説明

導電性ベルトの製造方法、および導電性ベルト塗装装置、ならびに、この製造方法によって形成された導電性ベルト

【課題】 乾燥工程をなくしもしくは簡素化するため、無溶剤もしくは少量の溶剤の塗料をスプレーして導電性ベルトの表面層を形成することのできる、導電性ベルトの製造方法、および導電性ベルト塗装装置、ならびに、この製造方法によって形成された導電性ベルトを提供する。
【解決手段】 この発明の導電性ベルトの製造方法は、塗料のスプレーに先立って、塗料の粘度が1〜1000mPa・Sとなるよう、塗料を昇温することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に用いられる導電性ベルトの製造方法、および、この方法によって形成された導電性ベルトに関し、特に、塗料を塗布して表面層を効率よく高精度に形成することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等における静電記録プロセスでは、まず、感光体(潜像保持体)の表面を一様に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して光の当たった部分の帯電を消去することによって静電潜像を形成し、次いで、この静電潜像にトナーを供給してトナーの静電的付着によりトナー像を形成し、これを紙、OHP、印画紙等の記録媒体へと転写することにより、プリントする方法が採られている。
【0003】
この場合、カラープリンターやカラー複写機においても、基本的には前記プロセスに従ってプリントが行われるが、カラー印刷の場合には、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを用いて色調を再現するもので、これらのトナーを所定割合で重ね合わせて必要な色調を得るための工程が必要であり、この工程を行うためにいくつかの方式が提案されている。
【0004】
これらの方式を、どの段階でトナーを重ね合わせかにより大別することができ、まず、第1の方式は、感光ドラム上で、異なる色のトナーを重ねるものであり、この方式は、モノクロ印刷を行う場合と同様に、感光体上にトナーを供給して静電潜像を可視化する際に、前記マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを順次重ねていくことにより現像を行うものであり、多重現像方式と呼ばれている。この方式によれば、比較的コンパクトに装置を構成することが可能であるが、階調の制御が非常に難しく、高画質が得られないという問題点がある。
【0005】
第2の方式は、記録媒体上で、異なる色のトナーを重ねるものである。このうちの一つの方式として、4つの感光ドラムを設け、各ドラムの潜像を夫々マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックのトナーで現像することにより、マゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像およびブラックによるトナー像の4つのトナー像を形成し、これらトナー像が形成された感光ドラムを1列に並べて各トナー像を紙等の記録媒体に順次転写して記録媒体上に重ねることにより、カラー画像を再現する直接タンデム方式がある。この方式は、良好な画像が得られるものの、4つの感光ドラムと、各感光ドラムごとに設けられた帯電機構および現像機構が1列に並べられた状態となり、装置が大型化するとともに高価なものとなる。
【0006】
図1に、直接タンデム方式の画像形成装置の印字部構成例を示す。感光ドラム61、帯電ロール62、現像ロール63、現像ブレード64、トナー供給ロール65およびクリーニングブレード66で構成する印字ユニットをイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBの各トナーに対応して4個並べており、駆動ローラ68により循環駆動されて転写搬送ベルト60で搬送した用紙上に、トナーを順次転写しカラー画像を形成する。転写搬送ベルトの帯電および除電は夫々帯電ロール67aおよび除電ロール67bで行う。また、用紙をベルトへ吸着させるための用紙帯電には吸着ローラ(図示せず)が使用される。これらの対応により、オゾンの発生を抑えることができる。吸着ローラでは、用紙を搬送路から転写搬送ベルトに乗せるとともに、転写搬送ベルトへの静電吸着を行う。また、転写後の用紙分離は、転写電圧を低くすることにより用紙と転写搬送ベルトの吸着力を弱くして、曲率分離のみで行うことができる。
【0007】
転写搬送ベルト60の材料としては抵抗体と誘電体があり、夫々に長所、短所を持っている。抵抗体ベルトは電荷の保持が短時間であるため、直接タンデム方式の転写に用いた場合、転写での電荷注入が少なく4色の連続する転写でも比較的電圧の上昇が少ない。また、次の用紙の転写に繰り返して使用されるときも電荷が放出されており、電気的なリセットは必要としない。しかし、環境変動により抵抗値が変化するため、転写効率に影響すること、用紙の厚さや幅の影響を受けやすいことなどが短所となっている。
【0008】
一方、誘電体ベルトの場合は注入された電荷の自然放出はなく、電荷の注入、放出とも電気的にコントロールしなければならない。しかし、安定に電荷が保持されるので、用紙の吸着が確実で高精度な紙搬送が行える。誘電率は温湿度への依存性も低いため、環境に対しても比較的安定な転写プロセスとなる。欠点は、転写が繰り返されるごとにベルトに電荷が蓄積されるため、転写電圧が高くなることである。
【0009】
第2の方式のうち、直接タンデム方式とは異なる方式として、紙等の記録媒体を転写ドラムに巻き付けてこれを4回転させ、周回ごとに感光体上のマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックを順次記録媒体に転写してカラー画像を再現する転写ドラム方式もある。この方式によれば比較的高画質が得られるが、記録媒体が葉書等の厚紙である場合には、これを前記転写ドラムに巻き付けることが困難であり、記録媒体種が制限されるという問題点がある。
【0010】
第3の方式として、感光ドラム上の各色のトナーを中間転写部材上で重ね合わせ、重ねあわせたトナー像をそのまま記録媒体に転写する中間転写方式が提案されていて、この方式は、前記多重現像方式、直接タンデム方式および転写ドラム方式に対して、良好な画質が得られ、しかも記録媒体種が特に制限されることもないという特長をもつ。
【0011】
即ち、この中間転写方式は、感光体上のトナー像を一旦転写保持するドラムやベルトからなる中間転写部材を設け、感光ドラム上のマゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像およびブラックによるトナー像を中間転写部材上に順次転写することにより、この中間転写部材上にカラー画像を形成し、このカラー画像を紙等の記録媒体上に転写するものである。従って、4色のトナー像を重ね合わせて階調を調整するものであるから、高画質を得ることが可能であり、しかも、記録媒体をドラムに巻き付ける必要もないので記録媒体種が制限されることもないものである。
【0012】
第3の方式である中間転写方式の代表例として、一の感光ドラムと一の中間転写ベルトとを組み合わせた中間転写ベルト方式と、タンデムに並べられた複数の感光ドラムと一の中間転写ベルトとを組み合わせたタンデム中間転写ベルト方式とがあり、これらについて以下に説明する。
【0013】
図2は、中間転写ベルト方式の構成を示す図であり、図中、71は感光ドラム感光体であり、図中矢印方向に回転するようになっている。この感光ドラム71は、一次帯電器72によって帯電され、次いで画像露光73により露光部分の帯電が消去され、第1の色成分に対応した静電潜像がこの感光ドラム61上に形成され、更に静電潜像が現像器75aにより第1色のマゼンタトナーMで現像され、第1色のマゼンタトナー画像が感光ドラム71上に形成される。次いで、このトナー画像が、駆動ローラ76により循環駆動されて感光ドラム71と接触しながら循環回転する中間転写ベルト70に転写される。この場合、感光体61から中間転写ベルト70への転写は、感光ドラム71と中間転写ベルト70とのニップ部において、中間転写ベルト70に電源77から印加される一次転写バイアスにより行われる。この中間転写ベルト70に第1色のマゼンタトナー画像が転写された後、前記感光ドラム71はその表面がクリーニング装置74により清掃され、感光ドラム71の1回転目の現像転写操作が完了する。以降、感光ドラム71が3回転し、周回ごとに現像器75a〜75dを順次用いて第2色のシアントナー画像、第3色のイエロートナー画像、第4色のブラックトナー画像が順次感光ドラム71上に形成され、これが周回ごとに中間転写ベルト70に重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が中間転写ベルト70上に形成される。なお、図2の装置にあっては、感光ドラム71の周回ごとに現像器75a〜75dが順次入れ替わってマゼンタトナーM、シアントナーC、イエロートナーY、ブラックトナーBによる現像が順次行われるようになっている。
【0014】
次に、前記合成カラートナー画像が形成された中間転写ベルト70に転写ローラ81が当接し、そのニップ部に給紙カセット82から紙等の記録媒体83が給送される。これと同時に二次転写バイアスが電源84から転写ローラ81に印加され、中間転写ベルト70から記録媒体83上に合成カラートナー画像が転写されて加熱定着され、最終画像となる。合成カラートナー画像を記録媒体83へと転写した後の中間転写ベルト70は、表面の転写残留トナーがクリーニング装置78により除去され、初期状態に戻り次の画像形成に備えるようになっている。
【0015】
図3は、タンデム中間転写ベルト方式の構成例を示す図であり、感光ドラム92a上の静電潜像をイエローにより現像する第1現像装置94aと、感光ドラム92b上の静電潜像をマゼンタにより現像する第2現像装置94bと、感光ドラム92c上の静電潜像をシアンにより現像する第3現像装置94cと、感光ドラム92d上の静電潜像をブラックにより現像する第4現像装置94dとを、中間転写ベルト90に沿って配置し、この中間転写ベルト90を図中矢印方向に循環駆動させて各現像装置94a〜94dの感光ドラム92a〜92d上に形成された4色のトナー像を中間転写ベルト90上に順次転写することにより、この中間転写ベルト90上にカラーのトナー像を形成し、このトナー像を紙等の記録媒体93上に転写してプリントするものである。
【0016】
なお、図中、95は、中間転写ベルト90を循環駆動するための駆動ローラもしくはテンションローラであり、96は記録媒体送りローラ、97は記録媒体送り装置、98は記憶媒体上の画像を加熱等により定着する定着装置である。また、図中99は中間転写ベルト90に電圧を印加する電源装置(電圧印加手段)であり、この電源装置99は感光ドラム92a〜92dからトナー像を上記中間転写ベルト90に転写する際と、中間転写ベルト90から記録媒体93にトナー像を転写する際とで、印加する電圧の正負を反転させることができるようになっている。
【0017】
そして、上述の、転写搬送ベルト60、および、中間転写ベルト70、90として機能する導電性ベルトは、一層もしくは二層以上の構造よりなり、そして、二層以上の構造よりなる導電性ベルトにおいては、外側に位置する表面層や中間層は、金型等を用いて形成されたバンド状の基体部に、スプレー塗装もしくはディップ塗装にてこれを形成することが行われている。
【0018】
このうち、スプレー塗装による方法は、導電性ベルトをその長さ方向に走行させながら、導電性ベルト幅方向にスプレーガンを変位させ、その基体部の外面に塗料をスプレーして表面層を形成するものであり、他の方法に対比して、薄膜の層を高精度に形成することができ、また、大量の塗料を貯蔵する槽もしくは塗料タンクを必要とせず、そのため大ロットの生産を余儀なくされることもなく、他品種少量の生産形態に適するという特長をもっている。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開2003−93699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、この方法を用いて導電性ベルトの表面層を形成しようとする場合、塗料を霧化するために塗料の粘度を下げておく必要があり、そのため、塗料として、通常表面層形成材料を溶剤で希釈して低粘度化したものが用いられ、表面層形成材料の粘度が高くなると溶剤の量を増やして調整することが行われている。一方、このように溶剤で希釈した塗料は、これを塗布したあと、溶剤を気化させるための乾燥工程を必要とし、このための乾燥ライン、このラインを設置するスペース、さらには、乾燥のための熱源が必要となり、特に、大量の溶剤で希釈された塗料を用いた場合には、そのためのコストとスペースとが膨大なものとなってしまうという問題があった。さらに、乾燥工程の長大化は、乾燥途中での塗膜の流動による表面層の厚さの不均一化をもたらすという問題もあった。
【0020】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされてものであり、乾燥工程をなくしもしくは簡素化するため、無溶剤もしくは少量の溶剤の塗料をスプレーして導電性ベルトの表面層を形成することのできる、導電性ベルトの製造方法、および導電性ベルト塗装装置、ならびに、この製造方法によって形成された導電性ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
<1>は、無端帯状の基体部の周面に塗料をスプレーして表面層もしくは中間層を形成する導電性ベルトの製造方法において、塗料のスプレーに先立って、塗料の粘度が1〜1000mPa・Sとなるよう、塗料を昇温することを特徴とする導電性ベルトの製造方法である。
【0022】
<2>は、<1>において、塗料として、紫外線硬化型樹脂もしくは電子線硬化型樹脂を含有するものを用いる導電性ベルトの製造方法である。
【0023】
<3>は、<1>もしくは<2>において、前記基体部を軸部の周りに回転させた状態で、塗料をスプレーするスプレーガンおよび前記基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部長さ方向に相対変位させながら、塗料をスプレーする導電性ベルトの製造方法である。
【0024】
<4>は、無端帯状の基体部の周面に塗料をスプレーして表面層もしくは中間層を形成する導電性ベルトの製造方法に用いられる導電性ベルトの塗装装置であって、
前記塗料をスプレーするスプレーガン、塗料を収容する塗料タンク、および、塗料を塗料タンクからスプレーガンまで輸送する塗料供給配管を具えるとともに、塗料タンクに収容された塗料を昇温するタンク加熱装置と、塗料供給配管を通過する塗料を昇温する管路加熱装置との少なくとも一方を設けてなる導電性ベルト塗装装置である。
【0025】
<5>は、<4>において、塗料タンクから塗料供給配管を経て供給された塗料を、スプレーガンをバイパスして塗料タンクに戻す塗料戻り配管を設けてなる導電性ベルト塗装装置である。
【0026】
<6>は、無端帯状の基体部と、基体部の周面を被覆する表面層もしくは中間層とを有してなり、この表面層もしくは中間層は、<1>〜<3>のいずれかの導電性ベルトの製造方法によって形成されてなる導電性ベルトである。
【発明の効果】
【0027】
<1>の発明によれば、塗料のスプレーに先立って、塗料の粘度が1〜1000mPa・Sとなるよう、塗料を昇温するので、無溶剤もしくは少量の溶剤の塗料であっても、塗料を良好な状態で霧化することができ、その結果、乾燥ラインを簡素化し、あるいは、これをなくして、これにかかっていたコストとスペースとを節約することができ、あわせて、乾燥工程中での塗料の流動による層厚さの不均一化の問題を解消することができる。
【0028】
塗料の粘度が、1mPa・S未満の場合、塗料霧化における塗料粒子が細かくなりすぎて、塗着効率が悪化し、一方、これが、1000mPa・Sを超えると、塗料の霧化しにくくなり、塗膜の均一性が悪化してしまう。
【0029】
<2>の発明によれば、塗料として、紫外線硬化型樹脂もしくは電子線硬化型樹脂を含有するものを用いるので、塗料を瞬時に硬化させることにより、塗装後の塗料の流動をなくし塗膜厚さが変化するのを防止することができる。
【0030】
<3>の発明によれば、前記基体部をその長さ方向に張力をかけて走行させた状態で、塗料をスプレーするスプレーガンおよび前記基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部幅方向に相対変位させながら、塗料をスプレーするので、基体部周面を導電性ベルトの幅方向にそって螺旋状に表面層を連続して形成してゆくことができ、塗料を無駄に消費されることがなく、しかも滑らかで均一な厚さの塗膜を形成することができる。
【0031】
<4>の発明によれば、タンク加熱装置、および、管路加熱装置の一方もしくは両方が設けられているので、塗料を効率よく昇温することができる。
【0032】
<5>の発明によれば、塗料タンクから塗料供給配管を経て供給された塗料を、スプレーガンをバイパスして塗料タンクに戻す塗料戻り配管を設けられているので、塗料を使用していない間でも、塗料タンクおよび塗料供給配管経路内の塗料を昇温した状態にしておくことができ、スプレー開始直後においても塗料を良好な霧化状態にすることができる。
【0033】
<6>の発明によれば、無端帯状の基体部と、基体部の周面を被覆する表面層もしくは中間層とを有してなり、この表面層もしくは中間層は、上述の方法によって形成されているので、前述のとおり、乾燥工程を簡素化することによる低コスト化と省スペース化を実現し、あわせて、乾燥工程での膜厚変化を防止し、均一性の高い表面層を形成することができ、画像形成装置の高画質化に資することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。図4は、本発明に係る導電性ベルトを示す図であり、図4(a)は斜視図、図4(b)は、図4(a)のb1−b1矢視に対応する断面図であり、図4(a)において、Wは、導電性ベルト1の幅方向、Lは、導電性ベルト1の長さ方向をそれぞれ表す。導電性ベルト1は、無端帯状の基体部3と、基体部3の厚さ方向外側周面を被覆する表面層4とからなる。図示の導電性ベルトは、2層構造のものとしたが、本発明は、これが3層以上の構造のものであっても、表面層以外の中間層をスプレー塗装で形成する場合にも適用することができる。
【0035】
ここで、基体部3の厚さは30〜200μmとされ、また、表面層4の厚さは、1〜200μmとするのが好ましい。
【0036】
基体部3としては、樹脂材料に導電剤を添加して導電性を付与したものが用いられる。基体部に用いる樹脂材料としては、特に限定されず市販のものを使用すればよく、例えば、ポリアミド12、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン共重合体、ポリアミド6・12、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビリニデン、ポリフッ化ビニル、ポリ六フッ化エチレンプロピレン、ポリ三フッ化エチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリプロピレン、熱可塑性ポリエステル(PET、PBT等)ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、及び、液晶ポリエステル等を用いて高い機械的性能を担持させることができ、なかでも、ポリアミド12およびアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体が好ましく、ポリアミド12が特に好ましい。
【0037】
基体部3に添加される導電剤としては、種々のものを用いることができる。カーボン系導電剤は少量の添加で高い導電性を得ることができ、カーボン系導電剤としては、ケッチェンブラックやアセチレンブラックを用いるのが好ましいが、SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボンブラック、酸化カーボンブラック等のインク用カーボンブラック,熱分解カーボンブラック、グラファイト等も用いることができる。
【0038】
イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム,テトラブチルアンモニウム,ラウリルトリメチルアンモニウム等のドデシルトリメチルアンモニウム,ヘキサデシルトリメチルアンモニウム,ステアリルトリメチルアンミニウム等のオクタデシルトリメチルアンモニウム,ベンジルトリメチルアンモニウム,変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウム等のアンモニウムの過塩素酸塩,塩素酸塩,塩酸塩,臭素酸塩,ヨウ素酸塩,ホウフッ化水素酸塩,硫酸塩,アルキル硫酸塩,カルボン酸塩,スルホン酸塩などの有機イオン導電剤;リチウム,ナトリウム,カルシウム,マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の過塩素酸塩,塩素酸塩,塩酸塩,臭素酸塩,ヨウ素酸塩,ホウフッ化水素酸塩,トリフルオロメチル硫酸塩,スルホン酸塩などの無機イオン導電剤を例示することができる。
【0039】
カーボン系以外の電子導電剤も用いることができ、このような電子導電剤としては、ITO、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物の微粒子;、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属の酸化物;導電性酸化チタンウイスカー、導電性チタン酸バリウムウイスカーのような透明なウイスカー;などを例示することができる。
【0040】
導電剤として、2種類以上のものを混合して用いてもよく、この場合、印加される電圧の変動や環境の変化に対しても安定して導電性を発現することができる。混合例としては、カーボン系導電剤に、カーボン系以外の電子導電剤やイオン導電剤を混合したものをあげることができる。
【0041】
また、表面層4は、例えば、導電性ベルト1をナイロン、ポリエステル、ウレタン変性アクリル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂等、目的に応じて適宜な樹脂で形成することができるが、表面平滑性や感光体等との低密着性などの観点からフッ素樹脂が好ましく用いられる。
【0042】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテル系共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド系共重合体、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエステル系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド系共重合体等が挙げられ、特にこれらの微粒子を水中に分散させたディスパージョンタイプの水系フッ素樹脂が好ましく用いられ、更に好ましくはポリテトラフルオロエチレンの微粒子を水中に分散させたディスパージョンタイプの水系フッ素樹脂が用いられる。また、用いられるフッ素樹脂微粒子の粒径は、特に制限されるものではないが、5μm以下、特に、0.05〜1μmであることが好ましい。
【0043】
また、これらフッ素樹脂に、フッ素樹脂の効果を損なわない範囲で、その他の樹脂を混合して表面層4を形成することもできる。この場合、フッ素樹脂と混合されるその他の樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニリデン系共重合体、アクリル−ウレタン共重合体などが挙げられ、これらの1種または2種以上を上記フッ素樹脂と混合して表面層4を形成することができる。これらの樹脂のうちでも、フッ素樹脂の塗膜化および抵抗均一性の観点からポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン系共重合体が好ましく、特にポリビニルアセタール樹脂が好ましく用いられる。
【0044】
また、かかる表面層4において、その平滑性を確保したい場合には、水系樹脂が好ましく用いられる。水系樹脂としては、溶媒が水であれば、水溶性タイプ、エマルジョンタイプ、サスペンジョンタイプ等のいずれのタイプでもよいが、特にカルボキシル基、水酸基、アミノ基等の活性水素を持つアクリル系の温水可溶性樹脂が好ましい。
【0045】
更に、この表面層4には、必要に応じて増粘剤、チクソトロピー性付与剤、構造粘性付与剤等の適宜な添加剤を必要に応じて適量添加することができ、この場合添加剤は無機系、有機系のいずれであってもよい。
【0046】
また、表面層4を構成する樹脂として、架橋性樹脂も好適に用いられる。架橋性樹脂とは、熱,触媒,空気(酸素),湿気(水),電子線などにより自己架橋する樹脂あるいは架橋剤や他の架橋性樹脂との反応により架橋する樹脂をいう。このような架橋性樹脂の例としては、水酸基,カルボキシル基,酸無水物基,アミノ基,イミノ基,イソシアネート基,メチロール基,アルコキシメチル基,アルデヒド基,メルカプト基,エポキシ基,不飽和基等の反応基を持つフッ素樹脂,ポリアミド樹脂,アクリルウレタン樹脂,アルキッド樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂,シリコーン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,エポキシ樹脂,ポリエーテル樹脂,アミノ樹脂,アクリル樹脂,尿素樹脂等及びこれらの混合物を挙げることができる。これらの中で、フッ素樹脂,ポリアミド樹脂,アクリルウレタン樹脂,アルキッド樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂,シリコーン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,エポキシ樹脂,及びそれらの混合物が好ましく、特にアルキッド樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂及びそれらの混合物が、現像剤の帯電能、現像剤に対する非汚染性、他の部材との摩擦力低減、画像形成体に対する非汚染性などの点から好適である。
【0047】
上記架橋性樹脂には、必要に応じて触媒、架橋剤が用いられるが、触媒としては、例えば過酸化物やアゾ化合物などのラジカル触媒,酸触媒,塩基性触媒などが挙げられる。また、架橋剤は水酸基,カルボキシル基,酸無水物基,アミノ基,イミノ基,イソシアネート基,メチロール基,アルコキシメチル基,アルデヒド基,メルカプト基,エポキシ基,不飽和基等の反応基を1分子中に2個以上もつ化合物、例えば、ポリオール化合物,ポリイソシアナート化合物,ポリアルデヒド化合物,ポリアミン化合物,ポリエポキシ化合物等が挙げられる。この架橋性樹脂には、さらなる現像剤への帯電能の向上、他の部材との摩擦力低減、導電性付与などの目的で、所望により、荷電制御剤,滑剤,導電剤,その他の樹脂など、種々の添加剤を含有させることができる。
【0048】
上述の樹脂のうち、表面層4を塗布したあと乾燥工程が要らないという点において、電子線硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂を含有するものが好ましく、これらの樹脂は、電子線を照射し、もしくは、紫外線重合開始剤の存在下で紫外線を照射することにより硬化させることができる。さらに、これらの樹脂よりなる塗料を用いた場合には、塗装完了後、これに紫外線もしくは電子線を照射することで瞬時に表面層を固化させることができ、流動状態下で同じ姿勢で放置される場合に対比して、表面層の膜厚変化を抑えることができる。
【0049】
電子線硬化型樹脂もしくは紫外線硬化型樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0050】
さらに、これらの樹脂に特定の官能基を導入した変性樹脂を用いることもできる。また、樹脂層4の力学的強度、耐環境特性を改善するため、架橋構造を有するものを導入することが好ましい。
【0051】
上記の電子線硬化型樹脂もしくは紫外線硬化型樹脂のうち、特に、(メタ)アクリレートオリゴマーを含む(メタ)アクリレート系紫外線硬化型樹脂より形成された組成物が好適である。
【0052】
このような(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマー等、また、フッ素系、シリコーン系の(メタ)アクリルオリゴマーなどを挙げることができる。
【0053】
上記(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールとε−カプロラクトンの付加物等の化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により、あるいはポリイソシアネート化合物及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物をウレタン化することにより合成することができる。
【0054】
ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオール、イソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とをウレタン化することによって得ることができる。
【0055】
エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーの例としては、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物であればいずれでもよいが、中でもベンゼン環、ナフタレン環、スピロ環、ジシクロペンタジエン、トリシクロデカン等の環状構造を有し、かつグリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の反応生成物が好ましい。
【0056】
更に、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマーは、各々に対するポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール)と(メタ)アクリル酸との反応によって得ることができる。
【0057】
電子線硬化型もしくは紫外線硬化型の樹脂組成物には、必要に応じて粘度調整のために重合性二重結合を有する反応性希釈剤を配合する。このような反応性希釈剤としては、アミノ酸や水酸基を含む化合物に(メタ)アクリル酸がエステル化反応及びアミド化反応で結合した構造の、例えば、単官能、2官能または多官能の重合性化合物等を使用することができる。これらの希釈剤は、(メタ)アクリレートオリゴマー100重量部当たり、通常10〜200重量部用いることが好ましい。
【0058】
表面層4を構成する樹脂には、その導電性を制御する目的で導電剤が配合され、この導電材としては、先に述べたような、基体部3に含有させる導電剤と同じものを用いることができる。
【0059】
次に、導電性ベルト1の基体部3の外側に、塗料を塗布して、上述のような表面層4を形成する方法について、図5を参照して説明する。図5(a)は、塗料をスプレーして表面層4を形成する塗装装置を示す平面図、図5(b)は、図5(a)のb2−b2矢視に対応する断面を示す断面図であり、塗装装置10は、無端状の導電性ベルト1をその長さ方向に走行させるベルト走行装置5と、導電性ベルト1に塗料をスプレーするスプレーガン11と、導電性ベルト1の走行と同期してスプレーガン11を導電性ベルト1の幅方向に変位させるガン横行装置20と、スプレーガン11に塗料を供給する塗料供給装置30と、これらの装置を搭載するコモンベース25とよりなる。
【0060】
ベルト走行装置5は、導電性ベルト1の基体部3を張り渡す駆動ローラ21と従動ローラ22との2本のローラ、駆動ローラ21の両端を軸支する駆動側支持部材23、駆動ローラ21を回転駆動させるモータ24、および、従動ローラ22の両端を軸支する従動側支持部材27を具えて構成され、モータ24は、サーボモータやパルスモータなど所定の一定速度で回転するものを用いればよく、また、従動側支持部材27は、リニアガイド28によって、導電性ベルト1の走行方向と平行な方向に変位可能に支持され、コモンベース25に取り付けられた引張りばね29によって、ほぼ一定のテンションを導電性ベルト1の基体部3に作用させるよう構成されている。
【0061】
なお、駆動ローラ21および従動ローラ22は、片方の駆動側支持部材23および従動側支持部材27に対して、それぞれ、図示しない手段によって着脱可能に構成されていて、表面層の形成された導電性ベルト1をベルト走行装置5から取り出すとともに、表面層4が未形成で基体部3だけの導電性ベルト1をベルト走行装置5に装着することができる。
【0062】
ガン横行装置20は、図示のように、スプレーガン11を取り付ける取り付けブロック15と、ブロック15を、ボールねじ12を介して横行させる減速機付サーボモータ14と、ブロック15の直線走行をガイドするリニアガイド13とを具えて構成することができる。
【0063】
図6は、塗料供給装置30の構成例を示す配管系統図であり、塗料供給装置30は、塗料を収容する塗料タンク31、塗料タンク31から塗料を吸引してスプレーガン11に圧送する塗料ポンプ32、および、塗料を塗料タンク31からスプレーガン11まで導く塗料供給配管34を具え、また、スプレーガン11において、塗料を霧化するための霧化エア供給配管42が設けられる。
【0064】
また、塗料供給配管34の途中には、塗料の圧力を調整する塗料圧調整弁45が、霧化エア配管42の途中には、霧化エアの圧力を調整するエア圧調整弁43が、それぞれ配設され、例えば、導電性ベルト1の種類に応じてスプレー条件を手動もしくは自動で変更できるよう構成されている。
【0065】
本発明は、塗料をスプレーガン11からスプレーするのに先立って、塗料を昇温しておく点に特徴があり、そのため、塗装装置10は、塗料タンク31内の塗料を所定の温度にまで昇温したあとその温度に保持するタンク加熱装置33と、塗料供給配管34を通過する塗料を所定温度まで加熱する管路加熱装置36とを具えるともに、塗料がスプレーガン11からスプレーされていない時でも、塗料が塗料供給配管34に停滞して冷却されないよう、塗料を循環させておくための塗料戻り配管35が設けられる。
【0066】
このことに合わせて、流路切替弁41が設けられ、スプレーガン11から塗料を導電性ベルト基体部3にスプレーするときは、スプレーガン11側への出口を開放し、スプレーをしないときには、塗料戻り配管35への出口を開放して塗料を循環できるよう構成されている。さらい、好ましくは、塗料タンク31には、塗料の温度を一層均一にするための攪拌器48が設けられる。
【0067】
なお、スプレーガン11は変位しながら塗料をスプレーするので、塗料供給配管34および塗料戻り配管35とスプレーガン11との接続は、フレキシブルホース37a、37bを介するよう構成されている。
【0068】
ここで、タンク加熱装置33は、例えば、タンク胴体の内側もしくは外側を一周するよう取り付けられた温調ジャケットで構成することができ、この温調ジャケットは、内部にスチームや温水を通過させることにより、もしくは電熱ヒータを用いることによりこれをその熱源とすることができる。また、管路加熱装置36についても、塗料供給配管34の半径方向外側を取囲む同様の温調ジャケットで構成することができる。また、塗料供給配管34や塗料戻り配管3は、塗料温度の一層の安定化と、エネルギーの節約のため、できるだけ広い範囲を保温するのが好ましい。
【0069】
このような加熱装置を用いて昇温したときの、霧化直前の塗料の温度としては、好ましくは30〜100℃、より好ましくは、40〜70℃とするのがよい。30℃は、塗料の粘度を低く保つのに必要な最低限の温度であり、また、100℃以下としたのは、これを超えると、塗料成分の気化やゲル化が生じ安定的な塗工が難しくなってしまうからである。
【0070】
なお、上記の例においては、タンク加熱装置33と、管路加熱装置36との両方を設けたが、塗料の種類や塗装条件に応じていずれか一方だけとすることもできる。また、塗着効率を向上させるため、導電性ベルト1の基体部4周面と、スプレーガン11との間に高電圧を印加して静電力の助けを借りる静電塗装方式によって、塗料をスプレーすることもできる。
【0071】
図6に示した形態は、霧化エアを用いて塗料を霧化する方式であり、スプレーガン11としてはエア霧化方式対応のものが用いられ、この場合、霧化直前における塗料圧力を100〜1000kPa、霧化エアの圧力を50〜1000kPaとするのが好ましく、このことにより、良好な霧化状態を得ることができる。
【0072】
また、霧化エアによらないエアレス方式によっても塗料を霧化することができ、塗料の圧力を極めて高くし、スプレーガンのノズルにおける塗料の流速を所定の値以上とすることにより霧化するものであり、この場合の配管系統図を、図7に示す。図7を図6と対比して分かるように、エアレス方式の場合の機器の構成としては、図6に示したものと異なる部分は、霧化エア配管42がない点、およびスプレーガンとして、エアレス方式のスプレーガン11Aを用いる点だけであり、したがって詳細の説明は省略する。エアレス方式の場合、塗料を高圧にすることによって霧化するのでその圧力は、0.5〜10MPaとするのが好ましい。
【0073】
以上のように構成された塗装装置10を用いて、導電性ベルト1の基体部3を塗装して表面層4を形成するには、基体部2をベルト走行装置5に装着したあと、モータ24を駆動して基体部3を矢印Aの向きに走行させながら、減速機付サーボモータ14を駆動して、スプレーガン11を導電性ベルト1の幅方向、矢印Bの向きに、基体部3の走行と同期させて移動させ、このとき、基体部3が1周走行する間に、スプレーガン11を、基体部3の幅よりも短かく、かつ、塗料の広がり幅よりも狭いピッチだけ移動させることにより、基体部3の一方の端から他方の端に向かって、図5(a)に示すように螺旋状の、連続して延びる塗膜で、表面層4を形成することができる。
【0074】
このあと、このようにして表面層4が形成された導電性ベルト1をベルト走行装置5から取り出し、図示しない、乾燥工程において、もしくは紫外線硬化装置あるいは電子線硬化装置を用いて表面層4を硬化させ、導電性ベルト1の製造を完了する。
【実施例】
【0075】
塗布装置1を用い、塗料の種類、スプレー時の塗料温度条件を変化させ、それぞれの条件で塗料をスプレーして表面層4を形成する実験を行い、塗工の可否を調べるともに、形成された塗膜の表面粗さ、塗膜厚さを測定した。そして、この結果を表1にまとめた。表1中の塗料A、および塗料Bについては、これらの配合を、表2に示した。これらの塗料は、いずれも紫外線硬化型の塗料である。なお、表2中の、溶媒量(*)は、塗料全量に対する溶媒の質量割合を%で表したものである。
【0076】
また、上記の実験に用いる塗料について、温度を変化させたときの粘度を測定し、塗料粘度の温度依存性カーブを求め、測定したスプレー時の塗料温度と、この塗料粘度の温度依存性カーブとから、スプレー時の塗料粘度を推定し、これも「粘度」として表1に示した。
【0077】
表1において、「塗工可否」は、塗料を安定してスプレーできたものを「○」、塗料のスプレーは可能だがスプレーが不安定なものを「△」、そして、塗料の霧化が不可能なものを「×」で表し、さらに、「合否判定」は、塗工可否が「○」で、かつ、塗膜の表面粗さRaが2.0μm以下のものを「合格」、それ以外のものを「不合格」として表した。
【0078】
表1中の、「塗料温度」は、スプレーガンの塗料経路内に熱電対の接点を配置して熱電対で検出したその点でのスプレー時温度を表したものである。
【0079】
また、前記温度依存性カーブを求める際の測定器は、ThermoHaake社製のレオメータ(型式:ReoStress300+TC81)を用いて行った。この測定は、コーンとプレートとの間に測定液を挟みコーンを一定の周波数で回転往復運動させたときのコーンに作用するトルクより粘度を求めたものであるが、この測定に用いたコーンの型番はc20/1(同社製、直径20mm、プレートに対するコーンの錐面傾斜角度1度)であり、コーンの回転往復運動の周波数は1Hzであった。
【0080】
試作に用いた導電性ベルトは、中間転写ベルトであり、そのサイズは、周長800mm、ベルト幅250mm、基体部の厚さ0.2mm、表面層の厚さ0.01〜0.02mmであった。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
表1から明らかなように、実施例の導電性ベルトは、比較例のものに対していずれも、霧化の状態が良好で、塗膜の表面性状に優れ、また、膜厚も、より均一に保たれていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る導電性ベルトは、普通紙複写機、普通紙ファクシミリ機、レーザビームプリンタ、カラーレーザビームプリンタ、トナージェットプリンタなどの画像形成装置に、転写搬送ベルト、中間転写ベル等として、装着して好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】タンデム方式により画像を形成する画像形成装置の略式側面図である。
【図2】中間転写ベルト方式により画像を形成する画像形成装置の略式側面図である。
【図3】タンデム中間転写ベルト方式により画像を形成する画像形成装置の略式側面図である。
【図4】本発明に係る導電性ベルトを示す断面図である。
【図5】導電性ベルトの表面層を形成する塗装装置を示す平面図である。
【図6】塗装装置の塗料供給装置を示す配管系統図である。
【図7】塗料供給装置の他の実施態様を示す配管系統図である。
【符号の説明】
【0086】
1 導電性ベルト
3 基体部
4 表面層
5 ベルト走行装置
10 塗装装置
11、11A スプレーガン
12 ボールねじ
13 リニアガイド
14 減速機付サーボモータ
15 取り付けブロック
20 ガン横行装置
21 駆動ローラ
22 従動ローラ
23 駆動側支持部材
24 モータ
25 コモンベース
27 従動側支持部材
28 リニアガイド
29 引張りばね
30 塗料供給装置
31 塗料タンク
32 塗料ポンプ
33 タンク加熱装置
34 塗料供給配管
35 塗料戻り配管
36 管路加熱装置
37a、36b フレキシブルホース
41 流路切替弁
42 霧化エア供給配管
43 エア圧調整弁
45 塗料圧調整弁
48 攪拌器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端帯状の基体部の周面に塗料をスプレーして表面層もしくは中間層を形成する導電性ベルトの製造方法において、
塗料のスプレーに先立って、塗料の粘度が1〜1000mPa・Sとなるよう、塗料を昇温することを特徴とする導電性ベルトの製造方法。
【請求項2】
塗料として、紫外線硬化型樹脂もしくは電子線硬化型樹脂を含有するものを用いる請求項1もしくは2に記載の導電性ベルトの製造方法。
【請求項3】
前記基体部をその長さ方向に張力をかけて走行させた状態で、塗料をスプレーするスプレーガンおよび前記基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部幅方向に相対変位させながら、塗料をスプレーする請求項1もしくは2に記載の導電性ベルトの製造方法。
【請求項4】
無端帯状の基体部の周面に塗料をスプレーして表面層もしくは中間層を形成する導電性ベルトの製造方法に用いられる導電性ベルトの塗装装置であって、
前記塗料をスプレーするスプレーガン、塗料を収容する塗料タンク、および、塗料を塗料タンクからスプレーガンまで輸送する塗料供給配管を具えるとともに、塗料タンクに収容された塗料を昇温するタンク加熱装置と、塗料供給配管を通過する塗料を昇温する管路加熱装置との少なくとも一方を設けてなる導電性ベルト塗装装置。
【請求項5】
塗料タンクから塗料供給配管を経て供給された塗料を、スプレーガンをバイパスして塗料タンクに戻す塗料戻り配管を設けてなる請求項4に記載の導電性ベルト塗装装置。
【請求項6】
無端帯状の基体部と、基体部の周面を被覆する表面層もしくは中間層とを有してなり、この表面層もしくは中間層は、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ベルトの製造方法によって形成されてなる導電性ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−263586(P2006−263586A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85658(P2005−85658)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】