説明

密閉形圧縮機、当該圧縮機を用いた冷蔵庫、及び冷凍サイクル装置

【課題】吐出弁部を制振する能力の向上を図る。
【解決手段】シリンダ1の端面側に固定して配置され、かつ吐出孔10aを有するバルブプレート10と、バルブプレートの反シリンダ側に配置され、かつ吐出孔を通して受けるガス圧力により弾性変形して吐出孔の開閉を行う吐出弁部11aを有する吐出弁板11と、吐出弁板の反シリンダ側に配置され、かつ吐出弁板の吐出弁部が吐出孔を開放したときに、吐出弁板と接触して一緒に弾性変形する複数の制振部13a,13bを有する制振板13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉形圧縮機(特に、シリンダ内でピストンが往復動する構成の密閉形圧縮機)、当該圧縮機を用いた冷蔵庫、及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉形圧縮機(特に、シリンダ内でピストンが往復動する構成の密閉形圧縮機)は、ガス冷媒(以下、適宜「冷媒」と称する)を圧縮して循環させる手段として、様々な電気製品(例えば、冷蔵庫、冷凍庫、エアコンディショナ等の冷凍サイクル装置)に用いられている。
【0003】
ところで、圧縮機は、一般に、シリンダの内部から外部へ冷媒を吐き出した後、吐出弁が吐出孔を閉塞するまでの間、シリンダ内部の圧力が低下する。したがって、圧縮機は、冷媒の吐出が完了した場合に、吐出弁で吐出孔を素早く閉鎖する必要がある。
【0004】
そこで、冷媒の吐き出し直後のシリンダ内部の圧力の低下を低減するために、また、冷媒の吐き出し完了時における吐出孔の閉鎖性能を向上させるために、例えば、以下の構成の圧縮機が、提案されている。
【0005】
提案された圧縮機は、吐出孔を有するバルブプレートと、吐出孔を塞ぐように設けられた吐出弁部を有する吐出弁板と、吐出弁部上に吐出弁部の動作範囲を規制する片持ち梁部を有する制振板と、吐出弁板と制振板との間に板状部材とを備え、吐出弁部の固定部と制振板の片持ち梁部の固定部とを互いに対向する位置関係で設ける構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
すなわち、提案された圧縮機(以下、「従来の圧縮機」と称する)は、制振板の片持ち梁部と吐出弁板の吐出弁部とが向かい合わせで設けられており、この片持ち梁部の先端部が吐出弁部の先端部と接触して、吐出弁部の振動を抑制することにより、片持ち梁部が制振部として機能する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−280874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の圧縮機は、片持ち梁部の制振能力が吐出弁部の振動を十分に抑制できない可能性があり、これにより、冷媒の圧縮効率が低下する可能性がある、という課題があった。
【0009】
すなわち、従来の圧縮機は、片持ち梁部の先端部が吐出弁部の先端部と接触して、吐出弁部の振動を抑制する構成となっている。そのため、従来の圧縮機は、例えば、吐出弁部の振動が吐出弁部の腕部(すなわち、先端部から後端部までの間の部分)を節とする振動となっている場合に、片持ち梁部の制振能力が吐出弁部の振動を十分に抑制できない可能性がある。
吐出孔は、吐出弁部の振動が十分に抑制されない場合に、吐出完了時に吐出弁により閉塞されない状態となる。そのため、圧縮された冷媒がシリンダ室に逆流する。

したがって、従来の圧縮機は、このような場合に、吐出冷媒量が減少し、これにより、冷媒の圧縮効率が低下する。
【0010】
また、従来の圧縮機は、片持ち梁部と吐出弁部との間の距離が大きくなる組立誤差が生じた場合に、片持ち梁部と吐出弁部との接触面積が減少するため、制振能力が大幅に低下する、という課題があった。
【0011】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、冷媒がシリンダ室の外部に漏れ出るのを抑制でき、かつ、組立誤差が生じた場合であっても、制振能力の低下を抑制できる密閉形圧縮機、及び、当該圧縮機を用いた電気製品(例えば、冷蔵庫、並びに、冷凍庫やエアコンディショナ等の冷凍サイクル装置)を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、第1発明は、シリンダ内でピストンが往復動する密閉形圧縮機であって、前記シリンダの端面側に固定して配置され、かつ吐出孔を有するバルブプレートと、前記バルブプレートの反シリンダ側に配置され、かつ前記吐出孔を通して受けるガス圧力により弾性変形して前記吐出孔の開閉を行う吐出弁部を有する吐出弁板と、前記吐出弁板の反シリンダ側に配置され、かつ前記吐出弁板の前記吐出弁部が前記吐出孔を開放したときに、前記吐出弁板と接触して一緒に弾性変形する制振部を有する制振板とを備え、前記制振部は、複数設けられている構成とする。
【0013】
また、第2発明は、冷蔵庫であって、冷媒を圧縮して循環させる手段として、第1発明の密閉形圧縮機を備える構成とする。
また、第3発明は、冷凍サイクル装置であって、冷媒を圧縮して循環させる手段として、第1発明の密閉形圧縮機を備える構成とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0014】
第1発明によれば、制振部が複数設けられているため、冷媒がシリンダ室の外部に漏れ出るのを抑制でき、かつ、組立誤差が生じた場合であっても、制振能力が低下するのを抑制できる密閉形圧縮機を提供することができる。
また、第2発明によれば、第1発明の圧縮機を用いた冷蔵庫を、さらに、第3発明によれば、第1発明の圧縮機を用いた冷凍サイクル装置を、それぞれ、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係る密閉形圧縮機の縦断面図である。
【図2】シリンダの端面に組立てられる部品の構成を示す図(1)である。
【図3】シリンダの端面に組立てられる部品の構成を示す図(2)である。
【図4】シリンダの端面に組立てられる部品の構成を示す図(3)である。
【図5】シリンダの端面に組立てられる部品の構成を示す図(4)である。
【図6】実施形態1に係る密閉形圧縮機の制振板の構成を示す斜視図である。
【図7】実施形態1に係る密閉形圧縮機の吐き出し時におけるシリンダ内部の圧力の変化を示す図である。
【図8】吐出弁部に発生する振動を模式的に示す説明図である。
【図9】吐出弁板の状態説明図である。
【図10】実施形態1に係る密閉形圧縮機を用いる電気製品の一例を示す図である。
【図11】実施形態2に係る密閉形圧縮機の制振板の構成を示す斜視図である。
【図12】実施形態2に係る密閉形圧縮機の制振板の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0017】
[実施形態1]
<密閉形圧縮機の構成>
以下、図1乃至図6を参照して、本実施形態1に係る密閉形圧縮機(以下、適宜「圧縮機」と称する)の構成につき説明する。
【0018】
(全体構成)
まず、図1を参照して、本実施形態1に係る密閉形圧縮機50の全体構成につき説明する。図1は、本実施形態1に係る密閉形圧縮機の縦断面図である。
【0019】
本実施形態1の密閉形圧縮機50は、圧縮要素20内に往復動するピストンを有するレシプロ型の圧縮機である。密閉形圧縮機50は、圧縮要素20と電動要素30とが密閉容器3内に上下に配置されている。圧縮要素20及び電動要素30は、密閉容器3に弾性的に支持されており、クランクシャフト7によって互いに連結されている。
【0020】
圧縮要素20は、シリンダ室を形成するシリンダ1と、シリンダ室内を往復動するピストン4と、このピストン4を駆動するコネクティングロッド2と、シリンダ端面に組立てられる多数の部品10〜17(図2参照)とを備えた構成となっている。シリンダ1は、軸受部1a及びフレーム1bが一体に成形されている。ピストン4は、コネクティングロッド2を介してクランクピン7aに連結され、クランクピン7aの偏心回転によりシリンダ室内を往復動される。
【0021】
電動要素30は、フレーム1bの下方に配置され、ステータ5及びロータ6を備えた構成となっている。ステータ5は、フレーム1bに固定されている。一方、ロータ6は、クランクシャフト7の下部に固定されている。ロータ6は、クランクシャフト7を介して伝達される電動要素30の動力によって回転される。
【0022】
クランクシャフト7は、軸受部1aを貫通してフレーム1bの下方から上方へ延伸している。クランクシャフト7は、電動要素30の動力によって回転される。クランクシャフト7の上端部には、回転中心から偏心したクランクピン7aが設けられている。クランクピン7aは、フレーム1bの上方側に位置するように設けられている。クランクピン7aは、コネクティングロッド2によってピストン4と連結されている。ピストン4は、クランクピン7a及びコネクティングロッド2を介して電動要素30の動力が伝達されることによって、往復動する。
【0023】
シリンダ1内に供給されたガス冷媒は、ピストン4の往復動によって圧縮される。圧縮されたガス冷媒は、バルブプレート10に設けられた吐出孔10a(図2参照)を経由して、吐出空間へと送られる。吐出空間へ送られた冷媒は、図示せぬ凝縮器、減圧機構、蒸発器を経て、再び圧縮機50内へと戻される。これら圧縮機50、凝縮器、減圧機構及び蒸発器により冷凍サイクル装置を形成している。この冷凍サイクル装置には、プロパン(R290)やイソブタン(R600a)等の炭化水素系の冷媒(HC冷媒)が使用されている。
【0024】
密閉容器3内には、潤滑油が溜められている。潤滑油は、クランクシャフト7の回転運動によるポンプ作用で引き上げられ、圧縮要素20の摺動部へと送られる。
【0025】
(シリンダの端面付近の構成)
次に、図2乃至図5を参照して、シリンダ1の端面付近の構成につき説明する。図2乃至図5は、それぞれ、シリンダの端面に組立てられる部品の構成を示す図である。図2は、シリンダの端面に組立てられる部品11〜17を並べて示しており、また、図3及び図5は、それぞれ、正面方向から見た部品10〜16の形状を示している。なお、これらの部品11〜17の中で、部品13(制振板13)が本実施形態1の特徴的な構成要素となっている。部品13(制振板13)の詳細な構成については、図5及び図6を参照して後記する。
【0026】
シリンダ端面に組立てられる部品は、図2に示すように、シリンダ1側から順に、吸入弁板(図示せず)、バルブプレート10、吐出弁板11、薄板スペーサ(以下、適宜「第1スペーサ」と称する)12、制振板13、厚板スペーサ(以下、適宜「第2スペーサ」と称する)14、ストッパ15、パッキン16、ヘッドカバー17となっている。
【0027】
部品10〜16は、それぞれ、外形がほぼ同じ形状に形成された平坦な板材で構成されている。また、部品17(ヘッドカバー17)は、部品16(パッキン16)と対向する側の面の外形が部品10〜16の外形とほぼ同じ形状に形成された立体的な部材で構成されている。
【0028】
部品10〜16は、それぞれ、内部に、外周部によって形成された孔が設けられている。この孔は、部品10〜16がシリンダ1の端面側に上述した順序で積み重ねて組み立てられることにより、1つの吐出空間を形成する。なお、本実施形態1では、吐出空間がU字型に形成されているものとして説明する。
【0029】
部品17(ヘッドカバー17)は、部品16(パッキン16)の反シリンダ側に配置されることにより、部品10〜16によって形成された吐出空間を閉塞する。
【0030】
各部品10〜17は、中央右側部に、吸入孔10cが形成されている。また、各部品10〜17は、四隅に、締結具貫通孔10dが形成されている。この締結具貫通孔10dは、ボルト等の図示せぬ締結具が貫通する。各部品10〜17は、図示せぬ締結具が締結具貫通孔10dを貫通してシリンダ1に取り付けられることにより、シリンダ1の端面側に固定される。このように、部品10〜17は、共通の締結具によってシリンダ1の端面側に固定されるので、組立効率の向上を図ることができる。
【0031】
これらの部品10〜17の中で、バルブプレート10は、シリンダ1の端面に配置され固定される板材である。図3(a)に示すように、バルブプレート10は、吐出孔10a、吸入孔10c、締結具貫通孔10d、及び溝10eを有している。吐出孔10aは、シリンダ室の内部から外部に吐き出される冷媒が通過する部位である。吸入孔10cは、シリンダ室の外部から内部に吸入される冷媒が通過する部位である。締結具貫通孔10dは、図示せぬ締結具が貫通する孔である。溝10eは、吐出空間の壁面を形成する部位である。本実施形態1では、吐出孔10aは、溝10eの中に2つ設けられている。
【0032】
吐出弁板11は、バルブプレート10の反シリンダ側に配置される板材である。図3(b)に示すように、吐出弁板11は、吐出弁部11aを有している。この吐出弁部11aは、吐出孔10aを通して受けるガス圧力によって弾性変形することで、吐出孔10aの開閉を行う部位である。なお、本実施形態1では、吐出弁部11aは、先端部が自由端となりかつ後端部が固定端となる、U字型の片持ち梁状の部位(以下、「片持ち梁部」と称する)として構成されている。吐出弁部11aは、吐出空間を形成する外周部の壁面から吐出空間の内部に向けて突出するように設けられている。この吐出弁部11aは、先端部11aaが吐出孔10aの周囲の吐出弁シート面10b(図3(a)参照)と接触して、シリンダ室を閉塞する。
【0033】
第1スペーサ12は、吐出弁板11の反シリンダ側に配置される板材である。第1スペーサ12は、その厚さにより、吐出弁板11と制振板13との間の隙間寸法を規定する。図4(a)に示すように、第1スペーサ12は、内部に、孔部12aを有する。この孔部12aは、冷媒が吐き出される吐出空間、並びに、吐出弁板11の吐出弁部11a(図3(b)参照)や制振板13の後記する制振部13a,13b(図5参照)が可動するための空間を形成している。なお、ここでは、第1スペーサ12、第2スペーサ14、及びパッキン16が同じ形状となっており、図4(a)を用いて、それぞれの形状を共通して説明するものとする。
【0034】
第1スペーサ12は、厚さが第2スペーサ14よりも薄く形成されている。これによって、圧縮機50は、吐出終了時の吐出弁板11の閉じ遅れを、より一層低減することができる。この第1スペーサ12は、好ましくは、厚さを0.3mm以下(最も好ましくは0.15mm)とし、吐出弁板11の吐出弁部11a(図3(b)参照)と制振板13の後記する制振部13a,13b(図5参照)との間に、0.3mm以下の空間を確保するとよい。
【0035】
制振板13は、第1スペーサ12の反シリンダブロック側に配置される板材である。制振板13は、後記する制振部13a,13bを有している。制振板13は、前記した通り、本実施形態1の特徴的な構成要素となっている。制振板13の詳細な構成については、図5及び図6を参照して後記する。
【0036】
第2スペーサ14は、制振板13の反シリンダ側に配置される板材である。第2スペーサ14は、その厚さにより、制振板13とストッパ15との間の隙間寸法を規定する。図4(a)に示すように、第2スペーサ14は、第1スペーサ12と同様に、内部に、孔部14aを有する。この孔部14aは、冷媒が吐き出される吐出空間、並びに、制振板13の後記する制振部13a,13b(図5参照)が可動するための空間を形成している。
【0037】
ストッパ15は、第2スペーサ14の反シリンダ側に配置される板材である。図4(b)に示すように、ストッパ15は、ストッパ部15aを有している。このストッパ部15aは、制振板13の後記する制振部13a(図5参照)の変形を規制する部位である。このストッパ部15aは、吐出空間の略中央を跨るように、吐出空間を形成する外周部の一方の壁面から他方の壁面に向けて設けられている。
【0038】
パッキン16は、ストッパ15の反シリンダ側に配置される板材である。パッキン16は、弾性部材で形成されており、ストッパ15とヘッドカバー17との間の吐出空間を閉塞する。図4(a)に示すように、パッキン16は、第1スペーサ12及び第2スペーサ14と同様に、内部に、孔部16aを有する。この孔部16aは、冷媒が吐き出される吐出空間を形成している。
【0039】
ヘッドカバー17は、パッキン16の反シリンダ側に配置される立体的な板材である。ヘッドカバー17は、部品10〜16によって形成された吐出空間を閉塞する。
【0040】
なお、圧縮機50は、好ましくは、以下のように構成するとよい。
(1)圧縮機50は、第1スペーサ12によって、吐出弁板11と制振板13との間に、吐出孔10aからの吐出空間の壁面が形成されるとともに、吐出弁部11aと後記する制振部13a,13b(図5参照)との間隔が設定される。
(2)圧縮機50は、ストッパ15のストッパ部15aによって、制振部13a,13bの変形が規制される。
(3)圧縮機50は、第2スペーサ14によって、制振部13a,13bとストッパ部15aとの間に、吐出孔10aからの吐出空間の壁面が形成されるとともに、ストッパ部15aと制振部13a,13bとの間隔が設定される。
(4)圧縮機50は、第1スペーサ12が第2スペーサ14よりも薄く形成されており、これによって、吐出弁部11aと制振部13a,13bとの間隔がストッパ部15aと制振部13a,13bとの間隔よりも狭く設定される。
(5)圧縮機50は、好ましくは、部品10〜17毎に、形状の異なる切欠きが、それぞれの外周部に目視可能に設けられるとよい。この切欠きは、さらに好ましくは、部品10側から部品17側に順に大きく形成されており、各部品10〜17が積み重ねて組み立てられることにより、階段状に形成されるとよい。
(6)圧縮機50は、好ましくは、第1スペーサ12及び第2スペーサ14の色が他の部品10,11,13,15〜17のいずれの色とも異なる色に構成されるとよい。
【0041】
また、圧縮機50は、さらに好ましくは、以下のように構成するとよい。
(1)圧縮機50は、吐出弁部11aと制振部13a,13bとの接触位置が、吐出孔10aの吐出弁部11aへの投影面を覆わない位置関係となっており、かつ、制振部13a,13bの幅が吐出弁部11aの振動箇所の幅よりも広く構成される。
(2)圧縮機50は、吐出孔10aの中心軸の延長線が制振板13a,13bを通過しない位置関係となっており、かつ、制振部13a,13bがシリンダ室から吐き出される冷媒のガス荷重を受ける位置からずれた位置で吐出弁部11Aaと接触するように構成される。
(3)圧縮機50は、制振部13bの幅が吐出弁部11aの幅より広く構成される。これによって、圧縮機50は、制振部13bが剛性を増し、その結果、制振部13bの制振能力が向上される。
【0042】
(制振板の構成)
以下、図5及び図6を参照して、本実施形態1の特徴的な構成要素である制振板13の詳細な構成につき説明する。図5は、前記した通り、シリンダの端面に組立てられる部品の構成を示す図であり、正面方向から見た制振板の構成を示している。一方、図6は、実施形態1に係る密閉形圧縮機の制振板の構成を示す斜視図である。図6(a)は、制振板13の構成を示しており、図6(b)は、制振板13の各制振部13a,13bと吐出弁板11の吐出弁部11aとの位置関係を示している。
【0043】
制振板13は、先端部が自由端となりかつ後端部が固定端となる、I字型の複数の片持ち梁部を有している。複数の片持ち梁部は、それぞれ、吐出弁板11の吐出弁部11a(図3(b)参照)の振動を抑制するための制振部として機能する。
【0044】
本実施形態1では、図5及び図6(a)に示すように、制振板13は、1つの片持ち梁部13a(以下、適宜「第1片持ち梁部13a」又は「第1制振部13a」と称する)と、2つの片持ち梁部13b(以下、適宜「第2片持ち梁部13b」又は「第2制振部13b」と称する)とを有している。なお、制振板13は、第1制振部13a及び2つの第2制振部13b限らず、これら以外の制振部を有していてもよい。
【0045】
第1制振部13a及び2つの第2制振部13bは、それぞれ、吐出空間を形成する外周部13cの壁面から吐出空間の内部に向けて突出するように設けられている。
【0046】
第1制振部13a及び2つの第2制振部13bは、それぞれ、吐出弁板11の吐出弁部11a(図3(b)参照)との間に、第1スペーサ12の厚さ分だけ、間隔が設けられており、吐出弁板11の吐出弁部11aが開いたときに、吐出弁部11aが当接して一緒に弾性変形する。図6(b)に、第1制振部13a及び2つの第2制振部13bと吐出弁部11aとの位置関係を示す。
【0047】
第1制振部13aは、後端部13acが固定端(すなわち、弾性変形の支点部分)となっており、その後端部13acが吐出弁部11aの後端部11ac(図3(b)参照)と対向する側に設けられている。そして、第1制振部13aの延伸方向は、吐出弁部11aの腕部11abの延伸方向と平行に設けられている。すなわち、第1制振部13aは、吐出弁部11aと向かい合わせで設けられている。したがって、第1制振部13aは、その先端部13aaのシリンダ側の面(以下、適宜「下面」と称する)で、吐出弁部11aの先端部11aa(図3(b)参照)と接触する。この第1制振部13aは、吐出弁部11aの先端部11aaを腹とする振動を抑制する。
【0048】
第1制振部13aは、その腕部13abがくびれた形状となっている。この形状は、第1制振部13aが吐出弁板11の吐出弁部11aの振動を好適に抑制するように、第1制振部13aの強度を若干軟らかく調整するためのものである。
【0049】
一方、2つの第2制振部13bは、それぞれ、後端部13bcが固定端となっており、その後端部13bcが吐出弁部11aの後端部11ac(図3(b)参照)と同方向側に設けられている。そして、2つの第2制振部13bの延伸方向は、それぞれ、吐出弁部11aの腕部11abの延伸方向と平行に設けられている。すなわち、2つの第2制振部13bは、それぞれ、主要部(すなわち、第2制振部13bの主な部分)13bbがU字型に形成された吐出弁部11aの左右のいずれかの腕部11ab(図3(b)参照)と重なるように、吐出弁部11aの対応する腕部11abの延伸方向と同方向に平行に設けられている。したがって、2つの第2制振部13bは、それぞれ、主要部13bbの下面で、U字型に形成された吐出弁部11aの対応する腕部11ab(図3(b)参照)と重なるように接触する。この2つの第2制振部13bは、それぞれ、吐出弁部11aの腕部11abを腹とする振動を抑制する。
【0050】
なお、第1制振部13a及び2つの第2制振部13bは、好ましくは、バルブプレート10の吐出孔10a(図2参照)の中心軸を回避して設けられているとよい。本実施形態1では、第1制振部13aが、先端部13aaに孔部13dを有しており、この孔部13dによって、吐出孔10a(図2参照)の中心軸を回避している。この孔部13dは、図6(b)に示すように、第1制振部13aの先端部13aaと吐出弁部11aの先端部11aa(図3(b)参照)とが接触する場合に、先端部13aaと先端部11aaとの接触面積を低減させる。これによって、孔部13bは、潤滑油が吐出弁部11aと制振板13との間の隙間に溜まり、第1制振部13aがその潤滑油の表面張力によって吐出弁部11aに貼り付くのを、低減させることができる。
【0051】
また、2つの第2制振部13bは、図6(b)に示すように、主要部13bbが吐出弁部11aの腕部11abと重なるように、吐出弁部11aの腕部11abの延伸方向と同方向に平行に設けられているとともに、それぞれの幅が、吐出弁11aの腕部11abの幅よりも広く設けられている。そのため、2つの第2制振部13bは、それぞれ、吐出弁部11aの対応する腕部11abを覆うように接触することができる。これにより、2つの第2制振部13bは、吐出弁部11aの腕部11abを腹とする振動をさらに効率よく(短時間でかつ十分に)抑制することができる。
【0052】
<吐出弁部に発生する振動>
次に、図7を参照して、吐出弁部11aの動作とシリンダ室の内部の圧力との関係を説明し、続いて、図8を参照して、吐出弁部11aに発生する振動について説明する。図7は、実施形態1に係る密閉形圧縮機の吐き出し時におけるシリンダ内部の圧力の変化を示す図である。図8は、吐出弁部に発生する振動を模式的に示す説明図である。
【0053】
シリンダ室の内部の圧力は、図7に示すように変化する。すなわち、クランクシャフト7(図1参照)が電動要素30の動力によって回転されると、クランクピン7a及びコネクティングロッド2を介して、ピストン4が駆動される。ピストン4が下死点の状態からバルブプレート側に接近すると、図7に示すように、シリンダ室の内部の圧力が、吐出圧力を超えて上昇する。このとき、吐出弁部11aを開かせる力が、吐出弁部11aで仕切られる前後の空間の圧力差(すなわち、シリンダ室と吐出空間との圧力差)によって生じる。
【0054】
吐出弁部11aが吐出弁シート面10bに閉じた状態では、吐出弁部11aは、第1制振部13a及び第2制振部13bに接触していない。そのため、吐出弁部11aを開かせる力が、吐出弁部11aのバネ力と、吐出弁部11aと吐出弁シート面10bとの間の潤滑油により生じる表面張力との合力よりも大きくなると、吐出弁部11aが、反バルブプレート側に反る。その結果、吐出弁部11aが、吐出弁シート面10bから開く(離間する)。これにより、吐出弁部11aの開動作が開始される。
【0055】
ここで、吐出弁部11aと第1制振部13a及び第2制振部13bとは第1スペーサ12の厚さ分だけ間隔が開いている。そのため、吐出弁部11aが吐出弁シート面10bに閉じた状態では、吐出弁部11aは、第1制振部13a及び第2制振部13bに接触していない。したがって、吐出弁部11aの開動作は、第1制振部13a及び第2制振部13bのバネ力と関係がなく、開始される。これによって、圧縮機50は、吐出弁部11aの開き遅れを防止することができる。その結果、圧縮機50は、吐出開始時のシリンダ室の内部の圧力を下げて、消費電力の低減を図ることができる。
【0056】
吐出弁部11aの開動作が開始されると、吐出弁部11aは、吐出孔10aを圧縮されたガス冷媒が通過している間、通過する圧縮されたガス冷媒の流体力により開く方向に変形する。このとき、シリンダ室の内部の圧縮されたガス冷媒が、吐出孔10aを通って吐出空間に吐出される。そのため、シリンダ室の内部の圧力は、吐出圧力の付近まで降下する。これに伴って、シリンダ室の内部の圧縮されたガス冷媒の流体力が、減少する。このとき、吐出弁部11aのバネ力と第1制振部13a及び第2制振部13bのバネ力との関係により、吐出弁部11aが、バルブプレート10側に戻される。その結果、吐出弁部11aのリフト高さが、低くなる。このリフト高さの低下に伴って、吐出孔10a(図3(a)参照)の流路が、狭くなる。その結果、シリンダ室の内部の圧力が、再び上昇する。これにより、吐出弁部11aのリフト高さが高くなり、その結果、シリンダ室の内部の圧力が再び低下する。
【0057】
以上のように、シリンダ室の内部の圧力は、吐出弁部11aと吐出弁シート面10bの間の距離の変化に応じて変化する。
【0058】
なお、吐出弁部11aの開動作が開始されると、吐出弁部11aには、図8に示す振動が発生する。この振動に伴って、吐出弁部11aのリフト高さが変化し、この影響により、シリンダ室の内部の圧力が変化する。しかしながら、吐出弁部11aの振動は、吐出弁部11aが第1制振部13a及び第2制振部13bに当接することにより、短時間で減衰する。これにより、圧縮機50は、吐出行程の間に、吐出弁部11aが吐出弁シート面10bに過度に接近するのを防止できる。そのため、圧縮機50は、シリンダ室の内部の圧力が著しく上昇するのを防止でき、その結果、消費電力の低減を図ることができる。
【0059】
圧縮機50は、ピストン4が上死点にくると、圧縮されたガス冷媒の流れが止まる。その結果、吐出弁部11aに作用する力(流れに起因する力)がなくなり、吐出弁部11aが、吐出孔10aを塞いで吐出完了に至る。
【0060】
ここで、吐出弁部11aと第1制振部13a及び第2制振部13bとの位置関係について、図9を用いて説明する。図9は、吐出弁板の状態説明図である。図9(a)は、吐出弁部11aが吐出孔10aを塞ぐときに、吐出弁部11aの先端部11aaを腹とする振動によって、吐出弁部11aが吐出孔10aから離れる状態を示している。一方、図9(b)は、吐出弁部11aが吐出孔10aを塞ぐときに、吐出弁部11aの腕部11abを腹とする振動によって、吐出弁部11aが吐出孔10aから離れる状態を示している。
【0061】
前記した通り、吐出弁部11aの開動作が開始されると、吐出弁部11aには、図8に示す振動が発生する。この振動は、吐出弁部11aの先端部11aaが腹となる振動と、吐出弁部11aの腕部11abが腹となる振動とに大別できる。
【0062】
吐出弁部11aの先端部11aaが腹となる振動は、吐出弁部11aが閉動作を行うときに、図9(a)に示すように、吐出弁部11aの先端部11aaの先端側が他の部位よりも先に吐出弁シート面10bに衝突する。そのため、吐出弁部11aの先端部11aaが腹となる振動は、吐出弁部11aを開く方向に動作させる要因となり、その結果、吐出弁部11aのシート面10bへの着座を遅らせ、冷媒が吐出空間からシリンダ室の内部へ逆流する原因となる。
【0063】
一方、吐出弁部11aの腕部11abが腹となる振動は、吐出弁部11aが閉動作を行うときに、図9(b)に示すように、吐出弁部11aの先端部11aaの根元側が吐出弁シート面10bに衝突し、その根元側を支点として、先端部11aaが振動する。そのため、吐出弁部11aの腕部11abが腹となる振動は、吐出弁部11aを開く方向に動作させる要因となり、その結果、吐出弁部11aのシート面10bへの着座を遅らせ、冷媒が吐出空間からシリンダ室内へ逆流する原因となる。
【0064】
そこで、圧縮機50は、吐出弁部11aの先端部11aaが腹となる振動を第1制振部13aによって抑制するとともに、吐出弁部11aの腕部11abが腹となる振動を第2制振部13bによって抑制する。これにより、圧縮機50は、吐出弁部11aが閉動作を行うときに、吐出弁部11aの振動を短時間で抑制して、吐出弁シート面10bを短時間で閉塞することができる。その結果、圧縮機50は、冷媒の循環量を増加させることができ、冷媒の圧縮能力の向上を図ることができる。
【0065】
このような圧縮機50を用いる電気製品(例えば、冷蔵庫、並びに、冷凍庫やエアコンディショナ等の冷凍サイクル装置)100(図10参照)は、消費電力を低減することができる。なお、図10は、実施形態1に係る密閉形圧縮機を用いる電気製品の一例を示す図である。図10は、電気製品100の一例として、圧縮機50を機械室102の中に備えている冷蔵庫の構成を示している。
【0066】
以上の通り、本実施形態1に係る圧縮機50によれば、制振部が複数設けられているため、吐出弁部11aの振動を十分に抑制できる。これにより、シリンダ室の内部に封入されている冷媒がシリンダ室の外部に漏れ出るのを抑制できる。また、第1片持ち梁部13aと吐出弁部11aとの間の距離が大きくなる組立誤差が生じた場合であっても、第2片持ち梁部13bによって吐出弁部11aの振動を抑制するため、制振能力が低下するのを抑制することができる。
【0067】
特に、圧縮機50によれば、複数の制振部として、少なくとも、先端部13aaが吐出弁部11aの先端部11aaと接触する第1制振部13aと、主要部13bbが吐出弁部11aの腕部11abと接触する第2制振部13bとを有している。そのため、圧縮機50によれば、第1制振部13aと第2制振部13bとによって、吐出弁部11aの先端部11aaを腹とする振動と吐出弁部11aの腕部11abを腹とする振動とを、従来の圧縮機よりも、効率よく(短時間でかつ十分に)抑制することができる。
【0068】
また、圧縮機50によれば、第2制振部13bの主要部13bbが、吐出弁部11aの腕部11abと重なるように、吐出弁部11aの腕部11abの延伸方向と同方向に平行に設けられているとともに、第2制振部13bの幅が、吐出弁11aの腕部11abの幅よりも広く設けられている。そのため、圧縮機50によれば、第2制振部13bによって、吐出弁部11aの対応する腕部11abを覆うように接触することができ、これにより、吐出弁部11aの腕部11abを腹とする振動をさらに効率よく(短時間でかつ十分に)抑制することができる。
【0069】
[実施形態2]
以下、図11及び図12を参照して、実施形態2に係る密閉形圧縮機の構成を説明する。図11は、実施形態2に係る密閉形圧縮機の制振板の構成を示す斜視図である。図12は、実施形態2に係る密閉形圧縮機の制振板の構成を示す断面図である。
【0070】
本実施形態2に係る密閉形圧縮機50A(以下、適宜「圧縮機50A」と称する)は、以下の点で実施形態1に係る圧縮機50と相違し、その他の点で実施形態1に係る圧縮機50と同様の構成となっている。以下、同様の構成については、重複する説明を省略する。
【0071】
図11に、実施形態2に係る圧縮機50Aのバルブプレート10Aと吐出弁板11Aと制振板13Aとを並べて示す。なお、図11では示されていないが、吐出弁板11Aと制振板13Aとの間には、実施形態1に係る圧縮機50と同様に、第1スペーサ12(図2及び図4(a)参照)が配置される。
【0072】
実施形態1に係る圧縮機50では、図2及び図3(a)に示すように、バルブプレート10は、吐出孔10aが2つ設けられている。これに対して、本実施形態2に係る圧縮機50Aでは、図11に示すように、バルブプレート10Aは、吐出孔10aが1つしか設けられていない。
【0073】
また、実施形態1に係る圧縮機50では、図2及び図3(b)に示すように、吐出弁板11は、U字型の吐出弁部11aが設けられている。これに対して、本実施形態2に係る圧縮機50Aでは、図11に示すように、吐出弁板11Aは、I字型の吐出弁部11Aaが設けられている。
【0074】
また、実施形態1に係る圧縮機50では、図2及び図5に示すように、制振板13は、第2制振部として、I字型の第2片持ち梁部13bが2つ設けられている。これに対して、本実施形態2に係る圧縮機50Aでは、図11に示すように、制振板13Aは、第2制振部として、I字型の第2片持ち梁部13Abが1つ設けられている。
【0075】
なお、本実施形態2に係る圧縮機50Aでは、吐出弁部11Aaは、先端部がバルブプレート10Aの吐出孔10aを覆うとともに、バルブプレート10Aの吸入孔10cを回避するように、設けられている。
【0076】
また、本実施形態2に係る圧縮機50Aでは、第2片持ち梁部13Ab(以下、適宜「第2制振部13Ab」と称する)は、主要部が吐出弁部11Aaの腕部と重なるように、吐出弁部11Aaの腕部の延伸方向と同方向に平行に設けられている。なお、第2制振部13Abは、実施形態1の第2制振部13bと同様に、幅が吐出弁11Aaの腕部の幅よりも広く設けられているものとする。
【0077】
また、本実施形態2に係る圧縮機50Aでは、第1制振部として機能する第1片持ち梁部13Aa(以下、適宜「第1制振部13Aa」と称する)が、先端部が吐出弁部11Aaの先端部と重なるように、吐出弁部11Aaと向かい合わせで、吐出弁部11Aaの腕部の延伸方向上に設けられている。
【0078】
図12に、本実施形態2に係る圧縮機50Aの第1制振部13Aa及び第2制振部13Abとバルブプレート10Aの吐出孔10aとの位置関係を示す。図12に示すように、第1制振部13Aa及び第2制振部13Abは、バルブプレート10Aの吐出孔10aの中心軸を回避して設けられている。したがって、第1制振部13Aa及び第2制振部13Abは、シリンダ室から吐き出される冷媒のガス荷重を受ける位置からずれた位置で吐出弁部11Aaと接触して、吐出弁部11Aaの振動を抑制する。これにより、本実施形態2に係る圧縮機50Aは、吐出弁部11aが第1制振部13Aa及び第2制振部13Abに過度に押し付けられるのを防止し、吐出弁部11aが第1制振部13a及び第2制振部13bに貼り付くのを防止する構造となっている。
【0079】
このような実施形態2に係る圧縮機50Aは、吐出弁部11aの振動が第1制振部13Aa及び第2制振部13Abによって抑制されるとともに、吐出弁部11aが第1制振部13a及び第2制振部13bに貼り付くのを防止する構造となっている。そのため、実施形態2に係る圧縮機50Aは、実施形態1に係る圧縮機50と同様に、冷媒の循環量を増加させることができ、冷媒の圧縮能力の向上を図ることができる。
【0080】
以上の通り、本実施形態2に係る圧縮機50Aによれば、実施形態1に係る圧縮機50と同様に、制振部が複数設けられているため、吐出弁部11aの振動を十分に抑制できる。これにより、シリンダ室の内部に封入されている冷媒がシリンダ室の外部に漏れ出るのを抑制できる。また、第1片持ち梁部13Aaと吐出弁部11Aaとの間の距離が大きくなる組立誤差が生じた場合であっても、第2片持ち梁部13Abによって吐出弁部11Aaの振動を抑制するため、制振能力が低下するのを抑制することができる。
【0081】
特に、圧縮機50Aによれば、第1制振部13Aaと第2制振部13Abとによって、吐出弁部11Aaの先端部を腹とする振動と吐出弁部11Aaの腕部を腹とする振動とを、従来の圧縮機よりも、効率よく(短時間でかつ十分に)抑制することができる。
【0082】
また、圧縮機50Aによれば、第2制振部13Abによって、吐出弁部11Aaの腕部を覆うように接触することができ、これにより、吐出弁部11Aaの腕部を腹とする振動をさらに効率よく(短時間でかつ十分に)抑制することができる。
【0083】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【符号の説明】
【0084】
1 シリンダ
2 コネクティングロッド
3 密閉容器
4 ピストン
5 ステータ
6 ロータ
7 クランクシャフト
7a クランクピン
9 吸入弁板
10,10A バルブプレート
10a 吐出孔
10b 吐出弁シート面
10c 吸入孔
10d 締結具貫通孔
10e 溝
11,11A 吐出弁板
11a,11Aa 吐出弁部
12 薄板スペーサ(第1スペーサ)
12a,14a,16a 孔部
13,13A 制振板
13a,13Aa 第1片持ち梁部(第1制振部)
13b,13Ab 第2片持ち梁部(第2制振部)
13c 外周部
13d 孔部
13aa,13ba 先端部
13ab,13bb 腕部
13ac,13bc 後端部
14 厚板スペーサ(第2スペーサ)
15 ストッパ
15a ストッパ部
16 パッキン
17 ヘッドカバー
20 圧縮要素
30 電動要素
50,50A 密閉形圧縮機(圧縮機)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内でピストンが往復動する密閉形圧縮機において、
前記シリンダの端面側に固定して配置され、かつ吐出孔を有するバルブプレートと、
前記バルブプレートの反シリンダ側に配置され、かつ前記吐出孔を通して受けるガス圧力により弾性変形して前記吐出孔の開閉を行う吐出弁部を有する吐出弁板と、
前記吐出弁板の反シリンダ側に配置され、かつ前記吐出弁板の前記吐出弁部が前記吐出孔を開放したときに、前記吐出弁板と接触して一緒に弾性変形する制振部を有する制振板とを備え、
前記制振部は、複数設けられている
ことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の密閉形圧縮機において、
前記複数の制振部は、それぞれ、一枚の前記制振板に設けられている
ことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の密閉形圧縮機おいて、
前記制振部の延伸方向は、前記吐出弁部の延伸方向と平行に設けられている
ことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の密閉形圧縮機おいて、
前記複数の制振部は、前記吐出孔の中心軸を回避して設けられている
ことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の密閉形圧縮機おいて、
前記複数の制振部は、それぞれ、先端部が自由端となりかつ後端部が固定端となる片持ち梁として、設けられている
ことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の密閉形圧縮機おいて、
前記吐出弁板の前記吐出弁部は、先端部が前記バルブプレートの前記吐出孔を開閉する自由端となり、かつ、後端部が前記吐出弁板と一体化された固定端となる片持ち梁として、設けられており、
さらに、前記制振板は、前記複数の制振部として、少なくとも、先端部が前記吐出弁部の前記先端部と接触して、前記吐出弁部の前記先端部を腹とする振動を抑制する第1制振部として機能する第1片持ち梁部と、主要部が前記吐出弁部の前記先端部から前記後端部までの間の部分を構成する腕部と接触して、前記吐出弁部の当該腕部を腹とする振動を抑制する第2制振部として機能する第2片持ち梁部とを有している
ことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項7】
請求項6に記載の密閉形圧縮機において、
前記第1片持ち梁部は、後端部が前記吐出弁部の前記後端部と対向する側に設けられており、かつ、
前記第2片持ち梁部は、後端部が前記吐出弁部の前記後端部と同じ側に設けられており、主要部が前記吐出弁部の前記腕部と重なるように前記腕部の延伸方向と平行に設けられている
ことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の密閉形圧縮機おいて、
前記吐出弁板の前記吐出弁部は、U字型に形成されており、
前記制振板の前記第1片持ち梁部は、I字型に形成され、かつ、先端部が前記U字型に形成された吐出弁部の前記先端部と接触するように、前記吐出弁部と向かい合わせで設けられ、及び、
前記制振板の前記第2片持ち梁部は、I字型の2つの部位に分離して形成され、かつ、各部位の主要部が前記U字型に形成された吐出弁部のそれぞれの前記腕部と重なるように、前記吐出弁部のそれぞれの前記腕部の延伸方向と同方向に平行に設けられている
ことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項9】
請求項6又は請求項7に記載の密閉形圧縮機おいて、
前記吐出弁板の前記吐出弁部は、I字型に形成されており、
前記制振板の前記第1片持ち梁部は、I字型に形成され、かつ、先端部が前記I字型に形成された吐出弁部の前記先端部と接触するように、前記吐出弁部と向かい合わせで設けられ、及び、
前記制振板の前記第2片持ち梁部は、I字型に形成され、かつ、主要部が前記I字型に形成された吐出弁部の前記腕部と重なるように、前記吐出弁部の前記腕部の延伸方向と同方向に平行に設けられている
ことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項10】
請求項9に記載の密閉形圧縮機おいて、
前記I字型に形成された吐出弁部は、吸入孔が前記バルブプレートに設けられている場合に、前記吐出孔を覆うとともに、当該吸入孔を回避するように、設けられており、
前記I字型に形成された第1片持ち梁部は、前記吐出弁部と向かい合わせで設けられ、及び、
前記I字型に形成された第2片持ち梁部は、前記吐出弁部の前記腕部の延伸方向と同方向に平行に設けられている
ことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項11】
請求項6乃至請求項10のいずれか一項に記載の密閉形圧縮機おいて、
前記第2片持ち梁部は、幅が前記吐出弁の前記腕部の幅よりも広く設けられている
ことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項12】
請求項6乃至請求項11のいずれか一項に記載の密閉形圧縮機おいて、
前記第1片持ち梁部は、腕部が先端部に比べてくびれている
ことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項13】
冷媒を圧縮して循環させる手段として、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の密閉形圧縮機を備えることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項14】
冷媒を圧縮して循環させる手段として、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の密閉形圧縮機を備えることを特徴とする冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−265762(P2010−265762A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115557(P2009−115557)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】