説明

実装方法及び実装装置

【課題】チップと実装基板との間の位置合わせを高い位置精度で行うことができる実装方法及び実装装置を提供する。
【解決手段】第1の基板を第2の基板に実装する実装方法において、第1の基板の一の面を清浄化処理する清浄化処理工程S15と、清浄化処理工程S15の後、第1の基板を保持している第1の基板保持部と、第2の基板を保持している第2の基板保持部との距離を近づけることによって、一の面であって親水化処理されている第1の領域と、第2の基板の表面であって親水化処理されている第2の領域とを、液体を介して接触させる接触工程S17とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に素子を実装する実装方法及び実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の集積化の手法の一つとして、三次元実装技術が注目されている。三次元実装技術の中には、集積回路を形成した基板に貫通孔を形成し、それぞれの貫通孔の位置が合うように複数の基板を上下方向に積層し、積層された基板を貫通する貫通孔内に銅などを埋め込むことによって配線を構成する方法がある。この方法によれば、基板を積層し、立体的に配置することができるため、集積回路の集積度を向上させることができる。
【0003】
このような基板を積層し、立体的に配置する方法として、予め集積回路を作りこんだ基板をダイに個片化し、良品判別試験によって良品であると確認されたダイ(Known Good Die;KGD)を選別し、選別したダイを別の基板上に積層し、実装する技術が用いられている。
【0004】
ダイ(以下「チップ」又は「素子」という。)を基板上に積層し、実装する実装方法としては、例えば特許文献1に開示されたチップの実装方法がある。この実装方法では、良品判別試験で良品として選別した複数のチップをトレイのチップ載置領域に一括して載置する。そして、全てのチップ載置領域にチップを載置した後、チップ載置領域の底部に設けた給排気孔を介し、真空ポンプを用いて真空吸着することによって、チップをトレイに吸着保持する。その後、各チップを吸着保持したままトレイを上下反転させ、上下反転したトレイを、チップを実装するための実装基板上に移動させる。実装基板は、チップが接合される接合領域が親水化処理されており、その親水化処理された接合領域上に水が盛られている。トレイを実装基板上に移動した後、真空吸着を解除することによって、各チップを一斉にトレイから実装基板上に落下させる。実装基板上に落下した各チップは、水の表面張力によって、自己整合的に実装基板上の接合領域に位置合わせされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第06/77739号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなチップを別の基板上に積層し、実装することによって集積度を向上させる技術においては、以下のような問題がある。
【0007】
複数の基板を積層する方法では、積層された基板を貫通する貫通孔を、迅速かつ低コストで製造することが重要である。従って、基板を積層する際に、それぞれの基板に形成されている貫通孔の位置を、迅速かつ低コストで位置合わせできることが望ましい。具体的には、例えば面内において1μm程度の位置精度あるいはそれよりも高い位置精度で位置合わせができることが望ましい。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、親水化処理された接合領域であっても、その表面に汚れが付着していると、親水化処理された領域と、その周囲の親水化処理されていない領域との間での親水性の差が小さくなる。親水性の差が小さくなると、水による自己整合的な位置合わせが位置精度良くできなくなるため、面内において1μm程度の位置精度あるいはそれよりも高い位置精度で位置合わせすることが難しい。
【0009】
更に、特許文献1に開示された方法では、実装基板上の親水化処理された領域に水を塗布した後、チップを落下させる。しかしながら、チップを落下させる高さによっては、落下したチップが塗布された水の表面で弾んで移動することによって、実装されるチップの位置がずれることがある。あるいは、落下したチップにより水が接合領域から流出し、流出した水が隣接する接合領域との間に付着することによって、実装されるチップの位置がずれることがある。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、迅速かつ低コストでチップを基板に実装することができる実装方法及び実装装置において、チップと実装基板との間の位置合わせを高い位置精度で行うことができる実装方法及び実装装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の一実施例によれば、第1の基板を第2の基板に実装する実装方法において、前記第1の基板の一の面を清浄化処理する清浄化処理工程と、前記清浄化処理工程の後、前記第1の基板を保持している第1の基板保持部と、前記第2の基板を保持している第2の基板保持部との距離を近づけることによって、前記一の面であって親水化処理されている第1の領域と、前記第2の基板の表面であって親水化処理されている第2の領域とを、液体を介して接触させる接触工程とを有する、実装方法が提供される。
【0013】
本発明の一実施例によれば、第1の基板を第2の基板に実装する実装装置において、前記第1の基板の一の面を清浄化処理する清浄化処理部と、前記第1の基板を保持する第1の基板保持部と、前記第2の基板を保持する第2の基板保持部と、前記第1の基板保持部及び前記第2の基板保持部の一方を変位可能とするように設けられ、前記第1の基板を保持している前記第1の基板保持部と、前記第2の基板を保持している前記第2の基板保持部との距離を近づけることによって、清浄化処理された前記一の面であって親水化処理されている第1の領域と、前記第2の基板の表面であって親水化処理されている第2の領域とを、液体を介して接触させる制御ステージとを有する、実装装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、迅速かつ低コストでチップを基板に実装することができる実装方法及び実装装置において、チップと実装基板との間の位置合わせを高い位置精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態に係る実装装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】チップ及び実装基板における接合領域を示す平面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る実装方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【図4A】第1の実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び実装基板の状態を示す概略断面図(その1)である。
【図4B】第1の実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び実装基板の状態を示す概略断面図(その2)である。
【図4C】第1の実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び実装基板の状態を示す概略断面図(その3)である。
【図5】各チップが吸着トレイ上の所定位置に保持されている状態を示す平面図である。
【図6】実装基板の接合領域及び周辺領域の親水性の差とチップと実装基板との間の位置合わせ精度との関係を模式的に示す図である。
【図7】チップの接合面の清浄化処理の有無と位置合わせ精度との関係を模式的に示す図である。
【図8】水の塗布量と位置合わせ精度との関係を模式的に示す図である。
【図9】チップの保持を解除するときのチップと実装基板との距離と位置合わせ精度との関係を模式的に示す図である。
【図10】図9(b)の上段に示す状態から下段に示す状態に変化する途中の状態におけるチップ及び実装基板の状態を示す断面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る実装装置の構成を示す一部断面を含む概略正面図である。
【図12】吸着ヘッドの周辺を拡大して示す断面図である。
【図13】吸着ヘッドのヘッド先端部の形状の一例を示す正面図及び斜視図である。
【図14】第2の実施の形態に係る実装方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【図15A】第2の実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び実装基板の状態を示す概略断面図である(その1)。
【図15B】第2の実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び実装基板の状態を示す概略断面図である(その2)。
【図16】第3の実施の形態に係る実装装置の構成を示す一部断面を含む概略正面図である。
【図17】第3の実施の形態に係る実装方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【図18A】第3の実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ基板及び実装基板の状態を示す概略断面図である(その1)。
【図18B】第3の実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ基板及び実装基板の状態を示す概略断面図である(その2)。
【図19】第4の実施の形態に係る実装装置の構成を示す一部断面を含む概略正面図である。
【図20】第4の実施の形態に係る実装方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【図21A】第4の実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び実装基板の状態を示す概略断面図である(その1)。
【図21B】第4の実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び実装基板の状態を示す概略断面図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
最初に、図1から図10を参照し、第1の実施の形態に係る実装方法及び実装装置について説明する。
【0017】
始めに図1を参照し、本実施の形態に係る実装装置について説明する。図1は、本実施の形態に係る実装装置の構成を示す概略断面図である。
【0018】
図1に示すように、実装装置100は、処理室101、制御ステージ102、制御アーム103、支持台104、プラズマ源105、赤外線ランプ106、CCDカメラ107、コンピュータ108、吸着トレイ150を有する。また、実装装置100には、図示しない搬入出口や基板およびトレイを搬送するための搬送機も備えられている。
【0019】
処理室101は、制御ステージ102、制御アーム103、支持台104、プラズマ源105、赤外線ランプ106、吸着トレイ150を囲むように設けられ、またその囲まれた内部の雰囲気を制御可能、例えば減圧可能に設けられている。処理室101には温度や湿度を制御した清浄空気や窒素などの気体を導入する図示しない供給器や、内部を排気可能な図示しないポンプが接続され、処理に応じて圧力も制御される。
【0020】
制御ステージ102は、水平面内で直交する二つの方向(X方向及びY方向)及び水平面に直交する上下方向(Z方向)の並進運動、そして水平面内での回転運動(θ方向)が可能である。すなわち、X、Y、Z、θの四軸制御が可能となっている。制御ステージ102には、粗動モードと微動モードの二つの動作(制御)状態があり、必要に応じて両モードを切り替え可能である。通常、粗動モードで大まかな位置合わせを行い、その後、微動モードに切り替えて精密な位置合わせを行う。
【0021】
制御アーム103は、水平面に直交する上下方向(Z方向)に設けられたレール103aに沿って並進運動が可能である。また、制御アーム103は、水平面内で直交する二つの方向(X方向及びY方向)の並進運動、そして水平面内での回転運動(θ方向)も可能に設けられている。すなわち、X、Y、Z、θの四軸制御が可能となっている。制御アーム103にも、粗動モードと微動モードの二つの動作(制御)状態があり、必要に応じて両モードを切り替え可能である。通常、粗動モードで大まかな位置合わせを行い、その後、微動モードに切り替えて精密な位置合わせを行う。
【0022】
なお、制御ステージ102及び制御アーム103は、本発明における制御ステージに相当する。ただし、制御ステージ102と制御アーム103との間の相対位置をX、Y、Z、θの四軸制御できればよい。従って、X、Y、Z、θの各軸については、制御ステージ102及び制御アーム103の一方のみが制御可能に設けられていてもよい。
【0023】
支持台104は、制御ステージ102の上面(搭載面)に固定されるように設けられている。支持台104は、ほぼ中央部が空洞になるように設けられており、その空洞内には光源として使用される赤外線ランプ106が取り付けられている。
【0024】
また、支持台104の上面側は、実装基板20を保持する基板保持機構104aになっている。基板保持機構104aは、適当な係止手段(例えば、ネジ、フック、真空吸着、静電吸着等)を用いて実装基板20を係止することによって、実装基板20を水平状態に保持する。
【0025】
なお、実装基板20は、本発明における第2の基板に相当し、基板保持機構104aは、本発明における第2の基板保持部に相当する。
【0026】
プラズマ源105は、発生したプラズマをチップ10の接合面11に照射し、チップ10の接合面11を清浄化処理するものである。プラズマ源105として、公知のプラズマ源を用いることができる。図1に示すように、例えば第1の電極105aと第2の電極105bとの間に直流電圧又は高周波電圧を印加し、第1の電極105aと第2の電極105bとの間で気体のプラズマを励起する。そして、励起したプラズマを吸着トレイ150に吸着され保持されているチップ10の接合面11に照射する。
【0027】
なお、プラズマ源105は、本発明における清浄化処理部に相当する。また、接合面11は、本発明における一の面に相当する。
【0028】
また、プラズマ源に代え、紫外線を照射する紫外光源が設けられてもよい。紫外光源が設けられているときは、紫外光源が発生した紫外線をチップ10の接合面11に照射し、チップ10の接合面11を清浄化処理することができる。
【0029】
あるいは、プラズマ源に代え、イソプロピルアルコール(IPA)等の処理液を例えばスプレー塗布する処理液塗布部が、処理室101の内部又は処理室101と別に設けられた洗浄室の内部に設けられてもよい。処理液塗布部が処理室101と別に設けられた洗浄室の内部に設けられているときは、まず、処理室101と洗浄室との間でチップ10を搬送可能に設けられている例えばロボットアーム等の搬送機構により、チップ10を処理室101から洗浄室に搬送する。次に、洗浄室内で、処理液塗布部により、IPA等の処理液を例えばスプレー塗布する。次に、搬送機構によりチップ10を洗浄室から処理室101に搬送する。これらの工程により、チップ10の接合面11を清浄化処理することができる。
【0030】
あるいは、プラズマ源105、紫外光源、処理液塗布部等の複数の種類の清浄化処理部を用意しておき、チップ10の接合面11に付着している不純物の種類等によって、清浄化処理部を選択して用いるようにしてもよい。不純物の種類によって清浄化処理部を選択するときは、実装装置100と一体又は別体に設けられている図示しない検査装置により、又は清浄化処理を行う前の工程における処理の履歴等により、チップ10に付着している不純物を特定する。そして、特定した不純物に応じて各種の清浄化処理部を選択する。
【0031】
吸着トレイ150は、平面形状が矩形の本体部151を有している。本体部151の内部には、内部空間157が設けられている。本体部151の下壁153の表面は、仕切壁154によって仕切られて矩形のチップ保持領域155が複数個形成されている。チップ保持領域155の各々には、下壁153を貫通して内部空間157に達する小孔156が、チップ保持領域155のほぼ中心に形成されている。本体部151には、内部空間157に連通せしめられた給排気孔158が設けられており、真空ポンプを用いて内部空間157内の空気を、給排気孔158を介して排気することにより、内部空間157内を所望の真空状態にすることが可能である。このため、チップ保持領域155に保持されたチップ10を、真空吸着によって保持すると共に、真空吸着による保持を解除することにより、それらのチップ10をチップ保持領域155から離脱することができる。
【0032】
なお、チップ10は、本発明における第1の基板に相当し、吸着トレイ150は、本発明における第1の基板保持部に相当する。また、小孔156は、本発明における吸着部に相当する。
【0033】
吸着トレイ150は、制御アーム103に着脱可能に設けられている。吸着トレイ150は、チップ保持領域155が基板保持機構104aに保持されている実装基板20に対向可能に、すなわち、チップ保持領域155が下方を向いた状態で、制御アーム103に取り付けられる。
【0034】
また、吸着トレイ150は、赤外線ランプ106から放射される赤外光を透過する材料、例えば石英や、より安価に製作が可能な透明プラスチックで形成されていてもよい。
【0035】
なお、吸着トレイ150は、チップ保持領域155にチップ10を吸着して保持することができるものであればよく、チップ10を吸着する吸着方法は真空吸着に限られるものではない。従って、静電吸着等の各種の吸着方法を用いるものであってもよい。
【0036】
図1に示すように、チップ10が吸着トレイ150のチップ保持領域155に保持され、実装基板20が基板保持機構104aに保持されている状態で、吸着トレイ150に保持されているチップ10と、基板保持機構104aに保持されている実装基板20との間には、適当な間隔が設けられる。また、制御ステージ102及び制御アーム103により、チップ10と実装基板20との間の間隔を、近づけたり遠ざけたりすることができる。
【0037】
CCDカメラ(Charge-Coupled Deviceをセンサに用いたカメラ)107は、処理室101の外側かつ支持台104(基板保持機構104a)の上方であって、赤外線ランプ106のほぼ真上の位置に設けられている。CCDカメラ107は、赤外線ランプ106から放射される赤外光を検知するための撮像装置であり、検知した赤外光を電気信号に変換して演算装置であるコンピュータ108に送り、所定のデータ処理を行う。こうして、CCDカメラ107等により、基板保持機構104a上に保持されている実装基板20上の複数の接合領域21aの位置を、吸着トレイ150に載置された複数のチップ10の位置に対して、所定の精度で一対一に整合させる。すなわち、CCDカメラ107等により、基板保持機構104aに保持されている実装基板20と、チップ10を保持する吸着トレイ150との位置合わせを行う。
【0038】
この時の位置合わせを容易化するために、チップ10又は吸着トレイ150と実装基板20とにそれぞれ、複数の合わせマーク(図示せず)が形成されている。CCDカメラ107でそれらの合わせマークを検出し、チップ10又は吸着トレイ150の合わせマークと実装基板20の合わせマークとが所定の位置関係になるように制御ステージ102の位置を微調整して固定する。これにより、実装基板20の接合領域21aの位置と、吸着トレイ150に載置されたチップ10の位置とを、一対一に整合させることができる。
【0039】
次に、図2を参照し、本実施の形態に係る実装装置で実装されるチップ及び実装基板における親水化処理されている領域、すなわち接合領域について説明する。図2は、チップ及び実装基板における接合領域を示す平面図である。
【0040】
本実施の形態では、チップ10を実装基板20に吸着し、仮接着する材料として「水」を用いる。したがって、図2(a)に示すように、チップ10の接合面11に、親水化処理されている領域(以下「親水性領域」ともいう。)よりなる接合部11aが設けられている。また、実装基板20には、実装基板20の表面であって親水化処理されている領域(以下「接合領域」又は「親水性領域」ともいう。)21a及びその周辺の領域であって親水化処理されていない領域(以下、「周辺領域」又は「疎水性領域」ともいう。)21bが設けられている。
【0041】
なお、チップ10の接合面11であって親水化処理されている領域(接合部)11aは、本発明における第1の領域に相当し、実装基板20の表面であって親水化処理されている領域(接合領域)21aは、本発明における第2の領域に相当する。
【0042】
チップ10の接合面11に設けられている親水性領域(接合部)11aの寸法と、実装基板20に設けられている親水性領域(接合領域)21aの寸法は、同一であることが好ましい。図2(a)に示す例では、チップ10の面積と、チップ10の接合面11に設けられた接合部11aの面積と、実装基板20に設けられた接合領域21aの面積とは、互いに等しくなる。
【0043】
本実施の形態では、チップ10として、例えば300mmφの半導体ウェハに形成され、ダイシングして得られた例えば5mm角の半導体チップを用いることができる。また、実装基板20として、例えば半導体チップよりなるチップ10をすべて所望のレイアウトで搭載できる大きさを持ち、且つ必要数のチップ10の重量に耐えられる十分な剛性を持つ実装基板20を用いる。実装基板20としては、例えば十分な剛性を持つガラス基板、半導体ウェハ等が使用可能である。半導体ウェハとしては、例えば300mmφの半導体ウェハを用いることができる。
【0044】
実装基板20における接合領域21aは、例えば、親水性を持つ酸化シリコン(SiO)膜を使って容易に実現できる。すなわち、公知の方法でSiO膜(厚さは例えば0.1μmとする)を実装基板20のチップ10を接合する接合面21全体に薄く形成した後、そのSiO膜を公知のエッチング方法で選択的に除去することによって容易に得ることができる。このように、接合領域21aが親水性を持っていることから、少量の水を接合領域21aの上に載せると、その水は接合領域21aの表面全体に馴染んで(換言すれば、接合領域21aの表面全体が濡れて)その表面全体を覆う薄い水の膜(水滴)が形成されるようになっている。接合領域21aはいずれも島状に形成されていて互いに分離しているため、その水は接合領域21aから外側には流出しない。
【0045】
なお、チップ10の接合面11における接合部11aも、例えば、親水性を持つ酸化シリコン(SiO)膜を使って容易に実現できる。
【0046】
その他、親水性を持つ接合領域21aとして使用可能な材料としては、酸化シリコン(SiO)以外に窒化シリコン(Si)がある。あるいは、アルミニウムとアルミナの二層膜(Al/Al)、タンタルと酸化タンタルの二層膜(Ta/Ta)等であってもよい。
【0047】
水が接合領域21aから外側に流出するのをより確実に防止するためには、実装基板20のチップ10を接合する接合面21において、接合領域21a以外の領域、例えば周辺領域21bは親水性でない方が好ましい。例えば、実装基板20自体を、疎水性を持つ単結晶シリコン(Si)、弗素樹脂、シリコーン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、ポリイミド樹脂、レジスト、ワックス、ベンゾシクロブテン(BCB)等で形成するのが好ましい。又は、接合領域21aが形成された実装基板20の接合面21を、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、弗素樹脂、シリコーン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、ポリイミド樹脂、レジスト、ワックス、BCB等で覆うのが好ましい。
【0048】
あるいは、インクジェット技術などによって、接合領域21aに、選択的に親水化処理を行ってもよい。
【0049】
一方、親水性領域(接合部)11aをチップ10の外形よりも小さくしてもよい。すなわち、図2(b)に示すように、チップ10の接合面11の中心部に、親水化処理されている領域よりなる接合部11aが設けられ、チップ10の接合面11の周辺部に、親水化処理されていない領域(以下「疎水性領域」又は「疎水枠」ともいう。)11bが設けられていてもよい。周辺部に疎水性領域(疎水枠)11bを設けることにより、接合部11aと疎水枠11bとの境界の形状により位置合わせができる。従って、チップ10をダイシングして個片化する際に、ダイシングに伴うバリ等によってチップ10の周辺部の形状が所望の形状とずれたときも、水によりチップ10を接合領域21aに精度よく位置合わせすることができる。
【0050】
また、親水性領域(接合部)11aをチップ10の外形よりも小さくするときは、疎水性領域(疎水枠)11bを、配線を形成する領域として使用することができる。図2(b)に示すように、チップ10の疎水枠11bには、例えば5μmφの貫通電極11cが形成されていてもよい。また、親水性領域(接合部)11aをチップ10の外形よりも小さくするときは、図2(b)に示すように、実装基板20の親水性領域(接合領域)21aも対応して小さくなる。また、実装基板20の疎水性領域(周辺領域)21bに、貫通電極11cに対応する貫通電極21cが設けられていてもよい。
【0051】
次に、図3から図5を参照し、本実施の形態に係る実装装置における実装方法について説明する。
【0052】
図3は、本実施の形態に係る実装方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。図4Aから図4Cは、本実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び実装基板の状態を示す概略断面図である。図5は、各チップが吸着トレイ上の所定位置に保持されている状態を示す平面図である。
【0053】
本実施の形態に係る実装方法は、図3に示すように、研削工程(ステップS11)、載置工程(ステップS12)、チップ保持工程(ステップS13)、実装基板保持工程(ステップS14)、清浄化処理工程(ステップS15)、塗布工程(ステップS16)、接触工程(ステップS17)、解除工程(ステップS18)、減圧工程(ステップS19)、加熱工程(ステップS20)を有する。
【0054】
なお、チップ保持工程(ステップS13)は、本発明における第1の基板保持工程に相当する。また、実装基板保持工程(ステップS14)は、本発明における第2の基板保持工程に相当する。また、解除工程(ステップS18)は、接触工程(ステップS17)とともに、本発明における接触工程に相当する。
【0055】
始めに研削工程(ステップS11)を行う。研削工程(ステップS11)では、接合面11をダイシングテープ14に対向させた状態で、ダイシングテープ14と接着されたチップ10の接合面11と反対面を研削する。図4A(a)は、研削工程(ステップS11)におけるチップの状態を示す。
【0056】
ダイシングテープ14と接着されたチップ10の接合面11と反対面を研削する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、図示しない研削装置を用い、チップが接着された状態のダイシングテープをダイシングフレームとともに回転ステージに保持し、回転ステージと対向して所定の相対回転数で回転する砥石によりチップを研削して薄板化してもよい。あるいは、ダイシング前のチップ基板の接合面が接着された状態のダイシングテープをダイシングフレームとともに回転ステージに保持し、回転ステージと対向して所定の相対回転数で回転する砥石によりチップを研削して薄板化した後に、ダイシングして薄板化されたチップとしてもよい。
【0057】
また、チップ10の接合面11に接合部11aが形成されているときは、接合面11と反対面を研削するため、図4A(a)に示すように、接合部11aがダイシングテープ14に接着されている。また、ダイシングテープに代え、各種の粘着テープを用いてもよい。
【0058】
次に、載置工程(ステップS12)を行う。載置工程(ステップS12)では、ダイシングテープ14から剥離されたチップ10を、接合面11をトレイ170に対向させた状態で、トレイ170に載置する。図4A(b)は、載置工程(ステップS12)におけるチップの状態を示す。
【0059】
図4A(b)に示すように、チップ保持領域175が上方に向くように保持されているトレイ170のチップ保持領域175の各々に、接合面11をトレイ170に対向させた状態、すなわち下方に向くように、必要数のチップ10を載置する。
【0060】
チップ10をダイシングテープ14から剥離する方法としては、第2の実施の形態で後述するような吸着ヘッドと類似の吸着ヘッド109を用いて行うことができる。図4A(b)に示すように、吸着ヘッド109により吸着することによって、チップ10をダイシングテープ14から剥離して取り出す。そして、吸着ヘッド109により吸着して取り出したチップ10を、接合面11をトレイ170に対向させた状態で、トレイ170に載置する。
【0061】
次に、チップ保持工程(ステップS13)を行う。チップ保持工程(ステップS13)では、トレイ170に載置されたチップ10を、接合面11と反対面を吸着トレイ150に対向させた状態で、吸着トレイ150に吸着することによって保持する。図4A(c)は、チップ保持工程(ステップS13)におけるチップの状態を示す。
【0062】
チップ10が載置されたトレイ170の上に、チップ保持領域155をトレイ170に対向させた状態で、吸着トレイ150を重ねて置く。そして、真空ポンプを用いて内部空間157内の空気を給排気孔158を介して排気することにより、図4A(c)に示すように、チップ10がチップ保持領域155に真空吸着される。すなわち、吸着トレイ150は、チップ10を、接合面11と反対面を吸着トレイ150に対向させた状態で、チップ保持領域155に形成された小孔156により吸着することによって保持する。
【0063】
チップ10が吸着トレイ150に保持されている状態を吸着トレイ150のチップ保持領域155が形成されている方向から視た状態は、図5に示すようになる。(図5では、チップ保持領域155の構成を分かりやすくするために、一部のチップ10を取り除いている。)各チップ保持領域155は、チップ10と同じ矩形状とされているが、チップ10の配置を容易にするために、チップ10の外径よりわずかに大きく形成されている。このため、チップ10とその周囲の仕切壁154との間には、通常1μm〜数百μm程度の隙間が生じている。
【0064】
そして、チップ保持領域155が下方に向いた状態で、吸着トレイ150を、制御アーム103に取り付ける。
【0065】
次に、実装基板保持工程(ステップS14)を行う。実装基板保持工程(ステップS14)では、実装基板20の表面であって親水化処理されている領域(接合領域)21aが吸着トレイ150に保持されているチップ10に対向可能となるように、実装基板20を基板保持機構104aにより保持する。すなわち、実装基板20のチップ10を接合する接合面21が上方を向いた状態で、実装基板20を基板保持機構104aに保持する。図4A(d)は、実装基板保持工程(ステップS14)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0066】
このとき、チップ10を保持している吸着トレイ150が取り付けられている制御アーム103と、実装基板20を保持している基板保持機構104aが設けられている制御ステージ102との位置合わせを行っておく。ただし、本実施の形態では、チップ10の接合部11aと実装基板20の接合領域21aとが自己整合的に位置合わせされるため、精度良く位置合わせする必要はない。
【0067】
図1に示した赤外線ランプ106を点灯させて赤外光を発生させ、吸着トレイ150、実装基板20及び基板保持機構104aを透過してくる赤外光を用いて、図1に示したCCDカメラ107でチップ10と実装基板20の各接合領域21aの重なり具合を撮像する。CCDカメラ107で撮像しながら、最初に、制御ステージ102を粗動モードで移動させ、実装基板20の接合領域21aの位置を吸着トレイ150に保持されているチップ10の位置にほぼ合致させる。その後、制御ステージ102を微動モードに切り替えて微調整を行い、実装基板20の接合領域21aと吸着トレイ150に保持されているチップ10との位置合わせを完了する。
【0068】
次に、清浄化処理工程(ステップS15)を行う。清浄化処理工程(ステップS15)では、吸着トレイ150に保持されているチップ10の接合面11を、プラズマ源105から照射されるプラズマにより清浄化処理する。図4B(e)は、清浄化処理工程(ステップS15)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0069】
図4B(e)に示すように、気体を供給しながら第1の電極105aと第2の電極105bとの間に直流電圧又は高周波電圧を印加してプラズマを励起し、励起したプラズマを吸着トレイ150に吸着され保持されているチップ10の接合面11に照射する。プラズマがチップ10の表面に照射されることにより、チップ10の表面が活性化されるか、又は、チップ10の表面の最表面層が薄くエッチングされる。これにより、チップ10の接合面11が清浄化処理される。プラズマ源105に供給するガスとしては、アルゴン等の不活性ガスを用いることができる。
【0070】
なお、前述したように、プラズマに代え、紫外光源から照射される紫外線により、チップ10の接合面11を清浄化処理してもよい。あるいは、処理液塗布部から例えばスプレー塗布されるイソプロピルアルコール(IPA)等の処理液により、チップ10の接合面11を清浄化処理してもよい。
【0071】
次に、塗布工程(ステップS16)を行う。塗布工程(ステップS16)では、実装基板20の親水化処理されている領域(接合領域)21aに水を塗布する。図4B(f)は、塗布工程(ステップS16)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0072】
図示しないノズルを用い、実装基板20の各接合領域21aの上に少量の水を塗布する。すると、各接合領域21aは親水性を有しているため、図4B(f)に示すように、水は接合領域21aの全面に広がって、各接合領域21aの全面を覆う薄い水の膜22が形成される。これらの水の膜22は、表面張力によって自然に緩やかな凸形に湾曲する。水の量は、例えば、各接合領域21aの上に、図4B(f)に示すような水の膜22が形成される程度に調整するのが好ましい。なお、水を塗布するノズルは、本発明における塗布部に相当する。
【0073】
本実施の形態で用いる「水」としては、従来の半導体製造工程で一般的に使用されている「超純水」が好ましい。また、実装基板20の接合領域21aに対するチップ10の自己整合機能を強化するために、水の表面張力を増加させる適当な添加材を添加した「超純水」の方がより好ましい。自己整合機能を強化することにより、実装基板20の接合領域21aに対するチップ10の位置精度が向上する。なお、前述したように、「親水性」を持つ物質としては、二酸化シリコン(SiO)が好適に使用できる。
【0074】
あるいは、「水」に代えて他の無機または有機の液体を使用することもできる。例えば、グリセリン、アセトン、アルコール、SOG(Spin On Glass)材料等の液体が好適である。この場合、接合領域21aを形成するためにはそのような液体に対する「親液性」を持つ材料が必要であるが、そのような材料としては、例えば窒化シリコン(Si)、各種金属、チヨール、アルカンチヨール等が挙げられる。
その他、適度な粘性を持つ接着剤の使用も可能であり、蟻酸などの還元性液体の使用も可能である。
【0075】
次に、接触工程(ステップS17)及び解除工程(ステップS18)を行う。
【0076】
接触工程(ステップS17)では、チップ10を保持している吸着トレイ150と、実装基板20を保持している基板保持機構104aとの距離を近づけることによって、チップ10の接合面11であって親水化処理された領域(接合部)11aと実装基板20の表面であって親水化処理された領域(接合領域)21aとを水の膜22を介して接触させる。すなわち、制御アーム103と制御ステージ102との距離を近づけることによって、チップ10の接合面11の接合部11aと水の膜22とを接触させる。図4B(g)は、接触工程(ステップS17)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0077】
図4B(g)に示すように、チップ10と実装基板20が向かい合った状態で、チップ10を保持している吸着トレイ150と実装基板20を保持している基板保持機構104aとを近づける。すると、実装基板20の表面の接合領域21aに形成された水の膜22と、チップ10の接合面11の接合部11aとが接触する。この時のチップ10の接合面11の接合部11aと実装基板20の接合領域21aとの距離は、接合領域21a上に形成されている水の膜22の高さに略等しく、例えば、500μmとすることができる。
【0078】
接触工程(ステップS17)を行う際に、解除工程(ステップS18)を行う。解除工程(ステップS18)では、吸着トレイ150と基板保持機構104aとの距離が、チップ10の親水化処理されている領域(接合部)11aと実装基板20の親水化処理されている領域(接合領域)21aとが水の膜22を介して接触するときの距離と略等しくなるときに、吸着トレイ150によるチップ10の保持を解除する。図4B(h)は、解除工程(ステップS18)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0079】
図4B(g)に示したように、実装基板20の表面の接合領域21aに形成された水の膜22と、チップ10の表面の接合部11aとが接触するのと略同時に、吸着トレイ150によるチップ10の保持を解除して、チップ10を実装基板20上に落下させる。一方、チップ10の接合面11の接合部11aも親水化処理が施されているため、実装基板20の表面の接合領域21aに形成された水の膜22は、接合部11a全体に濡れ広がっていく。そして、チップ10は、接合部11aが、水の膜22の水の表面張力によって接合領域21aに吸い寄せられるように移動する。その結果、各チップ10は、対応する接合領域21aに水の膜22を介して吸着し、図4B(h)に示す状態になる。すなわち、水の膜22とチップ10との間、及び水の膜22と実装基板20との間に引力が働き、水の膜22を介してチップ10は実装基板20に吸着する。なお、この時、チップ10と接合領域21aとの間の位置合わせは、水の表面張力によって自己整合的に行われる。
【0080】
なお、清浄化処理工程(ステップS15)の後、接触工程(ステップS17)においてチップ10の接合部11aが実装基板20の接合領域21aに形成された水の膜22と接触する前に、接合部11aが他のいずれとも接触しないことが好ましい。
【0081】
次に、減圧工程(ステップS19)を行う。減圧工程(ステップS19)では、処理室101内を減圧する。図4C(i)は、減圧工程(ステップS19)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0082】
接触工程(ステップS17)及び解除工程(ステップS18)の後、吸着トレイ150を上方へ移動することによって、吸着トレイ150と、チップ10が水により吸着されている実装基板20を保持している制御ステージ102との距離を遠ざける。
【0083】
次に、処理室101内を若干減圧する。すると、各チップ10の接合部11aと、対応する接合領域21aとの間にあった水が、徐々に蒸発する。その結果、接合部11aは、対応する接合領域21aに密着せしめられ、図4C(i)に示すように、チップ10が実装基板20に固着され、実装基板20とチップ10との間の仮接合が進行する。
【0084】
次に、加熱工程(ステップS20)を行う。加熱工程(ステップS20)では、チップ10が仮接合した実装基板20を加熱する。図4C(j)及び図4C(k)は、加熱工程(ステップS20)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0085】
減圧工程(ステップS19)を行った後の状態では、実装基板20を上下反転するときに、各チップ10が各接合領域21aからずれるおそれがある。従って、図4C(j)に示すように、処理室101から例えば加熱炉180中に移動して加熱する。例えば90〜100℃付近まで加熱することによって、その水を完全に蒸発させることができる。すなわち、水の膜22が無くなる。これにより、図4C(k)に示すように、仮接合されているチップ10と実装基板20との間を強固に接合する。
【0086】
なお、基板保持機構104a等にヒータ等を設けることにより実装基板20を加熱することができるのであれば、実装基板20を、加熱炉180中に移動せず、処理室101内で加熱してもよい。この場合、減圧工程(ステップS19)と加熱工程(ステップS20)を同時に行ってもよい。あるいは、実装基板20にチップ10が接合した接合力の大きさによっては、減圧工程(ステップS19)及び加熱工程(ステップS20)のいずれかを省略してもよい。
【0087】
チップ10が接合領域21aに接合された後、チップ10を搭載した実装基板20を、実装装置100と一体で又は別体で設けられたボンディング工程等を行う装置に移し、マイクロバンプ電極を用いて支持基板または対応する半導体回路層の搭載面に電気的・機械的に接続する。
【0088】
次に、図2及び図6から図9を参照し、本実施の形態に係る実装方法により、液体によりチップと実装基板との間で自己整合的に精度良く位置合わせが行われることについて、説明する。なお、以下において、説明を容易にするため、1個のチップが実装基板に落とされる場合について説明する。
【0089】
始めに、図2及び図6を参照し、位置合わせ精度を高くするために、実装基板20の接合領域21aと周辺領域21bとの親水性の差を大きくすることが好ましいことを説明する。図6は、実装基板の接合領域及び周辺領域の親水性の差とチップと実装基板との間の位置合わせ精度との関係を模式的に示す図である。図6(a)から図6(c)において接合領域21aは等しく親水性を有しているものの、図6(a)では周辺領域21bが疎水性であり、図6(b)では周辺領域21bが中性であり、図6(c)では周辺領域21bが弱親水性であるときを示している。またそれぞれにおいて、上段は、実装基板20の接合領域21aと周辺領域21bとの間の親水性の差を模式的に示す平面図である。中段は、上段におけるA−A線に沿った実装基板20の表面の親水性の変化を示すグラフである。下段は、実装基板20にチップ10が位置合わせされた状態を模式的に示す断面図である。
【0090】
図2に示したように、実装基板20では、接合領域21aには親水性領域が形成されており、周辺領域21bには疎水性領域が形成されている。ここで、接合領域21aで親水化処理を行い、且つ、周辺領域21bで疎水性処理を行うことが好ましいことを、図6を用いて説明する。
【0091】
図6(a)に示す例では、接合領域21aは親水性であり、周辺領域21bは疎水性であるため、接合領域21aと周辺領域21bとの間の親水性の差が大きい。従って、チップ10が実装される際に、水22は接合領域21aから周辺領域21bに流出することがなく、チップ10を略完全に自己整合的に接合領域21a上に吸着することができる。従って、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0092】
一方、図6(b)に示す例では、接合領域21aは親水性であり、周辺領域21bは中性であるため、図6(a)に示す例に比べ、接合領域21aと周辺領域21bとの間の親水性の差が小さい。従って、チップ10が実装される際に、水22は接合領域21aから周辺領域21bに少し流出するため、位置合わせ精度が低下する。
【0093】
また、図6(c)に示す例では、接合領域21aは親水性であり、周辺領域21bは弱親水性であるため、図6(a)及び図6(b)に示す例に比べ、接合領域21aと周辺領域21bとの間の親水性の差が更に小さい。従って、チップ10が実装される際に、水22は接合領域21aから周辺領域21bにより大きく流出するため、位置合わせ精度が更に低下する。
【0094】
以上より、接合領域21aと周辺領域21bとの間の親水性の差が大きいほど、すなわち接合領域21aと周辺領域21bとの間の水等の液体に対する濡れ性の差が大きいほど、位置合わせの精度が高くなる。
【0095】
次に、図7を参照し、位置合わせ精度を高くするために、チップ10の接合面11が清浄化されていることが重要であることを説明する。図7は、チップの接合面の清浄化処理の有無と位置合わせ精度との関係を模式的に示す図である。図7(a)ではチップ10の接合面11が清浄化されており、図7(b)ではチップ10の接合面11が清浄化されていないときを示している。また、図7(a)及び図7(b)では、図6(a)に示した例のように、周辺領域21bが疎水性である場合について示している。またそれぞれにおいて、上段は、平面視における中心線に沿ったチップ10の接合面11の表面の親水性の変化を示すグラフである。下段は、実装基板20にチップ10が位置合わせされた状態を模式的に示す断面図である。
【0096】
図7(a)に示す例では、チップ10の接合面11は清浄化されており、チップ10の接合面11は全面に亘り親水性が高い。従って、チップ10が実装される際に、接合領域21aに塗布されている水の膜22がチップ10の接合部11aに均一に濡れ広がるため、チップ10を略完全に自己整合的に接合領域21a上に吸着することができる。従って、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0097】
一方、図7(b)に示す例では、チップ10の接合面11は清浄化されていないため、チップ10の接合面11の一部において親水性が低下している。図7(b)に示す例では、接合部11aの周縁部において親水性が低下している。このように、一部において親水性が低下すると、同一領域内で親水性が均一でないことになる。従って、チップ10が実装される際に、接合領域21aに塗布されている水の膜22がチップ10の接合部11aに均一に濡れ広がらず、チップ10を略完全に自己整合的に接合領域21a上に吸着することができないため、位置合わせ精度が低下する。
【0098】
以上より、チップ10の接合面11が清浄化されていると、位置合わせの精度が高くなる。前述したように、清浄化処理は、プラズマを用いて行うことができる。また、清浄化処理した後、水、すなわち位置合わせ機能を有する液体を塗布する前に、チップ10の接合面11に接触がないことが好ましい。
【0099】
次に、図8を参照し、位置合わせ精度を高くするために、接合領域21aに塗布される液体の量に適切な条件があることを説明する。図8は、水の塗布量と位置合わせ精度との関係を模式的に示す図である。図8(a)では水の塗布量が適切であり、図8(b)では水の塗布量が適切な量よりも少ないときを示している。またそれぞれにおいて、上段は、チップ10の保持を解除してチップ10を実装基板20上に落としたときのチップ10及び実装基板20の位置関係を示す平面図である。下段は、チップ10の位置合わせが終了したときのチップ10及び実装基板20の位置関係を示す平面図である。なお、図8では、平面視においてチップ10を実装基板20の接合領域21aに対して45°回転して落とす実験を行った例について説明している。
【0100】
図8(a)に示す例では、水22の塗布量が適切であり、塗布された水22は接合領域21aの全面に濡れ広がっている。このとき、水22の塗布量は、表面張力によって接合領域21a内に留まることができる最大の量以下であって、その量に近い量である。従って、実装基板20上に落とされたチップ10は、接合領域21aと略ずれのない角度まで容易に回転することができる。従って、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0101】
一方、図8(b)に示す例では、水22の塗布量が適切な量よりも少なく、塗布された水22は接合領域21aの全面に濡れ広がることができない。従って、実装基板20上に落とされたチップ10は、接合領域21aと略ずれのない角度まで容易に回転することができない。従って、位置合わせ精度を高くすることができない。
【0102】
あるいは、表面張力によって接合領域21a内に留まることができる最大の量を超える量の水22を塗布したときは、水22は、接合領域21a内に留まることができず、周辺領域21bに流出する。従って、水22の塗布量が適切な量よりも多いときも、位置合わせ精度を高くすることができない。
【0103】
以上より、液体の塗布量が適切な量であるときに、位置合わせの精度が最も高くなる。具体的に、8.1mm角のSiO膜よりなる接合領域21aを有する実装基板20上に、8.1mm角のSiO膜よりなる接合部11aを全面に有するチップ10を落とす際に、接合領域21aにおける水22の塗布量を変えて位置合わせできるか否かの実験を行った。その結果、水22の塗布量が0.05μl/mm以下のときは、位置合わせできなかったが、水22の塗布量が0.06μl/mmのときは、位置合わせできた。
【0104】
更に、等しい面積を有する複数のチップ10を、等しい面積を有する接合領域21aのそれぞれに吸着するときは、それぞれの接合領域21aに塗布される水22の塗布量は等しいことが好ましい。
【0105】
次に、図9を参照し、位置合わせ精度を高くするために、チップの保持を解除する高さに適切な条件があることを説明する。図9は、チップの保持を解除するときのチップと実装基板との距離と位置合わせ精度との関係を模式的に示す図である。図9(a)では保持を解除するときの距離が大きく、図9(b)では保持を解除するときの距離が適切であり、図9(c)では保持を解除するときの距離が小さいときを示している。またそれぞれにおいて、上段は吸着トレイ150のチップ10の保持を解除する際のチップ10及び実装基板20の状態を示す断面図である。下段は、チップ10の保持が解除され、位置合わせが行われた後のチップ10及び実装基板20の状態を示している。なお、図9でも、吸着トレイ150はチップ10を1個のみ示している。
【0106】
図9(a)に示す例では、保持を解除するときのチップ10の接合面11の高さが水の膜22の表面よりも高いため、保持を解除されたチップ10が落下して加速した状態で水の膜22に接触する。チップ10が加速した状態で水の膜22に接触すると、水の膜22が上下左右に揺れる。その結果、落下したチップ10は、水の膜22上で左右に揺れ、位置がずれやすくなるため、位置合わせ精度が低下してしまう。
【0107】
また、図9(c)に示す例では、保持を解除するときのチップ10の接合面11の高さが水の膜22の最初の表面の高さよりも低いため、水の膜22がチップ10の接合部11aと実装基板20の接合領域21aとに挟まれる。その結果、水の膜22が左右に膨張したり、水22が周辺領域21bへ飛び散るおそれがある。
【0108】
一方、図9(b)に示す例では、保持を解除するときのチップ10の接合面11の高さが水の膜22の高さと略等しい。すなわち、吸着トレイ150と基板保持機構104aとの距離が、チップ10の接合部11aと実装基板20の接合領域21aとが水の膜22を介して接触するときの距離に略等しくなるときに、吸着トレイ150によるチップ10の保持を解除する。このときは、落下したチップ10が水の膜22上で揺れることもなく、水22が周辺領域21bへ飛び散ることもない。よって、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0109】
また、図9(b)に示す例では、チップ10が水の膜22上で揺れることがないため、位置合わせするための時間が短い。よって、実装を行う時間を短縮することができる。
【0110】
本実施の形態では、吸着トレイ150と基板保持機構104aとの距離が、チップ10の接合部11aと実装基板20の接合領域21aとが水の膜22を介して接触するときの距離に略等しくなるときに、吸着トレイ150によるチップ10の保持を解除する。従って、吸着トレイ150と基板保持機構104aとの距離が、チップ10の接合部11aと実装基板20の接合領域21aとが水の膜22を介して接触するときの距離よりも少し長いときに、チップ10の保持を解除してもよい。このときは、チップ10は微小距離落下した後、水の膜22と接触する。しかし、落下距離が所定長より短ければ、水の膜22はあまり揺れないため、位置合わせ精度が低下することはない。
【0111】
あるいは、吸着トレイ150と基板保持機構104aとの距離が、チップ10の接合部11aと実装基板20の接合領域21aとが水の膜22を介して接触するときの距離よりも少し短いときに、チップ10の保持を解除してもよい。このときは、チップ10を吸着トレイ150に保持したまま水の膜22に接触させた後、その高さから更に近づけた状態で、保持を解除する。しかし、接触するときの距離から更に近づけたときの距離との差が所定長より短ければ、水の膜22はあまり揺れず、水22が周辺領域21bへ飛び散ることもほとんどない。よって、位置合わせ精度が低下することはない。
【0112】
次に、図10を参照し、図9(b)に示す例において、チップ10の接合部11aと実装基板20の接合領域21aとが水の膜22を介して接触するときに、水の膜22よりなるメニスカス23が形成されることを説明する。図10は、図9(b)の上段に示す状態から下段に示す状態に変化する途中の状態におけるチップ及び実装基板の状態を示す断面図である。
【0113】
前述したように、チップ10の接合部11aと実装基板20の接合領域21aとが水の膜22を介して接触するとき、チップ10の接合面11の接合部11aも親水化処理が施されているため、水の膜22は、接合部11a全体に濡れ広がる。従って、図10に示すように、水の膜22は、四角錐台又は四角柱(接合部11a及び接合領域21aの平面形状が円形形状であるときは円錐台または円柱)の側周面が高さ中央部分で凹んで水平断面の断面積が絞られるような形状を有する。あるいは、上下逆向きの四角錐台が結合された形状であって、側面が連続面になるように結合されるような形状を有してもよい。このような高さ中央部分が凹んだ、液体が架橋した形状をギリシャ語で新月の意味を持つ「メニスカス(meniscus)」と定義する。
【0114】
このようなメニスカス23が形成されると、チップ10と実装基板20との間に、互いに引き付け合う方向に引力が働く。水の膜22の表面張力によって、チップ10は実装基板20側(下方側)に吸引され、実装基板20はチップ10側(上方側)に吸引されるからである。
【0115】
本実施の形態では、図12(b)を用いて後述するような圧力検出器を、内部空間157と連通するように、吸着トレイ150にも設けることができる。図10に示すように水の膜22よりなるメニスカス23が形成されると、吸着トレイ150に吸着されているチップ10を吸着トレイ150から剥がそうとする剥離力(下向きの力)が働く。圧力検出器では、この剥離力の発生による圧力の変動を検出することができる。そして、この剥離力の発生による圧力の変動を検出した時点で、真空ポンプと内部空間157との間を遮断し、吸着トレイ150によるチップ10の保持を解除することによって、確実にチップ10が水の膜22に接触した後にチップ10の保持を解除することができる。
【0116】
あるいは、予め、例えば吸着トレイ150の吸着力を変えて実験を繰り返すことにより、メニスカス23が形成されるときに発生するチップ10を剥がそうとする剥離力(下向きの力)を圧力検出器により測定し、記憶手段に記憶しておいてもよい。そして、吸着トレイ150がチップ10を吸着する吸着力が、予め測定した剥離力よりも小さくなるように設定する。これにより、チップ10の接合部11aと実装基板20の実装領域21aとが水の膜22を介して接触する際に、例えば真空ポンプと内部空間157とを遮断すること等を行わなくても、自動的に吸着トレイ150によるチップ10の保持が解除される。すなわち、解除工程(ステップS18)では、吸着トレイ150と基板保持機構104aとの距離が、接合部11aと接合領域21aとが水の膜22を介して接触するときの吸着トレイ150と基板保持機構104aとの距離と略等しくなるときに、自動的に吸着トレイ150によるチップ10の保持が解除される。図10では、吸着トレイ150によるチップ10の保持が解除され、チップ10が吸着トレイ150から離れた直後の状態が示されている。
【0117】
以上、本実施の形態では、実装基板の接合領域と周辺領域との間で親水性の差を大きくし、実装されるチップの接合面をプラズマにより清浄化することによって位置合わせ精度を高くすることができる。また、チップが、接合部と実装基板の接合領域に塗布された水とが接触するときの高さと略等しい高さにあるときに、チップの保持を解除することによって、位置合わせ精度を高くすることができる。また、位置合わせ精度を高くすることができるとともに、接合領域から周辺領域に水が浸入することがない。従って、微細なチップを高密度で実装基板に実装するときも、確実に実装することができ、隣接するチップ間での短絡等を防止できる。
【0118】
なお、チップの接合面をプラズマにより清浄化しない場合でも、チップが、接合部と実装基板の接合領域に塗布された水とが接触するときの高さと略等しい高さにあるときに、チップの保持を解除する場合には、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0119】
また、チップが、接合部と実装基板の接合領域に塗布された水とが接触する高さと異なる高さにあるときに、チップの保持を解除する場合でも、チップの接合面をプラズマにより清浄化する場合には、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0120】
また、本実施の形態では、実装基板の接合領域に水を塗布する例について説明した。しかし、実装基板の接合領域に代え、チップの接合部に水を塗布し、水が塗布された状態でチップの吸着を解除することによって、実装基板の接合領域にチップを吸着してもよい。このときも、実装基板の接合領域と周辺領域との間で親水性の差を大きくし、実装されるチップの接合面をプラズマにより清浄化することによって位置合わせ精度を高くすることができる。また、チップの接合部に塗布された水が実装基板の接合領域と接触するときの高さと略等しい高さにあるときにチップの保持を解除することによって、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0121】
また、本実施の形態では、チップの接合面がダイシングテープに接着され、接合面と反対面が研削される例について説明した。しかし、反対面が研削されない場合、又は、接合面がダイシングテープに接着されていない場合においても、位置合わせ精度を高くすることができる。
(第2の実施の形態)
次に、図11から図15Bを参照し、第2の実施の形態に係る実装方法について説明する。
【0122】
本実施の形態に係る実装方法は、チップを吸着ヘッドにより一つずつ実装基板上に実装する点で、第1の実施の形態に係る実装方法と相違する。
【0123】
始めに図11を参照し、本実施の形態に係る実装装置について説明する。図11は、本実施の形態に係る実装装置の構成を示す一部断面を含む概略正面図である。図12(a)及び図12(b)は、吸着ヘッドの周辺を拡大して示す断面図である。図13(a)及び図13(b)は、吸着ヘッドのヘッド先端部の形状の一例を示す正面図及び斜視図である。
【0124】
図11に示すように、実装装置200は、処理室201、ワークホルダ202、基板ホルダ203、ロボット204、吸着ヘッド205、ノズル206、プラズマ源207を有する。また、実装装置200には、図示しない搬入出口や、チップ10が接着されたダイシングテープ14を含むワークや実装基板20を搬送するための図示しない搬送機も備えられている。
【0125】
図11に示すように、処理室201は、ワークホルダ202、基板ホルダ203、ロボット204、吸着ヘッド205、ノズル206を囲むように設けられている。また、処理室201は、その囲まれた内部の雰囲気及び圧力を制御可能に設けられている。処理室201には、温度や湿度を制御した清浄空気や窒素などの気体を導入する図示しない供給器や、内部を排気可能な図示しないポンプが接続され、処理に応じて圧力も制御される。
【0126】
図11に示すように、ワークホルダ202は、処理室201の下方に設けられる。ワークホルダ202は、例えばチップ10が接着された状態のダイシングテープ14を図示しないダイシングフレームとともにワークとして固定して保持する。基板ホルダ203も、処理室201の下方に、ワークホルダ202と水平方向に並ぶように配置されて設けられる。基板ホルダ203は、実装基板20を固定して保持する。ワークホルダ202と基板ホルダ203とは、ロボット204の動作を最小限にするために、可能な限り同一平面上に置かれることが好ましい。
【0127】
なお、チップ10は、本発明における第1の基板に相当し、実装基板20は、本発明における第2の基板に相当する(以下の実施の形態でも同様)。また、ワークホルダ202は、本発明における第1の基板保持部に相当し、基板ホルダ203は、本発明における第2の基板保持部に相当する。また、プラズマ源207は、本発明における清浄化処理部に相当する。
【0128】
図11に示すように、ロボット204は、後述する吸着ヘッド205を固定するように、処理室201内に設けられる。ロボット204は、処理室201内に設置されたレール部材208によって、平面方向だけではなく、上下方向にも自由に移動することができる。ロボット204は、吸着ヘッド205を、ワークホルダ202に保持されているチップ10の上方から基板ホルダ203に保持されている実装基板20の上方へ移動させる。なお、ロボット204は、多関節を有するアーム型のロボットを使用することも可能である。
【0129】
図11に示すように、吸着ヘッド205は、ロボット204に固定されている。吸着ヘッド205は、チップ10を吸着することによって保持する。吸着ヘッド205は、ワークホルダ202の上方で、ワークホルダ202が保持するダイシングテープ14に接着されているチップ10を吸着することによってダイシングテープ14から剥離し、チップ10をダイシングテープ14から取り出す。また、吸着ヘッド205は、基板ホルダ203が保持した実装基板20の上方で、吸着を解除して実装基板20にチップ10を実装する。
【0130】
図12(a)に示すように、吸着ヘッド205は、ヘッド本体部251及びヘッド先端部252を有する。ヘッド本体部251は、図示しない排気部に接続されており、排気部がヘッド本体部251の内部空間251aを真空排気することにより、ヘッド先端部252でチップ10を真空吸引により吸着する。
【0131】
また、吸着ヘッド205には、ヘッド本体部251の内部空間251aの圧力を検出する圧力検出器251bが設けられていてもよい。圧力検出器251bが設けられたヘッド本体部251の例を図12(b)に示す。図12(b)に示す例では、吸着ヘッド205には、ヘッド本体部251の内部空間251aと連通するように、圧力検出器251bが設けられている。
【0132】
なお、吸着ヘッド205は、本発明における吸着部に相当する。また、吸着ヘッド205は、真空吸着に限定されず、静電吸着等の他の公知の吸着方法によりチップを吸着するものであってもよい。
【0133】
また、吸着ヘッドに代え、例えばアーム等によりチップを掴んでトレイから取り出し、基板上で掴んでいたチップを離して基板上に載置することができる取り出し用ヘッドを用いてもよい。
【0134】
ヘッド先端部252の形状は、図13に示すような例にしてもよい。図13に示す例では、ヘッド先端部252は、先端である下面253に形成された開口部254と連通するように、ヘッド先端部252の中心に排気孔255が形成されている。また、下面253には、開口部254を交点として十字形状に溝256が形成されている。排気孔255は、ヘッド本体部251を介し、前述した排気部に接続されている。吸着ヘッド205の真空吸着による吸着力を調節し、吸着を解除したときに吸着保持していたチップ10が落下しやすくなるように、溝256は、略円形である下面253の周縁まで連続して形成されている。
【0135】
ノズル206は、実装基板20の表面に例えば水を塗布する。ただし、ノズル206は、水だけでなく、その他各種の液体又はある程度粘性の低いゲル状の物質を供給することができる。本実施の形態では、一例としてノズル206が水を吐出する場合について、説明する。また、ノズル206として、例えばディスペンサを用いることができる。また、ノズル206は、図11に示すように、ロボット204と一体又は別に設けられたロボット204aに固定され、レール部材208に沿って移動可能に設けられていてもよい。
【0136】
なお、ノズル206は、本発明における塗布部に相当する。また、ノズル206は、ディスペンサに限定されず、シリンジ、インクジェットヘッド等の他の公知の吐出方法又は塗布方法を用いて液体を塗布するものであってもよい。
【0137】
プラズマ源207は、発生したプラズマをチップ10の接合面11に照射し、チップ10の接合面11を清浄化処理するものである。プラズマ源207は、例えば、第1の電極207aと第2の電極207bとを有し、第1の実施の形態におけるプラズマ源105と同様な構成のものを用いることができる。
【0138】
また、本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、プラズマ源207に代え、紫外線を照射する紫外光源、イソプロピルアルコール(IPA)等の処理液を例えばスプレー塗布する処理液塗布部が設けられていてもよい。また、第1の実施の形態と同様に、プラズマ源207、紫外光源、処理液塗布部等の複数の種類の清浄化処理部を用意しておき、チップ10の接合面11に付着している不純物の種類等によって、清浄化処理部を選択して用いるようにしてもよい。
【0139】
次に、図14から図15Bを参照し、本実施の形態に係る実装装置における実装方法について説明する。
【0140】
図14は、本実施の形態に係る実装方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。図15A及び図15Bは、本実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び実装基板の状態を示す概略断面図である。
【0141】
本実施の形態に係る実装方法は、図14に示すように、研削工程(ステップS31)、保持工程(ステップS32)、実装基板保持工程(ステップS33)、塗布工程(ステップS34)、取り出し工程(ステップS35)、清浄化処理工程(ステップS36)、接触工程(ステップS37)、解除工程(ステップS38)、減圧工程(ステップS39)、加熱工程(ステップS40)を有する。
【0142】
なお、本実施の形態でも、解除工程(ステップS38)は、本発明における接触工程(ステップS37)に含まれる。
【0143】
チップ10及び実装基板20の形状及び構造は、第1の実施の形態と同様にすることができる。すなわち、チップ10の接合面11に親水化された領域(接合部)11aが設けられていること、実装基板20の表面に親水化処理された領域(接合領域)21aが設けられていることは、第1の実施の形態において図2を用いて説明したのと同様である。また、チップ10の接合面11の接合部11aと実装基板20の接合領域21aとを水等の液体を用いて自己整合的に位置合わせするのも、第1の実施の形態と同様である。
【0144】
始めに、研削工程(ステップS31)を行う。研削工程(ステップS31)は、第1の実施の形態における研削工程(ステップS11)と同様にすることができる。図15A(a)は、研削工程(ステップS31)におけるチップの状態を示すものであり、第1の実施の形態における図4A(a)と同様である。
【0145】
次に、保持工程(ステップS32)を行う。保持工程(ステップS32)では、チップ10がダイシングテープ14に接着された状態で、ワークホルダ202に保持する。図15A(b)は、保持工程(ステップS32)におけるチップの状態を示す。
【0146】
次に、実装基板保持工程(ステップS33)を行う。実装基板保持工程(ステップS33)では、親水化処理された領域(接合領域)21aが吸着ヘッド205に保持されているチップ10に対向可能となるように、実装基板20を基板ホルダ203により保持する。実装基板20が、実装装置200の処理室201内に搬入され、基板ホルダ203に固定保持される。図15A(c)は、実装基板保持工程(ステップS33)における実装基板の状態を示す。
【0147】
次に、塗布工程(ステップS34)を行う。塗布工程(ステップS34)では、実装基板20の表面であって親水化処理された領域(接合領域)21aに水を塗布する。図15A(d)は、塗布工程(ステップS34)における実装基板の状態を示す。
【0148】
図15A(d)に示すように、ノズル206を実装基板20の上方へ移動させ、次にチップ10を実装する接合領域21aに、ノズル206から水を吐出することによって、水を塗布する。接合領域21aは、予め親水化処理を施してある。このため、ノズル206から吐出された水は、図15A(d)に示すように、親水化処理された領域(接合領域)21aの全面に広がり、領域(接合領域)21aの全面を覆う薄い水の膜22が形成される。水の膜22は、表面張力によって自然に緩やかな凸形に湾曲する。水の量は、第1の実施の形態で説明したように、接合領域21aから周辺領域21bに流出しない最大の量に近い量であって、表面張力によって自然に緩やかな凸形の形状になるような量に調整するのが好ましい。
【0149】
次に、取り出し工程(ステップS35)を行う。取り出し工程(ステップS35)では、チップ10を吸着ヘッド205により吸着することによって、ダイシングテープ14から剥離し、チップ10をダイシングテープ14から取り出す。図15B(e)は、取り出し工程(ステップS35)におけるチップの状態を示す。
【0150】
図15B(e)に示すように、ロボット204により、吸着ヘッド205をワークホルダ202の上方へ移動させ、更に、チップ10を破損しないように、吸着ヘッド205をチップ10に接触するまで下降させ、ダイシングテープ14に接着されているチップ10を吸着ヘッド205により吸着する。
【0151】
チップ10に接触したかどうかについては、予めロボット204とワークホルダ202との位置関係を計算機によって制御することによる判別を行っても良いし、吸着ヘッド205に圧力検出器を設けて、チップ10と接触したときに加わる圧力を検出して判別しても良い。また、光学的な距離測定器をロボット204や吸着ヘッド205に設けても良い。
【0152】
吸着ヘッド205によりチップ10を吸着した後、吸着ヘッド205に吸着したチップ10をダイシングテープ14から剥離し、チップ10をダイシングテープ14から取り出す。そして、ロボット204により、吸着ヘッド205を、ワークホルダ202の上方から実装基板20の上方へ平行移動する平行移動位置まで上昇させる。
【0153】
次に、清浄化処理工程(ステップS36)を行う。清浄化処理工程(ステップS36)では、吸着ヘッド205に吸着されているチップ10の接合面11を、プラズマにより清浄化処理する。図15B(f)は、清浄化処理工程(ステップS36)におけるチップの状態を示す。
【0154】
図15B(f)に示すように、ロボット204により、吸着ヘッド205を、ワークホルダ202の上方から実装基板20の上方へ移動させる。そして、吸着ヘッド205を移動させる途中で、プラズマ源207の上方を通過させることにより、チップ10の表面を清浄化処理する。
【0155】
プラズマ源207に、気体を供給しながら第1の電極207aと第2の電極207bとの間に直流電圧又は高周波電圧を印加してプラズマを励起し、励起したプラズマを上方に向けて照射する。プラズマ源207の上方を吸着ヘッド205が通過することにより、プラズマがチップ10の接合面11に照射され、チップ10の表面が活性化されるか、又は、チップ10の最表面層が薄くエッチングされる。これにより、チップ10の表面が清浄化処理される。プラズマ源207に供給するガスとしては、第1の実施の形態と同様に、アルゴン等の不活性ガスを用いることができる。
【0156】
なお、前述したように、プラズマに代え、紫外光源から照射される紫外線により、チップ10の接合面11を清浄化処理してもよい。あるいは、処理液塗布部から例えばスプレー塗布されるイソプロピルアルコール(IPA)等の処理液により、チップ10の接合面11を清浄化処理してもよい。
【0157】
プラズマ源207の上方を通過させた後、引き続いて、ロボット204により、吸着ヘッド205に吸着したチップ10が、実装基板20の表面であって接合領域21aの上方に位置するように、吸着ヘッド205を移動させる。このとき、移動した吸着ヘッド205が吸着しているチップ10の位置は、接合領域21aの位置と厳密に整合していなくてもよい。すなわち、吸着ヘッド205の位置は、厳密に調整しなくてもよい。
【0158】
次に、接触工程(ステップS37)及び解除工程(ステップS38)を行う。
【0159】
接触工程(ステップS37)では、チップ10を保持している吸着ヘッド205と、実装基板20を保持している基板ホルダ203との距離を近づけることによって、チップ10の接合面11であって親水化処理された領域(接合部)11aと実装基板20の表面であって親水化処理された領域(接合領域)21aとを水の膜22を介して接触させる。すなわち、吸着ヘッド205と基板ホルダ203との距離を近づけることによって、チップ10の接合面11の接合部11aと水の膜22とを接触させる。図15B(g)は、接触工程(ステップS37)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0160】
図15B(g)に示すように、吸着ヘッド205と実装基板20が向かい合った状態で、チップ10を保持している吸着ヘッド205と実装基板20を保持している基板ホルダ203とを近づける。すると、実装基板20の表面の接合領域21aに形成された水の膜22と、チップ10の接合面11の接合部11aとが接触する。この時のチップ10の接合部11aと実装基板20の接合領域21aとの距離は、接合領域21a上に形成されている水の膜22の高さに略等しく、例えば、500μmとすることができる。
【0161】
接触工程(ステップS37)を行う際に、解除工程(ステップS38)を行う。解除工程(ステップS38)では、吸着ヘッド205と基板ホルダ203との距離が、チップ10の接合面11の親水化処理されている領域(接合部)11aと実装基板20の親水化処理されている領域(接合領域)21aとが水の膜22を介して接触するときの距離と略等しくなるときに、吸着ヘッド205によるチップ10の保持を解除する。図15B(h)は、解除工程(ステップS38)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0162】
図15B(g)に示したように、実装基板20の表面の接合領域21aに形成された水の膜22と、チップ10の接合面11の接合部11aとが接触するのと略同時に、吸着ヘッド205によるチップ10の保持を解除して、チップ10を実装基板20上に落下させる。一方、チップ10の表面の接合部11aも親水化処理が施されているため、実装基板20の表面の接合領域21aに形成された水の膜22は、接合部11a全体に濡れ広がっていく。そして、チップ10は、接合部11aが、水の膜22の水の表面張力によって接合領域21aに吸い寄せられるように移動する。その結果、各チップ10は、対応する接合領域21aに水の膜22を介して吸着し、図15B(h)に示す状態になる。すなわち、水の膜22とチップ10との間、及び水の膜22と実装基板20との間に引力が働き、水の膜22を介してチップ10は実装基板20に吸着する。なお、この時、チップ10と接合領域21aとの間の位置合わせは、水の表面張力によって自己整合的に行われる。
【0163】
なお、清浄化処理工程(ステップS36)の後、接触工程(ステップS37)においてチップ10の接合部11aが実装基板20の接合領域21aに形成された水の膜22と接触する前に、接合部11aが他のいずれとも接触しないことが好ましい。
【0164】
以上のように、塗布工程(ステップS34)から解除工程(ステップS38)を行うことにより、1つのチップ10を実装基板20に実装することができる。そして、塗布工程(ステップS34)から解除工程(ステップS38)の工程を繰り返すことにより、実装基板20に複数のチップ10を順次実装することができる。
【0165】
塗布工程(ステップS34)から解除工程(ステップS38)を繰り返し行って複数のチップ10を実装基板20に実装した後、減圧工程(ステップS39)及び加熱工程(ステップS40)を行う。減圧工程(ステップS39)及び加熱工程(ステップS40)のそれぞれは、第1の実施の形態における減圧工程(ステップS19)及び加熱工程(ステップS20)のそれぞれと同様にすることができる。また、減圧工程(ステップS39)及び加熱工程(ステップS40)におけるチップ及び実装基板の状態は、図4C(i)から図4C(k)に示される。
【0166】
本実施の形態では、図12(b)を用いて説明したように、吸着ヘッド205に圧力検出器251bが設けられていてもよい。接合部11aと接合領域21aとが水の膜22を介して接触するとき、図10を用いて説明したようなメニスカス23が形成されると、吸着トレイ150に吸着されているチップ10を吸着ヘッド205から剥がそうとする剥離力(下向きの力)が働く。圧力検出器251bでは、この剥離力の発生による圧力の変動を検出することができる。そして、この剥離力の発生による圧力の変動を検出した時点で、排気部と内部空間251aとの間を遮断し、吸着ヘッド205によるチップ10の保持を解除することによって、確実にチップ10が水の膜22に接触した後にチップ10の保持を解除することができる。
【0167】
あるいは、予め、例えば吸着ヘッド205の吸着力を変えて実験を繰り返すことにより、メニスカス23が形成されるときに発生するチップ10を剥がそうとする剥離力(下向きの力)を圧力検出器251bにより測定しておいてもよい。そして、吸着ヘッド205がチップ10を吸着する吸着力が、予め測定した剥離力よりも小さくなるように設定する。これにより、チップ10の接合部11aと実装基板20の実装領域21aとが水の膜22を介して接触する際に、例えば排気部と内部空間251aとを遮断すること等を行わなくても、自動的に吸着ヘッド205によるチップ10の保持が解除される。すなわち、解除工程(ステップS38)では、吸着ヘッド205と基板ホルダ203との距離が、接合部11aと接合領域21aとが水の膜22を介して接触するときの吸着ヘッド205と基板ホルダ203との距離と略等しくなるときに、自動的に吸着ヘッド205によるチップ10の保持が解除される。
【0168】
第1の実施の形態と同様に、本実施の形態でも、実装基板の接合領域と周辺領域との間で親水性の差を大きくし、実装されるチップの接合面をプラズマにより清浄化することによって位置合わせ精度を高くすることができる。また、チップが、接合部と実装基板の接合領域に塗布された水とが接触するときの高さと略等しい高さにあるときに、チップの保持を解除することによって、位置合わせ精度を高くすることができる。また、位置合わせ精度を高くすることができるとともに、接合領域から周辺領域に水が浸入することがない。従って、微細なチップを高密度で実装基板に実装するときも、確実に実装することができ、隣接するチップ間での短絡等を防止できる。
【0169】
なお、本実施の形態でも、チップの接合面をプラズマにより清浄化しない場合でも、チップが、接合部と実装基板の接合領域に塗布された水とが接触するときの高さと略等しい高さにあるときに、チップの保持を解除する場合には、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0170】
また、本実施の形態でも、チップが、接合部と実装基板の接合領域に塗布された水とが接触する高さと異なる高さにあるときに、チップの保持を解除する場合でも、チップの接合面をプラズマにより清浄化する場合には、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0171】
また、本実施の形態でも、実装基板の接合領域に代え、チップの接合部に水を塗布し、水が塗布された状態でチップの吸着を解除することによって、実装基板の接合領域にチップを吸着してもよい。
【0172】
また、本実施の形態でも、チップの接合面の反対面が研削されない場合、又は、接合面がダイシングテープに接着されていない場合においても、位置合わせ精度を高くすることができる。
(第3の実施の形態)
次に、図16から図18Bを参照し、第3の実施の形態に係る実装方法について説明する。
【0173】
本実施の形態に係る実装方法は、チップ基板を一体で実装基板上に実装する点で、第1の実施の形態に係る実装方法と相違する。
【0174】
始めに、図16を参照し、本実施の形態に係る実装装置について説明する。図16は、本実施の形態に係る実装装置の構成を示す一部断面を含む概略正面図である。
【0175】
図16に示すように、実装装置100aは、処理室101、制御ステージ102、制御アーム103、支持台104、プラズマ源105、赤外線ランプ106、CCDカメラ107、コンピュータ108、真空チャック160を有する。制御アーム103に、吸着トレイ150に代え、真空チャック160を保持する点以外は、第1の実施の形態に係る実装装置100と同様である。また、本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、プラズマ源105に代え、紫外線を照射する紫外光源、イソプロピルアルコール(IPA)等の処理液を例えばスプレー塗布する処理液塗布部が設けられていてもよい。
【0176】
真空チャック160は、基板保持機構104aに保持されている実装基板20の真上の位置に、チップ基板10aを水平状態で保持可能に設けられている。真空チャック160の内部は空洞になっていて、その下面には複数の小孔161が形成され、その一端には給排気孔162が形成されている。真空チャック160の下面は、チップ基板10aを保持する保持面163になっている。保持面163にチップ基板10aを押し付けた状態で、給排気孔162を介して内部空間164の空気を排出して所望の真空状態にすることにより、チップ基板10aを真空吸着により保持面163に固定保持することができる。真空チャック160は、赤外線ランプ106から放射される赤外光を透過する材料(例えば石英や、より安価に製作が可能な透明プラスチック)で形成されている。
【0177】
チップ基板10aは、半導体ウェハに第1の実施の形態におけるチップ10が形成されたものである。チップ10及び実装基板20の形状及び構造は、第1の実施の形態と同様にすることができる。すなわち、チップ10の接合面11に親水化された領域(接合部)11aが設けられていること、実装基板20の表面に親水化処理された領域(接合領域)21aが設けられていることは、第1の実施の形態において図2を用いて説明したのと同様である。
【0178】
なお、チップ基板10aは、本発明における第1の基板に相当し、真空チャック160は、本発明における第1の基板保持部に相当する。
【0179】
また、真空チャック160に代え、静電吸着、機械的把持等によりチップ基板10aを保持するチャックを設けてもよい。
【0180】
次に、図17から図18Bを参照し、本実施の形態に係る実装装置における実装方法について説明する。
【0181】
図17は、本実施の形態に係る実装方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。図18A及び図18Bは、本実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ基板及び実装基板の状態を示す概略断面図である。
【0182】
本実施の形態に係る実装方法は、図17に示すように、研削工程(ステップS51)、チップ基板保持工程(ステップS52)、実装基板保持工程(ステップS53)、清浄化処理工程(ステップS54)、塗布工程(ステップS55)、接触工程(ステップS56)、解除工程(ステップS57)、減圧工程(ステップS58)、加熱工程(ステップS59)を有する。
【0183】
始めに研削工程(ステップS51)を行う。研削工程(ステップS51)では、接合面11をダイシングテープ14に対向させた状態で、ダイシングテープ14と接着されたチップ基板10aの接合面11と反対面を、チップ基板10aの外周部を厚く残したまま研削する。図18A(a)は、研削工程(ステップS51)におけるチップ基板の状態を示す。
【0184】
第1の実施の形態における研削工程(ステップS11)と同様に、公知の方法を用いてチップ基板10aの接合面11と反対面を、図示しない研削装置により研削する。ただし、このとき、チップごとにダイシングせずに一体のチップ基板として研削を行う。またチップ基板10aの外周部を厚く残したまま研削する。これにより、厚く残った外周部を、後の工程において、チップ基板10aを保持するための部分として用いることができる。また、厚く残った外周部により、チップ基板10aの機械的強度が低下することを防止できる。
【0185】
次に、チップ基板保持工程(ステップS52)を行う。チップ基板保持工程(ステップS52)では、チップ基板10aを、接合面11と反対面を真空チャック160に対向させた状態で、真空チャック160により保持し、接合面11からダイシングテープ14を剥離する。図18A(b)は、チップ基板保持工程(ステップS52)におけるチップ基板の状態を示す。
【0186】
図18A(b)に示すように、真空チャック160の保持面163にチップ基板10aを下から押し付けた状態で、内部空間164を真空状態にして、チップ基板10aを保持面163に真空吸着して固定保持する。
【0187】
次に、実装基板保持工程(ステップS53)を行う。実装基板保持工程(ステップS53)では、実装基板20の親水化処理された領域(接合領域)21aが真空チャック160に保持されているチップ基板10aに対向可能となるように、実装基板20を基板保持機構104aにより保持する。具体的には、第1の実施の形態における実装基板保持工程(ステップS14)と同様にすることができる。図18A(c)は、実装基板保持工程(ステップS53)におけるチップ基板及び実装基板の状態を示す。
【0188】
次に、清浄化処理工程(ステップS54)を行う。清浄化処理工程(ステップS54)では、真空チャック160に保持されているチップ基板10aの接合面11を、プラズマにより清浄化処理する。具体的には、第1の実施の形態における清浄化処理工程(ステップS15)と同様にすることができる。図18B(d)は、清浄化処理工程(ステップS54)におけるチップ基板及び実装基板の状態を示す。
【0189】
なお、第1の実施の形態と同様に、プラズマに代え、紫外光源から照射される紫外線により、チップ基板10aの接合面11を清浄化処理してもよい。あるいは、処理液塗布部から例えばスプレー塗布されるイソプロピルアルコール(IPA)等の処理液により、チップ基板10aの接合面11を清浄化処理してもよい。
【0190】
その後、塗布工程(ステップS55)から加熱工程(ステップS59)を行う。塗布工程(ステップS55)から加熱工程(ステップS59)のそれぞれは、第1の実施の形態における塗布工程(ステップS16)から加熱工程(ステップS20)のそれぞれと略同様である。図18B(e)から図18B(g)は、塗布工程(ステップS55)から解除工程(ステップS57)のそれぞれにおけるチップ基板及び実装基板の状態を示す。
【0191】
ただし、接触工程(ステップS56)では、チップ基板10aを保持している真空チャック160と、実装基板20を保持している基板保持機構104aとの距離を近づけることによって、チップ基板10aの親水化処理されている領域(接合部)11aと実装基板20の親水化処理されている領域(接合領域)21aとを水の膜22を介して接触させる。また、解除工程(ステップS57)では、真空チャック160と基板保持機構104aとの距離が、チップ基板10aの親水化処理されている領域(接合部)11aと実装基板20の親水化処理されている領域(接合領域)21aとが水の膜22を介して接触するときの距離と略等しくなるときに、真空チャック160によるチップ基板10aの保持を解除する。
【0192】
そして、清浄化処理工程(ステップS54)の後、接触工程(ステップS56)においてチップ基板10aの接合部11aが実装基板20の接合領域21aに形成された水の膜22と接触する前に、接合部11aが他のいずれとも接触しないことが好ましい。
【0193】
また、本実施の形態でも、真空チャック160の内部空間164の圧力を検出する圧力検出器を設け、圧力検出器により圧力の変動を検出することによって、図10を用いて説明したメニスカスが形成されるときに、真空チャック160によるチップ基板10aの保持を解除するようにしてもよい。また、予めメニスカスが形成されるときに発生する剥離力を圧力検出器により測定しておき、真空チャック160による吸着力が、剥離力よりも小さくなるように設定してもよい。
【0194】
第1の実施の形態と同様に、本実施の形態でも、実装基板の接合領域と周辺領域との間で親水性の差を大きくし、実装されるチップ基板の接合面をプラズマにより清浄化することによって位置合わせ精度を高くすることができる。また、チップ基板が、接合部と実装基板の接合領域に塗布された水とが接触するときの高さと略等しい高さにあるときに、チップ基板の保持を解除することによって、位置合わせ精度を高くすることができる。また、位置合わせ精度を高くすることができるとともに、接合領域から周辺領域に水が浸入することがない。従って、微細なチップが高密度で形成されているチップ基板を実装基板に実装するときも、確実に実装することができ、隣接するチップ間での短絡等を防止できる。
【0195】
なお、本実施の形態でも、チップ基板の接合面をプラズマにより清浄化しない場合でも、チップ基板が、接合部と実装基板の接合領域に塗布された水とが接触するときの高さと略等しい高さにあるときに、チップ基板の保持を解除する場合には、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0196】
また、本実施の形態でも、チップ基板が、接合部と実装基板の接合領域に塗布された水とが接触する高さと異なる高さにあるときに、チップ基板の保持を解除する場合でも、チップ基板の接合面をプラズマにより清浄化する場合には、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0197】
また、本実施の形態でも、実装基板の接合領域に代え、チップ基板の接合部に水を塗布し、水が塗布された状態でチップ基板の吸着を解除することによって、実装基板の接合領域にチップを吸着してもよい。
【0198】
また、本実施の形態でも、チップ基板の接合面の反対面が研削されない場合、又は、接合面がダイシングテープに接着されていない場合においても、位置合わせ精度を高くすることができる。
(第4の実施の形態)
次に、図19から図21Bを参照し、第4の実施の形態に係る実装方法について説明する。
【0199】
本実施の形態に係る実装方法は、実装する際のチップと実装基板との上下関係が逆になる点で、第1の実施の形態に係る実装方法と相違する。
【0200】
始めに、図19を参照し、本実施の形態に係る実装装置について説明する。図19は、本実施の形態に係る実装装置の構成を示す一部断面を含む概略正面図である。
【0201】
図19に示すように、実装装置100bは、処理室101、制御ステージ102、制御アーム103、支持台104、プラズマ源105、赤外線ランプ106、CCDカメラ107、コンピュータ108、吸着トレイ150、真空チャック160を有する。吸着トレイ150を支持台104のトレイ保持機構104bに保持し、制御アーム103に真空チャック160を保持する点以外は、第1の実施の形態に係る実装装置100と同様である。また、制御アーム103に真空チャック160を保持するのは、第3の実施の形態に係る実装装置100aと同様である。また、本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、プラズマ源105に代え、紫外線を照射する紫外光源、イソプロピルアルコール(IPA)等の処理液を例えばスプレー塗布する処理液塗布部が設けられていてもよい。
【0202】
実装装置100bでは、支持台104の上面側は、チップ10を一括して吸着して保持する吸着トレイ150を保持するトレイ保持機構104bになっている。トレイ保持機構(支持台)104bは、適当な係止手段(例えば、ネジ、フック等)を用いて吸着トレイ150を係止することによって、吸着トレイ150を水平状態に保持する。
【0203】
次に、図20から図21Bを参照し、本実施の形態に係る実装装置における実装方法について説明する。
【0204】
図20は、本実施の形態に係る実装方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。図21A及び図21Bは、本実施の形態に係る実装方法の各工程におけるチップ及び実装基板の状態を示す概略断面図である。
【0205】
本実施の形態に係る実装方法は、図20に示すように、研削工程(ステップS71)、載置工程(ステップS72)、チップ保持工程(ステップS73)、実装基板保持工程(ステップS74)、清浄化処理工程(ステップS75)、塗布工程(ステップS76)、接触工程(ステップS77)、解除工程(ステップS78)、減圧工程(ステップS79)、加熱工程(ステップS80)を有する。
【0206】
研削工程(ステップS71)からチップ保持工程(ステップS73)のそれぞれは、第1の実施の形態における研削工程(ステップS11)からチップ保持工程(ステップS13)のそれぞれと同様にすることができる。図21A(a)から図21A(c)のそれぞれは、研削工程(ステップS71)からチップ保持工程(ステップS73)の各工程におけるチップの状態を示す。図21A(a)から図21A(c)のそれぞれは、図4A(a)から図4A(c)のそれぞれと同様である。
【0207】
ただし、本実施の形態では、吸着トレイ150は、支持台104のトレイ保持機構104bに保持される(後述する図21A(d)参照)。
【0208】
次に、実装基板保持工程(ステップS74)を行う。実装基板保持工程(ステップS74)では、実装基板20の親水化処理された領域(接合領域)21aが吸着トレイ150に保持されているチップ10に対向可能となるように、実装基板20を真空チャック160により保持する。図21A(d)は、実装基板保持工程(ステップS74)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0209】
次に、清浄化処理工程(ステップS75)を行う。清浄化処理工程(ステップS75)では、吸着トレイ150に保持されているチップ10の接合面11を、プラズマにより清浄化する。具体的には、第1の実施の形態における清浄化処理工程(ステップS15)と同様にすることができる。図21B(e)は、清浄化処理工程(ステップS75)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0210】
なお、第1の実施の形態と同様に、プラズマに代え、紫外光源から照射される紫外線により、チップ10の接合面11を清浄化処理してもよい。あるいは、処理液塗布部から例えばスプレー塗布されるイソプロピルアルコール(IPA)等の処理液により、チップ10の接合面11を清浄化処理してもよい。
【0211】
次に、塗布工程(ステップS76)を行う。塗布工程(ステップS76)では、チップ10の接合面11であって親水化処理された領域(接合部)11aに水を塗布する。図21B(f)は、塗布工程(ステップS76)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0212】
チップ10の各接合部11aの上に少量の水を塗布する。すると、各接合部11aは親水性を有しているため、図21B(f)に示すように、水は接合部11aの全面に広がって、各接合部11aの全面を覆う薄い水の膜12が形成される。これらの水の膜12は、表面張力によって自然に緩やかな凸形に湾曲する。水の量は、例えば、各接合部11aの上に、図21B(f)に示すような水の膜12が形成される程度に調整するのが好ましい。
【0213】
なお、清浄化処理工程(ステップS75)の後、塗布工程(ステップS76)においてチップ10の接合部11aに水を塗布する前に、接合部11aがいずれとも接触しないことが好ましい。
【0214】
次に、接触工程(ステップS77)及び解除工程(ステップS78)を行う。
【0215】
接触工程(ステップS77)では、チップ10を保持している吸着トレイ150と、実装基板20を保持している真空チャック160との距離を近づけることによって、チップ10の接合面11の親水化処理されている領域(接合部)11aと実装基板20の親水化処理されている領域(接合領域)21aとを水の膜12を介して接触させる。すなわち、制御アーム103と制御ステージ102との距離を近づけることによって、実装基板20の表面の接合領域21aと水の膜12とを接触させる。図21B(g)は、接触工程(ステップS77)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0216】
図21B(g)に示すように、チップ10と実装基板20が向かい合った状態で、チップ10を保持している吸着トレイ150と実装基板20を保持している真空チャック160とを近づける。すると、チップ10の接合面11の接合部11aに形成された水の膜12と、実装基板20の表面の接合領域21aとが接触する。この時のチップ10の接合部11aと実装基板20の接合領域21aとの距離は、接合部11a上に形成されている水の膜12の高さに略等しく、例えば、500μmとすることができる。
【0217】
接触工程(ステップS77)を行う際に、解除工程(ステップS78)を行う。解除工程(ステップS78)では、吸着トレイ150と真空チャック160との距離が、チップ10の接合面11の親水化処理されている領域(接合部)11aと実装基板20の親水化処理されている領域(接合領域)21aとが水の膜12を介して接触するときの距離と略等しくなるときに、吸着トレイ150によるチップ10の保持を解除する。図21B(h)は、解除工程(ステップS78)におけるチップ及び実装基板の状態を示す。
【0218】
図21B(g)に示したように、チップ10の接合面11の接合部11aに形成された水の膜12と、実装基板20の表面の接合領域21aとが接触するのと略同時に、吸着トレイ150によるチップ10の保持を解除する。一方、実装基板20の表面の接合領域21aも親水化処理が施されているため、チップ10の接合面11の接合部11aに形成された水の膜12は、接合領域21a全体に濡れ広がっていく。そして、チップ10は、接合部11aが、水の膜12の水の表面張力によって接合領域21aに吸い寄せられるように移動する。その結果、各チップ10は、吸着トレイ150のチップ保持領域155を離脱して浮き上がり、対応する接合領域21aに水の膜12を介して吸着し、図21B(h)に示す状態になる。すなわち、水の膜12とチップ10との間、及び水の膜12と実装基板20との間に引力が働き、水の膜12を介してチップ10は実装基板20に吸着する。なお、この時、チップ10と接合領域21aとの間の位置合わせは、水の表面張力によって自己整合的に行われる。
【0219】
その後、減圧工程(ステップS79)及び加熱工程(ステップS80)を行う。減圧工程(ステップS79)及び加熱工程(ステップS80)のそれぞれは、第1の実施の形態における減圧工程(ステップS19)及び加熱工程(ステップS20)のそれぞれと同様にすることができる。
【0220】
また、本実施の形態でも、吸着トレイ150の内部空間157の圧力を検出する圧力検出器を設け、圧力検出器により圧力の変動を検出することによって、図10を用いて説明したメニスカスが形成されるときに、吸着トレイ150によるチップ10の保持を解除するようにしてもよい。また、予めメニスカスが形成されるときに発生する剥離力を圧力検出器により測定しておき、吸着トレイ150による吸着力が、剥離力よりも小さくなるように設定してもよい。
【0221】
本実施の形態では、チップ10及び実装基板20の上下関係が第1の実施の形態と逆になるため、吸着トレイ150の保持を解除することによって、吸着トレイ150に保持されていたチップ10が上方の実装基板20に吸着されて飛び上がることになる。しかし、位置合わせ精度を高くするために、接合領域21aと周辺領域21bとの親水性の差が重要であること、チップ10の接合面11が清浄化されていることが重要であることは、第1の実施の形態と同様である。また、位置合わせ精度を高くするために、接合部11aに塗布される液体の量に適切な条件があること、チップ10の保持を解除するときの実装基板20の高さに適切な条件があることは、第1の実施の形態と同様である。
【0222】
従って、本実施の形態でも、実装基板の接合領域と周辺領域との間で親水性の差を大きくし、実装されるチップの接合面をプラズマにより清浄化することによって位置合わせ精度を高くすることができる。また、実装基板が、接合領域とチップの接合部に塗布された水とが接触するときの高さと略等しい高さにあるときに、チップの保持を解除することによって、位置合わせ精度を高くすることができる。また、位置合わせ精度を高くすることができるとともに、接合領域から周辺領域に水が浸入することがない。従って、微細なチップを高密度で実装基板に実装するときも、確実に実装することができ、隣接するチップ間での短絡等を防止できる。
【0223】
なお、本実施の形態でも、チップの接合面をプラズマにより清浄化しない場合でも、実装基板が、接合領域とチップの接合部に塗布された水とが接触するときの高さと略等しい高さにあるときに、チップの保持を解除する場合には、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0224】
また、本実施の形態でも、実装基板が、接合領域とチップの接合部に塗布された水とが接触するときの高さと異なる高さにあるときに、チップの保持を解除する場合でも、チップの接合面をプラズマにより清浄化する場合には、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0225】
また、本実施の形態でも、チップの接合部に代え、実装基板の接合領域に水を塗布し、チップの吸着を解除することによって、実装基板の接合領域にチップを吸着してもよい。
【0226】
また、本実施の形態でも、チップの接合面の反対面が研削されない場合、又は、接合面がダイシングテープに接着されていない場合においても、位置合わせ精度を高くすることができる。
【0227】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0228】
10 チップ
11 接合面
11a 接合部(第1の領域)
20 実装基板
21a 接合領域(第2の領域)
104a 基板保持機構
150 吸着トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板を第2の基板に実装する実装方法において、
前記第1の基板の一の面を清浄化処理する清浄化処理工程と、
前記清浄化処理工程の後、前記第1の基板を保持している第1の基板保持部と、前記第2の基板を保持している第2の基板保持部との距離を近づけることによって、前記一の面であって親水化処理されている第1の領域と、前記第2の基板の表面であって親水化処理されている第2の領域とを、液体を介して接触させる接触工程と
を有する、実装方法。
【請求項2】
前記接触工程は、前記第1の基板保持部と前記第2の基板保持部との距離が、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記液体を介して接触するときの前記距離と略等しくなるときに、前記第1の基板保持部による前記第1の基板の保持を解除するものである、請求項1に記載の実装方法。
【請求項3】
前記清浄化処理工程における前記第1の基板は、前記一の面が粘着テープから剥離されたものである、請求項1又は請求項2に記載の実装方法。
【請求項4】
前記清浄化処理工程における前記第1の基板は、前記一の面を前記粘着テープに対向させた状態で、前記粘着テープと接着され、前記一の面と反対面が研削された後、前記一の面が前記粘着テープから剥離されたものである、請求項3に記載の実装方法。
【請求項5】
前記第1の領域を前記第1の基板保持部に対向させた状態で、前記第1の基板を前記第1の基板保持部により保持する第1の基板保持工程と、
前記第2の領域が前記第1の基板保持部に保持されている前記第1の基板に対向可能となるように、前記第2の基板を前記第2の基板保持部により保持する第2の基板保持工程と、
前記清浄化処理工程の後、前記接触工程の前に、前記第1の領域又は前記第2の領域に液体を塗布する塗布工程と
を有する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の実装方法。
【請求項6】
第1の基板を第2の基板に実装する実装方法において、
前記第1の基板を保持している第1の基板保持部と、前記第2の基板を保持している第2の基板保持部との距離を近づけることによって、前記第1の基板の一の面であって親水化処理されている第1の領域と、前記第2の基板の表面であって親水化処理されている第2の領域とを、液体を介して接触させ、
前記第1の基板保持部と前記第2の基板保持部との距離が、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記液体を介して接触するときの前記距離と略等しくなるときに、前記第1の基板保持部による前記第1の基板の保持を解除する接触工程を有する、実装方法。
【請求項7】
前記第1の領域を前記第1の基板保持部に対向させた状態で、前記第1の基板を前記第1の基板保持部により保持する第1の基板保持工程と、
前記第2の領域が前記第1の基板保持部に保持されている前記第1の基板に対向可能となるように、前記第2の基板を前記第2の基板保持部により保持する第2の基板保持工程と、
前記接触工程の前に、前記第1の領域又は前記第2の領域に液体を塗布する塗布工程と
を有する、請求項6に記載の実装方法。
【請求項8】
前記第1の基板保持部は、前記第1の基板を吸着する吸着部を有しており、
前記第1の基板保持工程は、前記第1の基板を、前記吸着部により吸着することによって保持するものであり、
前記塗布工程は、前記第2の領域に前記液体を塗布するものである、請求項5又は請求項7に記載の実装方法。
【請求項9】
前記第1の基板保持部は、前記第1の基板を吸着する吸着部を有しており、
前記第1の基板保持工程は、前記第1の基板を、前記吸着部により吸着することによって保持するものであり、
前記塗布工程は、前記第1の領域に前記液体を塗布するものである、請求項5又は請求項7に記載の実装方法。
【請求項10】
前記接触工程は、前記液体により前記第1の領域と前記第2の領域との位置合わせが行われるものである、請求項1から請求項9のいずれかに記載の実装方法。
【請求項11】
第1の基板を第2の基板に実装する実装装置において、
前記第1の基板の一の面を清浄化処理する清浄化処理部と、
前記第1の基板を保持する第1の基板保持部と、
前記第2の基板を保持する第2の基板保持部と、
前記第1の基板保持部及び前記第2の基板保持部の一方を変位可能とするように設けられ、前記第1の基板を保持している前記第1の基板保持部と、前記第2の基板を保持している前記第2の基板保持部との距離を近づけることによって、清浄化処理された前記一の面であって親水化処理されている第1の領域と、前記第2の基板の表面であって親水化処理されている第2の領域とを、液体を介して接触させる制御ステージと
を有する、実装装置。
【請求項12】
前記第1の基板保持部は、前記第1の基板保持部と前記第2の基板保持部との距離が、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記液体を介して接触するときの前記距離と略等しくなるときに、前記第1の基板の保持を解除するものである、請求項11に記載の実装装置。
【請求項13】
前記清浄化処理部は、前記一の面が粘着テープから剥離された前記第1の基板の前記一の面を清浄化処理するものである、請求項11又は請求項12に記載の実装装置。
【請求項14】
前記清浄化処理部は、前記一の面を前記粘着テープに対向させた状態で、前記粘着テープと接着され、前記一の面と反対面が研削された後、前記一の面が前記粘着テープから剥離された前記第1の基板の前記一の面を清浄化処理するものである、請求項13に記載の実装装置。
【請求項15】
前記清浄化処理部により清浄化処理された前記第1の領域又は前記第2の領域に液体を塗布する塗布部を有し、
前記第1の基板保持部は、前記第1の領域を前記第1の基板保持部に対向させた状態で、前記第1の基板を保持するものであり、
前記第2の基板保持部は、前記第2の領域が前記第1の基板保持部に保持されている前記第1の基板に対向可能となるように、前記第2の基板を保持するものである、請求項11から請求項14のいずれかに記載の実装装置。
【請求項16】
第1の基板を第2の基板に実装する実装装置において、
前記第1の基板を保持する第1の基板保持部と、
前記第2の基板を保持する第2の基板保持部と、
前記第1の基板保持部及び前記第2の基板保持部の一方を変位可能とするように設けられ、前記第1の基板を保持している前記第1の基板保持部と、前記第2の基板を保持している前記第2の基板保持部との距離を近づけることによって、前記第1の基板の一の面であって親水化処理されている第1の領域と、前記第2の基板の表面であって親水化処理されている第2の領域とを、液体を介して接触させる制御ステージと
を有し、
前記第1の基板保持部は、前記第1の基板保持部と前記第2の基板保持部との距離が、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記液体を介して接触するときの前記距離と略等しくなるときに、前記第1の基板の保持を解除するものである、実装装置。
【請求項17】
前記第1の領域又は前記第2の領域に液体を塗布する塗布部を有し、
前記第1の基板保持部は、前記第1の領域を前記第1の基板保持部に対向させた状態で、前記第1の基板を保持するものであり、
前記第2の基板保持部は、前記第2の領域が前記第1の基板保持部に保持されている前記第1の基板に対向可能となるように、前記第2の基板を保持するものである、請求項16に記載の実装装置。
【請求項18】
前記第1の基板保持部は、前記第1の基板を吸着する吸着部を有し、前記第1の基板を、前記吸着部により吸着することによって保持するものであり、
前記塗布部は、前記第2の領域に前記液体を塗布するものである、請求項15又は請求項17に記載の実装装置。
【請求項19】
前記第1の基板保持部は、前記第1の基板を吸着する吸着部を有し、前記第1の基板を、前記吸着部により吸着することによって保持するものであり、
前記塗布部は、前記第1の領域に前記液体を塗布するものである、請求項15又は請求項17に記載の実装装置。
【請求項20】
前記制御ステージは、前記液体により前記第1の領域と前記第2の領域との位置合わせを行うものである、請求項11から請求項19のいずれかに記載の実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【公開番号】特開2011−192663(P2011−192663A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54827(P2010−54827)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】