説明

密閉型電動圧縮機

【課題】アルミニウム線の線占率が最も大きなスロットの真下にバルブカバーの吐出穴を設け、前記吐出穴から噴出される冷媒ガスが集中的にアルミニウム線に当たるような構成としたものである。
【解決手段】固定子21には、複数の固定子スロット23が形成され、複数の固定スロット23には第1の巻線1と第2の巻線2が卷装され、第2の巻線2には、第1の巻線1に比較して導電率の低い材料からなる線材を用い、第1の巻線1と第2の巻線2とは、固定子スロット23の位置によって線占率を異ならせ、吐出穴36を、第2の巻線2の線占率の比率が高い固定子スロット23に対向させて配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機、空調機などに使用される密閉型電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の密閉型電動圧縮機の電動機は、巻線部分に銅線を用いていたが、近年の材料費の高騰などの理由から、巻線の一部に安価なアルミニウムを採用した圧縮機が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−173001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルミニウム線は銅線に比べて導電率が低いため、運転中の発熱量が大きく、このときに発生する熱によって電動機効率が低下してしまうといった課題があった。
【0005】
そこで本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、アルミニウム線の線占率が最も大きなスロットの真下にバルブカバーの吐出穴を設け、前記吐出穴から噴出される冷媒ガスが集中的にアルミニウム線に当たるような構成としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の密閉型電動圧縮機は、密閉容器に、電動機と圧縮機構部とを収納し、前記電動機が、前記密閉容器に固定される固定子と、クランク軸とともに回転する回転子とで構成され、前記圧縮機構部から吐出される圧縮ガスを受け入れて吐出穴から前記密閉容器内に吐出するバルブカバーを設けた密閉型電動圧縮機であって、前記固定子には、複数の固定子スロットが形成され、複数の前記固定スロットには第1の巻線と第2の巻線が卷装され、前記第2の巻線には、前記第1の巻線に比較して導電率の低い材料からなる線材を用い、前記第1の巻線と前記第2の巻線とは、前記固定子スロットの位置によって線占率を異ならせ、前記吐出穴を、前記第2の巻線の線占率の比率が高い前記固定子スロットに対向させて配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように、アルミニウム線の線占率が大きなスロットの下にバルブカバーの吐出穴を設けたことで、前記の吐出穴から噴出した冷媒ガスによってアルミニウム線を集中的に冷却することが可能となり、発熱による電動機効率の低下を防ぐことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態を示す密閉型電動圧縮機の側面断面図
【図2】同密閉型電動圧縮機の要部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、固定子には、複数の固定子スロットが形成され、複数の固定スロットには第1の巻線と第2の巻線が卷装され、第2の巻線には、第1の巻線に比較して導電率の低い材料からなる線材を用い、第1の巻線と第2の巻線とは、固定子スロットの位置によって線占率を異ならせ、吐出穴を、第2の巻線の線占率の比率が高い固定子スロットに対向させて配置した密閉型電動圧縮機である。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、吐出穴が対向する固定子スロットに、第2の巻線のみが巻装されている密閉型電動圧縮機である。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、第2の巻線の線占率の比率が高い固定子スロットと、固定子スロットに対向する吐出穴が、それぞれ複数形成されている密閉型電動圧縮機である。
【0012】
第4の発明は、第1から第3の発明において、第2の巻線がアルミニウム線であり、第1の巻線が銅線である密閉型電動圧縮機である。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に記載する実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態を示す密閉型電動圧縮機の側面断面図、図2は同密閉型電動圧縮機の要部を示す断面図である。
【0015】
まず、図1を用いて、本実施の形態による密閉型電動圧縮機の全体構成を説明する。
本実施の形態による密閉型電動圧縮機は、密閉容器10内に、電動機20と圧縮機構部30とを収納している。電動機20と圧縮機構部30とは、クランク軸11にて連結されている。
電動機20は、密閉容器10に固定される固定子21と、クランク軸11とともに回転する回転子22とで構成される。
圧縮機構部30は、筒状空間を形成するシリンダ31と、シリンダ31内で回動するピストン32とを有している。シリンダ31の端面は、上軸受33と下軸受34とで閉塞されている。クランク軸11は、上軸受33と下軸受34とで支持されている。
上軸受33には、圧縮ガスを吐出する吐出ポート(図示せず)が形成され、この吐出ポートを覆うようにバルブカバー35が設けられている。
バルブカバー35には、バルブカバー35内の圧縮ガスを吐出する吐出穴36が形成されている。
バルブカバー35は、圧縮機構部30から吐出される圧縮ガスを受け入れ、吐出穴36から密閉容器10内に吐出する。
【0016】
図2は、固定子21とバルブカバー35とを示している。
固定子21には、複数の固定子スロット23が形成され、複数の固定子スロット23には第1の巻線1と第2の巻線2が卷装されている。第1の巻線1と第2の巻線2によって巻線部が構成されている。
第1の巻線1には、第2の巻線2に比較して導電率の高い材料からなる線材、例えば銅線が用いられ、第2の巻線2には、第1の巻線1に比較して導電率の低い材料からなる線材、例えばアルミニウム線が用いられる。
第1の巻線1と第2の巻線2とは、固定子スロット23の位置によって線占率を異ならせている。
【0017】
図2に示すように、2つの吐出穴36は、第2の巻線2の線占率の高い固定子スロット23にそれぞれ対向させて配置している。
アルミニウム線で構成された第2の巻線2は、銅線で構成された第1の巻線1に比べて導電率が低いため、運転中の発熱量が大きく、このときに発生する熱が電動機効率を低下させる原因となるが、本実施の形態では、圧縮機構部30から吐出された冷媒ガスを排出する吐出穴4を、第2の巻線2が第1の巻線1に対して多く巻かれた固定子スロット23に対向させて配置したことで、圧縮機構30から吐出した冷媒ガスを発熱の大きな第2の巻線2に集中的に当てることで、第2の巻線2が冷却され、電動機効率の低下を防ぐことが可能となる。
なお、吐出穴36が対向する固定子スロット23に、第2の巻線2のみが巻装されている構成であってもよい。より効果的に電動機効率の低下を防ぐことが可能となる。
また、吐出穴36は、一つでもよく、3つ以上設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上のように、本発明における密閉型電動圧縮機は、電動機の発熱を抑え、より効率の良い密閉型電動圧縮機を提供することができるので、ヒートポンプ式の給湯機や除湿機、乾燥機などの用途にも適用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 第1の巻線
2 第2の巻線
21 固定子
23 固定子スロット
35 バルブカバー
36 吐出穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器に、電動機と圧縮機構部とを収納し、
前記電動機が、前記密閉容器に固定される固定子と、クランク軸とともに回転する回転子とで構成され、
前記圧縮機構部から吐出される圧縮ガスを受け入れて吐出穴から前記密閉容器内に吐出するバルブカバーを設けた密閉型電動圧縮機であって、
前記固定子には、複数の固定子スロットが形成され、
複数の前記固定スロットには第1の巻線と第2の巻線が卷装され、
前記第2の巻線には、前記第1の巻線に比較して導電率の低い材料からなる線材を用い、
前記第1の巻線と前記第2の巻線とは、前記固定子スロットの位置によって線占率を異ならせ、
前記吐出穴を、前記第2の巻線の線占率の比率が高い前記固定子スロットに対向させて配置したことを特徴とする密閉型電動圧縮機。
【請求項2】
前記吐出穴が対向する前記固定子スロットに、前記第2の巻線のみが巻装されていることを特徴とする請求項1に記載の密閉型電動圧縮機。
【請求項3】
前記第2の巻線の線占率の比率が高い前記固定子スロットと、前記固定子スロットに対向する前記吐出穴が、それぞれ複数形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の密閉型電動圧縮機。
【請求項4】
前記第2の巻線がアルミニウム線であり、前記第1の巻線が銅線であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の密閉型電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−139087(P2012−139087A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155694(P2011−155694)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】