説明

導電性ローラの製造方法

【課題】導電性軸体の外周上に少なくとも1層以上の導電性ゴム弾性層を有する導電性ローラにおいて、表面平滑性に優れた導電性ローラを製造できる導電性ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】導電性軸体の外周上に少なくとも1層以上のエピクロルヒドリン系ゴム及び炭酸カルシウムを含有するゴム組成物からなる導電性ゴム弾性層を有する導電性ローラの製造方法において、該ゴム組成物が、混練用ゴム組成物を密閉型混練装置で混練する際に炭酸カルシウムを添加した後に、1〜10分間無加圧状態でローダー回転数5〜60rpmの混練を行った後、フローティングウェイトによる0.2〜1.0MPaの加圧下で混練を行って得られたゴム組成物であることを特徴とする導電性ローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ローラの製造方法に関し、特には電子写真等の画像形成装置における帯電ローラなどの導電性ローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、プリンター等の電子写真方式の画像形成装置では、感光体の表面を均一に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して、光の当たった部分の帯電を消去することによって潜像を形成し、次いで、トナーの付着によるトナー像の形成(現像)、転写紙等の記録媒体へのトナー像の転写により、プリントする方法がとられている。
【0003】
前記感光体の表面を均一帯電するための手段としては、電圧を印加した帯電部材を感光体に所定の押圧力で当接させて感光体を所定の電位に帯電させる接触帯電方式が知られている。接触帯電方式の中でも帯電ローラは、接触帯電方式による均一帯電のための重要なポイントである感光体への一様な接触が、二つの回転円筒体同士によりなされるため、ブラシ帯電やブレード帯電などの他の接触帯電方式よりも実現容易であり、採用されている。
【0004】
帯電ローラは感光体との接触帯電を行うものであるため、帯電ローラが電気的に不均一な場合、その電気的な不均一性を反映した帯電濃度ムラを生じる。従って、帯電ローラは所定の抵抗をもち、かつ電気的に均一であることが要求される。
【0005】
そして、そのような帯電ローラとしては、例えば、導電体である所定の軸体(芯金)の外周面上に、低硬度の導電性ゴム弾性体層が設けられ、更に必要に応じて、導電性弾性体層の外周面上に塗工などにより抵抗調整層や保護層が、順次積層形成されて、構成されてなる構造のものが、採用されており、感光体ドラム等に対する均一な接触性を確保するために、良好な表面平滑性や高い寸法精度が要求されている。
【0006】
この低硬度の導電性ゴムを得るために、導電性ゴム組成物として、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のポリマーに、カーボンブラック等の導電性充填剤を添加し、更に低硬度を得るために軟化剤を添加したものが知られている。更には、より電気的に均一な導電性ゴムを得るために、ゴム自体がある程度の低抵抗性をもつ、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリン系ゴム等の極性ゴムを使用した導電性ゴム組成物を用いることにより、電気的均一性に優れた導電性ゴムが得られることが知られている。中でもエピクロルヒドリン系ゴムは、各種ゴムの中で抵抗値の低いポリマーであることが知られている。エピクロルヒドリン系ゴムとしては、エピクロルヒドリンホモポリマー、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体が知られており、更には、エピクロルヒドリン系ゴム中のエチレンオキサイドの共重合割合により抵抗値をコントロールすることが可能であり、各種導電性ローラの弾性体として求められる抵抗値により各種エピクロルヒドリン系ゴムが単独若しくはブレンド、または、他ポリマーとのブレンドして用いられている(例えば特許文献1参照)。これらエピクロルヒドリン系ゴムを用いて電気的均一性に優れた弾性体を得るにあたり、加工性や種々の特性をコントロールするために充填剤や可塑剤や種々の添加剤を含有せしめてある。例えば、表面粗さを小さく、また、コスト削減の要求に対して一般的には、エピクロルヒドリン系ゴムに炭酸カルシウムを添加する方法がとられる場合がある。
【0007】
ところで、このような導電性ローラ用ゴム組成物を得るための混練方法としては、一般には密閉型のゴム用の混練機を用いてフローティングウェイトによる加圧しながらポリマー(原料ゴム)に各種添加剤を混合分散する方法がとられている。しかしながら、ポリマーとしてエピクロルヒドリン系ゴム、及び充填剤として炭酸カルシウムを含有するゴム組成物の場合、炭酸カルシウムの凝集物ができてしまい、前記導電性ローラの表面平滑性を悪化させている要因になっている場合があった。
【特許文献1】特開2002−287456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、導電性軸体の外周上に少なくとも1層以上の導電性ゴム弾性層を有する導電性ローラの製造方法において、容易に導電性ローラを製造することが可能で、表面平滑性に優れた導電性ローラを製造できる導電性ローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は以下の構成をとる。
【0010】
(1)導電性軸体の外周上に少なくとも1層以上のエピクロルヒドリン系ゴム及び炭酸カルシウムを含有するゴム組成物からなる導電性ゴム弾性層を有する導電性ローラの製造方法において、該ゴム組成物が、混練用ゴム組成物を密閉型混練装置で混練する際に炭酸カルシウムを添加した後に、1〜10分間無加圧状態でローダー回転数5〜60rpmの混練を行った後、フローティングウェイトによる0.2〜1.0MPaの加圧下で混練を行って得られたゴム組成物であることを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【0011】
(2)該ゴム組成物が、該混練用ゴム組成物を密閉型混練装置で混練する際に炭酸カルシウムを添加した後に、1〜2分間無加圧状態で混練を行った後、フローティングウェイトによる0.2〜1.0MPaの加圧下で混練を行って得られたゴム組成物であることを特徴とする(1)の導電性ローラの製造方法。
【0012】
(3)該導電性ゴム弾性層が未発泡であることを特徴とする請求項(1)または(2)の導電性ローラの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性ローラの製造方法によれば、容易に導電性ローラを製造することが可能であり、製造された導電性ローラは、凝集物等がなく表面平滑性に優れている。
【0014】
従って、製造された導電性ローラは、電子写真等の画像形成装置に用いられる帯電ローラなどの導電性ローラとして好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の導電性ローラの製造方法は、導電性軸体の外周上に少なくとも1層以上のエピクロルヒドリン系ゴム及び炭酸カルシウムを含有するゴム組成物からなる導電性ゴム弾性層を有する導電性ローラの製造方法において、該ゴム組成物が、混練用ゴム組成物を密閉型混練装置で混練する際に炭酸カルシウムを添加した後に、1〜10分間無加圧状態でローダー回転数5〜60rpmの混練を行った後、フローティングウェイトによる0.2〜1.0MPaの加圧下で混練を行って得られたゴム組成物であることを特徴とする。
【0016】
一般に、エピクロルヒドリン系ゴムに添加剤として炭酸カルシウムを投入し混練を行う場合、炭酸カルシウムの添加後にフローティングウェイトを下げて加圧する。しかしながら、この方法では、投入した炭酸カルシウムの多くがフローティングウェイトによる加圧によって、ローターに押し付けられ、その後の混練でもうまく分散されずに、微小な凝集物を生成してしまうことがあり、前途の如く、最近の電子写真等の画像形成装置に用いられる導電性ローラでは、微小な炭酸カルシウムの凝集物があると画像に不具合が発生する場合がある。
【0017】
これに対し、炭酸カルシウムを添加した後に、1〜10分間フローティングウェイトによる加圧を行わず、その後フローティングウェイトによる加圧を行って混練をすることにより、加圧前にポリマーと炭酸カルシウムがプレミキシングされ、投入した炭酸カルシウムの多くがフローティングウェイトによる加圧によって、ローターに押し付けられることは無く、その後の混練でもうまく分散され凝集物とはならない。
【0018】
また、全体の混練時間を考えると、炭酸カルシウムを添加した後に、1〜2分間フローティングウェイトによる加圧を行わず、その後フローティングウェイトによる加圧を行って混練することが好ましい。
【0019】
また、前記導電性ゴム弾性層が未発泡であるときより効果的な混練方法となる。これは導電性ゴム弾性層が未発泡の方が表面平滑性の要求が厳しく、炭酸カルシウムの凝集物による悪影響を受けやすいためである。
【0020】
なお、本発明の導電性ローラの製造方法における混練後のゴム組成物には、上記成分の他にも公知の各種添加剤を配合するものにも適用できる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0022】
実施例及び比較例の加硫促進剤と加硫剤を除く混練方法を示す。
【0023】
(実施例1)
エピクロルヒドリン系ゴム[商品名 CG102 ダイソー(株)製]100質量部
酸化亜鉛[商品名 亜鉛華2種 白水テック(株)製]5質量部
ステアリン酸[商品名 ステアリン酸S 花王(株)製]0.5質量部
炭酸カルシウム[商品名 シルバーW 白石工業(株)製]60質量部
FEF級カーボンブラック[商品名 旭#60 旭カーボン(株)製]5質量部
を計量し、エピクロルヒドリン系ゴム100質量部を密閉型混練機である3号バンバリーミキサーに投入しローダー回転数を50rpmに固定し、1分間混練を行った(素練り)後に、残りの添加剤を投入し、1分間フローティングウェイトによる加圧を行わずに、その後フローティングウェイトにより0.5MPaの加圧を行って5分間混練を行った。
【0024】
(実施例2)
エピクロルヒドリン系ゴム[商品名 CG102 ダイソー(株)製]100質量部
酸化亜鉛[商品名 亜鉛華2種 白水テック(株)製]5質量部
ステアリン酸[商品名 ステアリン酸S 花王(株)製]0.5質量部
炭酸カルシウム[商品名 シルバーW 白石工業(株)製]60質量部
FEF級カーボンブラック[商品名 旭#60 旭カーボン(株)製]5質量部
を計量し、エピクロルヒドリン系ゴム100質量部を密閉型混練機である3号バンバリーミキサーに投入しローダー回転数を50rpmに固定し、1分間混練を行った(素練り)後に、残りの添加剤を投入し、5分間フローティングウェイトによる加圧を行わずに、その後フローティングウェイトにより0.5MPaの加圧を行って5分間混練を行った。
【0025】
(比較例1)
エピクロルヒドリン系ゴム[商品名 CG102 ダイソー(株)製]100質量部
酸化亜鉛[商品名 亜鉛華2種 白水テック(株)製]5質量部
ステアリン酸[商品名 ステアリン酸S 花王(株)製]0.5質量部
炭酸カルシウム[商品名 シルバーW 白石工業(株)製]60質量部
FEF級カーボンブラック[商品名 旭#60 旭カーボン(株)製]5質量部
を計量し、エピクロルヒドリン系ゴム100質量部を密閉型混練機である3号バンバリーミキサーに投入しローダー回転数を50rpmに固定し、1分間混練を行った(素練り)後に、残りの添加剤を投入し、フローティングウェイトにより0.5MPaの加圧を行って5分間混練を行った。
【0026】
(比較例2)
エピクロルヒドリン系ゴム[商品名 CG102 ダイソー(株)製]100質量部
酸化亜鉛[商品名 亜鉛華2種 白水テック(株)製]5質量部
ステアリン酸[商品名 ステアリン酸S 花王(株)製]0.5質量部
炭酸カルシウム[商品名 シルバーW 白石工業(株)製]60質量部
FEF級カーボンブラック[商品名 旭#60 旭カーボン(株)製]5質量部
を計量し、エピクロルヒドリン系ゴム100質量部を密閉型混練機である3号バンバリーミキサーに投入しローダー回転数を50rpmに固定し、1分間混練を行った(素練り)後に、残りの添加剤を投入し、フローティングウェイトにより0.5MPaの加圧を行って10分間混練を行った。
【0027】
実施例及び比較例に用いた導電性ローラの製造方法を以下に示す。
【0028】
実施例及び比較例で得られた混練物170.5質量部に対し、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)[商品名 ノクセラーDM 大内振興化学工業(株)製]1質量部、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)[商品名 ノクセラーTS 大内振興化学工業(株)製]0.8質量部、イオウ[商品名 サルファックスPMC 鶴見化学工業(株)製]1.5質量部を混錬りし未加硫の導電性ゴム組成物を作成した。次に、φ40mmのクロスヘッド押出し機を用いて得られた各未加硫のゴム組成物を押出すと同時に、連続的にホットメルト接着剤を塗布したφ6mmの導電性軸体を押出し機のクロスヘッドダイを通過させて、導電性軸体の外周上に未加硫のゴム組成物を配置せしめローラ形状にした後、160℃で60分間熱風炉に投入して加硫を行い、導電性軸体上に加硫ゴム層を形成した未研磨のローラ状成形体を作成した。この成形体を研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にセットし、研磨条件として回転速度2000RPM、送り速度500m/分で外径がφ12mmになるように研磨し、導電性ローラを作成した。
【0029】
評価
実施例及び比較例のゴム組成物を用いて得られた各3本の導電性ローラの導電性ゴム弾性層の表面を、光学顕微鏡を用い100倍に拡大して観察し50μm以上の白色凝集物の数を数え1本あたりの異物の数を平均した。
【0030】
評価結果(異物の数)
実施例1 0個
実施例2 0個
比較例1 13個
比較例2 12個
【0031】
上記結果から明らかなように、炭酸カルシウム添加後に1分間または5分間フローティングウェイトによる加圧を行わず、その後フローティングウェイトによる加圧を行って混練を行った実施例1、実施例2は凝集物等の異物が確認されなかったので、表面平滑性に優れた導電性ローラを得ることができた。これに対し、炭酸カルシウム添加後、すぐにフローティングウェイトによる加圧を行って混練を行った比較例1、比較例2は、混練物中に分散されずに微小な凝集物として確認された。
【0032】
従って、本発明の導電性ローラの製造方法は、電子写真等の画像形成装置における帯電ローラなどの製造に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体の外周上に少なくとも1層以上のエピクロルヒドリン系ゴム及び炭酸カルシウムを含有するゴム組成物からなる導電性ゴム弾性層を有する導電性ローラの製造方法において、該ゴム組成物が、混練用ゴム組成物を密閉型混練装置で混練する際に炭酸カルシウムを添加した後に、1〜10分間無加圧状態でローダー回転数5〜60rpmの混練を行った後、フローティングウェイトによる0.2〜1.0MPaの加圧下で混練を行って得られたゴム組成物であることを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【請求項2】
該ゴム組成物が、該混練用ゴム組成物を密閉型混練装置で混練する際に炭酸カルシウムを添加した後に、1〜2分間無加圧状態で混練を行った後、フローティングウェイトによる0.2〜1.0MPaの加圧下で混練を行って得られたゴム組成物であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項3】
該導電性ゴム弾性層が未発泡であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ローラの製造方法。

【公開番号】特開2007−11009(P2007−11009A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192014(P2005−192014)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】