導光部材、レーザ導光構造体、レーザ照射装置および光源装置
【課題】コストダウンできるとともに組み立てが容易な光源装置を提供する。
【解決手段】光源装置12は、入射面3aと、出射面3bと、前記入射面3aと前記出射面3bとを接続する側反射面を有する導光部材3と、前記入射面3a側に配置したレーザ素子23と、前記出射面3b側に当接または近接配置された蛍光体7とを備える。前記導光部材3は屈折率分布ない均一な内部構造である。前記レーザ素子23から出射されたレーザ光は前記入射面3a側から入射され、前記側反射面により全反射されて前記出射面3bから出射される。
【解決手段】光源装置12は、入射面3aと、出射面3bと、前記入射面3aと前記出射面3bとを接続する側反射面を有する導光部材3と、前記入射面3a側に配置したレーザ素子23と、前記出射面3b側に当接または近接配置された蛍光体7とを備える。前記導光部材3は屈折率分布ない均一な内部構造である。前記レーザ素子23から出射されたレーザ光は前記入射面3a側から入射され、前記側反射面により全反射されて前記出射面3bから出射される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体レーザ素子から出射される各レーザ光を所定位置に導光する導光部材ならびにそれを備えたレーザ導光構造体、レーザ照射装置および光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ発振器から出射される複数のレーザ光を簡易な手段で集光する従来の技術が特許文献1〜3に開示されている。特許文献1〜3では、レーザ発振器として、水平方向にアレイ状に発光部が並ぶ半導体レーザアレイを垂直方向に積み重ねることで、個々の発光部が二次元マトリクス状に配置されたレーザアレイアッセンブリが用いられている。そして、特許文献1〜3では、集光手段として、石英ガラス等の透明材料で形成されたプリズムを用いている。特許文献1〜3の各プリズムについて図18〜図20を参照して以下説明する。
【0003】
図18は、特許文献1に開示されたプリズムの斜視図(a)および縦断面図(b)である。図18(a)に示すように、特許文献1のプリズム100は、等脚台形板型の外形を有し、台形の面が垂直になるように立てて使用されるものである。プリズム100の後端面および先端面はそれぞれ入射面100aおよび出射面100bとなる。このプリズム100を、前記レーザ発振器の垂直方向に一列に並ぶ複数の発光部に入射面100aが対向近接するように配置し、同様の配置でこのプリズムを水平方向に並ぶ複数の発光部に対応して複数並設している。特許文献1のプリズム100の内部には、図18(b)に示すように、各発光部に対応して複数の導波路100cが空洞で形成されている。各導波路100cは、プリズム100の出射面10bで合流するように形成される。レーザ発振器の各発光部から発光されるレーザ光は、入射面100aに開口する各導波路100cの入口からプリズム100内部に入り、各導波路100c内を進行し、最終的に全レーザ光が収束され、出射面100bに導かれるようになっている。
【0004】
図19は、特許文献2に開示されたプリズムの斜視図である。特許文献2のプリズム200は、図19に示すように、基本的に長方形板型であるが、その一部に厚みを狭める先細のテーパを形成した牛乳パックのような外形を有し、テーパ面200dが垂直になるように立てて使用されるものである。プリズム200の後端面および先端面は、それぞれ入射面200aおよび出射面200bとなる。このプリズム200は、特許文献1のプリズム100のような導波路を持たず、屈折率分布がない均一な内部構造を有する点で特許文献1のプリズムとは異なる。プリズム200の入射面200aには、垂直方向に並ぶ発光部のそれぞれに対応してレンズ作用を有する曲面部200cが形成されている。このプリズム200を、前記レーザ発振器の垂直方向に一列に並ぶ複数の発光部に入射面200aの曲面部200cが対向近接するように配置し、同様の配置でこのプリズム200を水平方向に並ぶ複数の発光部に対応して複数並設している。レーザ発振器の各発光部から発光されるレーザ光は、入射面200aの曲面部200cを通過することによりの200cのレンズ作用で拡がりを抑えられた形でプリズム200内部に入射され、最終的に集約され、出射面200bに導かれるようになっている。
【0005】
図20は、特許文献3に開示されたプリズムの斜視図である。特許文献3のプリズム300は、図20に示すように、特許文献2のプリズム外形を、特許文献1のような等脚台形板型にしたものである。特許文献2と同様に、プリズム300の入射面300aには、入射されたレーザ光の拡がりを抑えるためのレンズとして機能する複数の曲面部300cが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−287181号公報(図1、図2参照)
【特許文献2】特開2005−148538号公報(図1、図2参照)
【特許文献3】特開2007−41623号公報(図8、図9参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、プリズムに、屈折率の不均一な複雑な内部構造を形成する必要があり、加工コストが高くなる問題がある。また、複数の半導体レーザ素子の発光部とプリズム入射面の複数の導波路の入口との精密な位置合わせが必要であり、組み付け時の調整が困難となる問題がある。
【0008】
特許文献2、3では、プリズムの入射面に、レーザ光を長軸方向に集光する複数のレンズ部を形成する必要があり、プリズムの加工コストが高くなる問題がある。また、レーザ発振器の複数の発光部とプリズムの入射面の複数の曲面部との精密な位置合わせが必要であり、組み付け時の調整が困難となる問題もある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、組み付け時の調整も容易で、複数のレーザ光を、全反射のみによって効率良く集約して出射可能な導光部材ならびにそれを備えたレーザ導光構造体、レーザ照射装置および光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の導光部材は、短軸方向に並んだ複数のレーザ光を、共通の入射面から入射され、当該複数のレーザ光を共通の反射面により 当該入射面より小さい出射面まで導いて集約して出射する導光部材であって、少なくとも短軸方向に対向する反射面は入射面から出射面に向かって傾斜していることを特徴としている。
【0011】
この構成によると、導光部材の入射面より入射される各レーザ光は、短軸方向に対向する反射面で大部分が全反射されながら導光路内部を進行し、入射面より小さい出射面より略均一な光強度分布で出射される。
【0012】
また、本発明の導光部材は、入射面から入射されたレーザ光を反射面により当該入射面の短軸方向の寸法より短い短軸方向の寸法の出射面まで導いて出射する導光部材であって、少なくとも短軸方向に対向する反射面は入射面から出射面に向かって傾斜していることを特徴としている。
【0013】
この構成によると、導光部材の入射面より入射される各レーザ光は、短軸方向に対向する反射面で大部分が全反射されながら導光路内部を進行し、入射面の短軸方向の寸法より短い短軸方向の寸法の出射面より略均一な光強度分布で出射される。
【0014】
本発明の導光部材は、短軸方向に配列された複数の発光部から発光して長軸方向および短軸方向に拡散しながら進行する複数のレーザ光を、入射面から入射して、入射された複数のレーザ光を所定の方向に導光して出射面から出射する導光部材であって、前記導光部材は、屈折率分布のない均一な内部構造の導光路を有し、内部と外部の境界面は入射面、出射面および入射面と出射面との間を連結する側反射面から構成されており、前記入射面は平面または均一な曲面で形成され、前記出射面は前記入射面より小さい寸法を有し、前記側反射面は、前記入射面より前記出射面に向かうほど導光路幅を狭窄するように形成されたことを特徴としている。
【0015】
この構成によると、導光部材の入射面より入射される各レーザ光は、側反射面で大部分が全反射されながら狭窄された導光路を進行する際に集約され、略均一な光強度分布で出射面から出射される。この導光部材は、入射面が平面または均一な曲面で形成されているため、製作コストを安くできる。また、入射面にレンズ作用を持たせていないため、入射面に複数のレーザ光が確実に入射される状態を確保できる限り、導光部材の入射面と各レーザ光の発光部との精密な位置合わせが不要となる。よって、組み付け時の調整が容易である。
【0016】
また本発明の導光部材は、上記構成において、前記入射面および前記出射面の平面形状は、レーザ光の短軸方向および長軸方向に平行な辺を有する矩形であることを特徴としている。これによると、入射面と出射面とを連結する側反射面は、レーザ光の長軸方向に導光路を狭窄する面と短軸方向に導光路を狭窄する面の2種類の面で構成されることになる。よって、長軸方向および短軸方向に拡散して入射面に対して斜めに入射される光線を、長軸方向および短軸方向に導光路を狭窄する側反射面で大部分が全反射させながら効率良く出射面に導光することができる。
【0017】
また本発明のレンズ部材は、上記構成において、前記側反射面は、導光路幅をテーパ状に狭窄するように形成されており、その長軸方向のテーパ角は、短軸方向よりも大きいことを特徴としている。この構成によると、拡がり角の大きい長軸方向に拡散して入射面に対して斜めに入射される光線についても全反射条件を満たしやすくなり、光の漏洩が抑制される。従って、レーザ光の利用効率が向上する。
【0018】
また、上記構成において、前記導光路のエッジが面取りされていることを特徴としている。この構成によると、側反射面のエッジ部での異常な光の散乱が抑制されるため、光の漏洩が抑制される。従って、レーザ光の利用効率が向上する。なお、導光路のエッジを丸く面取りする場合は、出射面の平面形状を円または軸方向および短軸方向に軸を有する楕円とすることが可能である。
【0019】
また、上記構成において、前記出射面に、該出射面より出射されるレーザ光を屈折させて集光するレンズ部が設けられたことを特徴としている。この構成によると、出射面から出射されるレーザ光の拡がりを抑制できる。よって、小さい面積にレーザ光のエネルギー集中させることが必要な用途、例えば、レーザ加工やレーザメスなどに適している。
【0020】
また、上記構成において、前記出射面に、前記出射面が、粗面あるいはモスアイ状であることを特徴としている。この構成によると、出射面の内側での反射が抑制され、光を効率的に外部に取り出すことができるようになる。
【0021】
また、本発明のレーザ導光構造体は、上記構成の導光部材と、レーザ光の短軸方向に配列された半導体レーザアレイとを備え、複数の発光部が導光部材の入射面に対向配置されたことを特徴としている。この構成によると、簡便な構成で複数のレーザ光を集約して出射面から出射することができる。
【0022】
なお、半導体レーザアレイは、短軸方向に配列した複数の半導体レーザ素子を有するものを好適に使用できる。この場合、複数の半導体レーザ素子の光軸を導光部材の出射面の略中心に向けて配置しても良い。このような配置によると、半導体レーザ素子から短軸方向に拡散して入射面に対して斜めに入射される光線について、側反射面に対する入射角が浅くなるために全反射条件をより満たしやすくなり、出射面まで光の漏洩を極力抑制して効率良く導光できるようになる。よって、レーザ光の利用効率が格段に向上する。
【0023】
また、本発明のレーザ照射装置は、上記構成のレーザ導光構造体を備え、該レーザ導光構造体をペン型のハウジングに収容してなることを特徴としている。さらに、前記ハウジングの先端に、レーザ導光構造体から出射されるレーザ光を集光するレンズを追加しても良い。
【0024】
また、本発明の光源装置は、上記構成のレーザ導光構造体を備え、レーザ光により励起され可視光を放出する蛍光体を、導光部材の出射面に当接または近接配置したことを特徴としている。さらに、前記蛍光体から放出される可視光を所定の方向に反射するリフレクタを追加しても良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明の導光部材によると、組み付け時の調整も容易で、複数のレーザ光の大部分を全反射のみによって効率良く集約して出射することができる。また、このような導光部材を半導体レーザアレイと組み合わせることで、簡便な構成のレーザ導光構造体が実現される。さら、このようなレーザ導光構造体を用いることで、小型かつ安価なレーザ照射装置や光源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の導光部材を用いたレーザ導光構造体の一実施の形態を示す斜視図
【図2】上記レーザ導光構造体に用いられるレーザアレイユニットを示す斜視図
【図3】上記レーザアレイユニットに配設される半導体レーザアレイを示す斜視図
【図4】上記半導体レーザアレイに実装される半導体レーザ素子の一例の斜視図
【図5】上記半導体レーザ素子から発光されるレーザ光とその面内光強度分布を説明する図
【図6】本発明の導光部材の一例を示す斜視図
【図7】上記導光部材の平断面図(a)、側断面図(b)およびxy投影図(c)
【図8】上記導光部材の具体例を表す図
【図9】上記導光部材の形状のバリエーションを説明する図であり、導光路のエッジが面取りされていないもの(a)、導光路のエッジが直線で面取りされているもの(b)、導光路のエッジが丸く面取りされているもの(c)
【図10】上記導光部材の出射面のバリエーションを説明する図であり、出射面に、レーザ光に短軸方向に集光するレンズ部を有するもの(a)、出射面に、レーザ光に長軸方向に集光するレンズ部を有するもの(b)、出射面に、レーザ光に長軸方向および短軸方向に集光するレンズ部を有するもの(c)
【図11】上記導光部材の入射面に入射された複数のレーザ光が導光路を進行し出射面に導光されるメカニズムを説明する平断面図(a)および側断面図(b)
【図12】上記導光部材の出射面の面内光強度分布を説明する図
【図13】上記導光部材の入射面に対向配置される半導体レーザ素子の配置のバリエーションを説明する図であり、各レーザ光の光軸が平行となるように配置したもの(a)、各レーザ光の光軸が出射面の中心を向くように配置したもの(b)
【図14】上記導光部材の長軸方向に導光路を狭窄する側反射面の入射面側のエッジラインが円弧となるように、例を示す平面図
【図15】上記レーザ導光構造体を用いたレーザ照射装置の一例を示す斜視図
【図16】上記レーザ照射装置の側断面図
【図17】上記レーザ導光構造体を用いた光源装置の一例を示す概略断面図
【図18】特許文献1に開示されたプリズムの斜視図(a)および縦断面図(b)
【図19】特許文献2に開示されたプリズムの斜視図
【図20】特許文献3に開示されたプリズムの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。以下の説明において、図中に示された三次元座標軸(x、y、z軸)を用いるが、x軸はレーザ光の短軸方向、y軸はレーザ光の長軸方向、z軸はレーザ光の光軸方向を示している。
【0028】
<レーザ導光構造体全体構成>
図1は、本発明の導光部材を用いたレーザ導光構造体の一実施の形態を示す斜視図である。図1に示すように、本実施の形態のレーザ導光構造体1は、複数の発光部を有するレーザアレイユニット2と、レーザアレイユニット2から発光された複数のレーザ光を入射面から入射して、入射された複数のレーザ光を所定の方向に導光して出射面から出射する導光部材3とを備える。
【0029】
<レーザアレイユニット>
図2は、上記レーザ導光構造体に用いられるレーザアレイユニットを示す斜視図である。図2に示すように、レーザアレイユニット2は、xy面の一面(図2では紙面手前の面)に開口された金属製のパッケージ22に、半導体レーザアレイ20を内装したものである。パッケージ22の一側面(図2では紙面左側の側面)に、第1、第2電極ピン24、25が貫装されている。第1、第2電極ピン24、25は、外部の電源に接続して、直流あるいはパルス電流を半導体レーザ素子23に供給するための端子となるものである。
【0030】
図3は、上記レーザアレイユニットに配設される半導体レーザアレイを示す斜視図である。図3に示すように、窒化アルミニウム(AlN)製の平板型(例えば、幅15 mm、高さ1 mm、奥行き2 mm)ヒートスプレッダ21のxz面の一面(図3では上面)の略全体に、x軸方向に長いベタ塗り矩形の2つの金(Au)電極パターン(第1、第2電極パターン21a、21b)をz軸方向に離して形成している。第1電極パターン21aは、第2電極パターン21bに比して相対的に面積が大きくなっている。第1電極パターン21a上には、複数(本実施の形態では10個)の半導体レーザ素子23がx軸方向に配列されて半田付でマウントされている。この素子配列の方向は、後述するように、レーザ光の短軸方向に平行な方向となる。そして、各素子23の上部電極(図示せず)と第2電極パターン22との間を、金(Au)ワイヤで接続すると、半導体レーザアレイ20が完成する。
【0031】
図4は、半導体レーザ素子の一例を示す斜視図である。この半導体レーザ素子23は、xy劈開面の一面(図4の手前の面)から発光するブロードエリア型レーザである。この半導体レーザ素子23は、図4に示すように、xz面に置かれるn型GaNから成る厚さ100μmの基板110上に、層厚0.5μmのn型GaNから成るバッファ層111、層厚2μmのn型Al0.05Ga0.95Nから成る下クラッド層112、InGaNの多重量子井戸から成る活性層113、z軸方向に延びるリッジを有し層厚0.5μm(最厚部)の上クラッド層114、SiO2から成る絶縁膜118、層厚0.1μmのp型GaNから成るコンタクト層115をy軸方向に積層し、基板110の下面に、Hf/Alから成るn電極117を形成し、コンタクト層115上にNi/Auから成るp電極116を形成した構成である。なお、絶縁膜118は上クラッド層114上のリッジを避けた箇所に形成され、コンタクト層115は、リッジ上に形成されている。119は、絶縁膜118およびp電極116上に形成されたAuから成るパッド電極であり、絶縁膜118上に形成されたパッド電極119上の1箇所にAuワイヤ28の一端がボンディングされる。
【0032】
このように構成される半導体レーザ素子23の全体サイズは、例えば、幅(図4のx1)が200μm、厚み(図4のy1)が約100μm、奥行き(図4のz1)が1000μmに設定される。発光部(図5参照)の幅を規定するのは上クラッド層114のリッジ幅(図4のw)であり、この幅は例えば、10μmに設定される。なお、レーザ発光に必要な共振器構造は既知のものを利用できるため、ここではその説明を省略する。
【0033】
図5は、上記半導体レーザ素子から発光されるレーザ光とその面内光強度分布を説明する図である。上記のように構成された半導体レーザ素子23のp電極116−n電極117間に直流電流を印加すると、図5に示すように、前記のリッジ幅を有する発光部からx軸方向およびy軸方向に拡散しながら進行するレーザ光が発光される。このレーザ光の進行方向に対して垂直なxy面に投影される楕円光の面内光強度分布は、x軸方向、y軸方向で解析すると、同図に示すように、共にガウス分布となる。よって、楕円内部の光強度分布は、楕円の輪郭から楕円の中心の頂点に向かって立ち上がる山型の分布となる。x軸方向の光強度分布の半値全幅(θIxmax/2)は約10°で、y軸方向(θIymax/2)は約20°であり、レーザ光の拡がり角は、y軸方向がx軸方向より約2倍大きくなっている。このことより、このレーザ光は、x軸方向を短軸方向、y軸方向を長軸方向として拡散しながら進行する拡散光となる。
【0034】
図3に示すように、第1電極パターン21a上で複数の半導体レーザ素子23はx軸方向に配列されているが、この素子配列は、上記で説明したようにレーザ光の短軸方向に平行な方向となるように配列したものである。素子配列が占有するx軸方向の幅、すなわち、両端に位置する素子の外側側面間の距離(図3のx0)は、例えば10 mmに設定される。この幅は、後述するように、本発明の導光部材3の入射面のx軸方向の幅(図7のx2in)の範囲内に収めるのが望ましい。
【0035】
このように構成される半導体レーザアレイ20は、図2に示すように、パッケージ22内の底面に半田付で固定される。そして、第1電極パターン21aと第1電極ピン24との間、および、第2電極パターン21aと第2電極ピン25との間を、金(Au)ワイヤ26、27のワイヤボンディングで接続すると、レーザアレイユニット2が完成する。このように半導体レーザアレイ20をユニット化することにより、取り扱いが便利になり、後述する導光部材3との組合せ、つまりレーザ導光構造体1の組立が簡素化される。
【0036】
<導光部材>
図6は、本発明の導光部材の一例を示す斜視図であり、図7は、その導光部材の平断面図(a)、側断面図(b)およびxy投影図(c)である。図7に示すように、導光部材3は、屈折率分布のない均一な内部構造を有し、その内部全体が導光路として機能する。このような導光部材3の材料としては、例えば、ホウケイ酸クラウン光学ガラス(BK7)や合成石英を用いることができる。
【0037】
図6に示すように、導光部材3は、内部と外部の境界面(導光路の境界面)が、入射面3a、出射面3bおよび入射面3aと出射面3bとの間を連結する4つの側反射面3c、3d、3eおよび3fから構成されている。入射面3aおよび出射面3bはxy平面として規定され、互いに対向している。
【0038】
入射面3aの平面形状は、x軸方向およびy軸方向に平行な辺を有する長方形である。入射面3aの各辺の長さは、図7に示すように、x2in、y2inで表すことにする。このように、本発明の導光部材3は、入射面3aが平面で均一な形状を有しているため、特許文献2、3のように入射面に凹凸を形成した不均一な形状に比べて製作コストを安くできる。
【0039】
出射面3bの平面形状も、入射面3aと同様に、x軸方向およびy軸方向に平行な辺を有する長方形である。出射面3bの各辺の長さは、図7に示すように、x2out、y2outで表すことにする。出射面3bは、入射面3aよりも小さい寸法に設定される(x2out<x2in、y2out<y2in)。
【0040】
入射面3aと出射面3bのxy座標の位置関係は、図7(c)の投影図に示すように、出射面3bが入射面3bの面内中央で重なる関係となっている。つまり、入射面3aと出射面3bはz軸方向について同軸に設定される。この同軸の関係は理想的ではあるが、製作誤差や設計変更の範囲でx軸方向およびy軸方向への若干のズレは許容されるものである。入射面3aと出射面3bとの距離は、図7(a)に示すように、z2で表すことにする。
【0041】
4つの側反射面3c〜3fは、入射面3aより出射面3bに向かうほど導光路幅を狭窄するように形成されている。このうち、側反射面3cおよび3dは、x軸方向に導光路幅を狭窄する面であり、側反射面3eおよび3fは、y軸方向に導光路幅を狭窄する面である。4つの面はすべて平面で形成され、入射面3aからの距離に比例する率で導光路幅をテーパ状に狭窄している。y軸方向のテーパ角(図7(b)のθ2)は、x軸方向のテーパ角(図7(a)のθ1)よりも大きく設定されている(θ2>θ1)。
【0042】
図8は導光部材の材質やサイズの具体例を示している。用いる材質によって屈折率が異なるので、2〜3 mm角程度の出射面に効率良く導光するためのサイズは異なる。しかし、いずれの材質を用いても、入射面に対する出射面のy軸方向の長さの比率は、x軸方向より小さくするように設定している(y2out/y2in>x2out/x2in)。このため、上述したように、y軸方向のテーパ角を、x軸方向のテーパ角よりも大きくすることができる(θ2>θ1)。
【0043】
図9は、導光部材の形状のバリエーションを説明する図である。図9(a)に示すように、導光路のエッジが角張っていると、エッジ部で光が異常に散乱され、導光部材3の外部に漏洩しやすいことが分かっている。よって、導光路のエッジを面取りすることが望ましい。面取り形状としては、図9(b)の部分拡大図に示すように、導光路のエッジを、例えば0.5 mmずつ直線で取り除くものや、図9(c)の部分拡大図に示すように、導光路のエッジを丸く削り取るものなどを採用できる。
【0044】
図10は、導光部材の出射面のバリエーションを説明する図である。これまでの説明では出射面3bは平面であり、出射面より出射されるレーザ光を屈折させて集光するレンズの機能はないことを前提としていたが、出射面3bにそのようなレンズ部を一体に形成してもよい。レンズ部としては、図10(a)に示すように、x軸方向に集光する機能をもつ曲面形状や、図10(b)に示すように、y軸方向に集光する機能を有する曲面形状を採用できる。その他にも、図10(c)に示すように、ドーム状のレンズ部3cを形成してx軸方向およびy軸方向に集光する機能を持たせることが可能である。なお、図9(c)のように導光路のエッジを丸く面取りする場合は、出射面3bの平面形状を円またはx軸方向およびy軸方向に平行な軸を有する楕円とすることが可能である。従って、出射面3bにドーム状のレンズ部3cを形成することが容易となる。
【0045】
また、出射面3bを、スリガラス状の粗面あるいは所謂モスアイ状とすることで、導光部材内部から出射面3bを通して外部にレーザ光を取り出す際の取り出し効率を大きく向上させることができた。出射面3bが平面である場合には、導光部材内部においてレーザ光が出射面3bの内側に到達した際に、出射面3bの内側で反射され、外部に取り出すことができないレーザ光成分が生じてしまう。それに対し、出射面3bをスリガラス状の粗面あるいは所謂モスアイ状とすることで出射面3bの内側での反射が抑制され、光を効率的に外部に取り出すことができるようになったものである。
【0046】
また、前述の導光部材の例では、入射面3aと出射面3bとが平行の場合について詳細を説明したが、入射面3aと出射面3bとは必ずしも平行である必要はない。
【0047】
<レーザアレイユニットと導光部材の組み付け>
本実施の形態のレーザ導光構造体1は、上記のように構成されたレーザアレイユニット2と導光部材3が一体に組み付けられたものである。組み付け時、図1に示すように、複数の半導体レーザ素子23の発光部が導光部材3の入射面3aに対向配置される。本発明の導光部材3は、入射面3aにレンズ作用を持たせていないため、入射面3aに複数のレーザ光が確実に入射される状態を確保できる限り、導光部材3の入射面3aと各半導体レーザ素子23の発光部との精密な位置合わせが不要となる。よって、本発明の導光部材3は、組み付け時の調整が容易である。本実施の形態によると、簡便な構成で複数のレーザ光を集約して出射するレーザ導光構造体1を提供できる。
【0048】
<導光メカニズム>
以下、上記のように構成された本実施の形態のレーザ導光構造体の動作を、特に本発明の導光部材の作用にスポットを当てて説明する。図11は、導光部材の入射面に入射された複数のレーザ光が導光路を進行し出射面に導光されるメカニズムを説明する平断面図(a)および側断面図(b)である。なお、図面の簡略化のために、半導体レーザ素子23を実際よりも大きく示し、素子の配列個数は4個にして示しているが、配列個数はレーザ導光構造体の用途などによって決まるものであり、4個に限定されないことは言うまでもない。
【0049】
各半導体レーザ素子23から発光されるレーザ光は、長軸方向および短軸方向に拡散しながら進行する拡散光である。この拡散光を光線で表現すると、図11(a)に細実線で示すように、発光部からz軸方向に真っ直ぐに放出される光もあれば、太実線で示すように、斜めに放出される光もある。つまり、レーザ光は、短軸方向の拡がり角の範囲で様々な角度で出て行く光線の束であると言える。同様のことは、短軸方向だけでなく、図11(b)のように長軸方向についても言える。
【0050】
短軸方向については、拡がり角が比較的小さいため、入射面3aに対して直角に入射する光線も、斜めに入射する光線も、側反射面3c、3dへ入射するときに比較的浅く入射できるで、全反射条件を比較的満たしやすい。よって、テーパ角(θ1)を小さめに設定してもレーザ光を出射面3bに効率良く導光することができる。
【0051】
他方、長軸方向については、拡がり角が大きいために、導光路のテーパ角(θ2)を短軸方向にように小さくすると、入射面3aに対して斜めに入射する光線は、側反射面3e、3fに対する入射角が大きくなり、全反射条件を満たしにくい。このため、特許文献2、3では、長軸方向には全反射を利用しないで入射面に設けたレンズ部の集光作用を用いてレーザ光を収束させるようにしている。
【0052】
本発明では、長軸方向のテーパ角を短軸方向より大きくし(θ1<θ2〜90°)、この方向のテーパを緩く設定しているため、拡がり角の大きい長軸方向に拡散して入射面3aに対して斜めに入射される光線についても全反射条件を満たしやすくなり、側反射面3e、3fで全反射させながら効率良く出射面3bに導光することができる。
【0053】
上記のような導光メカニズムにより、導光部材3の入射面3aより入射される各レーザ光は、側反射面で全反射されながら狭窄された導光路を進行する際に集約され、図12に示すように、xy面内で略均一な光強度分布を有する出射面3bから出射される。この出射光は導光部材3から出た後は拡散光となる。
【0054】
<レーザ導光構造体のその他の実施形態>
これまでの説明では、半導体レーザ素子23の配向は、図13(a)のように各レーザ光の光軸がすべてz軸方向に平行となるように配置したもので説明してきた。しかし、図13(a)に点線矢印で示すように、この配置では、短軸方向に拡がりながら導光路に入射するレーザ光について、導光部材3の先端側で全反射条件を満たさない光線が一部出てくるので、それが出射面3bに到達する前に外部に漏洩し導光ロスになる。
【0055】
そこで、図13(b)のように、各レーザ光の光軸が出射面3bの中心を向くように半導体レーザ素子23を傾けて配置することが望ましい。このように配置すると、半導体レーザ素23子から短軸方向に拡散して入射面3aに対して入射される光線について、側反射面に対する入射角が浅くなるために全反射条件をより満たしやすくなり、出射面3bまでレーザ光の漏洩を極力抑制して効率良く導光できるようになる。よって、レーザ光の利用効率が格段に向上する。
【0056】
この配置を採用する場合、導光部材3の入射面3aの形状のバリエーションとして、図14に示すように、長軸方向に導光路を狭窄する側反射面3c、3dの入射面3a側のエッジラインが円弧となるように、入射面3aを均一な曲面に形成しても良い。こうすると、側反射面3e、3fへの入射角をさらに小さくできて全反射条件を満たしやすくなるのでより好ましい。
【0057】
<レーザ導光構造体の応用例その1>
図15は、レーザ導光構造体を用いたレーザ照射装置の一例を示す斜視図であり、図16は、そのレーザ照射装置の側断面図である。このレーザ照射装置11は、図15、図16に示すように、上記のように構成されるレーザ導光構造体1を、先端に照射孔4aおよび照射孔4aに埋め込まれたレンズ5を有するペン型のハウジング4に収容し、レンズ5に導光部材3の出射面3bを付き合わせた構成である。6は電源供給用のケーブルであり、ハウジング4の後端から引き出されて外部電源(不図示)と接続するためのものである。
【0058】
ハウジング4の径は、導光部材3のxy方向で最大寸法になる入射面3aのx軸方向の長さ(x2in)に依存するが、図8に示されたBK7の例であると、この長さは10 mmなので、ハウジング4の径も20 mm以内に収めることが可能である。ハウジング4の長さは、z軸方向の長さであるz2に依存し、図8のBK7の例であると、この長さは50 mmなので、ハウジング4の長さも100 mm以内には十分収まる。従って、このレーザ照射装置11は、手に持って操作することに支障のないサイズを実現できる。
【0059】
このように構成されたレーザ照射装置11によると、ハウジング4の胴体をペンの握り方で持ち、照射対象物に対して、照射位置や照射方向を任意に操りながらエネルギー密度を高めたレーザ光を照射することができる。このレーザ照射装置11は、レーザ加工機などの工業用やレーザメスなどの医療用としての用途が期待できる。
【0060】
<レーザ導光構造体の応用例その2>
図17は、上記レーザ導光構造体を用いた光源装置の一例を示す概略構成断面図である。この光源装置12は、図17に示すように、上記のように構成されるレーザ導光構造体1を備え、レーザ光により励起され可視光を放出する蛍光体7を、導光部材3の出射面3bに当接または近接配置した構成である。8は、蛍光体7から放出される可視光を平行光線束として前方(図17では右方)に反射するリフレクタである。本例では、リフレクタ8としては、反射面が放物線で形成された凹面鏡を好適に使用しているが、リフレクタ8は、光源装置の用途に応じて凹面鏡以外のものも使用可能である。9は、蛍光体7から前方に放出され、リフレクタ8の反射面に向かわない可視光を、反射させる副反射鏡である。なお、副反射鏡9は蛍光体放出光の利用効率を向上させるためのものであって光源装置12として必須の要素ではない。
【0061】
本構成によると、半導体レーザ素子23から発光されるレーザ光を蛍光体5に導光する経路には、本発明の導光部材3が介在するだけなので、導光経路にコリメータレンズ、アパーチャ等の光学要素をアラインメントする場合のように光軸の調整作業がいらず組立が簡便である。また、光ファイバ等の高価な導光手段がいらないため、コストダウンが図られる。なお、レーザ導光構造体1をハウジング(不図示)に収めてユニット化すれば取り扱いが便利になり、組立をさらに簡素化できる。この光源装置12は、車両用前照灯やプロジェクタ用光源などに利用することができる。
【0062】
以上、本発明を具体的な実施形態を例に挙げて説明してきたが、本発明の範囲は上記実施形態に制約されるものではなく、発明の趣旨の範囲で種々の変更や修正が行うことが可能である。
【0063】
例えば、本発明の導光部材は、側反射面は、入射面から出射面に向かうほど導光路幅を狭窄するものであれば、上記の実施形態で説明したようなテーパ状に導光路幅を狭窄するものでなくても良い。例えば、緩やかな凹曲線で導光路幅を狭窄するようなエッジラインを持つ側反射面としても良い。
【0064】
また、半導体レーザアレイは、レーザ光の短軸方向に配列される複数の発光部を有するものであれば、上記の実施形態のような複数の半導体レーザ素子をヒートスプレッダなどにマウントするタイプでなくても良く、いわゆる半導体アレイレーザと呼ばれる、単一の素子に複数の発光部をアレイ状に区画して形成するものを用いても良い。
【0065】
また、短軸方向に配列される複数の半導体レーザ素子の素子配列は、短軸方向と厳密に平行な直線状に配置しなくても良く、特に、図13(b)のように光軸が平行にならない配向で配置する場合は、直線からズレても構わない。例えば、図14に示すように、円弧状に配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、工業用レーザ加工装置や医療用レーザメスなどのレーザ照射装置、車両用前照灯やプロジェクタ用光源などの光源装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 レーザ導光構造体
2 レーザアレイユニット
3 導光部材
3a 入射面
3b 出射面
3c〜3f 側反射面
11 レーザ照射装置
12 光源装置
21 半導体レーザアレイ
23 半導体レーザ素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体レーザ素子から出射される各レーザ光を所定位置に導光する導光部材ならびにそれを備えたレーザ導光構造体、レーザ照射装置および光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ発振器から出射される複数のレーザ光を簡易な手段で集光する従来の技術が特許文献1〜3に開示されている。特許文献1〜3では、レーザ発振器として、水平方向にアレイ状に発光部が並ぶ半導体レーザアレイを垂直方向に積み重ねることで、個々の発光部が二次元マトリクス状に配置されたレーザアレイアッセンブリが用いられている。そして、特許文献1〜3では、集光手段として、石英ガラス等の透明材料で形成されたプリズムを用いている。特許文献1〜3の各プリズムについて図18〜図20を参照して以下説明する。
【0003】
図18は、特許文献1に開示されたプリズムの斜視図(a)および縦断面図(b)である。図18(a)に示すように、特許文献1のプリズム100は、等脚台形板型の外形を有し、台形の面が垂直になるように立てて使用されるものである。プリズム100の後端面および先端面はそれぞれ入射面100aおよび出射面100bとなる。このプリズム100を、前記レーザ発振器の垂直方向に一列に並ぶ複数の発光部に入射面100aが対向近接するように配置し、同様の配置でこのプリズムを水平方向に並ぶ複数の発光部に対応して複数並設している。特許文献1のプリズム100の内部には、図18(b)に示すように、各発光部に対応して複数の導波路100cが空洞で形成されている。各導波路100cは、プリズム100の出射面10bで合流するように形成される。レーザ発振器の各発光部から発光されるレーザ光は、入射面100aに開口する各導波路100cの入口からプリズム100内部に入り、各導波路100c内を進行し、最終的に全レーザ光が収束され、出射面100bに導かれるようになっている。
【0004】
図19は、特許文献2に開示されたプリズムの斜視図である。特許文献2のプリズム200は、図19に示すように、基本的に長方形板型であるが、その一部に厚みを狭める先細のテーパを形成した牛乳パックのような外形を有し、テーパ面200dが垂直になるように立てて使用されるものである。プリズム200の後端面および先端面は、それぞれ入射面200aおよび出射面200bとなる。このプリズム200は、特許文献1のプリズム100のような導波路を持たず、屈折率分布がない均一な内部構造を有する点で特許文献1のプリズムとは異なる。プリズム200の入射面200aには、垂直方向に並ぶ発光部のそれぞれに対応してレンズ作用を有する曲面部200cが形成されている。このプリズム200を、前記レーザ発振器の垂直方向に一列に並ぶ複数の発光部に入射面200aの曲面部200cが対向近接するように配置し、同様の配置でこのプリズム200を水平方向に並ぶ複数の発光部に対応して複数並設している。レーザ発振器の各発光部から発光されるレーザ光は、入射面200aの曲面部200cを通過することによりの200cのレンズ作用で拡がりを抑えられた形でプリズム200内部に入射され、最終的に集約され、出射面200bに導かれるようになっている。
【0005】
図20は、特許文献3に開示されたプリズムの斜視図である。特許文献3のプリズム300は、図20に示すように、特許文献2のプリズム外形を、特許文献1のような等脚台形板型にしたものである。特許文献2と同様に、プリズム300の入射面300aには、入射されたレーザ光の拡がりを抑えるためのレンズとして機能する複数の曲面部300cが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−287181号公報(図1、図2参照)
【特許文献2】特開2005−148538号公報(図1、図2参照)
【特許文献3】特開2007−41623号公報(図8、図9参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、プリズムに、屈折率の不均一な複雑な内部構造を形成する必要があり、加工コストが高くなる問題がある。また、複数の半導体レーザ素子の発光部とプリズム入射面の複数の導波路の入口との精密な位置合わせが必要であり、組み付け時の調整が困難となる問題がある。
【0008】
特許文献2、3では、プリズムの入射面に、レーザ光を長軸方向に集光する複数のレンズ部を形成する必要があり、プリズムの加工コストが高くなる問題がある。また、レーザ発振器の複数の発光部とプリズムの入射面の複数の曲面部との精密な位置合わせが必要であり、組み付け時の調整が困難となる問題もある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、組み付け時の調整も容易で、複数のレーザ光を、全反射のみによって効率良く集約して出射可能な導光部材ならびにそれを備えたレーザ導光構造体、レーザ照射装置および光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の導光部材は、短軸方向に並んだ複数のレーザ光を、共通の入射面から入射され、当該複数のレーザ光を共通の反射面により 当該入射面より小さい出射面まで導いて集約して出射する導光部材であって、少なくとも短軸方向に対向する反射面は入射面から出射面に向かって傾斜していることを特徴としている。
【0011】
この構成によると、導光部材の入射面より入射される各レーザ光は、短軸方向に対向する反射面で大部分が全反射されながら導光路内部を進行し、入射面より小さい出射面より略均一な光強度分布で出射される。
【0012】
また、本発明の導光部材は、入射面から入射されたレーザ光を反射面により当該入射面の短軸方向の寸法より短い短軸方向の寸法の出射面まで導いて出射する導光部材であって、少なくとも短軸方向に対向する反射面は入射面から出射面に向かって傾斜していることを特徴としている。
【0013】
この構成によると、導光部材の入射面より入射される各レーザ光は、短軸方向に対向する反射面で大部分が全反射されながら導光路内部を進行し、入射面の短軸方向の寸法より短い短軸方向の寸法の出射面より略均一な光強度分布で出射される。
【0014】
本発明の導光部材は、短軸方向に配列された複数の発光部から発光して長軸方向および短軸方向に拡散しながら進行する複数のレーザ光を、入射面から入射して、入射された複数のレーザ光を所定の方向に導光して出射面から出射する導光部材であって、前記導光部材は、屈折率分布のない均一な内部構造の導光路を有し、内部と外部の境界面は入射面、出射面および入射面と出射面との間を連結する側反射面から構成されており、前記入射面は平面または均一な曲面で形成され、前記出射面は前記入射面より小さい寸法を有し、前記側反射面は、前記入射面より前記出射面に向かうほど導光路幅を狭窄するように形成されたことを特徴としている。
【0015】
この構成によると、導光部材の入射面より入射される各レーザ光は、側反射面で大部分が全反射されながら狭窄された導光路を進行する際に集約され、略均一な光強度分布で出射面から出射される。この導光部材は、入射面が平面または均一な曲面で形成されているため、製作コストを安くできる。また、入射面にレンズ作用を持たせていないため、入射面に複数のレーザ光が確実に入射される状態を確保できる限り、導光部材の入射面と各レーザ光の発光部との精密な位置合わせが不要となる。よって、組み付け時の調整が容易である。
【0016】
また本発明の導光部材は、上記構成において、前記入射面および前記出射面の平面形状は、レーザ光の短軸方向および長軸方向に平行な辺を有する矩形であることを特徴としている。これによると、入射面と出射面とを連結する側反射面は、レーザ光の長軸方向に導光路を狭窄する面と短軸方向に導光路を狭窄する面の2種類の面で構成されることになる。よって、長軸方向および短軸方向に拡散して入射面に対して斜めに入射される光線を、長軸方向および短軸方向に導光路を狭窄する側反射面で大部分が全反射させながら効率良く出射面に導光することができる。
【0017】
また本発明のレンズ部材は、上記構成において、前記側反射面は、導光路幅をテーパ状に狭窄するように形成されており、その長軸方向のテーパ角は、短軸方向よりも大きいことを特徴としている。この構成によると、拡がり角の大きい長軸方向に拡散して入射面に対して斜めに入射される光線についても全反射条件を満たしやすくなり、光の漏洩が抑制される。従って、レーザ光の利用効率が向上する。
【0018】
また、上記構成において、前記導光路のエッジが面取りされていることを特徴としている。この構成によると、側反射面のエッジ部での異常な光の散乱が抑制されるため、光の漏洩が抑制される。従って、レーザ光の利用効率が向上する。なお、導光路のエッジを丸く面取りする場合は、出射面の平面形状を円または軸方向および短軸方向に軸を有する楕円とすることが可能である。
【0019】
また、上記構成において、前記出射面に、該出射面より出射されるレーザ光を屈折させて集光するレンズ部が設けられたことを特徴としている。この構成によると、出射面から出射されるレーザ光の拡がりを抑制できる。よって、小さい面積にレーザ光のエネルギー集中させることが必要な用途、例えば、レーザ加工やレーザメスなどに適している。
【0020】
また、上記構成において、前記出射面に、前記出射面が、粗面あるいはモスアイ状であることを特徴としている。この構成によると、出射面の内側での反射が抑制され、光を効率的に外部に取り出すことができるようになる。
【0021】
また、本発明のレーザ導光構造体は、上記構成の導光部材と、レーザ光の短軸方向に配列された半導体レーザアレイとを備え、複数の発光部が導光部材の入射面に対向配置されたことを特徴としている。この構成によると、簡便な構成で複数のレーザ光を集約して出射面から出射することができる。
【0022】
なお、半導体レーザアレイは、短軸方向に配列した複数の半導体レーザ素子を有するものを好適に使用できる。この場合、複数の半導体レーザ素子の光軸を導光部材の出射面の略中心に向けて配置しても良い。このような配置によると、半導体レーザ素子から短軸方向に拡散して入射面に対して斜めに入射される光線について、側反射面に対する入射角が浅くなるために全反射条件をより満たしやすくなり、出射面まで光の漏洩を極力抑制して効率良く導光できるようになる。よって、レーザ光の利用効率が格段に向上する。
【0023】
また、本発明のレーザ照射装置は、上記構成のレーザ導光構造体を備え、該レーザ導光構造体をペン型のハウジングに収容してなることを特徴としている。さらに、前記ハウジングの先端に、レーザ導光構造体から出射されるレーザ光を集光するレンズを追加しても良い。
【0024】
また、本発明の光源装置は、上記構成のレーザ導光構造体を備え、レーザ光により励起され可視光を放出する蛍光体を、導光部材の出射面に当接または近接配置したことを特徴としている。さらに、前記蛍光体から放出される可視光を所定の方向に反射するリフレクタを追加しても良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明の導光部材によると、組み付け時の調整も容易で、複数のレーザ光の大部分を全反射のみによって効率良く集約して出射することができる。また、このような導光部材を半導体レーザアレイと組み合わせることで、簡便な構成のレーザ導光構造体が実現される。さら、このようなレーザ導光構造体を用いることで、小型かつ安価なレーザ照射装置や光源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の導光部材を用いたレーザ導光構造体の一実施の形態を示す斜視図
【図2】上記レーザ導光構造体に用いられるレーザアレイユニットを示す斜視図
【図3】上記レーザアレイユニットに配設される半導体レーザアレイを示す斜視図
【図4】上記半導体レーザアレイに実装される半導体レーザ素子の一例の斜視図
【図5】上記半導体レーザ素子から発光されるレーザ光とその面内光強度分布を説明する図
【図6】本発明の導光部材の一例を示す斜視図
【図7】上記導光部材の平断面図(a)、側断面図(b)およびxy投影図(c)
【図8】上記導光部材の具体例を表す図
【図9】上記導光部材の形状のバリエーションを説明する図であり、導光路のエッジが面取りされていないもの(a)、導光路のエッジが直線で面取りされているもの(b)、導光路のエッジが丸く面取りされているもの(c)
【図10】上記導光部材の出射面のバリエーションを説明する図であり、出射面に、レーザ光に短軸方向に集光するレンズ部を有するもの(a)、出射面に、レーザ光に長軸方向に集光するレンズ部を有するもの(b)、出射面に、レーザ光に長軸方向および短軸方向に集光するレンズ部を有するもの(c)
【図11】上記導光部材の入射面に入射された複数のレーザ光が導光路を進行し出射面に導光されるメカニズムを説明する平断面図(a)および側断面図(b)
【図12】上記導光部材の出射面の面内光強度分布を説明する図
【図13】上記導光部材の入射面に対向配置される半導体レーザ素子の配置のバリエーションを説明する図であり、各レーザ光の光軸が平行となるように配置したもの(a)、各レーザ光の光軸が出射面の中心を向くように配置したもの(b)
【図14】上記導光部材の長軸方向に導光路を狭窄する側反射面の入射面側のエッジラインが円弧となるように、例を示す平面図
【図15】上記レーザ導光構造体を用いたレーザ照射装置の一例を示す斜視図
【図16】上記レーザ照射装置の側断面図
【図17】上記レーザ導光構造体を用いた光源装置の一例を示す概略断面図
【図18】特許文献1に開示されたプリズムの斜視図(a)および縦断面図(b)
【図19】特許文献2に開示されたプリズムの斜視図
【図20】特許文献3に開示されたプリズムの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。以下の説明において、図中に示された三次元座標軸(x、y、z軸)を用いるが、x軸はレーザ光の短軸方向、y軸はレーザ光の長軸方向、z軸はレーザ光の光軸方向を示している。
【0028】
<レーザ導光構造体全体構成>
図1は、本発明の導光部材を用いたレーザ導光構造体の一実施の形態を示す斜視図である。図1に示すように、本実施の形態のレーザ導光構造体1は、複数の発光部を有するレーザアレイユニット2と、レーザアレイユニット2から発光された複数のレーザ光を入射面から入射して、入射された複数のレーザ光を所定の方向に導光して出射面から出射する導光部材3とを備える。
【0029】
<レーザアレイユニット>
図2は、上記レーザ導光構造体に用いられるレーザアレイユニットを示す斜視図である。図2に示すように、レーザアレイユニット2は、xy面の一面(図2では紙面手前の面)に開口された金属製のパッケージ22に、半導体レーザアレイ20を内装したものである。パッケージ22の一側面(図2では紙面左側の側面)に、第1、第2電極ピン24、25が貫装されている。第1、第2電極ピン24、25は、外部の電源に接続して、直流あるいはパルス電流を半導体レーザ素子23に供給するための端子となるものである。
【0030】
図3は、上記レーザアレイユニットに配設される半導体レーザアレイを示す斜視図である。図3に示すように、窒化アルミニウム(AlN)製の平板型(例えば、幅15 mm、高さ1 mm、奥行き2 mm)ヒートスプレッダ21のxz面の一面(図3では上面)の略全体に、x軸方向に長いベタ塗り矩形の2つの金(Au)電極パターン(第1、第2電極パターン21a、21b)をz軸方向に離して形成している。第1電極パターン21aは、第2電極パターン21bに比して相対的に面積が大きくなっている。第1電極パターン21a上には、複数(本実施の形態では10個)の半導体レーザ素子23がx軸方向に配列されて半田付でマウントされている。この素子配列の方向は、後述するように、レーザ光の短軸方向に平行な方向となる。そして、各素子23の上部電極(図示せず)と第2電極パターン22との間を、金(Au)ワイヤで接続すると、半導体レーザアレイ20が完成する。
【0031】
図4は、半導体レーザ素子の一例を示す斜視図である。この半導体レーザ素子23は、xy劈開面の一面(図4の手前の面)から発光するブロードエリア型レーザである。この半導体レーザ素子23は、図4に示すように、xz面に置かれるn型GaNから成る厚さ100μmの基板110上に、層厚0.5μmのn型GaNから成るバッファ層111、層厚2μmのn型Al0.05Ga0.95Nから成る下クラッド層112、InGaNの多重量子井戸から成る活性層113、z軸方向に延びるリッジを有し層厚0.5μm(最厚部)の上クラッド層114、SiO2から成る絶縁膜118、層厚0.1μmのp型GaNから成るコンタクト層115をy軸方向に積層し、基板110の下面に、Hf/Alから成るn電極117を形成し、コンタクト層115上にNi/Auから成るp電極116を形成した構成である。なお、絶縁膜118は上クラッド層114上のリッジを避けた箇所に形成され、コンタクト層115は、リッジ上に形成されている。119は、絶縁膜118およびp電極116上に形成されたAuから成るパッド電極であり、絶縁膜118上に形成されたパッド電極119上の1箇所にAuワイヤ28の一端がボンディングされる。
【0032】
このように構成される半導体レーザ素子23の全体サイズは、例えば、幅(図4のx1)が200μm、厚み(図4のy1)が約100μm、奥行き(図4のz1)が1000μmに設定される。発光部(図5参照)の幅を規定するのは上クラッド層114のリッジ幅(図4のw)であり、この幅は例えば、10μmに設定される。なお、レーザ発光に必要な共振器構造は既知のものを利用できるため、ここではその説明を省略する。
【0033】
図5は、上記半導体レーザ素子から発光されるレーザ光とその面内光強度分布を説明する図である。上記のように構成された半導体レーザ素子23のp電極116−n電極117間に直流電流を印加すると、図5に示すように、前記のリッジ幅を有する発光部からx軸方向およびy軸方向に拡散しながら進行するレーザ光が発光される。このレーザ光の進行方向に対して垂直なxy面に投影される楕円光の面内光強度分布は、x軸方向、y軸方向で解析すると、同図に示すように、共にガウス分布となる。よって、楕円内部の光強度分布は、楕円の輪郭から楕円の中心の頂点に向かって立ち上がる山型の分布となる。x軸方向の光強度分布の半値全幅(θIxmax/2)は約10°で、y軸方向(θIymax/2)は約20°であり、レーザ光の拡がり角は、y軸方向がx軸方向より約2倍大きくなっている。このことより、このレーザ光は、x軸方向を短軸方向、y軸方向を長軸方向として拡散しながら進行する拡散光となる。
【0034】
図3に示すように、第1電極パターン21a上で複数の半導体レーザ素子23はx軸方向に配列されているが、この素子配列は、上記で説明したようにレーザ光の短軸方向に平行な方向となるように配列したものである。素子配列が占有するx軸方向の幅、すなわち、両端に位置する素子の外側側面間の距離(図3のx0)は、例えば10 mmに設定される。この幅は、後述するように、本発明の導光部材3の入射面のx軸方向の幅(図7のx2in)の範囲内に収めるのが望ましい。
【0035】
このように構成される半導体レーザアレイ20は、図2に示すように、パッケージ22内の底面に半田付で固定される。そして、第1電極パターン21aと第1電極ピン24との間、および、第2電極パターン21aと第2電極ピン25との間を、金(Au)ワイヤ26、27のワイヤボンディングで接続すると、レーザアレイユニット2が完成する。このように半導体レーザアレイ20をユニット化することにより、取り扱いが便利になり、後述する導光部材3との組合せ、つまりレーザ導光構造体1の組立が簡素化される。
【0036】
<導光部材>
図6は、本発明の導光部材の一例を示す斜視図であり、図7は、その導光部材の平断面図(a)、側断面図(b)およびxy投影図(c)である。図7に示すように、導光部材3は、屈折率分布のない均一な内部構造を有し、その内部全体が導光路として機能する。このような導光部材3の材料としては、例えば、ホウケイ酸クラウン光学ガラス(BK7)や合成石英を用いることができる。
【0037】
図6に示すように、導光部材3は、内部と外部の境界面(導光路の境界面)が、入射面3a、出射面3bおよび入射面3aと出射面3bとの間を連結する4つの側反射面3c、3d、3eおよび3fから構成されている。入射面3aおよび出射面3bはxy平面として規定され、互いに対向している。
【0038】
入射面3aの平面形状は、x軸方向およびy軸方向に平行な辺を有する長方形である。入射面3aの各辺の長さは、図7に示すように、x2in、y2inで表すことにする。このように、本発明の導光部材3は、入射面3aが平面で均一な形状を有しているため、特許文献2、3のように入射面に凹凸を形成した不均一な形状に比べて製作コストを安くできる。
【0039】
出射面3bの平面形状も、入射面3aと同様に、x軸方向およびy軸方向に平行な辺を有する長方形である。出射面3bの各辺の長さは、図7に示すように、x2out、y2outで表すことにする。出射面3bは、入射面3aよりも小さい寸法に設定される(x2out<x2in、y2out<y2in)。
【0040】
入射面3aと出射面3bのxy座標の位置関係は、図7(c)の投影図に示すように、出射面3bが入射面3bの面内中央で重なる関係となっている。つまり、入射面3aと出射面3bはz軸方向について同軸に設定される。この同軸の関係は理想的ではあるが、製作誤差や設計変更の範囲でx軸方向およびy軸方向への若干のズレは許容されるものである。入射面3aと出射面3bとの距離は、図7(a)に示すように、z2で表すことにする。
【0041】
4つの側反射面3c〜3fは、入射面3aより出射面3bに向かうほど導光路幅を狭窄するように形成されている。このうち、側反射面3cおよび3dは、x軸方向に導光路幅を狭窄する面であり、側反射面3eおよび3fは、y軸方向に導光路幅を狭窄する面である。4つの面はすべて平面で形成され、入射面3aからの距離に比例する率で導光路幅をテーパ状に狭窄している。y軸方向のテーパ角(図7(b)のθ2)は、x軸方向のテーパ角(図7(a)のθ1)よりも大きく設定されている(θ2>θ1)。
【0042】
図8は導光部材の材質やサイズの具体例を示している。用いる材質によって屈折率が異なるので、2〜3 mm角程度の出射面に効率良く導光するためのサイズは異なる。しかし、いずれの材質を用いても、入射面に対する出射面のy軸方向の長さの比率は、x軸方向より小さくするように設定している(y2out/y2in>x2out/x2in)。このため、上述したように、y軸方向のテーパ角を、x軸方向のテーパ角よりも大きくすることができる(θ2>θ1)。
【0043】
図9は、導光部材の形状のバリエーションを説明する図である。図9(a)に示すように、導光路のエッジが角張っていると、エッジ部で光が異常に散乱され、導光部材3の外部に漏洩しやすいことが分かっている。よって、導光路のエッジを面取りすることが望ましい。面取り形状としては、図9(b)の部分拡大図に示すように、導光路のエッジを、例えば0.5 mmずつ直線で取り除くものや、図9(c)の部分拡大図に示すように、導光路のエッジを丸く削り取るものなどを採用できる。
【0044】
図10は、導光部材の出射面のバリエーションを説明する図である。これまでの説明では出射面3bは平面であり、出射面より出射されるレーザ光を屈折させて集光するレンズの機能はないことを前提としていたが、出射面3bにそのようなレンズ部を一体に形成してもよい。レンズ部としては、図10(a)に示すように、x軸方向に集光する機能をもつ曲面形状や、図10(b)に示すように、y軸方向に集光する機能を有する曲面形状を採用できる。その他にも、図10(c)に示すように、ドーム状のレンズ部3cを形成してx軸方向およびy軸方向に集光する機能を持たせることが可能である。なお、図9(c)のように導光路のエッジを丸く面取りする場合は、出射面3bの平面形状を円またはx軸方向およびy軸方向に平行な軸を有する楕円とすることが可能である。従って、出射面3bにドーム状のレンズ部3cを形成することが容易となる。
【0045】
また、出射面3bを、スリガラス状の粗面あるいは所謂モスアイ状とすることで、導光部材内部から出射面3bを通して外部にレーザ光を取り出す際の取り出し効率を大きく向上させることができた。出射面3bが平面である場合には、導光部材内部においてレーザ光が出射面3bの内側に到達した際に、出射面3bの内側で反射され、外部に取り出すことができないレーザ光成分が生じてしまう。それに対し、出射面3bをスリガラス状の粗面あるいは所謂モスアイ状とすることで出射面3bの内側での反射が抑制され、光を効率的に外部に取り出すことができるようになったものである。
【0046】
また、前述の導光部材の例では、入射面3aと出射面3bとが平行の場合について詳細を説明したが、入射面3aと出射面3bとは必ずしも平行である必要はない。
【0047】
<レーザアレイユニットと導光部材の組み付け>
本実施の形態のレーザ導光構造体1は、上記のように構成されたレーザアレイユニット2と導光部材3が一体に組み付けられたものである。組み付け時、図1に示すように、複数の半導体レーザ素子23の発光部が導光部材3の入射面3aに対向配置される。本発明の導光部材3は、入射面3aにレンズ作用を持たせていないため、入射面3aに複数のレーザ光が確実に入射される状態を確保できる限り、導光部材3の入射面3aと各半導体レーザ素子23の発光部との精密な位置合わせが不要となる。よって、本発明の導光部材3は、組み付け時の調整が容易である。本実施の形態によると、簡便な構成で複数のレーザ光を集約して出射するレーザ導光構造体1を提供できる。
【0048】
<導光メカニズム>
以下、上記のように構成された本実施の形態のレーザ導光構造体の動作を、特に本発明の導光部材の作用にスポットを当てて説明する。図11は、導光部材の入射面に入射された複数のレーザ光が導光路を進行し出射面に導光されるメカニズムを説明する平断面図(a)および側断面図(b)である。なお、図面の簡略化のために、半導体レーザ素子23を実際よりも大きく示し、素子の配列個数は4個にして示しているが、配列個数はレーザ導光構造体の用途などによって決まるものであり、4個に限定されないことは言うまでもない。
【0049】
各半導体レーザ素子23から発光されるレーザ光は、長軸方向および短軸方向に拡散しながら進行する拡散光である。この拡散光を光線で表現すると、図11(a)に細実線で示すように、発光部からz軸方向に真っ直ぐに放出される光もあれば、太実線で示すように、斜めに放出される光もある。つまり、レーザ光は、短軸方向の拡がり角の範囲で様々な角度で出て行く光線の束であると言える。同様のことは、短軸方向だけでなく、図11(b)のように長軸方向についても言える。
【0050】
短軸方向については、拡がり角が比較的小さいため、入射面3aに対して直角に入射する光線も、斜めに入射する光線も、側反射面3c、3dへ入射するときに比較的浅く入射できるで、全反射条件を比較的満たしやすい。よって、テーパ角(θ1)を小さめに設定してもレーザ光を出射面3bに効率良く導光することができる。
【0051】
他方、長軸方向については、拡がり角が大きいために、導光路のテーパ角(θ2)を短軸方向にように小さくすると、入射面3aに対して斜めに入射する光線は、側反射面3e、3fに対する入射角が大きくなり、全反射条件を満たしにくい。このため、特許文献2、3では、長軸方向には全反射を利用しないで入射面に設けたレンズ部の集光作用を用いてレーザ光を収束させるようにしている。
【0052】
本発明では、長軸方向のテーパ角を短軸方向より大きくし(θ1<θ2〜90°)、この方向のテーパを緩く設定しているため、拡がり角の大きい長軸方向に拡散して入射面3aに対して斜めに入射される光線についても全反射条件を満たしやすくなり、側反射面3e、3fで全反射させながら効率良く出射面3bに導光することができる。
【0053】
上記のような導光メカニズムにより、導光部材3の入射面3aより入射される各レーザ光は、側反射面で全反射されながら狭窄された導光路を進行する際に集約され、図12に示すように、xy面内で略均一な光強度分布を有する出射面3bから出射される。この出射光は導光部材3から出た後は拡散光となる。
【0054】
<レーザ導光構造体のその他の実施形態>
これまでの説明では、半導体レーザ素子23の配向は、図13(a)のように各レーザ光の光軸がすべてz軸方向に平行となるように配置したもので説明してきた。しかし、図13(a)に点線矢印で示すように、この配置では、短軸方向に拡がりながら導光路に入射するレーザ光について、導光部材3の先端側で全反射条件を満たさない光線が一部出てくるので、それが出射面3bに到達する前に外部に漏洩し導光ロスになる。
【0055】
そこで、図13(b)のように、各レーザ光の光軸が出射面3bの中心を向くように半導体レーザ素子23を傾けて配置することが望ましい。このように配置すると、半導体レーザ素23子から短軸方向に拡散して入射面3aに対して入射される光線について、側反射面に対する入射角が浅くなるために全反射条件をより満たしやすくなり、出射面3bまでレーザ光の漏洩を極力抑制して効率良く導光できるようになる。よって、レーザ光の利用効率が格段に向上する。
【0056】
この配置を採用する場合、導光部材3の入射面3aの形状のバリエーションとして、図14に示すように、長軸方向に導光路を狭窄する側反射面3c、3dの入射面3a側のエッジラインが円弧となるように、入射面3aを均一な曲面に形成しても良い。こうすると、側反射面3e、3fへの入射角をさらに小さくできて全反射条件を満たしやすくなるのでより好ましい。
【0057】
<レーザ導光構造体の応用例その1>
図15は、レーザ導光構造体を用いたレーザ照射装置の一例を示す斜視図であり、図16は、そのレーザ照射装置の側断面図である。このレーザ照射装置11は、図15、図16に示すように、上記のように構成されるレーザ導光構造体1を、先端に照射孔4aおよび照射孔4aに埋め込まれたレンズ5を有するペン型のハウジング4に収容し、レンズ5に導光部材3の出射面3bを付き合わせた構成である。6は電源供給用のケーブルであり、ハウジング4の後端から引き出されて外部電源(不図示)と接続するためのものである。
【0058】
ハウジング4の径は、導光部材3のxy方向で最大寸法になる入射面3aのx軸方向の長さ(x2in)に依存するが、図8に示されたBK7の例であると、この長さは10 mmなので、ハウジング4の径も20 mm以内に収めることが可能である。ハウジング4の長さは、z軸方向の長さであるz2に依存し、図8のBK7の例であると、この長さは50 mmなので、ハウジング4の長さも100 mm以内には十分収まる。従って、このレーザ照射装置11は、手に持って操作することに支障のないサイズを実現できる。
【0059】
このように構成されたレーザ照射装置11によると、ハウジング4の胴体をペンの握り方で持ち、照射対象物に対して、照射位置や照射方向を任意に操りながらエネルギー密度を高めたレーザ光を照射することができる。このレーザ照射装置11は、レーザ加工機などの工業用やレーザメスなどの医療用としての用途が期待できる。
【0060】
<レーザ導光構造体の応用例その2>
図17は、上記レーザ導光構造体を用いた光源装置の一例を示す概略構成断面図である。この光源装置12は、図17に示すように、上記のように構成されるレーザ導光構造体1を備え、レーザ光により励起され可視光を放出する蛍光体7を、導光部材3の出射面3bに当接または近接配置した構成である。8は、蛍光体7から放出される可視光を平行光線束として前方(図17では右方)に反射するリフレクタである。本例では、リフレクタ8としては、反射面が放物線で形成された凹面鏡を好適に使用しているが、リフレクタ8は、光源装置の用途に応じて凹面鏡以外のものも使用可能である。9は、蛍光体7から前方に放出され、リフレクタ8の反射面に向かわない可視光を、反射させる副反射鏡である。なお、副反射鏡9は蛍光体放出光の利用効率を向上させるためのものであって光源装置12として必須の要素ではない。
【0061】
本構成によると、半導体レーザ素子23から発光されるレーザ光を蛍光体5に導光する経路には、本発明の導光部材3が介在するだけなので、導光経路にコリメータレンズ、アパーチャ等の光学要素をアラインメントする場合のように光軸の調整作業がいらず組立が簡便である。また、光ファイバ等の高価な導光手段がいらないため、コストダウンが図られる。なお、レーザ導光構造体1をハウジング(不図示)に収めてユニット化すれば取り扱いが便利になり、組立をさらに簡素化できる。この光源装置12は、車両用前照灯やプロジェクタ用光源などに利用することができる。
【0062】
以上、本発明を具体的な実施形態を例に挙げて説明してきたが、本発明の範囲は上記実施形態に制約されるものではなく、発明の趣旨の範囲で種々の変更や修正が行うことが可能である。
【0063】
例えば、本発明の導光部材は、側反射面は、入射面から出射面に向かうほど導光路幅を狭窄するものであれば、上記の実施形態で説明したようなテーパ状に導光路幅を狭窄するものでなくても良い。例えば、緩やかな凹曲線で導光路幅を狭窄するようなエッジラインを持つ側反射面としても良い。
【0064】
また、半導体レーザアレイは、レーザ光の短軸方向に配列される複数の発光部を有するものであれば、上記の実施形態のような複数の半導体レーザ素子をヒートスプレッダなどにマウントするタイプでなくても良く、いわゆる半導体アレイレーザと呼ばれる、単一の素子に複数の発光部をアレイ状に区画して形成するものを用いても良い。
【0065】
また、短軸方向に配列される複数の半導体レーザ素子の素子配列は、短軸方向と厳密に平行な直線状に配置しなくても良く、特に、図13(b)のように光軸が平行にならない配向で配置する場合は、直線からズレても構わない。例えば、図14に示すように、円弧状に配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、工業用レーザ加工装置や医療用レーザメスなどのレーザ照射装置、車両用前照灯やプロジェクタ用光源などの光源装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 レーザ導光構造体
2 レーザアレイユニット
3 導光部材
3a 入射面
3b 出射面
3c〜3f 側反射面
11 レーザ照射装置
12 光源装置
21 半導体レーザアレイ
23 半導体レーザ素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射面と、出射面と、前記入射面と前記出射面とを接続する側反射面を有する導光部材と、
前記入射面側に配置されたレーザ素子と、
前記出射面側に配置された蛍光体とを備え、
前記導光部材は屈折率分布ない均一な内部構造であり、
前記レーザ素子から出射されたレーザ光は前記入射面側から入射され、前記側反射面により全反射されて前記出射面から出射されることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記側反射面は平面から成ることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記蛍光体は、前記出射面に当接または近接配置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記側反射面のうち少なくとも短軸方向に対向する面は前記入射面から前記出射面に向かって傾斜し、
前記側反射面は、前記レーザ光の長軸方向および短軸方向にテーパ状に狭窄する平面から成り、長軸方向のテーパ角は、短軸方向よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】
投光部材をさらに備え、
前記蛍光体はレーザ光により励起され可視光を放出し、
前記投光部材は前記蛍光体より放出さえた可視光を所定の方向に投光することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光源装置。
【請求項1】
入射面と、出射面と、前記入射面と前記出射面とを接続する側反射面を有する導光部材と、
前記入射面側に配置されたレーザ素子と、
前記出射面側に配置された蛍光体とを備え、
前記導光部材は屈折率分布ない均一な内部構造であり、
前記レーザ素子から出射されたレーザ光は前記入射面側から入射され、前記側反射面により全反射されて前記出射面から出射されることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記側反射面は平面から成ることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記蛍光体は、前記出射面に当接または近接配置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記側反射面のうち少なくとも短軸方向に対向する面は前記入射面から前記出射面に向かって傾斜し、
前記側反射面は、前記レーザ光の長軸方向および短軸方向にテーパ状に狭窄する平面から成り、長軸方向のテーパ角は、短軸方向よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】
投光部材をさらに備え、
前記蛍光体はレーザ光により励起され可視光を放出し、
前記投光部材は前記蛍光体より放出さえた可視光を所定の方向に投光することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−54386(P2013−54386A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−266893(P2012−266893)
【出願日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【分割の表示】特願2010−110025(P2010−110025)の分割
【原出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【分割の表示】特願2010−110025(P2010−110025)の分割
【原出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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