説明

室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物

【課題】高伸張性に優れ、かつ耐温水浸漬にも優れたポリオルガノシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】(A)特定の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物100重量部に対し、(B)硬化触媒 0.05〜15重量部、(C)長鎖アルキル基と加水分解性基を含有する環状ポリオルガノシロキサン0.05〜50重量部及び(D)一次粒子径0.1μm未満、BET比表面積15m/g以上、嵩密度230m/100g以上である表面処理した合成炭酸カルシウム1〜250重量部を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に関し、さらに詳しくは、湿気の存在しない密封条件下では安定であり、空気中の水分と接触することにより、室温で硬化してゴム状弾性体を生じるポリジオルガノシロキサン組成物に関する。特に本発明は、機械的強度を損なうことなく高伸張性に優れた室温硬化性ポリオルガノシロキサンに関する。
【背景技術】
【0002】
室温で硬化し、ゴム状弾性体を生成するポリオルガノシロキサン組成物の中で、空気中の水分と接触することにより硬化反応が生起するタイプのものは、使用直前に本体(ベースポリマー)や架橋剤、或いは触媒を秤量したり、これらを混合したりする煩雑さが無く、配合上のミスを生じることがない上、接着性に優れているので、電気・電子工業などにおける弾性接着剤やコーティング材として、また建築用シーリング材等として広く用いられている。このような組成物は、一般に、分子末端が水酸基で閉塞されたシラノール基末端ポリジオルガノシロキサンに、分子中に2個を越える加水分解性基を有する架橋剤等を配合したものであり、架橋剤の種類に応じて、硬化の際に酢酸等のカルボン酸、有機アミン、アミド、有機ヒドロキシルアミン、オキシム化合物、アルコール、アセトンなどを放出する。このうち、酢酸を放出するものは、接着性および硬化性は極めて優れているが、その刺激臭のために環境衛生上の配慮が必要であり、また被着体が金属のときは、金属を錆びさせるため、防錆対策が必要であるなどの問題がある。また、長鎖カルボン酸放出型は刺激臭の問題はないが、金属の発錆、特に浸水後の発錆を防ぐことが困難であった。同様に、脱アミン型は発生するアミンの臭気と毒性に問題があり、脱ヒドロキシルアミン型、脱オキシム型および脱アミド型は、金属に錆を生じさせやすいという問題があった。さらに脱アセトン型のものは、硬化が速く腐食性もないが、架橋剤の合成が難しく、また未硬化物の保存中の黄変が甚だしいという問題があった。
【0003】
これらに対して脱アルコール型のものは、架橋剤であるアルコキシシランが安価に入手できるばかりでなく、放出物質がメタノール、エタノールのようなアルコールなので揮散しやすく、臭気の問題がないという利点がある。しかし、その反面、硬化が遅いことおよび保存中に系中に存在する微量の水により架橋剤が加水分解して発生するアルコールがベースポリマーを切断するために保存安定性が悪いという難点があり、その克服が要望されていた。特に、接着剤、コーティング材などの目的で、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を硬化せしめてゴム状弾性体とすることが多く、現在、脱オキシム型、脱アセトン型、脱アルコール型のものが用いられてはいるが、夫々の有する上述のような難点の改善が望まれていた。
【0004】
一方、末端のケイ素原子にアルコキシ基の結合したポリオルガノシロキサン、アルコキシシラン、硬化触媒から成る1包装型の室温硬化性組成物が近時見出されている。これは末端が水酸基のポリオルガノシロキサンと比較し保存安定性が良好で硬化性も速いなどの特徴を有している。しかし、一般的に脱アルコール型のものは他の脱酢酸型、脱オキシム型のものと比較し、接着性が乏しく、保存安定性が劣るなどの問題を有している。しかし、このような速硬化性の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、接着剤、コーティング材として有用である。
【0005】
上述の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、夫々の硬化型での問題点を有し、現在までに種々の改善が施されているが、脱アミン型、脱ヒドロキシルアミン型および脱アミド型を除いては、本来、機械的強度は優れるものの、伸張性が低いという問題点を有している。
【0006】
本発明者らは、前述の従来技術の問題点を解決すべく、加水分解性基を有する環状ポリシロキサン化合物を配合することにより、機械的強度を損なうことなく、高伸張性に優れた組成物が得られることを見出した(特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2002−348476号公報
【特許文献2】特開2004−182942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、近年の高耐久性、とりわけ温水浸漬後の劣化に関する要求に応じることが困難となり、改良が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来技術の問題点を解決すべく検討した結果、長鎖アルキル基を含有し、かつ加水分解性基を有する環状ポリシロキサン化合物と特定の合成炭酸カルシウムを配合することにより、高伸張性に優れ、かつ耐温水浸漬にも優れた組成物が得られることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、
(A1)分子中にケイ素官能基として平均2個を越える数の加水分解性基を有するケイ素官能性ポリジオルガノシロキサン;および/または(A2)分子中に2個以上の水酸基もしくはケイ素官能基加水分解性基を有するケイ素官能性ポリジオルガノシロキサンおよび架橋剤を含む室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物において、該(A)100重量部に対し、
(B)硬化触媒 0.05〜15重量部
(C)長鎖アルキル基と加水分解性基を含有する環状ポリオルガノシロキサン0.05〜50重量部
(D)一次粒子径0.1μm未満、BET比表面積15m/g以上、嵩密度230m/100gである表面処理した合成炭酸カルシウム1〜250重量部
を配合したことを特徴とする室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって得られた室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、湿気の存在しない密封条件下では安定であり、空気中の水分と接触することにより、室温で硬化してゴム状弾性体を生じるポリオルガノシロキサン組成物に関し、特に本発明は、従来品より、優れた高伸張性を有し、耐浸水性を改善した室温硬化性ポリオルガノシロキサンを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、ベースポリマーとして用いられる(A)ケイ素官能性ポリジオルガノシロキサンは、上記のようなケイ素官能基を有する(A1)および/または(A2)である。(A1)成分は、それ自体が、(B)成分の触媒作用によって架橋反応を起こして硬化する。(A2)成分は架橋剤を組み合わせて用いることにより、(B)成分の触媒作用によって、(A2)成分と架橋剤とが架橋反応を起こして硬化する。いずれの場合も、反応は加水分解反応とそれに続く縮合反応であり、空気中の水分の存在で反応が進行する。
【0012】
本発明に用いられる(A)成分は、代表的には、下記の一般式:一般式(1)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R1はたがいに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し、R2 は−Z1 SiR3 3-p X1p を表し、Z1は酸素および/または2価の炭化水素基を表し、R3 は互いに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し、X1は水酸基もしくは加水分解性基を表し、pは1〜3の数であり;nは該(A)成分の25℃における粘度を20〜1,000,000cPにする数である。)で示される、実質的に直鎖状のポリオルガノシロキサンであり、その末端基R4は、ケイ素官能基Xを少なくとも1個有するケイ素官能性シロキシ単位である。すなわち、該(A)成分は、分子の両末端に、上記のケイ素官能性基Xをそれぞれ少なくとも1個有する。
【0015】
1は互いに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基である。R1としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルのようなアルキル基;ビニル、アリルのようなアルケニル基;フェニル、トリル、キシリルのようなアリール基;2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルのようなアラルキル基が例示され;さらにこれらの炭化水素基の水素原子の一部が他の原子または基で置換されたもの、すなわちクロロメチル、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピルのようなハロゲン化アルキル基;3−シアノプロピルのようなシアノアルキル基などの置換炭化水素基が例示される。これらのうち、合成が容易で、(A)成分が分子量の割に低い粘度を有し、硬化前の組成物に良好な押出し性を与えることと、硬化後の組成物に良好な物理的性質を与えることから、全有機基の85%以上がメチル基であることが好ましく、実質的にすべての有機基がメチル基であることが好ましい。一方、特に耐熱性、耐放射線性、耐寒性または透明性を付与する場合は、R1の一部として必要量のフェニル基を;耐油性、耐溶剤性を付与する場合は、R1の一部として3,3,3−トリフルオロプロピル基や3−シアノプロピル基を;また塗布適性を有する表面を付与する場合は、R1の一部として長鎖アルキル基やアラルキル基を、それぞれメチル基と併用するなど、目的に応じて任意に選択できる。
【0016】
末端基R2のケイ素原子に結合するR3はたがいに同一でも異なっていてもよく、またR1と同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基であり、R1と同様なものが例示される。合成が容易で、Xの反応性が優れていることから、メチル基またはビニル基が好ましい。また、Z1は、互いに同一でも異なっていてもよく、酸素原子;ならびにメチレン、エチレン、トリメチレンのようなアルキレン基;フェニレン基等の2価の炭化水素基が例示され、合成の容易なことから、酸素原子およびエチレン基が好ましく、酸素原子が特に好ましい。
【0017】
1は末端基R2 に少なくとも1個存在するケイ素官能基、すなわち加水分解性基であるアルコキシ基、ケトキシマト基およびアシロキシ基である。このようなXとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシのようなアルコキシ基;2−メトキシエチキシ、2−エトキシエトキシのような置換アルコキシ基;イソプロペノキシ基のようなエノキシ基、メチルエチルケトキシマト基のようなケトキシマト基、アセトキシのようなアシロキシ基などの加水分解性基が例示され、互いに同一でも異なっていてもよい。合成の容易さ、硬化前の組成物の物性、保存中の安定性、硬化性、経済性および広範囲の用途に用いられることから、アルコキシ基が好ましい。
【0018】
末端基R2におけるケイ素官能基X1の数pは、1〜3である。そのうち、架橋剤を配合する室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に用いる(A2)としては、合成が容易で、各種の架橋剤と組み合わせて用いられることから、X1が水酸基で、pが1のものが好ましい。このようなケイ素官能性ポリジオルガノシロキサンは、たとえば、オクタメチルシクロシロキサンのような環状ジオルガノシロキサン低量体を、水の存在下に酸性触媒またはアルカリ性触媒によって開環重合または開環共重合させることにより、得られた直鎖状ポリジオルガノシロキサンの末端に、ケイ素原子に結合する水酸基を導入することができる。
【0019】
1が加水分解性基のものは、たとえば、末端に水酸基を有するポリオルガノシロキサンに、2個以上の任意の加水分解性基を有するシランを縮合させることによって合成できる。この場合、該シランの加水分解性基はこの縮合反応によって1個が消費されるので、反応によって得られたポリオルガノシロキサンの末端基R2におけるX1の数pは、用いられた加水分解性基含有シランが有していたXの数よりも1個少ない。
【0020】
また、硬化前の組成物に適度の押出し性を付与するとともに、硬化後のゴム状弾性体に優れた機械的特性を与えるために、(A)成分のnは、該(A)の25℃における粘度が20〜1,000,000cPになるように選択される。該粘度が20cP未満では硬化後のゴム状弾性体の伸びが十分でなく、一方、1,000,000cPを越えると均一な組成物が得にくく、押出し作業性も低下する。特に好ましい粘度は、硬化前および硬化後の組成物に要求される性質を調和させることから、500〜200,000cPの範囲である。
【0021】
架橋剤を用いない室温硬化性ポリジオルガノシロキサン組成物においては、上記の(A)成分のうち、(A1)成分、すなわちX1が加水分解性基であり、pが平均1を超える数(すなわち、分子中に平均2を超える数のXを有する)のものをベースポリマーとして用いる場合には、(A)成分中の該Xが架橋手段となり、架橋剤がなくても架橋反応が進行し、硬化してゴム状弾性体を生ずる。この場合、好ましいXはメトキシのようなアルコキシ基;アセトキシのようなアシロキシ基;およびメチルエチルケトキシマト基である。このようなベースポリマーを用いることは、硬化前の組成物を安定化させるとともに、優れた硬化性を与えるために好ましい。
【0022】
架橋剤を用いる室温硬化性ポリジオルガノシロキサン組成物においては、(A)成分として、(A2)成分を、架橋剤と組み合わせて用いることにより、架橋構造を形成させる。(A2)成分としては、X1が水酸基であるか、pが1(すなわち、分子中に水酸基および/または上記と同様の加水分解性基である2個のXを有する)のものを用いることができる。
【0023】
架橋剤としては、水および硬化触媒の存在下に(A)成分中のケイ素官能性基Xと反応し、組成物を硬化させるためのケイ素官能性基を有するケイ素化合物および/またはその部分加水分解縮合物が用いられる。該架橋剤は、下記の一般式(2):
4 4-q SiYq (2)
(式中、R4はたがいに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し;Yは加水分解性基を表し;qは平均2を越え、4以下の数である)で示される。R4としては、(A)成分のケイ素原子に直接結合した有機基R1と同様な基を例示することができ、入手のしやすさと、優れた架橋反応速度が得られることから、メチル基またはビニル基が好ましい。また、加水分解反応性基Yとしては、(A)成分の末端基に存在するX1として挙げられたものと同様のものが例示される。
【0024】
このような架橋剤の例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシランおよびそれらの部分加水分解縮合物のようなアルコキシ基含有化合;テトラキス(2−エトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニル(2−エトキシエトキシ)シラン、フェニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランおよびそれらの部分加水分解縮合物のような置換アルコキシ基含有化合物;メチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン、ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルビニルジイソプロペノキシシランおよびそれらの部分加水分解縮合物のようなエノキシ基含有化合物;テトラ(メチルエチルケトキシマト)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン、メチルビニルビス(メチルエチルケトキシマト)シランおよびそれらの部分加水分解縮合物のようなケトキシマト基含有化合物、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランおよびそれらの部分加水分解縮合物のようなアシロキシ基含有化合物などが例示される。これらのうち、qが2であるシランは、qが3または4であるシランと併用される。
【0025】
これらのうち、合成が容易で、組成物の保存安定性を損なうことなく、しかも大きな架橋反応速度、硬化速度を与えることを考慮すると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリス(イソプロペノキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランおよびそれらの部分加水分解縮合物を用いることが好ましい。
【0026】
架橋剤の配合量は、(A2)成分100重量部に対して、通常、0.5〜25重量部であり、好ましくは2〜10重量部である。0.5重量部未満では架橋が十分に行われず、硬度の低い硬化物しか得られないばかりでなく、架橋剤を配合した組成物の保存安定性が悪い。一方、25重量部を越えて配合すると、保存中にその一部が系より分離し、硬化の際に著しい収縮を生じ、得られたゴム状弾性体の物性が低下する。
【0027】
なお、(A)成分として、前述の(A1)であるX1が加水分解性基で、pが平均1を越えるものを用いる場合は、前述のように、基本的には架橋剤がなしでも硬化が可能であるが、このような場合においても、組成物の硬化性と、硬化して得られるゴム状弾性体の機械的性質とをバランスよく具現するために、上記の架橋剤を併用することが好ましく、加水分解性基YがX1と同じである架橋剤を用いることがより好ましい。この場合の架橋剤の配合量は、(A1)成分100重量部に対して、通常、0.1〜25重量部であり、好ましくは0.3〜10重量部である。25重量部を越えて配合すると、先に述べたような現象を生ずる。
【0028】
本発明において、さきに具体例を列挙したような、R4として1価の炭化水素基を有するケイ素官能性化合物のほか、置換された1価の炭化水素基を有する、炭素官能性の同様な化合物を、架橋剤の一部または全部として用いてもよい。このようなR4 としては、置換もしくは非置換のアミノ基、エポキシ基、イソシアナト基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基またはハロゲン原子で置換されたアルキル基やフェニル基が例示され、このような置換アルキル基としては、置換メチル、3−置換プロピル、4−置換ブチルが例示されるが、合成が容易なことから、3−置換プロピル基が好ましい。
【0029】
このようなR4 を有する化合物としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリアセトアミドシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランのような置換または非置換のアミノ基含有シラン;3−グリシドキシトリメトキシシラン、3−グリシドキシメチルジメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シラン;3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシランのようなイソシアナト基含有シラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランのような(メタ)アクリロキシ基含有シラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シラン;および3−クロロプロピルトリメトキシシランのようなハロゲン原子含有シランが例示される。このような置換炭化水素基含有シランや前記のビニル基含有シランは、炭素官能性シランであって、これらを配合することにより、組成物が硬化する際の各種基材への接着性を向上させることができる。これらのうち、組成物の硬化性および接着性を向上させる効果や、その発現性の速いことから、置換または非置換のアミノアルキル基含有シランを用いることが好ましい。
【0030】
このような炭素官能性シランの配合量は、前記の架橋剤のうち、(A)成分100重量部に対して0.05〜25重量部が好ましく、0.1〜10重量部がさらに好ましい。0.05重量部未満では接着性の向上効果が少なく、またその発現性が遅い。また、25重量部を越えて配合すると、前記のような問題点のほか、保存安定性と作業性が悪くなり、また黄変現象を生じる。
【0031】
本発明においては、(A)成分であるケイ素官能性ポリジオルガノシロキサンの一部を、25℃における粘度が20〜1,000,000cPであり、分子鎖片末端が水酸基もしくは加水分解性基で封鎖され、もう一方の末端がトリアルキルシロキシ基で封鎖された下記一般式(3)のポリジオルガノシロキサン(A3)で置換することにより、さらに応力緩和に優れた組成物を得ることができ、動きの大きい目地等のジョイント部や温度による部材の伸縮が生じる部分に用いることに優れた組成物を得ることが可能となる。
(A3)成分を用いる場合、(A)成分と(A3)成分の比率の範囲(重量比)は、10:0.5〜1:2、好ましくは10:1〜2:3の範囲である。
【0032】
【化2】

【0033】
(式中、R5はたがいに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し、R6 は−Z2 SiR7 3-r X2r を表し、Z2は酸素および/または2価の炭化水素基を表し、R7 は互いに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し、X2は水酸基もしくは加水分解性基を表し、rは1〜3の数であり;mは該(A)成分の25℃における粘度を20〜1,000,000cPにする数である。)で示される、実質的に直鎖状のポリオルガノシロキサンであり、その末端基R6は、ケイ素官能基Xを少なくとも1個有するケイ素官能性シロキシ単位である。すなわち、該(A)成分は、分子の両末端に、上記のケイ素官能性基Xをそれぞれ少なくとも1個有する。
【0034】
5は、R1と同様なものが例示される。また、R6はR2、R7はR3と各々同様なものが例示される。また、X2 はX1と同様なものが例示される。
また、R6中のX2が加水分解性基である(A3)成分を得る際に、(A2)のX2が水酸基のものを用い、(A3)成分の水酸基を架橋剤で例示されたシラン化合物で封鎖中に(A2)成分を配合することが好ましい。これは(A3)成分の硬化を確実にし、応力緩和を十分発揮させるのに有効である。
【0035】
本発明の(B)成分の硬化触媒は、(A)成分自体の架橋手段として含有されるX1,2同士、および/または(A)成分のX1 ,2と架橋剤のYとを、水分の存在下に反応させて架橋構造を形成させ、ゴム状弾性体を得るための硬化触媒である。このような(B)成分としては、鉄オクトエート、マンガンオクトエート、亜鉛オクトエート、スズナフテート、スズカプリレート、スズオレートのようなカルボン酸金属塩;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレート、ジフェニルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、ジブチルスズジメトキサイド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジオクチルスズジラウレートのような有機スズ化合物;テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、1,3−プロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)のようなアルコキシチタン類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシがアルミニウムエチルアセトアセテート、トリエトキシアルミニウムなどの有機アルミニウム;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリブトキシジルコニウムアセチルアセトネート、トリブトキシジルコニウムステアレートなどの有機ジルコニウム化合物が例示される。中でも、微量の存在で大きな触媒能を持つことにより、有機錫化合物およびアルコキシチタン類が好ましい。
【0036】
(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部あたり0.05〜15重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。0.05重量部未満では、硬化触媒として十分に作用せず、硬化に長い時間がかかるばかりでなく、特に空気との接触面から遠いゴム層の深部における硬化が不十分となり、逆に15重量部を越える場合には、その配合量に見合う効果がなく、無意味であるばかりか、経済的に不利益である。
【0037】
本発明の(C)成分は、本発明の本幹を為すものである。本発明に用いられる(C)成分は、代表的には、下記の一般式:
一般式(4)
【0038】
【化3】

【0039】
(式中、R7はたがいに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し、R8は−Z3 SiR10 3-u X3u を表し、Z3は酸素および/または2価の炭化水素基を表し、R10はたがいに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し、X3は加水分解性基を表し、mは0以上の整数で、1は0より大きい数、m+1≧3で表される数である。R7はたがいに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基であり、(A)成分で例示されたものと同様のものを挙げることができる。R8は−Z3 SiR10 3-u X3uを表し、Z3は酸素および/または2価の炭化水素基を表し、R10はたがいに同一でも異なっていてもよく、またR7 と同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基であり、R1と同様なものが例示される。合成が容易で、X3の反応性が優れていることから、メチル基またはビニル基が好ましい。また、Z3は、互いに同一でも異なっていてもよく、酸素原子;ならびにメチレン、エチレン、トリメチレンのようなアルキレン基;フェニレン基等の2価の炭化水素基および2価の炭化水素基の間に窒素原子、硫黄原子もしくは酸素原子等を介する置換基が例示され、合成の容易なことから、エチレン基、プロピレン基が好ましく、および以下に示すような基が好ましい。
−CH2CH2Si(OCH33
−CH2CH2−S−CH2CH2CH2Si(OCH33
−CH2CH2C(O)OCH2CH2CH2Si(OCH33
−CH2CH(CH3)C(O)OCH2CH2CH2Si(OCH33
−CH2CH2CH2NH−CH2C(OH)O−CH2CH2CH2Si(OCH33
−CH2CH2SiCH3(OCH32
−CH2CH2−S−CH2CH2CH2SiCH3(OCH32
−CH2CH2C(O)OCH2CH2CH2SiCH3(OCH32
−CH2CH(CH3)C(O)OCH2CH2CH2SiCH3(OCH3
−CH2CH2CH2NH−CH2C(OH)O−CH2CH2CH2SiCH3(OCH32
【0040】
このような官能基は、珪素原子に直接水素原子が結合した環状ポリオルガノシロキサンに不飽和基含有化合物を白金等の貴金属触媒を用いて、付加反応することにより合成される。あるいは、不飽和基を含有する環状ポリオルガノシロキサンに、白金等の触媒を用い、ケイ素原子に直接水素原子が結合した化合物を付加反応するか、ラジカル発生剤や、光を照射させることにより、メルカプト基を付加させることにより合成される。応力緩和の点から、X3の数が2である
−CH2CH2SiCH3(OCH32
−CH2CH2−S−CH2CH2CH2Si(OCH33
−CH2CH2C(O)OCH2CH2CH2SiCH3(OCH32
−CH2CH(CH3)C(O)OCH2CH2CH2Si(OCH33
−CH2CH2CH2NH−CH2C(OH)O−CH2CH2CH2SiCH3(OCH32
のような基が好ましい。中でも、応力緩和を容易にするためには珪素原子1つに2個以下の加水分解性基が存在することが好ましい。また、1分子中に平均2個以上の加水分解性基を有することが好ましく、硬化性が良いことよりR7 は炭素数が少ないものが良く、メチル基、エチル基がより好ましい。また、合成の容易さおよび組成物中の化合物の安定性を鑑みた場合、
−CH2CH2Si(OCH33
−CH2CH2SiCH3(OCH32
がより好ましい。
【0041】
9は長鎖アルキル基を表し、炭素数が8以上の炭化水素基であり、耐浸水性の点から、炭素数は12以上がさらに好ましい。このような長鎖アルキル基としては、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、2−オクチルドデシル基、2−ドデシルヘキサデシル基等が例示される。このような長鎖アルキル基は、ケイ素に直接水素が結合した環状シロキサンとアルケンとをヒドロシリル化触媒存在下で反応させることにより有機ケイ素化合物が得られる。アルケンとしては、1−ノネン、1−トリデセン、1−ウンデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、アルファオレフィン、三菱化学株式会社製ダイアレン16、ダイアレン18、ダイアレン168、ダイアレン208、2−エチルへキセン、4−エチル−1−オクテン、3,5−ジメチル−1−ヘキセン、2−オクチル−1−ドデセンなどが例示される。反応温度は、先ほどと同様に、70〜100℃、好ましくは70〜90℃である。反応時間は1〜3時間でよい。
【0042】
この反応は、アルケニルアルコキシシランと併せて行っても差し支えない。その際は、所望する長鎖アルキル基およびアルコキシシリル基の量に合せて、添加量を決めればよい。
上記合成で使用されるヒドロシリル化触媒は、一方の原料化合物中の脂肪族不飽和基(アルケニル基、ジエン基等)と他方の原料化合物中のケイ素原子結合水素原子(即ち、SiH基)とを付加反応させる触媒である。該ヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金族の金属単体やその化合物などの白金族金属系触媒が挙げられる。白金族金属系触媒としては従来公知のものが使用でき、その具体例としては、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体上に吸着させた微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水塩のアルコール溶液、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられるが、白金族金属として白金を含むものが好ましい。ヒドロシリル化触媒は一種単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよい。ヒドロシリル化触媒の添加量は、上記付加反応を促進できる有効量であればよく、通常、白金族金属量に換算して原料化合物の合計に対して1ppm(質量基準。以下、同様)〜1質量%の範囲であり、好ましくは10〜500ppmの範囲である。該添加量がこの範囲内にあると、付加反応が十分に促進されやすく、また、該添加量の増加に応じて付加反応の速度が向上しやすいので、経済的にも有利となりやすい。
【0043】
環状ポリシロキサンを形成するケイ素原子に直接加水分解性基が結合した場合、硬化性および得られるゴムの機械的強度が低下するため好ましくない。また、環状体をシロキサン以外のもの、例えば炭素や窒素等で形成した場合、その化合物の組成物中での相溶性および原子間(結合間)距離等の影響による分子内でのフレキシビリティーの観点から充分な伸張性が得られない場合が有るため好ましくない。
【0044】
本発明では、(D)成分の無機質充填材として炭酸カルシウムを使用する。中でも、これらのバランスが良く、作業性および沈降分離等の貯蔵安定性を鑑みた場合に、有機酸表面処理炭酸カルシウムが好ましい。機械的強度および高伸張性を実現するためには、有機酸、とりわけ脂肪酸処理された合成炭酸カルシウムがさらに好ましい。
本発明では、さらにその中で、より高い強度および高伸張性を得るべく、一次粒子系が0.1μm未満であり、かつBET比表面積が15m/gで嵩密度230m/100g以上であるものがさらに好ましい。このいずれか1つでも満たさない場合には、十分な所望の強度、伸びが得にくいばかりか、耐久特性にも影響を及ぼす。
このような(D)成分の配合量は、(A)成分100重量部あたり1〜250重量部、好ましくは30〜150重量部の範囲である。1重量未満であると補強性の効果が低く、250重量部を越えると、吐出性やへら仕上げ等の作業性の低下を引き起こす。
【0045】
さらに本願発明においては、(E)成分として、アミノアルキルアルコキシシランとエポキシアルキルアルコキシシランの反応混合物を配合することが好ましい。このような(E)成分は、本発明組成物の架橋剤として作用し、また硬化途上で接触している各種基材に対する接着性を付与する働きをし、(C)成分と併用することにより本発明組成物の硬化物に温水浸漬などの苛酷な条件下での接着耐久性を付与する。このような(E)成分を構成するアミノアルキルアルコキシシランとしては、アミノメチルトリエトキシシラン,γ-アミノプロピルトリエトキシシラン,γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン,N-(アミノエチル)アミノメチルトリブトキシシラン,N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン,N-(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン,γ-アニリノプロピルトリエトキシシランが例示される。また、エポキシアルキルオルガノアルコキシシランとしては、γ-グリシドキシプロリルトリメトキシシラン,γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン,β-(4,3-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン,β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランが例示される。これらアミノアルキルアルコキシシランとエポキシアルキルアルコキシシランとをモル比で(1:1)〜(1:5)好ましくは(1:1.5)〜(1:3)の範囲で混合し、室温保管または加温することにより容易に反応混合物が得られる。また、硬化触媒にチタン系、ジルコニウム系、アルミニウム系化合物を用いる場合には、硬化触媒への影響を鑑みて特にエポキシアルキルアルコキシシランの割合が高いことが望ましい。アミノアルキルアルコキシシランの割合が高い場合には、組成物の貯蔵安定性の低下を引き起こす可能性があるためである。このような(E)成分の添加量は、(A)成分100重量部に対して0.1〜20重量部であり、好ましくは0.5〜10重量部である。これは(E)成分が少なすぎると十分なゴム強度や接着性が得られず、多すぎると硬化速度が遅くなったり、硬化後のゴムが固くなりすぎたりするためである。
【0046】
本発明の組成物に、硬化前に適度の流動性を与え、硬化して得られるゴム状弾性体に、例えばシーリング材、接着剤、現場成形ガスケットなどとして用いる場合に要求される高い機械的強度を付与するために、この種の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に通常用いられている充填材として、無機質充填剤に煙霧質シリカ、焼成シリカ、沈殿シリカ、煙霧質酸化チタン、およびこれらの表面をオルガノクロロシラン類、ポリオルガノシロキサン類、ヘキサメチルジシラザンなどで疎水化したもの、ならびにけいそう土、粉砕シリカ、アルミノケイ酸、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄のような非補強性充填剤が例示され、酸化して得られるゴム状弾性体に必要な物性に応じて選択される。例えば、透明性が要求される場合には、煙霧質シリカを用いることが好ましく、建築用シーリング材として、特に低いモジュラスを有することが要求される場合には、これらのうち非補強性充填剤を用いることが好ましい。上記の補強性充填剤の量が少なすぎると、機械的特性の向上の効果がほとんど現れず、逆に多すぎる場合には、モジュラスが大きくなり、破断時の伸びが小さくなる。従って、これらの充填剤の添加量は、(A)100重量部に対して1〜200重量部の範囲が好ましく、5〜100重量部がより好ましい。
【0047】
さらに、本発明の組成物には、目的に応じて、顔料、チクソトロピー性付与剤、押し出し作業性を改良するための粘度調整剤、紫外線吸収剤、防かび剤、耐熱向上剤、難燃化剤など、各種の添加剤を加えても良い。
【0048】
本発明の組成物は、以上の全ての成分および必要に応じて各種添加剤を、湿気を遮断した状態で混合することにより得られる。得られた組成物は、密閉容器中でそのまま保存し、使用時に空気中の水分に曝すことによってはじめて硬化する、いわゆる1包装型室温硬化性組成物として使用することができる。また、本発明の組成物を、例えば架橋剤と硬化触媒を分けた組成物として調製し、適宜2〜3個の別々の容器に分けて保存し、使用時にこれらを混合する、いわゆる多包装型室温硬化性組成物として使用することもできる。
多成分系において、よく用いられる形としては、1つの成分に(A)成分に2個以上の水酸基を有するものを用い、別の成分に(B)成分、(C)成分および/または架橋剤を配合したものを用いる形がある。このようなものは硬化性に優れ、製造上も容易であるため広く用いられる形である。また、適宜充填材を各々に配合しても差し支えない。
【実施例】
【0049】
以下において実施例をあげ、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部とあるのはいずれも重量部を表し、粘度などの物性値はすべて23℃、相対湿度50%での値を示す。
【0050】
以下の実施例および比較例において1成分系組成物を調製し、密封して保存した組成物について、次のような評価を行った。
【0051】
(a)指触乾燥時間:組成物を23℃、50%RHの雰囲気中に押し出して、指で表面に接触して乾燥状態にあることを確認するに至る時間を測定した。
【0052】
(b)物理的特性:組成物を厚さ2mmのシート状に押し出し、23℃、50%RHで168時間放置し、空気中の湿気により硬化させて、その物理的性質をJIS K 6301により測定した。
【0053】
(c)保存安定性:湿気を遮断した容器に組成物を入れて、70℃にて5日間加熱した後、指触乾燥時間を23℃、50%RHの雰囲気下で測定した。また、厚さ2mmのシート状に押し出し、23℃、50%RHで168時間放置し、空気中の湿気により硬化させて、その物理的性質をJIS K 6301により測定した。
【0054】
また、多成分系の例として、以下の実施例および比較例において、次のような評価を行った。
【0055】
(d)物理特性:JIS A 5758建築用シーラントに規定する測定方法に従って測定した。被着体としては、JIS H 4000(A5052P)に規定されている硫酸アルマイト封孔処理アルミテストパネル(株式会社エンジニアリングテストピースサービス製)を使用した。
(e)押し出し力:実際に市販されている333mlのカートリッジを用い、ノズルの先端を内径6.2mmに調整したものを装着し、カートリッジの底部のプランジャーを押し出す力をオートグラフにより測定した。
【0056】
また、(C)成分の加水分解性基を含有する環状ポリオルガノシロキサンとして以下の環状オルガノシロキサンA〜Eを使用した。また、比較のため環状オルガノシロキサンF、Gを使用した
【0057】
【化4】

【0058】
【化5】

【0059】
実施例1
粘度20,000mPasのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン70部に、BET比表面積17m/g、一次粒子径0.08μm、嵩密度が250m/100gであるステアリン酸表面処理合成炭酸カルシウム:白艶華CCR−S(白石工業株式会社製)120部を添加し均一に混合した。次に、粘度3000mPasの片末端メチルジメトキシシロキシポリジメチルシロキサン30部、粘度100mPasのα,ω−ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサン25部を加え均一に混合した。次いで、メチルトリメトキシシラン2.0部、N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン2.5部、3−アミノプロピルトリメトキシシラン2.0部、環状オルガノシロキサンA2.5部およびジオクチルスズジラウレート0.5部を加え、湿気遮断下にて均一に混合し組成物1を得た。
【0060】
実施例2〜4
使用する成分の種類・配合量を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にして組成物2〜4を得た。
【0061】
比較例1〜8
使用する成分の種類・配合量を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にして比較組成物1〜8を得た。
【0062】
これらの得られた組成物について、指触乾燥時間、物理的性質、保存安定性、比重、H形物性について評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
実施例5
粘度が18,000mPasの分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン70部と、粘度が3,000mPasである分子鎖片末端が水酸基で封鎖され、もう一方の片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン30部の混合物、ステアリン酸処理炭酸カルシウム微粉末[白石工業株式会社製、商品名白艶華CCR−S]100部を均一に混合した後、環状オルガノシロキサンB3.4部、ノルマルプロピルオルソシリケート1.0部、3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.7部およびジブチル錫オキサイド(ジオクチルフタレート50%溶液)0.02部を加え、均一に混合して組成物5を調製した。得られた組成物5からJIS A 5758に規定するH型試験体を作成し、50%モジュラス、伸び、最大引張応力を測定し、JIS A 5758耐久性試験9030を実施した。また、50℃にて14日間浸水した後、50%モジュラス、伸び、最大引張応力を測定した。これらの測定結果は表2に示すとおりであった。
【0064】
実施例6〜9
使用する成分の種類・配合量を表2に示すように変えた以外は実施例5と同様にして組成物6〜9を得た。
【0065】
比較例9〜14
使用する成分の種類・配合量を表2に示すように変えた以外は実施例5と同様にして比較組成物9〜14を得た。
これらの測定結果は表2に示すとおりであった。
炭酸カルシウムは以下のものを使用した。
実施例1−2、5−6、比較例1−2、4、9、11−12
ステアリン酸処理炭酸カルシウム微粉末[商品名白艶華CCR−S:白石工業株式会社製]
実施例3−4、比較例3、5
脂肪酸エステル処理炭酸カルシウム微粉末[商品名シーレッツ700:丸尾カルシウム株式会社製]
比較例6−8
ステアリン酸処理炭酸カルシウム微粉末[商品名PLS−515:神島化学工業株式会社製]
実施例7、比較例10
ステアリン酸処理炭酸カルシウム微粉末[商品名カルファイン500:丸尾カルシウム株式会社製]
比較例13−14
無処理重質炭酸カルシウム微粉末[商品名スーパーSS:丸尾カルシウム株式会社製]
実施例8
ロジン酸処理重質炭酸カルシウム微粉末[商品名マイクロパウダー2R:丸尾カルシウム株式会社製]
実施例9
ジエチレングリコール脱水処理重質炭酸カルシウム微粉末[商品名ESD:三共製粉株式会社製]
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)分子中にケイ素官能基として平均2個を越える数の加水分解性基を有するケイ素官能性ポリジオルガノシロキサン;および/または(A2)分子中に2個以上の水酸基もしくはケイ素官能基加水分解性基を有するケイ素官能性ポリジオルガノシロキサンおよび架橋剤を含む室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物において、該(A)100重量部に対し、
(B)硬化触媒 0.05〜15重量部
(C)長鎖アルキル基と加水分解性基を含有する環状ポリオルガノシロキサン0.05〜50重量部
(D)一次粒子径0.1μm未満、BET比表面積15m/g以上、嵩密度230m/100g以上である表面処理した合成炭酸カルシウム1〜250重量部
を配合したことを特徴とする室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項2】
架橋剤の少なくとも一部として炭素官能性シランを、分子中に2個以上の加水分解性基を有するケイ素官能性ポリジオルガノシロキサン100重量部に対し0.05〜25重量部含む請求項1記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項3】
(A)成分であるケイ素官能性ポリジオルガノシロキサンの一部を、25℃における粘度が20〜1,000,000cPであり、分子鎖片末端が水酸基もしくは加水分解性基で封鎖され、もう一方の末端がトリアルキルシロキシ基で封鎖されたポリジオルガノシロキサン(A3)で置換した請求項1又は2記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項4】
(A)成分と(A3)成分の比率の範囲(重量比)が、10:0.5〜1:2の範囲である請求項3記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項5】
更に(E)成分として、アミノアルキルアルコキシシランとエポキシアルキルアルコキシシランの反応混合物0.1〜20重量部を配合する請求項1乃至4の何れか1項記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項6】
(C)成分が、加水分解性基の数が1つのケイ素に2個以下である環状ポリオルガノシロキサンおよび/またはその部分加水分解物である請求項1乃至5の何れか1項記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。

【公開番号】特開2010−143993(P2010−143993A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320760(P2008−320760)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】