説明

導電性シートおよびエンボスキャリヤテープ

【課題】 エンボスキャリアテープの導電性フィラーの脱落を防止し、同時に画像処理の自動検品での誤認識を防ぐ導電性シートを提供する。
【解決手段】 帯電防止機能を有さない基材シートの片面または両面に、第1のバインダー樹脂100重量部に対して粒子径が10〜300nmのカーボンブラックを10〜35重量部添加した導電性組成物(a)を塗布して表面固有抵抗値が1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満の帯電防止性能を有する導電層を設け、該導電層上に第2のバインダー樹脂に着色剤を添加してなる着色組成物(b)を更に塗布して厚み0.1〜10μmのトップ層を形成し、表面固有抵抗値が1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満を保持しているシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性シート、特にIC等の電子部品の搬送及び保管に利用されるキャリヤテープやトレー等の製造で使用される導電性シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の表面実装化が大きく進んできており、それに伴って表面実装技術も大幅に進歩し、より高性能でより小型なチップ型電子部品が開発され、それらの需要が急増しており、これらを搬送、保管する包装形態の1つとしてエンボスキャリヤテープが用いられている。チップ型電子部品はエンボスキャリヤテープの各ポケットに収納され、蓋体であるカバーテープでシールされた後、リールに巻き取られた状態で保管、搬送され、表面実装機のカセットフィーダーへ装着される。次に収納されているチップ型電子部品の回路基板への組付けはエンボスキャリヤテープを順々に送り出しながらカバーテープを剥離してチップ型電子部品を自動的にピックアップして回路基板の所定の場所へ自動的に配置するという方法で行われている。この工程ではチップ型電子部品とエンボスキャリヤテープのポケット内部面との摩擦による静電気やカバーテープを剥がす工程において発生する静電気によってエンボスキャリヤテープが帯電する為にチップ型電子部品がポケットより取り出すことが出来なかったり、静電気破壊が発生するという問題があり、それらを解決する為にエンボスキャリヤテープに導電性を付与して静電気の蓄積を防止することが必要とされ、カーボンブラック等の導電性フィラーを樹脂に練り込んだタイプのシートや導電性フィラーを含む塗料をシート表面に塗布したシート等を真空、圧空及びプレス成形によって成形した導電性エンボスキャリヤテープが用いられている。
【0003】
しかし、上記で述べたシートより成形された導電性エンボスキャリヤテープのポケット内部面の表面は多量の導電性フィラーが敷き詰められた状態になっており、収納されているチップ型電子部品との摩擦によって導電性フィラーが脱落し、チップ型電子部品を汚染するという問題点が発生する。チップ型電子部品の大きさが小さくなればなるほど回路基板に配置される時の異物の影響を過大に受けるようになる為、導電性フィラーの脱落による汚染問題が大きくなってくる。
その為、多量の導電性フィラーが敷き詰めたれた状態の層の上に導電性フィラーの脱落を防止する為に合成樹脂塗料を導電性フィラー層の上に塗布する方法がとられているものがある。それによって導電性フィラーの脱落は著しく向上するが表面の平滑性が良くなる為、表面光沢性が上がり、エンボスキャリヤテープに収納したチップ型電子部品のリード部を画像処理によって自動検品する工程においてポケット内部面の側壁に写し出された部分を実物のリードと認識してしまい、チップ型電子部品のリード部が曲がっているという誤認識問題が発生する。また、画像処理の自動検品における誤認識を低減させる為に上記合成樹脂塗料に無機フィラーを入れたものを塗布する方法が用いられているものもあるが無機フィラーの場合バインダー樹脂との接着力が弱く、無機フィラーの脱落が発生する問題がある。同時に無機フィラーは蓋体のカバーテープとのシール力を低下させる為、添加量をかなり少なくしなければいけないという制限がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表面実装技術の進歩に伴うチップ型電子部品の小型化によって、従来問題ないレベルであった導電性フィラーの脱落問題が問題化されるようになり、それに対して施されたトップ層を設ける対策で新たにチップ型電子部品のリード部が画像処理の自動検品で誤認識を発生させるという問題が起こり、無機フィラーを添加することで誤認識対策が更に施されている。しかし、無機フィラーでは蓋材であるカバーテープとのシール性を低下させること、バインダー樹脂との密着力が弱い為に無機フィラー自身の脱落が発生する等の問題が起きているため、フィラーの脱落がなく、画像処理での誤認識のないエンボスキャリアテープ及びそれを製造するための導電性シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、帯電防止機能を有さない基材シートの片面に、第1のバインダー樹脂100重量部に対して粒子径が10〜300nmのカーボンブラックを10〜35重量部添加した導電性組成物(a)を塗布して表面固有抵抗値が1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満の帯電防止性能を有する導電層を設け、該導電層上に第2のバインダー樹脂に着色剤を添加してなる着色組成物(b)を更に塗布して厚み0.1〜10μmのトップ層を形成し、表面固有抵抗値が1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満を保持しているシート、または、
帯電防止機能を有さない基材シートの両面に、第1のバインダー樹脂100重量部に対して粒子径が10〜300nmのカーボンブラックを10〜35重量部添加した導電性組成物(a)を塗布して表面固有抵抗値が1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満の帯電防止性能を有する導電層を設け、少なくとも片面の導電層上に第2のバインダー樹脂に着色剤を添加してなる着色組成物(b)を更に塗布して厚み0.1〜10μmのトップ層を形成し、表面固有抵抗値が1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満を保持しているシート、及びそれらより成形されるエンボスキャリアテープである。
【0006】
更に、画像処理の自動検品における誤認識を防止する効果を高める為に着色剤を添加した塗料に一次粒子径0.02〜5.0μmの架橋粒子をバインダー樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部添加した塗料を導電層の上に塗布してカーボンブラックの脱落及び画像処理の自動検品における誤認識を防止する厚み0.1〜10μmのトップ層を形成し、表面固有抵抗値が1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満を保持していることを特徴とするシート及びそれらより成形されるエンボスキャリアテープである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電シート及びエンボスキャリヤテープは、導電層の上にトップ層を形成したことで、カーボン脱落防止と画像処理対応の両方の機能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の導電性シート及びエンボスキャリヤテープは、帯電防止性能を有さない基材シートの表面にカーボンブラックを有する導電層を形成し、更にその上にカーボンブラック等の導電性フィラーの脱落を防止する機能と画像処理の自動検品における誤認識を防止する機能を併せ持つ層を施したものであり、チップ型電子部品をエンボスキャリヤテープに収納時に静電気からチップ型電子部品を保護し、チップ型電子部品とエンボスキャリヤテープ内部面が摩擦してもカーボンブラック等の導電性フィラーの脱落が防止され、画像処理の自動検品の誤認識を防止する効果があり、シール工程における工程停止や実装時の不良を減少させることが出来る。
【0009】
本発明に用いられる帯電防止性能を有さないシートは、表面固有抵抗値が1×1013Ω/□より大きいものであり、この帯電防止性能を有さないシートとしては、ポリエステル系樹脂シート、ポリスチレン系樹脂シート、ポリ塩化ビニル系樹脂シート、ポリエーテル系樹脂シート、ポリオレフィン系樹脂シート、ポリカーボネートシート等から選択される。
【0010】
このシートは、本発明の導電性シートの基材として用いられる。即ち、この基材の片面または両面上にカーボンブラックを含む導電性塗料より形成される層を設け導電性を基材表面に付与する。本発明に用いる導電性塗料は、カーボンブラック、第1のバインダー樹脂及び溶媒を必須成分とし、必要に応じて分散剤や安定剤を配合する。カーボンブラックは、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられ、これらは単独または2種類以上混合して用いても良い。カーボンブラックの粒子径としては、10〜300nmのものが好ましく、10nm未満のものでは塗料中の分散性が悪く凝集体を作り、300nmを超えると塗布により形成された導電層の平滑性が得られず、第1のバインダー樹脂による基材表面との密着力も低下して、カーボンブラックが脱落し易くなる。
【0011】
カーボンブラックの添加量は、第1のバインダー樹脂100重量部に対して10〜35重量部とするのが好ましく、10重量部未満では必要な導電性が得られず、35重量部を超えると逆に導電性が良くなりすぎ、外部から電気が流れ込んだ場合にチップ型電子部品の端子が導通し、破壊されるという問題が起こる。第1のバインダー樹脂は、基材との接着力が大きく、エンボスキャリヤテープの成形時に基材と共に延伸される為、延展性の大きいものから選択されるのが良く、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、アクリル系樹脂、EVA系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ニトロセルロースやラテックス類等から選択される。
本発明の導電性塗料に用いる溶媒としては、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0012】
本発明に用いる着色組成物は、第2のバインダー樹脂に着色剤を添加して選られるが、第2の態様ではこれに更に架橋粒子を添加する。
第2のバインダー樹脂は、第1のバインダー樹脂と同様に、基材との接着力が大きく、エンボスキャリヤテープの成形時に基材と共に延伸される為、延展性の大きいものから選択されるのが良く、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、アクリル系樹脂、EVA系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ニトロセルロースやラテックス類等から選択される。第2のバインダー樹脂は、第1のバインダー樹脂との接着性を考慮して同種のものが好ましく用いられる。
【0013】
本発明の着色組成物に用いる着色剤としては凝集力の小さい顔料より選択することが望ましい。
このような着色剤としては、酸化チタンやカーボンブラックなどがある。
着色剤の添加量は、第2のバインダー樹脂100重量部に対して2〜30重量部とすることが好ましく2重量部未満では顔料が表面の平滑性に及ぼす影響が小さく、表面光沢性が上がり画像処理による自動検品工程での誤認識問題を解消することが出来ない。但し、下記で述べる架橋粒子を加えることで顔料の添加量が2重量部未満になっても誤認識問題を解消出来る為、架橋粒子体との併用系では顔料の添加量は2重量部未満でも良い。
着色剤の添加量が30重量部より多くなるとトップ層の脱落問題が発生する。
【0014】
本発明の着色組成物に使用する架橋粒子は、架橋スチレン系、架橋アクリル系、架橋スチレン−アクリル系、架橋スチレン−ジビニルベンゼン系などである。
本発明の着色組成物に添加する架橋粒子としては一次粒径が0.02〜5.0μmのものが望ましく0.02μm未満になると着色組成物内で均一分散させることが難しく、5.0μmより大きくなると架橋粒子体自身の脱落問題が発生する。架橋体粒子の添加量については第2のバインダー樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.01重量部未満になると表面光沢性を下げる効果が現れず、5重量部より多くなると架橋粒子体自身の脱落問題が発生する。
架橋粒子は、第2のバインダー樹脂との接着可能な組み合わせが好ましい。接着可能な組み合わせとは、同種樹脂系同士は勿論、架橋スチレン、架橋スチレン−アクリル系、架橋スチレン−ジビニルベンゼンとアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及び塩酢ビ樹脂などである。
【0015】
これらの導電性組成物の基材シートへの塗布方法及び導電層上への着色組成物の塗布方法は、従来公知のであるグラビヤ、リバース、ワイヤバーあるいはスプレー塗布等で実施すればよいが良好な導電性及び画像処理に対応する安定した表面光沢度を得る為に塗布膜厚が均一であることが好ましくダイレクトグラビヤ法やグラビヤリバース法を用いることが望ましい。塗布量は、良好な導電性及び安定した表面光沢度を得る為、導電層でドライの厚みが0.5〜10μm、導電層の上に塗布するトップ層はドライの厚みで0.1〜10μmにすることが望ましい。
また、エンボスキャリヤテープはこれら導電シートのトップ層側をポケット内面として、真空成形、圧空成形、プラグ成形及びプレス成形等で作製される。
【実施例】
【0016】
実施例及び比較例は、帯電防止機能を有さない基材シートとしてホモタイプPET樹脂を単層押出シーティングでA−PETシート(0.3mm厚み)を作製したものを使用し、その両面に表1に示す各導電性組成物をダイレクトグラビヤ法によりウェットで約10g/m2塗布し、95℃で20秒間乾燥した。更に導電層の片面に表1に示す各着色組成物をダイレクトグラビヤ法によりウェットで約1〜50g/m2の範囲で目的とするドライの厚みに合わせて塗布し、95℃で20秒間乾燥して導電性シートを作製した。導電性組成物及び着色組成物のバインダー樹脂としては、両方共にウレタン系樹脂(東洋紡ウレタンE3080A(東洋紡製)を用いた。画像処理適性の評価には、得られたシートを圧空成形にてエンボスキャリアテープを作製し、用いた。表面固有抵抗値測定は、JIS K6911に従い測定した。グロスは、JIS Z8741 方法2(60度鏡面光沢に準拠)により、測定した。
【0017】
画像処理適性については、チップ型電子部品をキャリアテ−プに入れ、CCD カメラにてチップ型電子部品のリ−ド部の曲がりをチェックし、誤作動が発生 した確率で評価を行った。
◎:1/100000以下 ○:1/100000より大きく1/10000以下
×:1/10000より大きい
導電層カ−ボンブラック脱落については、チップ型電子部品をキャリアテープ に入れ、カバ−テ−プにてシ−ル後、手動にて200回振動させた時のチップ 型電子部品のリ−ド部へのカ−ボンブラックの付着状況にて評価を行った。
○:カ−ボンブラック付着無し △:カ−ボンブラック付着が若干有り
×:カ−ボンブラック付着有り
トップ層添加物の脱落評価は導電層カ−ボンブラック脱落と同じ方法で実施した。
○:トップ層添加物付着無し △:トップ層添加物付着が若干有り
×:トップ層添加物付着有り
これらの物性を評価したところ、表1〜5に示す結果が得られた。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【0022】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止機能を有さない基材シートの片面に、第1のバインダー樹脂100重量部に対して粒子径が10〜300nmのカーボンブラックを10〜35重量部添加した導電性組成物(a)を塗布して表面固有抵抗値が1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満の帯電防止性能を有する導電層を設け、該導電層上に第2のバインダー樹脂に着色剤を添加してなる着色組成物(b)を更に塗布して厚み0.1〜10μmのトップ層を形成し、表面固有抵抗値が1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満を保持しているシート。
【請求項2】
帯電防止機能を有さない基材シートの両面に、第1のバインダー樹脂100重量部に対して粒子径が10〜300nmのカーボンブラックを10〜35重量部添加した導電性組成物(a)を塗布して表面固有抵抗値が1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満の帯電防止性能を有する導電層を設け、少なくとも片面の導電層上に第2のバインダー樹脂に着色剤を添加してなる着色組成物(b)を更に塗布して厚み0.1〜10μmのトップ層を形成し、表面固有抵抗値が1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満を保持しているシート。
【請求項3】
着色組成物(b)が、さらにバインダー樹脂100重量部に対して、一次粒径0.02〜5.0μmの架橋粒子を0.01〜5重量部添加してなる着色組成物(b’)である請求項1または2記載のシート
【請求項4】
着色組成物(b’)の架橋粒子表面とバインダー樹脂が接着可能な組合せである請求項3記載のシート
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載のシートのトップ層をポケットの内部面となるように連続成形してなる導電性エンボスキャリヤテープ。

【公開番号】特開2008−188993(P2008−188993A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31671(P2008−31671)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【分割の表示】特願2000−304340(P2000−304340)の分割
【原出願日】平成12年10月4日(2000.10.4)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】