示すように、ロボット4により、吸着ヘッド5を、ノズル6と一体的に基板30上の載置位置(領域31−1)近くまで下降させて基板に近づけ、最初のチップ40−1の表面に塗布された水の膜42と、領域31−1に塗布された水の膜32とを接触させる。
【0101】
吸着ヘッド5に吸着した最初のチップ40−1の表面に塗布された水の膜42と、領域31−1に塗布された水の膜32とが接触したのと同時に、ノズル6からは、領域31−1の隣の領域であって次のチップ40−2を載置する領域31−2に、水を吐出する。
【0102】
次に、ステップS41の解除工程を行う。ステップS41の工程は、実施の形態におけるステップS20の各工程と同様である。また、ステップS41におけるチップ及び基板の状態は、図12(g)に示す通りである。
【0103】
このように、図12(a)から図12(g)に示す各工程を行うことにより、トレイ20から、最初の領域31−1に、最初のチップ40−1が吸着ヘッド5により載置される。また、吸着ヘッド5により最初の領域31−1に最初のチップ40−1を載置する際に、最初の領域31−1の隣の領域31−2に、2番目のチップ40−2を載置するためにノズル6により水の膜32が塗布される。
【0104】
以下、ステップS34からステップS41の各工程を、2番目のチップ40−2からn−1番目のチップ40−n−1に対して繰り返し、n番目のチップ40−nに対してはステップS40を省略して繰り返すことにより、1列に配列する最初(1番目)のチップ40−1から最後(n番目)のチップ40−nが順次所定のピッチPで載置される。そして、このような一連の動作を複数回(m回)繰り返すことにより、複数のチップ40が、基板30上にm行n列にマトリクス状に配列し、かつ、列方向に順次所定のピッチPで配列するように、載置される。
【0105】
本変形例でも、複数のチップを収容したトレイから一のチップを吸着ヘッドにより吸着して取り出し、取り出した一のチップを、基板の表面であって水が塗布された一の領域に載置する載置工程を行う。また、一の領域に一のチップを載置する際に、基板の表面の次のチップを載置する領域に、ノズルにより水を塗布する。これにより、チップと基板との間で自己整合的に位置合わせが行われる。したがって、チップを吸着する吸着ヘッドの厳密な位置の制御を行う必要がなく、実装装置の動作の回数を最小限に抑え、基板上に複数のチップの全てを載置するための時間を短縮できる。
【0106】
また、本変形例では、吸着ヘッドに吸着保持したチップの表面にも水を塗布する。これにより、更に確実に、チップと基板に対する位置を自己整合的に位置合わせすることができる。
【0107】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 処理室
3 ステージ
4 ロボット
5 吸着ヘッド
6 ノズル
7 スペーサ
20 トレイ
30 基板
31 領域
32 水の膜(水滴)
40 チップ
100 実装装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素子を基板上に順次実装する実装方法において、
前記複数の素子を収容した収容部から取出部により取り出した一の素子を、前記基板の表面であって液体が塗布された一の領域に載置する載置工程と、
前記一の領域に前記一の素子を載置する際に、前記基板の表面の前記一の領域と異なる領域に、前記取出部と共に移動可能に設けられた塗布部により液体を塗布する塗布工程と
を有する、実装方法。
【請求項2】
前記塗布工程において、前記一の素子の次の素子を載置する領域に、液体を塗布する、請求項1に記載の実装方法。
【請求項3】
前記取出部は、素子を吸着して取り出す吸着部であり、
前記載置工程において、前記一の素子を吸着した前記吸着部を前記基板に近づけて、前記一の素子を前記一の領域に塗布された液体と接触させ、前記一の素子が前記液体と接触する際に、前記吸着部の吸着を解除する、請求項1又は請求項2に記載の実装方法。
【請求項4】
前記一の素子を取り出した前記取出部を、前記塗布部と共に、前記収容部側から前記基板側へ移動させる移動工程を有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の実装方法。
【請求項5】
前記一の領域と、前記一の領域と異なる領域とは、親水化処理されている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の実装方法。
【請求項6】
前記一の素子の表面であって前記一の領域に塗布された液体と接触する領域は、親水化処理されている、請求項1から請求項5のいずれかに記載の実装方法。
【請求項7】
前記載置工程において、前記一の領域に塗布された液体により前記一の素子と前記基板との位置合わせを行う、請求項1から請求項6のいずれかに記載の実装方法。
【請求項8】
前記一の素子の表面であって前記一の領域に塗布された液体と接触する領域に、液体を塗布する素子側塗布工程を有する、請求項1から請求項7のいずれかに記載の実装方法。
【請求項9】
前記実装方法は、前記複数の素子を所定のピッチで前記基板上に実装するものであり、
前記塗布部は、前記所定のピッチに対応して前記取出部との間隔を変更可能に設けられた、請求項1から請求項8のいずれかに記載の実装方法。
【請求項10】
複数の素子を基板上に順次実装する実装装置において、
前記複数の素子を収容する収容部と、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記収容部に収容された一の素子を取り出し、取り出した前記一の素子を、前記基板の表面であって液体が塗布された一の領域に載置する取出部と、
前記取出部と共に移動可能に設けられ、前記一の領域に前記一の素子を載置する際に、前記基板の表面の前記一の領域と異なる領域に液体を塗布する塗布部と、
前記一の素子を取り出した前記取出部を、前記塗布部と共に、前記収容部側から前記基板側へ移動させる移動部と
を有する、実装装置。
【請求項11】
前記塗布部は、前記一の領域に前記一の素子を載置する際に、前記一の素子の次の素子を載置する領域に、液体を塗布する、請求項10に記載の実装装置。
【請求項12】
前記取出部は、素子を吸着して取り出す吸着部であり、
前記移動部は、前記一の素子を吸着した前記吸着部を前記基板に近づけて、前記一の素子を前記一の領域に塗布された液体と接触させ、
前記吸着部は、前記一の素子が前記一の領域に塗布された液体と接触する際に、吸着を解除する、請求項10又は請求項11に記載の実装装置。
【請求項13】
前記一の領域と、前記一の領域と異なる領域とは、親水化処理されている、請求項10から請求項12のいずれかに記載の実装装置。
【請求項14】
前記一の素子の表面であって前記一の領域に塗布された液体と接触する領域は、親水化処理されている、請求項10から請求項13のいずれかに記載の実装装置。
【請求項15】
前記一の領域に塗布された液体により前記一の素子と前記基板との位置合わせを行う、請求項10から請求項14のいずれかに記載の実装装置。
【請求項16】
前記実装装置は、前記複数の素子を所定のピッチで前記基板上に実装するものであり、
前記塗布部は、前記所定のピッチに対応して前記取出部との間隔を変更可能に設けられた、請求項10から請求項15のいずれかに記載の実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−138901(P2011−138901A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297626(P2009−297626)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】