説明

導電性ペースト及びその導電性ペーストを用いて得られるフレキシブルプリント配線板

【課題】 基板であるポリイミドに対して高い密着性を有し、しかも、耐折り曲げ性、耐溶剤性の良好な導電性ペーストを提供すること。
【解決手段】 導電性粉末とバインダー樹脂とを含んだ導電性ペーストにおいて、前記バインダー樹脂がアルミニウム化合物及びシランカップリング剤を含むエポキシ樹脂組成物であることを特徴とする導電性ペーストを採用する。そして、前記エポキシ樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂を2重量部〜20重量部、アルミニウム化合物0.01重量部〜3.0重量部、上記シランカップリング剤0.01重量部〜3.0重量部含む樹脂組成物等を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、導電性ペースト及びその導電性ペーストを用いて得られるフレキシブルプリント配線板導に関する。特に、本件発明に係る導電性ペーストは、ポリイミド樹脂基材に対して優れた密着性を有する導電性ペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用エレクトロニクス機器、OA機器、民生用電気製品等といった電子・電気機器においては、小型、軽量化、高集積化に伴い多層化、高密度化が進んでいる。従って、それら電子・電気機器に多用されるフレキシブルプリント配線基板(FPC)やメンブレンといった印刷回路にも多層化、高密度化が進んでいる。
【0003】
プリント配線板の開発の歴史をたどれば、基材にはベークライト板に始まり、回路基板としてはビスフェノール型を主体とするエポキシ樹脂が汎用されていた。しかし、エポキシ樹脂は未硬化物の各種溶剤への溶解性や成形後の銅箔等の接着性は優れるものの、薄膜としたときの電気特性が不充分であり、且つ、折り曲げ加工が不可能であり狭小化したデバイススペースへの組み込みが不可能であった。そこで、回路基板用の樹脂として、銅等の導電性金属材料との熱線膨張率が近く、折り曲げてのデバイス加工及び使用が可能であるポリイミド樹脂基材が用いられている。
【0004】
そして、一方で、プリント配線板の回路形成方法として、特許文献1等多くの先行技術があるように銅箔を基材に張り合わせてエッチング法で回路形成を行う場合と、特許文献2及び特許文献3に開示されているようなスクリーン印刷法やノズル噴射方式により導電性ペーストを用いて基材表面に回路形状を直接形成し加熱固化して回路とする場合とが存在した。
【0005】
特に、ポリイミド樹脂基材上にスクリーン印刷等により、導電性ペーストで回路形状を印刷形成することは、ポリイミドとの濡れ性、平滑性等の問題から非常に困難とされている。また、微細配線を形成した場合でも、その他の特性、特にポリイミドとの密着性が低いため、後工程、例えば洗浄工程等で配線の剥離等の問題が生じるため、実用上使用するのが困難であった。また、ポリイミド等の回路基板に導電性ペーストを印刷する際には、導電性ペーストに耐溶剤性や耐折り曲げ性が要求されている。
【0006】
このような問題を解決すべく、特許文献4には、導電性ペーストのバインダー樹脂としてブタジエンゴム等のゴム分やポリエステル等の1種以上の成分を共重合したポリイミド及び/又はポリアミドを用いることが開示されている。また、特許文献5には、特定の可溶性ポリイミドシロキサン、エポキシ樹脂、金属粉及び可溶性有機溶剤とからなる導電性ペースト組成物を用いることが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−95183号公報
【特許文献2】特開平8−18190号公報
【特許文献3】特開2004−247572号公報
【特許文献4】特開2004−221006号公報
【特許文献5】特開平8−120200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、当該特許文献4及び特許文献5に開示の発明は、導電性ペーストのバインダー樹脂を選択することにより上述の問題を解決しようとするものであるが、基板であるポリイミドに対して実用上充分な密着性を有するものではなかった。
【0009】
従って、本件発明の目的は、基板であるポリイミドに対して高い密着性を有し、しかも耐折り曲げ性、耐溶剤性も良好な導電性ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件発明者らは、鋭意研究の結果、導電性ペーストのバインダー樹脂としてアルミニウム化合物及びシランカップリング剤を含有するエポキシ樹脂組成物を用いることにより、上記目的が達成し得ることを知見し、本件発明に到達した。
【0011】
本件発明に係る導電性ペースト: 本件発明に係る導電性ペーストは、導電性粉末とバインダー樹脂とを含んだ導電性ペーストにおいて、前記バインダー樹脂がアルミニウム化合物及びシランカップリング剤を含むエポキシ樹脂組成物を含むことを特徴とするものである。このように、導電性ペーストの製造に用いるバインダー樹脂に、エポキシ樹脂を主剤とし、アルミニウム化合物及びシランカップリング剤を助剤として用いたエポキシ樹脂組成物を用いることで、ポリイミド樹脂基材との濡れ性に優れ良好な密着性の得られる導電性ペーストが得られるのである。
【0012】
そして、前記エポキシ樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂を2重量部〜20重量部含有し、アルミニウム化合物0.01重量部〜3.0重量部、上記シランカップリング剤0.01量部〜3.0重量部を含む基本的組成を採用することが好ましいのである。
【0013】
前記アルミニウム化合物は、アルミニウムアルキルアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドポリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー、アルミニウムオキサイドステレートトリマー、アルミニウムオキサイドラウレートトリマー、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムイソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブチレートから選択される一種又は二種以上を組み合わせて用いることが好ましいのである。
【0014】
前記シランカップリング剤は、エポキシ系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、メタクリロキシ系カップリング剤、アクリロキシ系カップリング剤又はビニル系カップリング剤である一種又は二種以上を組み合わせて用いることが好ましいのである。
【0015】
前記導電性粉末は、金、銀、銅、スズ、白金、ニッケル、パラジウム、アルミニウム及びこれらの合金、カーボン、金属酸化物の各粉末から選択されるものを用いることが出来る。
【0016】
そして、本件発明に係る導電性ペーストは、そのペースト中に、前記導電性粉末を50重量%〜90重量%、残部バインダー樹脂という組成割合を採用することが好ましいのである。
【0017】
本件発明に係るフレキシブルプリント配線板: 以上に述べてきた導電性ペーストを用いてポリイミド樹脂基材上に回路形成を行うと、ポリイミド樹脂基材との良好な密着性が得られ、実用上問題のない範囲で、導電性ペーストを用いてスクリーン印刷法、ディスペンサー塗布法によるポリイミド樹脂基材表面への回路の直接形成が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本件発明に係る導電性ペーストは、ポリイミド樹脂基材に対して高い密着性を有し、しかも耐折り曲げ性、耐溶剤性等の導電性ペーストに要求される諸特性も良好である。従って、本件発明に係る導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷法、ディスペンサー塗布法によるポリイミド樹脂基材表面へ直接形成した回路は良好な密着性を有し、フレキシブルプリント配線板の製造プロセスを大幅に短縮して製造コストの大幅削減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(本件発明に係る導電性ペースト)
本件発明に係る導電性ペーストの実施の形態について説明する。本件発明に係る導電性ペーストは、導電性粉末、バインダー樹脂を含むものである。本件発明に係る導電性ペーストにおいて、上記バインダー樹脂はアルミニウム化合物及びシランカップリング剤を含むエポキシ樹脂組成物である。
【0020】
エポキシ樹脂: 上記エポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂は、エポキシ当量が100〜1000、分子量が400〜5000の液状又は粉末状のものが好ましい。具体的には、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらエポキシ樹脂の中でビスフェノールF型エポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。
【0021】
このエポキシ樹脂の含有割合は、エポキシ樹脂組成物中に、好ましくは2重量部〜20重量部である。エポキシ樹脂の含有割合が2重量部未満ではポリイミド樹脂基材との良好な密着性を得るための樹脂組成バランスの範囲を外れることとなり、また20重量部を超えると硬化後の電極や配線の電気抵抗が高くなりすぎ、所望の導電性を得ることが出来ない。さらに好ましくは、エポキシ樹脂の含有割合は4重量部〜10重量部の範囲とすることが好ましいのである。4重量部以上でポリイミド樹脂基材との良好な密着性をより安定的に得ることができ、10重量部以下の範囲で更に良好な導電性を確保することが出来る。
【0022】
アルミニウム化合物: そして、上記エポキシ樹脂組成物の一成分として用いられるアルミニウム化合物には、アルミニウムアルキルアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドポリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー、アルミニウムオキサイドステレートトリマー、アルミニウムオキサイドラウレートトリマー、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムイソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブチレート等を用いることが可能である。そして、これらのアルミニウム化合物は、エポキシ樹脂組成物の中でポリイミド樹脂基材との密着性を向上させるための助剤として用いるのである。このアルミニウム化合物の内、特に性能安定性に優れるのがアルミニウムアルキルアセテートジイソプロピレートである。
【0023】
アルミニウム化合物の含有割合は、上記エポキシ樹脂組成物の中で、好ましくは0.01重量部〜3.0重量部、アルミニウム化合物の含有割合が0.01重量部未満では、ポリイミド樹脂基材との密着性を向上及び加熱後の回路密着性を維持することができないのである。一方、3.0重量部を超えると、固化させ回路としたときの樹脂特性が脆化してしまいフレキシブルプリント配線板に必要な靱性が損なわれるのである。さらに好ましくはアルミニウム化合物の含有割合を0.05重量部〜1.0重量部の範囲で用いる。この範囲がポリイミド樹脂基材との密着性と固化後の回路のフレキシブル性能が最も良好且つ安定した範囲だからである。
【0024】
シランカップリング剤: そして、エポキシ樹脂組成物に用いられるシランカップリング剤は、バインダー樹脂と導電性粉末粒子との濡れ性を向上させ樹脂組成物内での導電性粒子の分散性を向上させ、同時に固化したエポキシ樹脂組成物のバインダー樹脂とポリイミド樹脂基材との密着性改良の為に用いられるものである。ここで言うシランカップリング剤には、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等を用いることができる。これらシランカップリング剤の中でもアミノ系又はエポキシ系のシランカップリング剤であるγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましく用いられる。
【0025】
エポキシ樹脂組成物中に於いて、このシランカップリング剤の含有割合は、好ましくは0.01重量部〜3.0重量部、さらに好ましくは0.05重量部〜1.0重量部である。シランカップリング剤の含有割合が0.01重量部未満では、バインダー樹脂と導電性粉末粒子との濡れ性を向上させ導電性粒子の分散性を向上させることも、固化したエポキシ樹脂組成物のバインダー樹脂とポリイミド樹脂基材との密着性改良も出来ないのである。一方、シランカップリング剤の含有割合が3.0重量部を超えて添加しても、更にバインダー樹脂と導電性粉末粒子との濡れ性を向上させ導電性粒子の分散性を向上させることも、固化したエポキシ樹脂組成物のバインダー樹脂とポリイミド樹脂基材との密着性改良も出来ず、エポキシ樹脂組成物の適正な粘度バランスを崩し、資源の無駄遣いともなるのである。
【0026】
エポキシ樹脂組成物中の任意成分: なお、本件発明に用いられるエポキシ樹脂組成物には、通常、希釈溶剤、硬化剤、粘度調整剤、酸化防止剤、難燃剤、充填剤、顔料、染料、界面活性剤、帯電防止剤、消泡剤等の各種添加剤が適宜使用目的に応じて含有される。
【0027】
そして、本件発明に係る導電性ペーストを用いてポリイミド樹脂上に回路形状を形成する場合の粘度調整を目的とした固形分調整には、有機溶剤を用いることも可能である。このときの有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ジアセトンアルコール、テルピネオール、2−n−ブトキシエタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミド等のサルファ系溶剤、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール系溶剤、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤等を単独又は組み合わせて混合溶剤として用いることが可能である。
【0028】
導電性粉末: そして、本件発明に係る導電性ペーストに用いられる導電性粉末としては、金、銀、銅、スズ、白金、ニッケル、パラジウム、アルミニウム及びこれらの合金、カーボンブラック、グラファイト等のカーボン、金属酸化物の各粉末が用いられる。これらの中でも、微粒粉体の得られる銅粉、銀粉が、特に好ましく用いられる。
【0029】
この導電性粉末の形状に関しては特段の限定はなく、粉粒形状はあらゆる種類のものを使用することが可能である。例えば、球状、フレーク状、デントライト状、紡錘状、凝集状、不定形状が用いられる。
【0030】
導電性ペーストの導電性粉末の含有量: 本件発明に係る導電性ペーストは、上記導電性粉末を好ましくは50重量%〜90重量%、残部バインダー樹脂の組成を採用することが好ましい。本来であれば、導電性ペーストの設計として、そこのどの程度の導電性粉末を含有させるかは用途に応じて適宜変更可能であり、特段の限定を要するものではない。しかしながら、電気回路等の通電目的とする部位の形成にもちいることを前提として考えると、導電性ペースト中、上記導電性粉末の含有量が50重量%未満では、どのように粒子分散性に優れ凝集のない微粒粉を用いても、固化後の膜密度が低下し、薄膜抵抗が上昇し電気回路の形成には不向きとなる。一方、上記導電性粉末の含有量が90重量%を超えると、導電性ペーストとしての粘度が著しく上昇し、ペーストとしての取扱が困難となり、スクリーンの間詰まり等を引き起こしやすくなるのである。
【0031】
本件発明に係る導電性ペーストの製造: 本件発明に係る導電性ペーストの製造方法は特に限定されず、デイゾルバー等のエンペラー型分散機や3本ロール、サンドミル、ボールミル、ビーズ型ミル、を用いて適宜行うことができる。
以下、実施例等に基づき本件発明をより具体的に説明する。
【実施例1】
【0032】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製:RE303SL)を7.05g(4.74重量部)、アルミニウム化合物(川研ファインケミカル株式会社製:プレンアクトALM)を0.15g(0.10重量部)、シランカップリング剤として信越化学工業株式会社製のKBM303とKBM403とをそれぞれ0.08g(0.076g×2=0.10重量部)を基本組成として、そこに硬化剤として酸無水物系硬化剤(日本化薬社製:カヤハードMCD)1.64gとアミンアダクト型硬化剤(味の素ファインテクノ社製:アミキュアMY−24)0.43g、エチルセルロース(和光純薬工業株式会社製)0.45gとシリコーン(信越化学工業株式会社製:X−22−169−AS)0.27gと粘度調整剤としてターピネオールC(日本テルペン化学株式会社)17.5gとアエロジル(日本アエロジル株式会社製:アエロジル200V)1.2gをパドル型混練機で混練した後、球状銀粉及び極薄板状銀粉を加え、さらに混練した。
【0033】
そして、得られた混練物を引き続き3本ロールで混練した後、脱泡機(シンキー社製:AR250)を用いて混練物中に含まれる気泡を除去し、銀ペーストを得た。このときの銀ペースト中への微小球状銀粉の含有量は56.43wt%、極薄板状銀粉含有量は24.19wt%であった。
【0034】
得られた銀ペーストを、スクリーン印刷機を用いて配線幅50μm、配線と配線の間隔を50μmとし、ポリイミド樹脂基板に印刷したところ、配線の断線や滲みのない良好な印刷性を示した。また、スクリーン印刷機に用いた版を顕微鏡により観察した結果、版に銀粉が全く目詰まりしていないことを確認した。
【0035】
引き続きスクリーン印刷機を用いて、ポリイミド樹脂基板上に密着性試験用のサンプルとして、縦3cm×横3cmの条件で銀ペーストを印刷した後、180℃の条件で1時間乾燥させた。このようにして得られた乾燥膜のポリイミドとの密着性を確認するため、碁盤目テープ剥離試験を行った。その結果、全てのマス目から乾燥膜の剥離は観察されず、ポリイミド樹脂基材との良好な密着性を示した。
【0036】
さらに、スクリーン印刷機を用いて、ポリイミド樹脂基板上に比抵抗測定用のサンプルとして、縦3cm×横3cmの条件で銀ペーストを印刷した後、180℃の条件で1時間乾燥させた。このようにして得られた乾燥膜の膜厚をデジタル膜厚計で測定し、比抵抗を算出した。その結果、比抵抗は5.781×10−4Ω・cmであった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本件発明に係る導電性ペーストは、ポリイミド樹脂基材に対して高い密着性を有し、しかも耐折り曲げ性、耐溶剤性等の導電性ペーストで形成した回路に要求される諸特性も良好である。従って、本件発明に係る導電性ペーストは、フレキシブルプリント配線基板を始めとするプリント配線基板の製造に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末とバインダー樹脂とを含んだ導電性ペーストにおいて、前記バインダー樹脂がアルミニウム化合物及びシランカップリング剤を含むエポキシ樹脂組成物であることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂を2重量部〜20重量部、アルミニウム化合物0.01重量部〜3.0重量部、上記シランカップリング剤0.01重量部〜3.0重量部を含む樹脂組成物である請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記アルミニウム化合物は、アルミニウムアルキルアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドポリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー、アルミニウムオキサイドステレートトリマー、アルミニウムオキサイドラウレートトリマー、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムイソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブチレートから選択される一種又は二種以上を用いるものである請求項1又は請求項2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記シランカップリング剤は、エポキシ系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、メタクリロキシ系カップリング剤、アクリロキシ系カップリング剤又はビニル系カップリング剤である一種又は二種以上を用いるものである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記導電性粉末が金、銀、銅、スズ、白金、ニッケル、パラジウム、アルミニウム及びこれらの合金、カーボン、金属酸化物の各粉末から選択される請求項1〜請求項4のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記導電性粉末を50重量%〜90重量%、残部バインダー樹脂である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の導電性ペーストを用いてポリイミド樹脂基材上に回路形成したフレキシブルプリント配線板。

【公開番号】特開2006−80013(P2006−80013A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264740(P2004−264740)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】