説明

導電性インキ

【課題】印刷乾燥後の皮膜強度が強固であり、さらに優れた導電性を有し、細線印刷性が良好である導電性インキを提供することを目的とする。
【解決手段】導電性物質およびバインダー樹脂を含有する導電性インキにおいて、バインダー樹脂がポリエステル樹脂およびニトロセルロース樹脂であり、導電性物質がBET比表面積0.10〜5.00 m/g,タップ密度1.0〜10.0 g/cm,平均粒径0.1〜5.0 μmおよび真球度が0.9〜1.0である球状の銀粉であり、更にアルミニウムキレートを含む導電性インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性回路形成のためのプリント基板製造用導電性インキに係り、さらに詳細にはアルミニウムキレートを含む。優れた導電性を有し、印刷乾燥後の皮膜強度が強固で有り、さらに高細線印刷性が良好である導電性インキに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品、電磁波シールド用の薄膜形成あるいは導電回路のパターニングとして、一般的に、エッチング法および印刷法が知られている。エッチング法については、金属の表面や形状を、化学的あるいは電気化学的に溶解除去し、それの表面処理を含めた広義の加工技術とすることである。エッチングはすなわち化学加工の一種であり、主に金属表面に希望のパターン形状を得るために行われるが、一般的に工程が煩雑であり、また後工程で廃液処理が必要であるため、問題が多い。また、エッチング法によって形成された導電回路は、アルミニウムや銅など金属のみで形成されたものであるため、折り曲げ等の物理的衝撃に対して弱いという問題がある。
【0003】
一方、印刷法は熱硬化型または熱可塑型の導電性インキなどによる回路パターンを印刷し、熱処理により焼結する技術である。この印刷法に用いられる導電性のインキは主成分として銀等の金属粉末を含有しているため、良好な導電性を有する。また、印刷についてもスクリーン印刷を代表として種々の方法によりポリアミドフィルム、PETフィルム、セラミック、ガラス等に回路パターンが形成される。
【0004】
導電性インキは、熱硬化性樹脂と硬化剤または、熱可塑性樹脂を樹脂ワニスとして使用し、導電体としての金属粉や金属ナノ粒子、溶媒分として、有機溶剤や水を含有したものである。ここで使用される金属粉としては、銀が一般的でありその形状も種々であるが、印刷される導電回路の導電性向上の点からは、接触面積の大きいフレーク形状や扁平形状のものが使用される例が多い。
【0005】
しかし、そのような形状の銀粉では細線印刷性が悪いといった問題が挙げられる。
これら導電性インキは、電子部品の小型軽量化あるいは生産性の向上、低コスト化が期待でき、基材に印刷あるいは塗工し、乾燥させることによって容易に高い導電性を付与できることにより、また、乾燥、硬化工程を低温にて行うことが出来るため、基材や電子部品に高熱によるダメージを与えないこと、工程が短くコスト削減ができること、環境への付加がエッチング法に比して非常に小さいことなどから、近年急速に需要が高まっている。
導電性インキはこれまでにも提案されており、特開2005−56778号広報、特開2008−1711828号広報にはフレーク状の銀粉を使用した導電性インキについて提案されている。これらは、優れた導電性を有しているが、フレーク状の銀粉を使用した導電性インキについて提案されているが、EMIシールド等の用途に使用する場合には、細線をうまく印刷できない。
【0006】
さらに、近年、活性エネルギー線にて硬化する導電性インキの例も開示されている。特開2002−72468号公報、特開2003−110225号公報では、体積固有抵抗値が10−4Ω・cmが開示されているが高抵抗である。特開2003−140330号公報では10−6Ω・cmの低抵抗を有する導電性インキが開示され、導電性が高く、応用範囲は広いが、ラジカル発生剤と紫外線とによりラジカルを発生させた後に250℃で30分以上の加熱を必要としており、熱の影響を受ける基材には適さない。
【0007】
特開2000−305260号公報には、感光性導電体ペーストとして、アルカリ可溶性ネガ型感光性樹脂組成物、光重合開始剤、金属粉末および金属超微粒子からなる感光性ペーストが開示されている。したがって、該公報では、感光性樹脂組成物をパターニングした後、電気炉やベルト炉等の焼成炉で有機成分を揮発させ、無機粉末を焼成させることにより導電性パターン膜を形成しており、その際の焼成の雰囲気は、大気中または窒素雰囲気あるいは水素雰囲気中で、500℃以上であり、熱の影響を受ける基材には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−56778号広報
【特許文献2】特開2008−1711828号広報
【特許文献3】特開2002−72468号広報
【特許文献4】特開2003−110225号広報
【特許文献5】特開2003−140330号広報
【特許文献6】特開2000−305260号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の熱可塑型の導電性インキを使用した印刷による導通回路の形成において、優れた導電性を実現するためには導電性物質として接触面積の大きいフレーク形状や扁平形状のものが使用される例が多かった。しかし、そのような導電性インキでは、細線印刷性が悪く、導電回路としての信頼性の点で難点がある。また、本発明にて使用しているポリエステル系樹脂単体のバインダーでは、皮膜の耐熱性が弱く、熱による表面剥離が起こる可能性がある。そこで、本発明では、印刷乾燥後の皮膜強度が強固であり、さらに優れた導電性を有し、細線印刷性が良好である導電性インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を解決するために発明者等は、鋭意研究した結果、導電性物質がタップ密度1.0〜10.0 g/cm、BET比表面積0.10〜5.00 m/gおよび平均粒径0.1〜5.0 μmである球状の銀粉、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース樹脂であり、導電性物質がタップ密度1.0〜10.0 g/cm、BET比表面積0.10〜5.00 m/gおよびアルミニウムキレートを含む導電性インキが印刷乾燥後の皮膜強度が強固であり、さらに優れた導電性を有し、細線印刷性が良好であることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明における導電性インキは、銀、バインダー樹脂およびアルミニウムキレートを含有してなる導電インキにおいて、
銀が、タップ密度1.0〜10.0 g/cm
BET比表面積0.10〜5.00 m/g、
平均粒径0.1〜5.0 μm
および
真球度0.9〜1.0
であり、
バインダー樹脂が、下記ポリエステル樹脂(A)およびニトロセルロース樹脂
であることを特徴とする導電性インキに関するものである。
【0012】
ポリエステル樹脂(A)が、
重量平均分子量23,000〜60,000、
ガラス点移転温度50〜120℃
および
粘度10〜30Pa・s
であるものである。
【0013】
さらに、本発明は、
重量平均分子量3000〜5000、
ガラス転移温度50〜120℃
および
粘度100〜300mPa・s
であるポリエステル樹脂(B)が、導電性インキに含有されてなることを特徴とする上記の導電性インキに関するものである。
【0014】
また、本発明は、アルミニウムキレートが、分子量200〜300であり、1分子中にエチルアセトアセテート基を1個含んでいる金属キレートであることを特徴とする上記の導電性インキに関するものである。
【0015】
さらに、本発明は、上記の導電性インキをポリエチレンテレフタレートフィルム基材上に塗布し、乾燥させてなることを特徴とする導電性フィルムに関するものである。
また、本発明は、上記の導電性インキを基材上に塗布し、乾燥させてなる導電回路に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明にて得られた導電性インキは、バインダー樹脂としてポリエステル樹脂とニトロセルロース樹脂を含むことを特徴とする。このポリエステル樹脂は、ポリエステル(A)単独およびポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを併用することが好ましい。また、粒径の小さな球状銀を使用しているため細線印刷性に優れ、更に接触面積の大きいフレーク形状や扁平形状の導電性物質を用いた導電性インキと同等の優れた導電性を有する。さらに、ニトロセルロース樹脂を用いることで印刷乾燥後の皮膜強度が強固であるという性質を有する。これらの性質を有することより、本発明にて得られた導電性インキは実用物性において優れている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、実施の形態に基づいて更に詳しく説明するが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明の導電性インキは、銀粉と、ポリエステル樹脂と、ニトロセルロース樹脂、アルミニウムキレートを含むものである。この導電性インキはアルミニウムキレートを含むことで銀粉の分散性が良好となり、さらに硬化収縮を起こすため、銀同士の接触確率が増え、優れた導電性を実現することが可能となったと推定できる。更に、ニトロセルロース樹脂を含むことで、印刷乾燥後の皮膜強度を向上させることが可能となった。
【0019】
本発明の導電性インキは、バインダー樹脂と導電性物質とを含み、更に抵抗値を低下させるための添加剤として、アルミニウムキレートを、皮膜強度向上のためにニトロセルロース樹脂を含み、ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする。また、バインダー樹脂であるポリエステル樹脂はポリエステル樹脂(A)単独、またはポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを併用して用いることができるが、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を併用することで、印刷適性が向上する。
【0020】
本発明において、アルミニウムキレートは乾燥時の熱により硬化収縮を起こすために、銀粉同士の接触確率が増え、ポリエステル系樹脂においても低い抵抗率が得られる。
ここで、本発明に用いられるアルミニウムキレートは、分子量が200〜300のものが好適である。
【0021】
更に、本発明のアルミニウムキレートは、エチルアセトアセテート錯体であり、その1分子中にエチルアセトアセテート基を1個以上含むアルミニウムキレートである。本発明においてエチルアセトアセテート基は、-(-O-C-CH-CH-C-CH=O-)-の構造を有するものである。分子量が300より大きく、および/または長鎖のアルキル基を含むアルミニウムキレートはポリエステル樹脂と銀粉とのいわゆる「濡れ」が阻害されてしまい、抵抗値の低下に対する寄与は少ない。
【0022】
その添加量は、樹脂に対して0.2〜20重量%であることが好ましい。特に2〜9重量%が好ましい。0.2重量%未満では効果がないことがあり、20重量%より多いと抵抗値が上昇する。
【0023】
導電性インキに含まれる導電性物質は、フレーク状、球状、凝集粉のいずれの形状の銀粉も使用できるが、本発明において目的である細線印刷性の点からは粒径の小さな球状のものが好ましい。すなわち、球状銀粉としては、タップ密度1.0〜10.0 g/cm、BET比表面積0.10〜5.00 m/gおよび平均粒径0.1〜5.0 μm、真球度が0.9〜1.0であることが好ましい。さらに好ましくは、タップ密度3.0〜6.0 g/cm、BET比表面積0.80〜2.30 m/gおよび平均粒径0.3〜1.2 μmである球状の銀粉である。平均粒径が5.0 μmより大きいと細線印刷性が悪くなる可能性が大きく、0.1 μm未満では分散が悪くなるために銀粉同士の接触不良が生じ、抵抗値が大きくなる可能性がある。
【0024】
本発明において、タップ密度とは、タップ密度測定装置にて測定した値を記載した。BET比表面積は、島津製作所製流動式比表面積測定装置「フローソーブII」を用いて測定した表面積より以下の計算式により算出した値を比表面積と定義し記載した。
比表面積(m/g)=表面積(m)/粉末質量(g)
【0025】
平均粒径は、島津製作所製レーザー回折粒度分布測定装置「SALAD−3000」を用いて測定した体積粒度分布の累積粒度50の粒子径(D50)を平均粒子径(μm)と定義し記載した。
【0026】
真球度とは、走査型電子顕微鏡により、形状の観察を行い、粒子の最短径(μm)/最長径(μm)の比率と定義し、記載した。ただし、真球は真球度が「1」である。
【0027】
本発明に用いられる導電性インキに含まれるバインダー樹脂は、ポリエステル樹脂であることが好ましい。このポリエステル樹脂が、重量平均分子量23,000〜60,000、ガラス点移転温度0〜10℃、および粘度10〜30Pa・sであるポリエステル樹脂(A)単独、または、重量平均分子量3000〜5000、ガラス転移温度20〜100℃および粘度100〜300mPa・sであるポリエステル樹脂(B)と併用することが好ましい。
【0028】
本発明において、粘度とは、東機産業株式会社製RB80型粘度計RB80Lにて測定したものを記載した。樹脂の粘度は、それぞれの樹脂40部をエチルジグリコールアセテート60部と混合、加熱攪拌し、ワニスとして測定を行った。測定条件は、25℃で行い、ポリエステル(A)は、M4ローターを使用し、回転数6rpm、ポリエステル樹脂(B)は、M1ローターを使用し、回転数6rpmで測定を行った。また、ポリエステル樹脂(A)のみでも良いが、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを併用することで印刷性が向上する。
【0029】
本発明に用いられるバインダー樹脂はポリエステル樹脂(A)単独、またはポリエステル一樹脂(B)との併用することができる。更に、その他の樹脂を併用して用いることができる。併用できる樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ケトン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコン樹脂、ニトロセルロース、ロジン、ロジンエステル、等が挙げられる。併用する樹脂は、印刷方法の種類及び印刷基材の種類や印刷条件、回路の用途に応じてポリエステル樹脂およびニトロセルロース樹脂と組み合わせて使用することができる。
【0030】
また、これらの樹脂を希釈するための溶剤は、使用する樹脂の溶解性に合わせて選択することができる。また、導電性インキ中のバインダー樹脂の含有量は、導電性インキの総固形分重量を基準(100重量%)として5〜30重量%であることが好ましく,8〜25重量%であることがより好ましい。導電性物質の含有量が70重量%未満の場合は導電性が十分ではなく、95重量%を超える場合は印刷適性及び導電性が低下するためである。
【0031】
ポリエステル樹脂(A)は重量平均分子量が23,000〜60,000、Tgが0〜10℃、さらにこの樹脂40部を溶剤エチルジグリコールアセテート60部で混合、加熱攪拌し、溶解させたワニスを東機産業株式会社製RB80型粘度計RB80Lにて測定した粘度が25℃、6rpmで10〜30Pa・sであるものが好ましい。60,000より大きいと粘度が高くなり印刷適性が悪くなる可能性がある。また、23,000未満だと、細線印刷性が悪くなる可能性がある。
【0032】
上記のポリエステル樹脂(A)と混合して用いてよいポリエステル樹脂(B)は重量平均分子量が3,000〜5,000、Tgが20〜100℃、さらにこの樹脂40部を溶剤エチルジグリコールアセテート60部で混合、加熱攪拌し、溶解させたワニスを東機産業株式会社製RB80型粘度計RB80Lにて測定した粘度が25℃、6rpmで100〜300mPa・sであるものが好ましい。このポリエステル樹脂(B)は、印刷適性を向上させるために添加しているため、重量平均分子量が5,000より大きいと混合する意味がなく、重量平均分子量が3,000未満では、粘度が低くなりすぎてしまうため、細線印刷性が悪くなる可能性が大きい。
【0033】
導電性物質とバインダー樹脂の比率は導電性インキの総固形分重量を基準(100重量%)として導電性物質が70〜95重量%に対してバインダー樹脂が5〜30重量%であり、更に導電性物質80〜92重量%に対してバインダー樹脂8〜20重量%であることが好ましい。導電性物質の含有量が70重量%未満の場合は導電性が十分ではなく、95重量%を超える場合は印刷適性及び導電性が低下するためである。
【0034】
本発明に用いられる導電性インキに含まれる溶剤は、印刷方法等の種類に応じて、グリコールエーテル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、石油系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族系溶剤、アルコール系溶剤、水等を適量使用することができ、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0035】
グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、及びこれらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジアルキルエーテル類が挙げられ、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、イソホロン、γ−ブチルラクトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。また、芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン等が挙げられる。また、エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3-メトキシブチル等が挙げられ、脂肪族系溶剤としては、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンが挙げられ、アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、シクロヘキサノール、3-メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。また、石油系溶剤としては、ナフタレン系炭化水素溶剤、パラフィン系炭化水素溶剤等が挙げられる。また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ-n-ブチルカーボネートが挙げられる。上記溶剤は例示であり、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明の導電性インキの製造方法は、銀粉、バインダー樹脂、アルミニウムキレート、溶剤をディスパーにて混合する。必要に応じてさらに3本ロールにて混合分散させる。最後にろ過を行い、導電性インキを製造する。
【0037】
最後に、本発明の導電性インキを用いて形成された導電回路について説明する。本発明の導電性インキを、使用用途に応じて紙、プラスチック等の基材の片面または両面上に、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷等、従来公知の印刷方法を用いて印刷することで導電回路を形成することができる。
【0038】
本発明の導電性インキを用いることにより、通常の印刷方法によって導電回路が形成できるため、既存の設備を生かした設計が可能である。すなわち、絵柄等の意匠性を高めるための通常の印刷を施した後に、そのまま導電回路を印刷、形成することが可能なため、従来、エッチング法や転写法で行っていた回路形成法と比較して、生産性、初期投資コスト、ランニングコストの点ではるかに優れている。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、本発明中の「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を特に断りのない限り表す。
【0040】
[バインダー1]
東洋紡績株式会社製ポリエステル樹脂バイロン300(重量平均分子量23×10 、Tg 7℃)40部をエチルカルビトールアセテート60部と混合し加熱攪拌し、ワニス状バインダー1を調整した。
【0041】
[バインダー2]
東洋紡績株式会社製ポリエステル樹脂バイロン630(重量平均分子量23×10、Tg 7℃)40部をエチルカルビトールアセテート60部と混合し加熱攪拌し、ワニス状バインダー2を調整した。
【0042】
[バインダー3]
東洋紡績株式会社製ポリエステル樹脂バイロン220(重量平均分子量3×10、Tg 53℃)40部をエチルカルビトールアセテート60部と混合し加熱攪拌し、ワニス状バインダー3を調整した。
【0043】
[バインダー4]
東洋紡績株式会社製ポリエステル樹脂バイロン226(重量平均分子量8×10、Tg 65℃)40部をエチルカルビトールアセテート60部と混合し加熱攪拌し、ワニス状バインダー4を調整した。
【0044】
[バインダー5]
積水化学工業株式会社ブチラール系樹脂BL-S(計算分子量2.3×10,Tg 61℃)30部をブチルカルビトールアセテート70部と混合し加熱攪拌し,ワニス状バインダー5を調整した。
【0045】
[バインダー6]
ニトロセルロース樹脂33.7部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)51.8部およびイソプロピルアルコール(IPA)14.5部と混合し加熱攪拌し、ワニス状バインダー6を調整した。
【0046】
[銀粉A]
DOWAエレクトロニクス株式会社製球状銀(比表面積0.93 m/g、タップ密度5.5 g/cm、平均粒径0.9 μm、真球度0.9〜1.0)を銀粉Aとした。
【0047】
[銀粉B]
DOWAエレクトロニクス株式会社製球状銀(比表面積1.77 m/g、タップ密度4.0 g/cm、平均粒径0.5 μm、真球度0.9〜1.0)を銀粉Bとした。
【0048】
[銀粉C]
福田金属箔粉工業株式会社製フレーク銀(平均粒子径6.2μm、比表面積0.8 m/g)を銀粉Cとした。
【0049】
[キレートa]
川研ファインケミカル株式会社製アルミニウムキレート(一般式(1))をアルミニウムキレートaとした。
一般式(1)
【0050】
【化1】

【0051】
【表1】

【0052】
〔導電性インキの調整〕
表1記載の実施例1〜5、比較例1〜4の配合比率にて銀粉、バインダー樹脂、アルミニウムキレート、溶剤をディスパーにて混合後、3本ロールにて混合分散させ、導電性インキを調整し、得られた導電性インキの特性を下記の方法で測定した。
【0053】
〔導電回路の作製〕
厚さ75μmのPETフィルムに実施例1〜5、比較例1〜4記載の導電性インキを15 mm×60 mmのパターンをスクリーン印刷し、180 ℃のボックス型オーブンにて30分間乾燥した印刷物を導電回路とした。
【0054】
〔表面抵抗率の測定〕
厚さ75μmのPETフィルムに実施例1〜5、比較例1〜4記載の導電性インキを3 mm×90 mmのパターンをスクリーン印刷し、180 ℃のボックス型オーブンにて30分間乾燥後、得られた印刷物の抵抗率を株式会社三菱化学アナリテック製抵抗率計ロレスタGPにて測定した。
【0055】
〔膜厚の測定〕
上記印刷物の膜厚は株式会社仙台ニコン製MH-15M型測定器を用いて測定した。
【0056】
〔体積抵抗率の算出〕
上記方法で測定された表面抵抗値、および膜厚より、体積抵抗値を算出した。
体積抵抗値の目標値は2.5×10-5Ω・cm以下である。なお、2.5〜8.0×10-5Ω・cmは、一応実用性があるが、8.0×10-5以上では実用性がないと判断できる。
【0057】
〔乾燥皮膜強度の測定〕
上記印刷物の皮膜強度はヒートシール試験機を用いて測定した。上記の方法で印刷乾燥した印刷物表面にアルミホイルをのせ、ヒートシールをした後、印刷物とアルミホイルとを手ではがしてから印刷物と接触した側のアルミホイルの表面を観察し、目視でインキの存在量を確認した。ヒートシール条件は、180℃1fkg/cm2で10秒間圧力をかけて行った。なお、以下の評価方法にて評価した。
○:インキなし
△:エッジ部分にインキあり
×:インキあり
【0058】
〔細線印刷性の確認〕
厚さ75μmのPETフィルムに実施例1〜5、比較例1〜4記載の導電性インキを0.1 mm×50 mmのパターンをスクリーン印刷し、180 ℃のボックス型オーブンにて30分間乾燥させた。その印刷物を中村製作所製二次元測定機にて印刷物の線幅を確認した。
○:線幅が0.2μm以下
△:線幅が0.2μm〜0.4μm
×:線幅が0.4μm以上
【0059】
〔実施例1〜5〕
得られた導電回路は180 ℃30分間の乾燥条件で体積抵抗が目標値の2.5×10-5以下の高い導電性が得られた。また、細線印刷性、皮膜強度等も良好であった。
【0060】
〔比較例1〜4〕
バインダーおよび銀粉は実施例と同様で金属キレートを添加していない比較例1と実施例の樹脂を変更した比較例2は、実施例1〜5と比較して高抵抗の実用性のない体積抵抗値となった。また、フレーク銀を使用した比較例3は抵抗値、ヒートシール試験は良好であったが、細線印刷性が悪かった。ニトロセルロース樹脂を添加していない比較例4では、皮膜強度が弱く実用範囲外である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀、バインダー樹脂およびアルミニウムキレートを含有してなる導電インキにおいて、
銀が、タップ密度1.0〜10.0 g/cm
BET比表面積0.10〜5.00 m/g、
平均粒径0.1〜5.0 μm
および
真球度0.9〜1.0
であり、
バインダー樹脂が、下記ポリエステル樹脂(A)およびニトロセルロース樹脂
であることを特徴とする導電性インキ。
ポリエステル樹脂(A)が、
重量平均分子量23,000〜60,000、
ガラス点移転温度50〜120℃
および
粘度10〜30Pa・s
であるものである。
【請求項2】
さらに、重量平均分子量3000〜5000、
ガラス転移温度50〜120℃
および
粘度100〜300mPa・s
であるポリエステル樹脂(B)が、導電性インキに含有されてなることを特徴とする請求項1記載の導電性インキ。
【請求項3】
アルミニウムキレートが、分子量200〜300であり、1分子中にエチルアセトアセテート基を1個含んでいる金属キレートであることを特徴とする請求項1または2記載の導電性インキ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の導電性インキをポリエチレンテレフタレートフィルム基材上に塗布し、乾燥させてなることを特徴とする導電性フィルム。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の導電性インキを基材上に塗布し、乾燥させてなる導電回路。

【公開番号】特開2010−235738(P2010−235738A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84507(P2009−84507)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】