説明

導電性ボールの搭載装置

【課題】本発明は、導電性ボールを電極に搭載する際に、ハンドリング手段である吸着ヘッドやマスク及び導電性ボールに仮固定材が付着し難い搭載装置を提供することを目的としている。
【解決手段】上記課題は、電子部品の電極に形成される接続バンプとして採用される導電性ボールを低粘着質の仮固定膜が形成された前記電極に搭載する搭載装置であって、前記仮固定膜を介した状態で前記導電性ボールを前記電極に搭載するとともに、前記電極に搭載された導電性ボールを通じて熱的または機械的作用を前記仮固定膜に付与する仮固定手段により前記仮固定膜を高粘着質に変性させる搭載部を有し、前低粘着質の仮固定膜の粘着性は導電性ボールが仮固定膜に付着しない粘着性であり、前記高粘着質の仮固定膜の粘着性は導電性ボールが仮固定膜に付着する粘着性であることを特徴とする導電性ボールの搭載装置により解消される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BGA(Ball Grid Array)タイプ又はFC(Flip Chip)タイプなどエリアアレイ型の接続バンプ構造を有する半導体部品又は基板、パッケージなどの電子部品に導電性ボールを搭載する搭載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末機器やノート型パソコンの高速化と高機能化、及び軽量化、小型化と薄型化が進むにつれ、それらに内蔵される半導体部品や半導体部品を実装する基板に対しては、その小型化、薄型化と接続端子数の増加という相反する性能が要求されている。その要求に応ずるものとして、BGAタイプ或いはFCタイプなどエリアアレイ型の接続バンプをパッド状の電極に形成した半導体部品又は基板、それらが組み合わされたパッケージなどの電子部品が採用されている。
【0003】
例えば半田や銅など導電材を用いて接続バンプを形成する方法としては、導電材を含んだペーストを電極に印刷するペースト方式、導電性を有するボール(導電性ボール)を電極に搭載する導電性ボール方式、導電材をメッキや蒸着する膜付け方式などがある。多端子化のため電極の配列は高密度化し、それに伴い接続バンプの大きさも小型化する傾向にある。小型の接続バンプを形成する場合には、接続バンプの配列精度や生産性の面で有利な導電性ボール方式が採用される場合が多い。
【0004】
導電性ボール方式によれば、前記接続バンプは、仮固定材を電極に塗布する印刷工程と、仮固定材を介した状態で導電性ボールを電極に搭載する搭載工程と、その導電性ボールをリフロー(加熱溶融)して接続バンプを形成するバンプ形成工程を経て製造される。ここで言う仮固定材とは、電極上に搭載された導電性ボールがその後の取扱いで移動しないように仮固定するものである。この仮固定材としては、一般的には、リフロー時に導電性ボール及び電極の酸化を防止し、還元作用により電極面を清浄化する機能を併せて持つロジン(松脂)とともに粉末状の樹脂を有機溶剤に分散させてペースト状とし粘着性を高めたソルダーペーストやフラックスが使用されている。
【0005】
前記搭載工程において導電性ボールを電極に搭載する方法としては、導電性ボールのハンドリング手段で大別して吸着方式と充填方式が知られている。吸着方式とは、下記特許文献1にその一例が開示されるように、電極の配列パターンに対応した貫通孔状の位置決め吸着部を下面に備えたハンドリング手段である吸着ヘッドを用い、導電性ボールを位置決め吸着部で吸着し、電子部品へ移送し、導電性ボールを位置決め吸着部から切り離し電極に搭載する方式である。充填方式とは、下記特許文献2にその一例が開示されるように、電極の配列パターンに対応した貫通孔状の位置決め開口部を備えたハンドリング手段であるマスクを用い、位置決め開口部と電極が対応する状態にマスクを位置合わせし、位置決め開口部に導電性ボールを充填し、位置決め開口部を通して導電性ボールを電極に搭載する方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−223234号公報
【特許文献2】特開2001−267731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
接続バンプの数の増加とともにその配列パターンは高密度化の傾向にあり、直径が100μm以下の径小な導電性ボールを電極に搭載するケースが増加している。
そのような径小の導電性ボールを搭載する場合、吸着方式では、導電性ボールを吸着している吸着ヘッドの下面と電極との対峙している隙間が非常に狭隘となり、電極に塗布された高粘着質の仮固定材(フラックス)が吸着ヘッドに付着し、付着した仮固定材による吸着不良が生じ易くなるという問題があった。その問題を防止するためには都度吸着ヘッドのクリーニングが必要となり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0008】
充填方式では、高粘着質の仮固定材が位置決め開口部の内壁に付着し、導電性ボールが位置決め開口部の途中で引っ掛かるため充填不良が生じる問題や、仮固定材がマスクの下面に付着し、電子部品からマスクを分離できなくなるという問題があった。また、充填方式では、電極の数より多い導電性ボールが供給され、位置決め開口部に充填されない余分な導電性ボールは回収され、次の作業に使用されるが、その余分な導電性ボールに仮固定材が付着し、位置決め開口部に挿入できず、充填不良が生じてしまう問題があった。その問題を防止するためには都度マスクや導電性ボールのクリーニングが必要となり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑みて本発明者らが鋭意検討した上なされたものであり、導電性ボールを電極に搭載する際に、ハンドリング手段である吸着ヘッドやマスク及び導電性ボールに仮固定材が付着し難い搭載装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
電子部品の電極に形成される接続バンプとして導電性ボールが採用される電子部品の製造における掛かる課題は、電子部品の電極に形成される接続バンプとして採用される導電性ボールを低粘着質の仮固定膜が形成された前記電極に搭載する搭載装置であって、前記仮固定膜を介した状態で前記導電性ボールを前記電極に搭載するとともに、前記電極に搭載された導電性ボールを通じて熱的または機械的作用を前記仮固定膜に付与する仮固定手段により前記仮固定膜を高粘着質に変性させる搭載部を有し、前低粘着質の仮固定膜の粘着性は導電性ボールが仮固定膜に付着しない粘着性であり、前記高粘着質の仮固定膜の粘着性は導電性ボールが仮固定膜に付着する粘着性であることを特徴とする導電性ボールの搭載装置という本発明に係わる第1発明により解消される。すなわち、この第1発明によれば、マスクや吸着ヘッドなど導電性ボールのハンドリング手段が電子部品に接近する過程において仮固定膜は低粘着質であるのでそれらに付着せず、また搭載された導電性ボールにも仮固定膜は付着せず、搭載後において仮固定膜を高粘着質に変性することにより、導電性ボールを電極に仮固定するという所望の目的が達成される。なお、ここで言う「低粘着質」とは、仮固定工程における仮固定膜の粘着の程度に比べて低く、かつハンドリング手段や導電性ボールに実質的に付着しない程度の低い粘着性という意味である。
【0011】
また、上記課題は、電子部品の電極に形成される接続バンプとして採用される導電性ボールの搭載装置であって、低粘着質の仮固定膜を少なくとも前記電極に形成する仮固定膜形成部と、前記仮固定膜を介した状態で前記導電性ボールを前記電極に搭載するとともに、前記電極に搭載された導電性ボールを通じて熱的または機械的作用を前記仮固定膜に付与する仮固定手段により前記仮固定膜を高粘着質に変性させる搭載部を有し、前低粘着質の仮固定膜の粘着性は導電性ボールが仮固定膜に付着しない粘着性であり、前記高粘着質の仮固定膜の粘着性は導電性ボールが仮固定膜に付着する粘着性であることを特徴とする導電性ボールの搭載装置という本発明に係わる第2発明により、上記第1発明に係わる搭載装置と同様に解消される。
【0012】
なお、前記搭載部に、前記電極に対応し形成された位置決め開口部を備えたマスクと、位置決め開口部に導電性ボールを充填する充填手段を設け、位置決め開口部が電極に対応するようにマスクを位置合わせし、位置決め開口部に導電性ボールを充填すれば、導電性ボールは位置決め開口部を通じて電極に位置精度良く搭載されるので好ましい。
【0013】
また、前記搭載部に、前記電極に対応し形成され前記導電性ボールを着脱可能な位置決め吸着部を備えた吸着手段を設け、位置決め吸着部に導電性ボールを吸着し、位置決め吸着部が電極に対応するように吸着手段を位置合わせし、導電性ボールを切り離し電極に搭載すれば、導電性ボールは位置決め吸着部により電極に位置精度良く搭載されるので好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明してきたように本発明によれば、少なくとも電極に低粘着質の仮固定膜を形成するので、マスクや吸着ヘッドなど導電性ボールのハンドリング手段や導電性ボールに仮固定膜は付着せず、導電性ボールを搭載したにおいて仮固定膜を高粘着質に変性することにより、導電性ボールを電極に仮固定するという所望の目的が達成される。したがって、ハンドリング手段や導電性ボールのクリーニングが不要となり極めて効率的にかつ低コストに電子部品を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1態様に係る搭載装置の構成図である。
【図2】図1の搭載部であってその構成の一例を示す図である。
【図3】図2の部分拡大平面図と要部断面図であり、マスクと電子部品の詳細を説明する図である。
【図4】図1の搭載部においてその仮固定手段の種々の形式を説明する図である。
【図5】図1の搭載装置による半田ボールの搭載方法を説明する工程フロー図である。
【図6】本発明の第2態様に係る搭載装置の搭載部の概略構成図である。
【図7】図6の搭載装置による半田ボールの搭載方法を説明する工程フロー図である。
【図8】本発明の第3態様に係る搭載装置の構成図である。
【図9】図8の仮固定膜形成部であってその構成の一例を示す図である。
【図10】図8の搭載装置による半田ボール4の搭載方法を説明する工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明について、以下その実施の形態を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、導電性ボールとしてSnを主体とした半田ボールを例として説明するが、Cu又はAu、Ag、W、Ni、Mo、Alなどの金属や、ポリプロピレン又はポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、酢酸セルロース、ポリエステル系などの樹脂を主体としたボール、或いはそれらの表面に半田などの金属がコーティングされた形態のボールを搭載することも可能である。
【0017】
本発明の対象となる電子部品は、図3に示されるように、所定のパターンで配列されたパッド状の電極51を持つものであり、電極51に形成される接続バンプとして半田ボール4が採用されるものである。図示しないが、電子部品5は、その表面或いは内部に、信号を伝送する導体回路や接地用の接地電極、或いは必要に応じ配設されるコンデンサやインダクタなどの受動部品などを有している。
【0018】
[実施態様1]
本発明の第1の実施態様について説明する。第1態様は、充填方式にて半田ボールを搭載するものである。なお、ここで参照する図1は、第1態様に係る搭載装置の構成図である。図2は、図1の搭載部であってその構成の一例を示す図である。図3は、図2の部分拡大平面図と要部断面図であり、マスクと電子部品の詳細を説明する図である。図4は、図1の搭載部においてその仮固定手段の種々の形式を説明する図である。図5は、図1の搭載装置による半田ボールの搭載方法を説明する工程フロー図である。
【0019】
第1態様の搭載装置1は、図3(b)に示すように、低粘着質の仮固定膜6が形成された電極51を有する電子部品5を予め準備し、該電極51に半田ボール4を搭載するものである。なお、仮固定膜6は、少なくとも電極51に形成されていればよく、図3(b)に示すように電子部品5の上面全体を覆うように形成されてもよいし、図3(c)に示すように電極51の上面にのみ選択的に形成されてもよい。
【0020】
ここで、仮固定膜6を形成する仮固定材の選択例について説明する。仮固定膜6は、1)マスクや吸着ヘッドなどハンドリング手段に付着させないために半田ボール4が搭載される際には低粘着質の状態で、2)半田ボール4を搭載した後にはそれを仮固定するため高粘着質の状態に変性できる必要がある。さらに、リフローで半田ボール4を溶融して電極52に接合するためには、少なくとも半田ボール4より低い融点を有している必要がある。そのような仮固定膜6を形成する仮固定材としては、例えば、半田ボール4が搭載される際には固化されて粘着性が低い状態に、半田ボールを仮固定する際には液化(ここで液化とは、ゲル化又はペースト化を含む。)されて粘着性が高い状態になるものが選択される。なお、仮固定材は、少なくとも仮固定膜6の表面、すなわちマスクや吸着ヘッドと対向するの面が低粘着質の状態となるよう固化されればよい。
【0021】
上記ような仮固定材としては、例えばポリプロピレン又はポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、酢酸セルロース、ポリエステル系から選択される樹脂または紙などの有機材料やHgまたはGa、In、Snなどの金属を主体としたものが選択される。これらによれば、仮固定膜6は、例えば蒸着やディポジットなどで仮固定材を電極51に成膜する、或いは適当な溶媒、例えば水や油、各種のアルコールやメタノールなどの有機溶剤に仮固定材を混合し、液状の仮固定材を電極51に塗布し、溶媒を除去することにより成膜される。
【0022】
また、仮固定材として、液体、例えば水や油、各種のアルコールやメタノールなど有機溶剤、またはその液体を溶媒として含む液状の混合物を選択することができる。この仮固定材によれば、仮固定材の融点以下に温度を保持すれば仮固定材は固化され、仮固定膜6は低粘着性を維持できる。
【0023】
なお、仮固定材は、その融点が常圧で−100℃以上、好ましくは室温の範囲(−10℃〜50℃)のものを選択すれば、固化状態を低コストで維持することができるので望ましい。さらに、沸点が半田ボール4の融点未満の仮固定材、例えばドデシルアルコール(融点24℃、沸点154℃)やテトラデカノール(融点38℃、沸点289℃)、ブチルアルコール(融点25.4℃、沸点83℃)を選択すれば、リフローする際に同時に仮固定膜6は気化し、それを除去する手間がないので望ましい。
【0024】
さらに仮固定材は、フラックス成分を含有していることが望ましい。ここで、フラックス成分とは、半田ボール4をリフローする際に、1)半田ボール4と電極51の酸化を防止し、2)電極51の表面を清浄化する、濡れ性と還元性の高い成分であり、例えばロジン(松脂)に代表されるものである。フラックス成分を含む仮固定材で仮固定膜6を形成しておけば、接続バンプと電極との接合境界面の不良や接続バンプの内部に発生する空孔による不良などが抑制されるので好ましい。
【0025】
搭載装置1は、図1に示すように、前記仮固定膜6を介した状態で半田ボール4を電極51の上に搭載し、前記半田ボール4が接触している仮固定膜6を高粘着性に変性し、その粘着性により半田ボール4を電極51に仮固定する搭載部1aを有している。以下、搭載部1aについて説明する。
【0026】
搭載部1aは、図3に示すように、一面(図において上面)とその一面に相対する他面(下面)を備え、電極51の配列パターンに対応し形成された上面と下面を連通する貫通孔状の位置決め開口部121を具備したマスク12と、マスク12の上面に供給された半田ボール4を転滑動させて位置決め開口部121に充填する充填手段11と、低粘着質の仮固定膜6を高粘着性に変性させる仮固定手段(図示せず)を有している。
【0027】
マスク12は、樹脂や金属、セラミックスを主体とした素材を用いその強度を維持できるように形成される。位置決め開口部121の形状は、特に図示に限定されることなく、その半径方向の断面形状は、略円形状や略矩形状、略三角形状、略長孔状、略瓢箪状或いはそれらの組み合わせなど適宜選択することができ、さらに軸心方向の断面形状も、長方形状又は台形状、上下に台形が組み合わされた鼓形状或いはそれらの組み合わせなど適宜選択することができる。また、位置決め開口部121の軸心は、マスク12の上下面に対し図示するように直交する状態に配設されてもよいし、上下面にたいし所定の傾きで交差する状態で配設されてもよく、さらに屈曲したものであってもよい。すなわち、位置決め開口部121は、その下面の開口が電極51の配列に対応したものであればよい。
【0028】
半田ボール4を電極51に搭載する際には、マスク12は、その位置決め開口部121が電極51に相対的に位置合わせされ、かつ電極51の上面にその下面が相対する状態となるように相対的に位置決めされる。なお、マスク12の下面は、電極51の上面に対して接触した状態で位置決めされてもよいし、間隔を保持する状態に位置決めされてもよい。
【0029】
充填手段11は、マスク12の上面に供給された半田ボール4を位置決め開口部121に充填するものであれば特にその構成は限定されることはなく、例えば、刷毛状のブラシ若しくはスキージで半田ボール4を転滑動させる、又はマスク12を電子部品5に載置した状態で双方一緒に傾動させるなどの方式を採用することができる。なお、図2に示すように、マスク12の上面に供給された半田ボール4に、その軸心がほぼ水平な姿勢で当接できる状態に位置決めされ、マスク12の上面に対し相対的に水平移動される、軸心をほぼ揃えた少なくとも2本の線状部材112を備えた充填手段11を採用すれば、半田ボール4は漏れなく位置決め開口部121に充填されるので望ましい。
【0030】
仮固定手段は、例えば熱的または機械的、化学的作用により半田ボール4が接触している仮固定膜6を選択的に高粘着質に変性し、半田ボール4を電極51に仮固定するものである。
熱的作用を利用した仮固定手段としては、例えば、図4(a)に示すように位置決め開口部121に充填された半田ボール4の頂部に当接可能に配設されるとともに発熱可能な仮固定手段131、或いは図4(b)に示すように電子ビーム(例えばレーザ)により選択的に半田ボール4を加熱する仮固定手段132がある。かかる仮固定手段131、132によれば、半田ボール4は選択的に加熱され、半田ボール4を介して伝導した熱で半田ボール4の周囲の仮固定膜6が溶融し、その仮固定膜6は高粘着質となる。なお、仮固定手段131は、図4(a)の一部に示すように、半田ボール4の直径よりマスク12の厚みが薄い場合には、その半田ボール4との当接部が平板状のものとすればよい。また、マスク12の方が厚い場合には、位置決め開口部121に対応し位置決め開口部121に挿入可能な突起を仮固定手段121の当接部に設けておけばよい。
【0031】
さらに、熱的作用による仮固定手段として、半田ボール4自体を加熱するをもの用い、予め加熱された半田ボール4を電極51に搭載すれば同様に仮固定膜5は高粘着質となる。加えて、マスク12の熱伝導率を半田ボール4より低いものとすれば、半田ボール4が充填されたマスク12の領域を全体的に加熱する例えば赤外線ヒータのような仮固定手段を用いた場合でも、半田ボール4の周囲の仮固定膜6は選択的に溶融され、高粘着質となる。
【0032】
機械的作用を利用した仮固定手段としては、例えば、図4(c)に示すように位置決め開口部121に充填された半田ボール4の頂部を押圧可能な仮固定手段133、或いは前記頂部に当接可能に配置されるとともに振動する仮固定手段134がある。かかる仮固定手段133、134によれば、半田ボール4を介して伝導した圧力或いは振動により半田ボール4の周囲の仮固定膜6は選択的に破壊又は摺動され、高粘着質となる。なお、機械的作用による仮固定手段は、特に、表面のみが固化し内部が液状の仮固定膜6において有効である。
【0033】
さらに、化学的作用を利用した仮固定手段としては、例えば、仮固定膜6に応じて選定される仮固定膜6を溶解可能な成分を半田ボール4の外面に塗布する仮固定手段がある。この仮固定手段によれば、前記成分が予め外面に塗布された半田ボール4を電極51に搭載し、半田ボール4の周囲の仮固定膜6が溶解され、高粘着質となる。
【0034】
かかる搭載装置1を用いた半田ボール4の搭載方法について以下説明する。
【0035】
〈搭載工程〉
図5(a)に示すように、既に仮固定膜6が形成された電極51と位置決め開口部121が対応するように、電子部品5の上方にマスク12を位置合わせする。マスク12の上面に半田ボール4を供給し、充填手段11で半田ボール4を転滑動させて位置決め開口部121に充填し、仮固定膜6を介した状態で電極51に搭載する。
【0036】
〈仮固定工程〉
図5(b)に示すように、例えば上記した仮固定手段131で半田ボール4を加熱することで、半田ボール4が接触している仮固定膜6を高粘着質に変性し、半田ボール4を電極51に仮固定する。
【0037】
[実施態様2]
本発明の第2態様について説明する。第2態様は、第1態様と同様に予め低粘着質の仮固定膜が形成された電極51を有する前記電子部品5の該電極51に、吸着方式で半田ボールを搭載するものである。図1に示すように、第2態様の搭載装置2は、第1態様の搭載装置1と基本的に同様な構成の搭載部2aを備えている。ここで参照する図6は、図1の搭載部2aの概略構成図である。図7は、搭載装置2による半田ボール4の搭載方法を説明する工程フロー図である。なお図6,7において、上記説明で参照した図面と同一構成には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0038】
搭載部2aは、図6に示すように、電極51の配列パターンに対応し形成され導電性ボールを着脱自在な位置決め吸着部211が形成された吸着ヘッド21と、第1態様と同様な仮固定手段(図示せず)とを備えている。位置決め吸着部211は、貫通孔状に形成されているとともに上方を負圧にされて下方端に半田ボール4を吸着し、さらに負圧を切ることで半田ボール4を切り離すものである。吸着ヘッド21は、位置決め吸着部211に吸着された半田ボール4が電極51に搭載されるように、紙面において上下/左右/前後方向に移動自在になされている。
【0039】
かかる搭載装置2を用いた半田ボール4の搭載方法について以下説明する。
【0040】
〈搭載工程〉
例えば、容器に溜められた半田ボール4を位置決め吸着部211で吸着し、図6(a)に示すように、位置決め吸着部211が電極51に対応するように吸着ヘッド21を位置決めし、位置決め吸着部211から半田ボール4を切り離し、仮固定膜6を介した状態で電極51に搭載する。
【0041】
〈仮固定工程〉
図6(b)に示すように、例えば上記した仮固定手段131で半田ボール4を加熱することにより、半田ボール4が接触している仮固定膜6を高粘着質に変性し、半田ボール4を電極51に仮固定する。
【0042】
[実施態様3]
本発明の第3態様について説明する。第3態様は、電極51に仮固定膜6を形成し、充填方式で半田ボール4を搭載するものである。ここで参照する図8は、第3態様に係る搭載装置1´の構成図である。図9は、図8の仮固定膜形成部1bであってその構成の一例を示す図である。図10は、搭載装置1´による半田ボール4の搭載方法を説明する工程フロー図である。なお図8〜10において、上記説明で参照した図面と同一構成には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0043】
第3態様の搭載装置1´は、図8に示すように、上記第1および第2態様の搭載部と同様な搭載部1a(2a)と、搭載部1a(2a)の上流側に配設した仮固定膜形成部1bを有している。なお、仮固定膜形成部1bと搭載部1a(2a)の間における電子部品5の搬送は人手で行われてもよいが、例えば図示するように電子部品5を搬送する搬送部を設けておけば処理を自動化することができ望ましい。
【0044】
仮固定膜形成部1bは、液状で高粘着質の仮固定材を電極51に塗布したのち、低粘着質の仮固定膜を形成するものであり、図9(a)〜(d)に例示されるように種々の方式により実現される。以下、図9(a)〜(d)で示される仮固定膜形成部1bについて説明する。
【0045】
図9(a)に示す仮固定膜形成部1bは、先端が接触した状態で電子部品5の上面を横動可能なスキージ31を備え、電子部品5の上面に供給されたペースト状で高粘着質の仮固定材6aをスキージ31で薄く塗り広げ、仮固定材6aを加熱或いは冷却して固化させ、低粘着質の仮固定膜6を形成するものである。
【0046】
図9(b)に示す仮固定膜形成部1bは、電極51に対応した貫通孔33のある印刷マスク32と先端が接触した状態でマスク32の上面を横動可能なスキージ34を備え、貫通孔33と電極51が対応する状態に印刷マスク32を位置合わせし、マスク32の上面に供給されたペースト状の仮固定材6aをスキージ34で引き伸ばし、電極51に選択的に仮固定材6aを印刷し、仮固定材6aを加熱或いは冷却して固化させ、低粘着質の仮固定膜6を形成するものである。
【0047】
図9(c)に示す仮固定膜形成部1bは、液状またはペースト状の仮固定材6aを下端から塗出するとともに、紙面において前後/左右/上下方向に電子部品5の上面を移動自在なシリンジ状の塗布手段35を備え、塗布手段35を電極51に位置決めし、電極51に選択的に仮固定材6aを塗出し、仮固定材6aを加熱或いは冷却して固化させ、低粘着質の仮固定膜6を形成するものである。
【0048】
図9(d)に示す仮固定膜形成部1bは、液状またはペースト状の仮固定材6aを下端から塗射するとともに、紙面において前後/左右/上下方向に電子部品5の上面を移動自在な霧吹き器状の塗布手段36を備え、塗布手段36を前後/左右方向に横動させながら電子部品5の上面全体に仮固定材6aを塗射し、仮固定材6aを加熱或いは冷却して固化させ、低粘着質の仮固定膜6を形成するものである。
【0049】
かかる構成の搭載装置1´による半田ボール4の搭載方法について説明する。
【0050】
〈仮固定膜形成工程〉
液状で高粘着質の仮固定材6aを電極51に塗布し、仮固定材6aを加熱或いは冷却して固化し、図10(a)に示すように、低粘着質の仮固定膜6を形成する。
【0051】
〈搭載工程〉
図10(b)に示すように、電極51と位置決め開口部121が対応するように、電子部品5の上方にマスク12を位置合わせする。マスク12の上面に半田ボール4を供給し、充填手段11で半田ボール4を転滑動させて位置決め開口部121に充填し、仮固定膜6を介した状態で電極51に搭載する。
【0052】
〈仮固定工程〉
図10(d)に示すように、例えば上記した仮固定手段131で半田ボール4を加熱することで、半田ボール4が接触している仮固定膜6の粘着性を回復させ、半田ボール4を電極51に仮固定する。
【0053】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0054】
[実施例1]
一般に使用されるペースト状のロジン系のフラックスを仮固定材として使用した例を説明する。なお、フラックスとしては樹脂系或いは水溶性のものを用いてもよい。
図9(a)に示すように、数μm〜数十μmの厚みで仮固定材を電極51に塗布した。120℃の温風を30秒間吹き当てて仮固定材を加熱し、仮固定材(フラックス)の溶媒成分を揮発させ、マスクや半田ボール等に仮固定材が付着しない程度に仮固定材の表面を乾燥させ、図10(a)に示すように、低粘着質の仮固定膜6を形成した。
【0055】
次に、図10(b)に示すように、位置決め開口部121が電極部51に対応するようにマスク12を位置合わせし、導電性ボール4を開口部121に充填した。図10(c)のように、仮固定材の融点以上の温度(60〜90℃)で発熱させた仮固定手段131を導電性ボール4に瞬間的に接触させて仮固定膜6を溶融させ、導電性ボール4を電極51に仮固定した。その後、マスク12は、仮固定膜6で電子部品5に付着することなく取外すことができた。また、取外されたマスク12やその位置決め開口部121に付着した仮固定材は確認されなかった。さらに、半田ボール4にも仮固定材は付着しておらず、次の作業に洗浄することなく使用することができた。
【0056】
[実施例2]
揮発性の高いIPAで希釈した液状のロジン系フラックスを仮固定材として使用した例を説明する。なお希釈に用いる溶媒は揮発性の高い液体、例えばエタノールなどのアルコール類を用いてもよい。
実施例1と同様にして仮固定膜6を形成した。本実施例の仮固定材によれば、IPAは揮発性が高いため仮固定材がより早く乾燥し、仮固定膜6を効率的に形成することができる。また、IPAは揮発し消失するので仮固定材中のIPAの割合により仮固定膜6の膜厚を制御することができ、例えば薄い膜厚の仮固定膜6が必要な場合にはその割合を大きくすればよい。
【0057】
その後、実施例1と同様に半田ボール4を仮固定した。マスク12は、仮固定膜6で電子部品5に付着することなく取外すことができた。また、取外されたマスク12やその位置決め開口部121に付着した仮固定材は確認されなかった。さらに、半田ボール4にも仮固定材は付着しておらず、次の作業に洗浄することなく使用することができた。
【0058】
[実施例3]
室温の領域に融点のあるドデシルアルコール(融点24℃)で希釈されたロジン系のフラックスを仮固定材として使用した例を説明する。なおこの種の溶媒としては、ブチルアルコール(融点25℃)、テトラデシルアルコール(融点38℃)なども使用できる。
まず、実施例1と同様に上記仮固定材を電極51に塗布し、仮固定材を冷却し固化させて仮固定膜6を形成した。ここで、仮固定材がフラックスのみの場合には、その融点が−40℃程度と室温より低いため、汎用される冷却方法(例えば冷蔵する、或いは冷風を当てる。)では冷却し固化することが難しい。しかしながら、上記仮固定材によれば、室温領域で固化するドデシルアルコールで希釈されているので、ドデシルアルコールの融点以下に仮固定材を冷却すると、フラックスを内包する状態でドデシルアルコールが固化し、低粘着質の仮固定膜6を形成することができる。
【0059】
冷却を続け仮固定膜6の粘着性を維持しつつ、実施例1と同様に導電性ボール4を位置決め開口部121に充填し、仮固定材の融点以上の温度(30℃)に発熱させた仮固定手段131を導電性ボール4に瞬間的に接触させて仮固定膜6を溶融させ、導電性ボール4を電極51に仮固定した。マスク12は、仮固定膜6で電子部品5に付着することなく取外すことができた。また、取外されたマスク12やその位置決め開口部121に付着した仮固定材は確認されなかった。さらに、半田ボール4にも仮固定材は付着しておらず、次の作業に洗浄することなく使用することができた。
なお、上記のようにして半田ボール4を仮固定した後に、仮固定膜6を再冷却し固化させれば、半田ボール4は固化した仮固定膜6でさらに強固に固定される。さらに、上記仮固定膜6を電極51のみに形成すれば、ドデシルアルコールの融点以上に基板5自体を加熱することにより半田ボール4を電極に仮固定することができる。
【0060】
[実施例4]
室温の領域に融点のあるドデシルアルコール(融点24℃)を仮固定材として使用した例を説明する。
図9(d)に示す塗布手段36で仮固定材を電子部品5の表面に塗布し、その融点以下に冷却し仮固定膜6を形成する。この仮固定材によれば、その融点が室温の領域にあるので、固化状態の維持(すなわち冷却を維持すること)を比較的容易に行うことができるという利点がある。
【0061】
その後、実施例3と同様に半田ボール4を仮固定した。マスク12は、仮固定膜6で電子部品5に付着することなく取外すことができた。また、取外されたマスク12やその位置決め開口部121に付着した仮固定材は確認されなかった。さらに、半田ボール4にも仮固定材は付着しておらず、次の作業に洗浄することなく使用することができた。
【符号の説明】
【0062】
1(1´、2):搭載装置、1a(2a):搭載部、1b:仮固定膜形成部、4:導電性ボール、5:電子部品、6:仮固定膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の電極に形成される接続バンプとして採用される導電性ボールを低粘着質の仮固定膜が形成された前記電極に搭載する搭載装置であって、前記仮固定膜を介した状態で前記導電性ボールを前記電極に搭載するとともに、前記電極に搭載された導電性ボールを通じて熱的または機械的作用を前記仮固定膜に付与する仮固定手段により前記仮固定膜を高粘着質に変性させる搭載部を有し、前低粘着質の仮固定膜の粘着性は導電性ボールが仮固定膜に付着しない粘着性であり、前記高粘着質の仮固定膜の粘着性は導電性ボールが仮固定膜に付着する粘着性であることを特徴とする導電性ボールの搭載装置。
【請求項2】
電子部品の電極に形成される接続バンプとして採用される導電性ボールの搭載装置であって、低粘着質の仮固定膜を少なくとも前記電極に形成する仮固定膜形成部と、前記仮固定膜を介した状態で前記導電性ボールを前記電極に搭載するとともに、前記電極に搭載された導電性ボールを通じて熱的または機械的作用を前記仮固定膜に付与する仮固定手段により前記仮固定膜を高粘着質に変性させる搭載部を有し、前低粘着質の仮固定膜の粘着性は導電性ボールが仮固定膜に付着しない粘着性であり、前記高粘着質の仮固定膜の粘着性は導電性ボールが仮固定膜に付着する粘着性であることを特徴とする導電性ボールの搭載装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搭載装置において、前記搭載部は、前記電極に対応し形成された位置決め開口部を備えたマスクと、前記位置決め開口部に前記導電性ボールを充填する充填手段とを有することを特徴とする搭載装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の搭載装置において、前記搭載部は、前記電極に対応し形成され前記導電性ボールを着脱自在な位置決め吸着部を備えた吸着手段を有することを特徴とする搭載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−278128(P2009−278128A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188178(P2009−188178)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【分割の表示】特願2003−177098(P2003−177098)の分割
【原出願日】平成15年6月20日(2003.6.20)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】