説明

封止材パターンの形成方法

【解決手段】(i)化学増幅ポジ型レジスト組成物を封止されるべき回路にレジスト膜を形成する工程、(ii)レジスト膜を露光し、ベークし、アルカリ性現像液にて現像して、上記回路を封止するための封止材を注型する部分のレジスト膜を除去する工程、(iii)封止材を塗布し硬化する工程、(iv)残りのレジスト膜を溶解剥離する工程を有する封止材パターンの形成方法において、レジスト組成物が、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える全繰り返し単位中、90モル%以上がt−アルキルオキシスチレンで表される繰り返し単位である樹脂と、光酸発生剤とを含有する封止材パターンの形成方法。
【効果】120〜200℃,30〜120分間の加熱工程でレジストパターンが変形及び架橋反応を起こすことなく、その後の剥離工程で容易にレジスト膜が剥離可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDに代表される光半導体素子等の回路を封止するための封止材パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDに代表される光半導体素子の回路を封止するための封止材パターンの形成方法として、液状タイプ又はフィルム状タイプのレジスト材料を用いる工程を含む方法(例えば特許文献1:特開2009−164242号公報や、特許文献2:特開2001−332770号公報)等が提案されている。また、半導体素子の封止方法としてポジ型又はネガ型レジスト材料、例えばアルカリ可溶性ノボラック樹脂と感光剤としてナフトキノンジアジドスルホニルクロリド等のキノンジアジド類とを含むi線、g線等用のレジスト材料を用いる工程を含む方法(特許文献3:特開2005−32872号公報)も提案されている。
【0003】
一方、高速演算が可能な半導体回路を形成するためのリソグラフィー技術は、高度な微細加工を実現するため、遠紫外線が用いられてきており、KrFエキシマレーザー光やArFエキシマレーザー光が使用されている。これらのエキシマレーザー光を用いる場合、用いる光に対する光触媒の感度や、光エネルギーの問題を解決するため、従来のキノンジアジド系のレジスト材料ではなく、いわゆる化学増幅型レジスト材料が用いられる。化学増幅型レジスト材料は、露光光に応じて、例えばKrFエキシマレーザーの場合、ポリヒドロキシスチレンをベースとし、酸分解性保護基としてtert−ブトキシカルボニル(t−Boc)基、アルコキシアルキル(アセタール)基、トリアルキルシリル基等を有した樹脂を用いる材料等を、ArFエキシマレーザーの場合には、アクリル樹脂を用いる材料等による化学増幅型レジスト材料が数多く提案されている。
【0004】
また、上記化学増幅型レジスト材料は、高度な微細加工に特化したものだけでなく、高膜厚レジスト膜として使用する適用も提案されている(特許文献4:特開2004−198944号公報)。
【0005】
特許文献3(特開2005−32872号公報)に示されたような、LEDに代表される光半導体素子の回路を封止するための封止材パターンを形成するための枠をレジスト膜を利用して形成する方法に、上記化学増幅型レジスト膜を適用すると、この枠を形成するためのレジスト膜は膜厚が10μm以上となることがあるものであるが、有機樹脂封止材を硬化させる際の120〜200℃,30〜120分間の加熱工程でレジストパターンが変形したり、レジスト材料中の樹脂が架橋し、その後のレジスト剥離工程で完全にはレジスト膜が剥離できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−164242号公報
【特許文献2】特開2001−332770号公報
【特許文献3】特開2005−32872号公報
【特許文献4】特開2004−198944号公報
【特許文献5】特開2003−131384号公報
【特許文献6】特開2002−234910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、化学増幅ポジ型レジスト材料を用いてLEDに代表される光半導体素子の回路を封止するための封止材パターンを形成する場合のように、120〜200℃といった比較的高温で、かつ30〜120分間といった比較的長時間の加熱工程を行なっても、レジストパターンが変形及び架橋反応を起こすことなく、その後の剥離工程で容易にレジスト膜が剥離可能な化学増幅型レジスト材料の選択をすることで、レジスト膜の剥離不良発生が抑制された封止材パターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成し得る性能を有するレジスト材料を提供すべく、特にアルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる樹脂(ベース樹脂)と、その酸分解性保護基に着目した。そして、スチレン骨格比率が高く、かつ、特許文献5(特開2003−131384号公報)で提案されているtert−アミロキシ基に代表される3級アルキル基を主たる酸分解性保護基として有する樹脂をベース樹脂とする化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いて得たレジスト膜によれば、LEDに代表される光半導体素子の回路を封止するための封止材パターンを形成する際に、120〜200℃,30〜120分間の加熱工程でレジストパターンの変形が大きな問題とならず、また、架橋反応を起こし難いことから、その後の剥離工程で容易にレジスト膜が剥離可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、以下の封止材パターンの形成方法を提供する。
請求項1:
(i)化学増幅ポジ型レジスト組成物を封止されるべき回路が形成された基板表面に塗布して該回路を含む基板表面にレジスト膜を形成する工程、
(ii)上記レジスト膜に高エネルギー線をパターン照射し、露光し、ベークした後に、アルカリ性現像液にて現像して、上記回路を封止するための封止材を注型する部分のレジスト膜を除去する工程、
(iii)上記封止材を注型する部分に封止材を塗布して120〜200℃で30〜120分間加熱して封止材を硬化する工程、
(iv)(ii)の工程で除去されずに残ったレジスト膜を溶解剥離する工程
を有する封止材パターンの形成方法において、
上記化学増幅ポジ型レジスト組成物が、アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる樹脂として、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位と、アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える単位とを含むと共に、上記樹脂を構成する全繰り返し単位の90モル%以上がスチレン骨格を有する繰り返し単位であり、更に、上記酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える全繰り返し単位中、90モル%以上が下記一般式(1)
【化1】


(式中、R1は、水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜6の直鎖状のアルキル基を表す。)
で表される繰り返し単位である樹脂と、光酸発生剤とを含有することを特徴とする封止材パターンの形成方法。
請求項2:
封止されるべき回路がLED(発光ダイオード)であることを特徴とする請求項1記載の封止材パターンの形成方法。
請求項3:
レジスト膜が10μm以上であることを特徴とする請求項1記載の封止材パターンの形成方法。
請求項4:
高エネルギー線が、i線、g線、KrFエキシマレーザー、電子線のいずれかより選択されることを特徴とする請求項1記載の封止材パターンの形成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の封止材パターンの形成方法を用いることにより、レジストパターニング後、120〜200℃,30〜120分間の加熱工程でレジストパターンが変形及び架橋反応を起こすことなく、その後の剥離工程で容易にレジスト膜が剥離可能であり、LEDに代表される光半導体素子の回路を封止するための封止材パターンを形成する方法として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る封止材パターンの形成方法の一実施態様を説明する断面図であり、(a)は回路が形成された基板、(b)は基板にレジスト層を形成した状態、(c)はフォトマスクを介してレジスト層を光照射した状態、(d)は光照射後の状態、(e)は現像した状態、(f)は封止材を塗布した状態、(g)は封止材を硬化した状態、(h)は残りのレジスト層を剥離した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の封止材パターンの形成方法は、封止材を注型するための注型枠パターンを形成する際に用いるレジストパターンを、下記に説明する化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いて得たレジスト膜により形成することで、高温長時間の処理を必要とする封止材の硬化後にも、使用したレジスト膜を溶剤を用いて容易に除去することを可能とするものである。
【0013】
本発明に用いられる上記化学増幅ポジ型レジスト組成物に含まれる、アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる樹脂(ベース樹脂)は、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位と、アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える単位とを含むと共に、
上記樹脂を構成する全繰り返し単位の90モル%以上がスチレン骨格を有する繰り返し単位であり、
更に、上記樹脂中の上記酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える全繰り返し単位中、90モル%以上が下記一般式(1)
【化2】


(式中、R1は、水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜6の直鎖状のアルキル基を表す。)
で表される繰り返し単位であることを特徴とする。
【0014】
上述のように、本発明の封止材パターンの形成方法に用いる化学増幅ポジ型レジスト組成物に使用されるベース樹脂は、KrFエキシマレーザー露光用のレジスト組成物等に用いられてきたベース樹脂と同様、基本単位として、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位と、アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える単位を含む。周知の通り、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位は、基板に対するレジスト膜の密着性を与えると共に、現像時にアルカリ可溶性を与える単位として機能する。また、アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える単位は、組成物に加えられた高エネルギー線の露光によって酸を発生する光酸発生剤より生じた酸を触媒として反応し、ベース樹脂をアルカリ性現像液に可溶性とする。この際、未露光域では酸が発生しないため、ベース樹脂は上記現像液に溶解せず、レジストパターンが形成される。
【0015】
また、上記ベース樹脂におけるフェノール性水酸基を有する繰り返し単位と上記アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える単位の配合も、基本的には公知の多くのフェノール系材料を用いた化学増幅ポジ型レジスト組成物用ベース樹脂の設計に従って行なうことができる。即ち、実際に使用する繰り返し単位の具体的構造にも依存して調整が行なわれるが、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位は、ベース樹脂の全繰り返し単位に対して、50〜90モル%、より好ましくは60〜80モル%、アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える単位は、ベース樹脂の全繰り返し単位に対して、5〜50モル%、より好ましくは10〜40モル%に最適な範囲を見出すことができる。更に、上記ベース樹脂には、アルキル基あるいは1級又は2級アルコキシ基で置換されていてもよいスチレン単位のような酸触媒の有無に係わらずアルカリ性現像液に不溶な単位が0〜20モル%、フルオロアルコールが置換されたスチレン単位のようなフェノール系水酸基以外の基板への密着性及びアルカリ性現像液に溶解性を与える繰り返し単位が0〜20モル%程度含まれていてもよい。
【0016】
本発明の封止材パターンの形成方法に用いるレジスト組成物のベース樹脂の基本的解像性能を与えるための、一般のベース樹脂と共通する基本構成は上述の通りであるが、本発明の課題を解決するために選択される特徴的構成は、下記のベース樹脂を構成する繰り返し単位の基本骨格の選択と、アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える単位の選択、特に酸分解性保護基の選択にある。
【0017】
まず、ベース樹脂の基本骨格の選択であるが、本発明の封止材パターンの形成方法に用いられるレジスト組成物に使用されるベース樹脂は、上述の通り、一部の繰り返し単位がフェノール性水酸基を持ち、該樹脂を構成する主たる繰り返し単位がスチレン骨格を有する繰り返し単位である、いわゆるポリヒドロキシスチレン系の樹脂であるが、既に化学増幅ポジ型用のベース樹脂として、上記ポリヒドロキシスチレン系の樹脂は多数提案されている。例えば、3−ヒドロキシスチレン又は4−ヒドロキシスチレン繰り返し単位のいずれか、あるいは両方のみからなるポリマーの水酸基の一部を酸分解性保護基(アセタール基、3級アルキル基、t−Boc基、有機シリル基等)で保護したものや、3−ヒドロキシスチレン又は4−ヒドロキシスチレン繰り返し単位のいずれか、あるいは両方に、酸分解性保護基で保護された(メタ)アクリル酸エステルを共重合した樹脂、更には該共重合した樹脂のフェノール性水酸基の一部を上記酸分解性保護基で保護したものが、半導体回路形成法のレジスト組成物として用いられてきたが、これらのうち、本発明の課題とするLEDに代表される光半導体素子の回路を封止するための封止材パターンを形成する際の封止材の硬化条件のような、120〜200℃で30〜120分間の加熱によってもパターン変形を起こし難いレジスト膜を得るためには、ベース樹脂の主要構成成分として上記スチレン骨格を持つ繰り返し単位の構成比が高いものが選択されることが好ましく、具体的にはベースポリマーの全繰り返し単位中、90モル%以上をスチレン骨格を有する繰り返し単位とすることで、期待される耐熱性が得られる。
【0018】
上記スチレン骨格を有する繰り返し単位としては、上述したように、4−ヒドロキシスチレン単位、3−ヒドロキシスチレン単位の他に、2,4−ジヒドロキシスチレン単位や、3,4−ジヒドロキシスチレン単位、スチレン単位、ビニル安息香酸単位や、更に、それらのα位(ポリマー主鎖のベンゼン環が置換する炭素)に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するものや、ベンゼン環上に炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基やアルコキシ基を有するもの、更に上述のような置換基を持っていてもよいヒドロキシスチレン単位やビニル安息香酸単位の水酸基が酸分解性保護基により保護された誘導体単位が知られており、それらはいずれも本発明に用いるレジスト組成物のベースポリマーに適用できる。特に、4−ヒドロキシスチレン単位とその酸分解性保護基により保護された誘導体単位、及びスチレン単位は、容易かつ安価に入手できる材料を用いて導入することができ、有用である。
【0019】
また、上述したように、上記ベース樹脂を構成する繰り返し単位として、スチレン骨格を有する繰り返し単位の比率が高いほど高い耐熱性が期待できるが、パターン形成の際のパターン形状を微調整する目的等で、その他の共重合成分を加えることもできる。従来より半導体用レジスト材料用として多用されたものとして、例えば、上述で説明した3級アルキル基で保護した(メタ)アクリル酸エステルや、酸分解性能のないエステルアルコールを持つ(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができるが、これらは上述のように、ベースポリマーの全繰り返し単位に対し、10モル%以下に制限して使用される。
【0020】
上述のベースポリマーは、公知のいずれの重合方法によって合成されてもよく、よく用いられるものとしてラジカル重合による方法が挙げられる。しかし、特許文献6(特開2002−234910号公報)に開示されたアニオン重合による方法は、分散度(Mw/Mn)が1.1以下のものを得ることができ、この方法によれば、より熱に対して変形を起こし難いレジスト膜を得ることができる。
【0021】
なお、上記ベース樹脂の分子量は、熱特性や、解像性能からの要請から、ポリスチレンを基準とするGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定で、質量平均分子量(Mw)が1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜50,000である。
【0022】
次に、上記ベース樹脂を構成する、アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える単位の主たる部分あるいは全てである下記一般式(1)
【化3】


(式中、R1は、水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜6の直鎖状のアルキル基を表す。)
で示される繰り返し単位について説明する。
【0023】
本発明の課題とする、LEDに代表される光半導体素子の回路を封止するための封止材パターンを形成する際の封止材の硬化条件のような、120〜200℃,30〜120分間の加熱工程後にも、レジスト膜が容易に溶剤によって剥離されるためには、ベース樹脂が上記加熱工程で溶剤に対する溶解を妨害するような変化を起こし難いことが必要となる。ところが、化学増幅型レジスト組成物の酸分解性保護基として多用されるアセタール、例えばエトキシエトキシスチレンのみでポリヒドロキシスチレンを保護した樹脂をベース樹脂として用いると、上記加熱工程を経た後のレジスト膜は、ベース樹脂が架橋反応を生じたことによると思われる溶剤への不溶化が生じる。また、3級アルキル基で保護したメタクリル酸エステルを繰り返し単位として用いた場合にも、同様な架橋反応によるものと考えられる、溶剤に対する溶解性が劣化する現象が確認された。そこで、上記課題を解決するためには、酸分解性保護基の適切な選択が必要である。
【0024】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位は、アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える単位として特許文献5(特開2003−131384号公報)等で提案されたものであるが、これを用いた場合には、比較的高温かつ比較的長時間の加熱を行なっても、ベース樹脂の架橋化によると思われる溶剤への不溶化は起こり難いことが見出された。そこで、上記一般式(1)で表される繰り返し単位の、下記のようなベース樹脂への適用によって、上記架橋反応問題が解決される。即ち、ベース樹脂に含まれる繰り返し単位として、上記アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える単位は、その90モル%以上が上記一般式(1)で表される繰り返し単位とすることで上記課題が解決される。10モル%より多くその他の単位を用いた場合には、LEDに代表される光半導体素子の回路を封止するための封止材パターンを形成する際の120〜200℃,30〜120分間の加熱工程後にレジスト膜を容易に溶剤剥離できない可能性がある。
【0025】
上記一般式(1)中、R1は、水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。ここで直鎖状又は分岐状のアルキル基の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等を例示することができる。またR2は炭素数1〜6の直鎖状のアルキル基を表す。ここで直鎖状のアルキル基の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基等を例示することができ、更に好ましくは、エチル基、プロピル基であり、特にエチル基はレジストパターンの形状に優れると同時に耐熱性能及び剥離性能に優れる。
【0026】
また、上記ベース樹脂に含まれる、上記アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える単位の残り10%未満の単位については特に制限はないが、上記一般式(1)以外で表される酸分解性保護基を有したポリヒドロキシスチレン、例えばエトキシエトキシスチレン等のアセタールを含んだポリヒドロキシスチレンや、酸分解性保護基を有したメタクリル酸エステルやアクリル酸エステル、例えばメタクリル酸1−エチルシクロペンチルエステルを含有してもよい。
【0027】
次に、本発明に用いる上記化学増幅ポジ型レジスト組成物の必須成分である光酸発生剤について説明する。紫外光及び電子線等により分解して酸を発生する光酸発生剤は、既に化学増幅型レジスト組成物用として多数が公知であり、基本的にはそれらがいずれも適用できる。好ましく適用される光酸発生剤として、具体的には、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム等のオニウム塩;ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロへキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン誘導体;α−(ベンゼンスルホニウムオキシイミノ)−4−メチルフェニルアセトニトリル等のオキシムスルホネート誘導体;更には、(5−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−(4−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニルスルホニルオキシイミノ)−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)−アセトニトリル等のイミノスルホネートや、2−メチル−2[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1−[(4−メチルチオ)フェニル]−1−プロパン等が挙げられる。これらの中でも、オキシムスルホネート類、イミノスルホネート類等が好適に用いられる。
【0028】
上記光酸発生剤の配合量は、上記ベース樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、特に0.5〜10質量部であることが好ましい。
【0029】
次に、上記レジスト組成物に用いられる溶剤であるが、化学増幅型レジスト組成物用の溶剤も既に多数のものが公知であり、上記ベースポリマー、及び光酸発生剤に対し十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与える溶剤であれば特に制限なく使用することができる。
【0030】
例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類;1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0031】
これらの中でも特に、乳酸エチル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン及びその混合溶剤が好ましい。
【0032】
溶剤の配合量は特に制限されないが、通常ベース樹脂100質量部に対し30〜1,000質量部、特に40〜800質量部であることが好ましい。
【0033】
その他、上記化学増幅ポジ型レジスト組成物には、上記各成分以外に、更に以下の添加成分を配合してもよい。
【0034】
添加成分の一つとしては、例えば塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤としては、非イオン性のものが好ましく、例えばフッ素系界面活性剤、具体的にはパーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、含フッ素オルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。
【0035】
これらは、市販されているものを用いることができ、例えば、フロラード「FC−4430」(住友スリーエム(株)製)、メガファック「F−8151」(DIC(株)製)、「X−70−093」(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、フロラード「FC−4430」(住友スリーエム(株)製)及び「X−70−093」(信越化学工業(株)製)である。
【0036】
なお、界面活性剤の添加量は、ベースポリマー100質量部に対し5質量部以下、特に0.01〜1.0質量部であることが好ましい。
【0037】
また他の添加成分として環境安定性、パターン形状又は引き置き経時安定性を向上させるために含窒素化合物を添加することができる。化学増幅型レジスト組成物に添加することができる含窒素化合物は多数が公知であるが、好ましい含窒素化合物としてはアミン類、特に第2級又は第3級の脂肪族アミン類が挙げられる。好ましく適用される第2級又は第3級アミン類の例としては、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられる。
【0038】
上記含窒素化合物の配合量はベースポリマー100質量部に対し0.005〜1.0質量部、特に0.01〜0.5質量部であることが好ましい。
【0039】
次に、上記化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する工程は、基本的には特許文献3(特開2005−32872号公報)で提案された工程に従うものであるが、化学増幅型レジスト組成物を用いることにより、工程条件は必要に応じて変更されている。
【0040】
(工程1)
まず、図1(a),(b)に示したように、上述したポリマーをベースとしたレジスト組成物をLEDに代表される光半導体素子の封止されるべき回路が形成された基板1表面上に塗布し、プリベーク処理し、レジスト層2を形成する。
【0041】
この場合、LEDに代表される光半導体素子としては、UVLED、青色LED、可視光LED、IRLED、レーザーLED等が例示される。なお、基板としては、シリコン、ガリウムヒ素、ガリウムアルミニウムヒ素、チッ化ガリウム、サファイア等が例示される。
【0042】
上記基板表面に、上記化学増幅ポジ型レジスト組成物を塗布する際、通常、膜厚として10μm以上、特に10〜50μm程度の膜厚で塗布することが好ましい。膜厚が10μm未満では有機樹脂封止材を十分な厚みをもって光半導体素子に被覆、封止し得ない場合がある。
【0043】
上記化学増幅ポジ型レジスト組成物の塗布方法としてはスピンコート法、ロールコート法等の公知の手法により塗布し、ホットプレート、オーブン等の加熱装置で60〜150℃で1〜10分間程度のプリベーク処理を行なうことができる。
【0044】
(工程2)
次いで、図1(c)に示したように、ステッパー、マスクアライナー等の高エネルギー線照射装置を用い、フォトマスク3を介して樹脂封止すべき回路部分のレジスト膜を露光4する。この際、上述のような化学増幅型レジスト組成物の多くは、250nm以下の短波長光や電子線露光用に開発されたものではあるが、それらの開発初期に確認されている通り、用いられる光酸発生剤は種々の波長の光、例えば、g線、i線、g線及びi線を含むブロードバンド、あるいはKrFエキシマレーザーに代表される紫外線等の光、電子線に感度を持つものであり、要求されるパターンサイズに合わせ、それらいずれの高エネルギー線を選択してもよい。
【0045】
上記露光により、図1(d)に示したように、レジスト層2の露光部分2aはアルカリ性現像液に可溶となる。露光後、40〜150℃で10秒〜5分間程度露光後ベークを行ない、次いで、図1(e)に示したように、アルカリ性現像液にて現像して、上記回路を封止するための封止材を注型する部分のレジスト膜2aを除去する。この際用いるアルカリ性現像液としては、水酸化テトラメチルアンモニウムの水溶液等に代表される公知のアルカリ性現像液溶剤を使用することができる。
【0046】
(工程3)
次に、図1(f)に示したように、上記工程2により、外部に露呈した封止材を注型する部分に有機封止材5を塗布し、図1(g)に示したように、120〜200℃で30〜120分間加熱して封止材を硬化5aさせる。
【0047】
この場合、使用する有機封止材としては、特に限定されるものではないが、硬化性シリコーン樹脂組成物又は硬化性エポキシ樹脂組成物等を代表的な封止材として使用することができる。
【0048】
硬化性シリコーン樹脂組成物としては、ビニル基を含有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを白金触媒で反応させることによって硬化させることができる熱硬化型(付加反応硬化型)のもの等を使用することが好ましい。
【0049】
また硬化性エポキシ樹脂組成物としては、いかなるものでも使用できるが、エポキシ樹脂と硬化剤として酸無水物を用いたエポキシ樹脂組成物や、自己重合性エポキシ樹脂を単独重合させたもの等を使用することが好ましい。
【0050】
これらの硬化性有機樹脂組成物には、膨張係数を調整するためにシリカ等の無機質充填剤や無機蛍光体を添加することができる。
【0051】
上記硬化性有機樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法等が挙げられる。なお塗布の際には、上記半導体素子部分のみに塗布することが好ましい。この場合、スピンコート法を用いると、封止材は上記レジスト膜が除去されて凹形状となった半導体素子に入り込む一方、残存レジスト膜上の封止材は、スピン力で吹き飛ばされて残存レジスト膜上に残らないものである。
【0052】
また、硬化性有機樹脂組成物を塗布する際に、塗布量が最適化されておらず、レジスト膜上に硬化性有機樹脂組成物が多量に残存したまま硬化した場合、次工程で残存レジスト膜を溶解剥離した場合、該レジスト膜上の硬化樹脂が残り、レジスト膜のみが除去されて、その部分が空洞となってしまうことがある。そのため、硬化性有機樹脂組成物の塗布量は、レジスト膜と同じ膜厚となるように調整することが望ましく、特にスピンコート時には、使用する硬化性有機樹脂組成物の粘度に合わせた回転数を選択することが望ましい。
【0053】
硬化性有機樹脂組成物の硬化方法及び硬化条件としては、用いる硬化性有機樹脂組成物により異なるが、加熱硬化型の場合、120〜200℃で30〜120分間加熱して硬化させることができる。温度が120℃未満であると硬化しない場合があり、また200℃を超えると上記凹形状のレジスト膜の変形が起こる可能性があり、変形が起こると次工程で残存レジスト膜を溶解剥離した時に、封止材の硬化後の形状に影響を及ぼすことになる。
【0054】
(工程4)
硬化性有機樹脂組成物を硬化させた後、図1(h)に示したように、半導体素子基板上の残存レジスト膜を溶剤を用いて溶解剥離して除去する。ここで使用できる溶剤は、回路部分を封止する硬化樹脂層を溶解せず、残存レジスト膜を溶解可能であれば特に制限はない。一般的に知られているレジスト膜の剥離性能が強いとされている溶剤の中には、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アルカリベンゼンスルホン酸等を含有するものが挙げられるが、従来材料による溶解し難くなったレジスト膜を、これらの溶剤を使用して長時間処理して剥離を行なうと、回路部分を封止する硬化樹脂層の一部を溶解又は膨潤させる可能性があった。
【0055】
しかし、本発明の封止材パターンの形成方法を用いることにより溶解剥離が容易になり、上記剥離性能が強いとされている溶剤を用いなくてもレジスト膜の剥離が可能となる。上記硬化樹脂層の溶解あるいは膨潤を抑制しつつ、本発明で用いられるレジスト膜を溶解剥離するために好適に用いられる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等が挙げられるが、特に上記ケトン類が有効である。
【0056】
レジスト膜除去後、接着力向上、硬化物性向上の点から半導体素子基板を乾燥させることが好ましい。乾燥条件としては、80〜200℃、特に100〜180℃で、30分〜10時間、特に30分〜2時間とすることができる。
【0057】
以上のようにして、必要部分を有機樹脂封止材にて封止された基板を得ることができる。
【実施例】
【0058】
以下、合成例、比較合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0059】
[合成例1]
2Lの三つ口フラスコにp−アセトキシスチレン66.5g(0.41mol)、p−tert−アミロキシスチレン33.5g(0.18mol)、溶媒としてトルエン200gを添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素置換を3回繰り返した。室温まで昇温した後、重合開始剤としてアゾイソブチロニトリル(AIBN)3.9gを添加、60℃まで昇温後に15時間反応させた。反応後、この反応液を質量が1/2になるまで濃縮し、次いでメタノール4.5L、水0.5Lの混合溶液中に注ぎ沈殿させ、得られた固体を濾過後、60℃で減圧乾燥して、白色固体92gを得た。このポリマーをメタノール0.27L、テトラヒドロフラン0.27Lに再度溶解し、トリエチルアミン77g、水15gを添加し、脱保護反応を行ない、酢酸を用いて中和した。反応溶液を濃縮後、アセトン0.5Lに溶解し、上記と同様に沈殿、濾過、乾燥を行ない、白色固体ポリマーAを61g得た。
【0060】
得られた重合体を13C−NMR、1H−NMR、及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった(以下、同様)。
共重合組成比;
ヒドロキシスチレン:p−tert−アミロキシスチレン=72.5:27.5
(酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える全繰り返し単位中、一般式(1)が占める割合:100%)
重量平均分子量(Mw)=16,100
分子量分布(Mw/Mn)=1.73
【0061】
[合成例2]
p−アセトキシスチレン63.2g(0.39mol)、p−ブトキシスチレン29.5g(0.17mol)を用いた他は、合成例1と同様にして白色固体ポリマーBを61g得た。
共重合組成比;
ヒドロキシスチレン:p−ブトキシスチレン=71.8:28.2
(酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える全繰り返し単位中、一般式(1)が占める割合:100%)
重量平均分子量(Mw)=15,800
分子量分布(Mw/Mn)=1.71
【0062】
[合成例3]
p−アセトキシスチレン71.5g(0.44mol)、p−tert−アミロキシスチレン27.6g(0.15mol)、メタクリル酸1−エチルシクロペンチル2.3g(0.01mol)を用いた他は、合成例1と同様にして白色固体ポリマーCを55g得た。
共重合組成比;
ヒドロキシスチレン:p−tert−アミロキシスチレン:メタクリル酸1−エチルシクロペンチル=70.9:27.0:2.1
(酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える全繰り返し単位中、一般式(1)が占める割合:93%)
重量平均分子量(Mw)=17,000
分子量分布(Mw/Mn)=1.70
【0063】
[合成例4]
2Lのフラスコ容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行なったテトラヒドロフラン1,500gを注入、−75℃まで冷却した。その後、s−ブチルリチウム(シクロヘキサン溶液:1N)を14.5g注入し、金属ナトリウムを用いて蒸留脱水処理を行なったp−エトキシエトキシスチレンを99.5g(0.52mol)と、同様の処理を行なったp−tert−アミロキシスチレン37.8g(0.20mol)を混合した溶液を滴下注入し、反応溶液の内部温度を−65℃以下に保った。30分間反応後、メタノール10gを注入し、反応を停止させた。反応溶液を室温まで昇温させた後、減圧濃縮し、メタノール800gを注入撹拌、静置後、上層のメタノール層を除去した。この操作を3回繰り返し、金属リチウムを取り除いた。下層のポリマー溶液を濃縮し、テトラヒドロフラン840mL、メタノール630mL、シュウ酸3.2gを加え、40℃に加温し、20時間脱保護反応を行ない、ピリジン35gを用いて中和した。反応溶液を濃縮後、アセトン0.6Lに溶解させ、純水7.0Lの溶液中に沈殿させて洗浄し、得られた固体を濾過後、40℃で減圧乾燥して、白色固体ポリマーDを85g得た。
共重合組成比;
ヒドロキシスチレン:p−tert−アミロキシスチレン=72.8:27.2
(酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える全繰り返し単位中、一般式(1)が占める割合:100%)
重量平均分子量(Mw)=14,300
分子量分布(Mw/Mn)=1.07
【0064】
[比較合成例1]
p−アセトキシスチレン68.3g(0.42mol)、p−tert−アミロキシスチレン20.4g(0.11mol)、p−エトキシエトキシスチレン5.3g(0.03mol)を用いた他は、合成例1と同様にして白色固体ポリマーEを52g得た。
共重合組成比;
ヒドロキシスチレン:p−tert−アミロキシスチレン:p−エトキシエトキシスチレン=74.0:22.0:4.0
(酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える全繰り返し単位中、一般式(1)が占める割合:85%)
重量平均分子量(Mw)=16,200
分子量分布(Mw/Mn)=1.78
【0065】
[実施例1]
合成例1で得られたポリマーA50.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート46.2g及びシクロペンタノン8.2gに溶解させ、更に光酸発生剤として4−メトキシ−α−[[[(4−メチルフェニル)スルホニル]−オキシ]イミノ]ベンゼンアセトニトリルを1.0g及び界面活性剤X−70−093(信越化学工業(株)製)を0.1g混合し、溶解させた後、0.5μmの孔径のメンブレンフィルターにて濾過し、レジスト液を調製した。
このレジスト液をスピンコーターを用い半導体素子が形成された基板表面に、回転数2,500rpmで塗布した後、ホットプレートを用い120℃で5分間のプリベーク処理を行ない、膜厚20μmのレジスト膜を形成した。
【0066】
次に、この基板上に、i線ステッパー((株)ニコン製NSR−1755i7A、NA=0.5)を用いて、3mm×2mmの光遮蔽部と光遮蔽部間の間隔(光透過部)とがそれぞれ0.5mmのフォトマスクを用い、パターニング露光した。露光後、80℃で2分間程度露光後ベークを行ない、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38質量%の現像液にて480秒パドル現像して、上記半導体素子が形成された基板上の回路を封止するための封止材を注型する部分のレジスト膜を除去した。
【0067】
次に、この半導体素子基板をスピンコーターにセットし、回転数2,000rpmで回転させながら、熱硬化性の液状シリコーン樹脂組成物(X−35−140:信越化学工業(株)製)を厚さ20μmになるように塗布した後、オーブンを用いて150℃で1時間加熱して、シリコーン樹脂組成物を硬化させた。
【0068】
硬化後、この半導体素子基板をアセトン溶液に室温で5分、10分、15分又は20分間浸漬させ、残存していたレジスト膜の有無を光学顕微鏡にて観察した結果、10分間の浸漬でスカムなく完全にレジスト膜が剥離除去されていることを確認した。
レジスト膜除去後、150℃で1時間乾燥して必要部分を有機樹脂封止材にて封止された基板を得た。
【0069】
[実施例2]
合成例2で得られたポリマーB50.0gを用いた他は実施例1と同様にレジスト液を調製後、半導体素子基板上に塗布、パターニングし、更に硬化性樹脂を用いて回路を封止した後、レジスト膜を剥離除去した結果、20分間のアセトン浸漬でスカムなく完全にレジスト膜が剥離除去されていることを確認した。レジスト膜除去後、乾燥して必要部分を有機樹脂封止材にて封止された基板を得た。
【0070】
[実施例3]
合成例3で得られたポリマーC50.0gと光酸発生剤として[5−(4−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニルスルホニルオキシイミノ)−5H−チオフェン−2−イリデン]−(2−メチルフェニル)−アセトニトリル1.0gを用いた他は実施例1と同様にレジスト液を調製後、半導体素子基板上に塗布、パターニングし、更に硬化性樹脂を用いて回路を封止した後、レジスト膜を剥離除去した結果、15分間のアセトン浸漬でスカムなく完全にレジスト膜が剥離除去されていることを確認した。レジスト膜除去後、乾燥して必要部分を有機樹脂封止材にて封止された基板を得た。
【0071】
[実施例4]
合成例4で得られたポリマーD50.0gと光酸発生剤として[5−(4−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニルスルホニルオキシイミノ)−5H−チオフェン−2−イリデン]−(2−メチルフェニル)−アセトニトリル1.0gを用いた他は実施例1と同様にレジスト液を調製後、半導体素子基板上に塗布、パターニングし、更に硬化性樹脂を用いて回路を封止した後、レジスト膜を剥離除去した結果、5分間のアセトン浸漬でスカムなく完全にレジスト膜が剥離除去されていることを確認した。レジスト膜除去後、乾燥して必要部分を有機樹脂封止材にて封止された基板を得た。
【0072】
[比較例1]
比較合成例1で得られたポリマーE50.0gを用いた他は実施例1と同様にレジスト液を調製後、半導体素子基板上に塗布、パターニングし、更に硬化性樹脂を用いて回路を封止した後、レジスト膜を剥離しようとした結果、20分間のアセトン浸漬でもレジスト膜が完全には除去されておらず、スカムが残存していることを確認した。
【符号の説明】
【0073】
1 回路が形成された基板
2 レジスト層
2a アルカリ性現像液に可溶となったレジスト層
3 フォトマスク
4 露光
5 封止材
5a 硬化封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)化学増幅ポジ型レジスト組成物を封止されるべき回路が形成された基板表面に塗布して該回路を含む基板表面にレジスト膜を形成する工程、
(ii)上記レジスト膜に高エネルギー線をパターン照射し、露光し、ベークした後に、アルカリ性現像液にて現像して、上記回路を封止するための封止材を注型する部分のレジスト膜を除去する工程、
(iii)上記封止材を注型する部分に封止材を塗布して120〜200℃で30〜120分間加熱して封止材を硬化する工程、
(iv)(ii)の工程で除去されずに残ったレジスト膜を溶解剥離する工程
を有する封止材パターンの形成方法において、
上記化学増幅ポジ型レジスト組成物が、アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる樹脂として、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位と、アルカリ性現像液に不溶性であり、酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える単位とを含むと共に、上記樹脂を構成する全繰り返し単位の90モル%以上がスチレン骨格を有する繰り返し単位であり、更に、上記酸と反応してアルカリ性現像液に可溶性となる機能を与える全繰り返し単位中、90モル%以上が下記一般式(1)
【化1】


(式中、R1は、水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜6の直鎖状のアルキル基を表す。)
で表される繰り返し単位である樹脂と、光酸発生剤とを含有することを特徴とする封止材パターンの形成方法。
【請求項2】
封止されるべき回路がLED(発光ダイオード)であることを特徴とする請求項1記載の封止材パターンの形成方法。
【請求項3】
レジスト膜が10μm以上であることを特徴とする請求項1記載の封止材パターンの形成方法。
【請求項4】
高エネルギー線が、i線、g線、KrFエキシマレーザー、電子線のいずれかより選択されることを特徴とする請求項1記載の封止材パターンの形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−174972(P2011−174972A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37095(P2010−37095)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】