説明

対象物を識別する方法及び識別情報を有するタグ

識別情報を有する対象物(50)を識別する方法であって、上記識別情報が対象物の同一性を検証するために使用される方法において、タグ(500,501,502)の少なくとも一部の磁場(57)の少なくとも一つの特性を決定することにより、第1の特定の磁気信号を得るステップと、上記第1の特定の磁気信号に関連する信号情報を記憶するステップと、を含み、タグ(500,501,502)が複数の細孔を有する実質的に非磁性の母材を備え、上記細孔の少なくとも一部が磁性材料を含み、上記記憶された信号情報が対象物の識別情報を形成する、方法。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本発明は、識別情報を有する対象物を識別する方法であって、識別情報が対象物の同一性を検証するために使用される方法に関する。また、本発明は、識別情報を持つタグであって、上記識別情報が対象物の同一性を検証するために使用されるタグに関する。更に、本発明は、このようなタグを持つ対象物に関する。また、本発明は、対象物識別のためのシステムを製造する方法及び対象物識別のためのシステムに関する。
【0002】
[0002]識別技術は、長年、広く関心を持たれており開発が成されている分野である。識別の一般的な方法は、読み取り可能なタグの使用に依存している。このようなタグは、バーコードや目に見えるスケールの機械読み取り可能なタグから、顕微鏡スケールでのミクロンサイズのプラスチックタグや放射性同位体へと及んでいる。
【0003】
[0003]識別技術への絶え間ない関心の主な理由の一つは、安全でない方法で行なわれてきた取引に大きく起因する不正行為の発生である。より安全な取引システムの必要性は明らかである。例えば、パスポートや運転免許証等の個人的文書、及び、ATMカード、クレジットカード、通貨、小切手等の商業証券や、取引時点での商業取引の他の手段を確実に認証することが必要である。他の例では、コンパクトディスク(CD)、及びデジタル多用途ディスク(DVD)等のアイテムを一義的に識別可能として海賊版の使用を防止することは、ソフトウェア産業や娯楽産業において極めて有益である。更に他の例では、貴石、手工芸品、骨董品などの大きな商業価値を有する物品が取引される場合に、このような物品を受けた当事者がクレジットを発行する前に物品の同一性を確認できることが重要である。更に一般的なレベルにおいては、その同一性を後に検証する必要がある任意の物理的対象物のための安価で信頼できる認証システムが必要とされる。
【0004】
[0004]幾つかの識別方法が知られており、それについて以下に説明する。
【0005】
[0005]周知の識別方法は、磁気ストライプにエンコードされる情報に依存しており、磁気バーコードとしても知られている。磁気ストライプは、一般に、樹脂中に配置された小さな磁性粒子によって形成されている。粒子は、カードに対して直接に適用され、あるいは、カードに加えられるプラスチック基材上にストライプ状に形成される。ストライプは、これらの粒子(例えばイオン粒子)の領域を一方向に磁化することによってエンコードされる。即ち、ストライプ中の磁性粒子の極性が局所的に変えられて、情報のビットが形成される。ストライプの全長に沿ってエンコード方向を変えることによって、情報がストライプ上に書き込まれて記憶される。したがって、ユーザアカウント番号等の識別情報は、最初に、書き込みヘッドによって磁気ストライプ中へとプログラムされ、続いて、読み取りヘッドを用いて磁気ストライプを読み取り、使用者の同一性を検証するために使用者に文書や小切手に署名させることによって検証される。
【0006】
[0006]このようなシステムは本質的に安全でない。これは、磁気ストライプ中にエンコードされた署名やデータを簡単に偽造できるからである。また、磁気ストライプが磁場に近接すると、磁気媒体が損なわれる傾向がある。
【0007】
[0007]磁気ストライプ上で安全なエンコーディングを行なうための幾つかの方法が提案されてきており、これらの方法の商標名としては、例えば、ウォーターマークマグネティクス(Watermark Magnetics)、Xsec、ホロマグネティクス(Holomagnetics)、Xiシールド(XiShield)、バルガード(ValuGuard)、マグナプリント(MagnaPrint)を挙げることができる。
【0008】
[0008]ウォーターマークマグネティクスエンコーディング方法は、粒子配向の変化、及び、異なる配向をもつ隣接ブロック間の推移の検出に依存している。
【0009】
[0009]米国特許第5,235,166号は、特定の磁気信号の相対位置に依存する方法を開示している。より具体的には、信号波形中の局所的なピーク点の正確な位置の振れは、「ジッタ」と称され、磁気セキュリティフィンガープリントとして利用される。
【0010】
[0010]米国特許第6,328,209号に記載されたアメリカンバンクノートホロマグネティクスシステムは、検証目的のために、磁気ストライプ上の一連の機械読み取り可能なホログラフィック画像を使用する。
【0011】
[0011]バルガードシステム(米国特許第4,985,614号)は、記録可能な磁区の固有のランダムに変化する検出可能な特性を利用する。
【0012】
[0012]Indeckらに発行された米国特許第5,546,462号、及び第5,920,628号によれば、磁気媒体の微視的構造は微細形態の永久的なランダム配置であり、したがって、任意の磁気媒体の残留ノイズ特性は固有であり決定的である。セキュリティ機能として役立つように、大きな印加磁場によって磁気媒体の領域が一方向に飽和され、結果として得られる残留磁気又はノイズが、後に取引中に検証される識別情報として記憶される。米国特許第5,546,462号、及び第5,920,628号に開示された識別方法は、磁気媒体からの磁気信号全体の僅かな変動に依存しており、当該変動は磁気媒体に固有の粒界情報及び配向情報に関連している。磁気分極、粒界又は配向が変化すると、これらの変動も変化する。その結果、磁気媒体の磁気信号が変化し、これにより、識別情報が失われる。また、この方法は、正確に関連付けることが困難であるという欠点を有する。更に、ストライプの磁気的な履歴は、対象物の識別で使用された残留ノイズの生成に依存している。したがって、磁気媒体が他の磁場の影響下で再び磁化された場合には、固有の信号が変わってしまう。
【0013】
[0013]国際公開公報第01/025002A1号は、コロイドロッド(ナノ)粒子、及びナノバーコードとしてのその用途について開示している。これらのナノ粒子は、通常、円筒形状を成しており、金、銀、白金、ニッケル等の様々な金属を含むことができる。これらのナノ粒子を形成するために2段階プロセスが使用されている。第1のステップにおいては、金属がテンプレートの円筒状の細孔へと電気化学的に還元される。第2のステップにおいては、テンプレートが溶解され、独立して孤立したロッドナノ粒子が形成される。このような処理に基づいて、種々の金属で構成されたセグメントを有するバーコード状のナノ粒子が生成される。隣接する金属セグメント間の示差反射率(differential reflectivity)を使用して、異なるナノ粒子間又はバーコード間を区別する。これは、光学顕微鏡によって行なわれる。
【0014】
[0014]同一性認証システムにおいては、安価で信頼できる代替物の必要性が依然として存在する。その結果、本発明の目的は、個々の対象物をマーキングして識別するための新規な方法及び装置を開発することである。また、本発明の目的は、偽造することが不可能な、又は極めて困難で金がかかる安価なタグ付けシステムを提供することである。
【0015】
[0015]これらの目的は、例えば、それぞれの独立請求項の特徴を有する方法、タグ、及びシステムによって解決される。
【0016】
[0016]これらの方法のうちの一つは、識別情報を有する対象物を識別する方法であって、識別情報が対象物の同一性を検証するために使用される。この方法は、
タグの少なくとも一部の(によって形成される)磁場の少なくとも一つの特性を決定することによって、第1の特定の磁気信号を得るステップと、
上記第1の特定の磁気信号に関連する信号情報を記憶するステップと、
を含んでおり、上記タグが、細孔を有する実質的に非磁性の母材を備えており、細孔の少なくとも幾つかが磁性材料を含んでおり、記憶された信号情報が対象物の識別情報を形成している。
【0017】
[0017]本発明の他の方法は、識別情報を有する対象物を識別する方法であって、識別情報が上記対象物の同一性を検証するために使用される。この方法は、
タグの少なくとも一部の(によって形成される)電場又は磁場の少なくとも一つの特性を決定することによって、第1の特定の電気信号又は磁気信号を得るステップと、
上記第1の特定の電気信号又は磁気信号に関連する信号情報を記憶するステップと、
を含んでおり、上記タグが、細孔を有する実質的に電気絶縁性の母材を備えており、細孔の少なくとも幾つかが実質的に導電性の材料を含んでおり、細孔における実質的に導電性の材料の少なくとも一部が電源に接続されており、記憶された信号情報が対象物の識別情報を形成している。
【0018】
[0018]本発明の他の方法は、対象物識別のためのシステムを製造する方法である。この方法は、
タグの少なくとも一部の磁場の少なくとも一つの特性を決定することによって、第1の特定の磁気信号を得るステップと、
上記第1の特定の磁気信号に関連する信号情報を記憶するステップと、
を含んでおり、上記タグが、細孔を有する実質的に非磁性の母材を備えており、細孔の少なくとも幾つかが磁性材料を含んでおり、記憶された信号情報が、識別されるべき対象物の識別情報を形成している。
【0019】
[0019]本発明の更に他の方法は、対象物識別のためのシステムを製造する方法である。この方法は、
タグの少なくとも一部の電場又は磁場の少なくとも一つの特性を決定することによって、第1の特定の電気信号又は磁気信号を得るステップと、
上記第1の特定の電気信号又は磁気信号に関連する信号情報を記憶するステップと、
を含んでおり、上記タグが、細孔を有する実質的に電気絶縁性の母材を備えており、上記細孔の少なくとも幾つかが実質的に導電性の材料を含み、実質的に導電性の材料の少なくとも一部が電源に接続されており、記憶された信号情報が、識別されるべき対象物の識別情報を形成している。
【0020】
[0020]本発明は、また、識別情報を持つタグに関するものであって、識別情報が対象物の同一性を検証するために使用される。このタグは、細孔を有する実質的に非磁性の母材と、非磁性の母材の表面の少なくとも一部を覆う少なくとも一つのコーティング層と、を備えており、細孔の少なくとも幾つかが磁性材料を含んでいる。
【0021】
[0021]本発明は、更に、識別情報を持つタグに関するものであって、識別情報が対象物の同一性を検証するため使用される。このタグは、細孔を有する実質的に電気絶縁性の母材と、母材の表面の少なくとも一部を覆う少なくとも一つのコーティング層と、を備えており、細孔の少なくとも幾つかが実質的に導電性の材料を含んでいる。
【0022】
[0022]また、本発明は、識別情報を持つタグを有する対象物に関するものであって、識別情報が対象物の同一性を検証するために使用される。上記タグは、細孔を有する実質的に非磁性の母材と、非磁性の母材の表面の少なくとも一部を覆う少なくとも一つのコーティング層と、を備えており、細孔の少なくとも幾つかが磁性材料を含んでいる。
【0023】
[0023]本発明は、更に、識別情報を持つタグを有する対象物に関するものであって、識別情報が対象物の同一性を検証するために使用される。上記タグは、細孔を有する実質的に電気絶縁性の母材と、母材の表面の少なくとも一部を覆う少なくとも一つのコーティング層と、を備えており、細孔の少なくとも幾つかが実質的に導電性の材料を含んでいる。
【0024】
[0024]また、本発明は、対象物識別のためのシステムに関する。このシステムは、識別情報を持つタグを備えており、識別情報が対象物の同一性を検証するために使用され、上記タグが細孔を有する実質的に非磁性の母材を備えており、細孔の少なくとも幾つかが磁性材料を含んでいる。また、このシステムは、タグの少なくとも一つの磁気特性を測定するための読み取りシステムも備える。この読み取りシステムは、読み取り前にタグを磁化するための書き込みシステムを更に有していてもよい。このシステムは、タグの少なくとも一部から得られる磁気信号に対応するデータを記憶するためのデータ記憶媒体を更に備える。このようなシステムは、実質的に電気絶縁性の母材に基づくタグと併せて使用されてもよい。この場合、タグは、細孔を有する実質的に電気絶縁性の母材を備え、上記細孔の少なくとも幾つかが実質的に導電性の材料を含み、実質的に導電性の材料の少なくとも一部が電源に接続される。また、読み取りシステム、書き込みシステム、データ記憶媒体は、このようなシステムの一部であってもよい。
【0025】
[0025]本発明は、同一性を検証する目的のために多孔質複合材料中に(本質的に)存在する或いは意図的に形成される不規則性を使用できるという所見に基づいている。このような目的は、磁性材料を多孔質材料の細孔内に組み込むことによって実現できる。このような材料によって形成された個々のタグはそれぞれ、固有の磁気特性を有する。適切な複合材料は、周知であり、例えば、米国特許第5,139,884号、5,035,960号、Nielschら Journal of Magnetism and Magnetic Materials 249(2002)234−240、又はSellmyerら, Journal of Physics:Condensed Matter 13, (2001), R433−R430)に記載されている。また、電場又は電磁場を生成できる材料が細孔内で使用される場合には、細孔内の材料に接続された電源を調整して、タグからの固有の特性信号を増強し或いは生成することができる。
【0026】
[0026]このような多孔質材料、又は、本明細書で開示されているゼオライト及びIII−V族材料等の任意の他の適当な多孔質材料を使用すると、幾つかの利点が得られる。
【0027】
[0027]第1に、それぞれが固有のフィンガープリント(指紋)を提供するこれらのタグを迅速且つ安価に形成することができる。第2に、このようなタグを小さく(100μm×100μm以下)することができ、また、このようなタグを肉眼でほぼ見えるように形成することができる。第3に、このようなタグは、偽造することが殆ど不可能である。第4に、このようなタグのフィンガープリントは、当初のフィンガープリントの一部だけで十分に検証することができるので、損傷に対する耐性が高い。第5に、このような技術は拡張可能であり、細孔間距離は数十ナノメートルからミクロン範囲である。更に他の利点は、フィンガープリントを読み取るためにデータ記憶テープ・ハードディスク技術等の現在の磁気媒体データ記憶技術を簡単に採用できるという点である。本発明において説明した多孔質複合材料が有する認証目的の用途についての更に他の利点は、特定の場合に、深い高アスペクト比の細孔をタグの表面に対して垂直にすることによって、強い面外磁化を与えることができるという点である。これは、第1にタグの磁気信号の読み取りの容易性を高め、且つ、第2にタグの偽造をより困難にするという二重の利点を有する。本発明の更に他の重要な利点は、それが必ずしも記憶された磁気情報に依存していないという点である。代わりに、本発明の一実施の形態において、識別は、タグ内の個々の磁気要素間の物理的な不規則性によって決まる磁気信号の変動に依存している。不規則性は磁場によって影響を受けないので、意図しない磁場に起因するタグの磁気信号に対する変造が避けられる。したがって、このような方法で記憶された識別情報は、前述した従来の磁気バーコード技術に基づいて磁気的に記憶された情報よりも安定している。
【0028】
[0028]全般に、少なくとも実質的に磁性を有さず(磁気的に不活性な)或いは実質的に電気絶縁性を有する任意の多孔質母材が、本発明において使用可能である。通常、細孔中の材料が母材の他の領域へ移動することが防止され或いは当該移動が僅かとなるように、この母材は良好な機械的、熱的、化学的安定性を有する。また、母材の安定性は、細孔中の材料の酸化及び望ましくない化学的な改質を最小限に抑える。このような特性により、タグから得られる磁気信号、磁気信号、又は、電磁気信号が、一義的に識別可能であり続けることが可能になる。適切な母材は、例えば、前述した米国特許第5,139,884号、第5,035,960号、又は、Nielsch等に記載されているようにアルミニウム膜の陽極酸化によって形成される多孔質アルマイトを含むことができる。したがって、タグの母材はアルミナであってもよい。
【0029】
[0029]他の適切な母材としては、多孔質高分子膜(通常、一つの構成要素が選択的に除去されたバイブロック又はトリブロック共重合体)又は多孔質シリコンや多孔質III−V族材料等の多孔質半導体材料(例えば、Follら, Advanced Materials, 15, 183−198(2003)参照)を挙げることができる。本発明における多孔質母材としての使用に適したIII−V族材料の例としては、GaAs、InP、AlAsを挙げることができる。他の適切な母材はゼオライトである。適切なゼオライトの例としては、ゼオライト鉱物群の構成要素のうちの任意の一つ、例えば、クリノプチロライト、菱沸石、フィリップサイト、モルデン沸石を挙げることができる。他の適切な多孔質材料としては、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ等の無機酸化物を挙げることができる。
【0030】
[0030]対象物を識別する方法が少なくとも一つの電気的な特性又は電磁的な特性の決定に基づく場合、適切な母材の例は、アルミナ、多孔質シリカ、他の酸化物、高分子フィルム、ゼオライト等の電気的絶縁性の材料である。
【0031】
[0031]本発明においては、母材が中空のチューブ、例えばカーボンナノチューブを備えることもできる。チューブは、好ましくは第2の母材中で成形されてもよい。
【0032】
[0032]以上から分かるように、多孔質母材を得る方法は、選択された材料によって決まる。ゼオライトの形成は当業者には周知である(例えば、Cheethamら, Angewandte Chemie−International Edition 38, 3269−3239 (1999)及びその中の引用文献を参照)。前述したFollらに記載されているように、多孔質半導体母材を得ることができる。種々の酸を使用する陽極酸化など、アルミナ等の母材中に細孔を形成するために様々な孔形成プロセスを利用できる。
【0033】
[0033]母材に細孔を形成するために陽極酸化プロセスが使用される場合には、母材を形成するために使用される当該陽極酸化プロセスに基づいて細孔の径を調整することができる。様々な細孔のサイズを得るためのそれぞれの陽極酸化条件は当業者には既知である。第1に、酸性条件下で陽極酸化プロセスを行なうことができる。使用できる酸の例としては、硫酸、シュウ酸、クロム酸、リン酸を挙げることができる。この場合、酸の濃度は一般に0.1M〜0.5Mの範囲である。第2に、印加電圧は、所望の細孔のサイズによって決まり、小さな細孔用の15Vから、大きな細孔用の200Vまでの範囲にわたり得る。10〜50nmの範囲の直径を有する細孔を得るために、0.2Mの硫酸を使用して、15〜25Vを印加することができる。30〜100nmの細孔を得るために、0.3Mのシュウ酸を使用して、30〜80Vの電位を加えることができる。100〜500nmの大きな細孔を得るためには、120〜200Vの電位をもって0.3Mのリン酸を使用することができる。陽極酸化条件(例えば、印加電圧;Vargheseら, J. Mat. Res. Vol. 17 No.5,2002年5月参照)及び使用される膜の厚さ、純度、組成を変えることによって、極めて不規則な細孔を有する金属酸化物母材を得ることができる。
【0034】
[0034]約10nm〜ミクロン範囲の広範な細孔のサイズ、及び数十ナノメートル〜ミクロン範囲(例えば20nm〜500nm)の細孔間距離が使用可能であることによって、常に柔軟性をもって本発明を使用できる。細孔を形成して微細構造化する方法は既知である。これについては、Liら, Journal of Applied Physics, 84, (1998), 6023−6026を参照されたい。例えば、種々の細孔のサイズが、種々の用途に使用可能である。長期にわたるセキュリティが極めて重要であり、且つ、フィンガープリントをしばしば読み取る必要がない場合(例えば宝石類及び法律関係書類)には、小さな細孔及び小さな細孔間距離(例えば約50nm)を有するタグを使用して、識別情報のセキュリティを高めることができる。例えば、クレジットカードやATMカードのようにタグの読み取りが常に行なわれる場合には、大きい細孔及び大きい細孔間距離(例えば約500nm)を使用可能である。また、小さい孔と大きい孔とを、一つの対象物に組み合わせて使用することもできる。例えば、クレジットカードにおいては、普通取引を検証するために大きな細孔群を使用することができる。しかしながら、カードの信頼性を検証する必要がある場合、又は、高価な買い物が行なわれる場合には、小さな細孔を有するタグに記憶される識別情報を利用することができる。好ましい実施の形態においては、母材の細孔が約10nm〜約500nmの直径を有するタグが使用される。
【0035】
[0035]磁気特性を示す任意の材料は、母材の細孔を充填するために使用可能である。このような材料としては、フェリ磁性体、反強磁性体、好ましくは強磁性体を挙げることができるが、これらに限定されない。母材の細孔を充填するために使用される磁性材料としては、Fe、Ni、Co、Gd、Dy等の強磁性体、これらの対応する合金、酸化物、混合物、MnBi、CrTe、EuO、CrO、MnAs等の他の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。磁力によって影響される他の材料も考えられる。このような材料の例としては、フェリ磁性体、例えばスピネル、ガーネット、マグネタイト等のフェライトを挙げることができる。磁気媒体において一般に使用される他の材料、例えば、Ce、Cr、Pt、Nd、B、Smの合金、SmCo5、AlNiCo、パーマロイ、ミューメタル等の合金も考えられる。
【0036】
[0036]以下では、本発明を例示するために磁性材料を使用したタグに関して主に言及するが、それにもかかわらず、本明細書に記載したタグ、方法、システムにおいては、電場又は磁場を生成する導電材料を使用することもできる。例えば、金属等の導電材料(例えば、Cu、Sn、Fe、Ni)又は半導体材料が、実質的に電気絶縁性を有する母材の細孔において使用可能である。変動するAC電圧に接続されると、電荷は細孔内の導電材料中で振動し、それによって、電磁場を生成する。通常、電気的な接続は、多孔質母材の下側に配置される導電層又は導電領域によってなされ、それによって、細孔内に配置された導電材料の少なくとも一部に対する電気的な接続が行なわれる。
【0037】
[0037]磁性材料及び導電材料は、任意の適当な方法で母材の細孔内に堆積させることができる。一般に知られている方法は、蒸着技術、メルトキャスティング技術、ソリューションキャスティング技術、電着、パルス電着、又は、化学メッキ(無電解メッキ)等の電気化学析出技術である。
【0038】
[0038]一実施の形態において、対象物を識別する方法は、タグ上に記録情報を記憶することを含む。情報の記憶(記録)は、細孔群中に存在する磁性材料を分極した領域へと磁化することによって、或いは、磁性(又は導電)材料を含むタグの孔群をパターニングを通じて決定することによって、又は、これらの二つの手法の組み合わせによって行なうことができる。この記録ステップは、磁場、電磁場、又は、電場の少なくとも一つの特性の第1の決定の前に、或いは、この第1の決定の後に行なわれることが好ましい。
【0039】
[0039]本発明において説明したような、対象物又は人が検証又は認証手続きを受ける必要がある用途においては、認証プロセス中に読み取られるカード又はタグ上に特定の(他と区別された)情報を含めることが望ましい場合がある。ここに言及するような(他と区別された)情報は、任意の所望の対象に関連付けることができ、対象物又は対象物の所有者の同一性、例えば個人的な事項(例えば、人の名前、現住所、国籍、生年月日)、識別番号、銀行口座番号、タグ情報の位置、タグ情報に関連する事項、又は、任意の他の情報に関連していてもよい。この発明の背景において、タグ情報に加えてタグに記憶されるこのような情報又は任意の他の情報は、記録可能情報又は記録情報と称される。したがって、本発明のタグは、タグ(識別)情報だけでなく、記録可能情報も記憶することができ、そのため、従来の磁気記憶媒体と同様なデータ記憶媒体として機能することもできる。
【0040】
[0040]この情報の記憶/記録は幾つかの方法で達成できる。例えば、磁性材料が充填された多孔質母材のストリップを次のような方法で磁化することができ、当該方法では、記録可能情報を記録するために、多くの細孔内の磁性材料のグループ(磁区としても既知である)が従来の磁気書き込みヘッドによって特定の方向に磁化又は分極される。その後、記録情報を得ることが望まれる場合には、任意の適切な読み取りヘッド(例えば、カードリーダーで又はハードディスク産業で使用される読み取りヘッド)を使用してストリップを読み取ることができる。このようにして得られた記録情報は、通常、デジタル信号であり、当該デジタル信号は、その後に人間に解読可能な情報へと処理できる。同じストリップからタグ信号を得るために、ストリップの小領域をタグ(識別)領域となるように指定することができる。タグ情報を記憶するこの領域は、読み取りヘッドによって読み取ることができ、例えばストリップの当該領域内の磁場の固有の特性を表わすアナログ信号を決定することができる。このようにして、前述したように、本発明のタグは、識別情報を記憶するために使用できるだけでなく、従来のクレジットカード磁気ストリップ又は磁気バーコードと同様な形態で情報のビットを記憶するためにデータ記憶媒体としても使用される。この手法の利点としては、任意の既存の従来の方法で磁区の広い範囲を読み取ることができるという点を挙げることができる。また、この手法は、各ビットを構成する多くの細孔の異方性の故に、上書きに対してある程度の弾力を提供することもできる。
【0041】
[0041]タグ情報及び記録可能情報の両方をタグに記憶する磁化以外の他の手法は、所定のパターン(レイアウト)にしたがって、母材の一つのストリップ中の細孔の別個のグループに、磁性材料、導電材料/半導体材料で充填することである(図6B参照)。充填された領域のパターンは、前述したように記録可能情報に対応する所望のバーコードパターン又はビット記憶パターンにしたがって決定される。このパターンは、単独で、固定されたラベルを与え、母材中の磁性材料の場合に、分極した方向を必要としないという利点を有する。記録情報を得ることが望ましい場合には、例えば従来の磁気スワイプカードリーダを使用できる。これは、記録情報が一般に適当に大きい長さを有するからである。例えば分解能が更に細かいリーダを使用してストリップを読み取って、ストリップ上のタグ信号を得ることができる。
【0042】
[0042]この手法の利点は、タグの磁性材料を分極した領域で磁化する必要がなく、したがって、意図しない磁場からの損傷を受け難いという点である。そのため、ストリップを磁化又は再磁化して、タグ情報又は記録可能情報の読み取りを向上させる必要がある場合に、このようなストリップ上の情報(タグ情報及び記録可能情報)は、外部磁場によって悪影響を受けない。
【0043】
[0043]前述した二つの実施の形態においては、記録情報及びタグ情報の両方が同じストリップ中に含められる。しかしながら、タグ領域は、記録情報を記憶する同じストリップに存在している必要はない。タグ情報を持つ別個のタグを磁気ストリップとは無関係に対象物上の任意の他の場に位置させることもできる(例えば、ストリップに隣接して、あるいは、対象物の反対側に)。また、前述した実施の形態の組み合わせを使用して、例えばセキュリティのレベルを更に高めることも可能である。
【0044】
[0044]タグは、少なくとも一つのコーティング層を更に備えていてもよい。コーティング層は、通常、タグを保護する(例えば酸化から機械的に及び/又は化学的に保護する)機能、及び/又はタグを隠す機能、及び/又はタグの読み取りを容易にする機能を果たす。コーティング層は、一つの層、又は、二つの層、必要に応じて複数の層を備えることができる。コーティング層は、通常、硬質ポリマー、ゾルゲル方で製造した酸化物、ダイヤモンド状炭素、四面体アモルファスカーボン、又はスピンコーティングされたラッカー等の硬質材料製の少なくとも一つの層を備える。ここで、「硬質」材料を、好ましくはバルク降伏応力が1平方メートル当り50メガニュートン、即ち50MN/m以上である材料として定義する。硬質材料として機能する適切な高分子の例は、ポリメチルメタクリレートであり、当該ポリメチルメタクリレートは、強く、且つ透明であるという利点を有する。ポリメチルメタクリレート製の一層のコーティング層は、タグをモノマーメチルメタクリレートの溶液で浸漬コーティング又はスピンコーティングすることによって形成することができる(これにより、磁性材料で充填されていない孔の一部も充填する)。モノマー溶液は、コーティング中又はコーティング後に、重合される。
【0045】
[0045]硬質材料製の層は、軟質材料製の一又は複数の層で更にコーティングすることができる。軟質材料製の層とは、選択された下側に位置する硬質コーティング層のバルク降伏応力よりも小さいバルク降伏応力を有する層のことである。好ましくは、柔軟コーティング材料は、50MN/m未満のバルク降伏応力を有する。考えられる柔軟コーティング材料としては、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(登録商標)としても既知である)、ポリビニルアセテート、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリアクリル酸、他の化学的及び熱的に安定な高分子を挙げることができる。これらの材料は、例えば溶液から、浸漬コーティング、スピンコーティング、スクリーン印刷、テーブルコーティング又はブラッシングにより堆積され、その後に乾燥されてもよい。これらの材料は、メルトキャスティングによって堆積されてもよい。
【0046】
[0046]高レベルの摩耗及び裂けに晒されない用途の場合には、薄いコーティングを使用することができる。これは、信号の読み取りを妨げない。タグの寿命を延ばすために厚いコーティングが好ましい場合には、このようなコーティングを、読み取る前に簡単に除去できる材料によって形成することができる。当然に、このような除去は、タグを読み取るために必要である。読み取りヘッドと接触する上側層のトライボロジーを高めるためには、コーティングの表面処理も時として望ましい。このような例としては、フッ化物、酸化物、窒化物等の低摩擦表面群を与えるための表面プラズマ処理を挙げることができる。
【0047】
[0047]タグ上にコーティング層を設ける前に(例えば、タグの細孔の少なくとも幾つかが磁性材料で充填された後)、タグの表面が研磨され或いは平坦化されてもよい。これにより、タグの読み取りが更に向上する。この目的のために、ラッピングや化学機械研磨を含む従来の研磨方法又は平坦化方法を使用することができる。
【0048】
[0048]一般に、本発明において使用されるタグは、インサイチュ(in-situ)で、即ち、別個の基板が無くても、蒸着方法や電着等の一般に知られる堆積方法を用いて、タグ付けされるべき対象物上に母材又は前駆体の母材を直接に堆積させることによって形成することができる。堆積方法は、高価な宝石等の小さな対象物をラベル付けするのに特に適している。このような例としては、物理スパッタリング、熱蒸着、プラズマCVD、電子ビーム蒸着、パルスレーザ蒸着を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0049】
[0049]しかしながら、必要に応じて、タグは支持基板を備えることもできる。基板の存在により、タグを安全に所定位置に保持することが容易になり、一方、接着材料を基板の底部に塗布して、母材と磁性材料との一体性に影響を与えることなくタグを任意の表面に簡単に貼り付けられるようにすることができる。
【0050】
[0050]タグが取り付けられ又は組み込まれる対象物、及び対象物が晒される環境に応じて、任意の材料が基板として使用されてもよい。基板材料は、硬質であってもよく、軽量であってもよく、安定していてもよく、磁気的に不活性であってもよい。一般に使用される基板の材料は、アルミニウム合金である。基板を構成する適切な材料の他の例には、セラミック、シリコン、シリカ、ガラス、アルミニウム−マグネシウム化合物、生物学的材料(例えば、木材、皮膚、皮革、骨)及びプラスチックといった幅広い範囲のものが含まれる。
【0051】
[0051]タグの性能又は特性を更に高めるため、タグをアニールするステップを実行して、磁性材料中のグレイン(粒成長)又は磁区の成長を促進することができる。これにより、充填された細孔からの磁場強度が高まり(一つの細孔当りに一つの領域が好ましい)、したがって、タグの読み取り可読性が更に向上される。アニーリング温度は、多孔質母材及び基板の軟化点又は融点未満に保たなければならないが、孔中の材料のグレイン成長を促す程度で十分である。温度がキュリー温度を超えて上昇した場合には、強い磁場の存在下で材料をそのキュリー点を経由して冷却し戻すことが更に有益である。これにより、面外磁化を伴う一つの領域の形成が更に促進される。最終的に、アニーリングステップは、タグが対象物に貼り付けられる前に又は後に行なわれてもよい。対象物が高い温度で損傷する場合あるいはプロセスの経済状態により多くのタグを使用前にバッチとしてアニールできる場合には、貼り付け前にアニールするのが一般的である。しかしながら、対象物が高い温度に耐えることができる場合には、通常、タグを対象物上に設けた状態でアニーリングステップを行なうことができる。これに関する利点としては、対象物に対するタグの接着が促進される点、或いは、タグが対象物上にインサイチュで堆積されて形成されることを挙げることができる。
【0052】
[0052]本発明に基づいて対象物を識別する一つの方法は、タグの磁場、電場、又は、電磁場の少なくとも一つの特性を決定することを必要とする。この目的のために幾つかの特性を利用できる。このような特性としては、一つの細孔内の磁石に起因する磁場強度や電磁場強度を含むスカラー量及びベクトル量、一つの細孔内の導電材料によって生成される電場の静的キャパシタンス、タグ上の特定の点における平均磁場強度、又は、タグ上の一部分にわたる磁場強度パターン(又は変動信号)を挙げることができる。このような特性は、細孔の充填、タグ内の磁性材料の配置、配向、タイプ等の要因によって影響される。したがって、測定された特性は、各個のタグにおける固有の信号を表わしている。
【0053】
[0053]タグの磁場強度パターン等の特性を決定するために、任意の従来の読み取りヘッドを使用することができる。使用できる読み取りヘッドの例は、例えば、カセットテーププレーヤ、ビデオカセットレコーダ(VCR)、磁気データ記憶テープ、ハードディスクドライブ、Zip(商標)ディスク、Jaz(商標)ディスク、磁気ストライプリーダにおいて使用されるものである。或いは、MFMとして一般に知られた磁力マイクロスコープを使用することができる。また、磁気カー効果等の磁気光学効果の検出を利用可能である。電場強度又は電磁場強度等の特性を決定する場合には、この目的のために、適切な周波数に較正することができる任意の従来の高感度電場計測器又はEMFガウスメータを使用することができる。
【0054】
[0054]タグからの磁気信号が決定されると、この磁気信号を記憶する前に処理し(例えば、フィルタ処理、平滑化処理、フーリエ変換又は他の数学的な信号処理技術を行なう)、及び/又は圧縮し、及び/又は暗号化するために、当該磁気信号に数学的な処理を施すことができる。第1の特定の磁気信号は、タグの読み取りによって得られる未加工の信号の形態、又は、処理された/圧縮された/暗号化された形態の何れかで、ハードディスク、スマートカード、RAMモジュール、又は任意の他の記憶媒体等の様々な記憶装置内に記憶することができる。
【0055】
[0055]本発明の好ましい実施の形態において、タグの少なくとも一部の上記磁場の少なくとも一つの特性を決定するステップは、タグの上記一部の表面にわたって位置固有の磁場の上記特性を測定することによって、磁気変動信号をマッピングすることを含む。このようにして得られる磁気信号は、タグの多くの要因に依存する複雑な変動信号であるだけでなく、同時に、読み取り位置の場所に固有のものである。このような磁気信号は、それが一般にタグにおける磁性材料の配向、強度、タイプ等の多くの要因に依存しているので、有利に使用される。このような信号の複雑性は、タグを解析模倣し、又は偽造することを困難にする。
【0056】
[0056]本発明の方法において、第1の磁気信号は、タグ全体又はタグの一部だけを走査することによって得ることができる。例えば、低レベルの認証を必要とする用途においては、タグの一部だけを読み取る程度で十分であるかもしれない。この「一部の」信号は、その後、親の記憶された識別情報になる。このようにすれば、新たなタグの識別情報を読み取って記憶するための処理時間を短くすることもできる。
【0057】
[0057]また、「一部の」信号だけのための要件は、偽造を更に難しくする。これは、使用される一部が、タグだけに関する情報から識別可能である必要がなく、システム全体内で独立した命令の一部を優先的に形成するからである。これによって、一般に、偽造者は、対象物を認証するために情報の一部だけが使用されるにもかかわらず、タグ全体を複製しなければならなくなる。使用されない部分の複製は、当初の製作者又は正当な使用者のためのコスト及び労力を著しく増大させることなく、タグを偽造するために必要なコスト及び労力を著しく増大させる。
【0058】
[0058]処理時間を(更に)短くすることが望ましい場合には、(磁気信号、電磁気信号、又は、電気信号による)読み取りヘッド、又は他のセンサ/装置(例えば光学的、テクスチャ、放射性のもの)よって検出できる基準マーキングをタグ上に形成してもよい。基準マーキングの識別、即ち読み取りヘッドのための開始位置を示すタグ上の場所の識別は、ガイドライン、例えば読み取りヘッドによって磁気的及び/又は光学的に検出可能な一連のマシン識別可能なストライプで、多孔質材料をパターニングすることによって、行なうことができる。
【0059】
[0059]ある場には、多孔質母材を磁性材料でパターニングして、ストライプ又は他の特徴を形成することによって、タグの再配置を容易にすることが望ましい。この発明の背景においては、前述したように、多孔質母材のパターニングとは、固定されたラベルに対応する所定のレイアウトにしたがって多孔質母材の細孔を充填することであってもよい。同じパターニングプロセスを使用して、タグの再配置を容易にするための基準マーキングを形成することも可能である。多くの基準マーキングのスキームを使用することができる。例えば、タグがダイヤモンドに取り付けられる場合、又は、磁気ストライプ上の一つの領域がタグ領域となるように指定される場合、タグを再配置するための一つの考えられる方法は、読み取りヘッドをタグへと案内する非磁性領域をタグに隣接して形成する(例えばパターニングによって)ことである。この領域は、タグに収束する(タグを目標とする)任意の適当な形状を成すことができる。この領域は、例えば、螺旋形状又は同心的な環形状を成すことができる。また、この領域は、三角形の形状(図7参照)を成していてもよい。また、タグの場所を特定するために光学的な方法を使用することもできる。一つの可能性は、半導体分野で従来から使用されている規準マーキングを使用することである。規準マーキングは、交差線がタグの位置を示すように配置させることができる。読み取りヘッドを光センサに結合することにより、基準マーキングを検出することができ、また、その後に、読み取りヘッドをタグへと案内することができる。
【0060】
[0060]基準位置を形成する方法は、任意の適切な方法で実施することができる。例えば、これは、薄い金属キャップ層を空の細孔上に蒸着して、細孔を閉塞することによって行なうことができる(Liら Advanced Materials, 11,(1999), 483−487参照)。従来のフォトリソグラフィ法及びエッチング法を使用してキャップ層を選択的に開放することができる。キャップ層は、磁性材料を所望の領域のみに選択的に堆積させることができるマスクとしての機能を果たす。
【0061】
[0061]本発明の一実施の形態では、第1の磁気信号に関連する信号情報を記憶することは、タグの一部の表面にわたって磁場の少なくとも一つの特性に対応するデータを記憶することを含む。このようなデータは、タグから測定された磁場の特性に対応するデータに直接的又は間接的に関連し得る。
【0062】
[0062]また、対象物を識別する方法は、次いで、タグの磁場の少なくとも一つの特性を決定することによって、第2の特定の磁気信号を得て、当該第2の特定の磁気信号(又は、当該磁気信号に関連する信号情報)と既に記憶された識別情報とを比較することを更に含む。この方法の利点は、第2の磁気信号が、記憶された識別情報の全体と一致している必要がないという点である。第2の磁気信号の決定において読み取られた部分と、第1の磁気信号を得るために、したがって、記憶された識別情報を得るために走査された部分との間に、重なり合う部分、したがって、一部が一致する部分が存在すれば十分である。この事実は、実用的な用途において多くの利点と関連付けられる。例えば、タグが塵や埃によって部分的に見え難くなっている場合、あるいは、タグが例えば裂けて損傷している場合には、残存する部分からの磁気信号を、記憶された識別情報を用いて検証することができる。
【0063】
[0063]既に記憶された識別情報と比較する際に使用する第2の磁気信号の決定は、対象物の同一性の検証中に行なうことができる。このような第2の磁気信号のその後の決定は、タグの第2の読み取り、第3の読み取り、第4の読み取り、又は、更なる読み取りによってもたらされてもよい。第2の特定の磁気信号が、記憶された第1の信号と許容限界内で一致している場合には、対象物が認証され、それによって、対象物の同一性が確認される。
【0064】
[0064]本発明の一実施の形態では、タグは、第1の特定の磁気信号の測定後に、識別されるべき対象物に対して取り付けられる。更なる実施の形態において、タグは、第1の特定の磁気信号の測定前に、識別されるべき対象物に対して取り付けられる。
【0065】
[0065]以上から分かるように、実用的なレベルにおいては、異なる時間及び場所で第1及び第2の信号決定ステップを行なうことが可能であり、且つ、一般的である。例えば、製造されたタグを最初にデータベースプロバイダに送り、当該データベースプロバイダがタグから識別情報を得て記憶した後に、クレジットカード会社やダイヤモンド採掘会社等のタグユーザに対してタグを供給することができる。その後、このタグユーザは、タグ付けされるべき対象物、例えばクレジットカードやダイヤモンドに対してタグを貼り付けた後、対象物をその顧客に対して分配する。この顧客は、その後、対象物の同一性を検証するために、第2の磁気信号の決定を行なってもよい。あるいは、タグユーザは、自分でタグを読み取る前に或いはタグをデータベースプロバイダへ送る前に、タグを対象物に対して貼り付けてもよい。両方のケースにおいて、識別情報は、その後、タグから得られ、データベースに記憶され、以後の識別のために使用される。
【0066】
[0066]本発明の更なる実施の形態において、タグは、磁気信号のそれぞれの決定の前に磁化される。この実施の形態においては、タグの細孔内の磁性材料を、それぞれの読み取りの前に、磁場の下で再び磁化することができる。これにより、タグの磁場信号を強め、読み取りを容易にすることができる。この目的のために、一様であるが不均質である磁場、例えば簡単な棒磁石によって形成される磁場、或いは、ソレノイド又は磁石の組み合わせによって形成される磁場を使用して、タグを再び磁化することができる。
【0067】
[0067]更に他の好ましい実施の形態において、タグの磁場の少なくとも一つの特性は、タグの不規則性に大きく依存し、又は、当該不規則性によって特徴付けられる。より具体的には、不規則性は、タグの特性のうちの少なくとも一つ、例えば、細孔のサイズ、形状、配向、細孔間距離、細孔充填率、タグ中の磁性材料の結晶方向に関連する。例えば、不規則性は、母材だけの特性であってもよい。このための一例として、異なる細孔径及び細孔間距離を有する母材を使用することができ、この材料の細孔を磁性材料で(均等に)充填することができる。また、規則正しい細孔を有する母材であって、細孔内の材料の充填度を変えることによって不規則性が形成される母材を使用することもできる。無論、不規則な構造を有するタグを使用することもでき、また、例えば、充填される細孔の割合又は(磁性材料の場合)タグ内の材料の結晶方向を変えることもできる。タグに不規則性を形成するために操作できる上記特性は、自由度と見なすことができる。
【0068】
[0068]このような様々な要因から生じる不規則性の結果、ここに開示された識別タグ(IDタグ)は、非常に複雑で且つ高価な偽造装置を必要とする。特に、タグの偽造には、50nm〜100nmの分解能を持つ精密な装置、例えばクリーンルーム内の集束イオンビームが必要となるにちがいない。更に大きな孔径(500nm)を用いると、タグの偽造がより実現可能となるが、それにもかかわらず、特に面外磁化を高めるために細孔が非常に高いアスペクト比を有する場合には、そうする作業が非常に複雑である。タグから信号を再現(複製)するためには、正確な構造的特徴、例えば、母材の構造、細孔充填度、又は、当初のタグにおける磁性材料の結晶方向(すなわち、不規則性)を複製する必要がある。材料を操作して同一の不規則性を得るために必要な精度は、任意の既存の装置によっては提供することができない。
【0069】
[0069]特定の場合には、タグの不規則性を高めて、固有の磁気信号を得ることが望ましい場合がある。例えば、磁性材料で充填される幾つかの形式のカーボンナノチューブ(多孔質母材)は、本質的に、十分な不規則性を有していない場合がある。このような場合、望ましい形式を得るために複合材料が再配分され或いは再成形されてもよい。磁性材料を含む他のナノチューブ(例えば、窒化ホウ素ナノチューブ又は二硫化モリブデンチューブ等)、又はカーボンの場合には、例えば高分子膜又はゾルゲル法で製造した膜中でチューブをスピンキャストして、配向の無いナノチューブを生成することができる。ナノチューブは、例えばアーク放電法を使用して形成され、少なくとも一部が磁性材料で充填される(Raoら, Dalton Transactions 1, 1―24 (2003))。これらのチューブは、その後、超音波攪拌を使用して、液体モノマー又は高分子溶液あるいはゾルゲル前駆物質中に分散される。この液体は、その後、例えばシリコンウエハやガラススライド等の基板上で回転される。材料を乾燥させて硬化させた後、所望の不規則な複合材料が得られる。これを更に研磨し或いは平坦化することにより、平坦で滑らかな表面を形成することができる。
【0070】
[0070]タグの細孔内における磁性材料の高さを変更することもできる。この方法は、通常、母材の細孔が(例えば電着により)磁性材料で充填された後に行なわれる。タグを更なるエッチングステップに晒して、選択された細孔内の磁性材料を除去することによって、細孔充填度又は充填された細孔間の距離を変更することができる。図8は、一つの適した方法の概略図を示している。この方法は、磁性材料のパターニング(例えばストライプ)を達成するため、或いは、個々の磁性材料充填孔間の距離を大きくするために使用することもできる。このパターニング方法の一つの利点は、磁性材料を含む大きな領域よりも簡単に磁性材料のストライプを正確に配置して位置合わせすることができるという点である。第2の理由は、読み取りプロセスを高速で或いは簡単に行なうために母材中の磁性材料間の平均距離を大きくすることが望ましい場合があるという点である。
【0071】
[0071]以上から分かるように、認証プロセスを受ける任意の対象物は、事実上、本発明を使用することによってタグ付け(フィンガープリント)して識別することができる。典型的な用途及び物品としては、コンパクトディスク、パスポート、運転免許証、ATMカード、クレジットカード及びデビットカード、紙幣、小切手、セキュリティパス、土地所有権証書、遺言、航空券、証明書、絵画、カットされたダイヤモンド及びカットされていないダイヤモンド、他の貴石を挙げることができる。
【実施例】
【0072】
[0072]以下の非限定的な実施例及び図面を参照することにより、本発明について更に説明する。
【0073】
[0083]この明細書のコンテクストにおいて、用語「個別にタグ付けする」、「フィンガープリント」、「識別」及び、それらの派生語は、一つの項目を他の項目から一義的に区別できるようにマーキングすることを意味するために置き換え可能に使用されている。このコンテクストでは時として「ウォーターマーク」又は「バーコード」が使用されるが、これらの用語は、一般に、一つの項目群を他の項目群から区別することを示している。例えば、紙幣のウォーターマーク(透かし)は、紙幣を偽造紙幣から区別するが、紙幣を他の個々の本物の紙幣から区別しない。
【0074】
(実施例1)
識別情報を有する対象物を識別する方法であって、識別タグが基板上に実装されている方法
【0075】
[0084]図1A及び図1Bは、本出願の発明の方法において利用され得るタグ100の断面図及び平面図をそれぞれ示している。
【0076】
[0085]電気化学的に堆積された磁性材料10は、より明るい柱のように見え、一方、周囲の母材11は暗く見える。導電金属層12は柱に対して垂直に位置している。この層は、柱の電着又はパルス電着を容易にするとともに、母材と下側にある基板との間の接着を容易にすることができる。金属層12は、チタン等の金属によって形成されてもよく、或いは、陽極酸化されていないアルミニウムによって形成されてもよい。シリコン基板13は多孔質複合体を支持する。図1Bに示されるように、タグ100の細孔間の距離は約500nmであり、平均細孔径は約100nmである。充填されていない細孔15は、磁性材料を有する細孔よりも暗く見える。
【0077】
[0086]図2においては、塞がっている細孔20が、空の細孔21よりも明るくみえる。各細孔は、周囲の母材22によって他の細孔から分離されている。図3は、その細孔が電着ニッケル、即ち強磁性体で実質的に充填された多孔質母材の表面の磁力顕微鏡(MFM)画像を示している。暗い領域32は、細孔が磁性材料で充填された母材上の領域に対応しており、一方、領域31は、磁気的に略不活性な領域に対応している。黒いライン33に沿って行なわれるライン走査によって、図3Bに示される図式的な信号34が生じる。この信号は、ライン33に沿うタグの磁界の特性の測定値を表わしている。それは、ライン33を横切って移動した際の、磁力顕微鏡のプローブチップの振れの大きさを示している。
【0078】
[0087]図4は、以下のようにタグ400をマーキングするための2段階方法の手順を示している。寸法が約1cm×1cmの独立のアルミニウム膜40が得られる。裏面粘着式のアルミニウムテープ(純度99%)をTesa Tape社から購入した。このテープは、対応するシリコン基板41上に接着されて、0.2M硫酸槽内に収容される。ガルバノスタットの陽極がアルミニウム箔に対して電気的に取り付けられ、槽内に収容された白金電極に対して陰極が接続される。25VのDC電圧が2時間印加される。不規則な細孔43が母材42,44の表面の全体にわたって生じる。
【0079】
[0088]多孔質アルミナ母材が得られると、パルス電着を使用して磁性材料(例えば、鉄、ニッケル、又は、コバルト)が細孔内に堆積される。陽極のアルミナと陰極との間に交流電流が加えられる。陽極のアルミナは一方向(陰極方向)にのみ優先的に伝導するために、金属イオンは、陽極の半サイクルで再び酸化することなく陰極の半サイクル中に細孔内で減少する。堆積された磁性材料は、細孔を塞ぐ垂直柱45のように見える。
【0080】
[0089]所望の細孔内への磁性材料の堆積後、ラッピングや化学機械研磨(CMPとして既知である)等の従来の研磨技術を使用してタグの表面が平滑化される。
【0081】
[0090]最後に、ダイヤモンド状炭素製の薄い層でタグがコーティングされ、ポリエチレン保護膜製の層がダイヤモンド状炭素層上にわたってスピンキャストされる。
【0082】
[0091]図5を参照すると、フィンガープリントを得る方法を示す簡略化された手順が描かれている。最初に、寸法が8cm×1.5cmのアルミニウムTesaテープのストリップが陽極酸化され、その後、このストリップには前述した方法にしたがって磁性材料が電着される。処理されたストリップは、その後、三つの更に小さな同様のサイズのストリップへと機械的にスライスされ、タグ付けされるべき対象物50の上端に付着される。この時、これらのストリップは、三つの独立したタグ500,501,502を形成する。
【0083】
[0092]読み取る前に、タグ500,501,502は、保護コーティング55によってコーティングされ、その後、タグの面に垂直な均一な磁場54に対してタグを晒すことによって磁化される(磁化プロセスが矢印52で象徴されている)。磁場は、書き込みヘッドが組み込まれた読み取り装置内で与えられる。その後、対象物は、読み取りヘッド56の下側を横切って移動される。或いは、読み取りヘッドがタグの表面にわたって移動される。読み取りヘッドは、タグを横切って測定された磁場の特性に対応する磁場信号57を拾い、その後、これらの信号57を表わすデータを記憶する。記憶されたデータは、対象物の第1の識別情報を形成する。
【0084】
[0093]その後、対象物が検証処理を施されと、前述したものと同じステップが繰り返される。タグは、最初に磁化された後、リーダによって読み取られる。読み取りによって得られたデータは、第2の磁気信号を表わしている。このデータはその後にコンピュータユニットへ供給され、コンピュータユニットは、既に記憶された識別情報に対応するデータを検索する。コンピュータは、データの両方のセットを比較して、これらの間の適合の度合いを計算する。適合の度合い(一致)が調整可能な許容範囲レベルを上回ると、コンピュータは、認証が成功したことを示す認証応答を戻す。
【0085】
(実施例2)
識別情報を有する対象物を識別する方法であって、識別タグが対象物上に直接に堆積されている方法
【0086】
[0094]また、本発明は、対象物自体の上にインサイチュで多孔質タグを形成することによって実施することができる。一つのタグ又は一連のタグがその場で形成される対象物は、図5のタグ付きの対象物50と同様のものであってもよい。
【0087】
[0095]チタンやクロム等の導電接着層が最初に堆積される。これによって、細孔内への磁性材料の電着及び接着が容易になる。タグが付けられる対象物の小さな表面上に物理的気相成長法(スパッタリングとしても既知である)によって、アルミニウムが堆積(蒸着)される。
【0088】
[0096]アルミニウムの蒸着後、アルミニウムが陽極酸化処理を受けて、所望の細孔が形成され、それによって、多孔質アルミナが形成される。この多孔質アルミナは、タグの母材を形成する。
【0089】
[0097]その後、多孔質アルミナは、鉄等の磁性材料を孔内に堆積させるために前述したパルス電着を受ける。
【0090】
[0098]その後、ラッピングやCMP等の周知の方法によって表面が研磨される。
【0091】
[0099]また、表面が、アモルファスカーボン製の保護層によってコーティングされ、その後、必要に応じて、前述したようなポリエチレン層がコーティングされて、タグが形成される。
【0092】
[0100]読み取り及び書き込みヘッドを組み込んだリーダを使用して、最初にタグを磁化し、次いで、その結果として得られる磁気信号をタグから読み取り、それによって、タグが付される対象物の識別情報を得る。
【0093】
[0101]その後、検証ステップを実行する際、タグが随意的な再磁化ステップを受けた後に読み取られ、これによって、タグから第2の特定の磁気信号を得る。この信号に対応するデータがコンピュータに供給され、このコンピュータにおいて、データが、記憶された識別情報と比較され、それに応じて認証がなされる。
【0094】
(実施例3)
記録情報及びタグ情報をタグ上に記憶するためにタグをパターニングする方法
【0095】
[0102]図6A〜図6Dは、記録情報及びタグ情報を記憶するために使用されるタグ600の実施の形態を示している。
【0096】
[0103]図6Aに示す実施の形態において、磁気ストリップ61を形成するタグ600は、細孔の大部分が磁性材料で充填される多孔質母材から構成される。記録された情報(例えば個人的な事項、タグが付される対象物に関連するデータ、又は、任意の動的データ)は、細孔中の磁性材料を、それぞれが特定の個々の帯磁方向を有するグループ/領域63,64へと磁化することによって、記憶される。
【0097】
[0104]寸法が8cm×1.5cmのアルミニウムのストリップが、陽極酸化されて、その細孔が実施例1にしたがって鉄−ニッケル合金で電着される。処理されたストリップ61は、その後、プラスチックカード60に対して取り付けられる。ストリップ上に書き込まれる情報は、適切なコンピュータプログラムによって、対応するデジタル信号65に変換される。細孔中の磁性材料は複数のグループ(領域)63,64へと磁化され、各グループは、デジタル信号65にしたがって特定の方向に配向される。この目的のために、ニューロンエレクトロニクス社の低保磁力磁気スワイプカード(読み取り式カード)エンコーダ/リーダ MCR230Nが使用される。ストリップの一端にある1cm×0.5cmの領域62は、固有のタグ信号を生成して/得るために指定されている。後述する位置マークがこの実施形態において有効に組み入れられてもよい。この領域は、ストリップ上の磁性材料の配置を示すために図6Aにおいて拡大されている。ストリップの指定された部位からタグ情報を読み取る場合には、高い分解能の読み取りヘッドを使用して、タグの上側の線形磁場強度のアナログ信号66を読み取る。
【0098】
[0105]タグの他の実施の形態では、記録情報は、母材の細孔のグループを所定のパターンにしたがって磁性材料でパターニングすることによって、ストリップ61上に記憶される。この実施形態において、記録されるタグ情報を記憶する媒体は、多孔質母材のストリップから構成されており、当該ストリップにおいては細孔の断続的なグループが磁性材料で充填されている。図6Bに示されるように、幾つかの細孔のグループ67は磁性材料で充填されており(図中に灰色の陰影)、一方、他の孔のグループ68は空のままである(陰影が付けられていない)。充填された細孔のグループは、ストリップを読み取る際に生成される所望のデジタル信号65に対応するようにパターニングされる。このデジタル信号は、ストリップ上に記録される静的データ又は固定されたラベルに対応していなければならない。この目的のために、コンピュータプログラムを使用して、各番号及び各アルファベット文字を特定のデジタル信号パターンに対して割り当てることができ、それによって、人間が読み取ることができる情報と磁気記憶パターンとの間で変換を行なうことができる。このようなパターンにしたがってストリップの細孔を充填するために、リソグラフィックプロセスが使用される。最初に、多孔質母材の表面に対し、磁性材料を堆積させる前にマスキング層が被せられる。これは、例えば、多孔質ストリップの表面上にアルミニウム転写層を蒸着することにより行なわれる。ポジ型レジストの層(AR−U4040, Allresist GmbH社)が、例えばスピンコーティングによってAl転写層上に加えられ、ポジ型プラスレジスト層が従来のフォトリソグラフィによって適宜にパターニングされる。その後、ストリップの表面にわたって、リン酸と硝酸と少量の湿潤剤とを使用して湿式化学エッチングが行なわれる。レジストによって覆われていないAl転写層は、30分のエッチング後に完全に除去される。エッチング後、ストリップ上には、露出領域でパターニングされるAl転写層が残存する。最後に、これらの露出領域には、その後、電着により磁性材料が充填される。ストリップ上に記録された情報を読み取るため、ニューロンエレクトロニクス社のMCR230Nスワイプリーダが使用される。タグ信号に関しては、ストリップの一端にある1cm×0.5cmの領域62が指定されて前述した高分解能読み取りヘッドによって読み取られ、それによって、タグ信号が得られる。
【0099】
[0106]本発明の更なる実施の形態では、タグは、記録情報を含む同じストリップ(実施例1で説明したようにアルミナによって形成されている)上に存在していないが、カード上の他の適当な場所に配置されている。図6Cは、そのカードの右下側角部に離れてタグ領域691が配置されているカードを示している。このレイアウトは、高い分解能の読み取りヘッド(タグ情報を読み取りためのもの)及び磁気スワイプカード読み取りヘッド(記録情報を読み取るためのもの)が一つのアクチュエータ上に実装されている場合に、好適となり得る。ストリップ及びタグの両方の読み取りを実行する場合、アクチュエータは、最初に磁気スワイプカード読み取りヘッドをストリップを横切るように位置させ、その後、その読み取りヘッドをストリップにわたって(横切って)移動させる。その後、アクチュエータは、タグ情報を得るために、アナログ信号読み取りヘッドをタグ上にわたって移動させる。したがって、読み取りが連続的に行なわれる。図6Dは、タグ領域692がカードの反対側に配置されたカードを示している。このレイアウトは、二つの読み取りヘッドを別個のアクチュエータ上に実装することが望ましい場合に、好適となり得る。各アクチュエータを、カードの両側に配置し、互いに独立して同時に移動させることができ、したがって、高速読み取りを行なうことができる。また、記録情報は、スタティック磁気スワイプカート読み取りヘッド、及び従来の方法で検出器を通り過ぎるカード移動アームの動作によって、読み取ることもできる。
【0100】
(実施例4)
タグの場所を特定する際に読み取りヘッドを案内するための基準マーキングをパターニングする方法
【0101】
[0107]図7A〜図7Eは、タグから分離可能であり、又はタグの一部を形成することが可能であり、且つ、タグ上に情報を再配置するために使用可能な様々な基準マーキングの実施形態を示している。これらの基準マーキングは、対象物のタグ上において情報の位置を特定する速度を高めることが望ましい場合に使用される。タグのサイズを数ミクロン〜数センチメートルの範囲に設定することができるので、多くの方式を使用して読み取りヘッドをタグ上の情報へと方向付けることができる。
【0102】
[0108]図7A〜図7Eに示す五つの実施の形態のそれぞれにおける様々な形状の基準マーキングは、例えば磁気的な手段、光学的な手段、あるいは、テクスチャ手段によって検知することができる。これらの形状は、それぞれの場合において正方形状の斜線領域として示されたタグ上の情報へと読み取りヘッドを案内するように形成されている。一般に、基準マーキングは前述した方法を使用して所望のパターンへとエッチングされ、それにより、例えば、磁性材料が上記領域内の細孔を充填して、所望のパターンを形成する。このパターンは、例えばプラスチックカード等の共通の基板上のタグ70上の情報へのガイドを形成する。図7Aは、中心にあるタグ70上の情報をターゲットにする一連の同心リング71を示している。これらのリングは、タグ上の情報よりも十分大きい領域へと及んでいてもよい。狭いリング環は、タグ70上の情報が見つけられるようにするのに役立つ。図7Bにおいて、螺旋形状の基準マーキング72は、タグ70上の情報へ向かって螺旋を内側に移動するように読み取りヘッドを案内する。図7Cにおいては、基準マーク73は、タグ70上の情報の位置を、十字形の中心の三角測量(点線)を通じて計算することを可能にする。図7Dにおいて、基準マーク74の十字形配置は、タグ70上の情報の場所を示している。それぞれの場合において、読み取りヘッドを移動させるための制御システムは、使用される各マーキングシステムに適した特定の位置決め・移動規則に従うようにプログラムすることができる。図7Eは、基準マーキングの更なる実施の形態を示しており、この実施の形態では、V形状の非磁気領域75が、パターニングされ、読み取りヘッドをタグ70上の情報へと導くために使用される。
【0103】
[0109]図7Eの基準マーキングは、本発明においては以下のように形成して使用することができる。裏面粘着式の銅テープから切り出された1cm×1cmの正方形状のダイが、1ミクロン厚のアルミニウム層でスパッタコーティングされる。その後、ウエハが陽極酸化され、アルミニウムが多孔質にされる。レジストがウエハ上にスピンコーティングされ、また、このレジストは、フォトレジストの四つのV形状の領域75を残す従来のフォトリソグラフィを使用してパターニングされる。各領域75は、中心にあるタグ70の情報を保持するために指定された領域の四つの角部に触れている。カットされたウエハの全体は、その後、実施例1で説明した手順にしたがって磁性材料で電着され、レジストが、除去されるとともに、その後、最終的に、タグ付けされるべき対象物に対して付けられる。
【0104】
[0110]この実施の形態において、読み取りヘッドは、以下に説明する一組の規則にしたがって移動するように構成することができる。最初に、読み取りヘッドは、経路77に沿って移動させられる。読み取りヘッドは、非磁気領域75を検出すると、プログラムされた規則であって非磁気領域75と周囲の磁気領域78との間の境界を検出する規則へと切り換わる。境界が検出されると直ぐに、読み取りヘッドは、その当初の動作ラインから90°(或いは、任意の他の適当な角度)離れる方向に反発する(偏向する)。各偏向後の読み取りヘッドにより移動される距離は、読み取りヘッドがV形状の領域の先端へと移動するにつれて、以前よりも徐々に短くなる。このようにして、読み取りヘッドは、幾つかの偏向後にタグへ導かれる。読み取りヘッドが最終的にV形状領域の先端に達すると、読み取りヘッドは、タグを読み取るための所望の開始位置に配置される。
【0105】
(実施例5)
タグにおける細孔充填度を変える方法
【0106】
[0111]図8A〜図8Dは、タグの一部を示しており、この一部において、タグの細孔充填度を変化させるプロセスが実行されている。タグの細孔充填度を変化させる以下のステップは、フォトリソグラフィ処理に基づいている。
【0107】
[0112]1.5ミクロンのアルミニウム層が、1cm×1cmシリコンウエハ基板80上に蒸着されて、実施例1で説明したように磁性材料83で充填された母材81を備えるタグへと処理される。ここでは、磁性材料としてニッケルが使用される。フォトレジスト層82がタグの表面上にスピンコーティングされる。フォトレジストはAllresist GmbH社のAR−U4040である。図8Aは、このようにして形成されたタグの断面を示している。フォトレジストは、製造メーカから又はシリコンプロセッシングのテキストから利用可能な標準的なフォトリソグラフィ技術を使用して、所定のパターンにしたがってパターニングされる。フォトリソグラフィパターンの後、フォトレジストマスクが細孔84のパターンを含む(図8B参照)。望ましい場合には、タグを更に熱硬化し、タグ上の残存するフォトレジストを硬化させ、フォトレジストによって覆われたタグの部位をエッチング剤から保護することができる。その後、エッチング溶液が使用されて、フォトレジストマスクによって保護されていない細孔からニッケルが除去される。ニッケルが磁性材料である場合には、以下の化学物質を混合することにより、即ち、HNOを5部、CHCOOHを5部、HSOを2部、HOを28部で混合することによってエッチング溶液を形成することができる。エッチング後、蒸留水を用いてタグが洗浄される。この時、タグは図8Cに示される構造を有する。最終的に、残存するフォトレジストを除去するためにアセトンが使用される(図8D参照)。
【0108】
[0113]所定のパターンにしたがってマスクをパターニングする代わりに、開口の位置をランダム化することもできる。ランダム化された開口を得るための一つの方法は、Bernhardtらによる J. Vac. Sci. Technol. B, 18,1212−1215(2000)において説明されるように、高分子マスク層に高エネルギイオンで衝突させることである。
【0109】
[0114]タグにおける不規則性を高めるためには、全ての磁性材料を細孔から除去する必要はない。通常、材料の一部だけを除去して、母材の表面でその磁気信号を大きく減らすだけで十分である。
【0110】
[0115]細孔を選択的に充填することにより不規則性を高める他の方式も考えられる。例えば、母材の下側の導電層を電着前に導電領域及び絶縁領域へとパターニングすることができる。これにより、細孔の一部が未充填のままとなり、或いは、細孔の一部が磁性材料で部分的にしか充填されない状態となる。
【0111】
(実施例6)
電磁場を生成するために導電材料を備えるタグを使用して、識別情報を有する対象物を識別する方法
【0112】
[0116]図9は、充填された細孔の下側にある導電層91が電源94に対して接続されるタグ900の断面を示している。導電層は、細孔を充填する材料の少なくとも一部と電気的に接触している。このようなタグは、以下の方法で対象物をタグ付けするために形成されて使用される。多孔質アルミナ母材92を有するストリップが形成されて基板90上に取り付けられる。母材の細孔にはスズ93が電着される。次に、導電層91がAC電圧94に対して電気的に接続され、細孔内の材料の周囲に磁場を生じさせる。生じた磁場は、前述した方法を使用して測定することができる。生じたこれらの電磁場は、その後、タグを一義的に識別するために使用される固有のタグ信号となる。
【0113】
[0117]前述した方法は、変動するAC電圧を用いてのみ働くわけではない。細孔内の材料の周囲に電場を生成するために、均一な(静的な或いはペデスタル)電圧、交流電圧、これらの二つの組み合わせを使用することもできる。電場は、例えば、静的キャパシタンス測定によって測定することができる。これらの電場は、その後、タグが取り付けられる対象物を一義的に識別するために使用される特性となる。
【0114】
[0118]以上から分かるように、前述した二つの方法で使用されるタグの孔内の材料は、実施例1で説明したタグにおいて示されるように、必ずしも実質的に磁気を帯びている必要はない。材料は、タグが前述した方法で使用されるように導電性を有していれば十分である。しかしながら、母材は、実質的に電気絶縁性を有していなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1A】シリコン基板上における本発明の多孔質アルミナのタグの断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示している。アルミナの細孔には電気メッキにより金属が充填されている。
【図1B】その細孔の幾つかに磁性材料が充填された本発明の多孔質アルミナのタグの概略平面図を示している。
【図2】細孔を充填するための磁性材料としてNiが使用された場合における図1のタグと同様のタグの平面SEM画像を示している。アルミナはテンプレート材料として残存している。Niで充填された細孔は明るく見え、充填されていない細孔は黒く見えている。
【図3A】アルミナ母材中に埋め込まれたナノマグネットアレーの磁力顕微鏡(MFM)画像を示している。
【図3B】図3Aに黒い線で示される走査経路に沿って得られた磁気誘導偏向信号を示す対応のライン走査画像を示している。
【図4】本発明において使用できるタグを製造するための方法の流れ図を示している。
【図5】多孔質アルミナを使用して対象物をタグ付けする方法の流れ図を示している。
【図6A】プラスチックカード(例えばクレジットカード又はATMカード)上の磁気ストリップの一部としてタグが配置されている本発明の実施形態を示している。これにより、タグは、記録された情報及び識別情報の両方を記憶することができる。
【図6B】プラスチックカード(例えばクレジットカード又はATMカード)上の磁気ストリップの一部としてタグが配置されている本発明の実施形態を示している。これにより、タグは、記録された情報及び識別情報の両方を記憶することができる。
【図6C】記録された情報から離れてタグが配置されている本発明の実施形態を示している。
【図6D】記録された情報から離れてタグが配置されている本発明の実施形態を示している。
【図7A】それぞれが読み取りヘッドをタグへと案内するための基準マーキングとして使用可できる可能なパターンを示している。
【図7B】それぞれが読み取りヘッドをタグへと案内するための基準マーキングとして使用できる可能なパターンを示している。
【図7C】それぞれが読み取りヘッドをタグへと案内するための基準マーキングとして使用できる可能なパターンを示している。
【図7D】それぞれが読み取りヘッドをタグへと案内するための基準マーキングとして使用できる可能なパターンを示している。
【図7E】それぞれが読み取りヘッドをタグへと案内するための基準マーキングとして使用できる可能なパターンを示している。
【図8】タグにおける磁性材料の選択エッチングを実行して、タグにおける細孔充填度を変えるための一つの方法に含まれるステップを示している。
【図9】スズが充填される電気絶縁性の多孔質母材を備えるタグの断面の概略を示している。タグから電磁場が得られるように電源がスズに結合されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別情報を有する対象物を識別する方法であり、前記対象物の同一性を検証するために前記識別情報が使用される方法であって、
タグの少なくとも一部の磁場の少なくとも一つの特性を決定することにより、第1の特定の磁気信号を得るステップであって、前記タグが、細孔を有する実質的に非磁性の母材を備え、前記細孔の少なくとも一部が磁性材料を含むステップと、
前記第1の特定の磁気信号に関連する信号情報を記憶するステップであって、前記記憶された信号情報が前記対象物の識別情報を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記タグの前記少なくとも一部の前記磁場の少なくとも一つの特性を決定する前記ステップが、前記タグの前記一部の表面上にわたって位置固有の磁場の前記特性を測定することによって、磁気変動信号をマッピングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の特定の磁気信号に関連する信号情報を記憶する前記ステップが、前記タグの前記一部にわたって前記磁場の前記少なくとも一つの特性に対応するデータを記憶することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
続いて、前記タグの前記一部の前記磁場の前記少なくとも一つの特性を決定することによって、第2の特定の磁気信号を得るステップと、
前記第2の特定の磁気信号と既に記憶された前記識別情報とを比較するステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記タグの前記一部の前記磁場の前記少なくとも一つの特性をそれぞれ決定する前に、前記タグを磁化するステップを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
細孔のグループ中に存在する前記磁性材料を分極した領域へと磁化することによって、前記タグに情報を記録するステップ、又は
磁性材料を用いて前記タグの細孔をパターニングするステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の特定の磁気信号を得た後に、識別されるべき前記対象物に対して前記タグが取り付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の特定の磁気信号を得る前に、識別されるべき前記対象物に対して前記タグが取り付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記タグが、前記母材を支持する基板を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記基板が、金属、シリコン、シリカ、ガラス、プラスチック、セラミック、及び、これらの組み合わせから成るグループから選択された材料を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記母材の材料が、アルミナ、ゼオライト、III−V族材料、高分子、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズから成るグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記母材がナノチューブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノチューブが第2の母材内で成形される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記磁性材料が、Fe、Ni、Co、これらの合金、酸化物、混合物及びこれらの組み合わせから成るグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記母材の前記細孔が10nm〜500nmの直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記タグが、少なくとも一つのコーティング層を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記タグの前記一部の前記磁場の前記少なくとも一つの特性が、前記タグの不規則性に大きく依存している、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記不規則性が、細孔のサイズ、細孔の形状及び配向、細孔充填率、前記タグ中の磁性材料の結晶配向、これらの組み合わせから成るグループから選択される特徴に起因している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
識別情報を有する対象物を識別する方法であり、前記識別情報が前記対象物の同一性を検証するために使用される方法であって、
タグの少なくとも一部の電場又は磁場の少なくとも一つの特性を決定することによって、第1の特定の電気信号又は磁気信号を得るステップであって、前記タグが、細孔を有する実質的に電気絶縁性の母材を備え、前記細孔の少なくとも幾つかが実質的に導電性の材料を含み、前記実質的に導電性の材料の少なくとも一部が電源に接続されているステップと、
前記第1の特定の電気信号又は磁気信号に関連する信号情報を記憶するステップであって、前記記憶された信号情報が前記対象物の前記識別情報を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項20】
前記タグの前記少なくとも一部の前記電場又は前記磁場の少なくとも一つの特性を決定する前記ステップが、前記タグの前記一部の表面上にわたって位置固有の電場又は磁場の前記特性を測定することによって、電気又は磁気の変動信号をマッピングすることを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の特定の電気信号又は磁気信号に関連する信号情報を記憶する前記ステップが、前記タグの前記一部にわたって前記電場又は前記磁場の前記少なくとも一つの特性に対応するデータを記憶することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
続けて、前記タグの前記一部の前記電場又は前記磁場の前記少なくとも一つの特性を決定することによって、第2の特定の電気信号又は磁気信号を得るステップと、
前記第2の特定の電気信号又は磁気信号と既に記憶された前記識別情報とを比較するステップと、
を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
対象物識別のためのシステムを製造する方法であって、
タグの少なくとも一部の磁場の少なくとも一つの特性を決定することによって、第1の特定の磁気信号を得るステップであって、前記タグが、細孔を有する実質的に非磁性の母材を備え、前記細孔の少なくとも幾つかが磁性材料を含むステップと、
前記第1の特定の磁気信号に関連する信号情報を記憶するステップであって、前記記憶された信号情報が、識別されるべき対象物の前記識別情報を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項24】
対象物識別のためのシステムを製造する方法であって、
タグの少なくとも一部の電場又は磁場の少なくとも一つの特性を決定することにより、第1の特定の電気信号又は磁気信号を得るステップであって、前記タグが、細孔を有する実質的に電気絶縁性の母材を備え、前記細孔の少なくとも幾つかが実質的に導電性の材料を含み、前記実質的に導電性の材料の少なくとも一部が電源に接続されるステップと、
前記第1の特定の電気信号又は磁気信号に関連する信号情報を記憶するステップであって、前記記憶された信号情報が、識別されるべき対象物の前記識別情報を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項25】
識別情報を持つタグであり、前記識別情報が対象物の同一性を検証するために使用されるタグであって、
細孔を有する実質的に非磁性の母材であって、前記細孔の少なくとも幾つかが磁性材料を含む母材と、
前記非磁性の母材の表面の少なくとも一部を覆う少なくとも一つのコーティング層と、
を備えるタグ。
【請求項26】
前記コーティング層が、50MN/mよりも大きいバルク降伏応力を有する材料を備える、請求項25に記載のタグ。
【請求項27】
識別情報を持つタグであり、前記識別情報が対象物の同一性を検証するために使用されるタグであって、
細孔を有する実質的に電気絶縁性の母材であって、前記細孔の少なくとも幾つか実質的に導電性の材料を含む母材と、
前記母材の表面の少なくとも一部を覆う少なくとも一つのコーティング層と、
を備えるタグ。
【請求項28】
前記コーティング層が、50MN/mよりも大きいバルク降伏応力を有する材料を備える、請求項27に記載のタグ。
【請求項29】
識別情報を持つタグを有する対象物であり、前記識別情報が対象物の同一性を検証するために使用される対象物であって、
前記タグが、
細孔を有する実質的に非磁性の母材であって、前記細孔の少なくとも一部が磁性材料を含む母材と、
前記非磁性の母材の表面の少なくとも一部を覆う少なくとも一つのコーティング層と、を備える対象物。
【請求項30】
識別情報を持つタグを有する対象物であり、前記識別情報が対象物の同一性を検証するために使用される対象物であって、
前記タグが、
細孔を有する実質的に電気絶縁性の母材であって、前記細孔の少なくとも一部が実質的に導電性の材料を含む母材と、
前記母材の表面の少なくとも一部を覆う少なくとも一つのコーティング層と、
を備える対象物。
【請求項31】
対象物識別のためのシステムであって、
識別情報を持つタグであって、前記識別情報が対象物の同一性を検証するために使用され、細孔を有する実質的に非磁性の母材を備え、前記細孔の少なくとも幾つかが磁性材料を含むタグと、
前記タグの少なくとも一部から得られる磁気信号に対応するデータを記憶するためのデータ記憶媒体と、
を備えるシステム。
【請求項32】
対象物識別のためのシステムであって、
識別情報を持つタグであって、前記識別情報が対象物の同一性を検証するために使用され、細孔を有する実質的に電気絶縁性の母材を備え、前記細孔の少なくとも一部が実質的に導電性の材料を含み、前記実質的に導電性の材料の少なくとも一部が電源に接続されるタグと、
前記タグの少なくとも一部から得られる電気信号又は磁気信号に対応するデータを記憶するためのデータ記憶媒体と、
を備えるシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−504520(P2007−504520A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521042(P2006−521042)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000216
【国際公開番号】WO2005/008294
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】