説明

導電性のロール、プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】弾性層が配向性をもって設けられた気泡を有する場合であっても、周方向の抵抗ムラの発生を抑制する。
【解決手段】導電性を有する円筒状の支持体12と、前記支持体12の周囲に設けられ、配向性をもって設けられた気泡18を有する弾性層14と、前記支持体12の軸方向から見て、前記気泡18の長手方向の一方を前記支持体12の周方向の0°方向と定義したときに、少なくとも−20°〜20°および160°〜200°の方向における前記弾性層14の気泡18の壁面に設けられ、導電剤を含有した第1の樹脂組成物により形成される第1の膜、および、少なくとも70°〜110°および250°〜290°の方向における前記弾性層14の気泡18の壁面に設けられ、導電剤を含有した第2の樹脂組成物により形成されると共に、前記第1の膜よりも導電率が高い第2の膜と、を備える導電性のロール10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性のロール、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置では、一般的に、無機材料または有機材料を用いた光導電性感光体から構成される像保持体上に電荷を形成し、画像信号を変調したレーザー光等で静電潜像を形成した後、その静電潜像をトナーにより現像して可視化したトナー像とする。そして、得られたトナー像を中間転写体を介して、あるいは直接、記録用紙等の記録媒体に静電的に転写することにより所望の再生画像が得られる。
【0003】
例えば、像保持体に形成したトナー像を中間転写体に一次転写し、さらに中間転写体上のトナー像を記録紙に二次転写する方式を採用したものでは、導電性(体積抵抗率が1013Ωcm以下)のロール(本明細書において、単に「導電性ロール」と称す場合がある)と中間転写体とで挟持される領域に記録用紙を通紙し、電圧を印加してトナー像を静電的に転写する導電性ロール方式の画像形成装置が知られている。
【0004】
導電性ロールとしては、例えば、導電性カーボンブラックを分散させたアクリル系エマルジョンにウレタンスラブフォームを含浸させて加熱乾燥した後、所望のサイズの円筒形に加工するとともに、接着剤を塗布した芯金を中心孔に挿入して接着させた導電性ロールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−262912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、弾性層が配向性をもって設けられた気泡を有する場合であっても、周方向の抵抗ムラの発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、以下の導電性のロール、プロセスカートリッジおよび画像形成装置が提供される。
【0007】
請求項1に係る発明は、
導電性を有する円筒状の支持体と、
前記支持体の周囲に設けられ、配向性をもって設けられた気泡を有する弾性層と、
前記支持体の軸方向から見て、前記気泡の長手方向の一方を前記支持体の周方向の0°方向と定義したときに、少なくとも−20°〜20°および160°〜200°の方向における前記弾性層の気泡の壁面に設けられ、導電剤を含有した第1の樹脂組成物により形成される第1の膜、並びに、少なくとも70°〜110°および250°〜290°の方向における前記弾性層の気泡の壁面に設けられ、導電剤を含有した第2の樹脂組成物により形成されると共に、前記第1の膜よりも導電率が高い第2の膜と、を備えることを特徴とする導電性のロールである。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記第1の樹脂組成物と前記第2の樹脂組成物とが、導電率が等しい導電剤を含有し、且つ前記第1の樹脂組成物における導電剤の含有率が、前記第2の樹脂組成物における導電剤の含有率よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載の導電性のロールである。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記第1の樹脂組成物と前記第2の樹脂組成物とが、導電率が異なる導電剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の導電性のロールである。
【0010】
請求項4に係る発明は、
前記第1の樹脂組成物と前記第2の樹脂組成物とが、導電率が等しい導電剤を等しい含有率で含有すると共に、前記第1の膜の膜厚が、前記第2の膜の膜厚よりも薄いことを特徴とする請求項1に記載の導電性のロールである。
【0011】
請求項5に係る発明は、
前記弾性層が、ウレタンスラブフォームであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の導電性のロールである。
【0012】
請求項6に係る発明は、
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電性のロールを備えることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0013】
請求項7に係る発明は、
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電性のロールを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、弾性層が配向性をもって設けられた気泡を有する場合であっても、本構成を有しない場合に比べ、周方向の抵抗ムラの発生が抑制される。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、弾性層が配向性をもって設けられた気泡を有する場合であっても、本構成を有しない場合に比べ、周方向の抵抗ムラの発生が抑制される。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、弾性層が配向性をもって設けられた気泡を有する場合であっても、本構成を有しない場合に比べ、周方向の抵抗ムラの発生が抑制される。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、弾性層が配向性をもって設けられた気泡を有する場合であっても、本構成を有しない場合に比べ、周方向の抵抗ムラの発生が抑制される。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、弾性層の材料を考慮しない場合に比べ、弾性に優れる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、弾性層が配向性をもって設けられた気泡を有する場合であっても、本構成を有しない場合に比べ、画像の濃度ムラの発生が抑制される。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、弾性層が配向性をもって設けられた気泡を有する場合であっても、本構成を有しない場合に比べ、画像の濃度ムラの発生が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
≪導電性ロール≫
ここで、上記好適な実施形態に係る導電性のロールは、導電性を有する円筒状の支持体(本明細書においては、単に「導電性支持体」と称す場合がある)と、前記支持体の周囲に設けられ、配向性をもって設けられた気泡を有する弾性層(以下において、単に「発泡弾性層」と称す場合がある)と、前記支持体の軸方向から見て、前記気泡の長手方向の一方を前記支持体の周方向の0°方向と定義したときに、少なくとも−20°〜20°および160°〜200°の方向における前記弾性層の気泡の壁面に設けられ、導電剤を含有した第1の樹脂組成物により形成される第1の膜、並びに、少なくとも70°〜110°および250°〜290°の方向における前記弾性層の気泡の壁面に設けられ、導電剤を含有した第2の樹脂組成物により形成されると共に、前記第1の膜よりも導電率が高い第2の膜と、を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明者は、画像形成装置において生じる画像の濃度ムラについて研究および検討を行い、以下のような知見を得た。
例えば、異方性(配向性)をもって設けられた発泡セル(気泡)を有するウレタンスラブフォームを円筒形状に加工し、こえを発泡弾性層としてその中心孔に支持体を挿入して導電性ロール(バイアスロール)を作製した場合、発泡セルの配向性により発泡弾性層の周方向に、相対的に抵抗が高い高抵抗部と相対的に抵抗が低い低抵抗部とが形成される。この高抵抗部と低抵抗部とでは、0.1logΩ以上0.8logΩ以下程度の範囲で比較的大きな面内抵抗ムラが生じ易い。そして、この導電性ロールを画像形成装置の転写ロールとして使用し続けると、導電性ロール(発泡弾性層)の高抵抗部と低抵抗部が異なる割合で抵抗が上昇し、高抵抗部と低抵抗部の抵抗差が1.0logΩ以上まで大きくなる。このように導電性ロールの周方向における抵抗差が増大した結果、画像の濃度ムラが生じる。
これに対し、本発明者は、発泡弾性層に含まれる気泡の配向性に起因する導電率の差に応じ、発泡弾性層の低抵抗部と高抵抗部に分けて、気泡の壁面に導電率の異なる樹脂組成物の膜を形成することにより、ロール全体としての抵抗(導電率)のムラが抑制され、画像の濃度ムラの発生が効果的に抑制されることを見出した。
また、画像形成装置において用いられる導電性ロールに限らず、配向性をもって設けられた気泡を有する発泡弾性層を備えた導電性ロールにおいては、発泡弾性層の低抵抗部と高抵抗部に分けて、気泡の壁面に導電率の異なる樹脂組成物の膜を形成することにより、ロール全体としての抵抗(導電率)のムラが抑制されることを見出した。
【0024】
尚「配向性を有する」とは、導電性支持体の軸方向から見た場合に、発泡弾性層における気泡が真円形状ではなく長手方向を有する形状であり、且つ該気泡における長手方向の向きが揃っている状態を表す。
【0025】
また、第2の膜が第1の膜よりも導電率が高いか否かの確認は、それぞれに関し表面抵抗率を測定することにより行われる。
前記表面抵抗率の測定は、シート状の測定サンプルに対し、測定治具円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPの「URプローブ」)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用い、例えば100Vを印加したときの30秒後の電流値より、下記式(1)を用いて算出される。尚、前記シート状の測定サンプルは、前記発泡弾性層の気泡の壁面に形成される前記第1の膜(または前記第2の膜)の形成と同条件で、絶縁性(ここで、絶縁性とは体積抵抗率が1015Ωcm以上を意味する)の樹脂板上に第1の膜(または第2の膜)用の樹脂組成物を塗布し、加熱乾燥させて水分を除去し、導電性樹脂膜を形成することによって準備する。
【0026】
ここで、図8は、円形電極を示す概略平面図(a)および概略断面図(b)であり、円形電極は、第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径よりも大きい内径を有し、かつ円柱状電極部Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cおよびリング状電極部Dと板状絶縁体Bとで測定サンプルTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cとリング状電極部Dとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式(1)により、表面抵抗率ρs(Ω/□)が算出される。ここで、下記式(1)中、d(mm)は円柱状電極部Cの外径を示し、D(mm)はリング状電極部Dの内径を示す。
式(1) 表面抵抗率ρs(Ω/□)=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
【0027】
また、本明細書において、例えば導電性ロールや導電性樹脂等に用いられている「導電性」との文言は、体積抵抗率が1013Ωcm以下であることを表す。
【0028】
以下、上記好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面中、同一または相当する要素(部材)には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る導電性ロールの概略図であり、図2は、図1のA−A線断面を示す概略図である。この導電性ロール10は、導電性支持体12の周囲に発泡弾性層14が設けられている。そして、発泡弾性層14における多数の気泡18が配向性を有しており、導電性支持体12と発泡弾性層14とが、接着層16を介して接着している。また、低抵抗部における気泡18の壁面には導電剤を含有した第1の樹脂組成物によって第1の膜が形成され、さらに高抵抗部における気泡18の壁面には導電剤を含有した第2の樹脂組成物によって、前記第1の膜よりも導電率が高い第2の膜が形成されている。これより気泡18の配向性に起因する発泡弾性層14の導電率の差が抑制(低減)されている。
【0030】
<導電性支持体>
導電性支持体12は、導電性ロール10の電極および支持部材として機能するものであり、円筒状(中実であるものおよび中空であるものを含む)の部材であって、外径が3mm以上20mm以下の範囲のものが好適に使用される。この導電性支持体12は、強度および電気的特性の点から、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;導電性樹脂;などの導電性(好ましくは体積抵抗率が10Ωcm以下)の材質により構成される。
【0031】
<発泡弾性層>
発泡弾性層14は、多数の気泡(セル)18が配向性を持った状態で形成されている。例えば、弾性材料を発泡させてセル骨格を形成することによって発泡弾性層14とすることができる。なお、発泡弾性層14の気泡構造は、独立気泡構造でもよいし、連続気泡構造でもよいが、後述の方法により気泡18の壁面に第1の膜および第2の膜を形成する観点からは、連続気泡構造であることがより好ましい。
例えば、本実施形態の導電性ロール10を転写ロールとして使用する場合には、発泡弾性層14は、100Paの外力印加により変形しても、もとの形状に復元することができ、像保持体(感光体)、中間転写体等の他の部材との接触位置において適度な接触面積を形成するものが好ましい。
【0032】
発泡弾性層14のセル骨格を形成する具体的な材料としては、エピクロロヒドリン、ポリウレタン、ニトリルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキシドゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、塩素化ポリイソプレン、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、水素化ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等、またはこれらの2種以上をブレンドしてなる材料が挙げられる。望ましくは、ポリウレタン、ニトリルゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキシドゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)であり、より望ましくは、ポリウレタンである。
ポリウレタンとしては、特に限定するものではなく、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステルやアクリルポリールなどのポリオールと、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアネートの反応を伴っていればよく、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンなど鎖延長剤が混合されていることが好ましい。
【0033】
発泡剤としては、水、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物などの発泡剤を用いて発泡させるのが一般的であるが、他の発泡剤として、熱分解により炭酸ガスを発生する炭酸水素ナトリウム等の重炭酸塩、窒素ガスを発生するNaNO2とNH4Clの混合物、酸素等を発生する過酸化物等も挙げられる。さらに必要に応じて発泡助剤、整泡剤、触媒などの助剤を加えてもよい。
例えば、ポリウレタンに発泡剤等を添加してスラブ成型法で発泡させると、ウレタンフォームが垂直方向に膨張するときに気泡(発泡セル)18も垂直方向に延びて略楕円形の断面を有する形状となり、セル(気泡)18に配向性が生じる。
【0034】
尚、発泡弾性層14として、ウレタンスラブフォーム(スラブ成型法で発泡させたウレタンフォーム)を用いることにより、製造コストが安価に抑えられる。
【0035】
発泡弾性層14の厚みは、2mm以上7mm以下の範囲が望ましく、3mm以上5mm以下の範囲がより望ましい。
【0036】
<第1の膜および第2の膜>
本実施形態に係る導電性ロール10では、気泡18の配向性に起因する発泡弾性層14の導電率の差を抑制するように、発泡弾性層14における気泡18の壁面に、高抵抗部と低抵抗部とに分けて、導電率の異なる樹脂組成物の膜が形成される。
図2に示されるように、発泡弾性層14は、導電性ロール10の軸方向から見て気泡
18が配向している。このように発泡弾性層14における気泡18が配向性を有する場合、通常は90°間隔で高抵抗部と低抵抗部が現れる。具体的には、気泡18の長手方向の一方(図2におけるL方向)を該導電性ロール10の周方向の0°位置と定義したときに、通常は、−45°〜45°の領域および135°〜225°の領域を低抵抗部、45°〜135°の領域および225°〜315°(−45°)の領域を高抵抗部に分けることができる。
【0037】
このように発泡弾性層14における気泡18の配向性に起因して低抵抗部と高抵抗部とが対称的に現れる理由は定かではないが、理由の一つとして、導電剤が気泡18の壁面に形成される樹脂組成物の膜中に添加されているため、結果として発泡弾性層14おける導電剤の密度が気泡18の形状に依存することが考えられる。すなわち、図2に示すように発泡弾性層14内の各気泡18が略楕円形状を有する場合、長手方向の両端では導電剤の密度が大きくなって低抵抗となり易く、短手方向では導電剤の密度が小さくなって高抵抗となり易い。このように気泡18の配向性に起因する抵抗差が生じている導電性ロール10を、例えば画像形成装置の転写ロールとして使用し続けると、抵抗差がさらに増大して画像の濃度ムラが生じ易くなると考えられる。
【0038】
しかし、本実施形態に係る導電性ロール10は、発泡弾性層14の高抵抗部と低抵抗部とに分けて、発泡弾性層14における気泡18の壁面に、導電率の異なる樹脂組成物の膜(第1の膜および第2の膜)が形成されており、これにより気泡18の配向性に起因する発泡弾性層14の導電率の差が抑制される。発泡弾性層14の低抵抗部の体積抵抗上昇割合を高抵抗部の体積抵抗上昇割合と同等またはそれ以上にすることで、使用中の抵抗面内ムラの拡大が抑制される。
【0039】
例えば、以下の方法によって、導電率の異なる第1の膜と第2の膜とが形成される。
(1)第1の膜および第2の膜に導電率が等しい導電剤を含有する樹脂組成物を使用する場合、第1の膜に用いられる第1の樹脂組成物に含まれる導電剤の含有率を、第2の膜に用いられる第2の樹脂組成物に含まれる導電剤の含有率よりも少なくすることで、第2の膜の導電率が第1の膜の導電率より高く制御される。
【0040】
(2)第2の膜に用いられる第2の樹脂組成物に含まれる導電剤として、第1の膜に用いられる第1の樹脂組成物に含まれる導電剤よりも、導電率の高い導電剤を用いることによって、第2の膜の導電率が第1の膜の導電率より高く制御される。
【0041】
(3)第1の膜および第2の膜に導電率が等しい導電剤を含有する樹脂組成物を使用すると共に、第1の膜用の樹脂組成物(第1の樹脂組成物)と第2の膜用の樹脂組成物(第2の樹脂組成物)とにおける前記導電剤の含有率が等しい場合、前記第1の膜の膜厚を、前記第2の膜の膜厚よりも薄くすることで、第2の膜の導電率が第1の膜の導電率より高く制御される。
【0042】
図2に示すように、発泡弾性層14を90°間隔で高抵抗部と低抵抗部に分けて、発泡弾性層14における気泡18の壁面に、導電率の異なる樹脂組成物の膜(第1の膜および第2の膜)が形成されることで、ロール全体における抵抗差の拡大が効果的に抑制される。なお、第1の膜と第2の膜の形成は図2に示す態様には限定されない。即ち、発泡弾性層14における気泡18の配向性に起因する導電率の差が抑制されるように、気泡18の壁面に形成される樹脂組成物の膜の導電率が調整されていればよい。
【0043】
例えば、図2に示したように、発泡弾性層14の気泡の長手方向の一方を該導電性ロール10の周方向の0°方向と定義したときに、−20°〜20°および160°〜200°の方向では抵抗が特に低くなり、70°〜110°および250°〜290°の方向では抵抗が特に高くなり易い。そこで、図3に示すように、少なくとも−20°〜20°および160°〜200°の方向に対応した発泡弾性層14aの気泡18の壁面に導電率が低い第1の膜を形成し、少なくとも70°〜110°および250°〜290°の方向に対応した発泡弾性層14bの気泡18の壁面に導電率が高い第2の膜を形成していればよい。上記以外の領域(20°〜70°、110°〜160°、200°〜250°、290°〜340°(−20°)の各位置)の発泡弾性層14cでは抵抗差は比較的小さいので、上記のいずれかの膜を形成してもよいし、導電率が第1の膜における値より高く第2の膜における値より低くなる他の膜を形成してもよい。このように発泡弾性層14の抵抗差が特に大きい部分における気泡18の壁面にのみ、第1の膜および第2の膜が確実に形成されていれば、抵抗差の拡大が抑制されるとともに、膜の形成を高精度に行う必要がないため生産性の向上を図ることができる。
【0044】
気泡18の壁面に形成される第1の膜および第2の膜の形成には、例えば、導電剤とラテックスとを有する混合物など、導電性の樹脂溶液が用いられる。気泡18の壁面に形成される第1の膜および第2の膜に含まれる導電剤は、特に限定されず用途に応じて選択すればよく、例えば電子導電剤やイオン導電剤を用いることができる。
電子導電剤の例としては、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カラーブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン;グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末を挙げることができる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;を挙げることができる。これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
尚、導電剤の導電率が等しいか否か、或いは導電剤の導電率が異なるか否かの確認は、それぞれ導電剤に関し体積抵抗率を測定することにより行われる。
【0046】
また、第1の膜および第2の膜を形成するのに用いられる樹脂溶液に含まれるラテックスとしては、天然ゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、アクリルゴムラテックス、ポリウレタンゴムラテックス、フッ素ゴムラテックス、シリコーンゴムラテックスなどが挙げられる。
【0047】
また、導電性ロール10の周囲の電気抵抗の測定は、導電性ロール10を銅板などの金属板の表面にロールの両端に荷重がかかるように載せ、微小電流測定器(Advantest社製R8320)を用い、導電性ロール(芯金を有する場合は芯金)と前記金属板との間に電圧を印加して測定される。本実施形態に係る導電性ロール10の発泡弾性層14の体積抵抗値は、ロールの両端に各々100gの荷重がかかるように載せ、前記金属板との間に100Vの電圧を印加したときに、10Ω以上10Ω以下の範囲が望ましく、10Ω以上10Ω以下の範囲がより望ましい。
【0048】
<接着層>
本実施形態に係る導電性ロール10では、導電性支持体12と発泡弾性層14が、接着層16を介して接着している。
接着剤としては導電性を有するものが好ましく用いられ、イオン導電性接着剤および電子導電性接着剤が挙げられる。
【0049】
イオン導電性接着剤としては、例えば、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;などの粉末を含む接着剤を挙げることができる。
【0050】
電子導電性接着剤としては、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カラーブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン;グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末を含む接着剤を挙げることができる。
【0051】
<導電性ロールの作製>
本実施形態に係る導電性ロール10を製造する方法は特に限定されないが、例えば以下の方法によって好適に製造される。
【0052】
(1)ウレタンフォームの作製
まず、ポリウレタンに発泡剤を添加して板状のウレタンフォームを作製する。このとき、ウレタンフォームが発泡しながら垂直方向に膨張するとともに、気泡18も垂直方向に延びてセル(気泡)18の配向性が生じる(スラブ成型法)。このウレタンフォームから例えば円筒状の発泡弾性体を所望の大きさで切り出して中心孔を形成する。
【0053】
(2)樹脂組成物による膜の形成
まず、水、ラテックス、導電剤等を含む第1の膜形成用塗布液を準備し、低抵抗部(少なくとも−20°〜20°および160°〜200°の範囲)にスプレー塗布またはインクジェット法にて塗布する。これにより該塗布液がウレタンフォームの気泡18内に含浸する。次いで、これを加熱乾燥させる。加熱温度および時間は、用いる樹脂や導電剤等によっても異なるが、70℃以上160℃以下の温度で、15分以上120分以下行うことが好ましい。これにより、低抵抗部の発泡弾性層14に含まれる気泡18の壁面(セル骨格の表面)に導電剤を含有した樹脂組成物による第1の膜が形成される。
次いで、水、ラテックス、導電剤等を含み、導電率が前記第1の膜形成用塗布液よりも高い第2の膜形成用塗布液を準備し、高抵抗部(少なくとも70°〜110°および250°〜290°の範囲)にスプレー塗布またはインクジェット法にて塗布する。これにより該塗布液がウレタンフォームの気泡18内に含浸する。次いで、これを加熱乾燥させる。尚、加熱温度および時間は、上記第1の膜の形成時における温度および時間と同じ範囲が好ましい。これにより、高抵抗部の発泡弾性層14に含まれる気泡18の壁面(セル骨格の表面)に導電剤を含有した樹脂組成物による第2の膜が形成される。
【0054】
なお、例えば、第1の膜および第2の膜に導電率が等しい導電剤を含有する樹脂組成物を使用する場合、第1の膜に用いられる第1の樹脂組成物に含まれる導電剤の含有率を、第2の膜に用いられる第2の樹脂組成物に含まれる導電剤の含有率よりも少なくすることで、第2の膜の導電率が第1の膜の導電率より高く制御される。
また、例えば、第2の膜に用いられる第2の樹脂組成物に含まれる導電剤として、第1の膜に用いられる第1の樹脂組成物に含まれる導電剤よりも、導電率の高い導電剤を用いることによっても、第2の膜の導電率が第1の膜の導電率より高く制御される。
更に、例えば、第1の膜および第2の膜に導電率が等しい導電剤を含有する樹脂組成物を使用すると共に、第1の膜用の樹脂組成物(第1の樹脂組成物)と第2の膜用の樹脂組成物(第2の樹脂組成物)とにおける前記導電剤の含有率が等しい場合、前記第1の膜の膜厚を、前記第2の膜の膜厚よりも薄くすることで、第2の膜の導電率が第1の膜の導電率より高く制御される。
【0055】
また、別の膜形成方法について説明する。
まず、水、ラテックス、導電剤等を含む膜形成用塗布液を準備し、これにウレタンフォームを浸漬塗布する。これにより該塗布液がウレタンフォーム全体の気泡18内に含浸する。次いで、これをロール間に通して水分等を除去した後、加熱乾燥させる。尚、加熱温度および時間は、上記第1の膜の形成時における温度および時間と同じ範囲が好ましい。これにより、発泡弾性層14全体における気泡18の壁面(セル骨格の表面)に導電剤を含有した樹脂組成物による膜が形成される。
次いで、高抵抗部(少なくとも70°〜110°および250°〜290°の範囲)のみにさらに膜形成用塗布液をスプレー塗布またはインクジェット法にて塗布する。これにより該塗布液がウレタンフォームの気泡18内に含浸する。次いで、これを加熱乾燥させる。尚、加熱温度および時間は、上記第1の膜の形成時における温度および時間と同じ範囲が好ましい。これにより、高抵抗部の発泡弾性層14に含まれる気泡18の壁面(セル骨格の表面)に、更に、導電剤を含有した樹脂組成物による膜が形成され、高抵抗部と低抵抗部とで導電率の異なる第1の膜および第2の膜が形成される。
【0056】
なお、発泡弾性体14の周囲の導電率(抵抗値)は実測により高抵抗部と低抵抗部に分けることもできるが、図2に示したように気泡18の配向性に基づいて高抵抗部と低抵抗部に分けることができる。
【0057】
(3)支持体の挿入
一方、芯金(支持体)12の周囲に接着剤16を塗布する。芯金12の周囲に接着剤16を設ける方法は特に限定されず、例えば、スプレー塗布、フローコート法、Dip塗布法などの方法を採用することができる。
次いで、接着剤が塗布された支持体12を前記ウレタンフォームの中心孔に挿入し、支持体12とウレタンフォームとを接着する。
接着後、外周を円筒研磨法、センタレス研磨法等によって研磨することによりロール形状に加工する。これにより図1および図2に示した本実施形態に係る導電性ロール10が得られる。なお、ウレタンフォームから切り出した発泡弾性体の表面を研磨等によりロール形状に成形した後、支持体12を挿入して接着させてもよい。
【0058】
尚ここで、前述の膜形成用塗布液における導電剤の添加量は、形成される第1の膜および第2の膜において導電率が上記の要件を満たすように調整されれば、特に制限はない。
導電性ロール10の用途に応じて所望の導電率を有するように導電剤を含むことが好ましく、例えば、本実施形態に係る導電性ロール10を画像形成装置における転写ロールとして使用する場合、発泡弾性層14の導電剤の含有量は、電子導電剤を用いる場合は、前記ラテックス100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下の範囲とすることができ、10質量部以上80質量部以下の範囲であることがより望ましい。
【0059】
≪画像形成装置およびプロセスカートリッジ≫
本実施形態に係る導電性ロール10の用途は特に限定されないが、例えば、画像形成装置、或いはそのプロセスカートリッジにおける転写ロールとして好適に使用される。図4〜図7は、それぞれ本実施形態に係る導電性ロール10を備えたプロセスカートリッジまたは画像形成装置の構成を示す概略図である。
【0060】
図4に示す画像形成装置100は、装置本体(図示せず)に、主に、プロセスカートリッジ20と、静電潜像形成装置(露光装置)30と、転写ロール40と、中間転写体50とを具備している。プロセスカートリッジ20は、ケース内に、電子写真感光体1、帯電ロール21、現像装置25、クリーニング装置27、および繊維状部材(平ブラシ形状)29を、それぞれ取り付けレールにより組み合わせて一体化したものである。また、プロセスカートリッジ20は、装置本体に対して着脱自在としたものであり、装置本体とともに画像形成装置を構成している。
【0061】
プロセスカートリッジ20のケースには、露光のための開口部が設けられており、露光装置30はプロセスカートリッジ20の開口部から電子写真感光体1に露光可能な位置に配置されている。
転写ロール40は中間転写体50を介して電子写真感光体1に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体1に接触可能に配置されている。なお、転写ロール40および中間転写体50をプロセスカートリッジ20に含ませることもできる。
【0062】
本実施形態においては、上記構成の画像形成装置或いはプロセスカートリッジの転写ロール40として、前述の本実施形態に係る転写ロールが用いられる。
【0063】
<トナー>
なお、本実施形態に係る導電性ロールを用いた画像形成装置において使用するトナーは特に限定されず、公知のトナーであればいずれも使用される。
トナーは、例えば、平均形状係数(ML/A×π/4×100、ここでMLはトナー粒子の最大長を表し、Aはトナー粒子の投影面積を表し、πは円周率を表す)が100以上150以下であることが望ましく、100以上140以下であることがより望ましい。さらに、トナーは、体積平均粒子径が2μm以上12μm以下であることが望ましく、3μm以上12μm以下であることがより望ましく、3μm以上9μm以下であることがさらに望ましい。
【0064】
また、トナーの製造方法も限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤、離型剤、帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤、離型剤、帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤、離型剤、帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
【0065】
また、上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法を使用してもよい。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
【0066】
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有することが好ましく、更にはシリカや帯電制御剤を含有して構成してもよい。
【0067】
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体および共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0068】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等が挙げられる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0069】
着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示される。
【0070】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示される。
【0071】
帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤が用いられ得る。
湿式製法でトナーを製造する場合、水に溶解しにくい素材を使用することが望ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナーおよび磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0072】
現像装置25に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子および上記外添剤をヘンシェルミキサーまたはVブレンダー等で混合することによって製造される。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
【0073】
現像装置25に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の如く脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の如く植物系ワックス、ミツロウの如く動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の如く鉱物、石油系ワックス、およびそれらの変性物が使用される。これらは、1種を単独で、または2種以上を併用して使用される。但し、体積平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が望ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は望ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0074】
現像装置25に用いるトナーには、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えてもよい。
【0075】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0076】
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも望ましく使用される。
【0077】
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等が挙げられる。
【0078】
粒子径としては、体積平均粒子径で望ましくは5nm以上1000nm以下、より望ましくは5nm以上800nm以下、さらに望ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが望ましい。
【0079】
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更にそれより大径の無機酸化物を添加することが望ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものを使用してもよいが、シリカと酸化チタンを併用することが望ましい。また、小径無機酸化物粒子については表面処理することが好ましい。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも望ましい。
【0080】
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用してもよく、該キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉またはそれらの表面に樹脂コーティングを施したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、任意に設定される。
【0081】
<クリーニング装置>
クリーニング装置27は、繊維状部材(ロール形状)27aと、クリーニングブレード(ブレード部材)27bとを備える。
クリーニング装置27は、繊維状部材27aおよびクリーニングブレード27bが設けられているが、どちらか一方を備えるものでもよい。繊維状部材27aとしては、ロール形状の他に歯ブラシ状(平ブラシ状)としてもよい。また、繊維状部材27aは、クリーニング装置本体に固定してもよく、回転可能に支持されていてもよく、さらに感光体軸方向にオシレーション可能に支持されていてもよい。繊維状部材27aとしては、ポリエステル、ナイロン、アクリル等や、トレシー(登録商標/東レ社製)等の極細繊維からなる布状のもの、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂繊維を基材状または絨毯状に植毛したブラシ状のもの等が挙げられる。また、繊維状部材27aとしては、上述したものに、導電性粉末やイオン導電剤を配合して導電性を付与したり、繊維一本一本の内部または外部に導電層が形成されたもの等を用いてもよい。導電性を付与した場合、その抵抗値としては繊維単体で10Ω以上10Ω以下のものが望ましい。また、繊維状部材27aの繊維の太さは、望ましくは30d(デニール)以下、より望ましくは20d以下であり、繊維の密度は望ましくは2万本/inch以上、より望ましくは3万本/inch以上である。
【0082】
クリーニング装置27には、感光体表面の付着物(例えば、放電生成物)を除去することが求められる。この目的を長期に渡って達成すると共にクリーニング部材の機能を安定化させるために、クリーニング部材には、金属石鹸、高級アルコール、ワックス、シリコーンオイルなどの潤滑性物質(潤滑成分)を供給することが望ましい。
例えば、繊維状部材27aとしてロール状のものを用いる場合、金属石鹸、ワックス等の潤滑性物質と接触させ、電子写真感光体表面に潤滑成分を供給することが望ましい。
【0083】
クリーニングブレード27bとしては、通常のゴムブレードが用いられる。このようにクリーニングブレード27bとしてゴムブレードを使用する場合にも、電子写真感光体表面に潤滑成分を供給することが好ましい。
【0084】
<露光装置>
露光装置30としては、帯電した電子写真感光体1を露光して静電潜像を形成させるものであればよい。また、露光装置30の光源としては、マルチビーム方式の面発光レーザを用いることが望ましい。
【0085】
<中間転写体>
中間転写体50としては、半導電性(ここで、半導電性とは体積抵抗率が10Ωcm以上1013Ωcm以下を意味する。)を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものが用いられる。なお、この中間転写体を備えていない直接転写方式の画像形成装置としてもよい。
【0086】
被転写媒体は、電子写真感光体1上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、電子写真感光体1から直接紙等に転写する場合は紙等が被転写媒体であり、また、中間転写体50を用いる場合には中間転写体が被転写媒体になる。
【0087】
図5は、他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。図5に示す画像形成装置110は、電子写真感光体1が装置本体に固定され、帯電装置22、現像装置25およびクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されており、それぞれ帯電カートリッジ、現像カートリッジ、クリーニングカートリッジとして独立して備えられている。なお、帯電装置22は、コロナ放電方式により帯電させる帯電装置を備えている。
【0088】
この画像形成装置110においては、電子写真感光体1とそれ以外の各装置が分離されており、帯電装置22、現像装置25およびクリーニング装置27が画像形成装置本体にビス、かしめ、接着または溶接等により固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能である。
本実施形態においては、上記構成の画像形成装の転写ロール40として、前述の本実施形態に係る転写ロールが用いられる。
【0089】
図6に示した画像形成装置120は、プロセスカートリッジ20を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。この画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は画像形成装置100に記載の構成を採用することができ、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ20がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。
本実施形態においては、上記構成の画像形成装の転写ロール40として、前述の本実施形態に係る転写ロールが用いられる。
【0090】
図7に示した画像形成装置130は、1つの電子写真感光体で複数の色のトナー画像を形成させる、所謂4サイクル方式の画像形成装置である。この画像形成装置130は、駆動装置(図示せず)により所定の回転速度で図中の矢印Aの方向に回転される感光体ドラム1を備えており、感光体ドラム1の上方には、感光体ドラム1の外周面を帯電させる帯電装置22が設けられている。
【0091】
帯電装置22の上方には面発光レーザアレイを露光光源として備える露光装置30が配置されている。露光装置30は、光源から射出される複数本のレーザービームを、形成すべき画像に応じて変調すると共に、主走査方向に偏向し、感光体ドラム1の外周面上を感光体ドラム1の軸線と平行に走査させる。これにより、帯電した感光体ドラム1の外周面上に静電潜像が形成される。
【0092】
感光体ドラム1の側方には現像装置25が配置されている。現像装置25は回転可能に配置されたローラ状の収容体を備えている。この収容体の内部には4個の収容部が形成されており、各収容部には現像器25Y,25M,25C,25Kが設けられている。現像器25Y,25M,25C,25Kは各々現像ローラ26を備え、内部に各々イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)の色のトナーを貯留している。
【0093】
画像形成装置130でのフルカラーの画像の形成は、感光体ドラム1が4色分の画像形成をすることで行われる。すなわち、感光体ドラム1が4回画像形成する間、帯電装置22は感光体ドラム1の外周面を帯電させ、露光装置30は形成すべきカラー画像を表すY,M,C,Kの画像データのうちの何れかに応じて変調したレーザビームを感光体ドラム1の外周面上で走査させることを、感光体ドラム1が1回画像形成する毎にレーザビームの変調に用いる画像データを切替えながら繰り返す。また現像装置25は、現像器25Y,25M,25C,25Kの何れかの現像ローラ26が感光体ドラム1の外周面に対応している状態で、外周面に対応している現像器を作動させ、感光体ドラム1の外周面に形成された静電潜像を特定の色に現像し、感光体ドラム1の外周面上に特定色のトナー像を形成させることを、感光体ドラム1が1回画像形成する毎に、静電潜像の現像に用いる現像器が切り替わるように収容体を回転させながら繰り返す。これにより、感光体ドラム1の外周面上には、Y,M,C,Kのトナー像が順次形成されることになる。
【0094】
感光体ドラム1の下方には無端の中間転写ベルト50が配設されている。中間転写ベルト50はローラ51,53,55に巻掛けられており、外周面が感光体ドラム1の外周面に接触するように配置されている。ローラ51,53,55は図示しないモータの駆動力が伝達されて回転し、中間転写ベルト50を図中矢印B方向に回転させる。
【0095】
中間転写ベルト50を挟んで感光体ドラム1の反対側には1次転写ロール40が配置されており、感光体ドラム1の外周面上に順次形成されたY,M,C,Kのトナー像は1色ずつ転写ロール40によって中間転写ベルト50の画像形成面に転写され、最終的には、Y,M,C,K全てのトナー像が中間転写ベルト50上に積層される。
【0096】
さらに、感光体ドラム1を挟んで現像装置25の反対側には、感光体ドラム1の外周面に接触する潤滑剤供給装置29およびクリーニング装置27が配置されている。感光体ドラム1の外周面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト50に転写されると、潤滑剤供給装置29により感光体ドラム1の外周面に潤滑剤が供給され、当該外周面のうち転写されたトナー像を保持していた領域がクリーニング装置27により清浄化される。
【0097】
中間転写ベルト50よりも下方側には給紙装置60が配置されており、給紙装置60内には記録材料としての用紙Pが多数枚積層された状態で収容されている。給紙装置60の左斜め上方には取り出しローラ61が配置されており、取り出しローラ61による用紙Pの取り出し方向下流側にはローラ対63、ローラ65が順に配置されている。積層状態で最も上方に位置している記録紙は、取り出しローラ61が回転されることにより給紙装置60から取り出され、ローラ対63、ローラ65によって搬送される。
【0098】
また、中間転写ベルト50を挟んで、所謂バックアップローラ55の反対側には2次転写ロール42が配置されている。ローラ対63およびローラ65によって搬送された用紙Pは、中間転写ベルト50と2次転写ロール42との接触部に送り込まれ、中間転写ベルト50の画像形成面に形成されたトナー像が、バックアップロール55と転写ロール42によって用紙Pに転写される。転写ロール42よりも用紙Pの搬送方向下流側には、定着ローラ対を備えた定着装置44が配置されており、トナー像が転写された用紙Pは、転写されたトナー像が定着装置44によって溶融定着された後に画像形成装置130の機体外へ排出され、排紙受け(図示せず)上に載る。
【0099】
本実施形態においては、上記4サイクル方式の画像形成装置130でも、1次転写ロール40および2次転写ロール42の少なくとも一方に、好ましくは両方に、前述の本実施形態に係る転写ロールが用いられる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例および比較例について説明するが、特に以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
〔実施例1〕
<発泡弾性ロールの作製>
軟質スラブフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、商品名「EP70」)から、縦300mm以上400mm以下、横350mm以上500mm以下、高さ25mmの直方体を切り出した。前記の直方体のフォームから断面20mm角、長さ300mmの角柱体を切り出し、断面中心部に、その軸方向の全長さに渡って芯金を挿通するための直径6mmの貫通孔を設けた。その後、表面に接着層を形成した上記の芯金を、上記の貫通孔に挿入して接着した。次いで、その表面を常法によって研磨し外径12mmの発泡弾性ロールを得た。
【0102】
<導電性含浸液>
導電性含浸液として、カーボンブラックを分散させたウレタン系コーティング剤(商品名:Emralon345E、日本アチソン製)を用いた。
【0103】
<導電性ロールの作製>
前記発泡弾性ロールを回転させながら、セルの密部(=低抵抗部)とセルの疎部(=高抵抗部)で前記導電性含浸液の付着量が異なるように吐出量を変化させてスプレー塗布した。具体的には、10°ピッチ毎に軸方向にスプレーガンを1スキャンさせる方法によりスプレー塗布を行った。
具体的には、まずセルの密部において1スキャン当たりの塗布量が0.2gとなるように前記導電性含浸液を塗布した(以下、「条件A」と称す)。次いで、この発泡弾性ロールを120℃に設定されたキュア炉中で20分間加熱して乾燥し、水分を除去するとともにウレタン樹脂を架橋させた。架橋により硬化したウレタン樹脂によってフォームの気泡壁および骨格にカーボンブラックを固着させた。その後、ウレタン樹脂の架橋が進み、カーボンブラックは気泡壁等により強固に固着され、第1の導電性膜を形成した。
次いで、セルの疎部において1スキャン当たりの塗布量が0.4gとなるように前記導電性含浸液を塗布した(以下、「条件B」と称す)。次いで、この発泡弾性ロールを120℃に設定されたキュア炉中で20分間加熱して乾燥し、水分を除去するとともにウレタン樹脂を架橋させた。架橋により硬化したウレタン樹脂によってフォームの気泡壁および骨格にカーボンブラックを固着させた。その後、ウレタン樹脂の架橋が進み、カーボンブラックは気泡壁等により強固に固着され、第2の導電性膜を形成した。こうして導電性の発泡弾性ロールAを得た。
【0104】
<セル密部とセル疎部に形成した第1および第2の導電性膜の導電率の確認>
前記導電性含浸液を前記の条件Aおよび条件Bで、絶縁性樹脂板上にスプレー塗布した後、加熱乾燥させ水分を除去し導電性樹脂膜を形成したところ、導電性樹脂膜の厚さはそれぞれ(条件A/第1の導電性膜)15μm、(条件B/第2の導電性膜)30μmであった。これらの導電性樹脂膜を22℃55%RHの環境下で、50V印加したときの30秒後の表面抵抗率を測定したところ、それぞれの表面抵抗率は(第1の導電性膜)5.0×10(Ω/□)、(第2の導電性膜)1.6×10(Ω/□)であった。
【0105】
<導電性ロールの評価>
−濃度ムラ発生に対する耐久性の評価−
上記の導電性の発泡弾性ロールを、4サイクル型の画像形成装置(富士ゼロックス(株)製、製品名:Docu PrintC3050)の1次転写ロールとして用い、画像の濃度ムラが発生するまでのプリント枚数を測定すると共に、画像の濃度ムラの発生に対する耐久性を評価した。
尚、評価基準は以下の通りである。
◎ :濃度ムラが発生までのプリント枚数が1.0×10枚以上
○ :濃度ムラが発生までのプリント枚数が5.0×10枚以上
△ :濃度ムラが発生までのプリント枚数が2.5×10枚以上
× :濃度ムラが発生までのプリント枚数が2.5×10枚未満
××:濃度ムラが発生までのプリント枚数が1.0×10枚以下
【0106】
−初期およびプリント後の抵抗面内ムラの評価−
また、Advantest社製R8320を用い初期(実機評価前)と3×10枚プリント後(実機評価後)の導電性の発泡弾性ロールの抵抗面内ムラを評価した。その結果、初期抵抗面内ムラはΔ=0.20logΩ、プリント後の抵抗面内ムラはΔ=0.28logΩであった。詳細な評価結果を下記表1に示す。
【0107】
〔実施例2〜3〕
実施例1で用いたものと同じ材質および形状を有する芯金および導電性ウレタンフォームで、ウレタンフォームの抵抗ムラが実施例1より大きなフォーム(初期抵抗面内ムラが下記表1に記載のフォーム)を用い、実施例1に記載の方法により導電性の発泡弾性ロールを作製した。
その結果、実機評価前後の抵抗面内ムラの変動幅が実施例1よりも大きくなった。実施例1に記載の方法により行った評価結果を下記表1に示す。
【0108】
〔実施例4〕
軟質スラブフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、商品名「EP70」)から、縦300mm以上400mm以下、横350mm以上500mm以下、高さ25mmの直方体を切り出した。このフォームを、カーボンブラックが40質量%含有され、かつ分散された水分散体と、アクリル系エマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol LX852」)とを1:1に混合した導電処理液に20℃で15分間浸漬した。
【0109】
その後、水、カーボンブラックおよびアクリル樹脂が気泡内に含浸された上記フォームを、間隔0.2mmに設定された一対のロール間を通過させて水分等を除去した。次いで、このフォームを100℃に設定されたキュア炉中で60分間加熱して乾燥し、水分を除去するとともにアクリル樹脂を架橋させた。架橋により硬化したアクリル樹脂によってフォームの気泡壁および骨格にカーボンブラックを固着させた。その後、アクリル樹脂の架橋が進み、カーボンブラックは気泡壁等により強固に固着された。
【0110】
上記のフォームから断面20mm角、長さ300mmの角柱体を切り出し、断面中心部に、その軸方向の全長さに渡って芯金を挿通するための直径6mmの貫通孔を設けた。その後、表面に接着層を形成した実施例1にて用いた芯金を、上記の貫通孔に挿入して接着した。次いで、その表面を常法によって研磨し外径12mmの発泡弾性ロールBを得た。
【0111】
続いて前記導電性発泡ロールBのセルの疎部に実施例1に記載の方法により1スキャン当たりの塗布量が0.4gとなるように、実施例1にて用いた導電性含浸液をスプレー塗布した。この発泡弾性ロールを100℃に設定されたキュア炉中で60分間加熱して乾燥し、水分を除去するとともにウレタン樹脂を架橋させた。架橋により硬化したウレタン樹脂によってフォームの気泡壁および骨格にカーボンブラックを固着させた。その後、ウレタン樹脂の架橋が進み、カーボンブラックは気泡壁等により強固に固着された導電性発泡ロールCを得た。
実施例1に記載の方法により行った評価結果を下記表1に示す。
【0112】
〔比較例1〜2〕
実施例1において、セルの密部とセルの疎部で前記導電性含浸液の付着量を変えず、ロール全体に等しい付着量となるよう塗布し、得られた導電性発泡ロールの周方向の初期抵抗面内ムラが、それぞれ0.80logΩ、0.97logΩとなる導電性発泡ロールを作製した。
実施例1に記載の方法により行った評価結果を下記表1に示す。
【0113】
【表1】



【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本実施形態に係る導電性ロールを示す概略図である。
【図2】図1におけるA−A線断面を示す概略図である。
【図3】本実施形態に係る気泡の壁面に導電率の異なる樹脂組成物による膜を設ける領域を示す概略断面図である。
【図4】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】本実施形態に係る画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【図6】本実施形態に係る画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【図7】本実施形態に係る画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【図8】(a)は表面抵抗率の測定に用いる円形電極を示す概略平面図であり、(b)は(a)における概略断面図である。
【符号の説明】
【0115】
1 電子写真感光体
10 導電性ロール
12 導電性支持体(芯金)
14 発泡弾性層(発泡弾性体)
16 接着層
18 気泡
20 プロセスカートリッジ
21 帯電ロール
22 帯電装置
25 現像装置
30 静電潜像形成装置(露光装置)
40 転写ロール
42 転写ロール
44 定着装置
50 中間転写体
55 バックアップロール
60 給紙装置
100,110,120,130 画像形成装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する円筒状の支持体と、
前記支持体の周囲に設けられ、配向性をもって設けられた気泡を有する弾性層と、
前記支持体の軸方向から見て、前記気泡の長手方向の一方を前記支持体の周方向の0°方向と定義したときに、少なくとも−20°〜20°および160°〜200°の方向における前記弾性層の気泡の壁面に設けられ、導電剤を含有した第1の樹脂組成物により形成される第1の膜、並びに、少なくとも70°〜110°および250°〜290°の方向における前記弾性層の気泡の壁面に設けられ、導電剤を含有した第2の樹脂組成物により形成されると共に、前記第1の膜よりも導電率が高い第2の膜と、を備えることを特徴とする導電性のロール。
【請求項2】
前記第1の樹脂組成物と前記第2の樹脂組成物とが、導電率が等しい導電剤を含有し、且つ前記第1の樹脂組成物における導電剤の含有率が、前記第2の樹脂組成物における導電剤の含有率よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載の導電性のロール。
【請求項3】
前記第1の樹脂組成物と前記第2の樹脂組成物とが、導電率が異なる導電剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の導電性のロール。
【請求項4】
前記第1の樹脂組成物と前記第2の樹脂組成物とが、導電率が等しい導電剤を等しい含有率で含有すると共に、前記第1の膜の膜厚が、前記第2の膜の膜厚よりも薄いことを特徴とする請求項1に記載の導電性のロール。
【請求項5】
前記弾性層が、ウレタンスラブフォームであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の導電性のロール。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電性のロールを備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電性のロールを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−78716(P2010−78716A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244825(P2008−244825)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】