説明

導電体及び導電体の放熱構造

【課題】導電体の放熱性を向上させる。
【解決手段】シールド導電体Waは、ヒートパイプ10をシールドパイプ20内に挿通してなり、通電によって発生する熱をヒートパイプ10の放熱部15において放出するようになっている。自動車の車体Bdが熱容量の大きい吸熱体及び放熱体として利用できることに着目し、ヒートパイプ10の放熱部15を車体Bdに取り付け、放熱部15の熱を車体Bdへ伝達させるようにした。放熱部15を車体Bdに取り付けた状態では、車体Bdの吸熱性能の放熱性能により、放熱部15と車体Bdとの間の温度勾配が保たれて放熱部15から車体Bd側へ熱が効率的に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体及び導電体の放熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車などの車両に搭載されるシールド導電体としては、複数本のノンシールド電線を、金属細線をメッシュ状に編んだ筒状の編組線からなるシールド部材で包囲することにより一括してシールドする構造のものが考えられている。この種のシールド導電体においてシールド部材と電線を保護する方法としては、一般に、シールド部材を合成樹脂製のプロテクタで包囲する手段がとられるが、プロテクタを用いると部品点数が増えるという問題がある。
そこで、本願出願人は、特許文献1に記載されているように、ノンシールド電線を金属製のパイプ内に挿通する構造を提案した。この構造によれば、パイプが、電線をシールドする機能と電線を保護する機能を発揮するので、シールド部材とプロテクタを用いたシールド導電体に比べて部品点数が少なくて済むという利点がある。
【特許文献1】特開2004−171952公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
パイプを用いたシールド導電体では、電線とパイプとの間に空気層が存在しているため、通電時に電線で発生した熱が、熱伝導率の低い空気によって遮断されてパイプに伝わり難く、しかも、パイプには、編組線における編み目の隙間のような外部との通気経路が存在しないため、電線で発生した熱がパイプの内部に籠もり易く、放熱性が低くなる傾向がある。
ここで、導体に所定の電流を流したときの発熱量は、導体の断面積が大きい程小さくなり、発熱に起因する導体の温度上昇値は、導電路の放熱性が高いほど小さく抑えられる。したがって、導体の温度上昇値に上限が定められている環境下では、上記のように放熱効率の低いシールド導電体の場合、導体の断面積を大きくして発熱量を抑える必要がある。
ところが、導体の断面積を増大することは、シールド導電体が大径化し重量化することを意味するため、その対策が望まれる。
この放熱性に関する問題は、導体がシールドパイプで包囲されていなくても、受電設備等のように導体に大電流が流れる場合には、同様に解決が求められる課題である。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、導電体の放熱性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、シールドパイプと、前記シールドパイプ内に挿通されるとともに前記シールドパイプ外に配置された部分が放熱部とされているヒートパイプとを備えており、自動車の車体に沿って配索されるようになっているとともに、前記ヒートパイプへの通電によって発生する熱を前記放熱部において放出するようになっているシールド導電体の放熱構造であって、前記放熱部が前記車体に取り付けられ、前記放熱部の熱が前記車体へ伝達されるようになっているところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、導電性材料からなるヒートパイプが導体として用いられ、受電設備の筐体内に設置した機器の間に配索されている導電体の放熱構造であって、前記ヒートパイプの放熱部が、前記筐体の天井壁に貫通させた放熱口に臨むように配置され、前記ヒートパイプへの通電によって発生して前記放熱部に伝わった熱が、前記放熱口を通して大気中へ放出されるようになっているところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、導電性材料からなるヒートパイプが導体として用いられ、受電設備の筐体内に設置した機器の間に配索されている導電体の放熱構造であって、前記ヒートパイプの放熱部が、前記建物の屋上部に設けた空冷室内に配置されており、前記ヒートパイプへの通電によって発生して前記放熱部に伝わった熱が、前記空冷室の空冷作用によって大気中へ放出されるようになっているところに特徴を有する。
【0007】
請求項4の発明は、導電性材料からなるヒートパイプが導体として用いられ、前記ヒートパイプへの通電によって発生した熱が、前記ヒートパイプの放熱部において放出されるようになっているところに特徴を有する。
【0008】
請求項5の発明は、請求項4に記載のものにおいて、前記ヒートパイプがシールドパイプ内に挿通され、前記ヒートパイプのうち前記シールドパイプの外部に配置させた部分が前記放熱部となっているところに特徴を有する。
【0009】
請求項6の発明は、請求項4または請求項5に記載のものにおいて、前記放熱部が、自動車の車体に対して取付け可能とされており、前記放熱部を前記車体に取り付けた状態では、前記放熱部の熱が前記車体へ伝達されるようになっているところに特徴を有する。
【0010】
請求項7の発明は、請求項6に記載のものにおいて、緩衝可能な弾性を有し、前記放熱部が前記車体に取り付けられた状態において前記放熱部と前記車体との間に介在される熱伝達部材を備えているところに特徴を有する。
【0011】
請求項8発明は、導電性材料からなるヒートパイプが導体として用いられ、自動車の車体に沿って配索されるとともに、前記ヒートパイプへの通電によって発生した熱が前記ヒートパイプの放熱部において放出されるようになっている導電体の放熱構造であって、前記放熱部が自動車の車体に取り付けられ、前記放熱部の熱が前記車体へ伝達されるようになっているところに特徴を有する。
【0012】
請求項9の発明は、請求項8に記載のものにおいて、前記ヒートパイプがシールドパイプ内に挿通され、前記ヒートパイプのうち前記シールドパイプの外部に配置させた部分が前記放熱部となっているところに特徴を有する。
【0013】
請求項10の発明は、請求項8または請求項9に記載のものにおいて、前記放熱部と前記車体との間には、緩衝可能な弾性を有する熱伝達部材が介在されているところに特徴を有する。
【0014】
請求項11の発明は、請求項4に記載のものにおいて、前記ヒートパイプが、受電設備の筐体内に配索されるようになっているとともに、前記放熱部が、前記筐体の壁部に貫通させた放熱口に臨むように配置されるようになっており、前記放熱部を前記放熱口に臨ませて配置した状態では、前記放熱部の熱が前記放熱口を通して大気中へ放出されるようになっているところに特徴を有する。
【0015】
請求項12の発明は、導電性材料からなるヒートパイプが導体として用いられ、受電設備の筐体内に配索されているとともに、前記ヒートパイプへの通電によって発生した熱が前記ヒートパイプの放熱部において放出されるようになっている導電体の放熱構造であって、前記放熱部が、前記筐体の壁部に貫通させた放熱口に臨むように配置されており、前記放熱部の熱が前記放熱口を通して大気中へ放出されるようになっているところに特徴を有する。
【0016】
請求項13の発明は、請求項12に記載のものにおいて、前記放熱口には、前記筐体の内部から前記筐体外の大気中に向かう空気の流れを生成するファンが設けられているところに特徴を有する。
【0017】
請求項14の発明は、請求項4に記載のものにおいて、前記ヒートパイプが、建物の内部に配索されるようになっているとともに、前記放熱部が、前記建物に設けた空冷室内に配置されるようになっており、前記放熱部を前記空冷室内に配置した状態では、前記放熱部の熱が前記空冷室の空冷作用によって大気中へ放出されるようになっているところに特徴を有する。
【0018】
請求項15の発明は、導電性材料からなるヒートパイプが導体として用いられ、建物の内部に配索されているとともに、前記ヒートパイプへの通電によって発生した熱が前記ヒートパイプの放熱部において放出されるようになっている導電体の放熱構造であって、前記放熱部が、前記建物に設けた空冷室内に配置されており、前記放熱部の熱が前記空冷室の空冷作用によって大気中へ放出されるようになっているところに特徴を有する。
【0019】
請求項16の発明は、請求項15に記載のものにおいて、前記空冷室には、前記空冷室の内部から前記空冷室外の大気中に向かう空気の流れを生成するファンが設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0020】
<請求項1、請求項6及び請求項8の発明>
本発明では、自動車の車体が熱容量の大きい吸熱体及び放熱体として利用可能であることに着目し、ヒートパイプの放熱部を自動車の車体に取り付けるようにした。放熱部を車体に取り付けた状態では、車体の吸熱性能の放熱性能により、放熱部と車体との間の温度勾配が保たれて放熱部から車体側へ熱が効率的に伝達される。したがって、放熱部の熱を大気中に放出する手段に比べて、放熱効率が良い。
【0021】
<請求項2、請求項11及び請求項12の発明>
本発明では、受電設備の筐体に設けた放熱口が、熱容量の大きい大気に連通していることに着目し、ヒートパイプの放熱部を放熱口に臨むように配置した。放熱部を放熱口に臨ませて配置した状態では、筐体内部と大気との温度差により、放熱部から大気中へ熱が効率的に放出される。通電により発生した熱が筐体内に籠もることがないので、放熱効率が良い。
【0022】
<請求項3、請求項14及び請求項15の発明>
本発明では、建物に設けた空冷室の空冷作用に着目し、ヒートパイプの放熱部を空冷室内に配置した。放熱部を空冷室内に配置した状態では、空冷室の空冷作用により、放熱部から大気中へ熱が効率的に放出される。通電により発生した熱が空冷室内に籠もることがないので、放熱効率が良い。
【0023】
<請求項4の発明>
放熱機能を備えるヒートパイプを導体として用いたので、ヒートパイプへの通電によって発生する熱を、効率よく放出させることができ、ひいては、ヒートパイプの温度上昇を抑制することができる。
【0024】
<請求項5及び請求項9の発明>
ヒートパイプをシールドパイプ内に挿通されているので、ヒートパイプをシールドできるとともに異物の干渉から保護することができる。また、ヒートパイプのうちシールドパイプの外部に配置させた部分が、放熱部として機能し、導体への通電によって発生する熱が放熱部において放出されるようになっているので、通電によって発生した熱がシールドパイプ内に籠もることがない。
【0025】
<請求項7及び請求項10の発明>
放熱部と車体との間に介在される熱伝達部材は、衝撃を緩和することが可能な弾性を有しているので、車体側から放熱部に伝達される振動を低減することができる。
【0026】
<請求項13の発明>
放熱口には、筐体の内部から筐体外の大気中に向かう空気の流れを生成するファンが設けられているので、放熱効率が高い。
【0027】
<請求項16の発明>
空冷室には、空冷室の内部から空冷室外の大気中に向かう空気の流れを生成するファンが設けられているので、放熱効率が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図3を参照して説明する。電気自動車EVの車体Bdの前部にはエンジンルームが設けられ、エンジンルーム内には、走行用モータMoを駆動するための動力回路を構成する機器Ma(例えば、インバータ)とガソリン駆動用のエンジンEgとが収容されている。車体Bdの後部(例えば、トランクルーム)には動力回路を構成する機器Mb(例えば、バッテリ)が搭載されている。2つの機器Ma,Mbとの間にはシールド導電体Wa(本発明の構成要件である導電体)と車内用導電体Wbが配索されている。
【0029】
シールド導電体Waは、3本のヒートパイプ10を、一括シールド機能と導体保護機能を兼ね備える金属製(例えば、アルミニウム合金、ステンレス、銅、銅合金等)のシールドパイプ20内に挿通した構成になる。ヒートパイプ10は、両端が閉じた金属パイプからなり、内部の気密空間11に作動液(図示せず)を封入した周知の構造のものであり、各ヒートパイプ10の外周には合成樹脂製の絶縁被覆12が設けられている。
【0030】
かかる3本のヒートパイプ10の前後両端部は、シールドパイプ20の外部へ突出されており、その突出部分には、接続部材13が、冷間圧接等によって導通可能に固着されている。この接続部材13にはオープンバレル状の圧着部14が形成されている。また、シールドパイプ20の外部では、ヒートパイプ10のうち先端側の略半分領域が絶縁被覆12を除去されて露出した状態となっている。そして、このヒートパイプ10の前端部の露出部分(シールドパイプ20の外部に配置された部分)が、ヒートパイプ10に通電されたときにヒートパイプ10で発生する熱を放出するための放熱部15となっている。
【0031】
かかるシールド導電体Waは、車体Bdの床下(床板Fpの下方)に沿うように概ね水平に配索されている。シールド導電体の前端部においては、シールドパイプ20の前端部がブラケット21により車体Bdに吊下状態で固定されているとともに、シールドパイプ20から突出したヒートパイプ10が、取付部材30によって床板Fpの外面(下面)に固定されている。一方、シールド導電体Waの後端部においては、シールドパイプ20がブラケット21により床板Fpの下面に吊下状態で固定されている。
【0032】
次に、取付部材30について説明する。
取付部材30は、熱伝達部材31と固定具33とボルト37とからなる。
熱伝達部材31は、振動吸収性能(緩衝性能)を発揮し得る弾性を備えるとともに、熱伝導率の高い材料(例えば、シリコンラバー等の合成樹脂)からなり、シールドパイプ20の外部前方において、3本のヒートパイプ10と絶縁被覆12を一括して包囲するようにモールド成形によって略直方形に成形されている。詳しくは、熱伝達部材31の左右両側縁からは、上面に沿って面一状に突出する形態のリブ32が、熱伝達部材31の全長に亘って一体に形成されている。この熱伝達部材31の前端面(図2における左側の端面)からは、ヒートパイプ10の前端部が露出状態で突出しており、この突出部分の先端に上記した接続部材13が固着されている。一方、熱伝達部材31の後端面とシールドパイプ20の前端との間には、絶縁被覆12で包囲された状態のヒートパイプ10が露出している。
【0033】
固定具33は、金属板材からなり、熱伝達部材31の下面と左右両側面に面接触する略「コ」字形の覆い部34と、覆い部34の左右両側縁から延出してリブ32の下面に面接触する左右一対の支持板部35と、覆い部34の外面から略直角に延出する板状のフィン36とからなる。固定具33の支持板部35には、金属製のボルト37が下方から貫通されている。ボルト37は、熱伝達部材31のリブ32を貫通して、床板Fpの雌ネジ部(図示せず)に螺合されている。このボルト37の締付けにより、固定具33と熱伝達部材31とヒートパイプ10が車体Bd(床板Fp)に固定して取り付けられている。また、固定具33の後端部とシールドパイプ20の前端部はは、3本の絶縁被覆12で包囲されているヒートパイプ10を一括して包囲するシールド部材(図示せず)を介して導通可能に接続されている。
【0034】
車内用導電体Wbは、可撓性を有するノンシールドタイプの3本の電線40を、金属細線をメッシュ状に編んだ編組線からなる可撓性シールド部材(図示せず)で一括して包囲したものであり、シールド導電体Waの前後両端部に接続されている。即ち、シールド導電体Waの接続部材13の圧着部14には、車内用導電体Wbの電線40の端末部における樹脂被覆41を剥いて露出させた芯線42が圧着により導通可能に固着されている。また、シールド導電体Waの前端部においては、固定具33の前端部と車内用導電体Wbの可撓性シールド部材の端部とが導通可能に接続されており、シールド導電体Waの後端部においては、シールドパイプ20の後端部に車内用導電体Wbの可撓性シールド部材の端部が導通可能に接続されている。
【0035】
次に、本実施形態の作用を説明する。
導体としてのヒートパイプ10に通電すると、ヒートパイプ10が発熱し、シールドパイプ20の内部ではヒートパイプ10が高温となり、シールドパイプ20の前方外部に位置するヒートパイプ10の放熱部15が低温部となるため、シールドパイプ20の内部と放熱部15との間で温度勾配が生じる。すると、シールドパイプ20の内部でヒートパイプ10内の作動液が蒸発して潜熱を吸収し、その蒸気が放熱部15に向けて移動し、放熱部15において蒸気が凝縮して潜熱を放出し、作動液となって高温側へ戻る。これが繰り返されることにより、シールドパイプ20内の熱が放熱部15へ移動する。
【0036】
そして、放熱部15に移動した熱は、放熱部15の外面から熱伝達部材31に伝達され、熱伝達部材31の内部を移動する。熱伝達部材31の上面に移動した熱は、金属製の床板Fpに伝わって、床板Fpから車体Bd全体に拡がる。また、熱伝達部材31の下面及び左右両側面に移動した熱は、固定具33に伝わり、固定具33の表面から大気中に放散されるとともに、固定具33からフィン36へ移動してフィン36の表面から大気中に放散される。
【0037】
上述のように本実施形態においては、放熱機能を備えるヒートパイプ10を導体として兼用させた。換言すると、導体自体に放熱機能を具備させた。そして、ヒートパイプ10のうちシールドパイプ20の外部に配置させた部分が、放熱部15として機能し、導体であるヒートパイプ10への通電によって発生する熱が放熱部15において放出されるようになっている。したがって、通電によって発生した熱がシールドパイプ20内に籠もることがなく、放熱効率が良い。
【0038】
また、自動車の車体Bdが熱容量の大きい吸熱体及び放熱体として利用可能であることに着目し、ヒートパイプ10の放熱部15を車体Bdの床板Fpに取り付けるようにした。放熱部15を車体Bdに取り付けた状態では、車体Bdの吸熱性能の放熱性能により、放熱部15と車体Bdとの間の温度勾配が保たれて放熱部15から車体Bd側へ熱が効率的に伝達される。したがって、放熱部15の熱を大気中に放出する手段に比べて、放熱効率が良い。
【0039】
また、放熱部15と車体Bdの床板Fpとの間に、緩衝可能な弾性を有する熱伝達部材31を介在させたので、車体Bd側から放熱部15(ヒートパイプ10又はシールド導電体Wa)に伝達される振動を低減することができる。
また、ヒートパイプ10を放熱手段としてだけでなく、導体として兼用させたので、導体とヒートパイプとを別々に配置する形態に比べると、スペース効率に優れている。
【0040】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図4を参照して説明する。本実施形態2は、自動車EVの車体Bdではなく、受電設備50に適用したものである。導電体Wcは、受電設備50の筐体51内に設けたトランス53と遮断器54との間を接続しており、導電体Wcは、トランス53から上方へ立ち上がり、筐体51の天井壁52の近傍を通過し、下降して遮断器54に至る経路で配索されている。導電体Wcは、実施形態1と同じ構造のヒートパイプ10を導体として用いたものであり、実施形態1のシールドパイプ20は用いられていない。導電体Wcのうち天井壁52の近傍であって配索経路のうち最も高い部分においては、ヒートパイプ10が放熱部15(図4では図示を省略)として機能するようになっている。この放熱部15においては、ヒートパイプ10に対して取付部材30が取り付けられている。取付部材30は、実施形態1と同様の構造であって、熱伝達部材31と固定具33とボルト37とからなり、ヒートパイプ10は熱伝達部材31(図4では図示を省略)を貫通している。
【0041】
一方、受電設備50の筐体51の天井壁52には、筐体51内と筐体51外とを上下方向に貫通させる放熱口55が形成されている。天井壁52には、放熱口55を横切るような取付板56が設けられ、取付板56の下面には、ボルト57により取付部材30の固定具33が固定され、取付板56の下面に熱伝達部材31の上面が面接触している。放熱口55のうち取付部材30が配置されていない領域は、筐体51の内部と外部とを連通させる連通路として開口されている。また、放熱口55には、取付部材30よりも上方に位置するファン57が設けられている。このファン57は、筐体51の内部から筐体51の外部の大気中へ向かう空気の流れを生成する。
【0042】
本実施形態2においては、受電設備50の筐体51に設けた放熱口55が、熱容量の大きい大気に連通していることに着目し、ヒートパイプ10の放熱部15を放熱口55に臨むように配置した。放熱部15を放熱口55に臨ませて配置した状態では、筐体51内部と大気との温度差により、放熱部15の熱が、放熱口55を通して大気中へ放出される。本実施形態2によれば、通電により発生した熱が筐体51内に籠もることがないので、放熱効率が良い。
しかも、本実施形態2では、放熱口55に、筐体51の内部から筐体51外の大気中に向かう空気の流れを生成するファン57を設けているので、放熱効率が高い。
【0043】
<実施形態3>
次に、本発明を具体化した実施形態3を図5及び図6を参照して説明する。本実施形態3では、導電体Wdを多層階の建物60(ビルディング)内に幹線導電路として配索している。導電体Wdは、分電盤61から建物60の最下階に入り、各階を仕切る床版62を順次に貫通して最上階に至り、この最上階の天井版63を貫通して、屋上面に設けた空冷室64内に至る経路で配索されている。この導電体Wdからは、各階において分岐導電路65が枝分かれして配索されている。
導電体Wdは、実施形態1と同じ形態のヒートパイプ10を保護パイプ79内に挿通させたものであるが、保護パイプ79の上端部は、最上階の天井版63に移動規制された状態で固定され、空冷室64内においてはヒートパイプ10の上端部が保護パイプ79の外部(上方)へ露出した形態となっている。そして、このヒートパイプ10の上端部(保護パイプ79の外部に位置する部分)は、放熱部15として機能するようになっている。
【0044】
空冷室64内においては、ヒートパイプ10の外周に、ヒートパイプ10と同心の円形をなす金属製の放熱体66が固定されている。放熱体66の外周には同心の円盤状をなす複数のフィン67が形成されている。放熱体66の内周面は、ヒートパイプ10を包囲する絶縁被覆12の外周面に対して面接触している。ヒートパイプ10の上端は、放熱体66の上端よりも上方へ突出しており、このヒートパイプ10の上端部には絶縁継手68の下端部が固着されている。絶縁継手68の上端部には、連結金具69の下端部が固着され、連結金具69の上端部には、チェーン70の下端部が連結されている。また、絶縁被覆12の上端と絶縁継手68の下端との間でヒートパイプ10が露出したままの場合には、この露出部分においてリークが発生することが懸念されるが、本実施形態3では、絶縁被覆12の上端部から絶縁継手68の下端部に亘ってチューブ状絶縁部材80を装着することにより、絶縁被覆12と絶縁継手68との間においてヒートパイプ10の外周をチューブ状絶縁部材80で覆い隠したので、リークの虞はない。
【0045】
空冷室64は、屋上面に載置された形態となっており、空冷室64の一方の側壁には、空冷室64内と空冷室64外とを連通させる開口部71が形成され、この開口部71には、空冷室64の内部から空冷室64の外部の大気中へ向かう空気の流れを生成するファン72が設けられている。また、空冷室64におけるファン72とは反対側の側壁にも、空冷室64内と空冷室64外とを連通させる開口部73が形成され、この開口部73には、空冷室64外から空冷室64内への雨の吹き込みを防止するために空冷室64外に向かって下り勾配となった複数のルーバー74が設けられている。この2つの側壁に設けた開口部71,73により、空冷室64内を通過する空気の流れが形成されるようになり、この空気の流れが空冷室64の空冷作用として機能する。
【0046】
かかる空冷室64の天井壁75には、吊り金具76が下方へ突出する形態で形成されている。この吊り金具76には、上記したヒートパイプ10のチェーン70の上端部が引掛けられて連結されている。これにより、ヒートパイプ10(導電体Wd)は、軸線を鉛直方向に向けた姿勢で空冷室64の天井壁75に吊り下げられた状態で支持されている。
【0047】
本実施形態3では、建物60に設けた空冷室64の空冷作用に着目し、ヒートパイプ10の放熱部15を空冷室64内に配置した。放熱部15を空冷室64内に配置した状態では、ヒートパイプ10への通電によってヒートパイプ10で発生した熱が、放熱部15において放熱体66に伝達され、放熱体66のフィン67の表面から空冷室64内を流れる空気に伝達され、この空気流に乗じてルーバー74の隙間から空冷室64の外部の大気中へ放出される。本実施形態3によれば、ヒートパイプ10の熱は、空冷室64の空冷作用によって大気中へ放出されるので、保護パイプ79内や空冷室64内に籠もることがなく、放熱効率が良い。また、空冷室64には、空冷室64の内部から空冷室64外の大気中に向かう空気の流れを生成するファン72が設けられているので、放熱効率に優れている。
【0048】
<実施形態4>
次に、本発明を具体化した実施形態4を図7を参照して説明する。上記実施形態3では、保護パイプ79内への挿通領域においてヒートパイプ10を包囲している絶縁被覆12を保護パイプ79の上方へ延長させ、その絶縁被覆12の延長部分をヒートパイプ10の放熱部15と放熱体66との間に介在させた。
これに対し本実施形態4では、保護パイプ79よりも上方の領域(ヒートパイプ10の放熱部15)において絶縁被覆12を除去し、絶縁被覆12とは別の絶縁チューブ77でヒートパイプ10の放熱部15を包囲した。即ち、絶縁チューブ77がヒートパイプ10と放熱体66との間に介在されている。また、絶縁チューブ77の上端部から絶縁継手68の下端部に亘り、チューブ状絶縁部材80が装着されている。
その他の構成については、実施形態3と同じであるので、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0049】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1では放熱部と車体との間に緩衝可能な弾性を有する熱伝達部材を介在させたが、本発明によれば、このような熱伝達部材を介在させず、放熱部と車体とを直接接触させる形態としてもよい。
(2)上記実施形態1では1つのシールドパイプ内に3本の導体(ヒートパイプ)を挿通したが、本発明によれば、1つのシールドパイプに挿通される導体の本数は1本、2本、4本以上のいずれとしてもよい。
(3)実施形態2において、放熱口を、筐体の天井壁ではなく、側壁に開口させ、この側壁の放熱口に放熱部を配置してもよい。
(4)実施形態2では放熱口にファンを設けたが、放熱口にファンを設けない形態としてもよい。
(5)実施形態2において緩衝可能な弾性を有する熱伝達部材を介在させない形態としてもよい。
(6)実施形態3では空冷室を屋上部に設けたが、空冷室は、建物の外壁に臨むように設けてもよい。
(7)実施形態3では空冷室にファンを設けたが、空冷室にファンを設けない形態としてもよい。
(8)実施形態2,3においてヒートパイプをシールドパイプで包囲してもよい。
(9)本発明の導電体は、電柱の上端部から地中に向かって斜め下向きに張り渡した電柱支持ワイヤに沿わせて配索してもよい。このような使用形態では、導電体は、通電によって発生した熱を利用して電柱支持ワイヤに付着した雪を溶かす融雪手段として機能させることができる。
(10)本発明の導電体は、地中に埋設してロードヒーティングとして機能させることもできる。電柱の上端部から地中に向かって斜め下向きに張り渡した電柱支持ワイヤに沿わせて配索してもよい。このような使用形態では、導電体は、通電によって発生した熱を利用して地面に積もった雪を溶かす融雪手段として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態1の全体構成図
【図2】導電体と車体との取付け構造をあらわす部分拡大断面図
【図3】図2のX−X線断面図
【図4】実施形態2の断面図
【図5】実施形態3の断面図
【図6】実施形態3の部分拡大断面図
【図7】実施形態4の部分拡大断面図
【符号の説明】
【0051】
Bd…車体
Wa…シールド導電体(導電体)
10…ヒートパイプ
15…放熱部
31…熱伝達部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドパイプと、
前記シールドパイプ内に挿通されるとともに前記シールドパイプ外に配置された部分が放熱部とされているヒートパイプとを備えており、
自動車の車体に沿って配索されるようになっているとともに、前記ヒートパイプへの通電によって発生する熱を前記放熱部において放出するようになっている導電体の放熱構造であって、
前記放熱部が前記車体に取り付けられ、
前記放熱部の熱が前記車体へ伝達されるようになっていることを特徴とする導電体の放熱構造。
【請求項2】
導電性材料からなるヒートパイプが導体として用いられ、受電設備の筐体内に設置した機器の間に配索されている導電体の放熱構造であって、
前記ヒートパイプの放熱部が、前記筐体の天井壁に貫通させた放熱口に臨むように配置され、
前記ヒートパイプへの通電によって発生して前記放熱部に伝わった熱が、前記放熱口を通して大気中へ放出されるようになっていることを特徴とする導電体の放熱構造。
【請求項3】
導電性材料からなるヒートパイプが導体として用いられ、受電設備の筐体内に設置した機器の間に配索されている導電体の放熱構造であって、
前記ヒートパイプの放熱部が、前記建物の屋上部に設けた空冷室内に配置されており、
前記ヒートパイプへの通電によって発生して前記放熱部に伝わった熱が、前記空冷室の空冷作用によって大気中へ放出されるようになっていることを特徴とする導電体の放熱構造。
【請求項4】
導電性材料からなるヒートパイプが導体として用いられ、
前記ヒートパイプへの通電によって発生した熱が、前記ヒートパイプの放熱部において放出されるようになっていることを特徴とする導電体。
【請求項5】
前記ヒートパイプがシールドパイプ内に挿通され、
前記ヒートパイプのうち前記シールドパイプの外部に配置させた部分が前記放熱部となっていることを特徴とする請求項4記載の導電体。
【請求項6】
前記放熱部が、自動車の車体に対して取付け可能とされており、
前記放熱部を前記車体に取り付けた状態では、前記放熱部の熱が前記車体へ伝達されるようになっていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の導電体。
【請求項7】
緩衝可能な弾性を有し、前記放熱部が前記車体に取り付けられた状態において前記放熱部と前記車体との間に介在される熱伝達部材を備えていることを特徴とする請求項6記載の導電体。
【請求項8】
導電性材料からなるヒートパイプが導体として用いられ、自動車の車体に沿って配索されるとともに、前記ヒートパイプへの通電によって発生した熱が前記ヒートパイプの放熱部において放出されるようになっている導電体の放熱構造であって、
前記放熱部が自動車の車体に取り付けられ、
前記放熱部の熱が前記車体へ伝達されるようになっていることを特徴とする導電体の放熱構造。
【請求項9】
前記ヒートパイプがシールドパイプ内に挿通され、
前記ヒートパイプのうち前記シールドパイプの外部に配置させた部分が前記放熱部となっていることを特徴とする請求項8記載の導電体の放熱構造。
【請求項10】
前記放熱部と前記車体との間には、緩衝可能な弾性を有する熱伝達部材が介在されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の導電体の放熱構造。
【請求項11】
前記ヒートパイプが、受電設備の筐体内に配索されるようになっているとともに、前記放熱部が、前記筐体の壁部に貫通させた放熱口に臨むように配置されるようになっており、
前記放熱部を前記放熱口に臨ませて配置した状態では、前記放熱部の熱が前記放熱口を通して大気中へ放出されるようになっていることを特徴とする請求項4記載の導電体。
【請求項12】
導電性材料からなるヒートパイプが導体として用いられ、受電設備の筐体内に配索されているとともに、前記ヒートパイプへの通電によって発生した熱が前記ヒートパイプの放熱部において放出されるようになっている導電体の放熱構造であって、
前記放熱部が、前記筐体の壁部に貫通させた放熱口に臨むように配置されており、
前記放熱部の熱が前記放熱口を通して大気中へ放出されるようになっていることを特徴とする導電体の放熱構造。
【請求項13】
前記放熱口には、前記筐体の内部から前記筐体外の大気中に向かう空気の流れを生成するファンが設けられていることを特徴とする請求項12記載の導電体の放熱構造。
【請求項14】
前記ヒートパイプが、建物の内部に配索されるようになっているとともに、前記放熱部が、前記建物に設けた空冷室内に配置されるようになっており、
前記放熱部を前記空冷室内に配置した状態では、前記放熱部の熱が前記空冷室の空冷作用によって大気中へ放出されるようになっていることを特徴とする請求項4記載の導電体。
【請求項15】
導電性材料からなるヒートパイプが導体として用いられ、建物の内部に配索されているとともに、前記ヒートパイプへの通電によって発生した熱が前記ヒートパイプの放熱部において放出されるようになっている導電体の放熱構造であって、
前記放熱部が、前記建物に設けた空冷室内に配置されており、
前記放熱部の熱が前記空冷室の空冷作用によって大気中へ放出されるようになっていることを特徴とする導電体の放熱構造。
【請求項16】
前記空冷室には、前記空冷室の内部から前記空冷室外の大気中に向かう空気の流れを生成するファンが設けられていることを特徴とする請求項15記載の導電体の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−48741(P2007−48741A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169973(P2006−169973)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】