説明

導電性ペーストとそれを用いた配線基板とその製造方法およびそれらを用いた電子機器

【課題】導電性に優れた導電性ペーストとそれを用いた配線基板とその製造方法およびそれらを用いた電子機器の提供を目的とする。
【解決手段】導電性フィラー130と熱硬化性樹脂と生分解性材料と微生物を含むバインダー140とを有する導電性ペーストを用いて、絶縁性の基板110上に配線パターン120を形成する際に、バインダー140中の生分解性材料を微生物によって分解させ、導電性フィラー130間の緻密性を向上させることにより、導電性に優れた配線パターン120を有する配線基板100を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に配線パターンを形成する導電性ペーストとそれを用いた配線基板とその製造方法およびそれらを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体素子やその他の電子部品の接続、これらの回路基板への実装、さらに回路基板における配線などには、高い導電性と接着強度などの信頼性を確保するために、はんだ付けやはんだペーストが用いられてきた。
【0003】
しかし、近年、屋外に放置された電子機器から、酸性雨などによりはんだ中の有害な鉛が溶出するという環境汚染問題が取り上げられてきた。その対策として、鉛を含有しない鉛フリーのはんだ合金が開発されてきている。ところが、鉛フリーのはんだは従来のはんだに比べて融点が高く、耐熱性の低い基板に用いることができないという別の課題が生じている。
【0004】
そこで、耐熱性の低い電子部品の接続やフレキシブル配線基板の配線に、金属粉末(導電性フィラー)が溶融せず、そのままバインダーに結着させて導電体を形成する塗布型の導電性ペーストが用いられている。それにより、バインダーの硬化温度、つまり、はんだに比べて低い温度で接続や配線が形成できるため、熱的な影響による信頼性の低下を回避することができるようになってきた。
【0005】
ところが、塗布型の導電性ペーストは、主に有機材料からなるバインダーと導電性フィラーから構成されているため、従来のはんだに比べて導電性は低いものであった。それを向上させるために、導電性フィラーの含有量を高くした導電性ペーストも開発されている。しかし、例えば、導電性フィラーが銀などの場合、銀が高価であるため、含有量の増加によりコストの高い製品になるという課題がある。
【0006】
また、エポキシ樹脂、メラミン樹脂およびアクリル樹脂などの樹脂と導電性フィラーからなる導電性ペーストにおいては、その硬化時の体積収縮作用の大きい樹脂を用いることにより導電性を向上させる例が開示されている(例えば、特許文献1)。さらに、バインダー中に導電性フィラーと中空フィラーを導入し、硬化時の体積収縮により中空フィラーを縮め、それにより導電性フィラー間を近接させ導電性を向上させる例も開示されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−184236号公報
【特許文献2】特開2000−349406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に示されている導電性ペーストでは、バインダーを構成する樹脂の大きな体積収縮作用を利用するため、フレキシブル基板に用いる場合、熱膨張係数の差により、フレキシブル基板のそりや配線パターンの基板からの剥離などを生じやすく、信頼性に課題がある。また、特許文献2の導電性ペーストでは、中空フィラーの潰れなどによる変形で導電性フィラーの間隔を近接させるものであるが、中空フィラー内の空気などを抜く方法が不明である。また、空気が抜けなければ、体積が変化しないため導電性は向上しない。さらに、空気が抜ける場合、バインダー樹脂に空気の抜け穴が発生するため、導電性フィラー間が近接しない。さらには、中空フィラーの変形が弾性変形であれば、使用中に元の形状に戻ろうとするためクラックなどを発生する。
【0008】
本発明は、このような導電性ペーストの課題を解決するためになされたもので、導電性を高めた導電性ペーストとそれを用いた配線基板とその製造方法およびそれらを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような課題を解決するために、本発明の導電性ペーストは、導電性フィラー成分と、バインダー成分とを有し、バインダー成分が、熱硬化性樹脂と生分解性材料と微生物とを含むこと構成を有する。
【0010】
この構成によれば、導電性フィラーの分散性を低下させることなく、硬化時には導電性フィラーの間隔を近接させることにより導電性を高めた導電性ペーストを実現できる。
【0011】
また、本発明の導電性ペーストが溶剤を含むものでもよい。
【0012】
また、本発明の導電性ペーストは、生分解性材料と微生物とを含む溶剤を含有するものでもよい。
【0013】
これらの構成によれば、導電性ペーストの粘度を任意に調整できる。さらに、印刷時や保存時、経時的に、例えば揮発などにより溶剤の含有量が変化しにくいため、粘度変化の小さい安定した導電性ペーストを実現できる。
【0014】
また、本発明の導電性ペーストは、生分解性材料が、生分解性高分子であってもよい。
【0015】
この構成によれば、導電性ペーストの抵抗増加成分となるバインダー中の熱硬化性樹脂成分の絶対量を減少できる。
【0016】
また、本発明の導電性ペーストは、微生物が、熱硬化性樹脂の硬化温度以上で死滅するもので構成される。
【0017】
この構成によれば、微生物による配線パターン形成後の経時的な特性の変化などを防ぐことができる。
【0018】
また、本発明の配線基板は、本発明の導電性ペーストを用いて形成される配線パターンを有する。
【0019】
この構成によれば、配線パターンの配線抵抗の低い配線基板を実現できる。
【0020】
また、本発明の電子機器は、本発明の配線基板を用いて構成される。
【0021】
この構成によれば、配線抵抗が低いため、電力効率に優れた電子機器を実現できる。
【0022】
また、本発明の配線基板の製造方法は、基板上に導電性フィラー成分とバインダー成分とを有し、バインダー成分が、熱硬化性樹脂と生分解性材料と微生物を含む導電性ペーストからなる配線パターンを形成する配線パターン形成工程と、配線パターンが形成された基板を所定時間放置し、微生物により生分解性材料を分解する分解工程と、配線パターンが形成された基板を加熱し、微生物を死滅させると共に配線パターンを硬化させる工程とを有する。
【0023】
この製造方法によれば、バインダー中の生分解性材料を配線パターン形成後、微生物で分解することによりバインダーの量を減少させることができる。それにより、硬化時に導電性フィラー間が近接するため導電性の高い配線パターンを有する配線基板を実現できる。
【0024】
また、本発明の配線基板の製造方法は、基板上に導電性フィラー成分とバインダー成分とを有し、バインダー成分が、熱硬化性樹脂と生分解性材料を含む導電性ペーストからなる配線パターンを形成する配線パターン形成工程と、基板に形成された配線パターンに微生物を散布する工程と、微生物が散布された基板を所定時間放置し、微生物により生分解性材料を分解する分解工程と、配線パターンが形成された基板を加熱し、微生物を死滅させると共に配線パターンを硬化させる工程とを有する。
【0025】
この製造方法によれば、バインダー中の生分解性材料を配線パターン形成後、微生物で分解することによりバインダーの量を減少させることができる。それにより、硬化時に導電性フィラー間が近接するため導電性の高い配線パターンを有する配線基板を実現できる。さらに、バインダー中には予め微生物が含まれていないため、微生物による生分解性材料の分解がなく、導電性ペーストの保存特性を向上させることができる。
【0026】
また、本発明の配線基板の製造方法は、導電性ペーストが溶剤を含むものでもよい。
【0027】
また、本発明の配線基板の製造方法は、溶剤が生分解性材料と微生物とを含むものでもよい。
【0028】
これらの製造方法によれば、導電性ペーストの粘度調整が容易で、微細な配線パターンを有する配線基板を実現できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、導電性フィラー間を近接させて導電性を高めることのできる導電性ペーストを実現できるという大きな効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について、図1を用いて説明する。
【0031】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る配線基板の斜視図で、図1(b)は図1(a)のA−A線から見た要部断面図である。なお、断面図は、説明をわかりやすくするために任意に拡大している。
【0032】
図1(a)において、配線基板100は、ガラスクロスに樹脂を含浸させたガラスエポキシ樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂やポリイミドなどの樹脂からなる絶縁性の基板110上に導電性ペーストを、例えばスクリーン印刷などで印刷し、加熱により硬化させた所定の形状を有する配線パターン120を備えている。そして、図1(b)に示すように、配線パターン120は、銀粒子や銅粒子などを含む導電性フィラー130と、導電性フィラー130を結着するためのバインダー140で構成されている。
【0033】
なお、図1の配線パターン120は、導電性ペーストを加熱硬化処理した後の状態を示している。
【0034】
以下に、配線パターン120を形成する導電性ペーストについて説明する。
【0035】
本発明の実施の形態の導電性ペーストは、例えば80重量部〜95重量部の導電性フィラー130と5重量部〜20重量部のバインダー140で構成されている。そして、バインダー140は、熱硬化性樹脂と生分解性材料と微生物とを含有している。
【0036】
なお、バインダー140が5重量部以下では、導電性ペーストの粘度が高くなるため、スクリーン印刷時に十分な流動性が得られず、印刷性が低下し、取り扱いが難しくなる。特に、バインダー140が0.1重量部以下では、導電性フィラー130の結着力の低下や基板110との付着力の低下を生じる。また、導電性フィラー130の分散性が悪くなるため、導電性フィラー130の部分的な凝集により、例えばバインダー140成分の多い部分が生じ、配線パターン120の配線抵抗が高くなる。
【0037】
一方、バインダー140が20重量部以上では、導電性フィラー130間の間隔が広がるため、導電性が低下し、結果的に配線抵抗が高くなる。そのため、通常、導電性フィラー130とバインダー140の最適な配合比が、上記条件により決められる。
【0038】
そこで、本発明の実施の形態では、導電性フィラー130とバインダー140を上記で示した所定量の配合比で混合し、バインダー140中に、熱分解性樹脂、生分解性材料と微生物とを含有する導電性ペーストで、絶縁性の基板110上に配線パターン120を形成した後、加熱硬化処理をする前に、微生物により生分解性材料を分解させ、最終的に二酸化炭素と水にしてバインダー140からなくするものである。そして、所定の時間経過後に加熱硬化処理により、微生物を死滅させると共に、生分解性材料の分解除去により、バインダー140量が減少し、導電性フィラー130間の間隔が近接するため導電性の向上した配線パターン120を形成できるものである。
【0039】
また、必要に応じて、溶剤、硬化促進剤、レベリング剤、沈降防止剤、カップリング剤や消泡剤を添加してもよい。特に、揮発性や非揮発性の溶剤は、導電性ペーストの粘度を任意に変えることができるので、微細な配線パターン120の形成に効果が大きい。
【0040】
また、溶剤として、オリゴ糖などの糖類やアミノ酸などの生分解性材料と微生物を含有したものを用いることもできる。この場合、粘度調整が容易で、微細な配線パターン120を形成できる。さらに、生分解性材料は揮発しないため、配線パターン120形成前後で導電性ペーストの粘度が変化することがなく、作業効率や形状の安定性などの信頼性が向上する。そして、配線パターン120形成後、バインダー140中の生分解性材料と溶剤中の生分解性材料が、微生物により分解されるため、配線パターン120の加熱硬化後、上記溶剤を含まない導電性ペーストと同様に、配線抵抗の低い配線パターン120を形成できる。
【0041】
なお、導電性フィラー130としては、例えば、銀、銅、金、ニッケル、パラジウム、錫などの金属粒子やこれらの合金粒子などを用いることができる。さらに、例えばアルミナなどの無機材料やポリスチレン樹脂などの有機材料の表面に金属をコーティングしたものを用いることもできる。そして、導電性フィラー130の形状は、特に限定されないが、球状や鱗片状のものが好ましい。その大きさは、球状の場合、平均粒径が0.1μm〜10数μm程度が用いられるが、特に0.1μm〜5μmのものが好ましい。
【0042】
また、熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂や尿素樹脂などが用いられる。さらに、これらの内の1種もしくは2種以上の混合系で使用することもできる。特に、エポキシ樹脂は、導電性ペーストの粘度、硬化反応性や基板との付着性の点から好ましいものである。
【0043】
また、生分解性材料としては、微生物合成法で製造される脂肪酸ポリエステル系やオリゴ糖などの多糖類系からなる生分解性プラスチック、天然物誘導法で製造されるデンプン複合物系やデンプンからなる生分解性プラスチック、化学合成法で製造される脂肪族ポリエステル系、ポリエステルアミド系、ポリカプロラクトン系、ポリ乳酸系や酢酸セルロース系からなる生分解性プラスチックなどの生分解性高分子などの分子量が数100〜数1000の粘性液体、または分子量がそれ以上の固形物のものを用いることができる。特に、固形物からなる生分解性高分子の場合には、従来の流動性を制御するために配合されている、例えばシリカなどからなる無機フィラーと同様の効果を発揮するものである。さらに、生分解性高分子の場合、最終的には、無機フィラーのように配線パターン120中に残存しないので、導電性を低下させることがなく、その効果は大きいものである。
【0044】
また、微生物としては、例えば、放線菌、緑濃菌、子のう菌、担子菌、糸状菌などの細菌やバクテリアを用いることができる。なお、微生物は、常温(例えば20℃〜60℃)付近で活動が活発化するものが好ましく、また、100℃以上では死滅する微生物が望ましい。さらに好ましくは、0℃以下の温度では、活動が休止するか、または分解速度が極端に低下する微生物がよい。これは、微生物を含有した導電性ペーストの保管時の生分解性材料の分解の防止を考慮したものであるが、スクリーン印刷する直前に、微生物をバインダーと混ぜ合わせる場合には特に必要ない。
【0045】
また、揮発性や非揮発性の溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、トルエン、ブタノール、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサンなどやエチレングリコール系、エーテル系などを用いることができる。
【0046】
以下に、本発明の導電性ペーストを用いて形成される配線パターン120を有する配線基板100の製造方法について、図2を用いて説明する。
【0047】
図2は、配線基板100の製造方法の一例を説明する要部断面図である。
【0048】
まず、図2(a)に示すように、例えばエポキシ樹脂などの絶縁性の基板110上に、導電性ペーストをスクリーン印刷などにより、所定の配線パターン120形状で印刷する。このとき、導電性ペーストは、平均粒径0.3μmの銀粒子からなる80重量部の導電性フィラー130とエポキシ樹脂とポリ乳酸系の生分解性材料と放線菌からなる20重量部のバインダー140の混合物である。
【0049】
つぎに、上記方法で形成された配線パターン120を、例えば20℃〜30℃程度の常温で所定時間放置する。このとき、所定時間とは、放線菌などの微生物がバインダー140に混合した生分解性材料を分解するのに要する時間である。
【0050】
しかし、通常分解に要する時間は、例えば、常温(20℃)であれば数10日〜数100日を要する場合がある。そのため、分解時間を短縮する場合には、混合される微生物の活動温度が高いものを用い、放置温度を40℃〜70℃に設定することにより、数10時間程度にすることが可能である。これは、温度上昇による微生物の活動の活発化と増殖の相乗効果によるものと考えられる。なお、この値は絶対的なものではなく使用する微生物や環境などの要因により最適な条件が決められることは言うまでもない。
【0051】
上記微生物の作用により、図2(b)に示すような、生分解性材料が低分子化合物を経て、最終的に水と二酸化炭素に分解され、空孔や洞穴形状の穴150が形成される。
【0052】
つぎに、図2(b)の穴150が形成された配線パターン120形状の導電性ペーストを、バインダー140中の熱硬化性樹脂の硬化温度以上で加熱処理する。例えば、熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂の場合、加熱処理条件は、130℃、60分である。この処理工程により、穴150を埋めるようにエポキシ樹脂が流動しながら硬化し、それに伴って、導電性フィラー130間が緻密になる。その結果、導電性フィラー130間の接触面積などが増加し、導電性が高くなる。
【0053】
また、この加熱処理により、バインダー140中の微生物も完全に死滅させることができるため、図2(c)に示す配線パターン120形成後に残存する微生物が問題となることはなくなる。よって、熱硬化性樹脂の硬化温度、例えばエポキシ樹脂の場合130℃以上で死滅しない微生物は利用できないことになる。
【0054】
なお、上記配線基板100の製造方法では、導電性ペースト中に予め微生物を混合させる方法で説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、導電性フィラー130と熱硬化性樹脂および生分解性材料を含むバインダー140からなる導電性ペーストで、絶縁性の基板110上に配線パターン120を形成した後、微生物を少なくとも配線パターン120は覆うように散布する。そして、微生物を散布し、所定時間放置した後、硬化処理を行い配線パターン120を形成してもよい。これによれば、上記実施の形態と同様の効果が得られると共に、導電性ペーストが保存中に微生物により分解されないため、保存性に優れた導電性ペーストを得ることができる。また、微生物が配線パターン120の表面から生分解性材料を分解するため、導電性フィラー130が露出しやすく、外部機器などとの接続時の接触抵抗を低減することもできる。
【0055】
さらに、上記配線基板100に用いた導電性ペーストに、揮発性、非揮発性の溶剤や生分解性材料と微生物からなる溶剤を含有した導電性ペーストを用いてもよい。この場合、生分解性材料としては、分子量が数100〜数1000程度の粘性液体状のものが用いられる。例えばオリゴ糖などの糖類やアミノ酸などである。これにより、導電性ペーストの粘度の調整範囲が広がり、微細な配線パターン120などの形成が容易となる。特に、生分解性材料と微生物からなる溶剤は、製造過程で、溶剤の揮発による粘度変化が小さいので、導電性ペーストの管理の簡略化や配線パターン120の形状安定性に優れ、信頼性の高い配線基板100を実現できる。
【0056】
また、本発明の実施の形態の導電性ペーストを用いた配線基板100を、例えば、携帯機器や携帯端末などに用いることにより、配線抵抗が低いため電力消費の少ない電子機器を実現できる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施の形態に係る導電性ペーストを用いた配線基板100の作製について、実施例に基づいて具体的に説明する。
【0058】
本実施例においては、以下の条件により、例えば、導電性フィラー130として銀粒子を含有する導電性ペーストで配線パターン120を絶縁性の基板110上に印刷した。絶縁性の基板110としては、ポリイミド樹脂からなるフィルムシートで、その厚みが200μmのものを用いた。導電性ペーストは、導電性フィラー130として銀粒子の粒径が0.5μm〜10μmの球状銀粒子と鱗片状銀粒子の混合粒子を85重量部、硬化温度120℃のエポキシ樹脂からなる熱硬化性樹脂を10重量部とオリゴ糖などや重合度15程度のポリ乳酸などからなる生分解性材料を約5重量部と放線菌からなる微生物を0.01重量部以下の微小量を含有するバインダー140に混合して用いた。この導電性ペーストでスクリーン印刷法を用いて、絶縁性の基板110上に配線パターン120形状を印刷した。そのときのスクリーンメッシュの線径は25μm、感光性乳剤層厚は10μmで、配線パターン120の線幅設計値が150μmとなるようにした。導電性ペーストで配線パターン120形状に印刷した後、微生物に生分解性材料を分解させるために、35℃の環境温度中に48時間放置した。その後、バインダー140の熱硬化樹脂の硬化温度130℃で60分の加熱処理により配線パターン120を形成した。このときの配線パターン120の膜厚は20μm〜30μm、その線幅は140μm〜150μmであった。これは、従来の導電性ペーストを用いた配線パターンよりも小さいものであり、その要因は生分解性材料の分解による体積収縮量によるものと考えている。また、この加熱処理により、バインダー140中の微生物が死滅したことを、処理後の配線パターン120を培養することにより確認した。
【0059】
このようにして作製した配線基板100の配線パターン120の導電性を評価した。その結果、表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
この表1から、生分解性材料と微生物を含有しない、従来の同じ配合比からなる導電性ペースト(試料名A)を用いた配線パターン120の比抵抗に比べて、生分解性材料の含有した導電性ペースト(試料名B、C)の比低抗が1/2から1/3になった。つまり、上記導電性ペーストを用いることにより、配線パターン120の配線抵抗の小さい配線基板100を実現できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の導電性ペーストによれば、十分な導電性を得ることができるため、配線抵抗の低い配線基板や電力損失の少ない電子機器の実現において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(a)本発明の実施の形態に係る配線基板の斜視図(b)同図(a)のA−A線から見た要部断面図
【図2】本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法の一例を説明する要部断面図
【符号の説明】
【0064】
100 配線基板
110 基板
120 配線パターン
130 導電性フィラー
140 バインダー
150 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性フィラー成分と、
バインダー成分とを有し、
前記バインダー成分が、熱硬化性樹脂と生分解性材料と微生物とを含むことを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
前記導電性ペーストが溶剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記溶剤が生分解性材料と微生物とを含むことを特徴とする請求項2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記生分解性材料が、生分解性高分子からなることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記微生物は、前記熱硬化性樹脂の硬化温度以上で死滅することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の導電性ペーストを用いて形成された配線パターンを有する配線基板。
【請求項7】
請求項6に記載の配線基板を用いたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
基板上に導電性フィラー成分とバインダー成分とを有し、前記バインダー成分が、熱硬化性樹脂と生分解性材料と微生物を含む導電性ペーストからなる配線パターンを形成する配線パターン形成工程と、
前記配線パターンが形成された前記基板を所定時間放置し、前記微生物により前記生分解性材料を分解する分解工程と、
前記配線パターンが形成された前記基板を加熱し、前記微生物を死滅させると共に前記配線パターンを硬化させる工程とを有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項9】
基板上に導電性フィラー成分とバインダー成分とを有し、前記バインダー成分が、熱硬化性樹脂と生分解性材料を含む導電性ペーストからなる配線パターンを形成する配線パターン形成工程と、
前記基板に形成された前記配線パターンに微生物を散布する工程と、
前記微生物が散布された前記基板を所定時間放置し、前記微生物により前記生分解性材料を分解する分解工程と、
前記配線パターンが形成された前記基板を加熱し、前記微生物を死滅させると共に前記配線パターンを硬化させる工程とを有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記導電性ペーストが溶剤を含むことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記溶剤が生分解性材料と微生物とを含むことを特徴とする請求項10に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−140082(P2006−140082A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330210(P2004−330210)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】