説明

導波路型光スイッチ単位素子および導波路型マトリクス光スイッチ

【課題】マトリクス光スイッチ作製時に発生する誤差によって回路特性が変動する場合において、回路の組み合わせにより作製誤差によらない十分な消光比を備えたマトリクス光スイッチを提供する。
【解決手段】互いに交差する1本の入力光導波路11a−11bおよび1本の出力光導波路12a−12b、さらに前記入出力光導波路11a−11b,12a−12bを接続するバイパス光導波路13a−13bからなり、前記バイパス光導波路13a−13bと前記入力光導波路11a−11bとの間で1×2光スイッチ18aと、前記バイパス光導波路13a−13bと前記出力光導波路12a−12bとの間で2×1光スイッチ18bと、前記1×2光スイッチ18aおよび前記2×1光スイッチ18b間に1×1光ゲートスイッチ18cを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路型光スイッチ単位素子および導波路型マトリクス光スイッチに関する。特に、作製誤差に強く、消光比に優れた導波路型光スイッチの回路構成およびそれを単位素子として構成される導波路型マトリクス光スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブロードバンド通信の爆発的普及によりネットワークコンテンツは多様性を増しており、その進歩に伴って通信トラフィックの増大を生み、通信網に対する大容量化、高速化、高機能化の要求を日増しに高めている。
【0003】
近年、光通信技術はこれらの要求に応え得る重要な役割を果たしてきた。
【0004】
これまでの光通信網では光−電気、電気−光変換によって信号処理を行う方式が主流となってきたが、今後はさらにアクセス網を含む全ての通信網上で電気信号に変換する事なく光信号のままで結ぶ構造の光通信網に発展させる事が重要となる。
【0005】
この光通信システムに重要な部品の一つとして挙げられるのが、光スイッチである。
【0006】
これは、光信号を光のままスイッチング(経路切替)あるいはルーティング(経路設定)するシステムにおいて中心的な役割を果たす部品であり、近年大規模化、高機能化、低コスト化が進められ、その重要性が増している。
【0007】
光スイッチを構成する形態は様々なものが提案されており、バルク型、微小電機機械システム(MEMS:Micro−electro−mechanical systems)型、導波路型などがある。
【0008】
バルク型は可動プリズムやレンズなどによって構成される機械駆動式の光スイッチであり、波長依存性が少なく、比較的低損失であるが、いくつかの部品を組み立てて作製されるため、工程が煩雑で量産や大規模化が難しいという問題点がある。
【0009】
MEMS型は機械駆動式ではあるが、半導体の微細加工技術を応用して作製した多数のミラーアレイと光ファイバおよびコリメートレンズによって構成されており、波長依存性が少なく、低損失である上に、量産、大規模化が容易であり、現在開発が盛んに行われている部品である。
【0010】
一方、導波路型は半導体微細加工技術を半導体の他、ガラスやポリマーなどの材料に適用して作製される光導波路を基本としており、量産性に優れるばかりでなく、回路構成の柔軟性や長期安定性に優れ、光ファイバの実装や光合分波器や光フィルタなど他の導波路型光部品との集積が容易であるなど多くの利点を持つ。
【0011】
特にシリコン基板上に作製される石英系光導波路の熱光学効果を利用した光スイッチは、低損失であり化学的安定性及び光ファイバとの整合性に優れるといった特徴を有し、実用化が最も進んだ光スイッチの一つである。
【0012】
光ルータなど光通信システムにおいて用いられる光スイッチとして本発明の対象である複数の入出力ポートを持つマトリクス光スイッチがある。
【0013】
一例として4×4マトリクス光スイッチの構成概念図を図8(a)に示す。
【0014】
このマトリクス光スイッチは互いに交差する4本の入力光導波路(1a−1d〜4a−4d)と4本の出力光導波路(1c−1b〜4c−4b)からなり、16箇所の交差点には光スイッチ単位素子として2入力2出力の光スイッチs11〜s44が配置されていて、入力光導波路と出力光導波路とが交差していることからクロスバースイッチと呼ばれることもある。
【0015】
各光スイッチ単位素子は無通電(もしくはオフ)状態で図8(b)に示すようなクロス状態となっており、通電(もしくはオン)状態で図8(c)に示すようなバー状態に切り替わる。
【0016】
このようなスイッチは任意の入力光導波路および出力光導波路を接続する経路に対して他の経路の影響をまったく受けない(他の経路にブロックされない)厳密ノンブロッキングな構成であり、かつただ一つのスイッチS11〜S44をバー状態にすることで経路が接続される。
【0017】
図8に示した4×4マトリクス光スイッチが石英系ガラス光導波路の熱光学効果を利用して実現された導波路型4×4マトリクス光スイッチの構成図を図9に示す。
【0018】
図8におけるマトリクス状の回路構成を対角線上で押しつぶしたような構成となっており、1〜4個の光スイッチ単位素子S11〜S44を並列に並べて7段接続している。
【0019】
図9におけるスイッチ単位素子S11〜S44として用いた2重ゲート型光スイッチ単位素子(特許文献1参照)の光導波路構成図を図10(a)に示し、図10(a)におけるA−A’線に沿った断面図を図10(b)に示す。
【0020】
これらの光導波路は、火炎加水分解反応堆積法と反応性イオンエッチング技術との公知の組み合わせにより、シリコン基板上に作製されている。
【0021】
即ち、光スイッチ単位素子は、互いに交差する入力光導波路11a−11bと出力光導波路12a−12bおよびバイパス光導波路13a−13bからなる構成を基本とし、入力光導波路11a−11bとバイパス光導波路13a−13bの一部と、出力光導波路12a−12bとバイパス光導波路13a−13bの一部とがそれぞれ2箇所で互いに近接して方向性結合器14a,15aおよび14b,15bを形成し、2個のマッハ・ツェンダー干渉計回路(図中破線で示す)18a,18bを構成している。
【0022】
これら方向性結合器14a,15aおよび14b,15bの結合率は信号光波長において50%となるように設計され、またマッハ・ツェンダー干渉計18a,18bの2本のアーム光導波路における光路長差が信号光波長の2分の1となるように光導波路長が設計され、これらアーム光導波路の少なくとも一方に、石英系ガラスの熱光学効果を利用して光路長差を変化させるための光位相シフタとして薄膜ヒータ16a,16bが装荷されており、薄膜ヒータ16aおよび16bがオフのとき光スイッチ単位素子としてはクロス状態、オンのときバー状態となる。
【0023】
このような構成は設計された方向性結合器14a,15aおよび14b,15bの結合率に対して、作製誤差が生じた場合にも十分な光学特性を発揮することができる。
【0024】
すなわち、クロス状態においては第1のマッハ・ツェンダー干渉計回路18a,18bで2個の方向性結合器14a,15aおよび14b,15bの結合率が50%に限らず同じである場合、干渉原理によって100%信号光は入力光導波路11a−11bを通過し、バイパス光導波路13a−13bへの光漏話は発生しない。
【0025】
しかし、仮に2個の方向性結合器14a,15aおよび14b,15bにずれが生じる、あるいは他の要因によって、バイパス光導波路13a−13bへの光漏話が生じた場合、それは第2のマッハ・ツェンダー干渉計回路18a,18bにおいて、同様の原理によってほぼ100%がバイパス光導波路13a−13bを通過し、出力光導波路11a−11bへは光漏話がほとんど発生しないことになる。
【0026】
2つのマッハ・ツェンダー干渉計回路18a,18に装荷したヒータ16a,16bをオンにし、あらかじめ設けた信号光の2分の1波長分の光路長差をそれぞれ打ち消すと、信号光は入力光導波路11a−11bからバイパス光導波路13a−13bへ導かれ、さらにバイパス光導波路13a−13bから出力光導波路11a−11bへ導かれてバー状態となる。
【0027】
このように2重ゲート型の光スイッチ単位素子は2つのマッハ・ツェンダー干渉計回路が2重の関門を形成してクロス状態における光漏話を抑制していることから、非常に高消光比の光スイッチを実現することができ、マトリクス光スイッチを用いた光通信システムヘの実用性を高めることが可能な技術である。
【0028】
図8および図9に示したマトリクス光スイッチの構成は、入力光導波路の本数および出力光導波路の本数をそれぞれ任意に選んで構成することが容易であるが、接続される入力光導波路及び出力光導波路の経路によって、通過する光スイッチ単位素子と交差光導波路の数がまちまちであることより、経路による挿入損失ばらつきが問題となる。
【0029】
この問題を解決するために考案された新しいマトリクス光スイッチの構成を図11に示す(特許文献2参照)。
【0030】
構成は入出力光導波路が同数のN×N(Nは正の整数)マトリクス光スイッチであり、ここでは4×4スイッチの構成を示す。
【0031】
即ち、四つの入力光導波路1a−1d〜4a−4d、四つの出力光導波路1c−1b〜4c−4bとを備え、光スイッチ単位素子S11〜S44はN2個に相当する16個あり、前述の構成との相違点は通過する光スイッチ単位素子および交差光導波路の数がすべての経路において同数となるパス無依存構成である上、導波路型光スイッチの回路レイアウトも図9の構成と異なってN個の並列な光スイッチ単位素子をN段(図中の例では、N=4段)並べて接続する構成となるため、図9の構成が2N−1段(2×4−1=7段)となってしまうのに対して回路長が短くなり、伝搬損失を減少させることができるという利点がある。
【0032】
マトリクス光スイッチとしての動作は前述と同様で、ただ一つの光スイッチ単位素子を駆動することにより、一つの経路が確立され、厳密ノンブロッキング構成である。
【0033】
また、光スイッチ単位素子として先に述べた2重ゲート型を採用した導波路型マトリクス光スイッチ(特許文献3参照)も実用化されており、その有用性が実証されている。
【特許文献1】特開平6−51354号公報
【特許文献2】特公平6−66982号公報
【特許文献3】特開平9−297230号公報
【特許文献4】特開平3−267902号公報
【特許文献5】特開2002−162528号公報
【非特許文献1】S. Sohma el al.,Electron‐Lett., Vol.38. No.3 , pp.127-128. 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
図10に示した2重ゲート型光スイッチ単位素子は、方向性結合器14a,15aおよび14b,15bの作製時における結合率のばらつきによる影響を受けることなく、十分な消光比を実現できる。
【0035】
しかしながら、実際にはこの構成において予めマッハ・ツェンダー干渉計のアーム光導波路に設定した半波長分の光路長差が作製時に誤差を生じてしまい、オフ(無通電)時に十分な消光が得られない場合がある。
【0036】
これは干渉計における位相がずれてしまっているためで、例えば熱光学型の光スイッチにおいてはヒータに供給する電力を調節することによって誤差を補正してクロスとバー2つの状態を設定することが可能であるが、光信号の経路をまったく切り替えない状態においても常に光スイッチを駆動している必要があり、電力コストの増加、放熱設計などシステム運用上の問題が生じてしまう。
【0037】
この問題に関する対処法としてアーム光導波路に加えた局所的な熱応力によって熱履歴現象を発生させて恒常的な屈折率変化を誘起する技術(例えば、特許文献4参照)がある。
【0038】
この方法によれば、すべての光スイッチ単位素子の特性をそろえることが可能で、スイッチング動作はオン・オフで可能となる上、高い消光比を得ることができる。
【0039】
しかしながらこの技術によってランダムに発生する作製誤差を補正するためには、作製したすべての部品について検査を行い、すべての誤差を補正する必要が生じるため、作製時間、作製コストの増加を生じる一因となっていた。
【0040】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、マトリクス光スイッチ作製時に発生する誤差によって回路特性が変動する場合において、回路の組み合わせにより作製誤差によらない十分な消光比を備えたマトリクス光スイッチを実現する技術である。
【課題を解決するための手段】
【0041】
前記目的を達成するために本発明の光スイッチ単位素子は、互いに交差する1本の入力光導波路と1本の出力光導波路、およびそれら入力光導波路と出力光導波路とを接続するバイパス光導波路からなり、バイパス光導波路と入力光導波路との間で入力光導波路を入力部とし、入力光導波路とバイパス光導波路を出力部とする1×2光スイッチを形成し、さらにバイパス光導波路と出力光導波路との間で出力光導波路およびバイパス光導波路を入力部とし、出力光導波路を出力部とする2×1光スイッチを形成し、これら1×2光スイッチおよび2×1光スイッチ間にあるバイパス光導波路の一部を入力部及び出力部とする1×1光ゲートスイッチとなっていることを特徴とする。
【0042】
前記光スイッチ単位素子は、1×2光スイッチおよび2×1光スイッチが、2本の近接した光導波路からなる方向性結合器2個と2本のアーム光導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタによって構成されるマッハ・ツェンダー干渉計型光スイッチ、もしくは2個のマルチモード光結合器と2本のアーム光導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタによって構成されるマッハ・ツェンダー干渉計型光スイッチ、1×2スイッチの入力側と2×1スイッチの出力側にY分岐光導波路を配置し、1×2スイッチの出力側と2×1スイッチの入力側が2本の近接した光導波路からなる方向性結合器を配置し、それらを結ぶ2本のアーム光導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタによって構成されるマッハ・ツェンダー干渉計型光スイッチ、Y分岐型光導波路および位相シフタを装備した構成からなる光スイッチ、2本の近接した光導波路からなる方向性結合器および少なくともいずれか1本の光導波路に装備した位相シフタによって構成される光スイッチのいずれかの形態であることを特徴とする。
【0043】
前記光スイッチ単位素子は、前述の1×2光スイッチおよび2×1光スイッチの形態によらず、1×1光ゲートスイッチが、2本の近接した光導波路からなる方向性結合器2個と2本のアーム光導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタによって構成されるマッハ・ツェンダー干渉計型光スイッチ、もしくは2個のマルチモード光結合器と2本のアーム光導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタによって構成されるマッハ・ツェンダー干渉計型光スイッチ、入力側にY分岐型光導波路、出力側に2本の近接した光導波路からなる方向性結合器を配置し、Y分岐型光導波路と方向性結合器を結ぶ2本のアーム米導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタによって構成されるマッハーツェンダー干渉計型光スイッチ、2個のY分岐型光導波路および2本のアーム光導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタによって構成される光スイッチ、2本の近接した光導波路からなる方向性結合器および少なくともいずれか1本の光導波路に装備した位相シフタによって構成される光スイッチのいずれかの形態であることを特徴とする。
【0044】
また本発明のマトリクス光スイッチは、互いに交差するM(Mは正の整数)本の入力光導波路およびN(Nは正の整数)本の出力光導波路におけるM×N個の交差部に、前記導波路型光スイッチ単位素子を配置し、該導波路型光スイッチ単位素子を前記入出力光導波路にそれぞれ接続されていることを特徴とする。
【0045】
あるいは前記導波路型光スイッチ単位素子をN(Nは正の整数)行N列に配置し、第1列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路N本をそれぞれN個の入力端子とし、第N列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路N本をそれぞれN個の出力端子とし、適切な1個の前記導波路型光スイッチ単位素子を選択、制御することによって任意の出力光導波路に接続される各入力光導波路からの経路すべてにおいて、導波路型光スイッチ単位素子を常に同数通過するように接続されており、その接続形態として1つには、第1行(2k−1)列(kは整数、2≦2k<N)に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は第2行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第1行2k列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、第N行(2k−1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は、Nが偶数のとき第(N−1)行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第N行2k列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、Nが奇数のとき第N行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第(N−1)行2k列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、第1行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は第1行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第2行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、第N行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は、Nが偶数のとき第N行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第(N−1)行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路に接続し、Nが奇数のとき第(N−1)行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第N行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路に接続されていることを特徴とする。
【0046】
また前述の入出力関係を入れ替えることによって実現されるもう1つの形態として、第1行(2k−1)列(kは整数、2≦2k<N)に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は第1行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第2行2k列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、第N行(2k−1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は、Nが偶数のとき第N行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第(N−1)行2k列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、Nが奇数のとき第(N−1)行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第N行2k列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、第1行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は第2行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第1行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、第N行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は、Nが偶数のとき第(N−1)行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第N行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路に接続し、Nが奇数のとき第N行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第(N−1)行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路に接続されていることを特徴とする。
【0047】
例えば、図1に示したように現在最も用いられている石英系ガラス光導波路を用いて作製され、前述の構成のうち1×2光スイッチ、2×1光スイッチ、1×1光ゲートスイッチがいずれも2本の光導波路を近接させて構成される方向性結合器が2個と、光路長差が信号光波長の2分の1に設定されている2本のアーム光導波路からなるマッハ・ツェンダー干渉計回路および熱光学位相シフタによって構成される導波路型光スイッチ単位素子によれば、1×2光スイッチを構成する第1のマッハ・ツェンダー干渉計回路にあらかじめ設定された光路長差によって、オフ時に入力光導波路を伝搬する信号光は方向性結合器の結合率によらず、そのまま入力光導波路を通過して光スイッチ単位素子はクロス状態となる。
【0048】
仮に、オフ時に第1のマッハ・ツェンダー干渉計回路からわずかな光漏れ(クロストーク)がバイパス光導波路に生じた場合も、2×1光スイッチを構成する第2のマッハ・ツェンダー干渉計回路において、第1のマッハ・ツェンダー干渉計回路同様にバイパス光導波路をそのまま通過するため出力光導波路へ漏れ出す信号光の割合はごく小さく、接続されていない出力光導波路へのクロストークを抑制することができる。
【0049】
しかしながら実際の光スイッチ作製においては、方向性結合器の結合率誤差に加えて、マッハ・ツェンダー干渉計回路に設定した光路長差にも誤差が生じる場合がある。
【0050】
その場合、光信号はオフ時に入力光導波路からバイパス光導波路に漏れ伝わってしまい、さらに出力光導波路へ伝搬しクロストークが発生してしまう。
【0051】
そこで、前述のとおりバイパス光導波路において、1×1光ゲートスイッチを構成する第3のマッハ・ツェンダー干渉計回路のうち一方の光導波路を1×2光スイッチ(入力)側のバイパス光導波路に接続し、他方の光導波路を2×1光スイッチ(出力)側のバイパス光導波路に接続することにより、ゲートは遮断状態となっているため作製誤差によって劣化した消光比は補完され、光スイッチ単位素子全体として高消光比、すなわち低クロストークが実現される。
【0052】
熱光学位相シフタを駆動するオン時には第1、第2および第3のマッハ・ツェンダー干渉計回路のそれぞれ一方の光導波路に入力される光信号は他方の光導波路へ導かれ、入力光導波路からバイパス光導波路、さらに開放状態の1×1光ゲートスイッチを経てバイパス光導波路から出力光導波路へと伝搬し、光スイッチ単位素子はバー状態となり、入力光導波路と出力光導波路は接続される。
【0053】
上述のような構成は作製上の誤差によって方向性結合器の結合率およびマッハ・ツェンダー干渉計回路の光路長差が設定値とずれてしまい、マッハ・ツェンダー干渉計回路1個当たりの消光比が劣化した場合でも、作製行程の追加、光スイッチ駆動回路の増設などを必要とせず、光回路設計のみでクロストークの増加を抑制し、従来と同等の光学特性を実現することが可能となる。
【0054】
すなわち本発明は光スイッチ単位素子がクロス状態の場合において作製誤差によって発生するクロストークを回路構成の工夫によって低減することを主眼としてなされたものであり、したがって前述のマッハ・ツェンダー干渉計回路を構成する光結合器がマルチモード光結合器である場合、光結合器の一方がY分岐方光導波路で他方が方向性結合器である場合、もしくは光スイッチ単位素子を構成する1×2光スイッチあるいは2×1光スイッチがY分岐型光スイッチあるいは方向性結合器型光スイッチである場合にも適用できるものであり、また1×1光ゲートスイッチとして1×2スイッチあるいは2×1スイッチとして用いられた前述のマッハ・ツェンダー干渉計回路の他、2個のY分岐光導波路と2本のアー一ム光導波路で構成される光スイッチあるいは方向性結合器型光スイッチの一方のポートを使用した光スイッチである場合にも適用できるものである。
【0055】
またこれらの光スイッチ単位素子を使用して、互いに交差するM(Mは正の整数)本の入力光導波路およびN(Nは正の整数)本の出力光導波路によって構成される導波路型マトリクス光スイッチの低クロストーク化を実現することができる。
【0056】
さらにN(Nは正の整数)本の入力光導波路とN(Nは正の整数)本の出力光導波路に対してこれら光スイッチ単位素子をN行N列に配置し、適切な1個の導波路型光スイッチ単位素子を選択、制御することによって任意の出力光導波路に接続される各入力光導波路からの経路すべてにおいて、導波路型光スイッチ単位素子を常に同数通過するように接続されている導波路型マトリクス光スイッチの低クロストーク化も実現することができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明に係るマトリクス光スイッチを構成する光スイッチ単位素子は、互いに交差する入力光導波路、出力光導波路およびバイパス光導波路からなり、入力光導波路とバイパス光導波路で1×2光スイッチを構成し、出力光導波路とバイパス光導波路で2×1光スイッチを構成し、前記1×2光スイッチと前記2×1光スイッチの間のバイパス光導波路に1×1光ゲートスイッチを備えることによって、オフ時に作製誤差によって出力光導波路に発生する光信号漏れ(クロストーク)を極めて低く抑制することができる。
【0058】
つまり、作製後の補正処理や駆動回路の増設を必要とすることなく、作製精度を大幅に緩和しつつ消光比の優れたマトリクス光スイッチを容易に提供することができる。
【0059】
また光スイッチを形成する材料および光導波路特性によってマッハ・ツェンダー干渉計回路やY分岐光導波路、方向性結合器などさまざまな回路形態を組み合わせて使用することも可能である。
【0060】
本発明の光スイッチ単位素子およびそれを用いたマトリクス光スイッチは、低コストかつ実用性が高い光スイッチデバイスを提供する非常に有効な手段であり、さまざまな光信号の交換、切替を必要とする大容量光通信網の発展に大きく寄与するものであると期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
本発明を実施するための最良の形態は、以下に示す実施例1〜8である。
【0062】
以下の実施例では、シリコン基板上に形成した石英系単一モード光導波路を使用し、光スイッチの構成要素として熱光学効果を利用したマッハ・ツェンダー干渉計回路型光スイッチを採用した導波路型光スイッチ単位素子および導波路型マトリクス光スイッチについて説明する。
【0063】
これはこの組み合わせが安定かつ集積化が容易であるためで、しかも石英系光ファイバとの整合性に優れ、低損失な光スイッチを提供できるためである。
【0064】
しかしながら本発明はこれらの組み合わせに限定されるものではない。
【実施例1】
【0065】
本発明に係るN×Nマトリクス光スイッチの実施例1としての4×4マトリクス光スイッチの概略構成を図1および図11に示す。
【0066】
図11はマトリクス光スイッチの論理構成、図1はその構成要素である光スイッチ単位素子の構成図である。
【0067】
図1(a)は本発明に係る光スイッチ単位素子の回路構成平面図、図1(b)は図1(a)に示した線分B−B’に沿って切った断面図である。
【0068】
図11に示すマトリクス光スイッチは、前述した通り、通過する光スイッチ単位素子の数が経路によらない、パス無依存構成を採用しており、4×4=16個の光スイッチ単位素子を4行4列配置した構成となっている。
【0069】
本実施例に係る光スイッチ単位素子は、図1に示すように、シリコン基板1上に作製され、石英系ガラスクラッド2に埋め込まれた構造の入力光導波路11a−11bと出力光導波路12a−12bが互いに交差しており、それらの近傍に配置されたバイパス光導波路13a−13bを基本要素とする。
【0070】
バイパス光導波路13a−13bの一部は入力光導波路11a−11bと2箇所で間隔数μmにまで近接して2個の方向性結合器14aおよび15aを形成し、2本の光導波路間でマッハ・ツェンダー干渉計回路(1×2光スイッチ)18aをなす。
【0071】
方向性結合器14aおよび15aの結合率は、結合部における光導波路の間隔、長さを調節することにより50%となるように設計されている。
【0072】
マッハ・ツェンダー干渉計回路18aのアーム部分となる光導波路は、バイパス光導波路13a−13b側の実効光路長が入力光導波路11a−11b側に対して信号光波長(実施例1においては1.55μm)の2分の1、すなわち0.775μm相当だけ長くなるように設計されている。
【0073】
また図1(b)に示すように、実効光路長が短い入力光導波路11a−11b側のクラッド層2でアーム光導波路上の表面には、熱光学効果を利用する光位相シフタとして薄膜ヒータ16aが装荷されている。
【0074】
同様に、バイパス光導波路13a−13bの別の一部は出力光導波路12a−12bと2箇所で近接して2個の方向性結合器14bおよび15bを形成し、2本の光導波路間でマッハ・ツェンダー干渉計回路(2×1光スイッチ)18bをなす。
【0075】
方向性結合器14bおよび15bの結合率は50%となるように設計され、マッハ・ツェンダー干渉計回路のアーム光導波路は、バイパス光導波路13a−13b側の実効光路長が出力光導波路12a−12b側に対して信号光波長(実施例1においては1.55μm)の2分の1、すなわち0.775μm相当だけ長くなるように設計されている。
【0076】
また実効光路長が短い出力光導波路12a−12b側のクラッド層2でアーム光導波路上の表面には、熱光学効果を利用した光位相シフタとしての薄膜ヒータ16bが装荷されている。
【0077】
また、2つのマッハ・ツェンダー干渉計回路18a,18bの間におけるバイパス光導波路13a−13bのさらに別の一部は、2本の干渉用光導波路17aと17bが近接して2個の方向性結合器14cおよび15cを形成し、2本の光導波路間でなされるマッハ・ツェンダー干渉計回路(1×1光ゲートスイッチ)18cに接続されている。
【0078】
方向性結合器14cおよび15cの結合率は50%となるように設計され、マッハ・ツェンダー干渉計回路18cのアーム光導波路は、一方の光導波路17bが他方の光導波路17a側に対して信合光波長(実施例1においては1.55μm)の2分の1、すなわち0.775μm相当だけ長くなるように設計されている。
【0079】
また実効光路長が短い光導波路17a側のクラッド層2でアーム光導波路上の表面には熱光学効果を利用した光位相シフタとしての薄膜ヒータ16cが装荷されている。
【0080】
入力光導波路11a−11bと出力光導波路12a−12bは互いに交差しており、交差部19にてクロストークおよび放射損失を無視できる角度θで交差している。
【0081】
薄膜ヒータ16a,16bおよび16cがオフ(無通電)時に光導波路の端点11aから入力した信号光は、マッハ・ツェンダー干渉計回路18aにおいて光導波路11a−11bを伝搬して通過し、光導波路12a−12bとの交差部19を越えて光導波路端11bへ出力される。
【0082】
また、光導波路の端点12aから入力した信号光は、光導波路11a−11bとの交差部19を越えて、マッハ・ツェンダー干渉計回路18bにおいて光導波路12a−12bを伝搬して通過し光導波路端12bへ出力される。
【0083】
すなわちマトリクス光スイッチにおいて、光スイッチ単位素子のオフ時の動作はクロス経路に接続された状態となる。
【0084】
このとき、入力側の1×2スイッチ18aおよび出力側の2×1スイッチ18bにおける方向性結合器14a,15a,14bおよび15bの結合率が設計値の50%からずれた場合においても、マッハ・ツェンダー干渉計回路の2本のアーム光導波路における実効光路長差が信号光波長の2分の1に設定されていることにより、伝搬する光導波路をそのまま通過して他方の光導波路へは移行しないため、原理上高い消光比を実現できる。
【0085】
また、仮に光導波路作動時の欠陥や誤差による高次モードの影響などから干渉に寄与しない光パワーが発生し、1×2スイッチ18aにおいて入力光導波路11a−11bからバイパス光導波路13a−13bへわずかな光漏れ(クロストーク)となった場合も、後段の2×1スイッチ18bにおいて、同等の消光特性が得られるので、出力光導波路12a−12bへのクロストークを抑制することができる。
【0086】
さらに、マッハ・ツェンダー干渉計回路のアーム光導波路に設定されている実効光路長差が設計や作製の誤差が原因となってさらなるクロストークが発生した場合にも、1×2スイッチ18aおよび2×1スイッチ18bの間のバイパス光導波路13a−13bに接続されている1×1ゲートスイッチ18cによって1×2スイッチ18aで発生したクロストークは遮断される。
【0087】
仮に前述のような高次モードの影響などによりわずかなクロストークがゲートを通過した場合でも2×1スイッチ18bによって出力光導波路12a−12bへの伝搬を阻止できるため、光スイッチ単位素子として非常に高い消光比を実現できる。
【0088】
ここで本発明の特徴として強調すべき点は、設計あるいは作製の誤差によって光スイッチの動作点が変動し、クロストーク特性が劣化あるいは不均一になってしまう場合においても、作製後の新たな補正処理やオフセット動作のための駆動回路の増設を必要とすることなく、設計の工夫のみで特性劣化を緩和できることにある。
【0089】
したがって、光スイッチの構成として、上述のようなマッハ・ツェンダー干渉計回路に限らず、Y分岐光導波路やマルチモードカプラーあるいは方向性結合器を構成要素とする光スイッチ単位素子およびそれによって構成される導波路型マトリクス光スイッチにおいても同様の効果が得られるということになる。
【0090】
薄膜ヒータ16a,16bおよび16cが互いに連動してオン(通電)状態となって適切な電力が加えられた場合には、3つのマッハ・ツェンダー干渉計回路18a,18bおよび18cにおけるアーム光導波路の実効光路長差は熱光学効果によって零となり、一方の光導波路に入力された光信号は他方の光導波路へ導かれて伝搬する。
【0091】
すなわち、1×2光スイッチ18aにおいて光導波路端11aから入力した光信号はバイパス光導波路13a−13bへと導かれ、また1×1光ゲートスイッチ18cにおいて入力側に接続された光導波路17bから出力側に接続された光導波路17aに導かれ、さらに2×1光スイッチ18bにおいてバイパス光導波路13a−13bから出力光導波路12a−12bへと導かれ、最終的に光導波路端12bに出力される。
【0092】
これによって光スイッチ単位素子はバー経路に接続され、マトリクス光スイッチにおいて入力光導波路と出力光導波路が接続されることになる。
【0093】
オン状態では方向性結合器14a,15a,14b,15b,14cおよび15cの結合率が50%からずれてしまった場合、光導波路端11aから入力した信号光が1×2光スイッチ18aにおいて100%バイパス光導波路13a−13bに導かれず、光導波路11a−11bへ漏れ出した信号光成分が交差部19を経て光導波路端11bへと伝搬してしまう。
【0094】
しかしながら、この漏れた成分は結局、図4において使用されない光導波路端1d,2d,3dおよび4dに出力されるため、光スイッチ単位素子でのごく僅かな損失増加はあるものの、マトリクス光スイッチとして消光比の劣化とはならない。
【0095】
また、3つのマッハ・ツェンダー干渉計回路18a,18bおよび18cのアーム光導波路に設定した信号光波長の2分の1の実効光路長差が設計とずれてしまった場合には、それぞれの干渉計における動作点を適切に設定すればまったく問題はない。
【0096】
あるいはシステム設計上、単一または数個の電源でマトリクス光スイッチを制御する必要が生じた場合には各光スイッチ単位素子を最適な動作点で駆動することはできなくなるが、その場合においても生じる損失増加はごく僅かである。
【0097】
本実施例1における4×4マトリクス光スイッチは、図1(a)および図1(b)に示したとおり、厚さ1mm、直径4インチのシリコン基板1上に石英系ガラスによって形成されるクラッド層2および埋め込み型の単一モード光導波路を、SiC14やGeC14などの原料ガスの火炎加水分解反応を利用した石英系ガラス膜の堆積技術と反応性イオンエッチング技術の組み合わせにより作製し、薄膜ヒータ16a,16b,16cおよび給電のための電極(図示省略)をクラッド層2表面上に真空蒸着およびパターン化によって作製した。
作製した光導波路のコア寸法は4.5μm×4.5μmであり、クラッド層2との比屈折率差Δは1.5%とした。
【0098】
本実施例1における4×4マトリクス光スイッチは、この光導波路を用い、直線光導波路および曲がり半径2mmの曲線光導波路を組み合わせることによって形成される。
【0099】
光スイッチ単位素子およびそれらを接続する部分における交差光導波路の角度θは40度とした。
【0100】
また光スイッチ単位素子におけるマッハーツェンダー干渉計回路18a,18bおよび18cはアーム光導波路の実効光路長差が信号光波長1.55μmの2分の1である0.775μmとなるように設定した。
【0101】
石英系ガラスの屈折率が1.45であることを考慮すれば、実際のアーム光導波路長の差は0.775μm/1.45=0.534μmである。
【0102】
熱光学効果による位相シフタとしてクラッド層2の表面上に形成した薄膜ヒータ16a,16b,16cは厚さ0.1μm、幅30μm、長さ1mm、とした。
【0103】
3つのマッハ・ツェンダー干渉計回路18a,18bおよび18cと交差光導波路によって構成される本実施例1の光スイッチ単位素子は全長11mmであった。
【0104】
またこの光スイッチ単位素子を組み合わせて形成される4×4マトリクス光スイッチのチップサイズは10mm×80mmとなった。
【0105】
この4×4マトリクス光スイッチチップをダイシングソーによって切り出した後、放熱板をシリコン基板1の下部に取り付け、入出力光導波路端にはシングルモード光ファイバアレイを接続した。
【0106】
光スイッチチップの給電端子は電気コネクタを設置した外部電気配線板と電気的に接続してモジュールが完成した。
【0107】
電気コネクタに電源を接続し、給電すべき薄膜ヒータ16a,16b,16cを適切に選択することによって4入力4出力のポート間を任意に切替、接続する光スイッチ動作が確認された。
【0108】
任意の入出力ポートを接続するためにオン状態となった光スイッチ単位素子に装荷された3つの薄膜ヒータ16a,16bおよび16cに給電した電力は1つにつき0.4Wであったので、各光スイッチ単位素子の消費電力は1.2Wであり、4×4マトリクス光スイッチ全体では同時に駆動する光スイッチ単位素子が4個であるので、全消費電力は4.8W程度であった。
【0109】
マトリクス光スイッチの入力光導波路端から出力光導波路端に至る光ファイバ接続損失を含めた挿入損失は2dB程度で、マトリクス光スイッチ全体での消光比は60dB以上であった。
【0110】
特に消光比は、製造誤差により方向性結合器の結合率が50%±10%程度と大きくずれ、設定した実効光路長差が設定した0.775μmに対して10〜20%ずれた場合においても優れた消光特性を示し、本発明に係るマトリクス光スイッチが製造誤差に非常に強いことを示した。
【0111】
また、比較のため図2に示したような互いに交差するそれぞれ4本の入出力光導波路を基本として構成されるクロスバー型4×4マトリクス光スイッチも作製した。
【0112】
使用した光導波路の仕様は前述のパス無依存型4×4マトリクス光スイッチと同様である。
【0113】
本実施例による4×4マトリクス光スイッチは7段の光スイッチ群を集積した構成となっており、給電のための電極を含めたチップサイズは10mm×130mmであった。
【0114】
放熱板、光ファイバアレイを取り付けてモジュール化し、光学特性を測定したところ、マトリクス光スイッチとして挿入損失は1〜3dB、消光比は60dB以上であった。
【0115】
また、マトリクス光スイッチ全体の消費電力は4.8Wであった。
【0116】
このように、本発明における光スイッチ単位素子を採用することによりマトリクス光スイッチの構成にかかわらず製造誤差に強い優れた消光特性を示した。
【実施例2】
【0117】
本発明に係るM×N(M,Nはそれぞれ異なる正の整数)マトリクス光スイッチの実施例として4×8マトリクス光スイッチの構成を図2に示す。
【0118】
図中、1a−1d,2a−2d〜4a−4dは入力光導波路、1c−1b,2c−2b〜8c−8bは出力光導波路であり、4×8=32箇所の交差点には光スイッチ単位素子S11〜S48が配置されている。
【0119】
本実施例において使用した光導波路の仕様やチップ、モジュールの作製方法は実施例1における4×4マトリクス光スイッチと同様である。
【0120】
実施例1に対して、本実施例のマトリクス光スイッチは入出力光導波路の本数が異なることが特徴である。マトリクス構成はクロスバー型とした。
【0121】
この構成は任意の入出力光導波路本数が選べるという点でM×Nマトリクス光スイッチの実現に適しており、それぞれ1〜4個の光スイッチ単位素子の群を11段接続して作製される。
【0122】
本実施例の4×8マトリクス光スイッチの基板上での回路配置図の概略を図3に示す。
【0123】
図3に示すように、入力光導波路束70aから出力光導波路束70bに至る全11段の光スイッチ単位素子群は90度に曲げられた曲線光導波路および直線光導波路を適切に接続して、回路の全長をできるだけ短くかつ全体のサイズが小さくなるように設計されていることを特徴とする配置である。
【0124】
ここで、本実施例において用いている光導波路の仕様はクラッドとコアの比屈折率差Δが1.5%であり、それと接続されるシングルモード光ファイバとはコアを伝搬する光信号のスポットサイズに違いがあることから、結合損失が発生してしまうという問題がある。
【0125】
そこで、本実施例においてはテーパ構造を持つスポットサイズ変換光導波路(図示省略、特許文献5参照)を入出力光導波路端面付近に採用し、シングルモード光ファイバとの結合損失を低減することで、マトリクス光スイッチチップ全体としての挿入損失を低く抑えている。
【0126】
本実施例の4×8マトリクス光スイッチは厚さ1mmのシリコン基板上に作製され、給電端子および電気配線を含めたチップサイズは65mm×70mmであった。
【0127】
光スイッチ単位素子S11〜S48の回路構成、設計仕様およびモジュール作製方法は実施碗1と同様である。
【0128】
電気コネクタに電源を接続し、給電すべきヒータを適切に選択することによって4入力8出力のポート間を任意に切替、接続する光スイッチ動作が確認された。
【0129】
任意の入出力ポートを接続するためにオン状態となった光スイッチ単位素子に装荷された3つの薄膜ヒータ16a,16bおよび16cに給電した電力は1つにつき0.4Wであったので、各光スイッチ単位素子の消費電力は1.2Wであり、4×8マトリクス光スイッチ全体では同時に駆動する光スイッチ単位素子が4個であるので、全消費電力は4.8W程度であった。
【0130】
マトリクス光スイッチの入力光導波路端から出力光導波路端に至る光ファイバ接続損失を含めた挿入損失は4dB以下で非常に低損失な値が得られた。
【0131】
また、マトリクス光スイッチ全体での消光比は方向性結合器や実効光路長差の製造後差が発生しても60dB以上と優れた値を示した。
【実施例3】
【0132】
本発明に係る8×8マトリクス光スイッチの構成を図4に示す。
【0133】
本実施例ではパス無依存構成を採用し、光スイッチチップ上での回路レイアウトは実施例2と同様に曲線光導波路および直線光導波路を適切に接続して光スイッチ単位素子群を畳み込むように配置し、回路長および全体のサイズが小さくなるように設計した。
【0134】
本実施例において採用した光スイッチ単位素子の回路構成およびその構造を図5に示す。
【0135】
図5(a)は光スイッチ単位素子の平面図、図5(b)は図5(a)に示した線分C−C’に沿って切った断面図、図5(c)は線分D−D’に沿って切った断面図である。
【0136】
図5に示したとおり、本実施例ではマッハ・ツェンダー干渉計回路18a,18b,18cのアーム光導波路部分に沿ってそれぞれ3箇所に断熱溝20a,20bおよび20cを形成したものであり、その他の構成は前述した図1に示す光スイッチ単位素子の回路構成と同様である。
【0137】
本実施例で採用する断熱溝構造は、薄膜ヒータ16a,16bおよび16cから発生する熱が基板水平方向に拡散するのを断熱溝20a,20bおよび20cで抑制し、効率的にコアの温度を上昇させて屈折率変化を起こすことができるようになるため、熱光学型の光スイッチの低消費電力化に非常に有効な技術である(非特許文献1参照)。
【0138】
本実施例においては断熱溝同士の間隔やクラッド層2の厚さを調節することにより、光路の切替に必要となる電力が薄膜ヒータ1つ当たり従来の25%となる0.1Wとなった。
【0139】
また、断熱溝20a,20bおよび20cを形成することによって隣接する光導波路への熱の伝搬を遮断できるので導波路間隔を狭めることができ、光回路の小型化も可能となる。
【0140】
具体的には従来の導波路間隔の半分以下に狭めることが可能となった。
【0141】
本実施例で作製した8×8マトリクス光スイッチは実施例1および2における光導波路と同様の仕様で作製し、また実施例2で用いたスポットサイズ変換光導波路も採用した。
【0142】
なお、断熱溝20a,20bおよび20cは反応性イオンエッチング技術によって形成した。
【0143】
厚さ1mmのシリコン基板上に作製したスイッチチップのサイズは50mm×50mmで、従来0.75%Δの光導波路で作製されていた8×8マトリクス光スイッチの面積比で半分程度まで小型化を実現した。
【0144】
実施例1および2と同様の工程を経てモジュールを作製し、電気コネクタに電源を接続して給電すべきヒータを適切に選択することにより、8入力8出力のポート間を任意に切替、接続する光スイッチ動作が確認された。
【0145】
各光スイッチ単位素子の消費電力は0.3Wであり、8×8マトリクス光スイッチ全体では同時に、駆動する光スイッチ単位素子が8個であるので、全消費電力は2.4W程度と非常に低消費電力であった。
【0146】
マトリクス光スイッチの入力光導波路端から出力光導波路端に至る光ファイバ接続損失を含めた挿入損失は5dB程度であった。
【0147】
また、マトリクス光スイッチ全体での消光比は方向性結合器や実効光路長差の製造後差が発生しても60dB以上と優れた値を示した。
【0148】
以上、本発明の実施例1〜3では、図1に示したように光スイッチ単位素子を構成する1×1光ゲートスイッチ18cが消光比を優先するためにマッハ・ツェンダー干渉計回路の対角の光導波路17bから17aに接続されている部分について、回路の作製誤差が少なく、設計上の回路対称性を重要とする場合においては1×1光ゲートスイッチ18cの入力側、出力側のいずれも光導波路17aに接続することで同様の効果を得ることは可能である。
【0149】
ただし、方向性結合器の結合率誤差が大きい場合は十分な消光比が得られない場合もあるので、用途と状況に応じて適宜設計指針を決定する必要がある。
【0150】
また、実施例1〜3では信号光波長が1.55μmである場合を取り扱ったが、本発明の構成手法によれば信号光波長が例えば1.3μmである場合にも適用できることは明らかであり、使用する波長帯によって適切な設計を行うことができる。
【0151】
また、実施例1〜3では2個の方向性結合器からなるマッハ・ツェンダー干渉計回路を基本として構成される光スイッチ単位素子を用いたが、マッハ・ツェンダー干渉計を形成する要素は、例えばマルチモード光結合器あるいはY分岐型光導波路であっても良い。
【0152】
つまり目的とする効果を得るための手段として、回路構成はさまざまな組み合わせが可能であることを表しており、以下、実施例によってそれらを示す。
【実施例4】
【0153】
図4に示した8×8マトリクス光スイッチの光スイッチ単位素子について、1×1光ゲートスイッチの入力側を図1における光導波路17aに接続し、出力側も同様に光導波路17aに接続した形態からなる、新たな回路構成の8×8マトリクス光スイッチモジュールに関する実施例である。
【0154】
即ち、図12に示すように、実施例4は実施例1の変形例であり、通常、消光比を大きく取るためにマッハ・ツェンダー干渉計回路はクロスに接続(入力と出力で接続される導波路が図面において上下異なる)されるところを、真ん中の1×1光ゲートスイッチ18cのみ、スルーに接続(入力と出力で接続される導波路が同じ)した例である。
【0155】
但し、薄膜ヒータ16cがオフ(無通電)のとき、アーム光導波路17a,17bの実効光路長差が0となり、薄膜ヒータ16cがオン(通電)のとき、アーム光導波路17a,17bの実効光路長差が信号光波長1.55μmの2分の1である0.775μmとなるように設定する。
【0156】
図1に示す実施例1の場合、1×1光ゲートスイッチ18cは、方向性結合器14cがどうしても非対称な設計になってしまうのに比較し、回路設計上対称性を極力保ちたい場合には、実施例4が有効である。
【0157】
その他の回路構成、レイアウト、作製方法については実施例3と同様である。
【0158】
本実施例で作製された8×8マトリクス光スイッチモジュールは、電気コネクタに電源を接続して給電すべきヒータを適切に選択することにより、8入力8出力のポート間を任意に切替、接続する光スイッチ動作が確認された。
【0159】
消費電力、挿入損失は実施例3と同様であり、マトリクス光スイッチ全体での消光比は55dB以上であった。
【0160】
実施例3と比較して消光比ではやや劣ったものの、設計上、回路の対称性が良いため、作製誤差が少なく、特に挿入損失の均一性は、実施例3において最大と最小損失の差が1dBを超えるものもあったのに対して、0.5dB程度と改善された。
【実施例5】
【0161】
図4に示した8×8マトリクス光スイッチの光スイッチ単位素子について、1×2光スイッチ、2×1光スイッチ、1×1光ゲートスイッチをそれぞれ構成するマッハ・ツェンダー干渉計回路の、光結合器部分をマルチモード光結合器とした形態からなる、新たな回路構成の8×8マトリクス光スイッチモジュールに関する実施例である。
【0162】
その他の回路構成、レイアウト、作製方法については実施例3と同様である。
本実施例で作製された8×8マトリクス光スイッチモジュールは、電気コネクタに電源を接続して給電すべきヒータを適切に選択することにより、8入力8出力のポート間を任意に切替、接続する光スイッチ動作が確認された。
【0163】
消費電力は実施例3と同様であり、挿入損失はやや高く7dB程度であった。
【0164】
マトリクス光スイッチ全体での消光比は60dB以上で優れた値を示した。
【0165】
挿入損失はやや高かったものの、光結合器の結合率均一性良く、回路も若干小さくなるため、デバイスを小型化し、挿入損失の均一性を上げるためには有効な手段であった。
【実施例6】
【0166】
図4に示した8×8マトリクス光スイッチの光スイッチ単位素子について、1×2光スイッチを構成するマッハ・ツェンダー干渉計回路の入力側光結合器、2×1光スイッチを構成するマッハ・ツェンダー干渉計回路の出力側光結合器、1×1光ゲートスイッチを構成するマッハ・ツェンダー干渉計回路の入力側光結合器をY分岐型光導波路とし、いずれも他方を方向性結合器とした形態からなる、新たな回路構成の8×8マトリクス光スイッチモジュールに関する実施例である。
【0167】
その他の回路構成、レイアウト、作製方法については実施例3と同様である。
【0168】
本実施例で作製された8×8マトリクス光スイッチモジュールは、電気コネクタに電源を接続して給電すべきヒータを適切に選択することにより、8入力8出力のポート間を任意に切替、接続する光スイッチ動作が確認された。
【0169】
消費電力は実施例3と同様であり、挿入損失は6dB程度であった。
【0170】
マトリクス光スイッチ全体での消光比は60dB以上で優れた値を示した。
【0171】
マッハ・ツェンダー干渉計回路を構成する一方の光結合器をY分岐型光導波路とすることで結合率の製造誤差が改善され、実施例3と同程度の光学特性で、挿入損失の均一性が向上した。
【0172】
以上、実施例1〜6においては光スイッチ単位素子を構成する3つのマッハ・ツェンダー干渉計回路の光結合器部分における回路構成が、いずれも同様の構成となっているが、要求される光学仕様および光スイッチ回路規模、回路レイアウトなどに応じて、実施例1〜6で述べたマッハ・ツェンダー干渉計回路のいずれかの形態を任意に組み合わせて、光スイッチ単位素子を構成しても同様の効果が得られる。
【0173】
また実施例1〜6ではシリコン基板上の石英系ガラスを基本とするマトリクス光スイッチについて説明したが、マッハーツェンダー干渉計回路を用いた光スイッチを構成できる他の材料、例えば高分子光導波路やイオン拡散型光導波路、更には電気光学効果を用いる位相シフタを備えたニオブ酸リチウム系光導波路などにも本発明が適用可能である。
【0174】
また実施例1〜6ではマッハ・ツェンダー干渉計回路を要素とした光スイッチ単位素子、およびそれによって構成されるマトリクス光スイッチについて述べたが、光スイッチ単位素子を構成する要素は例えば、Y分岐光導波路やマルチモードカプラーあるいは方向性結合器であっても同様の効果が得られるということを重ねて述べる。
【実施例7】
【0175】
その一実施例としてシリコン基板1上に作製される高分子光導波路32を用い、Y分岐光導波路30および熱光学位相シフタ31を要素とする光スイッチ単位素子の概略を図6に示す。
【0176】
図6(a)は回路平面図、図6(b)は図6(a)における線分E−E’の断面図、図6(c)は線分F−F’の断面図である。
【0177】
即ち、シリコン基板1上に作製された高分子光導波路32により、互いに交差する入力光導波路及び出力光導波路と、それらの近傍に配置されたバイパス光導波路を構成している。
【0178】
バイパス光導波路と入力光導波路とがY分岐光導波路30を形成すると共にその上に装備された熱光学位相シフタ31により1×2光スイッチが構成され、バイパス光導波路と出力光導波路とがY分岐光導波路30を形成すると共にその上に装備された熱光学位相シフタ31により2×1光スイッチが構成され、更に、二つのY分岐光導波路30とその間の2本のアーム導波路の一方に装備された熱光学位相シフタ31により1×1光ゲートスイッチが構成されている。
【0179】
つまり、実施例1と同様に、パス無依存構成で光スイッチ単位素子を組み合わせて4×4マトリクス光スイッチを作製したものであり、光学特性を調べたところ、60dB以上の消光比を得た。
【実施例8】
【0180】
また、ニオブ酸リチウム系光導波路は電気光学効果による導波路型光スイッチを作製することが出来る。
【0181】
この場合、回路要素としては方向性結合器を用い、近接する2本の導波路の間に電界をかけることで、経路切替を行う。
【0182】
本発明の実施例8に係るニオブ酸リチウム系光導波路を用いた光スイッチ単位素子の概略を図7に示す。
【0183】
図7(a)は回路平面図、図7(b)は図7(a)における線分G−G’の断面図、図7(c)は線分H−H’の断面図である。
【0184】
図7に示すように、本実施例に係る光スイッチ単位素子は、ニオブ酸リチウム系基板40上に作製されるニオブ酸リチウム系光導波路コア44により、互いに交差する入力導波路と出力導波路、及びその近傍のバイパス導波路を構成し、絶縁膜45で覆ったものである。
【0185】
バイパス光導波路と入力光導波路とが方向性結合器41を形成すると共にその近接する2本の導波路上に装備された電界印加電極43a,43bにより1×2光スイッチが構成され、バイパス光導波路と出力光導波路とが方向性結合器41を形成すると共にその近接する2本の導波路上に装備された電界印加電極43a,43bにより2×1光スイッチが構成され、更に、その間の2本の導波路及び近接する2本の導波路上に装備された電界印加電極43a,43bにより1×1光ゲートスイッチが構成されている。
【0186】
つまり、実施例1と同様に、パス無依存構成で光スイッチ単位素子を組み合わせて4×4マトリクス光スイッチを作製したものであり、光学特性を調べたところ、60dB以上の消光比を得た。
【0187】
なお、これらの回路要素を任意に組み合わせて光スイッチ単位素子を構成することも可能であることは勿論であり、いずれの組み合わせを用いて構成しても同様の効果を得ることが可能である。
【0188】
このように説明したように、本発明の導波路型光スイッチ単位素子は、図1に示すように、従来の2×2スイッチに1×1ゲートスイッチ18cを追加したところに特徴があり、本発明の導波路型マトリックス光スイッチは、前記の導波路型光スイッチ単位素子を構成単位としてマトリックス光スイッチを構成した点に特徴がある。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明は、光ルータなど光通信システムにおいて用いられる光スイッチとして広く利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明の実施例1における1×2光スイッチ、2×1光スイッチおよび1×1光スイッチを備えた光スイッチ単位素子の構成を示す平面図および断面図である。
【図2】本発明の実施例2における4×8マトリクス光スイッチの構成を示す全体平面図である。
【図3】本発明の実施例2における4×8マトリクス光スイッチチップの回路配置の概略を示す平面図である。
【図4】本発明の実施例3における8×8マトリクス光スイッチの構成を示す全体平面図である。
【図5】本発明の実施例3における1×2光スイッチ、2×1光スイッチおよび1×1光スイッチを備え、断熱溝構造を有する光スイッチ単位素子の構成を示す平面図および断面図である。
【図6】本発明の一実施形態であるY分岐光導波路を構成要素とした光スイッチ単位素子の平面図である。
【図7】本発明の一実施形態である方向性結合器を構成要素とした光スイッチ単位素子の平面図である。
【図8】4×4マトリクス光スイッチの基本構成の一例を示す全体平面図および各光スイッチ単位素子の動作状態を説明する図である。
【図9】本実施例1の一形態である図1の4×4マトリクス光スイッチを石英系ガラス光導波路で実現した導波路型4×4マトリクス光スイッチの全体平面図である。
【図10】従来の2重ゲート型光スイッチ単位素子の平面図および断面図である。
【図11】本実施例1の一形態であるパス無依存構成4×4マトリクス光スイッチの構成を示す全体平面図である。
【図12】本発明の実施例4における1×2光スイッチ、2×1光スイッチおよび1×1光スイッチを備えた光スイッチ単位素子の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0191】
1a−1d,2a−2d〜8a−8d 入力光導波路
1c−1b,2c−2b〜8c−8b 出力光導波路
1 シリコン基板
2 クラッド層
11a−11b 入力光導波路
12a−12b 出力光導波路
13a−13b バイパス光導波路
14a,14b,14c,15a,15b,15c 方向性結合器
16a,16b,16c 薄膜ヒータ(熱光学位相シフタ)
17a,17b 1×1光ゲートスイッチとしてのマッハ・ツェンダー干渉計回路を形成する光導波路
18a,18b,18c マッハ・ツェンダー干渉計回路
19 光導波路交差部
20a,20b,20c 断熱溝
30 Y分岐光導波路
31 薄膜ヒータ(熱光学位相シフタ)
32 高分子光導波路
40 ニオブ酸リチウム系基板
41 方向性結合器(1×2スイッチまたは2×1スイッチ)
42 方向性結合器(1×1スイッチ)
43a 電界印加電極
43b 電界印加電極
44 ニオブ酸リチウム系光導波路コア
45 絶縁膜
70a 入力光導波路束
70b 出力光導波路束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する1本の入力光導波路および1本の出力光導波路、さらに前記入力光導波路と前記出力光導波路とを接続するバイパス光導波路からなり、前記バイパス光導波路と前記入力光導波路との間で、前記入力光導波路を入力部となし、前記入力光導波路および前記バイパス光導波路を出力部とする1×2光スイッチと、前記バイパス光導波路と前記出力光導波路との間で、前記出力光導波路および前記バイパス光導波路を入力部となし、前記出力光導波路を出力部とする2×1光スイッチと、前記1×2光スイッチおよび前記2×1光スイッチ間の前記バイパス光導波路を入力部および出力部とする1×1光ゲートスイッチを備えていることを特徴とする導波路型光スイッチ単位素子。
【請求項2】
前記1×2光スイッチおよび前記2×1光スイッチが、2本の近接した光導波路からなる方向性結合器2個と2本のアーム光導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタとによって構成されるマッハ・ツェンダー干渉計型光スイッチであることを特徴とする請求項1記載の導波路型光スイッチ単位素子。
【請求項3】
前記1×2光スイッチおよび前記2×1光スイッチが、2個のマルチモード光結合器と2本のアーム光導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタとによって構成されるマッハ・ツェンダー干渉計型光スイッチであることを特徴とする請求項1記載の導波路型光スイッチ単位素子。
【請求項4】
前記1×2光スイッチの入力側および前記2×1光スイッチの出力側にY分岐型光導波路、前記1×2光スイッチの出力側および前記2×1光スイッチの入力側に2本の近接した光導波路からなる方向性結合器を配置し、Y分岐型光導波路と方向性結合器を結ぶ2本のアーム光導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタによって構成されるマッハ・ツェンダー干渉計型光スイッチであることを特徴とする請求項1記載の導波路型光スイッチ単位素子。
【請求項5】
前記1×2光スイッチおよび前記2×1光スイッチが、Y分岐型光導波路および位相シフタを装備した構成からなる光スイッチであることを特徴とする請求項1記載の導波路型光スイッチ単位素子。
【請求項6】
前記1×2光スイッチおよび前記2×1光スイッチが、2本の近接した光導波路からなる方向性結合器および少なくともいずれか1本の光導波路に装備した位相シフタによって構成される光スイッチであることを特徴とする請求項1記載の導波路型光スイッチ単位素子。
【請求項7】
前記1×1光ゲートスイッチが、2本の近接した光導波路からなる方向性結合器2個と2本のアーム光導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタによって構成されるマッハ・ツェンダー干渉計型光スイッチであることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の導波路型光スイッチ単位素子。
【請求項8】
前記1×1光ゲートスイッチが、2個のマルチモード光結合器と2本のアーム光導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタによって構成されるマッハ・ツェンダー干渉計型光スイッチであることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の導波路型光スイッチ単位素子。
【請求項9】
前記1×1光ゲートスイッチの入力側にY分岐型光導波路、出力側に2本の近接した光導波路からなる方向性結合器を配置し、Y分岐型光導波路と方向性結合器を結ぶ2本のアーム光導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタによって構成されるマッハ・ツェンダー干渉計型光スイッチであることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の導波路型光スイッチ単位素子。
【請求項10】
前記1×1光ゲートスイッチが、2個のY分岐型光導波路および2本のアーム光導波路およびアーム光導波路の少なくともいずれか一方に装備した位相シフタによって構成される光スイッチであることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の導波路型光スイッチ単位素子。
【請求項11】
前記1×1光ゲートスイッチが、2本の近接した光導波路からなる方向性結合器および少なくともいずれか1本の光導波路に装備した位相シフタによって構成される光スイッチであることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の導波路型光スイッチ単位素子。
【請求項12】
互いに交差するM(Mは正の整数)本の入力光導波路およびN(Nは正の整数)本の出力光導波路におけるM×N個の交差部に、請求項1〜11に記載の導波路型光スイッチ単位素子を配置し、該導波路型光スイッチ単位素子を前記入出力光導波路にそれぞれ接続することを特徴とする導波路型マトリクス光スイッチ。
【請求項13】
請求項1〜11に記載の導波路型光スイッチ単位素子をN(Nは正の整数)行N列に配置し、第1列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路N本をそれぞれN個の入力端子とし、第N列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路N本をそれぞれN個の出力端子とし、第1行(2k−1)列(kは整数、2≦2k<N)に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は第2行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第1行2k列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、第N行(2k−1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は、Nが偶数のとき第(N−1)行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第N行2k列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、Nが奇数のとき第N行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第(N−1)行2k列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、第1行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は第1行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第2行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、第N行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は、Nが偶数のとき第N行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第(N−1)行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路に接続し、Nが奇数のとき第(N−1)行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第N行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路に接続されていることを特徴とする導波路型マトリクス光スイッチ。
【請求項14】
請求項1〜11に記載の導波路型光スイッチ単位素子をN(Nは正の整数)行N列に配置し、第1列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路N本をそれぞれN個の入力端子とし、第N列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路N本をそれぞれN個の出力端子とし、第1行(2k−1)列(kは整数、2≦2k<N)に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は第1行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第2行2k列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、第N行(2k−1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は、Nが偶数のとき第N行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第(N−1)行2k列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、Nが奇数のとき第(N−1)行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第N行2k列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、第1行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は第2行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第1行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路にそれぞれ接続し、第N行2k列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路および出力光導波路は、Nが偶数のとき第(N−1)行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第N行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路に接続し、Nが奇数のとき第N行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の入力光導波路と第(N−1)行(2k+1)列に配置された光スイッチ単位素子の出力光導波路に接続されていることを特徴とする導波路型マトリクス光スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−38897(P2006−38897A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213916(P2004−213916)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】