射出成形装置に用いられる溶融物再流通部材
【課題】複数のホットランナノズルに連通するマニホルド溶融チャンネルを有するような射出成形装置において、マニホルド内に溶融物再流通部材を配置し、マニホルドチャンネルに沿って溶融物が流れる間に発生する不均一なせん断圧力の性能の均一化を図る事が可能な射出成形装置を提供する。
【解決手段】溶融物再流通部材252は、マニホルド212内の螺旋状の溶融通路部分を備えている。流入する溶融物は、溶融物再流通部材252のテーパ部分の入り口により圧力が上昇し、樹脂通路の断面中央部では溶融物が大きな速度で流れ、断面外側部分は、螺旋状の通路を溶融物が流れ、何度も方向が変えられ、樹脂通路の断面中央部を流れる溶融物と部分的に混合する。このことにより、溶融物再流通部材の出口において、せん断圧力の性能が当該再流通部材の入口よりもより均一化される。
【解決手段】溶融物再流通部材252は、マニホルド212内の螺旋状の溶融通路部分を備えている。流入する溶融物は、溶融物再流通部材252のテーパ部分の入り口により圧力が上昇し、樹脂通路の断面中央部では溶融物が大きな速度で流れ、断面外側部分は、螺旋状の通路を溶融物が流れ、何度も方向が変えられ、樹脂通路の断面中央部を流れる溶融物と部分的に混合する。このことにより、溶融物再流通部材の出口において、せん断圧力の性能が当該再流通部材の入口よりもより均一化される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して溶融物再流通部材、および射出成形ホットランナ装置における溶融物の均質性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の射出成形装置においては、溶融物は射出成形機械から搬送され、概して円形の断面を有する複数のマニホルドチャンネルを有するホットランナマニホルドを通過するよう流れる。マニホルドは、入口および複数のホットランナノズルに連通する複数の出口を有しており、このマニホルドは、溶融物を一定かつ流動性を有する温度に維持するよう熱せられるようになっている。ホットランナマニホルドを使用することにより製造された複数の成形品に、様々な変化が影響を与える。一のこのような変化は、せん断応力が引き起こされるような流れの不均一性である。この流れの不均一性は、溶融チャンネルに沿って、およびマニホルドの出口において、観察または測定することができる。この流れの不均一性は不可避なものであり、当該不均一性は、マニホルドの各溶融チャンネルに沿った溶融物の温度、粘度および速度に関する変化しやすい非対称的な断面分布(または性能)により特徴づけられる。このため、マニホルドから排出された溶融物の温度、粘度および速度に関する断面分布または性能は、各ノズルの入口で変化する。このことは、多くの適用においてなぜ成形品が重量、密度、サイズ、外観等という観点においてキャビティによって異なるのか、またバッチによって異なるのかを明らかにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
溶融物が概して円形のチャンネルを流れることにより、チャンネルの中央における溶融物はチャンネルの両側に沿った溶融物よりも速度が大きくなる。チャンネルの両側に沿った溶融物は、中央における溶融物よりもゆっくりと流れるために、このチャンネルの両側に沿った溶融物は、速度の大きな中央の溶融物よりも長い間マニホルドからの熱に曝されることとなる。このことにより、チャンネルの中央における溶融物とチャンネルの両側に沿った溶融物との間で温度の不均一性が発生する。同時に、チャンネルの両側に接触する溶融物は更に熱せられ、チャンネルの側壁と反対の方向に移動する溶融物により発生する衝突により圧力(たとえば、せん断応力)が加えられる。温度およびせん断応力が大きいことにより、溶融物の粘度が変化する。
【0004】
図1は、複数チャンネル射出成形装置における従来の2レベルのホットランナマニホルド112の断面を示す。溶融物はチャンネル102に沿ってマニホルドに入る。溶融物はマニホルドヒータ128により成形可能な温度に維持される。溶融物は分岐し、反対側にある同一の2つの枝部103に入り、約90°の第1の曲がり部104を流れる。溶融物は再び分岐し、反対側にある同一の2つの枝部105、106に流れ、各枝部において約90°の第2の曲がり部107で流れが曲がり、そして各々出口108、109を介してマニホルドから排出される。出口108、109は2つのホットランナノズル(図示せず)に流体連通しており、単一または2つの成形キャビティシステム(図示せず)に溶融物を搬送するようになっている。
【0005】
チャンネル102の壁部に沿って発生するせん断応力について、ラインA−Aに沿ったせん断応力性能の断面として図1Aに概略的に示す。チャンネル102が枝部すなわち溶融チャンネル103に分岐したときに、溶融チャンネル102からのせん断応力は、溶融チャンネル103において側壁103aの方が側壁103bよりも大きくなる。溶融物が枝部103を通過するよう流れることにより、必然的に、せん断応力は側壁103bに沿って小さくなる。しかしながら、側壁103aに沿った衝突により発生するせん断応力は、側壁103aに沿ったチャンネル102からのせん断応力の履歴に追加され、チャンネル103内における左右のまたは非対称のせん断応力の不均衡が発生することとなる。さらに、せん断応力の不均衡は、溶融物が曲がり部104を移動して更に溶融チャンネル103に沿って流れるときに発生する。チャンネル103が枝部すなわち溶融チャンネル105、106で分岐したときに、これらの溶融チャンネルに沿って出口108、109に向かうような溶融物のせん断応力、温度および速度に係る性能は、より不均一に流通され、より不均一なバランスとなる。側壁105aと側壁105bとの間のせん断応力の差異について、ラインB−Bに沿ったせん断応力性能の断面として図1Bに概略的に示す。側壁106aと側壁106bとの間のせん断応力の差異について、ラインC−Cに沿ったせん断応力性能の断面として図1Cに概略的に示す。このように、マニホルド出口108、109において、図1B、図1Cの断面に係る各々のせん断応力は、明確な左右の差異、およびマニホルド溶融チャンネルの中心軸115に関して不均一なせん断応力、温度および粘度の断面流通を示している。
【0006】
さらに、図1B、図1Cの断面に係るせん断応力は、マニホルドチャンネル105、106間のせん断応力が大きく異なることを示している。せん断応力の性能はまた温度、速度および粘度の性能の目安にもなることにより、出口108を介して枝部105から排出される溶融物は、当該溶融物の外側および中間部分において、出口109を介して枝部106から排出される溶融物よりも非常に高い温度となっている。このため、枝部105における溶融物からの製品を成形するのに適した温度および圧力は、枝部106における溶融物からの製品を成形するのに適した温度および圧力とは異なることとなる。複数チャンネルの射出成形装置における特定のチャンネルの相異なる温度および圧力について調整または局所的な修正を行うのが非常に困難であるので、せん断応力の性能の変化により一の成形キャビティと他の成形キャビティとの間で、および成形品の一のバッチと他のバッチとの間で、成形品が不均一となる。
【0007】
更に、左右(または不均一性あるいは非対称性)のせん断圧力および温度に係る断面性能により、単一の成形品における一方の側面と他の側面との間で異なる流れの特徴が発生し、製造されるべき製品の品質が悪化する。
【0008】
マニホルド出口において製造状況を改善するようなより均質であり同一または類似の性能を得るために、マニホルド内を流れ様々なノズルに向かう溶融物の温度、粘度または速度の非対称的な性能について減少、解消、再流通または回転の試みが行われてきた。
【0009】
関連するものとして、欧州特許公開公報第0293756号、米国特許第5,421,715号および米国特許第6,572,361号が参照される。これらの公報は、いわゆるマニホルド溶融物混合器を示している。また、米国特許第5,683,731号はいわゆるマニホルド溶融再流通器を示しており、米国特許第6,077,470号はいわゆる溶融フリッパーすなわち溶融回転装置を示している。更に、米国特許出願公開公報第2004/0130062号が参照され、この公報は、他の溶融物混合装置および方法を示している。これらの公報の内容は、それぞれ本願の明細書に参照されることにより組み込まれるようになっている。
【0010】
ホットランナシステムを通過するよう流れる溶融物であって、システムを通過して流れる溶融物の様々な段階における温度、粘度、圧力およびせん断応力の断面性能が改善された溶融物が得られるような溶融物再流通部材および方法を提供することが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、射出マニホルドの複数の出口の各々においてより均一なせん断応力、温度、粘度および速度の断面性能を有する溶融物が得られるような射出成形装置および射出成形方法を開示している。
【0012】
本発明における一の実施の形態によれば、溶融物再流通部材が溶融チャンネルに沿った射出マニホルドの内側の特定の位置に配置されている。溶融物再流通部材は、入口において入口テーパ部分を有する遮るもののない溶融穴を有している。この入口テーパ部分は、溶融物の圧力を増加させ、圧力増加、あるいは、射出成形のトレードにおいて圧力低下(pressure drop)として知られているものを発生させている。溶融物再流通部材は、更に溶融穴の周囲にある螺旋状の溶融通路を有している。流入し、マニホルド溶融チャンネルに沿って流れ、不均一なせん断圧力性能が蓄積された溶融物は、まず、圧力が向上し、このことにより、溶融物再流通部材における中央の溶融穴を高速で溶融物が流れるようになる。次に、溶融流体の中央部分が溶融穴に沿って流れ続け、溶融流体の外側部分が螺旋状の溶融通路に沿って流れる。最初は、外側部分は中央部分よりもより非均質なせん断応力性能を有している。螺旋状の溶融通路は、溶融流体の外側部分の流れ方向を変え、せん断応力の再構築を行い、溶融流体の外側部分について溶融流体の中央部分に隣接するような溶融流体との混合を行う。溶融物再流通部材の出口において、溶融物のせん断応力の断面性能は、入口よりもより均一、あるいは対称的なものとなる。
【0013】
本発明の他の実施の形態においては、溶融物再流通部材は、いくつかの螺旋状の溶融通路を有し、これらの溶融通路により溶融流体の外側部分について追加的な再構築および混合が行われ、更に溶融物再流通部材の出口におけるせん断応力の断面性能を向上させることができる。
【0014】
溶融穴の内部でブロックや破片、機械的部材を使用することなく溶融物再流通部材に対して溶融物を直接的に送るようにすることにより、本発明による溶融物再流通部材は、例えば流れラインの発生を減少させる非侵入部材として機能する。
【0015】
本発明の一の態様によれば、複数チャンネルの射出成形装置内にある複数のマニホルドチャンネル出口の各々から排出される溶融物のせん断応力の断面性能をより均一にするようになっている。
【0016】
本発明の他の態様によれば、射出成形装置のマニホルドチャンネルの特定の出口から排出されるときに、せん断応力の断面性能がより均一にされた溶融物を得るようになっている。各々のケースにおいて、流入する溶融流体の機械的な分離を必要とすることのないような、遮るもののない溶融物再流通部材が用いられる。
【0017】
本発明の一の実施の形態によれば、圧力下で成形可能な材料の溶融流体を受けるための入口および複数の出口を含むマニホルドチャンネルを有するマニホルドと、入口およびマニホルドチャンネルに連通する出口を有する溶融物再流通部材と、マニホルドチャンネルの出口から溶融流体を受けるためのノズルチャンネルを各々が有する複数のノズルとを備えた射出成形装置が提供される。
【0018】
溶融物再流通部材は、螺旋状の溶融通路を有する溶融穴表面が更に設けられるような、遮るもののない溶融穴を備えている。流入する溶融流体は最初に圧力が増加し、あるいは圧力の低下として参照され、そして溶融物再流通部材の溶融穴および螺旋状の溶融通路を通って流れる。
【0019】
本発明の他の実施の形態によれば、溶融再流通方法は溶融物再流通部材を有しており、a)入口においてマニホルド溶融チャンネルの直径を減少させることにより侵入性のない局所における溶融物の圧力を増加させ、b)圧力が加えられた溶融物の中央部分を直線路に流れ続けさせ、溶融流体の外側部分を螺旋状の溶融通路に流れさせることにより、溶融流体における侵入性のない溶融物の分離および向きの変更を行う。溶融物が溶融物再流通部材を流れるときに、溶融流体の中央部分と当該溶融流体の外側部分との間で、ある程度の混合が発生する。混合の程度は、圧力増加のレベルすなわち量、溶融物再流通部材の溶融穴および螺旋状の溶融通路の長さ、螺旋通路のピッチまたは密集度、溶融物の粘度および温度のような、様々なファクターおよび変数に基づいている。溶融物再流通部材が複数の螺旋状の溶融通路を有するときに、溶融物においてより大きな混合およびより良好な均一化が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による実施の形態について、添付図面を参照してより詳細に記載する。添付図面において、類似する参照符号は、類似の構成を示している。
【0021】
図2において、本発明の実施の形態による射出成形装置は概して参照符号210で示される。射出成形装置210は、マニホルドチャンネル214を有する2レベルのマニホルド212を備えている。図示のように、マニホルドチャンネル214は、入口溶融チャンネル202に連通している。この入口溶融チャンネル202は、マニホルド入口218の下流側において、少なくとも2つの溶融枝部203に分岐している。チャンネル202からの溶融物は、各枝部203内にある溶融物再流通部材252に入ることとなる。溶融物再流通部材252の詳細については、図3の溶融物再流通部材352を参照して、後に述べる。各枝部203は、角204において曲がっており、枝部205、206に再び分岐している。マニホルド212は、成形ブロック背部プレート222とキャビティ成形プレート224との間に配置されている。マニホルド212は、位置決めリング226により、キャビティ成形プレート224に対して位置決めされている。スプルー軸受筒216はマニホルド入口218に連結されている。スプルー軸受筒216は、機械ノズル(図示せず)から溶融物を受け入れるようになっており、マニホルド入口218を介して溶融物をマニホルド212のチャンネル202に搬送するようになっている。溶融物は、枝部203、205および206を通って移動する。溶融物は、それぞれ枝部205、206の出口208、209を通ってマニホルド212から排出される前に、溶融物再流通部材253を再び通過する。溶融物再流通部材253の詳細については、図4の溶融物再流通部材453を参照して、後に述べる。マニホルド212はマニホルドヒータ228により熱せされる。
【0022】
ノズル230は、成形プレート221の開口232に受け入れられるようになっている。ノズル230はヒータ236により熱せられる。各ノズル230は、マニホルドチャンネル214の各々の出口から溶融物を受け入れるためのノズルチャンネル234を有しており、成形ゲート238を介して溶融物を各成形キャビティ240に搬送するようになっている。成形キャビティ240は、キャビティ成形プレート224と成形コア225との間に設けられている。冷却チャンネル242は、成形キャビティ240を冷却するために設けられている。
【0023】
本発明の実施の形態によれば、マニホルド212は、複数キャビティの射出成形装置における2レベルのマニホルドとなっている。しかしながら、射出成形装置は、チャンネル内の溶融物の流れのせん断応力の性質が不均衡であれば、様々な数のキャビティにつながるような様々な数のチャンネルを有するマニホルドを備えていてもよい。
【0024】
本発明の実施の形態による溶融物再流通部材252は、図3において溶融物再流通部材352として詳細が示されている。本発明の一の実施の形態において、溶融物再流通部材352は、溶融チャンネル303を内部に有するマニホルド312の内部に配設されている。溶融物再流通部材352は、中央軸315に沿ってマニホルド溶融チャンネル303と同軸となっている。溶融物再流通部材352は、本体部分354と中央溶融穴363とを有している。溶融穴363は、入口362と出口364とを有している。溶融穴363は、第1の穴部分355、入口テーパ部分357、第2の穴部分366、出口テーパ部分361および第3の穴部分356を有している。また、溶融物再流通部材352は、第2の穴部分366の表面360に沿って本体部分354の内部に形成された螺旋状の溶融通路358を有している。また、螺旋状の溶融通路358は、第2の穴部分366の表面360から測定される深さ359を有している。螺旋状の溶融通路の角度、ピッチまたは螺旋の曲がりの密集度、および距離359は、溶融物再流通部材352が用いられる用途によって変化する。溶融物はマニホルド溶融チャンネル303を通過して入口362に搬送される。このマニホルド溶融チャンネル303には、部材352の位置に基づいて、非対称分布または均一ではないせん断応力の断面性能が形成されている。入口362から、第1の直径368を有する第1の穴部分355を通って溶融物が移動する。第1の直径368は、概してマニホルド溶融チャンネル303の直径と同じ大きさとなっている。第1の穴部分355は、概してチャンネル303と同一平面上に位置決めされている。そして、溶融物は入口テーパ部分357を通って移動する。入口テーパ部分357は徐々にその径が小さくなっている。
【0025】
溶融物が入口テーパ部分357に流れることにより、溶融物の圧力が増加し、このことにより溶融物は第2の穴部分366に対して増加した圧力で送られることとなる。高圧力により、溶融物は溶融物再流通部材352を通過する速度が大きくなる。溶融物の中央部分は第2の穴部分366で遮られることなく流れ、一方、断面における不均一なせん断応力の性能を有する溶融物の外側部分は、螺旋状の溶融通路358に送られるようになっている。この螺旋状の溶融通路358は、外側のせん断応力の性能を再構築し、溶融物をより均一に再流通させる。また、外側の溶融部分は、遮られることなく溶融物再流通部材352の第2の穴部分366を通過するよう流れる溶融流体の中央部分と、部分的に混合させられる。用途、射出成形加工条件および溶融物の種類に応じて、溶融物再流通部材352は単一の螺旋状の溶融通路358、あるいは類似または異なる形状の複数の螺旋状の溶融通路358を有していてもよい。内部で溶融物が分岐され干渉物の周りで流れることを必要とするような、機械的な干渉物またはビュレットが設けられた、公知の他の溶融物のミキサーまたはフリッパーとは異なり、再流通部材352は、溶融物を遮られることなく流させ、このことにより色変化の用途において追加的な利益が得られる。遮られることのない流れにより、溶融物の堆積、および溶融物が捕らえられ流れなくなるようないわゆる「デッドスポット」と呼ばれる態様を抑止することができる。
【0026】
溶融物は、第1の直径368よりも小さな第2の直径370を有する第2の穴部分366に流れる。螺旋状の溶融通路358の端部において、溶融物は出口テーパ部分361に入る。この出口テーパ部分361は、直径が徐々に大きくなるようになっている。そして、溶融物は第3の穴部分356に流れる。この第3の穴部分356は、第1の穴部分355の直径368およびマニホルド溶融枝部303の直径と略同一の大きさである直径371を有している。また、第3の穴部分356は、出口364において枝部303とほぼ同一平面上にある。
【0027】
図3Aは、他の溶融物再流通部材352aを示している。溶融物再流通部材352aは、外側テーパ部分361を有していない点を除いて、溶融物再流通部材352に類似している。代わりに、螺旋状の溶融通路358aおよび第2の穴部分366aが直接出口364aで終端している。図3Bは、更に他の溶融物再流通部材352bを示している。溶融物再流通部材352bは、出口テーパ部分361を有していないという点で、溶融物再流通部材352aに類似している。また、第2の穴部分366bの直径370bは下流側に向くに従って徐々に大きくなっており、出口364bにおける第2の穴部分366bの直径は実質的に出口364bにおける溶融チャンネル303の直径と同じ大きさとなっている。螺旋状の溶融通路358bの深さ359bが、第2の穴部分366bの長手方向に沿って一定であることにより、螺旋状の溶融通路358bの曲がり部分が下流側に向くに従って徐々に大きくなっている。図3Cは、更に他の溶融物再流通部材352cを示している。溶融物再流通部材352cは、外側テーパ部分361を有しておらず、部材352bの説明を行う際に記載したように第2の穴部分366cの直径370cが下流側に向くに従って徐々に大きくなる点で、溶融物再流通部材352bに類似している。しかしながら、螺旋状の溶融通路358cの深さ359cは、第2の穴部分366cの長手方向に沿って一定ではない。代わりに、螺旋状の溶融通路358cの深さ359cは、下流側に向くに従って徐々に小さくなっており、出口364cにおける螺旋状の溶融通路358cの直径は実質的に出口364cにおける溶融チャンネル303の直径と同じ大きさとなっている。
【0028】
溶融物再流通部材352、またはここで開示された他の溶融物再流通部材は、2以上のブロックから形成されていてもよい。これらのブロックは、一緒に配置されたときに、円筒形のまたは四角形の入口またはプラグを形成するようになっている。例えば、2つのブロックから形成される溶融物再流通部材352は、各ブロックに機械加工された溶融穴363の一部分を有している。2つのブロックは互いに隣り合うよう位置合わせされ、溶融物再流通部材352の全体形状が得られる。ブロックは、ろう付け、溶接、接着、あるいは溶解により一体化され、あるいは、クランピング等により機械的に一体に保持される。代わりに、2以上のブロックが、詳細を以下に述べるように、マニホルドまたはマニホルドプラグに形成された凹部または穴の中に受け入れられるようになっていてもよい。ブロックの位置決めおよびマニホルドの熱による熱膨張が、2つのブロックを一体化して保持するために使用される。他の実施の形態においては、溶融物再流通部材352は、溶融穴363がブロック内に形成されるよう、成形されるようになっていてもよい。他の実施の形態において、複数の穴あけ工程を用いて一つのブロック内に溶融物再流通部材352の溶融穴363を形成することができることが、当業者にとって理解できよう。更に他の実施の形態において、溶融物再流通部材352の溶融穴363は、図2のマニホルドチャンネル214のようなマニホルドチャンネルの一部分として、一体的に形成されていてもよい。
【0029】
本発明の他の実施の形態によれば、図4に示すような溶融物再流通部材453が、図2のマニホルド212に類似するような2レベルのマニホルド412と、ノズル430との間に配置されている。両方の再流通部材453は同じものであり、各々、マニホルド412の枝部405、406に連通している。複数のマニホルド出口を有するマニホルド412には他の溶融物再流通部材453が設けられることが、当業者にとって理解できよう。溶融物再流通部材453は、上述のような溶融物再流通部材352と完全に同じ動作を行う。また、溶融物再流通部材453の内部構造は、溶融物再流通部材352に関する上述の記載のものと類似するようになっている。同様に、溶融物再流通部材453、またはここで開示された他の溶融物再流通部材は、図3A乃至図3Cの溶融物再流通部材352a、352bおよび352cのいずれかに関する上述の記載のものに類似するような内部構造を有している。
【0030】
しかしながら、再流通部材453の外部構造は、とりわけ、マニホルド412の出口408および408に容易に挿入することができるものとなっている。溶融物再流通部材453は、押圧嵌め合い、収縮させての嵌め合い、ろう付けまたはネジによってマニホルド412に適合可能となっている。この実施の形態による溶融物再流通部材453は、既に存在しているマニホルドに対して後から取り付けることも可能である。ここで、長期にわたるサービスの後で、挿入、位置合わせ、洗浄および結果としての交換を非常に容易に行うことができるようになっている。
【0031】
溶融物再流通部材453は、再流通部材352の下流側に追加的に設けてもよい。また、チャンネル内に配置された部材、例えば筒体の周りで溶融物が流れるような「環状流」が、抑止される。溶融物が分岐しないので、溶融物再流通部材453を用いた溶融流体に流れラインが形成されることはない。
【0032】
部材453のような、ここで開示された溶融物再流通部材は、ガラス充填または他の研磨溶融物が使用された場合において耐摩耗性を有するような、炭化物やステンレス鋼等の様々な材料から形成することができる。他の適用においては、溶融物再流通部材453のような再流通部材は、銅または銅合金のような高熱伝導性の材料から形成される。とりわけ、図4に示すように溶融物再流通部材453がマニホルドヒータ428の近傍に配置されたときには、ノズルヘッドへの熱伝導を促進することができる。
【0033】
本発明の他の実施の形態による一部分が図5に示す射出成型装置510の内部に示されている。射出成形装置510の一部分のみが図示されているが、装置510は概して図2の装置210と類似するものであることが理解されよう。マニホルド512が設けられるような射出成形装置510において、マニホルドプラグ572が穴574内に受け入れられている。プラグ572により、溶融物再流通部材552は単一のマニホルド512の溶融チャンネル514内に、より容易に挿入されることとなる。プラグ572は、流れ軸578に沿って延びる溶融チャンネル576を有している。溶融物再流通部材552は、プラグ572の穴580内に受け入れられるようになっている。溶融物再流通部材552は、図3および図3A乃至3Cに示される上述の溶融物再流通部材352、352a、352bまたは352cと機能および構成が類似または均等となっている。
【0034】
本発明の他の実施の形態において、図5Aに示すように、溶融物再流通部材552aがマニホルドプラグ572aの一部分として形成される。この配置において、螺旋状の溶融通路558は、マニホルドプラグ572aに切り込まれており、またはマニホルドプラグ572aと一体不可分の部分として形成されている。ダウエルピン111またはボルト等の他の固定部材を使用することにより、溶融物再流通部材552aは溶融チャンネル514に適合するようになっている。
【0035】
図6は、1レベルのマニホルド612を有する射出成形装置610の他の実施の形態を示す。マニホルド612は、少なくとも2つの枝部603a、603bを有するマニホルドチャンネル614を含んでいるが、溶融物再流通部材652が役立つような不均衡が生じるものとなっている。代わりに、マニホルド612は、図2のマニホルド212に関する上述のものに類似する2レベルのマニホルドであってもよい。
【0036】
図6の実施の形態において、溶融物再流通部材652は、最終形態のマニホルドを組み立てる前のマニホルドの内部に配置されている。マニホルド612は、第1のマニホルドプレート644および第2のマニホルドプレート646を有する分岐マニホルドである。凹部648、650が、溶融物再流通部材652を受け入れるために、各々第1のマニホルドプレート644および第2のマニホルドプレート646に設けられている。例えば米国特許第4,648,546号に記載されるように、マニホルドプレート644、646は、溶接、溶解、ろう付け、接着または他の溶解により一体化される。代わりに、プレート644、646は、当業者にとって明らかな他の方法により一体的に連結または位置合わせされてもよい。例えば、溶解効果を有するよう、射出成形装置610内において精密許容差で機械的にクランピングまたは位置合わせされてもよい。1つの溶融物再流通部材652のみが枝部603a内に図示されているが、溶融物再流通部材がマニホルドチャンネル614の枝部603a、603bの各々に設けられていてもよいことは当業者にとって明らかであろう。図6Aに示すように、マニホルド本体に凹部を形成することなく、溶融物再流通部材652aがマニホルド溶融チャンネル603a内に配置されている。このような溶融チャンネル603a内への完全な嵌め込みにより、溶融物再流通部材652aは、図3の溶融物再流通部材352に示されるような第1の穴部分355または第3の穴部分356を含むことがない。ダウエルピン611または他の固定部材に設置により、再流通部材を固定状態に保つことができる。
【0037】
溶融物再流通部材がはっきりと区別できる形で図2、4および6に示されているが、マニホルド溶融チャンネルに沿った様々な位置決めを行うことができることは当業者にとって明らかであろう。例えば、図7に示すような射出成形装置710のマニホルド712において、溶融物再流通部材752が溶融チャンネル714の枝部703内において曲がり部704の下流側に配置されている。この位置において、溶融物再流通部材752は、このような曲がり部により生じる溶融流体のせん断応力の不均衡を再構築することができる。同様に、図8の射出成形装置810に示すように、溶融物再流通部材853は曲がり部807の上流側となるよう各枝部805、806内の任意の場所に配置されている。
【0038】
図9は、単に溶融物再流通部材952がマニホルド912内にあるだけの、他の射出成形装置910を示している。同様に、図10は、単に溶融物再流通部材1053がマニホルド1012内にあるだけの射出成形装置1010を示している。図9に示す溶融物再流通部材952や図10に示す溶融物再流通部材1053のような異なる溶融物再流通部材が2レベルマニホルド内で異なる役割を果たすので、一つのもののみが特定のマニホルド形状で役立つことが当業者にとって理解されよう。溶融物再流通部材752、853、952および1053は詳細について述べられていない。これらの溶融物再流通部材は、図7乃至10に示す状態での使用が適切に開示されているからである。
【0039】
本発明による多くの特徴および利点は、詳細にわたる明細書の記載により明らかであり、添付の特許請求の範囲により、本発明の真の精神および範囲内にあるような発明の上述の全ての特徴および利点がカバーされる。更に、本発明を図面および上述の記載のような細かな構成および動作に制限することなく、様々な修正および変形が当業者にとって容易に想到できるであろう。このことにより、全ての適切な修正および均等物が、本発明の範囲内にあるよう用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】射出成形装置における従来の複数チャンネルのマニホルドの部分側断面図である。
【図1A】図1のA−Aライン矢視によるせん断応力の性能の断面図である。
【図1B】図1のB−Bライン矢視によるせん断応力の性能の断面図である。
【図1C】図1のC−Cライン矢視によるせん断応力の性能の断面図である。
【図2】本発明による射出成形装置の実施の形態における側断面図である。
【図3】図2の一部分の拡大図である。
【図3A】図3に示される図2の一部分の他の拡大図である。
【図3B】図3に示される図2の一部分の更に他の拡大図である。
【図3C】図3に示される図2の一部分の更に他の拡大図である。
【図4】図2の一部分の拡大図である。
【図5】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の一部分の拡大図である。
【図5A】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の一部分の拡大図である。
【図6】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の側断面図である。
【図6A】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の一部分の側断面図である。
【図7】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の側断面図である。
【図8】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の側断面図である。
【図9】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の一部分の側断面図である。
【図10】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の側断面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して溶融物再流通部材、および射出成形ホットランナ装置における溶融物の均質性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の射出成形装置においては、溶融物は射出成形機械から搬送され、概して円形の断面を有する複数のマニホルドチャンネルを有するホットランナマニホルドを通過するよう流れる。マニホルドは、入口および複数のホットランナノズルに連通する複数の出口を有しており、このマニホルドは、溶融物を一定かつ流動性を有する温度に維持するよう熱せられるようになっている。ホットランナマニホルドを使用することにより製造された複数の成形品に、様々な変化が影響を与える。一のこのような変化は、せん断応力が引き起こされるような流れの不均一性である。この流れの不均一性は、溶融チャンネルに沿って、およびマニホルドの出口において、観察または測定することができる。この流れの不均一性は不可避なものであり、当該不均一性は、マニホルドの各溶融チャンネルに沿った溶融物の温度、粘度および速度に関する変化しやすい非対称的な断面分布(または性能)により特徴づけられる。このため、マニホルドから排出された溶融物の温度、粘度および速度に関する断面分布または性能は、各ノズルの入口で変化する。このことは、多くの適用においてなぜ成形品が重量、密度、サイズ、外観等という観点においてキャビティによって異なるのか、またバッチによって異なるのかを明らかにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
溶融物が概して円形のチャンネルを流れることにより、チャンネルの中央における溶融物はチャンネルの両側に沿った溶融物よりも速度が大きくなる。チャンネルの両側に沿った溶融物は、中央における溶融物よりもゆっくりと流れるために、このチャンネルの両側に沿った溶融物は、速度の大きな中央の溶融物よりも長い間マニホルドからの熱に曝されることとなる。このことにより、チャンネルの中央における溶融物とチャンネルの両側に沿った溶融物との間で温度の不均一性が発生する。同時に、チャンネルの両側に接触する溶融物は更に熱せられ、チャンネルの側壁と反対の方向に移動する溶融物により発生する衝突により圧力(たとえば、せん断応力)が加えられる。温度およびせん断応力が大きいことにより、溶融物の粘度が変化する。
【0004】
図1は、複数チャンネル射出成形装置における従来の2レベルのホットランナマニホルド112の断面を示す。溶融物はチャンネル102に沿ってマニホルドに入る。溶融物はマニホルドヒータ128により成形可能な温度に維持される。溶融物は分岐し、反対側にある同一の2つの枝部103に入り、約90°の第1の曲がり部104を流れる。溶融物は再び分岐し、反対側にある同一の2つの枝部105、106に流れ、各枝部において約90°の第2の曲がり部107で流れが曲がり、そして各々出口108、109を介してマニホルドから排出される。出口108、109は2つのホットランナノズル(図示せず)に流体連通しており、単一または2つの成形キャビティシステム(図示せず)に溶融物を搬送するようになっている。
【0005】
チャンネル102の壁部に沿って発生するせん断応力について、ラインA−Aに沿ったせん断応力性能の断面として図1Aに概略的に示す。チャンネル102が枝部すなわち溶融チャンネル103に分岐したときに、溶融チャンネル102からのせん断応力は、溶融チャンネル103において側壁103aの方が側壁103bよりも大きくなる。溶融物が枝部103を通過するよう流れることにより、必然的に、せん断応力は側壁103bに沿って小さくなる。しかしながら、側壁103aに沿った衝突により発生するせん断応力は、側壁103aに沿ったチャンネル102からのせん断応力の履歴に追加され、チャンネル103内における左右のまたは非対称のせん断応力の不均衡が発生することとなる。さらに、せん断応力の不均衡は、溶融物が曲がり部104を移動して更に溶融チャンネル103に沿って流れるときに発生する。チャンネル103が枝部すなわち溶融チャンネル105、106で分岐したときに、これらの溶融チャンネルに沿って出口108、109に向かうような溶融物のせん断応力、温度および速度に係る性能は、より不均一に流通され、より不均一なバランスとなる。側壁105aと側壁105bとの間のせん断応力の差異について、ラインB−Bに沿ったせん断応力性能の断面として図1Bに概略的に示す。側壁106aと側壁106bとの間のせん断応力の差異について、ラインC−Cに沿ったせん断応力性能の断面として図1Cに概略的に示す。このように、マニホルド出口108、109において、図1B、図1Cの断面に係る各々のせん断応力は、明確な左右の差異、およびマニホルド溶融チャンネルの中心軸115に関して不均一なせん断応力、温度および粘度の断面流通を示している。
【0006】
さらに、図1B、図1Cの断面に係るせん断応力は、マニホルドチャンネル105、106間のせん断応力が大きく異なることを示している。せん断応力の性能はまた温度、速度および粘度の性能の目安にもなることにより、出口108を介して枝部105から排出される溶融物は、当該溶融物の外側および中間部分において、出口109を介して枝部106から排出される溶融物よりも非常に高い温度となっている。このため、枝部105における溶融物からの製品を成形するのに適した温度および圧力は、枝部106における溶融物からの製品を成形するのに適した温度および圧力とは異なることとなる。複数チャンネルの射出成形装置における特定のチャンネルの相異なる温度および圧力について調整または局所的な修正を行うのが非常に困難であるので、せん断応力の性能の変化により一の成形キャビティと他の成形キャビティとの間で、および成形品の一のバッチと他のバッチとの間で、成形品が不均一となる。
【0007】
更に、左右(または不均一性あるいは非対称性)のせん断圧力および温度に係る断面性能により、単一の成形品における一方の側面と他の側面との間で異なる流れの特徴が発生し、製造されるべき製品の品質が悪化する。
【0008】
マニホルド出口において製造状況を改善するようなより均質であり同一または類似の性能を得るために、マニホルド内を流れ様々なノズルに向かう溶融物の温度、粘度または速度の非対称的な性能について減少、解消、再流通または回転の試みが行われてきた。
【0009】
関連するものとして、欧州特許公開公報第0293756号、米国特許第5,421,715号および米国特許第6,572,361号が参照される。これらの公報は、いわゆるマニホルド溶融物混合器を示している。また、米国特許第5,683,731号はいわゆるマニホルド溶融再流通器を示しており、米国特許第6,077,470号はいわゆる溶融フリッパーすなわち溶融回転装置を示している。更に、米国特許出願公開公報第2004/0130062号が参照され、この公報は、他の溶融物混合装置および方法を示している。これらの公報の内容は、それぞれ本願の明細書に参照されることにより組み込まれるようになっている。
【0010】
ホットランナシステムを通過するよう流れる溶融物であって、システムを通過して流れる溶融物の様々な段階における温度、粘度、圧力およびせん断応力の断面性能が改善された溶融物が得られるような溶融物再流通部材および方法を提供することが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、射出マニホルドの複数の出口の各々においてより均一なせん断応力、温度、粘度および速度の断面性能を有する溶融物が得られるような射出成形装置および射出成形方法を開示している。
【0012】
本発明における一の実施の形態によれば、溶融物再流通部材が溶融チャンネルに沿った射出マニホルドの内側の特定の位置に配置されている。溶融物再流通部材は、入口において入口テーパ部分を有する遮るもののない溶融穴を有している。この入口テーパ部分は、溶融物の圧力を増加させ、圧力増加、あるいは、射出成形のトレードにおいて圧力低下(pressure drop)として知られているものを発生させている。溶融物再流通部材は、更に溶融穴の周囲にある螺旋状の溶融通路を有している。流入し、マニホルド溶融チャンネルに沿って流れ、不均一なせん断圧力性能が蓄積された溶融物は、まず、圧力が向上し、このことにより、溶融物再流通部材における中央の溶融穴を高速で溶融物が流れるようになる。次に、溶融流体の中央部分が溶融穴に沿って流れ続け、溶融流体の外側部分が螺旋状の溶融通路に沿って流れる。最初は、外側部分は中央部分よりもより非均質なせん断応力性能を有している。螺旋状の溶融通路は、溶融流体の外側部分の流れ方向を変え、せん断応力の再構築を行い、溶融流体の外側部分について溶融流体の中央部分に隣接するような溶融流体との混合を行う。溶融物再流通部材の出口において、溶融物のせん断応力の断面性能は、入口よりもより均一、あるいは対称的なものとなる。
【0013】
本発明の他の実施の形態においては、溶融物再流通部材は、いくつかの螺旋状の溶融通路を有し、これらの溶融通路により溶融流体の外側部分について追加的な再構築および混合が行われ、更に溶融物再流通部材の出口におけるせん断応力の断面性能を向上させることができる。
【0014】
溶融穴の内部でブロックや破片、機械的部材を使用することなく溶融物再流通部材に対して溶融物を直接的に送るようにすることにより、本発明による溶融物再流通部材は、例えば流れラインの発生を減少させる非侵入部材として機能する。
【0015】
本発明の一の態様によれば、複数チャンネルの射出成形装置内にある複数のマニホルドチャンネル出口の各々から排出される溶融物のせん断応力の断面性能をより均一にするようになっている。
【0016】
本発明の他の態様によれば、射出成形装置のマニホルドチャンネルの特定の出口から排出されるときに、せん断応力の断面性能がより均一にされた溶融物を得るようになっている。各々のケースにおいて、流入する溶融流体の機械的な分離を必要とすることのないような、遮るもののない溶融物再流通部材が用いられる。
【0017】
本発明の一の実施の形態によれば、圧力下で成形可能な材料の溶融流体を受けるための入口および複数の出口を含むマニホルドチャンネルを有するマニホルドと、入口およびマニホルドチャンネルに連通する出口を有する溶融物再流通部材と、マニホルドチャンネルの出口から溶融流体を受けるためのノズルチャンネルを各々が有する複数のノズルとを備えた射出成形装置が提供される。
【0018】
溶融物再流通部材は、螺旋状の溶融通路を有する溶融穴表面が更に設けられるような、遮るもののない溶融穴を備えている。流入する溶融流体は最初に圧力が増加し、あるいは圧力の低下として参照され、そして溶融物再流通部材の溶融穴および螺旋状の溶融通路を通って流れる。
【0019】
本発明の他の実施の形態によれば、溶融再流通方法は溶融物再流通部材を有しており、a)入口においてマニホルド溶融チャンネルの直径を減少させることにより侵入性のない局所における溶融物の圧力を増加させ、b)圧力が加えられた溶融物の中央部分を直線路に流れ続けさせ、溶融流体の外側部分を螺旋状の溶融通路に流れさせることにより、溶融流体における侵入性のない溶融物の分離および向きの変更を行う。溶融物が溶融物再流通部材を流れるときに、溶融流体の中央部分と当該溶融流体の外側部分との間で、ある程度の混合が発生する。混合の程度は、圧力増加のレベルすなわち量、溶融物再流通部材の溶融穴および螺旋状の溶融通路の長さ、螺旋通路のピッチまたは密集度、溶融物の粘度および温度のような、様々なファクターおよび変数に基づいている。溶融物再流通部材が複数の螺旋状の溶融通路を有するときに、溶融物においてより大きな混合およびより良好な均一化が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による実施の形態について、添付図面を参照してより詳細に記載する。添付図面において、類似する参照符号は、類似の構成を示している。
【0021】
図2において、本発明の実施の形態による射出成形装置は概して参照符号210で示される。射出成形装置210は、マニホルドチャンネル214を有する2レベルのマニホルド212を備えている。図示のように、マニホルドチャンネル214は、入口溶融チャンネル202に連通している。この入口溶融チャンネル202は、マニホルド入口218の下流側において、少なくとも2つの溶融枝部203に分岐している。チャンネル202からの溶融物は、各枝部203内にある溶融物再流通部材252に入ることとなる。溶融物再流通部材252の詳細については、図3の溶融物再流通部材352を参照して、後に述べる。各枝部203は、角204において曲がっており、枝部205、206に再び分岐している。マニホルド212は、成形ブロック背部プレート222とキャビティ成形プレート224との間に配置されている。マニホルド212は、位置決めリング226により、キャビティ成形プレート224に対して位置決めされている。スプルー軸受筒216はマニホルド入口218に連結されている。スプルー軸受筒216は、機械ノズル(図示せず)から溶融物を受け入れるようになっており、マニホルド入口218を介して溶融物をマニホルド212のチャンネル202に搬送するようになっている。溶融物は、枝部203、205および206を通って移動する。溶融物は、それぞれ枝部205、206の出口208、209を通ってマニホルド212から排出される前に、溶融物再流通部材253を再び通過する。溶融物再流通部材253の詳細については、図4の溶融物再流通部材453を参照して、後に述べる。マニホルド212はマニホルドヒータ228により熱せされる。
【0022】
ノズル230は、成形プレート221の開口232に受け入れられるようになっている。ノズル230はヒータ236により熱せられる。各ノズル230は、マニホルドチャンネル214の各々の出口から溶融物を受け入れるためのノズルチャンネル234を有しており、成形ゲート238を介して溶融物を各成形キャビティ240に搬送するようになっている。成形キャビティ240は、キャビティ成形プレート224と成形コア225との間に設けられている。冷却チャンネル242は、成形キャビティ240を冷却するために設けられている。
【0023】
本発明の実施の形態によれば、マニホルド212は、複数キャビティの射出成形装置における2レベルのマニホルドとなっている。しかしながら、射出成形装置は、チャンネル内の溶融物の流れのせん断応力の性質が不均衡であれば、様々な数のキャビティにつながるような様々な数のチャンネルを有するマニホルドを備えていてもよい。
【0024】
本発明の実施の形態による溶融物再流通部材252は、図3において溶融物再流通部材352として詳細が示されている。本発明の一の実施の形態において、溶融物再流通部材352は、溶融チャンネル303を内部に有するマニホルド312の内部に配設されている。溶融物再流通部材352は、中央軸315に沿ってマニホルド溶融チャンネル303と同軸となっている。溶融物再流通部材352は、本体部分354と中央溶融穴363とを有している。溶融穴363は、入口362と出口364とを有している。溶融穴363は、第1の穴部分355、入口テーパ部分357、第2の穴部分366、出口テーパ部分361および第3の穴部分356を有している。また、溶融物再流通部材352は、第2の穴部分366の表面360に沿って本体部分354の内部に形成された螺旋状の溶融通路358を有している。また、螺旋状の溶融通路358は、第2の穴部分366の表面360から測定される深さ359を有している。螺旋状の溶融通路の角度、ピッチまたは螺旋の曲がりの密集度、および距離359は、溶融物再流通部材352が用いられる用途によって変化する。溶融物はマニホルド溶融チャンネル303を通過して入口362に搬送される。このマニホルド溶融チャンネル303には、部材352の位置に基づいて、非対称分布または均一ではないせん断応力の断面性能が形成されている。入口362から、第1の直径368を有する第1の穴部分355を通って溶融物が移動する。第1の直径368は、概してマニホルド溶融チャンネル303の直径と同じ大きさとなっている。第1の穴部分355は、概してチャンネル303と同一平面上に位置決めされている。そして、溶融物は入口テーパ部分357を通って移動する。入口テーパ部分357は徐々にその径が小さくなっている。
【0025】
溶融物が入口テーパ部分357に流れることにより、溶融物の圧力が増加し、このことにより溶融物は第2の穴部分366に対して増加した圧力で送られることとなる。高圧力により、溶融物は溶融物再流通部材352を通過する速度が大きくなる。溶融物の中央部分は第2の穴部分366で遮られることなく流れ、一方、断面における不均一なせん断応力の性能を有する溶融物の外側部分は、螺旋状の溶融通路358に送られるようになっている。この螺旋状の溶融通路358は、外側のせん断応力の性能を再構築し、溶融物をより均一に再流通させる。また、外側の溶融部分は、遮られることなく溶融物再流通部材352の第2の穴部分366を通過するよう流れる溶融流体の中央部分と、部分的に混合させられる。用途、射出成形加工条件および溶融物の種類に応じて、溶融物再流通部材352は単一の螺旋状の溶融通路358、あるいは類似または異なる形状の複数の螺旋状の溶融通路358を有していてもよい。内部で溶融物が分岐され干渉物の周りで流れることを必要とするような、機械的な干渉物またはビュレットが設けられた、公知の他の溶融物のミキサーまたはフリッパーとは異なり、再流通部材352は、溶融物を遮られることなく流させ、このことにより色変化の用途において追加的な利益が得られる。遮られることのない流れにより、溶融物の堆積、および溶融物が捕らえられ流れなくなるようないわゆる「デッドスポット」と呼ばれる態様を抑止することができる。
【0026】
溶融物は、第1の直径368よりも小さな第2の直径370を有する第2の穴部分366に流れる。螺旋状の溶融通路358の端部において、溶融物は出口テーパ部分361に入る。この出口テーパ部分361は、直径が徐々に大きくなるようになっている。そして、溶融物は第3の穴部分356に流れる。この第3の穴部分356は、第1の穴部分355の直径368およびマニホルド溶融枝部303の直径と略同一の大きさである直径371を有している。また、第3の穴部分356は、出口364において枝部303とほぼ同一平面上にある。
【0027】
図3Aは、他の溶融物再流通部材352aを示している。溶融物再流通部材352aは、外側テーパ部分361を有していない点を除いて、溶融物再流通部材352に類似している。代わりに、螺旋状の溶融通路358aおよび第2の穴部分366aが直接出口364aで終端している。図3Bは、更に他の溶融物再流通部材352bを示している。溶融物再流通部材352bは、出口テーパ部分361を有していないという点で、溶融物再流通部材352aに類似している。また、第2の穴部分366bの直径370bは下流側に向くに従って徐々に大きくなっており、出口364bにおける第2の穴部分366bの直径は実質的に出口364bにおける溶融チャンネル303の直径と同じ大きさとなっている。螺旋状の溶融通路358bの深さ359bが、第2の穴部分366bの長手方向に沿って一定であることにより、螺旋状の溶融通路358bの曲がり部分が下流側に向くに従って徐々に大きくなっている。図3Cは、更に他の溶融物再流通部材352cを示している。溶融物再流通部材352cは、外側テーパ部分361を有しておらず、部材352bの説明を行う際に記載したように第2の穴部分366cの直径370cが下流側に向くに従って徐々に大きくなる点で、溶融物再流通部材352bに類似している。しかしながら、螺旋状の溶融通路358cの深さ359cは、第2の穴部分366cの長手方向に沿って一定ではない。代わりに、螺旋状の溶融通路358cの深さ359cは、下流側に向くに従って徐々に小さくなっており、出口364cにおける螺旋状の溶融通路358cの直径は実質的に出口364cにおける溶融チャンネル303の直径と同じ大きさとなっている。
【0028】
溶融物再流通部材352、またはここで開示された他の溶融物再流通部材は、2以上のブロックから形成されていてもよい。これらのブロックは、一緒に配置されたときに、円筒形のまたは四角形の入口またはプラグを形成するようになっている。例えば、2つのブロックから形成される溶融物再流通部材352は、各ブロックに機械加工された溶融穴363の一部分を有している。2つのブロックは互いに隣り合うよう位置合わせされ、溶融物再流通部材352の全体形状が得られる。ブロックは、ろう付け、溶接、接着、あるいは溶解により一体化され、あるいは、クランピング等により機械的に一体に保持される。代わりに、2以上のブロックが、詳細を以下に述べるように、マニホルドまたはマニホルドプラグに形成された凹部または穴の中に受け入れられるようになっていてもよい。ブロックの位置決めおよびマニホルドの熱による熱膨張が、2つのブロックを一体化して保持するために使用される。他の実施の形態においては、溶融物再流通部材352は、溶融穴363がブロック内に形成されるよう、成形されるようになっていてもよい。他の実施の形態において、複数の穴あけ工程を用いて一つのブロック内に溶融物再流通部材352の溶融穴363を形成することができることが、当業者にとって理解できよう。更に他の実施の形態において、溶融物再流通部材352の溶融穴363は、図2のマニホルドチャンネル214のようなマニホルドチャンネルの一部分として、一体的に形成されていてもよい。
【0029】
本発明の他の実施の形態によれば、図4に示すような溶融物再流通部材453が、図2のマニホルド212に類似するような2レベルのマニホルド412と、ノズル430との間に配置されている。両方の再流通部材453は同じものであり、各々、マニホルド412の枝部405、406に連通している。複数のマニホルド出口を有するマニホルド412には他の溶融物再流通部材453が設けられることが、当業者にとって理解できよう。溶融物再流通部材453は、上述のような溶融物再流通部材352と完全に同じ動作を行う。また、溶融物再流通部材453の内部構造は、溶融物再流通部材352に関する上述の記載のものと類似するようになっている。同様に、溶融物再流通部材453、またはここで開示された他の溶融物再流通部材は、図3A乃至図3Cの溶融物再流通部材352a、352bおよび352cのいずれかに関する上述の記載のものに類似するような内部構造を有している。
【0030】
しかしながら、再流通部材453の外部構造は、とりわけ、マニホルド412の出口408および408に容易に挿入することができるものとなっている。溶融物再流通部材453は、押圧嵌め合い、収縮させての嵌め合い、ろう付けまたはネジによってマニホルド412に適合可能となっている。この実施の形態による溶融物再流通部材453は、既に存在しているマニホルドに対して後から取り付けることも可能である。ここで、長期にわたるサービスの後で、挿入、位置合わせ、洗浄および結果としての交換を非常に容易に行うことができるようになっている。
【0031】
溶融物再流通部材453は、再流通部材352の下流側に追加的に設けてもよい。また、チャンネル内に配置された部材、例えば筒体の周りで溶融物が流れるような「環状流」が、抑止される。溶融物が分岐しないので、溶融物再流通部材453を用いた溶融流体に流れラインが形成されることはない。
【0032】
部材453のような、ここで開示された溶融物再流通部材は、ガラス充填または他の研磨溶融物が使用された場合において耐摩耗性を有するような、炭化物やステンレス鋼等の様々な材料から形成することができる。他の適用においては、溶融物再流通部材453のような再流通部材は、銅または銅合金のような高熱伝導性の材料から形成される。とりわけ、図4に示すように溶融物再流通部材453がマニホルドヒータ428の近傍に配置されたときには、ノズルヘッドへの熱伝導を促進することができる。
【0033】
本発明の他の実施の形態による一部分が図5に示す射出成型装置510の内部に示されている。射出成形装置510の一部分のみが図示されているが、装置510は概して図2の装置210と類似するものであることが理解されよう。マニホルド512が設けられるような射出成形装置510において、マニホルドプラグ572が穴574内に受け入れられている。プラグ572により、溶融物再流通部材552は単一のマニホルド512の溶融チャンネル514内に、より容易に挿入されることとなる。プラグ572は、流れ軸578に沿って延びる溶融チャンネル576を有している。溶融物再流通部材552は、プラグ572の穴580内に受け入れられるようになっている。溶融物再流通部材552は、図3および図3A乃至3Cに示される上述の溶融物再流通部材352、352a、352bまたは352cと機能および構成が類似または均等となっている。
【0034】
本発明の他の実施の形態において、図5Aに示すように、溶融物再流通部材552aがマニホルドプラグ572aの一部分として形成される。この配置において、螺旋状の溶融通路558は、マニホルドプラグ572aに切り込まれており、またはマニホルドプラグ572aと一体不可分の部分として形成されている。ダウエルピン111またはボルト等の他の固定部材を使用することにより、溶融物再流通部材552aは溶融チャンネル514に適合するようになっている。
【0035】
図6は、1レベルのマニホルド612を有する射出成形装置610の他の実施の形態を示す。マニホルド612は、少なくとも2つの枝部603a、603bを有するマニホルドチャンネル614を含んでいるが、溶融物再流通部材652が役立つような不均衡が生じるものとなっている。代わりに、マニホルド612は、図2のマニホルド212に関する上述のものに類似する2レベルのマニホルドであってもよい。
【0036】
図6の実施の形態において、溶融物再流通部材652は、最終形態のマニホルドを組み立てる前のマニホルドの内部に配置されている。マニホルド612は、第1のマニホルドプレート644および第2のマニホルドプレート646を有する分岐マニホルドである。凹部648、650が、溶融物再流通部材652を受け入れるために、各々第1のマニホルドプレート644および第2のマニホルドプレート646に設けられている。例えば米国特許第4,648,546号に記載されるように、マニホルドプレート644、646は、溶接、溶解、ろう付け、接着または他の溶解により一体化される。代わりに、プレート644、646は、当業者にとって明らかな他の方法により一体的に連結または位置合わせされてもよい。例えば、溶解効果を有するよう、射出成形装置610内において精密許容差で機械的にクランピングまたは位置合わせされてもよい。1つの溶融物再流通部材652のみが枝部603a内に図示されているが、溶融物再流通部材がマニホルドチャンネル614の枝部603a、603bの各々に設けられていてもよいことは当業者にとって明らかであろう。図6Aに示すように、マニホルド本体に凹部を形成することなく、溶融物再流通部材652aがマニホルド溶融チャンネル603a内に配置されている。このような溶融チャンネル603a内への完全な嵌め込みにより、溶融物再流通部材652aは、図3の溶融物再流通部材352に示されるような第1の穴部分355または第3の穴部分356を含むことがない。ダウエルピン611または他の固定部材に設置により、再流通部材を固定状態に保つことができる。
【0037】
溶融物再流通部材がはっきりと区別できる形で図2、4および6に示されているが、マニホルド溶融チャンネルに沿った様々な位置決めを行うことができることは当業者にとって明らかであろう。例えば、図7に示すような射出成形装置710のマニホルド712において、溶融物再流通部材752が溶融チャンネル714の枝部703内において曲がり部704の下流側に配置されている。この位置において、溶融物再流通部材752は、このような曲がり部により生じる溶融流体のせん断応力の不均衡を再構築することができる。同様に、図8の射出成形装置810に示すように、溶融物再流通部材853は曲がり部807の上流側となるよう各枝部805、806内の任意の場所に配置されている。
【0038】
図9は、単に溶融物再流通部材952がマニホルド912内にあるだけの、他の射出成形装置910を示している。同様に、図10は、単に溶融物再流通部材1053がマニホルド1012内にあるだけの射出成形装置1010を示している。図9に示す溶融物再流通部材952や図10に示す溶融物再流通部材1053のような異なる溶融物再流通部材が2レベルマニホルド内で異なる役割を果たすので、一つのもののみが特定のマニホルド形状で役立つことが当業者にとって理解されよう。溶融物再流通部材752、853、952および1053は詳細について述べられていない。これらの溶融物再流通部材は、図7乃至10に示す状態での使用が適切に開示されているからである。
【0039】
本発明による多くの特徴および利点は、詳細にわたる明細書の記載により明らかであり、添付の特許請求の範囲により、本発明の真の精神および範囲内にあるような発明の上述の全ての特徴および利点がカバーされる。更に、本発明を図面および上述の記載のような細かな構成および動作に制限することなく、様々な修正および変形が当業者にとって容易に想到できるであろう。このことにより、全ての適切な修正および均等物が、本発明の範囲内にあるよう用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】射出成形装置における従来の複数チャンネルのマニホルドの部分側断面図である。
【図1A】図1のA−Aライン矢視によるせん断応力の性能の断面図である。
【図1B】図1のB−Bライン矢視によるせん断応力の性能の断面図である。
【図1C】図1のC−Cライン矢視によるせん断応力の性能の断面図である。
【図2】本発明による射出成形装置の実施の形態における側断面図である。
【図3】図2の一部分の拡大図である。
【図3A】図3に示される図2の一部分の他の拡大図である。
【図3B】図3に示される図2の一部分の更に他の拡大図である。
【図3C】図3に示される図2の一部分の更に他の拡大図である。
【図4】図2の一部分の拡大図である。
【図5】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の一部分の拡大図である。
【図5A】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の一部分の拡大図である。
【図6】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の側断面図である。
【図6A】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の一部分の側断面図である。
【図7】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の側断面図である。
【図8】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の側断面図である。
【図9】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の一部分の側断面図である。
【図10】本発明による射出成形装置の他の実施の形態の側断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力下で成形可能な材料からなる溶融流体を受けるマニホルド入口、複数のマニホルドチャンネルおよび複数の溶融チャンネル出口を有する射出マニホルドと、
前記複数のマニホルドチャンネルに連通する複数の溶融物再流通部材であって、各溶融物再流通部材は入口および出口を有し、遮るもののない溶融穴の通路がこの入口と出口との間に設けられるとともに螺旋状の溶融通路が溶融穴の通路に形成されているような複数の溶融物再流通部材と、
前記マニホルドチャンネルの前記出口から送られる溶融流体を受けるノズルチャンネルを有するような複数のノズルと、
を備えたことを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
前記溶融物再流通部材は、前記入口と前記螺旋状の溶融通路との間に配置された入口テーパ部分を有し、この入口テーパ部分は直径が徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記溶融流体の中央部分は前記遮るもののない溶融穴を通過するよう流れ、当該溶融流体の外側部分は前記螺旋状の溶融通路を通過するよう流れることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項4】
前記溶融物再流通部材内に存在する前記溶融流体は、温度、粘度、せん断応力、速度および圧力からなるグループから選択された少なくとも1つのパラメータについて、前記溶融物再流通部材に入ろうとする溶融流体よりも、より均一な断面性能を有することを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項5】
前記溶融物再流通部材は、前記螺旋状の溶融通路と当該溶融物再流通部材の前記出口との間に配置された出口テーパ部分を有し、この出口テーパ部分は直径が徐々に大きくなっていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項6】
前記溶融穴は、前記複数のマニホルドチャンネルのチャンネル直径と略同一の大きさである第1の穴直径を有する第1の穴部分と、前記第1の穴直径よりも小さな第2の穴直径の入口を有する第2の穴部分とを更に有し、前記第1の穴部分から前記第2の穴部分まで延びる入口テーパ部分が更に設けられることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項7】
前記溶融穴の表面から測定された前記螺旋状の溶融通路の深さは、前記溶融穴に沿って一定であることを特徴とする請求項7記載の射出成形装置。
【請求項8】
前記溶融穴の表面から測定された前記螺旋状の溶融通路の深さは、前記出口に向かって徐々に小さくなることを特徴とする請求項7記載の射出成形装置。
【請求項9】
前記溶融穴から測定された前記螺旋状の溶融通路の深さは、前記出口に向かって徐々に小さくなることを特徴とする請求項8記載の射出成形装置。
【請求項10】
前記マニホルドは、第1のマニホルドプレートと、第2のマニホルドプレートとを有し、前記溶融物再流通部材は前記第1および第2のマニホルドプレートの間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項11】
前記溶融物再流通部材は、前記第1および第2のマニホルドプレートの各々に形成された凹部の中に配置されていることを特徴とする請求項10記載の射出成形装置。
【請求項12】
前記マニホルドは、前記溶融物再流通部材を受け入れるための穴を含むプラグを有することを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項13】
前記マニホルドチャンネルは第1の曲がり部分を有し、前記溶融物再流通部材は前記第1の曲がり部分の上流側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項14】
前記マニホルドチャンネルは第1の曲がり部分を有し、前記溶融物再流通部材は前記第1の曲がり部分の下流側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項15】
前記マニホルドチャンネルは第1の曲がり部分および第2の曲がり部分を有し、前記溶融物再流通部材は前記第1の曲がり部分の下流側であって前記第2の曲がり部分の上流側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項16】
前記マニホルドチャンネルは第1の曲がり部分および第2の曲がり部分を有し、前記溶融物再流通部材は前記第2の曲がり部分の下流側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項17】
前記マニホルドチャンネルは2つの枝部に分岐されており、前記溶融再流通部分は前記分岐部分よりも下流側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項18】
前記溶融物再流通部材は、前記マニホルド出口の直近の上流側で前記マニホルドチャンネルに連通していることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項19】
前記溶融物再流通部材は、前記ノズルの直近の上流側で前記マニホルドチャンネルに連通していることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項20】
前記マニホルドチャンネルには溶融物再流通部材が複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項21】
前記溶融物再流通部材は、固定部材により前記マニホルドチャンネルの内部の位置に維持されることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項22】
マニホルドに設けられる溶融物再流通部材であって、
本体部分と、
前記本体部分を通過するよう延び当該本体部分の対向する表面に入口および出口をそれぞれ画成するような遮るもののない溶融穴であって、螺旋状の溶融通路および前記入口と前記螺旋状の溶融通路との間に設けられた入口テーパ部分を有するような溶融穴と、
を備え、
溶融流体の中央部分は前記遮るもののない溶融穴を通過するよう流れ、前記溶融流体の外側部分は前記螺旋状の溶融通路を流れるようになっていることを特徴とする溶融物再流通部材。
【請求項23】
前記溶融流体は、前記溶融物再流通部材の出口において、前記溶融物再流通部材の入口にある溶融流体と比較してより均一な温度および粘度を有することを特徴とする請求項22記載の溶融物再流通部材。
【請求項24】
射出成形装置のマニホルド内に溶融流体を再流通させる方法であって、
遮るもののない溶融穴を内部に有する溶融物再流通部材を準備する工程であって、この溶融穴は入口および出口を画成し、この溶融穴は螺旋状の溶融通路および前記入口と前記螺旋状の溶融通路の間にある入口テーパ部分を有するような溶融物再流通部材を準備する工程と、
前記溶融物再流通部材の前記入口テーパ部分、前記螺旋状の溶融通路および前記出口に対して前記溶融流体を通過させる工程であって、前記溶融流体は前記入口テーパ部分により圧力が加えられ、前記遮るもののない溶融穴および前記螺旋状の溶融通路を通過するよう流れる工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項25】
射出成形装置のマニホルド内に溶融流体を再流通させる方法であって、
入口テーパ部分、遮るもののない溶融穴および螺旋状の溶融通路を有する溶融物再流通部材を準備する工程と、
前記溶融流体が前記溶融物再流通部材の出口において、前記溶融物再流通部材の入口にある溶融流体と比較してより均一な性能を有するよう、前記溶融物再流通部材に対して前記溶融流体を通過させる工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項26】
射出成形装置のマニホルド内に溶融流体を再流通させる方法であって、
前記溶融流体の中央部分を軸に沿って遮られることなく流させる工程と、
前記溶融流体の外側部分を前記軸の周囲にある螺旋状の通路に沿って流させる工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項1】
圧力下で成形可能な材料からなる溶融流体を受けるマニホルド入口、複数のマニホルドチャンネルおよび複数の溶融チャンネル出口を有する射出マニホルドと、
前記複数のマニホルドチャンネルに連通する複数の溶融物再流通部材であって、各溶融物再流通部材は入口および出口を有し、遮るもののない溶融穴の通路がこの入口と出口との間に設けられるとともに螺旋状の溶融通路が溶融穴の通路に形成されているような複数の溶融物再流通部材と、
前記マニホルドチャンネルの前記出口から送られる溶融流体を受けるノズルチャンネルを有するような複数のノズルと、
を備えたことを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
前記溶融物再流通部材は、前記入口と前記螺旋状の溶融通路との間に配置された入口テーパ部分を有し、この入口テーパ部分は直径が徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記溶融流体の中央部分は前記遮るもののない溶融穴を通過するよう流れ、当該溶融流体の外側部分は前記螺旋状の溶融通路を通過するよう流れることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項4】
前記溶融物再流通部材内に存在する前記溶融流体は、温度、粘度、せん断応力、速度および圧力からなるグループから選択された少なくとも1つのパラメータについて、前記溶融物再流通部材に入ろうとする溶融流体よりも、より均一な断面性能を有することを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項5】
前記溶融物再流通部材は、前記螺旋状の溶融通路と当該溶融物再流通部材の前記出口との間に配置された出口テーパ部分を有し、この出口テーパ部分は直径が徐々に大きくなっていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項6】
前記溶融穴は、前記複数のマニホルドチャンネルのチャンネル直径と略同一の大きさである第1の穴直径を有する第1の穴部分と、前記第1の穴直径よりも小さな第2の穴直径の入口を有する第2の穴部分とを更に有し、前記第1の穴部分から前記第2の穴部分まで延びる入口テーパ部分が更に設けられることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項7】
前記溶融穴の表面から測定された前記螺旋状の溶融通路の深さは、前記溶融穴に沿って一定であることを特徴とする請求項7記載の射出成形装置。
【請求項8】
前記溶融穴の表面から測定された前記螺旋状の溶融通路の深さは、前記出口に向かって徐々に小さくなることを特徴とする請求項7記載の射出成形装置。
【請求項9】
前記溶融穴から測定された前記螺旋状の溶融通路の深さは、前記出口に向かって徐々に小さくなることを特徴とする請求項8記載の射出成形装置。
【請求項10】
前記マニホルドは、第1のマニホルドプレートと、第2のマニホルドプレートとを有し、前記溶融物再流通部材は前記第1および第2のマニホルドプレートの間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項11】
前記溶融物再流通部材は、前記第1および第2のマニホルドプレートの各々に形成された凹部の中に配置されていることを特徴とする請求項10記載の射出成形装置。
【請求項12】
前記マニホルドは、前記溶融物再流通部材を受け入れるための穴を含むプラグを有することを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項13】
前記マニホルドチャンネルは第1の曲がり部分を有し、前記溶融物再流通部材は前記第1の曲がり部分の上流側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項14】
前記マニホルドチャンネルは第1の曲がり部分を有し、前記溶融物再流通部材は前記第1の曲がり部分の下流側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項15】
前記マニホルドチャンネルは第1の曲がり部分および第2の曲がり部分を有し、前記溶融物再流通部材は前記第1の曲がり部分の下流側であって前記第2の曲がり部分の上流側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項16】
前記マニホルドチャンネルは第1の曲がり部分および第2の曲がり部分を有し、前記溶融物再流通部材は前記第2の曲がり部分の下流側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項17】
前記マニホルドチャンネルは2つの枝部に分岐されており、前記溶融再流通部分は前記分岐部分よりも下流側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項18】
前記溶融物再流通部材は、前記マニホルド出口の直近の上流側で前記マニホルドチャンネルに連通していることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項19】
前記溶融物再流通部材は、前記ノズルの直近の上流側で前記マニホルドチャンネルに連通していることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項20】
前記マニホルドチャンネルには溶融物再流通部材が複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項21】
前記溶融物再流通部材は、固定部材により前記マニホルドチャンネルの内部の位置に維持されることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項22】
マニホルドに設けられる溶融物再流通部材であって、
本体部分と、
前記本体部分を通過するよう延び当該本体部分の対向する表面に入口および出口をそれぞれ画成するような遮るもののない溶融穴であって、螺旋状の溶融通路および前記入口と前記螺旋状の溶融通路との間に設けられた入口テーパ部分を有するような溶融穴と、
を備え、
溶融流体の中央部分は前記遮るもののない溶融穴を通過するよう流れ、前記溶融流体の外側部分は前記螺旋状の溶融通路を流れるようになっていることを特徴とする溶融物再流通部材。
【請求項23】
前記溶融流体は、前記溶融物再流通部材の出口において、前記溶融物再流通部材の入口にある溶融流体と比較してより均一な温度および粘度を有することを特徴とする請求項22記載の溶融物再流通部材。
【請求項24】
射出成形装置のマニホルド内に溶融流体を再流通させる方法であって、
遮るもののない溶融穴を内部に有する溶融物再流通部材を準備する工程であって、この溶融穴は入口および出口を画成し、この溶融穴は螺旋状の溶融通路および前記入口と前記螺旋状の溶融通路の間にある入口テーパ部分を有するような溶融物再流通部材を準備する工程と、
前記溶融物再流通部材の前記入口テーパ部分、前記螺旋状の溶融通路および前記出口に対して前記溶融流体を通過させる工程であって、前記溶融流体は前記入口テーパ部分により圧力が加えられ、前記遮るもののない溶融穴および前記螺旋状の溶融通路を通過するよう流れる工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項25】
射出成形装置のマニホルド内に溶融流体を再流通させる方法であって、
入口テーパ部分、遮るもののない溶融穴および螺旋状の溶融通路を有する溶融物再流通部材を準備する工程と、
前記溶融流体が前記溶融物再流通部材の出口において、前記溶融物再流通部材の入口にある溶融流体と比較してより均一な性能を有するよう、前記溶融物再流通部材に対して前記溶融流体を通過させる工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項26】
射出成形装置のマニホルド内に溶融流体を再流通させる方法であって、
前記溶融流体の中央部分を軸に沿って遮られることなく流させる工程と、
前記溶融流体の外側部分を前記軸の周囲にある螺旋状の通路に沿って流させる工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【図1】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図6A】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図6A】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−106120(P2007−106120A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−272889(P2006−272889)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(591024878)モールド‐マスターズ、リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】MOLD−MASTERS,LIMITED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272889(P2006−272889)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(591024878)モールド‐マスターズ、リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】MOLD−MASTERS,LIMITED
【Fターム(参考)】
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