説明

対象物の変形可能なタッチ面上で局地的に変形する接触位置を特定する位置特定装置および方法

対象物(14)の変形可能なタッチ面(18)上で局地的に変形する接触位置を特定する本位置特定装置(10)は、少なくとも1つの発信トランスデューサ(E1、E2)および受信トランスデューサ(R1、R2)を有し、それぞれを対象物の変形可能なタッチ面上で伝搬する機械的弾性波を発信し、捕捉するように設計する。本装置はさらに、発信トランスデューサおよび受信トランスデューサ(E1、E2、R1、R2)に接続する中央電子装置(12)を有し、この中央電子装置(12)を、局地的に変形する接触があることにより、タッチ面に発信される波の伝搬によって生じるタッチ面(18)の共振振動の少なくとも1つの固有モードの周波数シフトを検出し、周波数シフトを解析することによって局地的に変形する接触位置を特定するようにプログラムする(26、28)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の変形可能なタッチ面上で局地的に変形する接触位置を特定する位置特定装置に関する。本発明はまた、この装置によって実施する方法にも係る。
【背景技術】
【0002】
タッチ面を備える多くの対象物のなかでも特に、携帯電話またはその他の携帯情報端末装置が知られている。これらの対象物のタッチインターフェースは一般に、平面かつ長方形のパネルであり、ユーザはスタイラスまたは指を用いてこのパネルと相互作用することができる。しかし、本発明はより一般に、平面や外周が必ずしも長方形でなくてもよい変形可能なタッチ面を備えるあらゆるタイプの対象物に適用されることがわかるであろう。したがって本発明は、有利には、タッチ操作が可能で直観的に理解できるマンマシンインターフェースを有する通信対象物であって、特に、限定数の固定点で剛性支持体に固定する、3次元に変形可能な外殻を備えるロボットに適用される。
【0003】
「変形可能な」タッチ面または外殻とは、2次元または3次元の表面のことであり、この表面が静的外力、またはタッチ接触、接触力、機械的パルスあるいは衝撃などの動的外力を受けた際に、材料に静的および動的な弾性という意味で形状を変化させることができ、機械的弾性波のなかでも特にパルスによって加振した場合に共振振動を生じることができ、肉眼では感知することができないサブミリメートル単位でも湾曲して変形するような表面である。プラスチック製、ガラス製または金属製の外殻が適当である。
【0004】
周知のタッチ面を備える対象物はいずれも、1つまたは複数の検出技術を用いてタッチ接触または衝撃の位置を特定する位置特定装置を有する。生産コスト削減および外形寸法の縮小に向けて、限定数のセンサを使用する最も簡易な技術のみを採用する傾向が強い。したがって本発明は、さらに正確には、タッチ面に起こる機械的弾性波の伝搬を、特に圧電トランスデューサタイプの検出器を用いて検出する技術を使用する位置特定装置に関する。
【0005】
仏国特許公報第2725513号、第2787608号および第2811107号には、第1の解決策が開示されている。この解決策は、ウェーブパケットを複数の圧電センサに対して送信する時間差を測定すること、および事前に作成した数学式を用いてウェーブパケットの発信源の位置を決定論的に計算することに基づくものである。このウェーブパケットは、さらに正確には、タッチ面と接触する音源から発信される。したがって一般に、指またはスタイラスはパルスを発信するものであるため、指またはスタイラスによる衝撃の位置を特定することができる。しかし、この技術では、衝撃を受けたのちの接触の持続またはタッチ面上の音響源の変位を検出することはできない。ただし、音源がウェーブパケットを規則的に発信するようにすれば別である。この場合、ウェーブパケットを繰り返し発信するスタイラスを使用する適用例に限定される。さらに、この技術は、等方性平板の形状をしたタッチ面によく適合するが、事前に作成した数学式によって音源の位置を決定論的に計算できない3次元の外殻にはどのようなものでも適合しにくい。また、この技術では静的外力またはタッチ接触力(撫でる、粗野な相互作用など)を検出することはできない。
【0006】
仏国特許公報第2841022号には、第2の解決策が開示されている。この解決策は、衝撃の位置を学習により認識することに基づくものである。これを実施する方法では、対象物のタッチ面に起きた衝撃によって発生する音波の検出をもとに測定した少なくとも1つの音響信号と、「サイン集合(ensemble de signatures)」という基準集合との間に生じる相関関係を用いる。この集合は事前に登録したパルスの音響応答で構成され、この応答はそれぞれ、この位置に衝撃が加わったときにある機能と関連付けて認識するように事前に設定した位置に対応している。ここでも同じく衝撃の位置を特定することはできるが、衝撃を受けたのちの接触の持続性、タッチ面上の指またはスタイラスの変位、静的外力またはタッチ接触力を特定することはできない。その代わりにこの解決策は、複雑な形であってもどのような3次元の外殻にも適合する。
【0007】
静的なものでも動きを伴うものでも、任意のタッチ接触、特にタッチ接触の持続性をより効果的に測定できるようにするためのもう1つの解決策が、このタッチ接触とは関係なくタッチ面に規則的に発信される機械的弾性波の伝搬に対してタッチ接触が起こす乱れを測定することである。
【0008】
本発明は、このタイプの解決策に関するものである。したがって本発明は、対象物の変形可能なタッチ面上で局地的に変形する接触位置を特定する位置特定装置であって、
− 対象物の変形可能なタッチ面上で伝搬する機械的弾性波を発信するように設計する少なくとも1つの発信トランスデューサと、
− 対象物の変形可能なタッチ面上で伝搬する機械的弾性波を捕捉するように設計する少なくとも1つの受信トランスデューサと、
− 発信トランスデューサおよび受信トランスデューサに接続し、受信トランスデューサが捕捉する信号を解析し、そこからタッチ接触の有無を差し引くようにプログラムする中央電子装置と
を有する位置特定装置に適用される。
【0009】
このような装置が、国際特許公報第2008/142345号に記載されている。さらに正確にはこの装置により、対象物の固有振動数に一致する複数の周波数成分を持つ波を伝搬させることで、タッチ接触の位置を確実に特定することが可能になる。この波がある一定時間タッチ面を伝搬することにより、さまざまな波長の振動パターン、とりわけ湾曲モードの共振図を作成することができる。この図は、対象物のタッチ面の平面で起きる振動モードの共振図よりも強く乱れているのが特徴であり、その結果、タッチ面と接触する指によって生じる減衰または吸収は、タッチ面が厚い場合でも、固有モードから他のモードへ、接触位置から他の位置への変化を測定できる程度でさまざまに変化する。したがって、対象物の表面に対して十分な数の共振図を作成すれば、学習方法によりタッチ接触の位置特定が可能になる。
【0010】
この方法には、限定数の発信トランスデューサおよび/または受信トランスデューサしか必要としないという利点があり、この方法によって、1秒あたり十数カ所の位置特定を達成することができる測定レートで、どのような形の3次元の外殻に対しても動作させることができる。しかしながら、効率的に動作させるため、この装置は、減衰が検出可能となるように、タッチ面との接触面積が十分に広いタッチ接触である必要がある。したがって、スタイラスの先による接触などほぼ点状のタッチ接触の検出にはほとんど適合しない。このほかこの方法は、薄い外殻によく適合するが、厚い外殻にはほとんど適合しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許公報第2725513号
【特許文献2】仏国特許第2787608号
【特許文献3】仏国特許第2811107号
【特許文献4】国際特許公報第2008/142345号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、対象物の変形可能なタッチ面上で局地的に変形する接触位置を特定する位置特定装置を備え、前述の課題および制約の少なくとも一部を緩和できるようにすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
よって本発明は、対象物の変形可能なタッチ面上で局地的に変形する接触位置を特定する位置特定装置であって、
− 対象物の変形可能なタッチ面上で伝搬する機械的弾性波を発信するように設計する少なくとも1つの発信トランスデューサと、
− 対象物の変形可能なタッチ面上で伝搬する機械的弾性波を捕捉するように設計する少なくとも1つの受信トランスデューサと、
− 発信トランスデューサおよび受信トランスデューサに接続する中央電子装置と
を有する位置特定装置において、
中央電子装置を、
− 局地的に変形する接触があることにより、タッチ面に発信される波の伝搬によって生じるこのタッチ面の共振振動の少なくとも1つの固有モードの周波数シフトを検出し、
− この周波数シフトを解析することによって局地的に変形する接触位置を特定する
ようにプログラムする位置特定装置を目的とする。
【0014】
本発明では、国際特許公報第2008/142345号で推奨されているような機械的弾性波の伝搬を利用する従来の試行とは異なる試行を実施する。実際、本発明は、タッチ接触により生じる固有振動モードの減衰に基づくものではなく、この接触の有無に起因するこれらの固有モードの周波数シフトの測定に基づくものである。ギターの弦の固有共振周波数がこの弦を押さえる接触位置に応じて増加する現象を2次元または3次元に拡大することにより、長いタッチ接触または長い衝撃タイプの接触が、共振面を十分に阻止するかぎり、タッチ面の固有振動周波数を増加させることがわかる。実際に、対象物のタッチ面の1つまたは複数の固有振動モードの周波数シフトは、接触位置によって判別できることがわかる。また、この周波数シフトは、対象物のタッチ面が変形可能であるために接触力に対して感度が高く、例えば撫でるような接触と過度の押圧による粗野な接触とを区別することができることもわかる。スタイラスの先によるタッチ接触のように接触がほぼ点状である場合も感知可能である。
【0015】
選択的に、本発明による装置は、対象物に対して変形可能なタッチ面の剛性固定領域を複数有することができ、これらの領域はタッチ面の共振振動の節を形成し、発信トランスデューサおよび受信トランスデューサはこれらの領域に設置することができる。
【0016】
同じく選択的に、本発明による装置は、発信トランスデューサと受信トランスデューサの組を少なくとも1組有することができ、同じ組のトランスデューサはそれぞれ、変形可能なタッチ面でこの同じ組のもう一方のトランスデューサと対面する直径方向の領域に設置することができる。
【0017】
同じく選択的に、本発明による装置は、発信トランスデューサと受信トランスデューサの組を複数組有することができ、各組を変形可能なタッチ面の特徴軸、とりわけタッチ面の対称軸の両端に配置する。
【0018】
同じく選択的に、発信トランスデューサは機械的弾性波を直線的に発信させ、指向性を示すグラフが同じ組のもう一方のトランスデューサの方向に対して最大強度を示すような向きにする。
【0019】
同じく選択的に、各トランスデューサを、機械的弾性波を一様に発信または受信するように設計し、検出する接触を事前に推測したおおよその位置に応じて、同じ組の2つのトランスデューサの一方を発信トランスデューサとして選択するように、中央電子装置をプログラムする。
【0020】
同じく選択的に、両トランスデューサを、剛性フレーム上にある変形可能なタッチ面の固定補強材と一体化させ、振動が発信トランスデューサから生じるときは変形可能なタッチ面に伝達し、変形可能なタッチ面から生じるときは受信トランスデューサに伝達するようにしてこの振動を補強材に発生させる。
【0021】
同じく選択的に、中央電子装置をさらに、局地的に変形する接触の有無に起因する周波数シフトの検出に応答して、検出した周波数シフトと関係のある音響周波数の振動音響波およびタッチ面に発信された他の機械的弾性波をわずかに上回る振幅を生じる確認用の電気信号を用いて、少なくとも1つの発信トランスデューサを加振し、接触位置を特定するようにプログラムする。
【0022】
本発明は、変形可能なタッチ面を有する外殻および上に定義したような装置を有する通信対象物であって、外殻の変形可能なタッチ面は、特定の変形性、とりわけ非対称の単安定性または双安定性を有する局地的に区切って機能化した少なくとも1つの領域を有する対象物も目的とする。
【0023】
本発明はまた、対象物の変形可能なタッチ面上で局地的に変形する接触位置を特定する方法であって、
− 対象物のタッチ面で、対象物からの少なくとも1つの発信点からくる機械的弾性波の伝搬によって局地的に変形する接触を監視し、対象物の少なくとも1つの受信点で前記機械的弾性波を検出して少なくとも1つの捕捉信号を得るステップと、
− 対象物のタッチ面で局地的に変形する接触位置を、捕捉信号の特性に応じて特定する位置特定ステップと
を含む方法において、
位置特定ステップは、局地的に変形する接触の有無に起因し、タッチ面に発信される波の伝搬によって生じるこのタッチ面の少なくとも1つの固有共振振動モードの周波数シフトの解析を含む方法も目的とする。
【0024】
選択的に、監視ステップは、所定の周波数範囲内で周波数を走査するパルスの機械的弾性波を発信し、この周波数は、接触のないタッチ面の共振振動の少なくとも1つの基本固有周波数とこの周波数の2倍の周波数とを含む。
【0025】
本発明は、添付の図を参照しながら例のみを目的として挙げた以下の説明文を読めばよりよく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態による、対象物の変形可能なタッチ面上で局地的に変形する接触位置を特定する位置特定装置の正面概略図である。
【図2】本発明の第2の実施形態による、対象物の変形可能なタッチ面上で局地的に変形する接触位置を特定する位置特定装置の部分的な正面概略図である。
【図3A】図2に示すタッチ面で局地的に区切って機能化した非対称の双安定性領域の概略的断面図である。
【図3B】図3Aの非対称の双安定性領域に対応する変形および力と変位の曲線を示す概略図およびグラフである。
【図3C】図3Aの非対称の双安定性領域に対応する変形および力と変位の曲線を示す概略図およびグラフである。
【図4】3つの実施変形例による図2に示すタッチ面の概略図および断面図である。
【図5】3つの実施変形例による図2に示すタッチ面の概略図および断面図である。
【図6】3つの実施変形例による図2に示すタッチ面の概略図および断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による対象物の変形可能なタッチ面上で局地的に変形する接触位置を特定する方法の一連のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示す、対象物の変形可能なタッチ面上で局地的に変形する接触位置を特定する位置特定装置10は、中央電子装置12および例えば相互作用するタブレットタイプの対象物14を有する。
【0028】
相互作用するタブレット14は、フレーム16およびこのフレームの周縁の少なくとも一部で支持するタッチ面18を有する。タッチ面18は、例えば金属、ガラスまたはプラスチック製の薄型長方形のプレート形状であり、このプレートの厚み内に機械的弾性波を発信すると振動する。このプレートは、前述したように、機械的弾性波のなかでも特にパルスによって加振すると共振振動が生じ、例えばガラスの場合は肉眼では感知することができないサブミリメートル単位でも湾曲して変形するという意味において変形可能であると考える。
【0029】
図1に示す例では、4つの圧電トランスデューサE1、E2、R1およびR2がタッチプレート18の内面、すなわちタッチ接触できないフレーム16の内側を向いている面に固定する。これらの圧電トランスデューサは特に、導電性エポキシ接着剤またはシアノアクリレート系接着剤を用いてプレート18に接着させることができる。また、剛性支持体に点状に固定する手段でタッチプレート18に一体化させることもできる。
【0030】
これらの圧電トランスデューサは、例えばPZT系強誘電体セラミックス製のトランスデューサである。これらの圧電トランスデューサは、
− 例えば非対称のラム波のような機械的弾性波(すなわち、広意義での音波)を湾曲モードで発信し、タッチプレート18に伝搬させることができる2つの発信トランスデューサE1およびE2と、
− タッチプレート18を湾曲モードで伝搬する機械的弾性波を捕捉することができる2つの受信トランスデューサR1およびR2とを有する。
【0031】
この4つのトランスデューサはさらに、発信と受信からなる2組に分かれている。第1の発信/受信の組を、タッチプレート18の第1の特徴軸D1の両端部に配置するトランスデューサE1およびR1で構成する。この軸D1は、タッチプレート18の対称軸である。さらに正確にはこの軸は、長手方向の中央軸である。第2の発信/受信の組は、軸D1に直角なタッチプレート18の第2の特徴軸D2の両端部に配置するトランスデューサE2およびR2で構成する。この軸D2は、タッチプレート18のもう1つの対称軸である。さらに正確にはこの軸は、横断方向の中央軸である。
【0032】
本発明の好適な実施形態では、軸D1の両端部は、変形可能なタッチプレート18を対象物14の剛性支持体に剛性固定する領域でもある。さらに、発信トランスデューサE1は、機械的弾性波を直線的に発信する。さらに正確には、この発信トランスデューサの形状および向きは、指向性を示すグラフが軸D1の方向、つまり受信トランスデューサR1の方向に対して最大強度を示すように設定したものである。したがって、パルス波が発信トランスデューサE1から軸D1の方向に発信されると、このパルス波はタッチプレート18に少なくとも1つの基本固有周波数を持つ共振振動を起こす。この基本固有周波数は、プレートに接触がないときのプレートの長さと関係があり、剛性固定領域、つまりトランスデューサE1およびR1を配置する領域は、タッチプレート18のどの固有周波数にもこのD1の方向に共振振動の節を形成することがわかる。
【0033】
同じように、軸D2の両端部は、変形可能なタッチプレート18を対象物14の剛性支持体に剛性固定する領域でもある。さらに、発信トランスデューサE2は、機械的弾性波を直線的に発信し、その形状および向きは、指向性を示すグラフが軸D2の方向、つまり受信トランスデューサR2の方向に対して最大強度を示すように設定したものである。したがって、パルス波が発信トランスデューサE2から軸D2の方向に発信されると、このパルス波はタッチプレート18に、少なくとも1つの基本固有周波数を持つ共振振動を起こす。この基本固有周波数は、接触がないときのプレートの幅と関係があり、剛性固定領域、つまりトランスデューサE2およびR2を配置する領域は、タッチプレート18のどの固有周波数にもこのD2の方向に共振振動の節を形成することがわかる。
【0034】
トランスデューサE1、E2、R1およびR2は、有線または無線の少なくとも1つの連結20によって中央電子装置12に接続している。この中央電子装置12を、
− 局地的に変形する接触の有無に起因し、このタッチ面に発信する波の伝搬によって生じるタッチ面の共振振動の少なくとも1つの固有モードの周波数シフトを検出し、
− この周波数シフトを解析することによって局地的に変形する接触位置を特定する
ようにプログラムする。
【0035】
トランスデューサE1、E2、R1およびR2との接続20は特に、オーディオタイプの同軸ケーブルまたはこれ以外のあらゆるシールド接続で構成することができる。
【0036】
さらに正確には、中央電子装置12は、パルスの機械的弾性波を発信トランスデューサE1からD1の方向へ発信することを命令するようにプログラムした発信器22を有し、これらの波が複数の固有モード(すなわち1つの基本モードおよび複数の調和モード)に沿って、タッチプレート18の湾曲の共振振動を生じるようにする。中央電子装置はさらに、タッチ面の共振振動の特性信号をトランスデューサR1から捕捉するようにプログラムした受信器24を有し、捕捉したこの信号スペクトルは、方向D1に対するプレートの固有モードの周波数に振幅ピークを有する。よって中央電子装置12の受信器24を、とりわけ迅速なフーリエ変換の計算によって、捕捉した信号の周波数のピークを検出するようにプログラムしたスペクトラル解析モジュール26に接続する。タッチプレート18への接触がない場合、検出した固有モードがタッチプレートの長さの特徴となる。タッチプレート18への接触がある場合、軸D1をタッチプレートと関係のある目印の横座標軸と考えれば、検出した固有モードは、接触がない場合に検出可能な固有モードに対してシフトし、このシフトが接触の横座標xの特徴となる。
【0037】
この現象をさらによく理解するため、ギターの弦の振動で一次元の同じ現象を再現することができる。ギターの弦を両端部で固定して張り、はじいて加振させると、共振箱の開口に対面して振動する弦の部分には、弦の全長のどこが押さえられてどこが押さえられていないかによってさまざまに異なる共振音周波数が発生する。換言すれば、スタイラスまたは指を用いて変形可能なタッチプレート18上で局地的に変形する接触を加えることは、固定点を新たに挿入し、変形可能なタッチプレート18の局地的、全体的または部分的な阻止の位置および性質に応じて有意な共振周波数シフトを生じさせることとほぼ同じであると考えることができる。
【0038】
同じように、発信器22は、パルスの機械的弾性波を発信トランスデューサE2から方向D2へ発信することを命令するようにプログラムし、これらの波が、複数の固有モード(すなわち、1つの基本モードおよび複数の調和モード)に従ってタッチプレート18の湾曲の共振振動を生じるようにする。受信器24をさらに、タッチプレートの共振振動の特性信号をトランスデューサR2から捕捉するようにプログラムし、捕捉したこの信号のスペクトルが、方向D1に対するプレートの固有モードの周波数に振幅のピークを有するようにする。タッチプレート18への接触がない場合、検出した固有モードはタッチプレートの幅の特徴となる。したがって、タッチプレート18への接触がある場合、軸D2をタッチプレートに関連する目印の横座標軸と考えれば、検出した固有モードは、接触がない場合に検出可能な固有モードに対してシフトし、このシフトは接触の縦座標yの特徴となる。
【0039】
このほか、2つの受信トランスデューサR1およびR2は、2つのアナログ−デジタル変換器に接続することができ、このアナログ−デジタル変換器自体は受信器24または受信器の構成部品に接続する。AD変換器および受信器24は、捕捉した信号を少なくとも8ビット、好ましくは10ビット、さらには12ビット以上で、少なくとも200kHzのレートでサンプリングすることができる。
【0040】
接触の横座標xおよび縦座標yの値を推定するため、中央電子装置12は解析モジュール28を有し、このモジュールは、検出した固有モードを対象とする方向の接触のない基準固有モードと比較し、そこからこれらの検出した固有モードのそれぞれのシフトを差し引いたのち、これらのシフトに応じて接触位置を推定するようにプログラムする。この推定は、例えば補間法からの減算式など、事前に作成しメモリ30に格納した数学式を用いて実施するか、所定の位置の集合に対して事前に測定し、基準ベクトルまたは周波数シフトと接触点との対応表の形でメモリ30に格納したシフトを比較することによって実施する。ギターの弦の振動を用いた一次元での同じ現象によって、受信トランスデューサを対象とする方向(トランスデューサR1には軸D1の方向、トランスデューサR2には軸D2の方向)へ近づけるほど、基本モードおよび調和モードの周波数は高くなることが実際にわかる。
【0041】
2つの軸D1およびD2に沿って基本周波数および場合によっては調和周波数のシフトを同時に把握することにより、接触位置(x、y)を突き止めることができる。発信トランスデューサE1およびE2を軸D1およびD2に沿って交互に加振し、2つの方向の固有周波数同士の混合を抑えることが有利である。これに対して受信トランスデューサR1およびR2は、軸D1および軸D2に沿って常に信号を捕捉することができる。
【0042】
したがって、タッチプレート18上の各接触に対し、指またはスタイラス32を用いることによりこの接触の位置(x、y)が得られ、この接触点を例えば画面(図示せず)に表示することができる。広義には、波は発信トランスデューサE1およびE2から規則的に発信することができるため、タッチプレート18上で連続した接触を検出することができる。この接触は動的曲線を描く軌跡34を形成し、曲線はこの軌跡の補間によって得られるため、画面上に表示することができる。
【0043】
図1に示す実施形態によれば、タッチプレート18は相互作用するタブレットタイプの対象物16に搭載し、この対象物自体は対象物16の外部にある中央電子装置12に接続する。考えられるもう1つの実施形態によれば、タッチプレート18はガラス製で透明にし、携帯電話やその他の携帯情報端末装置などの中央電子装置12を含む携帯型電子装置に組み込むことができる。この場合、タッチプレートは、検出した軌跡34の補間によって得られる動的曲線の表示画面としても機能することができる。
【0044】
図1に示すような薄く平らで長方形のタッチプレートを用いる簡易な適用例では、2つの主な方向(長さおよび幅)それぞれに対して単一の基本固有モードの周波数シフトを推定することで、十分に接触位置(x、y)を突き止められるがわかる。実際に、この基本モードは、タッチプレート18の最低数の振動節に関連しているモードであり、とりわけ優先的な方向D1およびD2に沿ってタッチ面をフレームに固定する領域のみに関連しているため、特に重要である。しかし、タッチ面がさらに複雑になり、とりわけ周囲が多角形の3次元の外殻など、平らではない場合、接触位置に関するあらゆる不明瞭性を排除するため、以下のパラメータ:
− 望ましくない接続作用が生じる可能性があることを考慮しつつ、タッチ面の特徴的寸法(例えば長さ、幅、対角線またはこれよりも大きな特徴的寸法およびこれよりも小さい特徴的寸法)の中央軸の固定端部に配置する発信トランスデューサと受信トランスデューサとの組数を増やす、または、
− 接触の有無に起因するシフトを推定する対象となる基本周波数および調和周波数を増加させる
ことを盛り込むことが有利となる。
【0045】
このほか、前述したように、固定点に配置した受信トランスデューサの接触が、対象とする方向(トランスデューサR1には軸D1の方向、トランスデューサR2には軸D2の方向)へ近づくほど、基本モードおよび調和モードの周波数は高くなる。理論的に、2次元または3次元の適用例での周波数シフトは、ギターの弦の1次元の例で基本共振がアクティブな弦部分の長さに反比例する場合ほど大きくはないとしても、共振周波数は大幅に増加し、受信トランスデューサを近づけると無限に近づく可能性もあるため、共振周波数の検索範囲は必然的に拡大することがわかる。
【0046】
特に、接触がある方向の発信トランスデューサと受信トランスデューサとの間の中間距離に位置するときは、この方向の共振周波数は最大2倍になると推定される。
【0047】
また、薄型で長方形のプレートまたはさらに複雑な形の3次元の外殻が線形システムでPZT系の圧電トランスデューサを備え、出力の電気インピーダンスが低い場合、トランスデューサのペアの発信器および受信器が出力信号に対して果たす役割には相違がないこともわかる。したがって、いずれの場合においても、2つのトランスデューサのいずれかによって捕捉した信号スペクトルの少なくとも1つは、最大2倍の固有周波数を有する。
【0048】
好適な実施形態では、ある方向の発信トランスデューサと受信トランスデューサとの中間で、接触が発信器よりも受信器の方に近い場合、発信器は受信器モードに切り替わり、受信器は発信器モードに切り替わる。この切り替えは、接触を事前に推測したおおよその位置特定をもとに行うことができる。したがって、トランスデューサの発信器または受信器の役割を置換し、それに伴い座標軸の方向を置換すると、共振周波数の検索を接触がないときの単一の共振周波数から2倍の周波数までの帯域に限定することができる。またその結果、基本モードの周波数でのシフトからのみ接触位置を差し引くと、発信トランスデューサを加振するスペクトルは、有利には周波数で変調した搬送波を伴うパルスとなり、この変調は時間に対して線形であり、その範囲は基準の基本共振周波数から対象とする方向におけるこの周波数2倍までである。よってこの実施形態においても、トランスデューサE1およびE2は受信器24に接続し、トランスデューサR1およびR2は発信器22に接続する。したがって各トランスデューサE1、E2、R1またはR2は、発信または受信の際に中央電子装置12から命令を受ける。
【0049】
図2に示す実施形態では、タッチ面18の形状は、複雑な形をした3次元の外殻であり、特に対称軸はない。この外殻は、固定領域36に配置する4つの補強材を用いて剛性支持体を形成するフレーム38に固定する。この外殻は、例えば前例のように、外殻の形状の主な2つの特徴的方向D1およびD2に沿って配置する2組の発信/受信トランスデューサE1、R1およびE2、R2を有する。
【0050】
前例と同じく、発信トランスデューサE1およびE2は交互に発信するのに対し、受信器R1、R2は同時に受信する。さらに、発信器/受信器の役割は、前例でも推奨したように、最初の推測で観察した接触位置に応じて切り替えることができる。
【0051】
さらに複雑なこの構成では、外殻の基本共振周波数のシフトのみを測定するのではなく、周波数で線形的に変調した搬送波を伴う電気パルスによって外殻を加振し、搬送波は外殻のN個の共振周波数、特に基本周波数および(N−1)個の第1の調和周波数を走査する。実際にこのN個の第1の共振周波数は一般に、点状の接触またはタッチ接触による接触で生じる周波数シフトに対して最も感度が高い。さらに、主として外殻の最も低い周波数の共振に注目すると、外殻の寸法は波長に等しく、指またはスタイラスなどとの任意の接触面積は、外殻の活動表面に対しては常に無視してよいものである。つまり、この接触面積は一般に外殻の活動面積の1%未満であるため、周波数シフトは、接触が指の腹によるものであってもプラスチック製スタイラスの先によるものであっても事実上同じである。よって接触位置の決定は、測定したN個の要素を持つシフトのベクトルと、N個の要素を持ちそれぞれが所定の位置に対応する基準ベクトルの基底とを比較することによって行う。
【0052】
選択的ではあるが人間工学および感覚の観点から有利なように、本発明による装置は、接触を検出するたびにユーザに確認信号を供給するようにできる。したがって、中央電子装置12をさらに、局地的に変形する接触の有無に起因する、タッチ面18の少なくとも1つの固有振動モードの周波数シフトの検出に応答して、振動音響波の発生を確認する電気信号を用いて発信トランスデューサE1またはE2の少なくとも一方を加振するようにプログラムすることができる。確認信号によって生じるこの振動の振動音響周波数は、検出した周波数シフトと関連付けることができる。特に、2つの方向D1およびD2で基本固有モードの周波数シフトを少なくとも2つ検出した場合、この振動音響周波数は多数あり、少なくともシフトした基本モードの周波数を含むことができる。中央電子装置12のこの追加機能を実現するには、発信器22をスペクトル解析モジュール26および/または解析モジュール28に接続する必要がある。
【0053】
この確認用の振動音響波をユーザが正確に感知するためには、この振動音響波の振幅が、タッチ面で発信される接触位置特定のための他の機械的弾性波よりもわずかに上回っていることが重要である。振幅が「わずかに上回っている」とは、ユーザがこの確認信号の特性をタッチ接触か聴覚によって感知する点を上回っているということである。他の機械的弾性波を10〜100倍上回る振幅が適当である。
【0054】
また、この確認用の振動音響波をユーザが正確に感知するためには、この振動音響波の継続時間が十分であることも重要である。特に、継続時間5ms〜150msが適当である。
【0055】
外殻の共振周波数から所定の周波数をシフトすることも可能であり、これは、外殻を任意の点で押さえるだけでなく、特定の変形性、とりわけ単安定性または非対称の双安定性を有する局地的に区切って機能化した領域を先験的に外殻に生成することで可能になる。局地的に区切るこのような機能化領域を図2に示し、符号40および42を付している。この領域は、例えば円形で、外殻18の所定の部位に型打ちするか、外殻の厚みを局地的に薄くしてその領域の周縁にプラスチック射出することによって形成する。
【0056】
外殻18に特定の変形性を有する、局地的に区切って機能化するこれらの領域を設けることは、これらの領域が所定の特定の運動と力の法則に従って圧力によって変形した際に外殻18の共振周波数のシフトが生じるという利点があり、このシフトは、より一般に外殻の任意の点での接触によって生じる前述のシフトよりもはるかに大きい。
【0057】
さらに、これらの周波数シフトは、単安定または双安定領域の対極の位置である載置位置と押圧位置との間で変化し、この領域の作動を認識しやすくしたり、ノイズによる加振に対してこの領域の耐性を増強させたりすることができる。これらの領域を機能化する、つまりこの領域の「載置」位置または「押圧」位置を所定の機能と関連付けることで、これらの領域に係る機能の予想外の作用を制限し、外殻18が相互作用に対して感度を高めるようにする。実際には、この領域のどちらか一方の各位置を1つの機能に関連付けると同時に、検出しやすく他の基準ベクトルと区別しやすい基準の周波数シフトのベクトルにも関連付ける。
【0058】
双安定領域の場合、このような領域を押圧すると、この領域のリセット、つまり最初の押圧していない位置に戻すには、一方を押圧したときは他方がリセットしこの逆も同様に起こり、同時に押圧することのできない2つの双安定領域を組み合わせることで実現する。
【0059】
図2の外殻18、またはより一般的に任意の変形可能なタッチ面にこれらの領域があることは、図1を参照して詳述した変形する接触位置を特定する原理を代替または補足するものとしてとらえることができる。
【0060】
外殻18は、この領域のどちらか一方で圧力を受けた場合、数ミリメートル動いて変形し、これらの領域の運動と力の法則は、単調増加型、非線形的な増加型、双安定型または単安定型となる。
【0061】
図3Aは、例えば図2の領域40または42の一方である双安定領域の概略的断面図である。この双安定領域の周縁にある端部は、簡略化のために固定しているように図示しているが、実際には変形可能な外殻18の残りの部分につながり、この外殻自体も双安定領域に接触がある場合に最低限変形することができる。
【0062】
双安定領域40または42の第1の載置位置「1」では、この領域は圧力を一切受けずに安定した均衡を保つ。
【0063】
第2の不均衡な中間位置「2」では、領域は圧力を受け、使用する材料の弾性法則によって起こる変形モードに従って表面が変形する。
【0064】
この領域はこの圧力を維持したまま、不安定な均衡、つまり切り替えが起こる第3の中間位置「3」へ移ったのち、不均衡な第4の中間位置「4」へ移り、その後安定した均衡な第5の「押圧」位置に達する。
【0065】
ポテンシャルエネルギーの面では、最初に載置位置にある領域40または42の表面に直角の力を加えると、切り替え位置まで湾曲するポテンシャルエネルギーを貯蔵する領域内部に側面の外力が生じ、この力はその後切り替わって押圧位置に相当する井戸型ポテンシャルに落ちる。
【0066】
領域40または42が非対称に双安定している場合、表面中央で測定する通常の変位をdとし、中央で加える通常の力の強度をFとすると(図3Bを参照)、図3Cに示す運動と力の法則が得られる。
【0067】
図3Cでは、ゼロの力にあたる位置d=0は、双安定領域の第1の安定位置「1」に相当する。位置0<d<dtopは、双安定領域が変形する弾性モードが変わる前の位置「2」に相当する。双安定領域の切り替えが生じる正の力の閾値強度Ftopにあたる位置d=dtopは、位置「3」に相当する。位置d=dmidは、双安定領域の2つの安定位置の間に位置するゼロの力に相当する。第1の安定位置「1」に戻る切り替えが生じる負の力の閾値強度−Fbotにあたる位置d=dbotも、位置「3」による弾性変形に相当する。位置dtop<d<dendは、双安定領域が変形する弾性モードが変化したのちの位置「4」に相当する。ゼロの力にあたる位置d=dendは、双安定領域の第2の安定位置「5」に相当する。
【0068】
領域40または42の双安定性の非対称は、FtopとFbotとの強度の差によるものである。この場合、2つの安定位置「1」および「5」に関連する静的外力は異なり、異なる動的な弾性定数に関連しているため、2つの安定位置に関連する外殻18の共振周波数も異なる。そのため、この2つの位置を確実に区別することができる。
【0069】
領域40または42が双安定ではなく単安定の場合でも、同様の論理を適用できる。この場合、運動と力の法則にも傾斜の折れがみられるが、出発位置以外に力がゼロの安定位置は存在しない。よって領域40または42は、傾斜がきわめて強くなる弾性限界位置まで押圧することができる。領域がこの限界位置にあるとき、外殻18にかかる側面の静的外力により共振周波数がシフトするが、その量は、この領域上の接触だけでなくその押圧に対しても認識できるほど特徴的な量である。換言すると、またさらに正確には、周波数シフトは、対象とする軸に沿った外殻18の基本共振の阻止と、外殻内部に対する内側の機械的外力の変化と関係する同調の変化との累積であり、この両者によって弾性特性が変わり、それによって特に湾曲波の伝搬速度が変化する結果、基本共振周波数とその調和周波数が変化する。
【0070】
このほか、このような単安定領域上の接触力を測定するため、変形可能な領域の2つの対極位置の間の相対的な周波数シフトを事前に登録することができる。
【0071】
単調増加型など、さらに単調型の運動と力の法則によって、変形可能な領域に対しても同様の論理を適用できる。
【0072】
また、外殻18は、特定の変形性を有する、局地的に区切って機能化した複数の領域を有し、この領域を異なるサイズにすることができるが、これによって各領域に特定の周波数シフトが生じる。これらの双安定または単安定領域により、時間的に一貫した特定の周波数シフトを生成することができ、最終的には外殻18に、双安定または単安定の基本共振周波数および調和周波数に関連する双安定または単安定の電圧または静的外力が発生する状況が生成されることがわかる。
【0073】
図4は、第1の変形例による、図2に示す外殻18の軸D1を含む面に沿った断面図である。第1の補強材44で、トランスデューサE1のある箇所のフレーム38に外殻18を剛性固定する。第2の補強材46で、トランスデューサR1のある箇所のフレーム38に外殻18を剛性固定する。外殻はこの2つの固定補強材の間で変形可能であり、特に、この変形例において単安定となるように型打ちによって形成した領域40および42で変形可能である。この変形例においても、トランスデューサE1およびR1はPZT系の圧電ペレットであり、方向D1への放射を優先する形態になっている。このトランスデューサは、例えば外殻18の下に接着させるか、(E1に対する)補強材44および(R1に対する)補強材46の直近でこの外殻の厚み内部に埋め込む。また、補強材は、例えば外殻18と同じ成形型で作製する。補強材は、リベット締めにしてもよいし、締め付けビスを用いて外殻18を締め付けてもよい。
【0074】
図5は、第2の変形例による、図2に示す外殻18の軸D1を含む面に沿った断面図である。この第2の変形例によれば、領域40および42は、外殻の厚みを局地的に薄くし、双安定となるようにその領域の周縁にプラスチック射出することによって外殻18に形成する。この変形例においても、トランスデューサE1およびR1はそれぞれ補強材44および46内に埋め込み、この補強材自体は外殻18と同じ成形型で作製する。
【0075】
図6は、第3の変形例による、図2に示す外殻18の軸D1を含む面に沿った断面図である。この第3の変形例によれば、領域40および42は、第2の変形例のようにプラスチック射出によって外殻18に形成する。これに対してトランスデューサE1およびR1は円形であり、両極を有し、それぞれ補強材44および46の環状リング48および50に取り付ける。補強材44および46の環状リング48および50は、例えばプラスチック射出によって得る。また、トランスデューサE1およびR1はPZT系のセラミックスであり、導電性接着剤に頼らずに電気接触が容易になるように、内部電極が銀メッキ線による折り返し電極になっている。
【0076】
補強材44および46は、外殻18と同じ成形型で作製し、締め付けビスでフレーム38に固定する。補強材は、環状リングと外殻18との間で中実にする。この構成では、補強材の環状リングの厚みは補強材の支柱の直径に等しいことが好ましい。これとは逆に、補強材44および46を中空にし、外殻18はこの補強材を縦に貫通するリベットでフレーム38に固定してもよい。この構成では、補強材の環状リングの厚みは、補強材の支柱の内壁の厚みの2倍に等しいことが好ましい。
【0077】
この第3の変形例の利点は、両極を有する環状のトランスデューサE1およびR1が、補強材44および46を介して外殻18に送信したり外殻18から受信したりする湾曲モードを生じたり検出したりすることである。環状のトランスデューサを接着する補強材の環状リングは、外殻18が湾曲する振動エネルギーを湾曲波でトランスデューサに結合する有効な手段となる。さらに、各トランスデューサの両極を分離するラインは、外殻18に生じる湾曲波の指向性のグラフを必要とする。したがって、外殻18の形が単純な場合、両極を分離するラインは外殻の縁に平行になるような設置することができる。よって発信および/または受信の強度は、両極を分離するラインに直角な中央軸で最大となる。トランスデューサE2およびR2にも適用したこのトランスデューサの構成により、外殻18内で湾曲モードが生じやすくなり、選択して検出できるようになり、周波数シフトによる位置特定方法が点状の接触に対してさらに感度が高くなる。トランスデューサの指向性により、外殻18の軸D1およびD2の結合を解放しやすくすることもできる。この結合の解放は、外殻の全周囲を剛性固定せずに固定領域36に局地的に固定するだけの場合はさらに容易になる。
【0078】
この第3の変形例の利点は、発信トランスデューサおよび受信トランスデューサを完全に見えなくすることである。
【0079】
このほか、固定用の補強材を設けることのもう1つの利点が、外殻と支持体との間にある程度の共振があることによって、外殻がパルスモードでスピーカの役割を果たすことができる点である。パルス受信モードでは、外殻は受信トランスデューサの受信アンテナとして働き、高感度のマイクロホンの機能を果たすことができる。
【0080】
次に、図1のタッチプレートまたは図2の3次元の外殻のような変形可能なタッチ面18で局地的に変形する接触位置の特定方法を、図7を参照して詳述する。
【0081】
例えば1秒当たり十数回、とりわけ1秒あたり50から100回測定するレートなどの規則的な間隔で、中央電子装置12は、変形可能なタッチ面18の外殻を監視するステップ100を開始したのち、接触位置の特定ステップ200に移る。
【0082】
各監視ステップ100では、tの時点で、主な特徴的方向(D1またはD2)に沿ってパルスの機械的弾性波を発信トランスデューサ(例えばE1またはE2)から変形可能なタッチ面18へ発信する(102)。機械的弾性波は、2つの異なる伝搬位相に従って伝搬する。一時的に伝搬する第1の位相では、tの時点からtの時点へ広がり、この位相では発信した波の前線は、対象とする方向にある受信トランスデューサ(例えばR1またはR2)に到達する。静的に伝搬する第2の位相では、tの時点から監視目的のtの時点まで広がり、この段階ではパルスの機械的弾性波を対象とする方向へ発信すると、少なくとも1つの固有モードに従って変形可能なタッチ面18の共振振動が生じる。
【0083】
この監視ステップ用に選択した発信トランスデューサは、例えば階段状の電気パルスであるディラックパルス、または優先的に以下のタイプの法則に従ってスペクトル[f;2f]に対する周波数で線形的に変調した搬送波を伴う継続時間Tのパルスで加振する。
【0084】
【数1】

【0085】
式中、fは対象となる方向に接触のないタッチ面の基本共振周波数である。
【0086】
パルスの継続時間Tは、約10msを選択する。さらに、正弦曲線のパルスではなく、線形的に周波数に変調した正方形のパルスが好ましい。また、複雑な形のタッチ面の場合、発信トランスデューサを加振する電気パルスは、広いスペクトル[f;20f]に対して変調することができる。
【0087】
対象とする方向で変形可能なタッチ面18の共振振動の少なくとも1つの固有モードを確立したのちに、監視ステップ100は、この共振振動をこの方向に関連付けた受信トランスデューサによって検出するステップ104を含み、少なくとも1つの捕捉信号を得る。この検出104はtの時点で開始し、検出106が終わるtの時点まで続け、この時間間隔の間に捕捉信号を測定する。
【0088】
監視ステップ100の次は、接触の位置特定ステップ200であり、このステップでは中央電子装置12がタッチ面18で変形すると思われる接触を識別し、位置を特定する。さらに正確にはこのステップ200では、中央電子装置12のスペクトル解析モジュール26は、所定の周波帯域で捕捉した信号スペクトルの振幅ピークを少なくとも1つ検出する。この振幅ピークは、タッチ面18の信号の固有モードにあり、とりわけ少なくとも基本固有モードの周波数にある。複数の振幅ピークを検出した場合、それは基本固有モードであるが、少なくとも1つの調和固有モードでもある。その後、この検出の結果を解析モジュール28に供給する。解析モジュール28は、検出した固有モードを対象とする方向での接触がない基準の固有モードと比較する。これらの検出した固有モードのそれぞれのシフトを差し引いたのち、これらのシフトに応じて可能性のある接触位置を推定する。タッチ面に単安定の特定領域がある場合、前述したように、接触力を測定することも可能である。また、選択的に、同じく前述したように、接触の検出および位置確認の応答として確認信号を発信してもよい。
【0089】
前述したような、変形可能なタッチ面で局地的に変形する接触位置を特定する位置特定装置および方法によって、点状または広い接触、短いまたは長い接触、優しい接触または粗野な接触などとはまったく異なる接触を簡単に特定し、特徴付けることができる。ただし、共振表面を十分な時間十分に阻止し、固有周波数シフトが生じる場合に限る。この観点から、タッチ面が変形可能であることにより接触時間が長くなり、検出が容易になり、これには接触が衝撃である場合も含まれる。
【0090】
その上、周波数シフトの推定を実施する原則はきわめて単純であることから、市販のマイクロコントローラに実装することができ、応答時間は短くなり、一般に1〜100msになる。したがって、軌跡(つまり連続的接触)の検出に繰り返し実装することができる。
【0091】
もう1つの利点は、納得のいく結果が得られることであり、例えば限定数の発信器および受信器をもとに、ミリメートル単位の正確な位置特定ができる。とりわけ、タッチ面の主な特徴を検出するごとに発信トランスデューサおよび受信トランスデューサの組が最低1組あれば十分である。
【0092】
さらに、トランスデューサを変形可能なタッチ面の固定点(振動節)に設置し、機械的弾性波を直線的に発信させると、表面の形が単純な場合、単純に主な方向でのタッチ面の基本周波数シフトをもとに接触の位置特定が可能になる。
【0093】
また、タッチ面に特定の変形性を有し、局地的に区切って機能化した領域を設ける実施形態では、限定数のトランスデューサを有し、処理用の電子部品も小型で消費電力の少ない安価なキーボードを考案することも可能である。さらに、この実施形態では、周囲の振動および音響雑音、または相互作用がない場合の粘着テープおよび汚れの影響に対する耐性が高い。なぜなら、相互作用に特徴的な周波数シフトが現れるためには、タッチ面を局地的に変形可能なこれらの領域で阻止し、さらには機械的電圧を印加する必要があるためである。また、機械的なキーを加えることなくキーボードを供給できるという利点もある。
【0094】
本発明は、ガラス製の平面に限定されるものではなく、湾曲面およびプラスチックまたは金属製の外殻にも適用されるため、可能な適用例が多数あることも述べた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
前述した装置および方法の利用が可能な産業上の適用例として特に、
− 接触を動的に解釈するマンマシンインターフェースがあることを前提とするゲームコンソール、携帯電話、携帯情報端末および液晶画面に用いるタッチパネル、
− 平坦または湾曲したタッチキーボード、複雑な形の対象物にプラスチック射出によって設けるタッチコマンドボタン、
− 撫でる、たたくなど、さまざまな種類のタッチ接触を感知することができるロボットまたは玩具に対してタッチ操作可能な外殻で、このようなロボットと人間との直観的相互作用を容易にするもの、
− 機能化した特定領域を有するロボットまたは玩具のタッチ操作可能な外殻、
− 共振箱を形成する閉鎖した3次元の外殻であって、とりわけプログラム可能なキーおよび電気機械的加振のあるピアノ型のタッチ機能の楽器の製作に適合し、この加振は、指による外殻への接触位置を検出する第1のステップと、測定した所望の周波数シフト、場合によっては検索した音響レンダリングに応じてスペクトルが多様になった周波数シフトに対応する周波数を有する強力な信号によって、少なくとも1つの発信トランスデューサを加振し、接触位置の特定後直ちにパルス音による反応を発生させる第2のステップとの2つのステップを含むもの
があるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
このほか、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではないことがわかるであろう。ここに開示した教示に照らし合わせて、上に記載した実施形態にさまざまな修正を加えてもよいことは当業者には明らかであろう。以下の請求項では、使用した用語が請求項を本明細書で明らかにした実施形態に限定するものと解釈してはならず、本文の記載およびそこから予見される内容は、ここに開示した教示の実装に一般知識を応用することによって当業者が到達しうる範囲内であることから、請求項が範囲に含めると想定するあらゆる同等のものも含まれると解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(14)の変形可能なタッチ面(18)上で局地的に変形する接触位置を特定する位置特定装置であって、
− 前記対象物の前記変形可能なタッチ面上で伝搬する機械的弾性波を発信するように設計する少なくとも1つの発信トランスデューサ(E1、E2)と、
− 前記対象物の前記変形可能なタッチ面上で伝搬する機械的弾性波を捕捉するように設計する少なくとも1つの受信トランスデューサ(R1、R2)と、
− 前記発信トランスデューサおよび前記受信トランスデューサ(E1、E2、R1、R2)に接続する中央電子装置(12)と
を有する位置特定装置において、
前記中央電子装置(12)を、
− 局地的に変形する接触があることにより、前記タッチ面に発信される波の伝搬によって生じる前記タッチ面(18)の共振振動の少なくとも1つの固有モードの周波数シフトを検出し、
− 前記周波数シフトを解析することによって局地的に変形する接触位置を特定する
ようにプログラムする(26、28)位置特定装置(10)。
【請求項2】
前記対象物(14)に対して前記変形可能なタッチ面(18)の剛性固定領域(36)を複数有し、該領域は前記タッチ面の共振振動の節を形成し、前記発信トランスデューサおよび前記受信トランスデューサ(E1、E2、R1、R2)は前記領域に設置する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記発信トランスデューサと前記受信トランスデューサ(E1、E2、R1、R2)の組を少なくとも1組有し、同じ組のトランスデューサはそれぞれ、前記変形可能なタッチ面(18)で前記同じ組のもう一方のトランスデューサと対面する直径方向の領域(36)に設置する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記発信トランスデューサと前記受信トランスデューサ(E1、E2、R1、R2)の組を複数組有し、各組を前記変形可能なタッチ面(18)の特徴軸(D1、D2)、とりわけ前記タッチ面の対称軸の両端に配置する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記発信トランスデューサ(E1、E2)は機械的弾性波を直線的に発信させ、指向性を示すグラフが同じ組のもう一方のトランスデューサ(R1、R2)の方向に対して最大強度を示すような向きにする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
各トランスデューサ(E1、E2、R1、R2)を機械的弾性波を一様に発信または受信するように設計し、検出する接触を事前に推測したおおよその位置に応じて、同じ組の2つのトランスデューサの一方を発信トランスデューサとして選択するように、前記中央電子装置(12)をプログラムする、請求項3から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記トランスデューサ(E1、R1)を、剛性フレーム(38)上にある前記変形可能なタッチ面(18)の固定補強材(44、46)と一体化させ、振動が発信トランスデューサ(E1)から生じるときは前記変形可能なタッチ面(18)に伝達し、前記変形可能なタッチ面(18)から生じるときは受信トランスデューサ(R1)に伝達するようにして前記振動を前記補強材(44、46)に発生させる、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記中央電子装置(12)をさらに、局地的に変形する接触の有無に起因する周波数シフトの検出に応答して、検出した周波数シフトと関係のある音響周波数の振動音響波およびタッチ面に発信された他の機械的弾性波をわずかに上回る振幅を生じる確認用の電気信号を用いて、少なくとも1つの発信トランスデューサ(E1、E2)を加振し、接触位置を特定するようにプログラムする、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の変形可能なタッチ面を備える外殻(18)および装置(10)を有する通信対象物であって、前記外殻の前記変形可能なタッチ面(18)は、特定の変形性、とりわけ非対称の単安定性または双安定性を有する局地的に区切って機能化した少なくとも1つの領域(40、42)を有する対象物。
【請求項10】
対象物(14)の変形可能なタッチ面(18)上で局地的に変形する接触位置を特定する方法であって、
− 前記対象物の前記タッチ面で、前記対象物からの少なくとも1つの発信点(E1、E2)からくる機械的弾性波の伝搬(102)によって局地的に変形する接触を監視し、前記対象物の少なくとも1つの受信点(R1、R2)で前記機械的弾性波を検出して少なくとも1つの捕捉信号を得るステップ(100)と、
− 前記対象物の前記タッチ面で局地的に変形する接触位置を、前記捕捉信号の特性に応じて特定する位置特定ステップ(200)と
を含む方法において、
前記位置特定ステップは、局地的に変形する接触の有無に起因し、タッチ面に発信される波の前記伝搬によって生じる前記タッチ面の少なくとも1つの固有共振振動モードの周波数シフトの解析を含む方法。
【請求項11】
前記監視ステップ(100)は、所定の周波数範囲内で周波数を走査するパルスの機械的弾性波を発信し、前記周波数は、接触のない前記タッチ面(18)の共振振動の少なくとも1つの基本固有周波数と該周波数の2倍の周波数とを含む、請求項10に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2013−500532(P2013−500532A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522205(P2012−522205)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051070
【国際公開番号】WO2011/015733
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(510191207)
【Fターム(参考)】