説明

容量可変型圧縮機の制御弁

【課題】容量可変型圧縮機が吐出容量を大容量とする制御がなされ、かつ潤滑不足が発生した状態において、給気通路を強制的に開弁して吐出容量を下げる方向へ自律的に制御し、容量可変型圧縮機の温度上昇を防止することができる容量可変型圧縮機の制御弁を提供する。
【解決手段】流量制御弁CV1のバルブハウジング50内に区画された弁室53には、該弁室53内に設けられた弁座58に接離することで給気通路38を開閉する弁体部57が設けられている。さらに、流量制御弁CV1において、可動鉄心71と固定鉄心69との間には弁体付勢板74が配設されている。弁体付勢板74は、所定温度に達すると自身の変形によって可動鉄心71を介して弁体部57を弁座58から離間する方向へ強制的に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量可変型圧縮機の吐出圧領域とクランク室とを繋ぐ給気通路の開度を調節することで吐出容量を変更可能とする制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用空調装置の冷媒循環回路に用いられる容量可変型斜板式圧縮機(以下圧縮機とする)は、斜板収容室であるクランク室の圧力を調節することで、斜板の傾斜角度、すなわち吐出容量を変更可能な構成を有している。前記圧縮機には、クランク室の圧力調節のために制御弁が備えられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の制御弁は、冷媒循環回路に設定された二つの圧力監視点間の圧力差に感応する可動壁及び作動ロッドを備え、ソレノイド部からの電磁力によって決定される二点間差圧の目標値を維持するように、作動ロッドの弁体部により給気通路の開度を自律調節する。また、特許文献1の制御弁は、空調対象となる室内の温度と相関性のある温度を検出する温度検出手段を備える。そして、エアコンスイッチがオフからオンに切り換えられてから所定時間が経過するまでの冷房初期には、設定差圧が検出温度情報に応じて変更されることを許容し、必要な時には冷媒循環回路に大流量の冷媒を流すことができるようになっている。
【0003】
そして、制御弁により給気通路の開度を調節することで、給気通路を介した高圧領域からクランク室への高圧冷媒ガスの導入量が制御され、クランク室の圧力が決定される。クランク室の圧力変更に応じて斜板の傾斜角度が変更される結果、ピストンのストロークすなわち圧縮機の吐出容量が調節される。
【特許文献1】特開2001−221164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、冷媒循環回路での冷媒ガス洩れにより、冷媒循環回路の冷媒流量が減少する不具合が発生すると、制御弁においては、吐出容量を大容量とする状態で圧縮機を運転させる制御がなされることがある。すなわち、制御弁において、弁体部によって給気通路を遮断させ、クランク室の圧力を低下させる制御がなされる。また、冷媒ガス洩れにより、冷媒循環回路でのガス不足が発生すると、冷媒ガスに含まれる潤滑油の圧縮機への戻り量が減少し、圧縮機にて潤滑不足が発生する。すると、圧縮機においては、圧縮機内部の摺動発熱により、圧縮機の温度が上昇し、耐久性の低下を引き起こす虞がある。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、容量可変型圧縮機が吐出容量を大容量とする制御がなされ、かつ潤滑不足が発生した状態において、給気通路を強制的に開弁して吐出容量を下げる方向へ自律的に制御し、容量可変型圧縮機の温度上昇を防止することができる容量可変型圧縮機の制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、空調装置の冷媒循環回路を構成し、カムプレートを収容するクランク室の圧力を制御することで吐出容量を変更可能な容量可変型圧縮機に用いられ、該容量可変型圧縮機の吐出圧領域とクランク室とを繋ぐ給気通路の開度を調節することで前記吐出容量を変更可能とする制御弁であって、前記給気通路の一部を構成すべくバルブハウジング内に区画された弁室には、該弁室内に設けられた弁座に接離することで前記給気通路を開閉する弁体部が設けられるとともに、前記冷媒循環回路に設定された二つの圧力監視点間の圧力差に基づく力を前記弁体部に及ぼして前記弁室内での前記弁体部の位置決めに関与する差圧感圧部材を備え、さらに、所定温度に達すると自身の変形によって前記弁体部を前記弁座から離間する方向へ強制的に移動させる弁体部移動手段を前記クランク室の圧力領域に備えるものである。
【0007】
これによれば、冷媒循環回路で冷媒ガス洩れ等が発生し、冷媒循環回路の冷媒流量が減少すると、二つの圧力監視点間の圧力差が小さくなり、制御弁においては、差圧感圧部材によって弁体部が弁座に着座して給気通路が遮断され、吐出容量を大容量とさせる制御がなされる。すると、冷媒ガスに含まれる潤滑油の容量可変型圧縮機への戻り量も減少するため、容量可変型圧縮機内は潤滑不足になり運転状況は非常に厳しいものになる。このとき、容量可変型圧縮機の温度が所定温度に達すると弁体部移動手段が変形する。そして、弁体部移動手段の変形によって弁体部を弁座から離間する方向に移動させて給気通路を強制的に開弁させることができる。すると、高圧の冷媒ガスが吐出圧領域からクランク室に導入され、クランク室の圧力が上昇し、容量可変型圧縮機の吐出容量が大容量の状態から減少される。よって、容量可変型圧縮機が低負荷状態となり、容量可変型圧縮機内部における摺動発熱が抑えられて温度上昇が防止される。温度といった必ず容量可変型圧縮機に発生する情報と、温度の大きさによって変形する弁体部移動手段とを利用して制御弁を自律的に制御させることにより、例えば、他の制御弁を追加して、上記条件の際に強制開弁させる場合に比して容量可変型圧縮機の構成を簡素化することができるとともに体格を小型化することができる。
【0008】
また、制御弁は、前記弁体部に作動連結された可動鉄心、及び該可動鉄心が接離可能な固定鉄心を有し、外部からの通電制御により前記可動鉄心の電磁付勢力を変化させる電磁アクチュエータ部を備え、前記可動鉄心と前記固定鉄心との間に前記弁体部移動手段が配設され、該弁体部移動手段は前記可動鉄心を介して前記弁体部を移動させるものであってもよい。これによれば、電磁アクチュエータ部によって弁体部の位置が外部制御されていても、弁体部移動手段を用いて給気通路を強制的に開弁させ、吐出容量を減少させることができる。
【0009】
また、前記可動鉄心には、前記弁体部を一体に備えたバルブロッドの下端部が嵌入される嵌入部が形成されるとともに前記嵌入部及びバルブロッドの下端側より大径をなす挿通部が形成され、前記バルブロッドの下端側周面と、該下端側周面に対向する前記挿通部の周面との間の隙間には弁体部移動手段としてのコイルバネが配設され、該コイルバネの上端部が前記固定鉄心に当接支持されるとともに下端部が前記可動鉄心に当接支持されており、前記コイルバネは所定温度に達すると変形する形状記憶合金よりなり、該コイルバネの変形により前記バルブロッドの移動を介して前記弁体部を移動させてもよい。
【0010】
これによれば、コイルバネの伸張により、可動鉄心を固定鉄心から離間する方向、すなわち、弁体部が弁座から離間する方向へ移動させることができる。
また、前記弁室内には前記弁体部を前記弁座から離間させる方向へ付勢する付勢バネが配設されるとともに、該付勢バネは一端部が前記弁室の内面に当接支持されるとともに、他端部が前記弁体部を備えるバルブロッドに取着されたバネ受けに当接支持され、前記弁体部移動手段は、所定温度に達すると変形するバイメタルよりなる前記バネ受けによって形成され、該バネ受けの変形による前記付勢バネの移動を介して前記弁体部を移動させるものであってもよい。
【0011】
これによれば、バイメタルの急激に変化する特性(ジャンピング特性)を利用して、弁体部を弁座から急速に離間させることができる。
また、前記バイメタルよりなるバネ受けは環状に形成されていてもよい。これによれば、バイメタルが備えるジャンピング特性を確実に発揮させることができる。
【0012】
また、前記弁室内には前記弁体部を前記弁座から離間させる方向へ付勢する付勢バネが配設されるとともに、該付勢バネは一端部が前記弁室の内面に当接支持されるとともに、他端部が前記弁体部を備えるバルブロッドに取着されたバネ受けに当接支持され、前記弁体部移動手段は所定温度に達すると伸張する形状記憶合金よりなる前記付勢バネによって形成され、該付勢バネの伸張により前記弁体部を移動させるものであってもよい。
【0013】
これによれば、付勢バネは、弁体部を弁座に離間させる方向へ付勢するため、制御弁に装備される一つの部品である。そして、この付勢バネの材質を形状記憶合金に変更するだけで、容量可変型圧縮機の温度が所定温度を超えたときには、付勢バネの伸張により弁体部を弁座から離間する方向に移動させ、給気通路を強制的に開弁させることができ、結果としての容量可変型圧縮機の吐出容量を減少させることができる。したがって、製造コストを大きく膨らませることなく、本発明の課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容量可変型圧縮機が吐出容量を大容量とする制御がなされ、かつ潤滑不足が発生した状態において、給気通路を強制的に開弁して吐出容量を下げる方向へ自律的に制御し、容量可変型圧縮機の温度上昇を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の制御弁を、車両用空調装置の冷媒循環回路に用いられる容量可変型圧縮機が備える流量制御弁に具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。なお、以下の説明において容量可変型圧縮機の「前」及び「後」は、図1に示す矢印Y1の方向を前後方向とし、「上」及び「下」は、図1に示す矢印Y2の方向を上下方向とする。
【0016】
図1に示すように、容量可変型圧縮機(以下、単に圧縮機10と記載する)は、シリンダブロック11と、該シリンダブロック11の前端(一端)に接合固定されたフロントハウジング12と、シリンダブロック11の後端(他端)に弁・ポート形成体13を介して接合固定されたリヤハウジング14とから構成されている。そして、シリンダブロック11、フロントハウジング12及びリヤハウジング14が、圧縮機10のハウジングを構成している。ハウジング内においてシリンダブロック11とフロントハウジング12とで囲まれた領域には、クランク室15が区画形成されている。また、ハウジングには駆動軸16が回転可能に支持されているとともに、クランク室15内には前記駆動軸16が回転可能に配置されている。クランク室15において、駆動軸16上には、ラグプレート21が一体回転可能に固定されている。駆動軸16の圧縮機10外の端部たる前端部には、図示しない動力伝達機構を介して、車両の走行駆動源たるエンジン(内燃機関)Eが作動連結されている。
【0017】
クランク室15内には、カムプレートとしての斜板22が収容されている。斜板22は、駆動軸16にスライド移動可能でかつ傾動可能に支持されている。ヒンジ機構23は、ラグプレート21と斜板22との間に介在されている。したがって、斜板22は、ヒンジ機構23を介したラグプレート21との間でのヒンジ連結、及び駆動軸16の支持により、ラグプレート21及び駆動軸16と同期回転可能であるとともに、駆動軸16の軸方向へのスライド移動を伴いながら駆動軸16に対して傾動可能となっている。
【0018】
シリンダブロック11には、複数(図面には一つのみ示す)のシリンダボア11aが、駆動軸16を取り囲むようにして貫通形成されている。片頭型のピストン20は、各シリンダボア11a内に往復動可能に収容されている。シリンダボア11aの前後開口は、弁・ポート形成体13及びピストン20によって閉塞されるとともに、シリンダボア11a内にはピストン20の往復動に応じて容積変化する圧縮室28が区画されている。各ピストン20は、シュー29を介して斜板22の外周部に係留されている。したがって、駆動軸16の回転にともなう斜板22の回転運動が、シュー29を介してピストン20の往復直線運動に変換される。
【0019】
弁・ポート形成体13とリヤハウジング14との間には、中心域に位置する吸入室31と、吸入室31を取り囲む吐出室32とが区画形成されている。弁・ポート形成体13には各圧縮室28に対応して、吸入ポート33、及び吸入ポート33を開閉する吸入弁34、並びに、吐出ポート35、及び吐出ポート35を開閉する吐出弁36がそれぞれ形成されている。吸入室31の冷媒ガスは、各ピストン20の上死点位置から下死点位置側への移動により、吸入ポート33及び吸入弁34を介して圧縮室28へと吸入される。圧縮室28に吸入された冷媒ガスは、ピストン20の下死点位置から上死点位置側への移動により所定の圧力にまで圧縮された後、吐出ポート35及び吐出弁36を介して吐出室32へと吐出される。
【0020】
車両用空調装置の冷媒循環回路(冷凍サイクル)は、上述した圧縮機10と外部冷媒回路40とを備えている。外部冷媒回路40は例えば、ガスクーラ41、膨張弁42及び蒸発器43を備えている。外部冷媒回路40の下流域には、蒸発器43の出口と、吸入室31に連通する吸入通路26とを繋ぐ冷媒の流通管45が設けられている。外部冷媒回路40の上流域には、吐出室32に連通する吐出通路27とガスクーラ41の入口とを繋ぐ冷媒の流通管46が設けられている。圧縮機10は、外部冷媒回路40の下流域から吸入通路26を介して吸入室31へと導入された冷媒ガスを吸入して圧縮し、この圧縮した冷媒ガスを吐出室32へと吐出する。吐出通路27より下流、かつガスクーラ41よりも上流の外部冷媒回路40の途中には絞り27aが設けられている。
【0021】
冷媒循環回路において、蒸発器43の出口から圧縮機10の吸入室31までの領域は、冷媒循環回路の吸入圧領域(吸入圧Ps)として把握することができる。冷媒循環回路において圧縮機10の吐出室32からガスクーラ41の入口までの領域は、冷媒循環回路の吐出圧領域(吐出圧Pd)として把握することができる。この吐出圧領域において、特に、絞り27aよりも上流側(吐出室32側)の領域は高圧側吐出圧領域P1(PdH)として、また、絞り27aよりも下流側(ガスクーラ41側)の領域は低圧側吐出圧領域P2(PdL)として、それぞれ把握することができる。
【0022】
斜板22の傾斜角度(駆動軸16の軸線に対して直交する平面との間でなす角度)は、クランク室15の圧力(クランク圧Pc)の変更に応じて変更される。クランク圧Pcの制御は、圧縮機10に設けられた、排出通路37、給気通路38及び流量制御弁CV1によって行われる。排出通路37はクランク室15と冷媒循環回路の吸入圧領域(詳しくは吸入室31)とを連通している(繋いでいる)。また、給気通路38は、クランク室15と冷媒循環回路の吐出圧領域(詳しくは吐出室32)とを連通している(繋いでいる)。給気通路38の途中には、流量制御弁CV1が配設され、流量制御弁CV1は、給気通路38の開度を調節可能となっている。
【0023】
そして、流量制御弁CV1によって給気通路38を介したクランク室15への高圧な冷媒ガス(吐出ガス)の導入量が調節され、さらに、排出通路37を介したクランク室15からのガス導出量とのバランスが制御され、クランク圧Pcが決定される。このクランク圧Pcの変更に応じて、ピストン20を介してのクランク圧Pcと圧縮室28の圧力との差が変更され、斜板22の傾斜角度が変更される結果、ピストン20のストローク、すなわち圧縮機10の吐出容量が調節される。例えば、クランク圧Pcが低下すると斜板22の傾斜角度が増大し、圧縮機10の吐出容量が増大される。逆に、クランク圧Pcが上昇すると斜板22の傾斜角度が減少し、圧縮機10の吐出容量が減少される。
【0024】
次に、流量制御弁CV1について詳述する。
図2に示すように、流量制御弁CV1のバルブハウジング50は、上側(一側)のバルブボディ51と下側(他側)のアクチュエータハウジング52とからなっている。バルブボディ51内には、その軸方向に沿って下方側から順に、弁室53、この弁室53に連通する連通路54、連通路54に連通する挿入孔59、及び挿入孔59に連通する感圧室55が区画されている。弁室53及び連通路54内には、バルブロッド56がバルブハウジング50の軸方向(上下方向)に移動可能に配設されている。連通路54と感圧室55とは、挿入孔59内に挿入されたバルブロッド56の上端部(一端部)によって遮断されている。
【0025】
連通路54は、給気通路38の上流部を介して圧縮機10の吐出室32と連通され、弁室53は、給気通路38の下流部を介して圧縮機10のクランク室15と連通されている。よって、弁室53は、クランク室15の圧力と同圧の領域(クランク室15の圧力領域)となっている。そして、弁室53及び連通路54は給気通路38の一部を構成している。弁室53内には、バルブロッド56の中間部に形成された弁体部57が配置されている。バルブボディ51において、弁室53と連通路54との境界に位置する段差は、弁室53内に設けられた弁座58をなしている。よって、本実施形態において、連通路54は弁孔をなしている。
【0026】
そして、バルブロッド56が、連通路54(給気通路38)の開放状態から、弁体部57が弁座58に着座する位置へ移動(上動)すると、該弁体部57が弁座58に当接して連通路54(給気通路38)が遮断される(閉弁される)ようになっている。逆に、バルブロッド56が、弁体部57が弁座58から離間する位置へ移動(下動)すると、該弁体部57が弁座58から離間して連通路54(給気通路38)が開放される(開弁される)ようになっている。弁室53内には、付勢バネ60が配置されている。付勢バネ60は、上端部(一端部)が、弁室53の内面として、弁室53と連通路54との境界に位置する段差面53a(弁座58の外周側)に当接支持され、下端部(他端部)がバルブロッド56に取着されたバネ受け61に当接支持されている。そして、付勢バネ60は、弁体部57が弁座58から離間する方向(開弁方向)に向けてバルブロッド56を付勢する。
【0027】
感圧室55内には差圧感圧部材としてのベローズ62が収容配置されている。ベローズ62の上端部(一端部)はバルブハウジング50(バルブボディ51)の上端部に固定されている。ベローズ62の下端部(他端部)にはバルブロッド56の上端部が接合され、バルブロッド56はベローズ62に作動連結されるとともにベローズ62の伸縮動(上下動)に伴い上下動するようになっている。感圧室55内は、有底円筒状をなすベローズ62によって、該ベローズ62の内空間である第1圧力室63と、外空間である第2圧力室64とに区画されている。
【0028】
そして、第1圧力室63は、第1検圧通路65を介して、絞り27aよりも上流側(吐出室32側)に接続されている。すなわち、第1圧力室63は、冷媒循環回路の圧力監視点としての高圧側吐出圧領域P1と接続されている。また、第2圧力室64は第2検圧通路66を介して、絞り27aよりも下流側に接続されている。すなわち、第2圧力室64は冷媒循環回路の圧力監視点としての低圧側吐出圧領域P2と接続されている。
【0029】
そして、高圧側吐出圧領域P1と低圧側吐出圧領域P2に冷媒流が生じていれば、絞り27aよりも上流の高圧側吐出圧領域P1の圧力は、絞り27aより下流の低圧側吐出圧領域P2の圧力よりも大きくなり、二つの圧力監視点の間に圧力差が生じる。外部冷媒回路40における冷媒流量が増大すると、絞り27aの前後の圧力差が増大し、外部冷媒回路40における冷媒流量が減少すると、絞り27aの前後の圧力差が減少する。そして、絞り27aの前後の圧力差が増大すると、第1圧力室63と第2圧力室64の圧力差が増大し、絞り27aの前後の圧力差が減少すると、第1圧力室63と第2圧力室64の圧力差が減少する。そして、第1圧力室63と第2圧力室64間の圧力差は、ベローズ62を介してバルブロッド56を付勢する力となる。
【0030】
したがって、ベローズ62は、絞り27aの前後の圧力差に応じて下端部が変位されることで、この圧力差の変動をバルブロッド56(弁体部57)の位置決めに反映させる。なお、ベローズ62は、絞り27aの前後の圧力差の変動を打ち消す側に圧縮機10の吐出容量が変更されるように、弁体部57を動作させる。
【0031】
アクチュエータハウジング52には電磁アクチュエータ部67が設けられている。電磁アクチュエータ部67は、アクチュエータハウジング52内の中心部に有底円筒状の収容筒68を備えている。収容筒68において上方側の開口には、円柱状の固定鉄心69が嵌入固定されている。この固定鉄心69の嵌入により、収容筒68内の最下部にはプランジャ室70が区画されている。
【0032】
プランジャ室70内には、可動鉄心71が軸方向に移動可能に収容されている。固定鉄心69の中心には、固定鉄心69の軸方向に延びるガイド孔69aが貫通形成されるとともに、ガイド孔69aは弁室53とプランジャ室70とを連通している。このため、ガイド孔69a内及びプランジャ室70内の圧力は弁室53の圧力と同じとなり、ガイド孔69a内及びプランジャ室70内の圧力はクランク室15の圧力と同じである。よって、ガイド孔69a及びプランジャ室70はクランク室15の圧力領域となっている。ガイド孔69a内には、バルブロッド56の下端側が軸方向に移動可能に配置されている。バルブロッド56の下端部は、プランジャ室70内において可動鉄心71に嵌入固定されている。したがって、可動鉄心71とバルブロッド56とは常時一体となって移動(上下動)する。
【0033】
前記収容筒68の外周側には、固定鉄心69及び可動鉄心71を跨ぐ範囲にコイル72が巻回配置されている。このコイル72には、図示しないエアコンECUの指令に基づき電力が供給される。したがって、コイル72への電力供給量に応じた大きさの電磁付勢力(電磁力)が、可動鉄心71と固定鉄心69の間に発生し、この電磁付勢力は可動鉄心71を介してバルブロッド56(弁体部57)に伝達され、弁体部57を弁座58に着座する方向へ付勢する。
【0034】
上記構成の流量制御弁CV1においては、可動鉄心71を介して弁体部57に付与する電磁付勢力を外部からの電力供給量に応じて変更することで、ベローズ62による弁体部57の位置決め動作の基準となる、絞り27a前後の圧力差の制御目標(設定差圧)を変更可能である。すなわち、流量制御弁CV1は、コイル72への電力供給量によって決定された設定差圧を維持するように、圧力差の変動に応じて内部自律的にバルブロッド56(弁体部57)を位置決めする構成となっている。また、この設定差圧は、コイル72への電力供給量を調節することで外部から変更可能となっている。
【0035】
プランジャ室70内において、可動鉄心71の上端面と、固定鉄心69の下端面との間の隙間には、弁体部移動手段としての弁体付勢板74が配設されている。前述したように、プランジャ室70はクランク室15と同圧の圧力領域となっているため、プランジャ室70内に配設された弁体付勢板74はクランク室15と同圧の圧力領域に配設されている。なお、弁体付勢板74はバイメタルよりなり、熱膨張率が異なる2枚の金属板を貼り合わせてなるものであり、温度の変化によって曲がり方が変化する性質を有する。本実施形態の弁体付勢板74は、所定温度(例えば、150℃±5℃)で急激に曲げ変形する特性(ジャンピング特性)を有し、所定温度より低い温度(例えば、130℃±5℃)で原形状に急激に復帰するものである。なお、所定温度とは、圧縮機10の熱における安全性が担保される上限温度より若干低い温度であり、圧縮機10を保護するために設定される温度のことである。
【0036】
弁体付勢板74は円環状をなし、バルブロッド56の下端側の外周に装着されている。また、弁体付勢板74の厚みは、弁体部57が弁座58に着座するように可動鉄心71が固定鉄心69に向けて移動した状態で、可動鉄心71の上端面と固定鉄心69の下端面との間に形成される隙間とほぼ同じ厚みになっている。また、弁体付勢板74は、曲げ変形した場合、弁体付勢板74の外周縁側が可動鉄心71に向かうようになっている。さらに、弁体付勢板74の曲げ変形する力は、可動鉄心71を固定鉄心69に移動させる電磁付勢力(電磁力)より大きくなっている。
【0037】
さて、上記流量制御弁CV1を備えた圧縮機10において、冷媒循環回路からの冷媒ガスの漏れが発生し、冷媒循環回路から圧縮機10への冷媒ガスの戻り量が減少するとともに、冷媒ガスに含まれる潤滑油の圧縮機10への戻り量が減少する不具合が発生したとする。外部冷媒回路40における冷媒流量が減少すると、高圧側吐出圧領域P1の圧力と低圧側吐出圧領域P2の圧力との圧力差が小さくなる。すると、流量制御弁CV1において、感圧室55内のベローズ62が収縮し、ベローズ62の収縮に応じてバルブロッド56の弁体部57が弁座58に着座して連通路54が閉じる。連通路54が閉じると給気通路38が遮断され、流量制御弁CV1により圧縮機10の吐出容量を大容量とする制御がなされる。そして、圧縮機10の吐出容量を大容量とするため、圧縮機10が高負荷状態に陥り、圧縮機10の温度が上昇していくとともに流量制御弁CV1の温度も上昇していく。
【0038】
流量制御弁CV1の温度が上昇し、弁体付勢板74の温度も上昇していくと弁体付勢板74は徐々に曲げ変形していく。そして、弁体付勢板74の温度が所定温度に達すると、弁体付勢板74はジャンピング特性によって急激に曲げ変形する。すると、図3に示すように、曲げ変形した弁体付勢板74の外周縁によって可動鉄心71の上端面が押圧され、可動鉄心71は固定鉄心69から離間する方向へ移動(下動)する。その結果、流量制御弁CV1の自律的な制御により、バルブロッド56が、弁体部57が弁座58から離間する位置へ移動(下動)し、該弁体部57が弁座58から離間して連通路54(給気通路38)が強制的に開放される(開弁される)。すると、給気通路38を介して高圧の冷媒ガスが吐出室32からクランク室15に導入され、クランク圧Pcが上昇し、斜板22の傾斜角度が減少して圧縮機10の吐出容量が減少される。よって、吐出容量を減少させるため、圧縮機10が低負荷状態となり、圧縮機10の温度上昇が抑えられる。
【0039】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)クランク室15の圧力領域となるプランジャ室70(可動鉄心71と固定鉄心69との間)に、所定温度に達すると曲げ変形する弁体付勢板74を配設した。そして、弁体付勢板74の温度が所定温度に達すると、弁体付勢板74の曲げ変形により可動鉄心71を固定鉄心69から離れる方向へ移動させることができる。このため、可動鉄心71に作動連結された弁体部57を弁座58から離間させ、給気通路38を強制的に開弁させることができる。したがって、冷媒循環回路で冷媒ガスの洩れが発生し、吐出容量を大容量とするように流量制御弁CV1が制御され、かつ潤滑不足が発生しても、圧縮機10の温度を基に給気通路38を強制的に開弁させるように流量制御弁CV1を自律的に制御させて吐出容量を減少させることができる。その結果、圧縮機10内部の摺動発熱を抑え、圧縮機10の温度上昇を防止して、圧縮機10の温度上昇に伴う耐久性の低下を防ぐことができる。
【0040】
(2)流量制御弁CV1は、絞り27a前後の高圧側吐出圧領域P1と低圧側吐出圧領域P2の圧力差に応じて弁体部57を動作させるものである。そして、流量制御弁CV1は冷媒循環回路で冷媒ガス洩れが発生し、外部冷媒回路40の冷媒流量が減少すると吐出容量を増大させる方向に制御が働く。冷媒循環回路で冷媒ガス洩れが発生すると、冷媒ガスに含まれる潤滑油の圧縮機10への戻り量も減少するため、圧縮機10の運転状況は非常に厳しいものになる。したがって、弁体付勢板74を用いて流量制御弁CV1を強制的に開弁させ、圧縮機10の吐出容量を低下させる方策は、流量制御弁CV1に採用するのが特に好ましい。
【0041】
(3)弁体付勢板74は、円環状に形成され、バルブロッド56の外周に装着するための切り欠きが形成されていない。よって、切り欠きが形成された場合と異なり、弁体付勢板74にジャンピング特性を確実に発揮させることができる。その結果として、所定温度に達した弁体付勢板74の曲げ変形によって可動鉄心71を固定鉄心69から離れる方向へ急速に移動させ、弁体部57を弁座58から急速に離間させることができる。
【0042】
(4)圧縮機10が吐出容量を大容量とする方向に制御が働くときとは、冷媒循環回路の冷媒流量が減少したときであり、吸入圧領域(吸入室31)の吸入圧Psが低下したときである。よって、圧縮機10に、流量制御弁CV1とは別の制御弁を追加し、流量制御弁CV1によって圧縮機10の吐出容量を大容量とする方向に制御されても、追加した制御弁が吸入圧Psの低下を感知してクランク室15へ高圧の冷媒ガスを供給させて吐出容量を低下させることも可能である。しかし、制御弁を追加することは圧縮機10の体格を大型化することに繋がり、好ましくない。本実施形態では、流量制御弁CV1における可動鉄心71と固定鉄心69の間に弁体付勢板74を配設するだけで圧縮機10の吐出容量を低下させることができる。よって、制御弁を追加することなく、すなわち、圧縮機10の体格を大型化することなく、冷媒ガス不足及び潤滑不足の発生に伴う圧縮機10の温度上昇を防止することができる。
【0043】
(5)弁体付勢板74は、可動鉄心71と固定鉄心69の間に配設されている。弁体付勢板74の曲げ変形する力を、可動鉄心71を固定鉄心69に移動させる電磁付勢力(電磁力)より大きくすることにより、可動鉄心71(弁体部57)の位置が電磁アクチュエータ部67によって外部制御されていても、弁体付勢板74によって可動鉄心71を固定鉄心69から離間させ、弁体部57を弁座58から離間させることができる。
【0044】
なお、各実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図4(a)に示すように、実施形態の流量制御弁CV1において、クランク室15の圧力領域としての弁室53内に設けられた付勢バネ60を形状記憶合金製としてもよい。この付勢バネ60は、所定温度(例えば、150℃±5℃)で急激に伸張し、所定温度より低い温度(例えば、130℃±5℃)で原形状に復帰する特性を有し、この付勢バネ60を弁体部移動手段としてもよい。なお、この場合、弁体付勢板74は削除される。そして、このように構成すると、流量制御弁CV1の温度が上昇し、付勢バネ60の温度が所定温度に達すると、図5(b)に示すように、付勢バネ60は伸張し、バネ受け61を介してバルブロッド56を、弁体部57が弁座58から離間する方向へ移動(下動)させる。その結果、連通路54(給気通路38)が強制的に開弁され、圧縮機10の吐出容量を減少させることができる。
【0045】
付勢バネ60は、弁体部57を弁座58から離間させる方向へ付勢するため、流量制御弁CV1に装備される一部品である。そして、付勢バネ60の材質を形状記憶合金に変更するといった低コストを掛けるだけで、圧縮機10の温度が所定温度を超えたときには給気通路38を強制的に開弁させ、吐出容量を減少させることができる。
【0046】
○ 図5(a)に示すように、実施形態の流量制御弁CV1において、クランク室15の圧力領域としての弁室53に設けられて付勢バネ60の下端部(他端部)を支持するバネ受け61を、実施形態において弁体付勢板74を形成したバイメタルによって形成してもよい。この場合、バネ受け61は、バルブロッド56に形成された段差部56aによって内周部が支持されるとともに、内周部がバルブロッド56に取着されている。また、バネ受け61は、弁体部57が弁座58に着座した状態では、バネ受け61の外周部がバルブハウジング50の内周面に形成された当接段差部51aに当接するようになっている。そして、流量制御弁CV1の温度が上昇し、バネ受け61の温度が所定温度に達すると、図5(b)に示すように、バネ受け61は曲げ変形される。すると、バネ受け61の内周部はバルブロッド56に取着されているため、変形したバネ受け61によりバルブロッド56を、弁体部57が弁座58から離間する方向へ移動(下動)させる。その結果、連通路54(給気通路38)が強制的に開弁され、圧縮機10の吐出容量を減少させることができる。
【0047】
○ 図6に示すように、実施形態の流量制御弁CV1において、クランク室15の圧力領域としての弁室53において、付勢バネ60の外周側に、弁体部移動手段としての弁体付勢バネ98を増設してもよい。この弁体付勢バネ98は、形状記憶合金よりなり、所定温度(例えば、150℃±5℃)で急激に伸張する特性を有し、所定温度より低い温度(例えば、130℃±5℃)で原形状に復帰するものである。なお、この場合、弁体付勢板74は削除される。そして、このように構成すると、流量制御弁CV1の温度が上昇し、弁体付勢バネ98の温度が所定温度に達すると、弁体付勢バネ98は伸張し、バネ受け61を介してバルブロッド56を、弁体部57が弁座58から離間する方向へ移動(下動)させる。このとき、弁体付勢バネ98の伸張に、付勢バネ60の付勢力も加わり、弁体部57を弁座58から急速に離間させることができる。
【0048】
○ 図7に示すように、実施形態の流量制御弁CV1を以下のように変更してもよい。まず、流量制御弁CV1における弁体付勢板74を削除する。また可動鉄心71に、バルブロッド56の直径より大径をなす挿通部71aを形成するとともに、挿通部71aより小径をなす嵌入部71bを挿通部71aに連通するように形成する。すなわち、可動鉄心71には、バルブロッド56の下端部が嵌入される嵌入部71bが形成されるとともに嵌入部71b及びバルブロッド56の下端側より大径をなす挿通部71aが形成されている。また、可動鉄心71において、挿通部71aと嵌入部71bとの境界に段差71cが形成されている。
【0049】
そして、バルブロッド56の下端部を嵌入部71bに嵌入してバルブロッド56を可動鉄心71とを一体化するとともに、バルブロッド56の下端側周面と、この周面に対向する挿通部71aの周面との間に形成される環状の隙間にコイルバネ99を配設する。このコイルバネ99は形状記憶合金よりなり、上端部(一端部)が固定鉄心69の下端面に当接支持され、下端部(他端部)が段差71cに当接支持されている。すなわち、コイルバネ99は可動鉄心71と固定鉄心69との間に配設されている。コイルバネ99は、可動鉄心71を固定鉄心69から離間する方向に向けて付勢し、可動鉄心71に一体化されたバルブロッド56の弁体部57を弁座58から離間する方向(開弁方向)に向けて付勢する。
【0050】
そして、可動鉄心71を付勢するコイルバネ99は、所定温度に達すると伸張する特性を有する形状記憶合金であり、弁体部移動手段として機能する。このように構成すると、流量制御弁CV1の温度が上昇し、コイルバネ99の温度が所定温度に達すると、コイルバネ99は伸張し、可動鉄心71を固定鉄心69から離間する方向、すなわち、バルブロッド56を、弁体部57が弁座58から離間する方向へ移動(下動)させることができる。その結果、連通路54(給気通路38)が強制的に開弁され、圧縮機10の吐出容量を減少させることができる。
【0051】
○ 実施形態の制御弁は、車両用以外の空調装置に用いられる容量可変型圧縮機に設けられてもよい。
○ 容量可変型圧縮機は斜板式でなく、ワッブル式であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】流量制御弁を備えた容量可変型斜板式圧縮機を示す縦断面図。
【図2】流量制御弁を示す断面図。
【図3】弁体付勢板の変形により弁体部が弁座から離間した状態を示す断面図。
【図4】(a)は弁体部移動手段としての形状記憶合金製の付勢バネを示す図、(b)は付勢バネが伸張した状態を示す図。
【図5】(a)は弁体部移動手段としてのバイメタル製のバネ受けを示す図、(b)はバネ受けが曲げ変形した状態を示す図。
【図6】付勢バネの外周側に弁体部移動手段としての弁体付勢バネを設けたことを示す図。
【図7】可動鉄心と固定鉄心との間に弁体部移動手段としてのコイルバネを設けたことを示す図。
【符号の説明】
【0053】
CV1…制御弁としての流量制御弁、P1…圧力監視点としての高圧側吐出圧領域、P2…圧力監視点としての低圧側吐出圧領域、10…容量可変型圧縮機、15…クランク室、22…カムプレートとしての斜板、32…吐出圧領域としての吐出室、38…給気通路、50…バルブハウジング、53…弁室、53a…弁室の内面としての段差面、56…バルブロッド、57…弁体部、58…弁座、60…弁体部移動手段としての付勢バネ、61…弁体部移動手段としてのバネ受け、62…差圧感圧部材としてのベローズ、67…電磁アクチュエータ部、69…固定鉄心、71…可動鉄心、71a…挿通部、71b…嵌入部、74…弁体部移動手段としての弁体付勢板、99…弁体部移動手段としてのコイルバネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置の冷媒循環回路を構成し、カムプレートを収容するクランク室の圧力を制御することで吐出容量を変更可能な容量可変型圧縮機に用いられ、該容量可変型圧縮機の吐出圧領域とクランク室とを繋ぐ給気通路の開度を調節することで前記吐出容量を変更可能とする制御弁であって、
前記給気通路の一部を構成すべくバルブハウジング内に区画された弁室には、該弁室内に設けられた弁座に接離することで前記給気通路を開閉する弁体部が設けられるとともに、前記冷媒循環回路に設定された二つの圧力監視点間の圧力差に基づく力を前記弁体部に及ぼして前記弁室内での前記弁体部の位置決めに関与する差圧感圧部材を備え、
さらに、所定温度に達すると自身の変形によって前記弁体部を前記弁座から離間する方向へ強制的に移動させる弁体部移動手段を前記クランク室の圧力領域に備えることを特徴とする容量可変型圧縮機の制御弁。
【請求項2】
前記弁体部に作動連結された可動鉄心、及び該可動鉄心が接離可能な固定鉄心を有し、外部からの通電制御により前記可動鉄心の電磁付勢力を変化させる電磁アクチュエータ部を備え、前記可動鉄心と前記固定鉄心との間に前記弁体部移動手段が配設され、該弁体部移動手段は前記可動鉄心を介して前記弁体部を移動させる請求項1に記載の容量可変型圧縮機の制御弁。
【請求項3】
前記可動鉄心には、前記弁体部を一体に備えたバルブロッドの下端部が嵌入される嵌入部が形成されるとともに前記嵌入部及びバルブロッドの下端側より大径をなす挿通部が形成され、前記バルブロッドの下端側周面と、該下端側周面に対向する前記挿通部の周面との間の隙間には弁体部移動手段としてのコイルバネが配設され、該コイルバネの上端部が前記固定鉄心に当接支持されるとともに下端部が前記可動鉄心に当接支持されており、前記コイルバネは所定温度に達すると変形する形状記憶合金よりなり、該コイルバネの変形により前記バルブロッドの移動を介して前記弁体部を移動させる請求項2に記載の容量可変型圧縮機の制御弁。
【請求項4】
前記弁室内には前記弁体部を前記弁座から離間させる方向へ付勢する付勢バネが配設されるとともに、該付勢バネは一端部が前記弁室の内面に当接支持されるとともに、他端部が前記弁体部を備えるバルブロッドに取着されたバネ受けに当接支持され、前記弁体部移動手段は、所定温度に達すると変形するバイメタルよりなる前記バネ受けによって形成され、該バネ受けの変形による前記付勢バネの移動を介して前記弁体部を移動させる請求項1に記載の容量可変型圧縮機の制御弁。
【請求項5】
前記バイメタルよりなる前記バネ受けは環状に形成されている請求項4に記載の容量可変型圧縮機の制御弁。
【請求項6】
前記弁室内には前記弁体部を前記弁座から離間させる方向へ付勢する付勢バネが配設されるとともに、該付勢バネは一端部が前記弁室の内面に当接支持されるとともに、他端部が前記弁体部を備えるバルブロッドに取着されたバネ受けに当接支持され、前記弁体部移動手段は所定温度に達すると伸張する形状記憶合金よりなる前記付勢バネによって形成され、該付勢バネの伸張により前記弁体部を移動させる請求項1に記載の容量可変型圧縮機の制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−162134(P2009−162134A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1330(P2008−1330)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000101879)イーグル工業株式会社 (119)
【Fターム(参考)】