説明

導電ペーストおよび導電パターンの製造方法

【課題】250℃以下の低温で硬化可能であり、かつ長さ方向の比抵抗が格段に小さい導電パターンを得ることができる導電ペーストを提供する。
【解決手段】(A)150〜250℃で融着する銀フレーク、(B)50%重量減少温度が250℃以上の化合物からなる有機成分、および(C)50%重量減少温度が250℃以下の化合物からなる有機成分を含有する導電ペーストとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電ペースト、特にプラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、および蛍光表示管等の平面ディスプレイの電極や電子回路部品等に好適な感光性導電ペースト、および導電パターンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路部品やディスプレイにおいて、高精細化や軽量化などの高精細化が急速に進んでおり、それに伴って微細な導電パターンを低温で形成する技術が望まれている。微細な導電パターンを形成する技術としては、導電粉末と有機成分からなる導電ペーストを用いて基板上にパターンを形成し、450〜800℃での焼成によって有機成分を揮散し、導電粉末を焼結することによって導電パターンを形成する方法が知られている(例えば特許文献1)。しかしながら、450〜800℃程度で加熱が必要となるため、導電パターンの製造時の電力消費が大きく、環境負荷が大きくなるという問題があった。さらに、基板や他部材の耐熱性や熱による寸法安定性が要求されるため、使用できる部材が限定され、高性能化しにくくなるという問題があった。
【0003】
そこで、250℃以下の低温で導電ペーストを用いて導電パターンを形成するという技術が開発された。例えば、スクリーン印刷によりパターンを形成し、350℃以下の温度で硬化させる技術(例えば、特許文献2)や、フォトリソ法によりパターンを形成し、150℃程度で硬化させる技術(特許文献3)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−75307号公報
【特許文献2】特開2009−70677号公報
【特許文献3】国際公開第WO2000/34830号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の技術では、例えば硬化した有機成分中に分散した導電粉末同士の接触により、導通を確保する。そのため、特に導電パターンの長さ方向の導電性が不十分で、比抵抗が大きくなるという問題があった。また、溶剤と導電粉末のみからなる硬化性導電ペーストを用いて導電パターンを形成する技術では、高精細パターン形成は不可能であるという問題があった。本発明はかかる課題を解決し、250℃以下の低温で硬化可能であり、かつ長さ方向の比抵抗が格段に小さい導電パターンを得ることができる導電ペースト、および導電パターンの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、(A)150〜250℃で融着する銀フレーク、(B)50%重量減少温度が250℃以上の化合物からなる有機成分、および(C)50%重量減少温度が250℃以下の化合物からなる有機成分を含有することを特徴とする導電ペーストである。さらに、導電ペーストを基板に塗布する工程、150〜250℃で硬化する工程を含むことを特徴とする導電パターンの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、250℃以下の低温で硬化可能であり、かつ長さ方向の比抵抗が格段に小さい導電ペースト、および導電パターンの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明者らは、低温で硬化可能な導電ペーストについて鋭意検討を行った結果、以下に述べるような導電ペーストによって達成されることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の導電ペーストは、(A)150〜250℃で融着する銀フレークを含有することが必要である。(A)150〜250℃で融着する銀フレークを含有することで、熱硬化時に銀フレークの流動性が向上し、その結果、銀フレーク同士の接点がより多くなる上に、接点の面積が大きくなり、導電性が格段に向上する。融点は、より好ましくは150〜200℃である。
【0010】
さらに、(A)銀フレークは単結晶であることが好ましい。単結晶とすることで、低温硬化での導電性を確保できる。
【0011】
(A)銀フレークの形状は、燐片であることが好ましい。燐片形状とすることで、塗布膜中で水平方向に配向し、より多くの接点を有して導電性を向上することができる。具体的な形状としては、厚み方向に垂直な方向の長辺が厚みの8〜150倍の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、10〜50倍である。さらに、厚み方向に垂直な方向の短辺が厚みの1〜100倍の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、3〜50倍である。
【0012】
(A)銀フレークの粒径は、中心粒子径が0.1〜12μmであることが好ましい。この範囲とすることで、感光性有機成分への分散性を向上できるとともに、パターンエッジのぎざつきを抑制できる。さらに好ましくは0.3〜7μmである。ここで、中心粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定して得られた体積基準の粒度分布曲線における50%粒子径を指す。
【0013】
また(A)銀フレークの表面を、必要に応じて表面処理することも、相溶性向上の観点から好ましい。表面処理の種類は特に限定はなく、前記(B)成分や(C)成分により適宜選択できる。
【0014】
このような(A)銀フレークとしては、例えば、M612(中心粒子径6〜12μm、厚み0.1〜0.2μm、融点250℃)、M27(中心粒子径2〜7μm、厚み0.1〜0.15μm、融点200℃)、M13(中心粒子径1〜3μm、厚み0.1μm、融点200℃)、N300(中心粒子径0.3〜0.6μm、厚み0.1μm以下、融点150℃)(いずれもトクセン工業株式会社製)などが挙げられる。これらの銀フレークは、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。特に、充填率を向上するために、例えば上述の銀フレークのうち、M27やM13などの比較的大きな銀フレークに、N300などの粒径の小さな(A)銀フレークを組み合わせて用いることも好ましい。
【0015】
本発明の導電ペーストは、(B)50%重量減少温度が250℃以上の化合物からなる有機成分を含有することが必要である。(B)成分を含有することで(A)銀フレークの分散を向上してペーストを安定化できるとともに、塗布膜の強度を十分なものとできる。さらに(B)成分が感光性を有することで、フォトリソ法を用いて高精細な導体パターン形成が可能となる。ここで、50%重量減少温度とは、大気中、10℃/分で室温より昇温した場合、重量が初期重量の50%に到達したときの温度を表す。
【0016】
(B)有機成分として、ポリマーを含有できる。ポリマーは、パターン形成時には、銀フレークを良好に分散するバインダーとしての機能を保有するポリマーが好ましい。好ましく用いられるポリマーの例としては、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
上述したとおり、本発明の導電ペーストは、感光性であることが特に好ましい。感光性を有することで、パターン形成にフォトリソ法を用いることができるため、さらに微細パターンが容易に形成できる。本発明の導電ペーストに感光性を付与するには、ポリマーがアルカリ、水などの現像液への親和性が高いことが好ましい。このようなポリマーとしては、側鎖および/または末端に酸性基を有するものある。酸性基としては、ヒドロキシル基、フェノール基、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。酸性基の含有量は、ポリマー酸価にして40〜200mg/gである。ここで言うポリマー酸価とは、ポリマー1gを中和するのに必要なKOHの重量である。ポリマー酸価をこの範囲とすることで、アルカリ可溶性を十分に保ち、かつ貯蔵安定性に優れたポリマーを得ることができる。
【0018】
本発明においては、ポリマーの側鎖に酸性基を導入するために、ポリマーの共重合成分として、エチレン性不飽和カルボン酸などのエチレン性不飽和酸を用いる事が好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸やこれらの酸無水物を挙げることができる。中でも、ポリマーを容易に作製できるラジカル重合やアニオン重合、カチオン重合法を用いてアルカリ可溶性基を有するポリマーを作製する場合は、反応性が高いアクリル酸やメタクリル酸を用いることが好ましい。
【0019】
上記共重合成分と重合可能なその他の共重合成分としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、アリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、また、これらの芳香環の水素原子のうち、1〜5個を塩素または臭素に置換したモノマー、もしくは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボキシメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、および上記化合物のアクリレートをメタクリレートに変えたものが挙げられる。本発明ではこれらを1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0020】
酸性基を有するポリマーは、さらに、側鎖にエチレン性不飽和基を有することが好ましい。側鎖にエチレン性不飽和基を有することで、ポリマーに感光性を付与することができる。光硬化型感光性組成物中のポリマー成分が感光性を有することで、塗布膜における露光部分の架橋密度が増すので、現像液耐性が強化される。その結果、露光部と未露光部の現像液に対する溶解性のコントラストが向上するので、高精細なパターンを精度良く形成することができる。さらに、硬化後の硬化膜に強靭性を付与できる。
【0021】
エチレン性不飽和結合を導入する方法として、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、ヒドロキシル基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライド、マレイン酸などのカルボン酸を反応させて作る方法がある。特に簡易的にエチレン性不飽和基を導入する好ましい方法として、ポリマー側鎖の酸性基に対してグリシジル基やイソシアネート基を有するチレン性不飽和化合物を反応させる方法を以下に説明する。
【0022】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどが挙げられる。とりわけ、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0023】
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネートなどがある。また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中の酸性基に対して0.05〜0.95モル当量添加させることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.9モル当量である。添加量が0.05モル当量未満では感光特性が不良となり、高精細パターンの形成が困難となりやすく、0.95モル当量より大きい場合は、残存酸性基数が不足となり、未露光部の溶解性が低下する傾向があるので好ましくない。
【0024】
酸性基を有するポリマーの重量平均分子量は、好ましくは5000〜100000、さらに好ましくは8000〜40000である。ポリマーの重量平均分子量をこの範囲とすることで、導電ペーストに所望の流動性を付与することができるとともに、未露光部の現像液耐性と露光部の現像液可溶性を両立することができる。
【0025】
さらに、(B)50%重量減少温度が250℃以上の化合物からなる有機成分として、光反応性化合物を含有することも好ましい。光反応性化合物の含有量は、(B)成分中、5〜60重量%であることが好ましく、さらに好ましくは20〜40重量%である。光反応性化合物の含有量をこの範囲とすることにより、(A)銀フレークによる露光光遮光作用があっても現像液溶解性のコントラストを十分に保つことができるとともに、保存安定性の良好な導電ペーストを得ることができる。
【0026】
光反応性化合物としては、光硬化を有する炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物を用いることができ、例えばアルコール類(例えば、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、カルボン酸(例えば、酢酸プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸など)とアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジル、またはテトラグリシジルメテキシリレンジアミンとの反応生成物、アミド誘導体(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドなど)、エポキシ化合物とアクリル酸またはメタクリル酸との反応物などを挙げることができるが、少なくとも一部に2官能以上の多官能化合物を用いることが好ましい。このような多官能化合物を用いることで、本発明の導電ペーストを効率的に架橋させることができ、精細度の高いパターン加工が可能となる。このような多官能化合物として、例えば、2官能化合物としては、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA−ジアクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA物ジアクリレートなどが挙げられる。3〜6官能化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(以上、3官能化合物)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、(4官能化合物)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能化合物)などが挙げられる。また、これらの多官能化合物において、アクリル基は、一部もしくは全部をメタクリル基に置き換えて使用しても良い。本発明で好ましいのは、特に3〜6官能化合物である。3〜6官能化合物を用いることで、上述したように導電ペーストの架橋を密にでき、十分に精細度の高いパターン加工が可能となる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0027】
本発明の導電ペーストには、さらに重合開始剤を好ましく使用できる。紫外光感光型の重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジヒドロキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等が挙げられる。本発明では、これらを1種または2種以上使用することができる。重合開始剤は、感光性モノマー、感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーの合計量100質量部に対し、0.05〜10質量部の範囲で添加され、より好ましくは、0.1〜10質量部である。重合開始剤の量が少なすぎると光感度が不良となり、重合開始剤の量が多すぎる場合には露光部の残存率が小さくなるおそれがある。
【0028】
可視光感光型の重合開始剤としては、近紫外に吸収を持つ陽イオン染料とボレート陰イオンとの錯体、近赤外増感色素で増感されたハロゲン化銀と還元剤を組み合わせたもの、チタノセン、鉄アレーン錯体、有機過酸化物、ヘキサアリール、ビイミダゾール、N−フェニルグリシン、ジアリールヨードニウム塩等のラジカル発生剤の少なくとも1種と更に必要に応じて、3−置換クマリン、シアニン色素、メロシアニン色素、チアゾール系色素、ピリリウム系色素等の増感色素等が挙げられる。
【0029】
本発明の導電ペーストには、これらを1種または2種以上使用することができる。重合開始剤は、(B)50%重量減少温度が250℃以上の化合物からなる有機成分中、0.1〜30重量%の範囲内で含有されることが好ましく、より好ましくは、5〜20重量%である。重合開始剤の含有量をこの範囲とすることで、(A)銀フレークによる遮光下においても、導電ペーストの光反応率を十分増加すると同時に、十分な重合度を得ることができる。
【0030】
本発明の導電ペーストは、さらに(B)50%重量減少温度が250℃以上の化合物からなる有機成分として、分散剤を含有することが好ましい。分散剤を含有することで、銀フレークの有機成分への分散性が向上し、導電パターン形成時に、エッジのギザつきを改善できる。さらに、導電パターン中での銀フレーク同士の接点が増加して、低抵抗になるという効果もある。
【0031】
分散剤としては、塩基系分散剤、酸系分散剤、中性分散剤などが好ましく用いられる。塩基系分散剤としては、ソルスパース20000(商品名、富士フィルムイメージングカラーラント(株)製)などが挙げられる。酸系分散剤として、リン酸系アンカーを有するものとして、ソルスパース41000(商品名、富士フィルムイメージングカラーラント(株)製)、アデカコールPS、CS、TSシリーズ(商品名、旭電化(株)製)、ノプコスパース092(商品名、サンノプコ(株))、スルホン酸系アンカーを有するものとして、アデカコールP、ECシリーズ(商品名、旭電化(株)製)、カルボン酸系アンカーを有するものとして、ソルスパース3000(商品名、富士フィルムイメージングカラーラント(株)製)、フローレンG−700、G−700DMEA(商品名、共栄社化学(株))などが挙げられる。中性分散剤としては、アルコール/オキシエチレン系としてアデカトールLA、LO、DBシリーズ(商品名、旭電化(株)製)、オキシエチレン共重合系としてアデカプルロニックシリーズ(商品名、旭電化(株)製)、脂肪酸エステル系としてアデカエストールシリーズ(商品名、旭電化(株)製)などが挙げられる。
【0032】
分散剤の添加量は、(B)50%重量減少温度が250℃以上の化合物からなる有機成分中、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%、さらに好ましくは、1〜3重量%である。添加量をこの範囲とすることで、パターン形成時の感度低下を防ぐと共に、導電ペーストの分散性を向上できる。
【0033】
本発明の導電ペーストは、さらに(C)50%重量減少温度が250℃以下の化合物からなる有機成分を含有する。(C)50%重量減少温度が250℃以下の化合物からなる有機成分を含有することで、銀フレークの分散性を向上できる。また、塗布膜乾燥時に(C)成分が除去されることで体積収縮を引き起こし、銀フレーク同士の接点を増加して導電性を向上する効果もある。(C)50%重量減少温度が250℃以下の化合物からなる有機成分としては、一般的に使用される溶剤を用いることができるが、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、2,2,2−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶剤混合物が用いられる。(C)50%重量減少温度が250℃以下の化合物からなる有機成分の含有量は、(A)銀フレーク100重量部に対し、5〜30重量部であることが好ましい。(C)50%重量減少温度が250℃以下の化合物からなる有機成分の含有量をこの範囲とすることで、分散性向上および塗布膜乾燥時の体積収縮を十分なものとでき、さらに導電ペーストの粘度を塗布に最適な粘度に保つことができる。
【0034】
次に、本発明の導電ペーストを用いて導電パターンを製造する方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
本発明の導電ペーストは、各成分を所定の組成となるように調合した後、自転公転ミキサーなどで予備混練することが好ましく、その後、3本ローラーなどの混練機器を用いて本混練を行って均質分散し、作製する。また、本混練を終えた導電ペーストを適宜、濾過、脱泡しておくことも好ましい。
【0036】
次に、基板を用意する。本発明では、低い硬化温度で十分硬化が促進するため、従来のガラスや金属、セラミックからなる基板に加え、ポリイミドやフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などの樹脂基板を使用できる。これらの樹脂基板を使用することにより、部材の軽量化およびフレキシブル化を図ることができる。
【0037】
続いて、本発明の導電ペーストを基板上に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーター、スピンコーター等の方法を用いて塗布し、必要に応じて乾燥することができる。塗布厚みは、所望の導電パターンの厚みと導電ペーストの収縮率を考慮して決めることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、導電ペーストの粘度等によって調整できるが、通常1〜30μm程度である。乾燥は熱風乾燥機、IR乾燥機、ホットプレート等を用いて行い、例えば60〜150℃で0.5〜30分間乾燥して、導電ペースト塗布膜を形成する。
【0038】
次に作製した導電ペースト塗布膜を露光する。露光は、フォトマスクを介して選択的に行う。この際使用される光源は、例えば、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザー光などが挙げられる。露光条件は塗布厚みにより異なるが、通常、1〜100mW/cmの出力の光源を用いて0.01〜30分間露光を行う。
【0039】
露光後、露光部分と非露光部分の現像液に対する溶解度の差を利用して現像を行うが、通常、浸漬法やスプレー法、ブラシ法等で行う。現像液としては、アルカリ水溶液が好適に用いられる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウムや、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム水溶液等や、有機アルカリとして、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的にはテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が除去されにくく、アルカリ濃度が高すぎればパターンが剥離や腐食するおそれがあり好ましくない。また、現像時の現像温度は20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0040】
最後に、150〜250℃で熱処理を行って導電性を付与し、導電パターンとする。熱処理は、ホットプレートや熱風乾燥機、IR乾燥機などが好適に用いられ、所望の温度に設定された状態で行ってもよいし、一段あるいは多段プログラムを組むなどしてもよい。窒素など不活性雰囲気下で行っても良いが、本発明の導電ペーストを用いることで、空気中でも十分な導電性が得られる。このように導電性を付与し、導電パターンとするとする。
【0041】
好適に用いられる感光性導電ペーストの組成を下記に示す。
(感光性導電ペーストの例)
・ポリマー:アクリル酸/アクリル酸メチル/スチレン=40/30/30からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量27000、酸価100、50%重量減少温度393℃)を100重量部
・モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学(株)製、“TPA330” 、50%重量減少温度417℃)を50重量部
・光重合開始剤:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(チバスペシャリティーケミカルズ社製、“IC369” 、50%重量減少温度322℃)を25重量部
・溶剤:γ−ブチロラクトン(50%重量減少温度146℃)を400重量部
・導電粉末:銀フレーク(トクセン工業株式会社製、“M−13”)を1920重量部
【実施例】
【0042】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の導電ペーストを用いて、種々の精細度の導電パターンを作製した。
【0043】
導電ペーストに用いた原料は以下の通りである。
・ポリマー:アクリル酸/アクリル酸メチル/スチレン=40/30/30(モル比)からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.8当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量29000、酸価100、50%重量減少温度393℃)
・光反応性化合物:ヘキサアクリレート化合物(共栄社化学(株)製、商品名“DPHA”、50%重量減少温度420℃)
・光重合開始剤:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名“IC369”、50%重量減少温度322℃)
・分散剤(I):ソルスパース41000(商品名、リン酸系分散剤、富士フィルムイメージングカラーラント(株)製、50%重量減少温度301℃)
・分散剤(II):アデカプルロニックSO−135(商品名、中性分散剤、旭電化(株)製、50%重量減少温度267℃)
・溶剤:γ−ブチロラクトン(50%重量減少温度146℃)
・高沸点化合物:ディスパロンL1980(商品名、レベリング剤、楠本化成(株)製、50%重量減少温度349℃)
・導電粉末(I):銀フレーク“M−13”(中心粒子径1.53μm、トクセン工業株式会社製)
・導電粉末(II):銀フレーク“N−300”(中心粒子径0.50μm、トクセン工業株式会社製)
・導電粉末(III):銀球状粉末(中心粒子径2.50μm)
A.硬化性組成物の作製
ポリマー、光反応性化合物、光重合開始剤、分散剤、溶剤を所定量秤量し、攪拌機にて攪拌して均一溶液とした後、導電粉末を所定量添加し、3本ローラー混練機にて混練し、硬化性組成物とした。各実施例、比較例で用いた添加量を表1に示した。
【0044】
B.導電パターンの作製
旭硝子株式会社製 “PD−200”ガラス基板(42インチ)上に、A.で作製した導電ペーストをスクリーン印刷機で塗布し、熱風乾燥機で100℃10分乾燥して、厚さ10μmの導電ペースト塗布膜を形成した。このとき、乾燥前後の重量変化を計測し、表1に示した。
【0045】
引き続き、プロキシミティ露光機により、ライン/スペースが50μm/50μm、75μm/75μm、100μm/100μm、150μm/150μmの4つのストライプパターンを有するネガ型マスクを介して露光を行った。露光は、導電ペーストに応じて、50から1000mJ/cmの範囲で選択して行い、パターンを形成した。パターンを表1に記載の条件で硬化し、導電パターンとした。硬化後の導電パターンを観察し、断線、ショートがなく良好なパターンが形成できた最小のライン/スペースの値を分解能とした。
【0046】
C.導電性評価
導電ペーストを、スクリーン印刷によりガラス基板にパターン印刷し、厚さ10μm、線幅300μm、長さ3744000μmの比抵抗測定用パターンを形成した。その後、表1に記載の条件で硬化し、テスターを用いて比抵抗を測定した。測定値を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
(実施例1)
表1に示す導電ペーストを用いて作製した導電ペーストのパターン加工性評価では、ライン/スペースが60μm/60μm以上のパターンが良好に作製できた。さらに比抵抗は172μΩ・cmであった。
【0049】
(実施例2)
溶剤添加量を6重量部にした以外は、実施例1を繰り返した。パターン加工性評価では、ライン/スペースが50μm/50μm以上のパターンが良好に作製できた。さらに比抵抗は43μΩ・cmであった。
【0050】
(実施例3)
溶剤添加量を9重量部にした以外は、実施例1を繰り返した。パターン加工性評価では、ライン/スペースが40μm/40μm以上のパターンが良好に作製できた。さらに比抵抗は18μΩ・cmであった。
【0051】
(実施例4)
有機成分の添加量を変化させた以外は、実施例1を繰り返した。パターン加工性評価では、ライン/スペースが50μm/50μm以上のパターンが良好に作製できた。さらに比抵抗は21μΩ・cmであった。
【0052】
(実施例5)
溶剤添加量を22重量部にした以外は、実施例1を繰り返した。パターン加工性評価では、ライン/スペースが50μm/50μm以上のパターンが良好に作製できた。さらに比抵抗は145μΩ・cmであった。なお、作製した導電ペーストの粘度が低かったため、ペースト作製から3日後に導電ペーストが分離していた。
【0053】
(実施例6)
ポリマー、光反応性化合物、光重合開始剤の添加量を変更した以外は、実施例3を繰り返した。パターン加工性評価では、ライン/スペースが40μm/40μm以上のパターンが良好に作製できた。さらに比抵抗は19μΩ・cmであった。
【0054】
(実施例7)
分散剤として分散剤IIを使用した以外は、実施例3を繰り返した。パターン加工性評価では、ライン/スペースが60μm/60μm以上のパターンが良好に作製できた。さらに比抵抗は37μΩ・cmであった。
【0055】
(実施例8)
分散剤を添加しない以外は、実施例3を繰り返した。パターン加工性評価では、ライン/スペースが80μm/80μm以上のパターンが良好に作製できた。さらに比抵抗は92μΩ・cmであった。
【0056】
(実施例9)
導電性粉末として導電性粉末Iと導電性粉末IIを使用した以外は、実施例3を繰り返した。パターン加工性評価では、導電性粉末II添加により、光透過性が低下したため、ライン/スペースが100μm/100μm以上のパターンのみが良好に作製できた。一方、導電性粉末の接点が増加したため、比抵抗は15μΩ・cmと非常に良好であった。
【0057】
(実施例10)
導電性粉末として導電性粉末Iと導電性粉末IIを使用した以外は、実施例9を繰り返した。パターン加工性評価では、導電性粉末II添加量増加により、光透過性が低下したため、ライン/スペースが150μm/150μm以上のパターンのみが良好に作製できた。一方、導電性粉末の接点が増加したため、比抵抗は13μΩ・cmと非常に良好であった
(実施例11)
光反応性化合物と光重合開始剤を添加しなかった他は、実施例3を繰り返した。感光性を付与していないため、スクリーン印刷法を用いて比抵抗測定パターンを形成したところ、比抵抗は28μΩ・cmであった。
【0058】
(比較例1)
導電性粉末として導電性粉末IIIを使用した他は、実施例3を繰り返した。パターン加工性評価はライン/スペースが40μm/40μm以上のパターンが良好に作製できたが、250℃キュアでは導電性粉末が融着しなかったため、導通しなかった。
【0059】
(比較例2)
溶剤の代わりに高沸点化合物を添加した他は、実施例3を繰り返した。パターン加工性評価はライン/スペースが100μm/100μm以上のパターンのみが良好に作製でき、さらに導電性粉末の接点が不十分なため、導通しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)150〜250℃で融着する銀フレーク、(B)50%重量減少温度が250℃以上の化合物からなる有機成分、および(C)50%重量減少温度が250℃以下の化合物からなる有機成分を含有する導電ペースト。
【請求項2】
前記(A)150〜250℃で融着する銀フレーク100重量部に対し、前記(B)50%重量減少温度が250℃以上の化合物からなる有機成分を15〜40重量部の範囲内、前記(C)50%重量減少温度が250℃以下の化合物からなる有機成分を5〜20重量部の範囲内含有することを特徴とする請求項1に記載の導電ペースト。
【請求項3】
前記(B)50%重量減少温度が250℃以上の化合物からなる有機成分が感光性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の導電ペースト。
【請求項4】
さらに、前記(B)50%重量減少温度が250℃以上の化合物からなる有機成分として、分散剤を含有することを特徴とする請求項1〜3に記載の導電ペースト。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の導電ペーストを基板に塗布する工程、150〜250℃で硬化する工程を含むことを特徴とする導電パターンの製造方法。

【公開番号】特開2011−141973(P2011−141973A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−910(P2010−910)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】