説明

導光板の製造方法及び導光板並びに導光板を備える虚像表示装置

【課題】良好な画像を表示可能とする虚像表示装置用の導光板の製造方法及び導光板並びに導光板を備える虚像表示装置を提供すること。
【解決手段】本実施形態の導光板20の製造方法では、樹脂部材成形工程において、第1成形部PP1と第2成形部PP2との双方を有する樹脂部材成形型MP1,MP2によって一括して一対の第1及び第2樹脂部材B1,B2が成形される。また、画像取出部形成工程において、当該第1及び第2樹脂部材B1,B2を貼り合せて1つの画像取出部23が形成される。この場合、画像取出部23を構成する第1樹脂部材B1と第2樹脂部材B2との屈折率差を極力抑制できる。従って、画像取出部23の内部での意図しない屈折による画像光の角度ずれが抑制されることで、良好な画像を表示可能とする導光板20が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイ等に用いられる導光板の製造方法及び導光板並びに導光板を備える虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイのように虚像の形成及び観察を可能にする虚像表示装置として、導光板によって表示素子からの映像光を観察者の瞳に導くタイプのものが種々提案されている。このような虚像表示装置用の導光板として、全反射を利用して映像光を導くとともに、導光板の出口側において導光板の主面に対して所定角度をなして平行に配置される多数の部分反射面にて映像光を反射させ導光板から取り出すことによって、映像光を観察者の網膜に到達させるものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上記のように多数の部分反射面によって映像光を取り出す構成において、映像光の一部が当該部分反射面を1回又は複数回通過した後に瞳に向けて反射される構成となっている。この場合、部分反射面を形成する部分に屈折率差があると、映像光が部分反射面を通過する前後で意図しない屈折によって進行方向が変化する角度ずれが生じ、画像が劣化する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−157520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景技術の問題に鑑みてなされたものであり、良好な画像を表示可能とする虚像表示装置用の導光板の製造方法及び導光板並びに導光板を備える虚像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る導光板の製造方法は、(a)導光部と、導光部に画像光を入射させる光入射部と、導光部によって導かれた画像光を外部へ取出す画像取出部を有する光射出部と、を備える導光板の製造方法であって、(b)画像取出部の一部を構成する第1樹脂部材を成形する第1成形部と、第1樹脂部材と対になり画像取出部の他の一部を構成する第2樹脂部材を成形する第2成形部との双方を有する樹脂部材成形型を準備する型準備工程と、(c)樹脂部材成形型の第1成形部と第2成形部との双方に樹脂材料を充填し、樹脂部材成形型から第1及び第2樹脂部材を一括して成形する樹脂部材成形工程と、(d)樹脂部材成形工程において一括して成形された第1樹脂部材と第2樹脂部材とを対として貼り合せることにより画像取出部を形成する画像取出部形成工程と、を備える。
【0007】
上記導光板の製造方法では、樹脂部材成形工程において、第1成形部と第2成形部との双方を有する樹脂部材成形型によって一括して一対の第1及び第2樹脂部材が成形され、画像取出部形成工程において、当該第1及び第2樹脂部材を貼り合せて1つの画像取出部が形成される。この場合、画像取出部を構成する第1樹脂部材と第2樹脂部材との屈折率差を極力抑制できる。従って、画像取出部の内部での意図しない屈折による画像光の角度ずれが抑制されることで、良好な画像を表示可能とする導光板が製造される。
【0008】
本発明の具体的な側面では、画像取出部形成工程において、第1樹脂部材と第2樹脂部材との間に画像取出部を構成する所定の配列方向に配列される複数の反射ユニットを形成するために、第1及び第2位樹脂部材の互いに貼り合わされる成形面の一方に反射膜を成膜する反射膜成膜工程を含む。この場合、光射出部の画像取出部において複数の反射ユニットで映像光を個別に反射させて導光板外に取り出すことができる。
【0009】
本発明の別の側面では、複数の反射ユニットが、反射膜によって入射光の少なくとも一部を透過させる複数の部分反射面を有し、複数の部分反射面のうちいずれかにおいて画像光の少なくとも一部を1回以上通過させる。この場合、画像取出部に入射する角度によって、画像光は、複数の部分反射面を1回以上通過することになるが、この通過に際して意図しない画像光の屈折を抑えて画像を良好な状態に保ち、画像光の各成分を適正な位置から観察者に対して射出させることができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、(a)第1樹脂部材と第2樹脂部材とが、複数の反射ユニットを構成するための互いに平行な傾斜面を含み互いに反転した一対の断面鋸歯状の面を有し、(b)画像取出部形成工程において、反射ユニットの長手方向を軸方向として、第2樹脂部材の断面鋸歯状の面を180°反転させて第1樹脂部材の断面鋸歯状の面に貼り合せる。ここで、断面鋸歯状の面は、例えば第1樹脂部材では同一形状の複数の溝部分を連ねて形成され、第2樹脂部材では同一形状の複数の山部分を連ねて形成される。この場合、第1樹脂部材の溝部分と第2樹脂部材の山部分とが隙間なく貼り合わされ、貼り合せた部分に複数の部分反射面が形成される。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、樹脂部材成形工程において、射出成形により第1及び第2樹脂部材を成形する。この場合、比較的簡易かつ高精度で第1及び第2樹脂部材を成形できる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、樹脂部材成形工程において、紫外線硬化樹脂成形により前記第1及び第2樹脂部材を成形する。この場合、比較的簡易に微細な形状を有する第1及び第2樹脂部材を成形できる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、樹脂部材成形型が、第1成形部と第2成形部との双方を、連続した1つの型の一部として含んでおり、第1及び第2樹脂部材が、樹脂部材成形工程において連なった状態で成形されるとともに、画像取出部形成工程の前に個々に分割される。この場合、比較的簡易に屈折率の差の少ない第1及び第2樹脂部材の成形ができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、樹脂部材成形型において、第1成形部と第2成形部とが隣接している。この場合、成形される第1樹脂部材と第2樹脂部材との屈折率の差を極めて小さくすることができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、第1樹脂部材と第2樹脂部材とが、同一形状である。この場合、精度の高い樹脂部材成形型の作製が比較的容易となり、得られる第1及び第2樹脂部材を組み合わせた画像取出部等の精度も高められる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、樹脂部材成形型が、画像取出部を接合する光射出部の本体部分を構成する第3樹脂部材を成形する第3成形部をさらに有する。この場合、第1及び第2樹脂部材の形状の自由度を高めるとともに、光射出部の本体部分と画像取出部との屈折率差を抑えて高精度な光射出部を形成できる。
【0017】
上記課題を解決するため、本発明に係る導光板は、上記いずれかの導光板の製造方法により製造される。この場合、製造された導光板は、画像光を良好状態で射出ことができる。
【0018】
上記課題を解決するため、本発明に係る虚像表示装置は、(a)上記の導光板と、(b)導光板に導かれる画像光を形成する画像形成装置とを備える。この場合、上記の導光板を用いることで、虚像表示装置は、良好な画像表示が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(A)は、第1実施形態に係る虚像表示装置を示す断面図であり、(B)及び(C)は、実施形態に係る導光板の正面図及び平面図である。
【図2】(A)は、導光板内の画像取出部の奥側の部分の構造を説明する断面図であり、(B)は、画像取出部の入口側の部分の構造を説明する断面図である。
【図3】画像取出部を通過する光の様子を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る導光板の製造方法を説明するためのフローチャートの図である。
【図5】(A)は、製造された導光板を示す平面図であり、(B)は、射出成形による各部の成形について説明するための図であり、(C)〜(E)は画像取出部を成形する工程を示す図である。
【図6】(A)は、第2実施形態に係る導光板の製造方法により製造された導光板を示す平面図であり、(B)は、射出成形に用いる型と成形される樹脂部材とを示す図である。
【図7】第3実施形態に係る導光板の製造方法を説明するためのフローチャートの図である。
【図8】(A)は、製造された導光板を示す平面図であり、(B)は、射出成形に用いる型と成形される樹脂成型品とを示す図である。
【図9】(A)〜(C)は、画像取出部を成形する工程を示す図である。
【図10】(A)及び(B)は、第4実施形態に係る導光板の製造方法を説明するための作製工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る導光板の製造方法によって製造される虚像表示装置用の導光板及びこれを組み込んだ虚像表示装置について説明する。
【0021】
〔A.導光板及び虚像表示装置の構造〕
図1(A)に示す本実施形態に係る虚像表示装置100は、ヘッドマウントディスプレイに適用されるものであり、画像形成装置10と、導光板20とを一組として備える。なお、図1(A)は、図1(B)に示す導光板20のA−A断面に対応する。
【0022】
虚像表示装置100は、観察者に虚像による画像光を認識させるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させるものである。画像形成装置10と導光板20とは、通常観察者の右眼および左眼に対応して一組ずつ設けられるが、右眼用と左眼用とでは左右対称であるので、ここでは左眼用のみを示し、右眼用については図示を省略している。なお、虚像表示装置100は、全体としては、例えば一般の眼鏡のような外観(不図示)を有するものとなっている。
【0023】
図1(A)に示すように、画像形成装置10は、液晶デバイス11と、投射光学系12とを有する。このうち、液晶デバイス11は、2次元的な照明光を射出する照明装置31と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32と、これらの間に配置される射出角調整部材33とを有する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光を空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。投射光学系12は、液晶表示デバイス32上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。射出角調整部材33は、照明光の射出角度分布を画面内の位置に応じて変化させており、液晶表示デバイス32から射出される画像光が効率的に観察者の眼EYに入射するように調整している。
【0024】
図1(B)及び1(C)に示すように、導光板20は、光入射部D1と、導光部D2と、光射出部D3とを備える。光入射部D1は、光入射面ISと入射光折曲面21とを有し、画像形成装置10からの画像光を光入射面ISから取り込むとともに、取り込んだ画像光を導光部D2に向けて折り曲げる。導光部D2は、全反射面形成部22を有し、取り込まれた画像光を光射出部D3に向けて伝播させる。なお、導光部D2が光束全体として導く方向を導光方向と呼ぶものとする。つまり、ここでは、Z方向が導光方向となる。光射出部D3は、角度変換部である画像取出部23と光射出面OSとを有し、導光部D2で伝播された画像光の角度変換を行い光射出面OSから画像光を射出する。
【0025】
光入射部D1は、光入射面ISを、YZ面に平行で画像形成装置10に対向する表側の平面上に有している。また、光入射部D1は、四角柱状の肉厚部分の側面として光入射面ISの他に矩形の斜面RSを有し、当該斜面RS上には、アルミ蒸着等の成膜によりミラー層21aが形成されている。つまり、ミラー層21aと斜面RSとが協働することで入射光折曲面21を形成している。入射光折曲面21は、光入射面ISから入射し全体として+X方向に向かう画像光を、全体として−X方向に偏った+Z方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光を導光部D2内に導く。
【0026】
導光部D2は、入口側である光入射部D1側から奥側である光射出部D3側にかけて延びており、内部に入射させた画像光を光射出部D3の画像取出部23に導くための全反射面形成部22を有している。
【0027】
全反射面形成部22は、導光部D2として機能するための平板状の主面であり互いに対向しYZ面に対して平行に延びる2平面として、画像光をそれぞれ全反射させる第1の全反射面22aと第2の全反射面22bとを有している。ここでは、第1の全反射面22aが画像形成装置10に近い側にあるものとし、第2の全反射面22bが画像形成装置10から遠い側にあるものとする。この場合、第1の全反射面22aは、光入射面IS及び光射出面OSと共通の面部分となっている。従って、光入射面ISや光射出面OSの一部又は全体も画像光を導く導光部D2として機能する。光入射部D1の入射光折曲面21で反射された画像光は、まず、第1の全反射面22aに入射し、全反射される。次に、当該画像光は、第2の全反射面22bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光板20の奥側すなわち画像取出部23を設けた+Z側に導かれる(例えば図2(A)参照)。ここで、導光部D2に用いる透明樹脂材料の屈折率nは、例えば1.5以上の高屈折率材料であるものとする。導光板20に比較的屈折率の高い透明樹脂材料を用いることで、導光板20内部で画像光を導光させやすくなり、かつ、導光板20内部での画像光の画角を比較的小さくすることができる。
【0028】
光射出部D3は、光射出面OSに対向して微細構造である画像取出部23を有している。画像取出部23は、全反射面形成部22の奥側(+Z側)において、第2の全反射面22bの延長平面に略沿ってこの延長平面に近接して形成されており、全反射面形成部22を経た画像光を、所定角度で反射して光射出面OS側へ折り曲げる。画像取出部23の詳しい構造については、図2(A)等により後述する。
【0029】
〔B.画像光の光路〕
以下、画像光の光路について説明する。図1(A)に示すように、投射光学系12を経た各画像光GL1,GL2,GL3の主要成分は、導光板20の光入射面ISからそれぞれ入射した後、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。画像光GL1,GL2,GL3のうち、液晶デバイス11の射出面32aの中央部分から射出された画像光GL1は、入射光折曲面21で反射された後、全反射面形成部22を経て画像取出部23の中央部23kで反射され、光射出面OSからこの面に対して垂直な光軸AX方向に射出される。また、液晶デバイス11の射出面32aの一端側(+Z側)から射出された画像光GL2は、全反射面形成部22を経て画像取出部23のうち反光入射面側(+Z側)の周辺部23mで反射され、光射出面OSから所定の角度方向に射出される。また、液晶デバイス11の射出面32aの他端側(−Z側)から射出された画像光GL3は、全反射面形成部22を経て画像取出部23のうち最も光入射面側(−Z側)の周辺部23hで反射され、光射出面OSから所定の角度方向に射出される。なお、この場合、各画像光GL1,GL2,GL3の全反射の角度について、画像光GL2の角度が最小であり、画像光GL3の角度が最大であり、その他の画像光の角度については、これらの中間の値となる。
【0030】
また、第1及び第2の全反射面22a,22bでの全反射による光の反射効率は非常に高いものであるため、画像取出部23に至るまでは、輝度低下が生じることは殆どない。また、図1(B)に示すように、縦方向すなわちY方向について見た画像光である画像光GLyは、光束全体として収束するように導光板20内を通過する。
【0031】
〔C.画像取出部の構造及び画像取出部による光路の折曲げ〕
以下、本実施形態に係る導光板20の画像取出部23の詳しい構造について説明する。図2(A)及び2(B)に示すように、画像取出部23は、多数の画像光反射面23aで構成され、画像光反射面23aの配列される方向は、全反射面形成部22の延びるZ方向となっている。各画像光反射面23aは、Z方向に対して垂直な縦方向すなわちY方向に延びる細長い面である。多数の画像光反射面23aは、互いに平行であり、第1及び第2の全反射面22a,22bに対して同一の角度をそれぞれなし画像光の光成分の一部を透過させ、残りを反射させる部分反射面となっている。これにより、画像取出部23は、観察者に外界像をシースルーで観察させることを可能にしている。なお、各画像光反射面23a間は、画像光を取り出すための反射面等としての機能を有しない境界部23bによって繋がれている。結果的に、画像光反射面23aは、Y方向を長手方向としてZ方向に沿って周期的に繰り返して配列され互いに平行に延びている。ここでは、1つの画像光反射面23aとこれに隣接する1つの境界部23bとを1組として反射ユニット23cと呼ぶこととする。つまり、多数の反射ユニット23c全体で、1つの断面鋸歯状となっている。
【0032】
ここで、以上のような構成の画像取出部23の作製について簡単に説明する。まず、前提として、導光板20のうち、全反射面形成部22と画像取出部23とを含む樹脂製の本体部分は、−X側の部分と+X側の部分とをそれぞれ形成する一対の第1及び第2樹脂部材B1,B2によって構成されている。画像取出部23は、一対の樹脂部材B1,B2が対応する一対の貼合せ面として有する断面鋸歯状の傾斜面において各画像光反射面23aを挟むことで形成されている。例えば、画像取出部23は、まず、第1樹脂部材B1の断面鋸歯状の傾斜面のうち画像光反射面23aとなるべき箇所に反射膜を成膜した後、第1及び第2樹脂部材B1,B2の断面鋸歯状の傾斜面を貼り合わせることで作製される。
【0033】
以下、画像取出部23による画像光の光路の折曲げについて説明する。ここでは、画像光のうち、画像取出部23の両端側に入射する画像光GL2及び画像光GL3について示し、他の光路については、これらと同様であるので図示等を省略する。また、各画像光反射面23aが画像光GL2,GL3の実際の入射面であるが、本明細書では、画像光の全反射面22a,22bでの全反射角度を画像取出部23に対する入射角度すなわち反射ユニット23cへの入射角と呼ぶこととする。既述のように、画像光GL2,GL3を含む画像光は、図1(A)、1(B)等に示す導光板20に光入射面ISから入射し、図2(A)等に示すように全反射面形成部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射を繰り返して導光されて、画像取出部23に到る。まず、図2(A)に示すように、最小反射角αで全反射面形成部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射される画像光GL2は、画像取出部23をN回(Nは1より大きい自然数)通過した後、画像取出部23のうち周辺部23mの最も奥側(+Z側)に位置する画像光反射面23aに達し、画像光反射面23aでの反射により、眼EYの中心軸である光軸AXに対して角度θで光射出面OSから眼EYに向けて平行光束として射出される。画像光GL2のように、画像取出部23の奥側で反射する成分は、多数の画像光反射面23aを1回以上のN回通過した後、眼EYに向わせる所定の画像光反射面23aに達し、ここで反射された成分が有効な成分となって観察者に認識される。
【0034】
一方、図2(B)に示すように、最大反射角αで全反射面形成部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射される画像光GL3は、画像取出部23のうち周辺部23hの最も入口側(−Z側)に位置する画像光反射面23aに達し、画像光反射面23aでの反射により、光軸AXに対して角度θで光射出面OSから眼EYに向けて平行光束として射出される。
【0035】
なお、画像光GL2の角度θと画像光GL3の角度θとは、大きさが略等しく逆向きとなっており、画像光による虚像の画角に相当するものとなっている。
【0036】
〔D.画像取出部における通過光の光路〕
上述したように、画像光のうち例えば画像光GL2に代表される画像取出部23の奥側で取り出される成分は、画像取出部23で取り出される前に、画像光反射面23aを1回以上通過する。ここで、画像取出部23は、+X側と−X側とに配置される一対の第1及び第2樹脂部材B1,B2によって画像光反射面23aを挟むものとなっている。従って、画像光の画像光反射面23aの通過に際して、意図しない屈折が生じないように、樹脂部材B1,B2間において屈折率差がない状態にしておくことが非常に重要である。仮に、図3に示すように、第1樹脂部材B1と第2樹脂部材B2との間に屈折率差があると、入射角φで画像光反射面23aに入射する画像光GLxが画像光反射面23aを通過するに際して意図しない屈折をする。これにより、画像光GLxは、以後屈折角φ(φ≠φ)で画像取出部23を伝播することになってしまい、この角度ずれが画像の劣化となって現れてしまう。特に、画像光GLxが複数並ぶ画像光反射面23aを一度に横切るような場合には、角度ずれによる画像の劣化はさらに進んでしまう。以上のような角度ずれを引き起こす屈折率差について、例えば、樹脂部材B1,B2間の屈折率差が0.001以上あると、観察者に映像光のずれとなって認識される可能性がある。従って、当該屈折率差を±0.0005程度の範囲内とする非常に高い精度が要求される。このレベルでの屈折率差内に抑えることは、たとえ第1樹脂部材B1と第2樹脂部材B2とに同一材料を用いたとしても保証できず、製造時の誤差によってもこれ以上の差が生じ得てしまう。本実施形態では、導光板20の製造のうち、特に画像取出部23の製造において、上記のような意図しない屈折が発生することを抑制できるように高精度なものとすることで、導光板20延いては虚像表示装置100を良好な画像形成が可能なものとしている。
【0037】
〔E.導光板の製造方法〕
以下、図4及び図5(A)〜5(E)を参照して、本実施形態に係る導光板の製造方法について説明する。図4は、本実施形態に係る導光板20の製造方法の概要を説明するフローチャートである。また、図5(A)は、本実施形態の製造方法によって製造される導光板20を模式的に示す平面図である。また、図5(B)は、図5(A)に示す導光板20のうち全反射面形成部22及び画像取出部23の本体部分である第1及び第2樹脂部材B1,B2を射出成形する工程について示す図であり、図5(C)〜5(E)は、画像取出部23を形成する工程を示す図である。
【0038】
まず、図4のフローチャートに示す導光板20の製造手順の最初の工程として、第1及び第2樹脂部材B1,B2を射出成形するための1組の金属型である第1及び第2樹脂部材成形型MP1,MP2を準備する(図4のステップS1の型準備工程)。ここで、1組の樹脂部材成形型MP1,MP2は、第1樹脂部材B1を成形するための第1成形部PP1と、第2樹脂部材B2を成形するための第2成形部PP2とを有している。樹脂部材成形型MP1は、第1及び第2成形部PP1,PP2のうち、画像取出部23の多数の反射ユニット23cを形成するための断面鋸歯状の転写面SS1,SS2を有している。つまり、転写面SS1と転写面SS2とは同一形状であり、これらを貼合せの面として、これらの間に反射膜を設けつつ貼り合わせることで、画像取出部23の複数の反射ユニット23cが形成される。なお、樹脂部材成形型MP2は、全反射面形成部22の全反射面22a,22b等の平坦面を形成するための転写面SSaを有している。以上のように、樹脂部材成形型MP1,MP2において、一対の第1及び第2成形部PP1,PP2の双方が1つの型内に存在することで、一対の第1及び第2樹脂部材B1,B2を一括して同時に作製可能となっている。これにより、第1樹脂部材B1と第2樹脂部材B2との製造時の誤差を極力抑えることができるので、両者間の屈折率差を所望の範囲内(例えば±0.0005以内)とする高精度のものにできる。なお、ここでは、このように複数の部材を一括して同時に作製することを同一ロットで作製すると言うものとする。
【0039】
次に、準備された樹脂部材成形型MP1,MP2を型閉じし、さらに、型締めした状態にし、樹脂部材成形型MP1,MP2間に形成された内部空間に高圧で樹脂材料を射出して充填する(図4のステップS2の射出充填工程)。これにより、同一の樹脂材料が第1成形部PP1と第2成形部PP2との双方に対して一斉に充填されるものとなる。第1及び第2成形部PP1,PP2に充填された樹脂材料は、1組の樹脂部材成形型MP1,MP2内において加圧状態に保持されて徐々に冷却されることで、樹脂部材成形型MP1,MP2の各転写面SS1,SS2,SSaの転写がなされる。転写後、樹脂材料が樹脂部材成形型MP1,MP2から離型される(図4のステップS3の離型工程)。以上により、樹脂材料から両樹脂部材B1,B2が同一ロットで作製される(樹脂部材成形工程)。以上の各工程を経て作製される第1及び第2樹脂部材B1,B2において、各転写面SS1,SS2の転写によって成形される断面鋸歯状の面である成形面PS1と成形面PS2とは、同一形状であり、かつ、多数の反射ユニット23cの延びる方向であるY方向についてそれぞれ軸対称形状である。また、これらの成形面PS1,PS2は、各反射ユニット23cの画像光反射面23aを構成するための互いに平行な傾斜面を含む同一形状の複数の溝部分又は山部分を連ねて形成されたものと見ることもできる。
【0040】
ここで、成形面PS1,PS2について、第2樹脂部材B2を、Y方向を軸方向として180°反転させることで、第2樹脂部材B2の成形面PS2は、第1樹脂部材B1の成形面PS1に隙間なく貼り合わせることが可能な形状である。なお、第1樹脂部材B1は、全反射面形成部22の−X側の本体部分を構成するものとして、第1の全反射面22aを有し、また、画像取出部23に対向して配置される光射出面OSを有している。また、第2樹脂部材B2は、全反射面形成部22の+X側の本体部分を構成するものとして、第2の全反射面22bを有している。
【0041】
次に、図5(C)に示すように、樹脂部材成形工程において作製された第1樹脂部材B1の成形面PS1のうち画像光反射面23aを構成すべき多数の第1面M1に面する方向である矢印方向AWから、アルミ等の成膜材料が蒸着され、各第1面M1上に画像光反射面23aとなるべき反射膜MBが形成される(図4のステップS4の反射膜成膜工程)。次に、図5(D)及び5(E)に示すように、画像光反射面23aが形成された成形面PS1の各第1面M1と、成形面PS1に対応する成形面PS2の各第2面M2とを貼り合せて、導光板20の画像取出部23を形成する(画像取出部形成工程)。なお、貼合せは、成形面PS1と成形面PS2との接着によってなされる。また、この際、第1及び第2樹脂部材B1,B2によって併せて全反射面形成部22も形成される。さらに、図5(A)に示すように、両樹脂部材B1,B2によって形成されたものに光入射面IS等を含む四角柱状の肉厚のブロック部分BPを接合することで、導光板20の樹脂製の本体部分が作製され(図4のステップS5の樹脂部材接合工程)、ブロック部分BPにおいて入射光折曲面21が形成されることで導光板20が作製される。
【0042】
以上のように、本実施形態の導光板20の製造方法では、図4のステップS2,S3に示す樹脂部材成形工程において、第1成形部PP1と第2成形部PP2との双方を有する樹脂部材成形型MP1,MP2によって一括して一対の第1及び第2樹脂部材B1,B2が成形される。また、図4のステップS5に示す画像取出部形成工程において、当該第1及び第2樹脂部材B1,B2を貼り合せて1つの画像取出部23が形成される。この場合、画像取出部23を構成する第1樹脂部材B1と第2樹脂部材B2との屈折率差を極力抑制できる。従って、画像取出部23の内部での意図しない屈折による画像光の角度ずれが抑制されることで、良好な画像を表示可能とする導光板20が製造される。
【0043】
〔第2実施形態〕
以下、第1実施形態を変形した第2実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る導光板の製造方法は、第1実施形態の導光板の製造方法の変形例であり、導光板を構成する樹脂製の本体部分の製造工程以外の製造工程については、第1実施形態と同様であるので、樹脂部材成形型と当該型によって成形される樹脂製の本体部分である樹脂部材についてのみ説明し、他については、説明及び図示を省略する。また、第1実施形態の場合と同符号のものについては、特に説明しない限り同様の機能を有するものとする。
【0044】
図6(A)は、本実施形態の製造方法によって製造される導光板20を模式的に示す平面図である。また、図6(B)は、図6(A)に示す導光板20のうち画像取出部23の本体部分である第1及び第2樹脂部材B1,B2と、全反射面形成部22等の本体部分である第3樹脂部材B3とを射出成形により成形する1組の樹脂部材成形型MP1,MP2とを示す図である。
【0045】
本実施形態に係る導光板20の製造方法では、1組の樹脂部材成形型MP1,MP2は、第1樹脂部材B1を成形するための第1成形部PP1と、第2樹脂部材B2を成形するための第2成形部PP2とに加え、第3樹脂部材B3を成形するための第3成形部PP3を有している。つまり、樹脂部材成形型MP1,MP2において、第1、第2及び第3成形部PP1,PP2,PP3が1つの型内に存在することで、第1、第2及び第3樹脂部材B1,B2,B3を同一ロットで作製可能となっている。
【0046】
ここで、図6(B)に示す例では、第1樹脂部材B1と第2樹脂部材B2とは、導光板20のうち画像取出部23の本体部分のみを形成し、第3樹脂部材B3によって全反射面形成部22の全反射面22a,22bや光射出面OS等の部分が形成されるものとなっている。このように、第3成形部PP3を有することで、第1及び第2樹脂部材B1,B2の形状の自由度を高めるとともに、第1、第2及び第3樹脂部材B1,B2,B3を同一ロットで作製することで、光射出部D3の本体部分と画像取出部23との屈折率差を抑えて高精度な光射出部D3を有する導光板20を作製できる。
【0047】
以上のように、本実施形態の導光板20の製造方法では、樹脂部材成形工程において、第1成形部PP1と第2成形部PP2と第3成形部PP3とを有する樹脂部材成形型MP1,MP2によって一括して一対の第1、第2及び第3樹脂部材B1,B2,B3が成形される。また、第1及び第2樹脂部材B1,B2を貼り合せて1つの画像取出部23が形成される。従って、画像取出部23の内部での意図しない屈折による画像光の角度ずれが抑制されることで、良好な画像を表示可能とする導光板20が製造される。
【0048】
〔第3実施形態〕
以下、第1実施形態を変形した第3実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る導光板の製造方法は、第1実施形態の導光板の製造方法の変形例であり、画像取出部の製造工程以外の製造工程については、第1実施形態と同様であるので、画像取出部を構成する樹脂部材の成形についてのみ示し、他の工程については、説明及び図示を省略する。また、第1実施形態の場合と同符号のものについては、特に説明しない限り同様の機能を有するものとする。
【0049】
図7は、本実施形態に係る導光板20の製造方法の概要を説明するフローチャートである。また、図8(A)は、本実施形態の製造方法によって製造される導光板20を模式的に示す平面図である。また、図8(B)は、図8(A)に示す導光板20のうち画像取出部23の本体部分である第1及び第2樹脂部材B1,B2となるべき樹脂成型品BXと、樹脂成型品BXを射出成形するにより成形する1組の樹脂部材成形型MP1,MP2とを示す図である。さらに、図9(A)〜9(C)は、樹脂成型品BXを分割して第1及び第2樹脂部材B1,B2を取り出すとともに、第1及び第2樹脂部材B1,B2を貼り合せて1つの画像取出部23が形成する様子を示す図である。ここで、第1樹脂部材B1と第2樹脂部材B2とは、同一形状であり、樹脂成型品BXは、第1樹脂部材B1又は第2樹脂部材B2を複数枚分(図9(A)に示す例では、3×6=18枚分)配列した断面鋸歯状の面を有している。つまり、樹脂成型品BXを分割することで複数の第1及び第2樹脂部材B1,B2が取り出されるものとなっている。
【0050】
本実施形態に係る導光板20の製造方法では、図8(B)に示す1組の樹脂部材成形型MP1,MP2は、画像取出部23を構成する第1及び第2樹脂部材B1,B2を含む樹脂成型品BXを成形するものとなっている。つまり、まず、樹脂成型品BXを射出成形するための第1及び第2樹脂部材成形型MP1,MP2を準備し(図7のステップS1の型準備工程)、次に、型締めした状態の樹脂部材成形型MP1,MP2間に形成された内部空間に高圧で射出された同一の樹脂材料が一斉に充填される(図7のステップS2の射出充填工程)。樹脂材料は、第1及び第2樹脂部材成形型MP1,MP2内において加圧保持され徐々に冷却された後、樹脂部材成形型MP1,MP2から離型される(図7のステップS3の離型工程)。以上により、断面鋸歯状の面を有する樹脂成型品BXが成形される(樹脂部材成形工程)。次に、図9(A)に示すように、成形された樹脂成型品BXを切断面DSに沿ってカットすることにより、図9(B)に示す同一形状の第1及び第2樹脂部材B1,B2が取り出される(図7のステップS3aの樹脂成型品分割工程)。つまり、第1及び第2樹脂部材B1,B2は、同一ロットで成形されたものとなっている。また、この際、第1樹脂部材B1と第2樹脂部材B2とは、樹脂成型品BXのうち隣接した部分から取り出されている。つまり、第1樹脂部材B1と第2樹脂部材B2とは、連なった状態で成形されている。これにより、両者間の屈折率差をより低減したものにできる。なお、以上の場合、図8(B)に示すように、対応する第1成形部PP1と第2成形部PP2とは、樹脂部材成形型MP1,MP2において隣接した部分に連続した1つの型の一部として含まれていることになる。
【0051】
次に、図9(B)及び9(C)に示すように、第1樹脂部材B1に矢印方向AWからアルミ等の成膜材料が蒸着され(図7のステップS4の反射膜成膜工程)、第1樹脂部材B1の成形面PS1と第2樹脂部材B2の成形面PS2とを貼り合せて、多数の画像光反射面23aを有する画像取出部23を形成する(画像取出部形成工程)。以上により、導光板20の画像取出部23が作製される。
【0052】
なお、図8(A)示すように、上記のようにして作製された画像取出部23に全反射面形成部22等を構成する樹脂部材B3やブロック部分BPを接合することで(図7のステップS5の樹脂部材接合工程)、導光板20が作製される。なお、樹脂部材B3について、第2実施形態の場合と同様に同一ロットで作製するものとしてもよい。
【0053】
以上のように、本実施形態の導光板20の製造方法では、樹脂部材成形工程において、第1成形部PP1と第2成形部PP2とを有する樹脂部材成形型MP1,MP2によって一括して一対の第1及び第2樹脂部材B1,B2が成形される。また、第1及び第2樹脂部材B1,B2を貼り合せて1つの画像取出部23が形成される。従って、画像取出部23の内部での意図しない屈折による画像光の角度ずれが抑制されることで、良好な画像を表示可能とする導光板20が製造される。
【0054】
〔第4実施形態〕
以下、第1実施形態を変形した第4実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る導光板の製造方法は、第1実施形態等の導光板の製造方法の変形例であり、画像取出部の本体部分となる樹脂部材の製造工程以外の製造工程については、第1実施形態と同様であるので、画像取出部の成形についてのみ示し、他の工程については、説明及び図示を省略する。また、第1実施形態の場合と同符号のものについては、特に説明しない限り同様の機能を有するものとする。
【0055】
図10(A)及び図10(B)は、本実施形態に係る導光板の製造方法のうち、画像取出部23の本体部分である第1及び第2樹脂部材B1,B2を成形する工程について示す図である。
【0056】
本実施形態に係る導光板20の製造方法では、紫外線硬化樹脂成形によって第1及び第2樹脂部材B1,B2を作製している。つまり、金属型である樹脂部材成形型MP1と光透過性のガラス基板GPとによって、第1樹脂部材B1を成形するための第1成形部PP1と、第2樹脂部材B2を成形するための第2成形部PP2とが形成され、これらが協働して、第1及び第2樹脂部材B1,B2を同一ロットで作製可能となっている。具体的には、まず、図10(A)に示すように、断面鋸歯状の面である転写面SS1,SS2を有する樹脂部材成形型MP1上に、紫外線硬化性樹脂MMを一斉に充填する。次に、図10(B)に示すように、樹脂部材成形型MP1の上方からガラス基板GPによって押圧し、樹脂部材成形型MP1の転写面SS1,SS2の転写をし(転写工程)、さらに、紫外線UVを照射して(紫外光照射工程)、紫外線硬化性樹脂MMを硬化させ(樹脂硬化工程)、転写面SS1,SS2の転写された第1及び第2樹脂部材B1,B2を成形する。
【0057】
以上のように、本実施形態の導光板の製造方法では、樹脂部材成形型MP1とガラス基板GPとを用いることで、微細な形状を比較的簡易に作製できる紫外線硬化樹脂成形によって一括して一対の第1及び第2樹脂部材B1,B2が成形される。また、第1及び第2樹脂部材B1,B2を貼り合せて1つの画像取出部23が形成される。従って、画像取出部23の内部での意図しない屈折による画像光の角度ずれが抑制されることで、良好な画像を表示可能とする導光板20が製造される。なお、図示の例では、樹脂部材成形型MP1が2つの転写面SS1,SS2を有して第1及び第2樹脂部材B1,B2を成形するものとしているが、例えば第3実施形態において図8(B)に示す樹脂部材成形型MP1のように、一度に大量の第1及び第2樹脂部材B1,B2が形成可能な樹脂成型品BXを成形するものとしてもよい。
【0058】
〔その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0059】
上記の説明では、断面鋸歯状の面である成形面PS1と成形面PS2とにおいて、各反射ユニット23cの画像光反射面23aを構成するための互いに平行な傾斜面を含む複数の溝部分が同一形状であるものとしている。すなわち各反射ユニット23cは同一形状としているが、画像光反射面23aは、傾斜角度が維持されれば、サイズの異なるものであってもよい。つまり、これらの成形面PS1,PS2は、相似形状の溝部分を連ねて形成された断面鋸歯状の面であってもよい。
【0060】
上記の説明では、多数の反射ユニットを有する構成としているが、1つの反射面で画像光を取り出す構成とするものについても、本構成のように2部材のブロック部分を接合して導光板を作製してもよい。
【0061】
上記の説明では、画像表示素子として、透過型の液晶デバイス11を用いているが、画像表示素子としては、透過型の液晶デバイスに限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶パネルを用いた構成も可能であり、液晶デバイス11に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子用いた構成も可能である。さらに、レーザー光源とポリゴンミラーその他のスキャナーとを組みあわせたレーザースキャナーを用いた構成も可能である。なお、液晶デバイス11やその光源において、画像取出部23の光取出特性を考慮して輝度パターンの調整を行うこともできる。
【0062】
上記の説明では、虚像表示装置100は、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ画像形成装置10及び導光板20を備えるとしているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ画像形成装置10と導光板20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。
【0063】
上記の説明では、シースルー型の虚像表示装置について説明しているが、外界像を観察させる必要がない場合、画像光反射面23aの光反射率を略100%にすることが可能である。
【0064】
上記の説明では、光入射面ISと光射出面OSとを同一の平面上に配置しているが、これに限らず、例えば、光入射面ISを第1の全反射面22aと同一の平面上に配置し、光射出面OSを第2の全反射面22bと同一の平面上に配置することもできる。
【0065】
上記の説明では、入射光折曲面21を構成するミラー層21aや斜面RSの角度について特に触れていないが、本発明は、ミラー層21a等の光軸OAに対する角度を用途や仕様に応じて様々な値とすることができる。
【0066】
上記の説明では、反射ユニット23cによるV字状の溝は、先端を尖った状態で図示しているが、V字状の溝の形状については、これに限らず、先端を平らにカットしているものや先端にRを付けているものであってもよい。
【0067】
上記の説明では、実施形態の虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、実施形態の虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
【0068】
上記の説明では、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2の全反射面22a,22b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角が全反射条件を満たした上で、全反射面22a,22bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって全反射面22a,22bの全体又は一部がコートされていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…画像形成装置、 11…液晶デバイス、 12…投射光学系、 20…導光板、 20a…導光板本体部、 21…入射光折曲面、 22…全反射面形成部、 22a…第1の全反射面、 22b…第2の全反射面、 23…画像取出部、 23a…画像光反射面(部分反射面)、 23c…反射ユニット、 100…虚像表示装置、 AX…光軸、 B1…第1樹脂部材、 B2…第2樹脂部材、 B3…第3樹脂部材、 D1…光入射部、 D2…導光部、 D3…光射出部、 EY…眼、 GL1,GL2,GL3,GLx,GLy…画像光、 IS…光入射面、 OA…光軸、 OS…光射出面、 MP1,MP2…樹脂部材成形型、 PP1…第1成形部、 PP2…第2成形部、 SP1,SP2…成形面、 SS1,SS2,SSa…転写面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光部と、前記導光部に画像光を入射させる光入射部と、前記導光部によって導かれた前記画像光を外部へ取出す画像取出部を有する光射出部と、を備える導光板の製造方法であって、
前記画像取出部の一部を構成する第1樹脂部材を成形する第1成形部と、前記第1樹脂部材と対になり前記画像取出部の他の一部を構成する第2樹脂部材を成形する第2成形部との双方を有する樹脂部材成形型を準備する型準備工程と、
前記樹脂部材成形型の前記第1成形部と前記第2成形部との双方に樹脂材料を充填し、前記樹脂部材成形型から前記第1及び第2樹脂部材を一括して成形する樹脂部材成形工程と、
前記樹脂部材成形工程において一括して成形された前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを対として貼り合せることにより前記画像取出部を形成する画像取出部形成工程と、を備える導光板の製造方法。
【請求項2】
前記画像取出部形成工程において、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材との間に前記画像取出部を構成する所定の配列方向に配列される複数の反射ユニットを形成するために、前記第1及び第2位樹脂部材の互いに貼り合わされる成形面の一方に反射膜を成膜する反射膜成膜工程を含む、請求項1に記載の導光板の製造方法。
【請求項3】
前記複数の反射ユニットは、前記反射膜によって入射光の少なくとも一部を透過させる複数の部分反射面を有し、前記複数の部分反射面のうちいずれかにおいて前記画像光の少なくとも一部を1回以上通過させる、請求項2に記載の導光板の製造方法。
【請求項4】
前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とは、前記複数の反射ユニットを構成するための互いに平行な傾斜面を含み互いに反転した一対の断面鋸歯状の面を有し、
前記画像取出部形成工程において、前記反射ユニットの長手方向を軸方向として、前記第2樹脂部材の前記断面鋸歯状の面を180°反転させて第1樹脂部材の断面鋸歯状の面に貼り合せる、請求項3に記載の導光板の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂部材成形型は、前記第1成形部と前記第2成形部との双方を、連続した1つの型の一部として含んでおり、前記第1及び第2樹脂部材は、前記樹脂部材成形工程において連なった状態で成形されるとともに、前記画像取出部形成工程の前に個々に分割される、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の導光板の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂部材成形型は、前記画像取出部を接合する前記光射出部の本体部分を構成する第3樹脂部材を成形する第3成形部をさらに有する、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の導光板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の導光板の製造方法により製造される導光板。
【請求項8】
請求項7に記載の導光板と、
前記導光板に導かれる前記画像光を形成する画像形成装置と、
を備える虚像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−198264(P2012−198264A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60484(P2011−60484)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】