説明

導電性ゴムローラの製造方法、導電性ゴムローラ及び転写ローラ

【課題】周方向の硬度及び抵抗にムラがない電子写真装置等に有用な導電性ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】導電性芯金上にゴム層が成形されている導電性ゴムローラの製造方法において、ゴム層が未加硫時には厚みが4mm以上13mm以下であり、該ゴム層を加硫する際の加熱が少なくとも熱風加熱と電磁波加熱であり、これらの加熱は加硫炉内で連続的又は同時に該ゴム層に施され、該加硫時のゴム層の未加硫時の厚みの1/2の深さにおける内部温度が、加硫炉内の温度に対して±10℃にあること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において、使用される導電性ゴムローラ及び製造方法に関し、更には、感光体等の像担持体に電子写真プロセス、静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像を紙等の記録媒体、転写材に転写させる転写装置の転写ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなど、電子写真方式の画像形成装置(以下、電子写真装置という)の多くに帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の導電性ゴムローラが用いられている。
【0003】
これらの導電性ゴムローラにおいて、ゴム層に導電性を付与するのに、カーボンブラックなどの導電性の充填剤を加える方法やアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性のゴム材料を使用する方法がある。
【0004】
また、これらの導電性ゴムローラは、各々ドラムに対して荷重が加えられた状態で接触しており、さらに、用途の上で長時間通電されている。そのため、抵抗値の変動が小さいゴム材料が望ましく、また、製造方法の問題等から転写ローラや帯電ローラではアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム等のゴム材料が広く使用されている(特許文献1)。
【0005】
これらの導電性ゴムローラの製造では、まず、上記ゴム材料に、加硫剤、発泡剤、充填剤などを混練した原料ゴム組成物を用い、金型、押出機などで未加硫の円筒状成形体とした後、加熱により加硫・発泡させて円筒状ゴムチューブとされる。その後、該ゴムチューブに芯金を圧入し、外径を研磨してローラ形状を整える手法が用いられている。
【0006】
上記円筒状ゴムチューブの製造方法としては、例えば高圧蒸気による加硫缶加硫、筒型等による金型加硫、マイクロ波照射によるマイクロ波加硫が知られている(例えば、特許文献2)。
【0007】
しかしながら、加硫缶加硫では発泡体のセルが不均一で所望のセルを表面に出すためには多量の研磨を行わなくてはならず、金型加硫においては段取りに時間がかかり、かつ、金型洗浄を行う必要があり、何れも、量を数多く作るのには不向きであった。
【0008】
一方、マイクロ波加硫では、連続化が容易で段取りが良く、セルも均一となりうるが、ゴムチューブが炉内で軟化した時にコンベアやローラ等の搬送物との接触面が増大し、セルの発泡ムラが増加することがあった。更にマイクロ波加熱炉(UHF)の温度が高い場合ではさらにゴムが軟化し、チューブの内径が保持できず、チューブの製造が困難となる場合があった。更に、このチューブの不均一に起因して周方向の硬度及び抵抗のムラの原因となっていた(特許文献5)。
【0009】
上記内外径の不均一に対して、複層構造のチューブを用いて内層のゴム組成物を選択的に加硫してチューブの内径を保持することが報告されている(特許文献3)。
【0010】
しかし、単層からなるゴム組成物のチューブの製造方法については未だ改善されていない。さらに、上記UHFを用いた例では、該ゴムチューブを製造する場合において、昇温条件まで検討がされておらず、特にゴム層が厚い場合、加熱のバラツキによる硬度ムラが問題となっていた。
【特許文献1】特開平11−065269号公報
【特許文献2】特開平11−114978号公報
【特許文献3】特開2003−246485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の課題は、電子写真装置に用いうる導電性ゴムローラを、周方向の硬度及び抵抗にムラがなく製造できる方法を提供することであり、該製造方法で作成した導電性ゴムローラ、また、該導電性ゴムローラである転写ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、下記構成により達成される。
【0013】
(1)導電性芯金上にゴム層が成形されている導電性ゴムローラの製造方法において、ゴム層が未加硫時には厚み4mm以上13mm以下であり、該ゴム層を加硫する際の加熱が少なくとも電磁波加熱及び熱風加熱手段であり、これら加熱は同一加硫炉内で連続的かつ同時に該ゴム層に施され、該加硫時のゴム層の未加硫時の厚みの1/2の深さにおける内部温度が、加硫炉内の雰囲気温度に対して±10℃の範囲内にあることを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【0014】
(2)熱風加熱の熱風が150℃以上250℃以下であることを特徴とする上記(1)の導電性ゴムローラの製造方法。
【0015】
(3)電磁波加熱の電磁波の波長が0.7×10-4m以上1.0m以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)の導電性ゴムローラの製造方法。
【0016】
(4)電子写真装置に用いる導電性ゴムローラであって、該導電性ゴムローラは上記(1)〜(3)いずれかの導電性ゴムローラの製造方法により製造されたものであることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【0017】
(5)上記(4)の導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラ。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、硬度及び抵抗のムラが無いゴム層を有する導電性ゴムローラが提供される。なお、本発明による導電性ゴムローラは電子写真装置用ローラ、特に転写ローラに好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、図1の斜視図に示すような導電性芯金1上にゴム層2が成形されている導電性ゴムローラの製造方法に関するものである。その特徴は、ゴム層が未加硫時には厚み4mm以上13mm以下であり、ゴム層を加硫するのに、少なくとも2種類の加熱手段、すなわち、電磁波加熱及び熱風加熱手段が併用され、これら加熱手段が同一加硫炉内で連続的かつ同時に未加硫のゴム層に施される。そして、該加熱時には、未加硫ゴム層の厚みの1/2の深さにおけるゴム層の温度が、加硫炉内の雰囲気温度に対して±10℃の範囲内にあることである。
【0020】
以下に本発明をさらに詳しく説明する。
【0021】
(電子写真装置)
図2に、本発明に係る導電性ローラを電子写真装置に用いた一例の模式図を示す。
【0022】
本電子写真装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という。)21を備えている。感光ドラム21は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層が設けられている。この感光ドラム21は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0023】
感光ドラム21表面は、接触帯電部材としての帯電ローラ22によって均一に帯電される。帯電ローラ22は、感光ドラム21表面に接触配置されており、感光ドラム21の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ22には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)から振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、その表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電された感光ドラム21表面は、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光23、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム21表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。
【0024】
その静電潜像は、現像装置24の現像スリーブ24aに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0025】
一方、給紙部(不図示)から給搬送された紙等の転写材27が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム21と転写ローラ26との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム21上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材27は、転写バイアス印加電源により転写ローラ26に印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム21上のトナー像が転写される。このとき、転写材27に転写されないで感光ドラム21表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニングブレード28によって除去され、廃トナー容器に収容される。
【0026】
転写部Tを通った転写材27は、感光ドラム21から分離されて定着装置40へ導入され、ここでトナー像が定着処理されて、画像形成物(プリント)として電子写真装置本体外に排出される。
【0027】
上記したように、本電子写真装置内では、帯電ローラ22、現像スリーブ24a、転写ローラ26等の導電性ローラが多く使用されている。これら導電性ローラとして、本発明の製造方法で製造される導電性ゴムローラは、必要によりさらに表面層が設けられて、使用可能である。特に、転写ローラとして好ましく使用できる。
【0028】
(導電性ゴムローラの製造)
本発明の導電性ゴムローラの製造方法について、以下に説明する。
【0029】
(ゴム材料)
ゴム層に使用される原料ゴムは、ゴムローラのゴム層として使用できるものならはいずれでも使用可能である。例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン等が使用できる。特に、電磁波で加熱する場合、加熱効率のよい、極性を有するゴム、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴムが好ましい。
【0030】
(導電剤、充填剤)
本発明では、ゴム層が導電性を有することが必要であり、原料ゴムがエピクロルヒドリンゴムやニトリルゴムのように自己導電性を有するものの場合は必ずしも必要でないが、通常、カーボンブラック等の導電剤を添加して導電性を付与する。導電性を付与するために添加される導電剤としては、公知の物質を用いることが可能である。例えば、導電性粒子として、導電性カーボンブラック、TiO2、SnO2、ZnO、SnO2とSbO3の固溶体等の金属酸化物、Cu、Agなどの金属粉末等、また、イオン導電剤として、LiCIO4、NaSCNなどが挙げられ、原料ゴムに単独で若しくは複数を添加し分散させることによって、所望の導電性とすることが可能である。また、ゴム層の強度、弾性をコントロールするために、炭酸カルシウム等の充填剤を配合することもできる。なお、上記導電剤と兼ねることも可能であり、ゴム層の表面粗さの調整剤となることもある。
【0031】
(発泡剤、発泡助剤)
本発明では、ゴム層として、ソリッド形態、発泡形態のいずれでも良いが、発泡形態、すなわち、発泡ゴム層であることが、感光ドラムとの当接が良好となるので好ましい。原料ゴムに発泡剤、発泡助剤を適宜に加えることによって、発泡状態をコントロールする。
【0032】
発泡剤としては、有機発泡剤、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、p−トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、オキシビスベンゼンスルフェニルヒドラジド(OBSH)等があり、これらを単独で若しくは混合して用いる。
【0033】
発泡助剤としては、尿素系化合物、酸化亜鉛、酸化鉛などの金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸などを主成分とする化合物などが挙げられ、発泡剤に対応して添加することができる。
【0034】
(加硫剤、加硫促進剤)
本発明においては、原料ゴムを加硫させるが、そのために用いられる加硫剤としては、硫黄、金属酸化物等がある。また、加硫剤と共に使用される加硫促進剤として、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤が好ましい。具体的には、チアゾール系加硫促進剤として、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等があげられる。なお、ジベンゾチアジルジスルフィドが、スコーチ性が少なく、チウラム系加硫促進剤との併用が賞用されているので好ましい。また、チウラム系加硫促進剤として、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。なお、スコーチ性に優れたテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドが好ましい。
【0035】
(製造装置)
図3は、本発明の導電性ゴムローラの製造に適した加硫炉を備えた製造装置の模式図である。
【0036】
なお、該製造装置は、まず、原料ゴム組成物を円筒状に押し出す押出機11があり、それに引き続き、電磁波としてマイクロ波を用いた電磁波加熱装置(UHF)12が設けられている。その後に熱風加熱装置(HAV)13が設けられ、それに当接して引取機14があり、該引き取られたゴム層用チューブを所定長さに切断する定尺切断機15が最後に設けられている。
【0037】
UHF12には、フッ素樹脂で被覆されたメッシュ状のベルトが設けられている。このベルトは、押出機11から押し出された円筒状原料ゴム組成物(以下、未加硫チューブ)を受けとり、未加硫チューブをUHF内に搬送する。また、UHF12とHAV13の間は表面をフッ素樹脂で被覆したコロが設けられており、UHF12内で電磁波加熱により加硫された未加硫チューブがHAV13内へ搬送されるようになっている。ここで、UHF12とHAV13とは加硫炉内の熱が外に逃げるのをできるだけ抑えるために当接していることが好ましく、これら装置の運転を独立して制御するためには10cm程度離しておくことも好ましい。さらに、HAV13内では、未加硫チューブを搬送するために表面をフッ素樹脂で被覆したコロが設けられている。
【0038】
UHF12には、室内に電磁波照射装置を備えるとともに、熱風が導入できるように構成され、UHF内の加硫温度が調整できるようになっている。
【0039】
上記製造装置について、押出機11を除き、例えば、UHF12、HAV13及び引取機14をそれぞれ4m、6m、1mとすることができ、大変コンパクトなものである。なお、UHF12とHAV13の間、HAV13と引取機14の間を0.1mから1mの間で調整できるようになっている。
【0040】
(ゴム層用チューブの製造)
ゴム層用原料ゴム組成物をバンバリーミキサー、ニーダー等の密閉式混練機を用いて混練した後、オープンロールとリボン成形分出し機によりリボン状に成形し、押出機11に投入する。その後、押出機11より押出された原料チューブは、押し出された直後にUHF12内に搬送され、電磁波(マイクロ波)の照射と熱風により加熱され、加硫される。ここで、未加硫状態で、チューブの厚みの1/2の深さにおける該チューブの内部温度が、UHF12の炉内温度に対して±10℃に加熱され、加硫する。その後、未加硫チューブは、HAV13に搬送され、加硫が完了される。なお、ここで、UHF12内温度は、原料ゴム組成物の加硫(発泡)の最適温度により適宜決定されるが、通常150℃乃至250℃が適当であり、好ましくは、180℃乃至220℃である。そして、このUHF12内におけるゴムの温度調節は、該UHF内温度に対して、該厚みの1/2の深さにおける未加硫チューブの内部温度が、UHFの炉内温度に対して±10℃の温度差内にあるように電磁波の出力及び熱風を調整する。
【0041】
本発明においては、未加硫チューブが未加硫時には厚み4mm以上13mm以下であること、該厚みの1/2の深さにおける未加硫チューブの内部温度が、UHFの炉内温度に対して±10℃の温度差内にあるように制御することが重要である。
【0042】
この温度差内にすることにより、未加硫の未加硫チューブへの加熱ムラが殆どなく、その結果、周方向の硬度ムラ、抵抗ムラの無い加硫ゴムチューブとすることができる。チューブの内部温度がUHF12の炉内温度より10℃を超えて大きい場合、未加硫チューブ内部が軟化し、自重による変形が起き易くなる。一方、該内部温度がUHF12の炉内温度より10℃を超えて小さい場合、未加硫チューブは外側が先に加硫され、搬送中に加熱ムラが発生しやすくなる。
【0043】
また、該厚みにおいて、4mm未満では肉厚が薄いため、加熱時に粘度低下により自重変形が起りやすく、一方13mm超の場合では照射する電磁波による照射ムラが発生することがある。
【0044】
以上のように、未加硫の未加硫チューブの内部温度とUHF12の炉内温度との差を±10℃とすることが必要であり、そのためには電磁波の照射強度が非常に重要となる。つまり、マイクロ波を使用したUHF12では、高出力のマイクロ波を照射すると、該内部温度はUHF炉内温度よりも高くなりやすく、その結果、未加硫の未加硫チューブの変形だけではなく、硬度ムラも大きくなる。特に、発泡ゴムチューブとする際には、急速な発泡による発泡セルの連泡化が部分的に促進されるため、硬度ムラがより大きくなる。さらに、高出力のマイクロ波では未加硫の未加硫チューブが過加熱になり、発火する場合もあり、生産上好ましくない。一方、マイクロ波の出力が弱い場合では、未加硫の未加硫チューブが内部まで十分に加熱されず、加硫ムラが発生しやすい。特に、発泡ゴムチューブとする際には周方向の発泡ムラも発生しやすくなる。特に肉厚のゴムチューブを製造する場合、内外の温度差が起き易くなるため、該加硫時は未加硫チューブの内部温度と加硫炉の炉内温度との差を±10℃となるように、電磁波の細かい出力調整が必要となる。
【0045】
なお、本発明で使用する電磁波は、その波長が0.7×10-4m以上1.0m以下であるとよい。これは、ゴムの加硫に利用することができる波長領域であり、具体的には、マイクロ波、遠赤外線、近赤外線等の各種電磁波である。中では、ゴムへの透過性、加熱効率に優れているのでマイクロ波が特に好ましい。
【0046】
HAV14の加熱は、熱風をHAV14内へ送り込むことにより行われる。なお、熱風の温度としては、上記UHF13の内部温度と同じかやや高い温度が適当であり、未加硫チューブの加硫温度により適宜決められる。通常、150℃乃至250℃程度とされることが多い。また、熱風のHAV13への導入量も未加硫チューブの追加加硫に必要な熱容量により適宜定めればよい。
【0047】
加硫後に引取機14より加硫炉から排出されたゴムチューブは、その直後に、定尺切断機15により所望の寸法に切断され、導電性ゴムローラ用のゴムチューブが得られる。
【0048】
(芯金取付け、ゴム層トリミング)
次いで、該切断されたゴムチューブに、必要に応じてホットメルト接着剤、加硫接着剤等の接着剤を所望の領域に塗布したφ4mm乃至10mmの導電性芯金を圧入して、ローラ状の成形体を得る。その後、この成形体を、研磨砥石GC80を備えた研磨機(不図示)にセットし、研磨条件として回転速度2000RPM、送り速度500mm/分で外径を所定の径になるように研磨し、導電性ゴムローラを作成する。
【0049】
なお、導電性芯金としては、鉄、ニッケル、銅、ステンレススチール、真鍮等の導電性を有する金属を棒、パイプにしたものが通常使用される。なお、表面がニッケル等でメッキされていてもよい。さらに芯金1としては、樹脂に導電性カーボン、金属粉、導電性金属酸化物、樹脂微粒子や無機微粒子の表面を金属化して導電したものを配したものまた、樹脂を棒、パイプにしたものの表面を金属化して導電化したものも使用できる。
【0050】
上記のようにして製造された導電性ゴムローラは、そのままで、あるいは表面層が設けられて、電子写真装置に導電性が必要な、帯電ローラ、現像スリーブ、転写ローラ等の導電性ゴムローラとして使用される。なお、該導電性ゴムローラは、特に、転写ローラとして好ましいものである。
【0051】
次に本発明の評価方法について説明する。
【0052】
(マイクロ波照射時の原料ゴムチューブの内部温度の測定方法)
蛍光温度計(安立計器株式会社製、商品名:蛍光式光ファイバー温度計FL−2000)の検知部を、押出機より押し出された未加硫の未加硫チューブの内部に差し込み、UHF内に未加硫チューブと共に搬送し、その時の温度を測定した。なお、該検知部は、UHFで加硫した後においても、未加硫時の厚みの1/2の内部位置に留まるように、差し込むことが望ましい。
【0053】
(硬度ムラの測定方法)
ゴム硬さ計(高分子計器株式会社製、商品名:アスカーゴム硬度計C型)を用い、4.9N荷重で、導電性ゴムローラの任意の場所を周方向に90°毎に4箇所アスカーC硬さを測定し、その最大値と最小値の差を硬度ムラと表した。該硬さの差は0か、0に近いほど好ましい。
【0054】
(ローラの抵抗ムラの測定方法)
製造した導電性ゴムローラを、N/N(23℃×55%RH)環境下において48時間置いた後、芯金に片側4.9Nの荷重が両方に掛かるようにし、外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し、回転させた状態で、芯金とアルミドラムとの間に2kVの電圧を印加して、抵抗値を測定する。この時の抵抗値の最大値と最小値の比を対数で表したものをローラの抵抗ムラとした。なお、この値は1.2未満が好ましい。
【0055】
(セル径分布の確認方法)
チューブを任意の場所で切断し、その断面をマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名:デジタルマイクロスコープVH―8000)にて確認し、外径側のセル径と内径側のセル径の大きさの違いを確認した。このとき外径側のセル径と内径側のセル径に差が無いことが好ましく、下記基準で評価した。
○:差が見られない。
△:やや差が見られる。
×:明らかに差が見られる。
【0056】
(画像評価)
上記方法で得られた導電性ゴムローラを電子写真装置(レーザージェット5100(ヒューレット・パッカード社製))に組込みこんで印字し、目視にて画像評価を行った。得られた画像が実用可能なレベルのものは○、画像不良は×とした。
【実施例】
【0057】
以下に本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。
【0058】
以下の各実施例、比較例で使用した材料を示す。
【0059】
1)原料ゴム
NBR :アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン株式会社製、商品名:ニポールDN401LL)
ECO :エピクロルヒドリンゴム(日本ゼオン株式会社製、商品名:ハイドリンT3106)
【0060】
2)その他、配合剤
酸化亜鉛:ハクスイテック株式会社製、亜鉛華2種
ステアリン酸:花王株式会社製、商品名:ルナックS−20
カーボンブラック:旭カーボン株式会社製、商品名:旭#35
【0061】
3)加硫剤、加硫促進剤
DM :チアゾール系加硫促進剤 ジベンゾチアジルジスルフィド(大内新興化学株式会社製、商品名:ノクセラーDM−P)
TOT :チウラム系加硫促進剤 テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(大内新興化学株式会社製、商品名:ノクセラーTOT−N)
硫黄 :硫黄(鶴見化学株式会社製、商品名:サルファックスPMC)
【0062】
4)発泡剤
ADCA:アゾジカルボンアミド(永和化成工業株式会社製、商品名:ビニホールAC)
【0063】
(実施例1〜5、比較例1〜6)
原料ゴムとして、NBR 80質量部とECO 20質量部を混合して用い、これに、その他配合剤として、カーボンブラック30質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸
1質量部を添加し、さらに加硫剤として、硫黄 5質量部、加硫促進剤として、DM 2質量部及びTOT 1質量部を配合し、さらに、発泡剤として、ADCA 5質量部を添加し、バンバリーミキサーで混練した後、リボンブレンダーで分出しして、押出機に供給した。押出機において、内径の大きさを4.0mm乃至4.5mmの範囲とし、表1に示す厚さで円筒状に押し出し、未加硫チューブを得た。なお、厚みの調整は押出機に取り付けた円筒ダイを取り替えることによって行った。得られた未加硫チューブに蛍光温度計を取り付けた後、表1に示すマイクロ波出力に調整したマイクロ波加熱装置に搬送して加硫した。このときのマイクロ波加熱装置内の温度(炉内温度)と共に未加硫チューブの内部温度も測定し、結果を表1に示した。マイクロ波加熱装置で加硫されたゴムチューブは200℃の熱風が循環されている熱風加熱炉へ搬送され、さらに加硫が完結された。その後、引取機で引き取られ、次いで、長さ240mmに切断された。切断されたゴムチューブに表面が化学ニッケルメッキされた直径6mmの鉄製の芯金を圧入し、ゴムロールとした。次いで、研磨砥石GC80を備えた研磨機にて、研磨条件(回転速度2000RPM、送り速度500mm/分)で外径を片側1mm研磨して、導電性ゴムローラを作成した。
【0064】
加硫発泡後に引き取られ、切断されたゴムチューブの断面を、上記セル径分布の確認方法に従って、発泡ムラを評価した。また、得られた導電性ゴムローラの硬度ムラ、提供ムラを上記測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1より、原料チューブの厚みが13mmであっても、セルが均一で、硬度ムラも小さく、抵抗ムラも1.2以下である導電性ゴムローラが製造できることがわかる。また、画像評価においても良好であった。
【0067】
なお、比較例1ではゴムチューブの発泡が不良であったので、また、比較例6では発泡が激しくて良好なゴムチューブが得られなかったので、導電性ゴムローラの製造は行わなかった。比較例2、3では、厚みに対してマイクロ波の照射強度が弱く、炉内温度とゴム内部温度との差が10℃以上になっている。その結果、加熱ムラに生じよる硬度ムラが大きくなった。また、比較例4、5においては、厚みに対してマイクロ波の照射強度が大きく、炉内温度との差が10℃以上となり、硬度ムラが発生していた。いずれの比較例においても画像評価は実用レベル以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る導電性ゴムローラの斜視図である。
【図2】本発明に係る電子写真装置の一例の模式図である。
【図3】本発明の導電性ゴムローラの製造に適した製造装置の模式図である。
【符号の説明】
【0069】
1 芯金
2 弾性層
11 押出し機
12 マイクロ波加熱装置(UHF)
13 熱風加熱装置(HAV)
14 引取機
15 定尺切断機
21 電子写真感光体(感光ドラム)
22 帯電ローラ
23 露光手段(レーザ光)
24 現像装置
24a 現像ローラ
25 トナー
26 転写ローラ
27 転写材
28 クリーニングブレード
29 廃トナー容器
30 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯金上にゴム層が成形されている導電性ゴムローラの製造方法において、
ゴム層が未加硫時には厚み4mm以上13mm以下であり、
該ゴム層を加硫する際の加熱が少なくとも電磁波加熱及び熱風加熱であり、これら加熱は同一加硫炉内で連続的かつ同時に実施され、
該加硫時のゴム層の未加硫時の厚みの1/2の深さにおける内部温度が、加硫炉内の雰囲気温度に対して±10℃の範囲にあることを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
熱風加熱の熱風が150℃以上250℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項3】
電磁波加熱の電磁波の波長が0.7×10-4m以上1.0m以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項4】
電子写真装置に用いる導電性ゴムローラであって、該導電性ゴムローラは請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ゴムローラの製造方法により製造されたものであることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項5】
請求項4に記載の導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−221758(P2008−221758A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66597(P2007−66597)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】