説明

密封装置および転がり軸受

【課題】アキシアルリップが摩耗したとしても、その密封性能が低下しにくい密封装置および転がり軸受を提供すること。
【解決手段】芯金部材50の径方向延在部61に固着されている弾性部材51の基部53の一部を、膨潤性を有する材料からなる膨潤部80で構成する。膨潤部80におけるアキシアルリップ55の密封側に、基部53の表面に露出する水浸入面88を形成する。膨潤部80のアキシアルリップ55の根本に軸方向に重なる部分の軸方向の長さを、膨潤部80の上記根本に径方向に間隔をおいて位置する部分の軸方向の長さよりも長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置に関する。本発明は、特に、軌道面を有する軌道部材が複数の筒部材のみからなる転がり軸受、車輪用転がり軸受、ウォータポンプ、または、転がり軸受を使用したモータに使用されれば好適な密封装置に関する。また、本発明は、転がり軸受および車輪用転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密封装置としては、特開2004−11732号公報(特許文献1)に記載されているものがある。
【0003】
この密封装置は、所謂パックシールであり、芯金部材と、芯金部材に固定された弾性部材と、断面L字状のスリンガとを備える。上記スリンガは、軸方向に延在する円筒部と、径方向に延在するフランジ部とからなる。
【0004】
上記弾性部材は、基部、アキシアルリップ、ラジアルリップ、および、グリースリップを有し、上記基部は、上記芯金部材に固着されている。上記アキシアルリップは、上記基部から延在して、上記フランジ部に摺動している。上記ラジアルリップは、上記基部から径方向の内方かつ軸方向のフランジ部側に延在して、スリンガの円筒部の円筒外周面に摺動している。また、上記グリースリップは、上記基部から径方向の内方かつ軸方向のフランジ部側とは反対側に延在して、スリンガの円筒部の円筒外周面に摺動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−11732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成のパックシールにおいて、次に示す現象により、アキシアルリップに摩耗が発生することがある。
【0007】
詳しくは、この密封装置が備えられた車両等が運転されて、密封装置で密封された密封空間の温度が上昇すると、その密封空間内の空気が密封装置を通過して外に排出されることがある。この場合、その後、上記車両等が停止して密封空間内の温度が下がった際に、上記密封空間内の圧力が外部の大気圧に対して負圧になるから、この負圧に起因して、上記アキシアルリップが径方向の内方に押圧される。そして、このことによって、アキシアルリップがフランジ部に押し付けられ、アキシアルリップがフランジ部に長い時間に亘って吸着することがある。そして、このアキシアルリップのフランジ部への吸着に起因して、アキシアルリップの先端が異常に摩耗することがある。また、走行環境により泥水などが密封装置に到達し、アキシアルリップに泥がかみ込むことで、アキシアルリップの先端を摩耗させることがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、アキシアルリップが摩耗したとしても、その密封性能が低下しにくい密封装置を提供することにある。
【0009】
また、本発明の課題は、そのような密封装置を備える転がり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の密封装置は、
円筒部と、この円筒部から上記円筒部の略径方向に延在する径方向延在部とを有する環状の芯金部材と、
上記芯金部材に固着された環状の弾性部材と
を備え、
上記弾性部材は、
上記径方向延在部に固着された基部と、
上記基部から延在して被摺動部に摺動する環状のリップ部と
を有し、
上記基部は、膨潤性を有する材料からなる一体かつ環状の膨潤部を有し、
上記膨潤部は、上記基部の上記リップ部との接合部よりも径方向の上記円筒部側に位置する部分から、上記接合部よりも径方向の上記円筒部側とは反対側に位置する部分まで径方向に延在すると共に、上記リップ部の密封側に上記基部の表面に露出する水浸入面を有し、
上記膨潤部の上記接合部に軸方向に重なる部分の軸方向の長さは、上記膨潤部の上記接合部に径方向に間隔をおいて位置する部分の軸方向の長さよりも長いことを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、リップ部の摩耗によって、泥水等の異物が上記リップ部を通過した場合、密封側に移動した上記異物の水分が、上記水浸入面を介して上記膨潤部内に浸入することになる。そして、上記膨潤部が、軸方向に膨れることにより、上記リップ部が軸方向に移動することになって、リップ部の軸方向の圧力が大きくなる。
【0012】
また、上記膨潤部の上記接合部に軸方向に重なる部分の軸方向の長さが、上記膨潤部の上記接合部に径方向に間隔をおいて位置する部分の軸方向の長さよりも長いから、上記膨潤部の上記接合部に軸方向に重なる部分の膨張の度合がとりわけ高くなって、このことにより、リップが、径方向の円筒部側とは反対側に傾斜することになる。
【0013】
したがって、リップ部が被摺動部に接触する際の接触角を、リップ部の非摩耗状態での値に近づけることができる。したがって、たとえ、リップ部の摩耗が進行したとしても、リップ部の軸方向の押圧力と、リップ部の被摺動部への接触角とが、殆ど変化することがないから、密封性能が優れた状態を維持することができる。
【0014】
また、本発明の転がり軸受は、
本発明の密封装置と、
上記芯金部材の上記円筒部が固定されると共に、軌道面を有する第1軌道部材と、
上記被摺動部を含むかまたは上記被摺動部が固定されると共に、軌道面を有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置された転動体と
を備えることを特徴としている。
【0015】
本発明によれば、密封装置の密封性能の劣化を抑制できて、転がり軸受の密封性を高くできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の密封装置によれば、リップ部が摩耗して、泥水等の異物がリップ部をすり抜けても、そのすり抜けた泥水等の異物の水分が、水浸入面を介して、膨潤部の内部に浸入することができて、上記膨潤部を膨張させることができる。
【0017】
また、上記膨潤部の接合部に軸方向に重なる部分の軸方向の長さが、上記膨潤部の接合部に径方向に間隔をおいて位置する部分の軸方向の長さよりも長いから、膨潤部を、リップ部の摩耗によって失われた部分を補償するように、膨張させることができる。
【0018】
したがって、時間の経過と共に、リップ部が摩耗したとしても、密封性能が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態である車輪用転がり軸受の軸方向の断面図である。
【図2A】リップ部が非摩耗状態である密封装置の軸方向の模式断面図である。
【図2B】リップ部が非摩耗状態である場合での、アキシアルリップの先端と、スリンガとの外部側の接触角を示す模式拡大断面図である。
【図2C】リップ部が非摩耗状態である場合において、アキシアルリップと、基部とが成す径方向の外方側の角度を示す模式拡大断面図である。
【図3A】リップ部が摩耗状態であって、膨潤部に水分が浸入していない状態での、密封装置の軸方向の模式断面図である。
【図3B】リップ部が摩耗状態であって、膨潤部に水分が浸入していない状態での、アキシアルリップの先端付近の模式拡大断面図である。
【図3C】リップ部が摩耗状態であって、膨潤部に水分が浸入していない状態において、アキシアルリップと、基部とが成す径方向の外方側の角度を示す模式拡大断面図である。
【図4A】アキシアルリップが摩耗状態であって、膨潤部に水分が浸入して、膨潤部が膨張している状態での、密封装置の軸方向の模式断面図である。
【図4B】アキシアルリップが摩耗状態であって、膨潤部に水分が浸入して、膨潤部が膨張している状態での、アキシアルリップの先端と、スリンガとの外部側の接触角を示す模式拡大断面図である。
【図4C】アキシアルリップが摩耗状態であって、膨潤部に水分が浸入して、膨潤部が膨張している状態において、アキシアルリップと、基部とが成す径方向の外方側の角度を示す模式拡大断面図である。
【図5A】リップ部が摩耗状態であって、膨潤部に水分が浸入して、膨潤部が膨張している状態での、比較例の密封装置の軸方向の模式断面図である。
【図5B】上記比較例の密封装置において、リップ部が摩耗状態であって、膨潤部に水分が浸入して、膨潤部が膨張している状態での、アキシアルリップの先端と、スリンガとの外部側の接触角を示す模式拡大断面図である。
【図5C】上記比較例の密封装置において、リップ部が摩耗状態であって、膨潤部に水分が浸入して、膨潤部が膨張している状態において、アキシアルリップと、基部とが成す径方向の外方側の角度を示す模式拡大断面図である。
【図6】第2実施形態のウォータポンプの密封装置の周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態である車輪用転がり軸受の軸方向の断面図である。
【0022】
この車輪用転がり軸受は、第1軌道部材としての外輪2と、第2軌道部材としての内軸3および内輪4と、複数の第1の玉5と、複数の第2の玉6と、第1密封装置8と、本発明の第1実施形態の第2密封装置9とを備える。上記第1の玉5および第2の玉6は、転動体を構成する。
【0023】
上記内軸3は、軸方向の一端部に、ブレーキディスク11を取り付けるための径方向に広がる円板状のブレーキディスク取付用フランジ10を有する。このブレーキディスク取付用フランジ10の略中心を中心とする同心円上には、複数のボルト貫通穴が形成されている。上記ブレーキディスク取付用フランジ10に、ブレーキディスク11を当接させ、さらに、ブレーキディスク11にホイール部材13を当接させた状態で、ホイール部材13のブレーキディスク11側とは反対側の端面と、ブレーキディスク取付用フランジ10との間を、複数のボルト15で固定している。
【0024】
上記内軸3の軸方向の他端部には、内輪4が外嵌されて固定されている。上記内軸3における、内輪4と、ブレーキディスク取付用フランジ10との間には、軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝16が形成されている。また、上記内輪4の外周面には、軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝17が形成されている。
【0025】
上記外輪2は、内軸3におけるブレーキディスク取付用フランジ10よりも上記他端部側に、内軸3に径方向に対向するように、配置されている。上記外輪2は、軸方向の上記他端部側に、径方向に広がる車体側取付用フランジ14を有する。この円板状の車体側取付用フランジ14には、車体側取付用フランジ14を車体側(ナックル)に取り付けるボルトを挿入するためのボルト貫通穴が複数形成されている。上記外輪2は、外輪2の内周面に軸方向に離間配置された第1軌道面としてのアンギュラ型の第1軌道溝26および第2軌道面としてのアンギュラ型の第2軌道溝27を有している。上記第1軌道溝26は、第2軌道溝27よりも上記一端部側に位置している。
【0026】
上記複数の第1の玉5は、内軸3の軌道溝16と外輪2の第1軌道溝26との間に、保持器18に保持された状態で、周方向に所定の間隔を隔てられて配置されている。また、上記複数の第2の玉6は、内輪4の軌道溝17と外輪2の第2軌道溝27との間に、保持器19に保持された状態で、周方向に所定の間隔を隔てられて配置されている。
【0027】
上記第1密封装置8は、内軸3と外輪2との間における、軸方向の上記一端部側(ブレーキディスク取付用フランジ10側)の開口付近に配置されている。上記第1密封装置8は、内軸3と外輪2との間における上記一端部側の開口を密封している。
【0028】
一方、上記第2密封装置9は、内輪4と外輪2との間における、軸方向の上記他端部側(車体取付用フランジ14側)の開口付近に配置されている。上記第2密封装置9は、内輪4と外輪2との間における上記他端部側の開口を密封している。
【0029】
図2は、上記リップ部が非摩耗状態である第2密封装置9の周辺の部分拡大断面図である。
【0030】
図2に示すように、上記第2密封装置(以下、単に密封装置という)9は、環状の芯金部材50と、環状の弾性部材51と、環状のスリンガ52とを備える。上記弾性部材51は、芯金部材50に固着されて、芯金部材50と一体になっている。
【0031】
上記芯金部材50は、断面L字状の形状を有している。上記芯金部材50は、円筒部60と、環状の径方向延在部61とからなる。上記円筒部60は、外輪2(図1参照)の内周面に内嵌されて固定されている。上記円筒部60は、略軸方向に延在している。一方、上記径方向延在部61は、円筒部60の軸方向の上記一端部側(図2の紙面における左側)から径方向の内方に延在している。
【0032】
上記スリンガ52は、断面L字状の形状を有している。上記スリンガ52は、円筒部65と、環状のフランジ部66とを有する。上記スリンガ52の円筒部65は、内輪4(図1参照)の外周面に外嵌されて固定されている。上記スリンガ52のフランジ部66は、被摺動部を構成している。
【0033】
上記スリンガ52の円筒部65は、略軸方向に延在する一方、フランジ部66は、円筒部65の外周面の軸方向の他端部側(図2の紙面における右側)から径方向の外方に延在している。上記フランジ部66は、芯金部材50の径方向延在部61よりも軸方向の外方に位置している。上記フランジ部66において径方向の内方の一部を除いた大部分は、上記芯金部材50の径方向延在部61に対して隙間を介して軸方向に対向している。
【0034】
上記弾性部材51は、基部53と、リップ部の一例としてのアキシアルリップ55と、第1ラジアルリップ56と、第2ラジアルリップ57とを有する。
【0035】
上記基部53は、一体かつ環状であって、芯金部材50の円筒部60の内周面全面と、円筒部60の内周面につながる径方向延在部61の軸方向の外方側の端面の全面とを覆うように、芯金部材50に固着される外方部分と、一体かつ環状であって、径方向延在部61の径方向の内方の端部とを覆うように、芯金部材50に固着される内方部分と、さらに、一体かつ環状であって、弾性部材51の外方部分と内方部分との間に配置され、芯金部材50の径方向延在部61の軸方向の内方側の端面の全面を覆うように、芯金部材50に固着されるとともに、弾性部材51の外方部分と内方部分とに一体に固着された膨潤部80と、を備える。
【0036】
上記アキシアルリップ55は、基部53の径方向延在部61に固着している外方部分から軸方向の外方かつ径方向の外方に延在している。上記アキシアルリップ55は、スリンガ52のフランジ部66に摺動している。
【0037】
上記第1ラジアルリップ56は、基部53において径方向延在部61の径方向の内方の端部に固着している内方部分から径方向の内方かつ軸方向のフランジ部66側に延在している。上記第1ラジアルリップ56は、スリンガ52の円筒部65の外周面に摺動するようになっている。
【0038】
また、上記第2ラジアルリップ57は、基部53において径方向延在部61の径方向の内方の端部に固着している内方部分から径方向の内方かつ軸方向のフランジ部66側とは反対側に延在している。上記第2ラジアルリップ57は、スリンガ52の円筒部65の外周面に摺動するようになっている。
【0039】
上記基部53は、膨潤部80を有する。上記膨潤部80は、水分が浸入すると膨張する性質を有している。上記膨潤部80は、一体かつ環状の部材である。上記膨潤部80は、基部53とアキシアルリップ55との接合部よりも径方向の芯金部材50の円筒部60側に位置する部分から、上記接合部よりも径方向のスリンガ52の円筒部65に位置する部分まで径方向に延在している。
【0040】
上記膨潤部80は、膨潤性を有する材料からなっている。例えば、上記膨潤部80は、ニトリルゴムと、吸収性のポリマー(ポリウレタン)とを混合した材料からなっている。また、例えば、上記膨潤部80の材料としては、ゴムまたは合成樹脂に高吸水性樹脂を混合したものや、高吸水性樹脂等を使用できる。高吸水性樹脂は、自重の約500倍程度の水を吸水保持するものであり、吸水に伴って体積が大きく膨張する。
【0041】
高吸水性樹脂としては、例えば、デンプンにアクリルニトリル、アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などをグラフト共重合したデンプン系高吸水性樹脂や、セルロース−アクリルニトリルグラフト共重合体、セルロース−スチレンスルホン酸グラフト共重合体、カルボキシメチルセルロースの架橋物などのセルロース系高吸水性樹脂がある。また、他の高吸水性樹脂としては、ポリビニルアルコールの架橋物、アクリル−酢酸ビニル共重合体ケン化物などのポリビニルアルコール系高吸水性樹脂や、ポリアクリル酸塩架橋物、ポリアクリルニトリル系重合体のケン化物、ポリエチレングリコールジアクリレート架橋物などのアクリル系高吸水性樹脂などがある。
【0042】
尚、上記膨潤部80の材料は、ゴム材料または合成樹脂に、上記高吸水性樹脂を混合したものが好ましい。混合により、成形性、形状保持性、機械的強度および弾力性が得られるからである。尚、上記膨潤部80の材料として、上記高吸水性樹脂を単独で使用しても良い。
【0043】
上記膨潤部80にゴム材を混合する場合、そのゴム材としては、例えば、天然ゴム、SBRなどの合成ゴム、ポリウレタン等を使用できる。また、上記膨潤部80に合成樹脂を混合する場合、その合成樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル旧重合体等を使用できる。
【0044】
上記弾性部材51の膨潤部80以外の部分の材料は、ゴム材からなる。ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムが好適に用いられることができる。
【0045】
図2Aに示すように、アキシアルリップ55、基部53、第1ラジアルリップ56およびスリンガ52は、密封室90を画定している。上記膨潤部80は、アキシアルリップ55の密封側のみに、基部53の表面に露出する水浸入面88を有している。言い換えると、上記膨潤部80は、密封室90の内壁の一部を構成して、密封室90に面する水浸入面88を有している。
【0046】
上記膨潤部80において径方向延在部61に軸方向に重なる部分の軸方向の厚みは、径方向延在部61から弾性部材51の表面までの厚みの70〜90%に設定されている。上記膨潤部80において、基部53とアキシアルリップ55の接合部、すなわち、アキシアルリップ55の根本に軸方向に重なる部分83の軸方向の長さは、膨潤部80の上記接合部に径方向に間隔をおいて位置する部分85の軸方向の長さよりも長くなっている。
【0047】
また、より詳しく、膨潤部80においてアキシアルリップ55の根本に軸方向に重なる部分83について詳述すると、その部分83の径方向の外方に位置する部分は、その部分83の径方向の内方に位置する部分よりも、軸方向の寸法が大きくなっている。上記部分83において径方向の外方に位置する部分の厚さは、径方向延在部61から弾性部材52の表面までの厚みの略90%に設定されている。一方、上記部分83において径方向の内方に位置する部分の厚さは、径方向延在部61から弾性部材52の表面までの厚みの略70%に設定されている。
【0048】
上記アキシアルリップ55と、第1ラジアルリップ56と、スリンガ52とで形成される空間や、第1ラジアルリップ56と、第2ラジアルリップ57と、スリンガ52とで囲まれた空間には、潤滑剤としてのグリースが適量封入または塗布されている。そして、上記グリースによって、アキシアルリップ55とスリンガ52との摺動部、第1ラジアルリップ56とスリンガ52との摺動部、および、第2ラジアルリップ57とスリンガ52との摺動部が、潤滑されるようになっている。また、図2Aにおいて、密封装置9より軸方向の内方側(図2Aにおいて左側)に位置する玉18、19が配置される玉配置室には、潤滑剤としてのグリースが封入されている。
【0049】
図2Bは、アキシアルリップ55が非摩耗状態である場合での、アキシアルリップ55の先端と、スリンガ52との外部側の接触角を示す模式図である。図2Bは、軸方向の模式拡大断面図である。尚、図2Bにおいて、参照番号70は、スリンガ52のフランジ部66(図2A参照)におけるアキシアルリップ55側の縁を示している。
【0050】
図2Bに示すように、上記アキシアルリップ55が非摩耗な状態な状態では、アキシアルリップ55の先端と、スリンガ52との外部側の接触角は、α[°]に設定されている。このα[°]は、密封性能を最も優れたものにできることが、事前に確かめられた角度である。一言で言うと、α[°]は、最適の接触角である。
【0051】
図2Cは、アキシアルリップ55が非摩耗状態である場合において、軸方向の断面において、アキシアルリップ55と、基部53とが成す径方向の外方側の角度を示す模式図である。
【0052】
図2Cに示すように、アキシアルリップ55が非摩耗状態である場合において、アキシアルリップ55と、基部53とは、径方向の外方側において、A[°]の角度をなしている。
【0053】
図3Aは、アキシアルリップ55が摩耗した状態の一例であって、膨潤部80に水分が浸入していない状態での、密封装置9の軸方向の模式断面図である。
【0054】
図3Aに示す状態において、アキシアルリップ55は、スリンガ52のフランジ部66に対して間隔をおいて位置している。尚、図3Aは、密封装置9の摩耗状態を誇張した図であり、アキシアルリップ55と、スリンガ52のフランジ部66との隙間は、誇張して描かれている。
【0055】
図3Bは、図3Aに示す状態での、アキシアルリップ55の先端付近の拡大模式断面図である。
【0056】
図3Bに示すように、図3Aに示す状態では、泥水や雨水等の水分を含んだ異物99が、アキシアルリップ55と、スリンガ52のフランジ部66との隙間から、矢印Xに示す方向にアキシアルリップ55を通過して、上記密封室90(図2A参照)に浸入することになる。
【0057】
図3Cは、図3Aに示す状態での、アキシアルリップ55と、基部53とが成す径方向の外方側の角度を示す模式拡大断面図である。
【0058】
図3Cに示すように、図3Aに示す状態では、アキシアルリップ55と、基部53とが成す径方向の外方側の角度が、B°になっている。この角度は、図2Cに示す角度A°よりも小さくなっている。これは、泥水等の異物99(図3B参照)によるアキシアルリップ55の撓みに起因するものである。
【0059】
図4Aは、アキシアルリップ55が摩耗状態であって、膨潤部80に水分が浸入して、膨潤部80が膨張している状態での、密封装置9の軸方向の模式断面図である。
【0060】
また、図5Aは、参考例の密封装置209の図4Aに対応する断面図である。
【0061】
密封装置209は、上記実施形態の密封装置9との比較において、膨潤部280の軸方向の厚さが、径方向の位置によらず略一定である点のみが異なる。
【0062】
上記実施形態の密封装置9は、図4Aに示すように、膨潤部80が膨張することによって、アキシアルリップ55が、スリンガ52のフランジ部66に接触している。
【0063】
また、参考例の密封装置209も、図5Aに示すように、膨潤部280が膨張することによって、アキシアルリップ255が、スリンガ252のフランジ部266に接触している。
【0064】
図4Bは、図4Aのアキシアルリップ55の先端部付近の模式拡大断面図である。また、図5Bは、図5Aのアキシアルリップ255の先端部付近の模式拡大断面図である。尚、図5Bにおいて、参照番号270は、軸方向の断面において、スリンガ252のフランジ部266(図5A参照)のアキシアルリップ255側の縁を示している。
【0065】
図4Bに示すように、上記膨潤部80が膨張した場合では、アキシアルリップ55の先端と、スリンガ52との外部側の接触角は、図2Bに示す場合と同様に、最適角であるα[°]になっている。
【0066】
一方、図5Bに示すように、参考例の密封装置209の場合は、膨潤部280が膨張した場合であっても、アキシアルリップ255の先端と、スリンガ252との外部側の接触角は、β[°](β>α)となって、密封性能に優れる最適角αよりも大きくなっている。
【0067】
図4Bに示すように、上記実施形態の密封装置9では、膨潤部80の膨張によって、密封性能が優れた状態に回復している一方、参考例の密封装置209では、密封性能が大きく回復していない。
【0068】
図4Cは、図4Aのアキシアルリップ55の根本付近の模式拡大断面図である。また、図5Cは、図5Aのアキシアルリップ255の先端部付近の模式拡大断面図である。尚、図4Cにおいて、矢印Yの大きさは、本実施形態の密封装置9において、膨潤部80が膨張した後の各径方向の位置に対する軸方向の延びを示している。また、図5Cにおいて、矢印Zの大きさは、参考例の密封装置209において、膨潤部280が膨張した後の各径方向の位置に対する軸方向の延びを示している。
【0069】
図4Cに示すように、本実施形態の密封装置9では、図5Cとの比較において、アキシアルリップ55の根本に軸方向に重なる径方向の位置における膨張の大きさが、根本に軸方向に重なる部分以外の部分の膨張の大きさよりもより大きくなっている。したがって、アキシアルリップ55がアキシアルリップ255との比較において、より径方向の内方に傾くことになる。
【0070】
すなわち、基部53とアキシアルリップ55とが成す角A[°]は、基部253とアキシアルリップ255とが成す角B[°]よりも大きくなる。このことにより、本実施形態の密封装置9は、参考例の密封装置209と異なって、最適な接触角α(図4B参照)を獲得できるのである。
【0071】
以上の説明を簡潔にまとめると次のようになる。すなわち、密封性能は、最適な接触角αで発揮される。しかし、泥水等の異物99がアキシアルリップ55を通過している状態では、アキシアルリップ55の撓みにより、B<Aとなって、アキシアルリップ55の根本角は低下する(図3C参照)。また、図5Cに示すように、膨潤部280が膨潤し、アキシアルリップ255の根本を押し上げた際、単純に垂直方向に持ち上げるだけでは、根本角が、角度Bのままであるから、図5Bに示すように、接触角は、初期の理想的な状態に戻らない。このため、本実施形態では、初期状態の接触角αに戻すために、リップ根本角が、角度Bから角度Aに戻るように、膨潤部80の軸方向の厚さを、径方向位置で変動させるようにしているのである。すなわち、膨潤部80のアキシアルリップ55の根本に軸方向に重なる部分の軸方向の厚さを、厚くしておくことにより、その部分の膨張したときの幅を大きくして、根本角および接触角を、初期状態であるAおよびαに戻すようにしているのである。
【0072】
上記実施形態の密封装置9によれば、アキシアルリップ55の摩耗によって、泥水等の異物99がアキシアルリップ55を通過した場合、密封側に移動した異物99の水分が、水浸入面88を介して膨潤部80内に浸入することになる。そして、上記膨潤部80が、軸方向に膨れることにより、アキシアルリップ55が軸方向に移動することになって、アキシアルリップ55の軸方向の圧力が大きくなる。
【0073】
また、上記膨潤部80においてアキシアルリップ55の根本部(膨潤部80とアキシアルリップ55の接合部)に軸方向に重なる部分の軸方向の長さが、膨潤部80の上記根本部に径方向に間隔をおいて位置する部分の軸方向の長さよりも長いから、膨潤部80の上記根本部に軸方向に重なる部分の膨張の度合がとりわけ高くなって、アキシアルリップ55が、径方向のスリンガ52の円筒部65側に傾斜することになる。
【0074】
したがって、アキシアルリップ55がフランジ部66に接触する際の接触角を、アキシアルリップ55の非摩耗状態での値に近づけることができる。したがって、たとえ、アキシアルリップ55の摩耗が進行したとしても、アキシアルリップ55の軸方向の押圧力と、アキシアルリップ55のフランジ部66への接触角とが、殆ど変化することがないから、密封性能が優れた状態を維持することができるのである。
【0075】
尚、上記実施形態の密封装置9では、一つのアキシアルリップ55を有し、その唯一のアキシアルリップ55が膨潤部80の膨張によって、軸方向の外方に移動すると共に、径方向の内方に傾斜するようになっていた。しかしながら、本発明ではM(Mは、2以上の自然数)個のアキシアルリップを有し、N(Nは、N≦Mを満たす自然数)個のアキシアルリップが、膨潤部の膨張によって、軸方向の外方に移動すると共に、径方向の内方に傾斜するようになっていても良い。尚、この場合において、膨潤部が、N個存在し、各膨潤部において、上記N個のアキシアルリップの根本に重なる部分の軸方向の寸法が、その他の部分の軸方向の寸法よりも大きいことが好ましいことは言うまでもないが、膨潤部は、Nより小さい数存在するかまたは一体の構造を有していても良い。尚、膨潤部が、複数個存在する場合は、各膨潤部が、水浸入面を有することは言うまでもない。
【0076】
また、上記実施形態の密封装置9では、被摺動部がスリンガ52のフランジ部66であったが、この発明では、密封装置は、スリンガを有さなくても良く、使用時において、アキシアルリップが、外輪、内輪、中間輪または内軸の軸方向の端面に接触するようになっていても良い。尚、この場合、上記実施形態と異なり、被摺動部が、第2軌道部材に固定される構成でなくて、被摺動部が、第2軌道部材の一部であって、第2軌道部材に含まれる構成であることは、言うまでもない。
【0077】
また、上記実施形態の密封装置9では、芯金部材50を、静止部材である外輪2に固定したが、この発明では、外側軌道部材が回転部材であって、芯金部材を、静止部材である内側軌道部材に固定する構成であっても良い。また、芯金部材を、回転部材側に固定しても良い。
【0078】
また、上記実施形態の密封装置9では、芯金部材50およびスリンガ52の両方が、断面略L字状の形状を有していたが、この発明では、芯金部材およびスリンガのうちの少なくとも一方が、断面L字形状でなくても良い。
【0079】
また、上記実施形態の密封装置9は、二つのラジアルリップ56,57を有していたが、この発明の密封装置は、一または三以上のラジアルリップ(グリースリップも、ラジアルリップに含む)を有していても良い。また、この発明の密封装置は、ラジアルリップを有していなくても良い。
【0080】
また、上記実施形態の密封装置9では、上記膨潤部80が、アキシアルリップ55の密封側のみに、基部53の表面に露出する水浸入面88を有していたが、この発明では、膨潤部は、アキシアルリップの密封側とは反対側である外部側に基部の表面に露出する水浸入面を有していても良い。
【0081】
また、上記実施形態の車輪用転がり軸受では、第1実施形態の密封装置9を、転動体(玉)配置室(潤滑剤封入室)の軸方向の上記他端部側(車体取付用フランジ14側)の開口付近のみに配置したが、この発明では、本発明の密封装置を、転動体配置室(潤滑剤封入室)の軸方向のブレーキディスク取付用フランジ側のみに配置しても良い。また、この発明では、本発明の密封装置を、転動体配置室(潤滑剤封入室)の軸方向の両側の開口の近傍に、配置しても良い。
【0082】
また、車輪用転がり軸受において、転動体は、玉でなくて、ころであっても良い、また、玉ところの両方であっても良い。転動体が、ころであるとは、転動体が、円錐ころである場合と、円筒ころである場合と、凸面ころである場合とを含むが、転動体がころである場合、転動体が円錐ころであると好ましい。
【0083】
尚、本発明の一実施形態の密封装置9は、内輪4と外輪2との間における軸方向の上記他端部側の開口付近に配設され、ブレーキディスク取付け用フランジ10がない側に配設されているから、内輪4にスリンガ52を、外輪2に芯金部材50を容易に取り付けることができる。
【0084】
図6は、第2実施形態のウォータポンプの密封装置199の周辺の拡大断面図である。
【0085】
このウォータポンプは、ポンプ軸100と、メカニカルシール101と、ポンプハウジング102と、外輪105と、本発明の一実施形態の密封装置199とを有している。上記ポンプハウジング102は、ポンプハウジング102を貫通する水抜き穴を有している。また、外輪105は、ポンプハウジング102の内周面に内嵌されて固定されている。
【0086】
上記ポンプ軸100、外輪105、および、密封装置199は、ウォータポンプのウォータポンプ軸受の一部をなしている。すなわち、図示しないが、外輪105の内周面の図3に矢印aで示す側には、軸方向に間隔をおいて、密封装置199に近い方から、深溝型の軌道溝と、円筒軌道面が形成されている一方、ポンプ軸100の外周面の図3に矢印aで示す側には、軸方向に間隔をおいて、密封装置199に近い方から、深溝型の軌道溝と、円筒軌道面が形成されている。
【0087】
外輪105の上記軌道溝と、ポンプ軸100の上記軌道溝との間には、保持器に保持された状態の玉が、周方向に所定の間隔を隔てられて複数配置されている。また、外輪105の上記円筒軌道面と、ポンプ軸100の上記円筒軌道面との間には、保持器に保持された状態の円筒ころが、周方向に所定の間隔を隔てられて複数配置されている。
【0088】
上記密封装置199の芯金部材150は、第1軌道部材としての外輪105の内周面に内嵌されて固定されている一方、密封装置199のスリンガ152は、第2軌道部材としてのポンプ軸100の外周面に外嵌されて固定されている。また、上記密封装置199の弾性部材151は、芯金部材150に固着されている。上記スリンガ152のフランジ部166は、被摺動部を構成している。上記密封装置199は、外輪105と、ポンプ軸100との間における、メカニカルシール101側の開口を密封している。このようにして、メカニカルシール101から矢印bで示す方向に漏れだしたポンプ室の冷却水が、ウォータポンプ軸受の内部に入ることを防止している。
【0089】
上記漏れだしたポンプ室の冷却水は、ポンプハウジング102に形成された水抜き穴を介して矢印cに示す方向に外部に確実に排出されるようになっている。尚、図3において、111は、メカニカルシール101のゴムスリーブを示し、110は、メカニカルシール101のコイルバネを示している。
【0090】
図6に示すウォータポンプのように、本発明の密封装置199を、ウォータポンプに設置すると、上記漏れだしたポンプ室の冷却水が、密封装置199内に浸入することを大きく抑制でき、ウォータポンプ軸受の寿命を長くすることができる。
【0091】
尚、上記実施形態では、本発明の密封装置を、車輪用転がり軸受や、ウォータポンプに設定した。しかしながら、本発明の密封装置を、軌道面を有する軌道部材が外輪および内輪である転がり軸受において、上記外輪と上記内輪との間の少なくとも一方の開口を密封するように配置しても良い。また、本発明の密封装置を、モータにおける、ロータ部材とステータ部材との間に配設する転がり軸受に設置しても良い(尚、この明細書では、転がり軸受を、密封装置と、転動体と、その転動体が転動する軌道面とを有する装置として定義する)。
【0092】
また、本発明の転がり軸受は、第1軌道部材は、一体部材であっても、複数の部材からなっていても良く、第2軌道部材も、一体部材であっても、複数の部材からなっていても良い。また、この発明の転がり軸受は、転動体が、単列で配置されても良く、転動体が、2列以上に亘って配置されていても良い。
【符号の説明】
【0093】
2 外輪
4 内輪
5 第1の玉
6 第2の玉
9 密封装置
50,150 芯金部材
51,151 弾性部材
52,152 スリンガ
53 弾性部材の基部
55 アキシアルリップ
60 芯金部材の円筒部
61 芯金部材の径方向延在部
65 スリンガの円筒部
66,166 スリンガのフランジ部
80 膨潤部
88 水浸入面
199 密封装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部と、この円筒部から上記円筒部の略径方向に延在する径方向延在部とを有する環状の芯金部材と、
上記芯金部材に固着された環状の弾性部材と
を備え、
上記弾性部材は、
上記径方向延在部に固着された基部と、
上記基部から延在して被摺動部に摺動する環状のリップ部と
を有し、
上記基部は、膨潤性を有する材料からなる一体かつ環状の膨潤部を有し、
上記膨潤部は、上記基部の上記リップ部との接合部よりも径方向の上記円筒部側に位置する部分から、上記接合部よりも径方向の上記円筒部側とは反対側に位置する部分まで径方向に延在すると共に、上記リップ部の密封側に上記基部の表面に露出する水浸入面を有し、
上記膨潤部の上記接合部に軸方向に重なる部分の軸方向の長さは、上記膨潤部の上記接合部に径方向に間隔をおいて位置する部分の軸方向の長さよりも長いことを特徴とする密封装置。
【請求項2】
請求項1に記載の密封装置と、
上記芯金部材の上記円筒部が固定されると共に、軌道面を有する第1軌道部材と、
上記被摺動部を含むかまたは上記被摺動部が固定されると共に、軌道面を有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置された転動体と
を備えることを特徴とする転がり軸受。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−43200(P2011−43200A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191107(P2009−191107)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】