説明

導電性ローラーおよびその製造方法

【課題】生産性に優れた導電性ローラーの製造方法および寸法精度の高い導電性ローラーを提供する。
【解決手段】導電性の軸芯体114aと、該軸芯体の外周面上に形成した少なくとも一層の導電性弾性層114bと、該導電性弾性層の外周面上に形成した少なくとも一層の被覆層を有する導電性ローラー114であって、前記導電性弾性層が、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、硬化反応遅延剤を0.01〜1質量部含む導電性液状シリコーンゴムを用いて形成したものであることを特徴とする導電性ローラー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター、ファクシミリ及び複写機等の電子写真方式を採用した画像形成装置における現像、帯電、転写、クリーニング、除電等に用いる導電性ローラーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やレーザービームプリンターのような電子写真装置における現像方法として、一成分現像剤(一成分トナー)を用いる接触現像法が知られている。この現像法では、一成分トナーをトナー担持体上に担持して像担持体(ドラム)に接触させ、トナーをトナー担持体から像担持体表面に転移させて、像担持体上の静電潜像を現像する。このような接触現像法に用いられるトナー担持体としては、金属の軸芯体の周囲に弾性層を設け、その上に必要に応じて表面層を設けたローラー形状の現像ローラーが知られている。現像ローラーを像担持体に接触させる場合、該像担持体との接触面の状態は接触部全域にわたって、均一であることが求められる。そのような現像ローラーに必要な導電性弾性層を得るための方法として、内径形状が高精度に加工された筒状の金型内に軸芯体を配し、その後金型内に液状シリコーンゴムを注入し加熱硬化させて、導電性弾性層を形成するインジェクション成形法が提案されている。(例えば、特許文献1)これによれば、高精度に加工された金型を用いることで、ほぼ金型内径形状を反映した外径形状を有する導電性弾性層を得ることができる。
【0003】
このインジェクション成形法を用いて現像ローラーを成形する場合、材料を金型内で熱硬化させるため、硬化速度が遅いと装置の回転率が低くなり、数多くの金型を必要とする。ここで金型の数量を減らすには、材料の熱硬化時間を短縮し、金型の回転率を高める必要がある。熱硬化時間を短縮する方法としては、硬化温度を上げたり、硬化遅延剤の種類の変更や、硬化遅延剤の量を減らしたりする方法等がある。しかしながら、硬化温度を上げて硬化時間短縮をすると寸法精度が低下するといった問題が発生することがある。
【特許文献1】特開2004−151616
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、寸法精度の高い導電性ローラーおよび生産性に優れた導電性ローラーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、導電性の軸芯体と、該軸芯体の外周面上に形成した少なくとも一層の導電性弾性層と、該導電性弾性層の外周面上に形成した少なくとも一層の被覆層を有する導電性ローラーであって、前記導電性弾性層が、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、硬化反応遅延剤を0.01質量部以上、1質量部以下含む導電性液状シリコーンゴムを用いて形成したものであることを特徴とする導電性ローラーによって達成される。
【0006】
また上記本発明の課題は、導電性の軸芯体と、少なくとも一層の導電性弾性層と、少なくとも一層の被覆層を有する導電性ローラーの製造方法であって、オルガノポリシロキサン100質量部に対し硬化反応遅延剤を0.01質量部以上、1質量部以下含む導電性液状シリコーンゴムを用いて、インジェクション成形により、前記軸芯体の外周面上に少なくとも一層の前記導電性弾性層を形成して、ローラーを成型する工程、該ローラーを金型から取り外す工程および該ローラーの導電性弾性層の外周面上に少なくとも一層の前記被覆層を形成する工程、を有することを特徴とする導電性ローラーの製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、導電性ローラーの製造方法において上述した範囲の硬化反応遅延剤を含む導電性液状シリコーンゴムを用いることで、硬化時間を短縮しても、寸法精度の高い導電性ローラーが得られる。また本発明によれば、導電性ローラーの品質を維持したまま、装置の回転率を高め、生産性を向上することができる。さらに、本発明の導電性ローラーは、寸法精度が高く、これを採用した画像品質の高い画像形成装置の提供を可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
本発明の導電性ローラーは、導電性の軸芯体と、該軸芯体の外周面上に形成した少なくとも一層の導電性弾性層と、該導電性弾性層の外周面上に形成した少なくとも一層の被覆層を有する導電性ローラーであって、前記導電性弾性層が、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、硬化反応遅延剤を0.01〜1質量部含む導電性液状シリコーンゴムを用いて形成したものであることを特徴とする現像ローラーである。
【0010】
図1に本発明の導電性ローラーの実施形態の一例を示す。
【0011】
図1において、(b)は導電性ローラーの軸線に沿った概略断面図であり、(a)は導電性ローラーを軸方向からみた図である。図1に示した実施形態の導電性ローラー114は、導電性の軸芯体114aと、導電性の軸芯体114aの外周面上に同心円状に形成された導電性弾性層114bと、該導電性弾性層114bの外周面上に形成された被覆層114cを有する。
【0012】
〔軸芯体〕
本発明で使用する導電性の軸芯体114aは、例えば、炭素鋼合金表面に5μm厚さの化学ニッケルメッキを施した円柱状の形状を有する。導電性の軸芯体を構成する材料としては他にも、例えば鉄、アルミニウム、チタン、銅およびニッケル等の合金や、これらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、青銅等の合金、さらにカーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料等の剛直で導電性を示す公知の材料を使用することもできる。また、本発明で使用する導電性の軸芯体114aは、形状としては、円柱状のほかに中心部分を空洞とした円筒形状とすることも可能である。
【0013】
〔導電性弾性層〕
上記導電性の軸芯体114aの外周面上に導電性弾性層114bを形成する。導電性弾性層114bは、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、硬化反応遅延剤を0.01〜1質量部含む導電性液状シリコーンゴムを用いて形成する。具体的には、例えば、まず、次に記載する方法でローラーを成形する。すなわち、必要とする導電性弾性層の外径に対して、その内径が適当に選択された円筒型のキャビティ内に、加硫接着タイプのシリコーンゴム用プライマーを表面に極薄く塗布した導電性の軸芯体114aを両端をコマ型で押さえて配置する。そして、上記導電性液状シリコーンゴムを、円筒型の端部に設けた注入口から2.0〜10cc/sでキャビティに注入する。注入した導電性液状シリコーンゴムを、100℃〜130℃の温度で2分〜10分加熱し一次硬化することにより軸芯体の外周面上に導電性弾性層を形成し、ローラーを成型する。次に、円筒型を冷却し、該ローラーを円筒型から取り外す(脱型する)ことにより、導電性の軸芯体114aの外周面上に一次硬化した導電性弾性層114bを形成したローラーを得ることができる。
【0014】
ここで一次硬化とは、円筒型から導電性弾性層114bの形状を著しく損なうことなく成形したローラーを取り出すことができる程度にまで導電性液状シリコーンゴムを硬化させることを指す。更には円筒型内で導電性弾性層114bの破壊を起こさない範囲で導電性液状シリコーンゴムを硬化させることを指す。
【0015】
本発明における導電性弾性層の層厚は、通常2〜5mmとすることが好ましい。
【0016】
〔導電性シリコーンゴム〕
本発明で用いられる導電性液状シリコーンゴムとしては、オルガノポリシロキサンと硬化触媒としての白金系触媒を含むA液と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと硬化遅延促進剤を含むB液とを組み合わせた2液型液状シリコーンゴムが好ましい。上記A液は、無機充填剤、その他導電性充填剤等を含むものであってもよい。また、上記B液は、無機充填剤、その他導電性充填剤を含むものであってもよい。A液およびB液は、通常、ダイナミックミキサーまたはスタティックミキサー等を用いて混合して用いることが好ましい。
【0017】
本発明で用いられる導電性液状シリコーンゴムは、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.01〜1質量部の硬化反応遅延剤を含む。硬化反応遅延剤の量が0.01質量部未満であると、抵抗ムラが発生するため好ましくない。また硬化反応遅延剤の量が1質量部を超えると、硬化時間が長くなり、装置の回転率が遅くなり、生産性が低下するため好ましくない。
【0018】
また、本発明で用いられる導電性液状シリコーンゴムは、100℃における10%硬化時間T10が20秒以上80秒以下であることが好ましい。100℃における10%硬化時間T10が20秒以上であると、抵抗ムラの発生がないため好ましい。また、100℃における10%硬化時間T10が80秒以下であると、硬化時間が短くなり、装置の回転率が早くなり生産性が向上し好ましい。
【0019】
本発明における導電性液状シリコーンゴムの100℃における10%硬化時間T10は、キュラストメーター V型(オリエンテック社製、商品名)を用いて求めることができる。
【0020】
〔シリコーンゴム〕
シリコーンゴムは耐熱、耐寒性にすぐれ、広い温度範囲で良好な圧縮復元性を示す。また、耐候性、耐オゾン性、耐コロナ性、電気特性、耐熱油性、耐薬品性、耐熱水性などにもすぐれる材料で、これらの特性は導電性液状シリコーンゴムに含まれるオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジエンポリシロキサンなどのシリコーンゴム、充填剤、添加剤などの種類や配合方法によって決定される。
【0021】
本発明に使用される導電性液状シリコーンゴムは、例えば、下記式1で表されるオルガノポリシロキサン、および下記式2で表されるオルガノハイドロジエンポリシロキサンを含む。さらに、上述したように、硬化反応遅延剤を含有させ、無機質充填剤や白金系触媒を適宜含有させることができる。
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、Xは0以上の整数を示し、Meはメチル基を示す。)
【0024】
【化2】

【0025】
(式中、YおよびZは0以上の整数を示し、Meはメチル基を示す。)
オルガノポリシロキサンは、通常、常温常圧下で液状であり、線状構造または分岐鎖状構造を有するシリコーンゴムのベースポリマーである。本発明におけるオルガノポリシロキサンは、その分子量は特に限定されないが10万以上100万以下が好ましく、数平均分子量はおよそ50万程度が好ましい。さらに加工特性および得られる導電性弾性層の特性等の観点から、25℃におけるオルガノポリシロキサンの粘度は、10Pa・s以上が好ましく、50Pa・s以上がより好ましく、300Pa・s以下が好ましく250Pa・s以下がより好ましい。
【0026】
上記オルガノポリシロキサンの分子末端基は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位であり、その種類は特に限定はされないが、トリオルガノシリル基、たとえば、トリメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基等が例示され、活性水素との反応性が高い等の理由から、ビニル基およびアリル基の少なくとも一方であることが好ましく、ビニル基であることが特に好ましい。
【0027】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に直結した少なくとも2個の水素原子を有することが必要とされる。これは該水素原子と該オルガノポリシロキサン中のアルケニル基等との付加反応によって架橋を形成し、組成物を硬化させるためである。オルガノハイドロジエンポリシロキサンの数平均分子量に特に制限はなく、1000〜10000まで含有されるが、硬化反応を適切に行なわせるために、数平均分子量は1000以上5000以下であることが好ましい。
【0028】
必要な充填剤等が配合された導電性液状シリコーンゴムの粘度は特に制限はないが、材料の流動性をある程度抑制して材料漏れを防止する観点から10Pa・s以上が好ましい。また、注入ゲート間にウエルドが発生する等の成形加工性の問題を回避するための観点から、300Pa・s以下であることが好ましい。
【0029】
<無機充填剤>
無機充填剤は、液状シリコーンゴムの補強剤あるいは補強剤兼増量剤となるものであり、これには乾式シリカ、湿式シリカ、石英微粉末、ケイソウ土、水酸化アルミニウム、微粒子状アルミナ、コロイド状炭酸カルシウム、着色剤、カーボンブラック等が例示され、これらの1種または2種以上を使用する。
【0030】
無機充填剤の使用量は、無機充填剤の性状や所望される導電性弾性層の引張強度および硬さに依存し、特に限定されないが、一般に無機充填剤が乾式シリカ、湿式シリカ、カーボンブラックのように、極めて微細であり、補強性大なものであるときは、オルガノポリシロキサン100質量部に対し5質量部〜80質量部用いることが好ましく、石英微粉末、ケイソウ土のようにさほど微細でなく補強性も小さいものであるときは10質量部〜150質量部用いることが好ましい。
【0031】
<白金系触媒>
白金系触媒は、上記オルガノポリシロキサンと上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応を促進させるために必要とされるものである。これには白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、白金とビニルシロキサンの錯塩、例えば、塩化白金酸とビニルシロキサンの錯塩、塩化白金酸―アルコール配位化合物などの白金化合物等が例示される。これらは上記オルガノポリシロキサンと上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量に対して、いわゆる触媒量、すなわち白金量でおおむね1〜500ppm(重量比)の範囲で使用される。しかしながら、この範囲に限定されることなく、目標とする可使時間、硬化時間、製品形状等により適宜増減することができる。
【0032】
<硬化反応遅延剤>
硬化反応遅延剤は、上記オルガノポリシロキサンと上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンが白金触媒の触媒作用により付加反応して硬化するのを遅延させる添加物である。例えば、ベンゾトリアゾール、キノリン、ピコリン、N,N‘−ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物、トリアルキルホスフィン、トリアルキルホスフェートなどの含リン化合物、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、3.5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、シラン系3重結合含有化合物、メチルビニルテトラシクロシロキサンなどが例示される。本成分は、1種だけ添加してもよいし、2種以上を添加してもよい。
【0033】
<導電性充填剤>
導電性充填剤は、導電性弾性層に導電性を付与するためのものであり、これにはカーボンブラック、グラファイト、カーボン繊維、金属繊維、金属粉末等が例示されるが、好ましくはカーボンブラックとグラファイトであり、特に好ましくはカーボンブラックである。
【0034】
例えば、カーボンブラックとしては、通常、導電性ゴムに使用されている従来公知のものを使用することができる。チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックおよびアセチレンブラックが例示されるが、いずれにしても導電性グレードであることが好ましい。
【0035】
導電性充填剤の使用量は、上記オルガノポリシロキサン100質量部に対して通常30〜300質量部の範囲とされるが、この範囲以外でも可能である。30質量部以上であると目的とする高導電性のものが容易に得られ、また、300質量部以下とすると導電性弾性層が強靭なものとなり実用性に優れたものとなる。好ましい範囲としては通常50〜200質量部である。
【0036】
〔被覆層〕
本発明では以上のようにして成形したローラーの導電性弾性層の外周面上にさらに少なくとも一層の被覆層を形成し導電性ローラーを製造する。被覆層は、耐摩耗性やトナー帯電性、トナー搬送性等が要求されるため、被覆層を構成する結着樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましく、本発明の導電性ローラーを現像ローラーとするときは、被覆層を構成する結着樹脂としては、圧縮永久歪みの観点からウレタン樹脂が好ましい。
【0037】
ウレタン樹脂の調製に用いるポリオール化合物としては、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリエチレンジアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリカーボネートポリオール、ポリプロピレングリコール等の公知のポリウレタン用ポリオールが挙げられる。
【0038】
また、イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のジイソシアネート、およびそれらのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体等を好ましく使用することができる。特に好ましいイソシアネート化合物は、HDIおよびそのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体等である。イソシアネート化合物は、その分子鎖が長いほどより高い柔軟性を有するポリウレタン樹脂被覆層を生成する。
【0039】
導電性ローラー全体の電気抵抗を調製する目的のため、被覆層を導電性もしくは半導電性にすることも可能である。導電性、半導電性の発現のためには、各種電子伝導機構を有する導電剤(カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等)あるいはイオン導電剤(アルカリ金属塩およびアンモニウム塩)を適宜用いることで実現できる。この場合、所望の電気抵抗を得るためには、前記各種導電剤を2種以上併用してもよい。
【0040】
これらの被覆層を構成する材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して分散させることができる。得られた被覆層形成用の分散体は、スプレー塗工法、ディッピング法等により導電性弾性層の外周面上に塗工される。
【0041】
被覆層の厚みとしては5〜100μm、特に10〜30μmが好ましい。被覆層の厚みを5μm以上とすると被覆層中の低分子量成分がしみだして像担持体(感光ドラム)を汚染することを防止することができる。また厚みを100μm以下とすると導電性ローラーが柔軟なものとなり、トナー融着を効果的に防止することができ好ましい。
【0042】
上記の如くして形成する被覆層中に平均粒子径が1〜20μmの微粒子を分散させることにより、導電性ローラー表面のトナーの搬送を容易にすることができ、充分な量のトナーを現像領域に搬送することができる。このような目的に使用する微粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリル酸メチル微粒子、シリコーンゴム微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリスチレン微粒子、アミノ樹脂微粒子等のプラスチックピグメントが挙げられる。特にポリメチルメタクリル酸微粒子およびシリコーンゴム微粒子が好ましい。これらの微粒子は前記被覆層を構成する結着樹脂100質量部に対し約20〜200質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0043】
〔電子写真プロセスカートリッジ〕
次に本発明の現像ローラーを使用したプロセスカートリッジの一例について、図を用いて説明する。図2は、本発明の現像ローラーを使用したプロセスカートリッジを搭載した画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0044】
プロセスカートリッジは、潜像を担持する潜像担持体としての感光ドラム21に対向して当接または圧接した状態で現像剤を担持する現像ローラー25を備え、この現像ローラー25が感光ドラム21に現像剤としてのトナー28を付与することにより潜像を現像剤像として可視化する。プロセスカートリッジは、さらに、現像ブレード27、現像容器34、クリーニングブレード30を備えており、現像ローラー25として、本発明の現像ローラーを用いたものである。感光ドラム21が矢印A方向に回転し、感光ドラム21を帯電処理するための帯電装置22によって一様に帯電され、感光ドラム21に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。上記静電潜像は、感光ドラム21に対して近接配置され、画像形成装置本体に対し着脱可能なプロセスカートリッジに保持される現像装置24によって現像剤たるトナー28を付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。
【0045】
現像は露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像を行っている。可視化された感光ドラム21上のトナー像は、転写ローラー29によって記録媒体である紙33に転写される。トナー像を転写された紙33は、定着装置32により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。
【0046】
一方、転写されずに感光ドラム21上に残存した転写残トナーはクリーニングブレード30により掻き取られ廃トナー容器31に収納され、クリーニングされた感光ドラム21は上述作用を繰り返し行う。
【0047】
現像装置24は、一成分現像剤として非磁性トナー28を収容した現像容器34と、現像容器34内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム21と対向設置された現像剤担持体としての本発明の現像ローラー25とを備え、感光ドラム21上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0048】
尚、現像ローラー25は感光ドラム21と当接幅をもって接触している。現像装置24においては、供給ローラー26が、現像容器34内で、現像ブレード27の現像ローラー25表面との当接部に対し現像ローラー25回転方向上流側に当接され、かつ、回転可能に支持されている。
【0049】
供給ローラー26の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や芯金上にレーヨン、ナイロン等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラー25へのトナー28の供給および未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。
【0050】
供給ローラー26の現像ローラー25に対する当接幅としては、1〜8mmが有効であり、また、現像ローラー25に対してはその当接部において相対速度を持たせることが好ましい。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明する。これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0052】
<実施例1>
導電性液状シリコーンゴムとしては、オルガノポリシロキサン100質量部に、充填剤として石英粉末・カーボンブラックを配合し、さらに硬化触媒として白金化合物を微量配合してなるA液と、オルガノハイドロジエンポリシロキサンに、充填剤として石英粉末・カーボンブラックを配合し、さらに微量の硬化遅延剤であるベンゾトリアゾールを、前記A液に配合したオルガノポリシロキサン100質量部に対し0.3質量部となるように配合してなるB液とを、重量比1:1で混合し使用した。導電性液状シリコーンゴムの100℃における10%硬化時間T10は50秒であった。
【0053】
次に、脱型してローラーを円筒型から取り外した。導電性弾性層の硬化後の物性を安定させ、シリコーンゴム弾性層中の反応残渣および未反応低分子分を除去すること等を目的として、このローラーをオーブンを用いて200℃で4時間熱処理を行った。
【0054】
別途、次のようにして被覆層を形成するための塗料を調製した。
【0055】
ウレタン塗料(ニッポランN5033(商品名);日本ポリウレタン社製)を固形分濃度10%となるように、メチルエチルケトンで希釈し、導電剤としてカーボンブラック(#7360SB(商品名);東海カーボン製)をウレタン塗料の固形分100質量部に対し50重量部添加し、十分に分散したものに、硬化剤(コロネートL(商品名);日本ポリウレタン社製)をウレタン塗料の固形分100質量部に対し10重量部添加し、更にメチルエチルケトンを200重量部で希釈し、撹拌して塗料を調製した。
【0056】
次に、上記熱処理を行ったローラーの導電性弾性層の外周面上に、上記塗料をディッピング塗布し、80℃のオーブンで15分乾燥後、140℃のオーブンで4時間硬化し、層厚およそ20μmの被覆層を形成し現像ローラーを得た。
【0057】
得られた現像ローラーを、カートリッジに組み込み、画だしを行い画像を評価した。結果を表1に示す。
[評価方法]
〔画像濃度ムラ〕
HH環境(30℃×80%RH)でハーフトーン画像を出力し、目視にて画像濃度ムラについて検査し下記基準に基づきランク付けを行い評価した。
○:画像濃度が十分に濃く、印字面全体に渡って問題のないレベル
△:微小な濃度ムラはあるが、実用上問題のないレベル
×:濃度ムラが印字面全体に渡って発生する
〔総合評価〕
画像濃度ムラおよび現像ローラー製造上の問題点を総合し、下記基準に基づきランク付けを行い総合評価を行った。
○:画像濃度ムラが○ランクかつ現像ローラー製造上の問題も無い
×:画像濃度ムラが△もしくは×ランクまたは現像ローラー製造上の問題がある
<実施例2>
オルガノポリシロキサン100質量部に対し0.05質量部となるように硬化反応遅延剤であるベンゾトリアゾールをB液に配合した以外は、実施例1と同様にして現像ローラーを作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。なお、本実施例における導電性液状シリコーンゴムの100℃における10%硬化時間T10は25秒であった。
【0058】
<実施例3>
オルガノポリシロキサン100質量部に対し0.9質量部となるように硬化反応遅延剤であるベンゾトリアゾールをB液に配合した以外は、実施例1と同様にして現像ローラーを作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。なお、本実施例における導電性液状シリコーンゴムの100℃における10%硬化時間T10は75秒であった。
【0059】
<比較例1>
オルガノポリシロキサン100質量部に対し0.007質量部となるように硬化反応遅延剤であるベンゾトリアゾールをB液に配合した以外は、実施例1と同様にして現像ローラーを作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。なお、本実施例における導電性液状シリコーンゴムの100℃における10%硬化時間T10は10秒であった。
【0060】
<比較例2>
オルガノポリシロキサン100質量部に対し1.8質量部となるように硬化反応遅延剤であるベンゾトリアゾールをB液に配合した以外は、実施例1と同様にして現像ローラーを作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。なお、本比較例における導電性液状シリコーンゴムの100℃における10%硬化時間T10は200秒であった。
【0061】
【表1】

【0062】
表1から明らかなように、実施例1〜3においては、オルガノポリシロキサン100質量部に対し硬化反応遅延剤を0.05〜0.9質量部含む導電性液状シリコーンゴムを用いることで、硬化時間が短くなり、装置の回転率が上がっても、製造上特に問題もなく、良好な画像を得ることのできる現像ローラーを製造することができた。
【0063】
これに対して、比較例1では導電性液状シリコーンゴムに含まれる硬化反応遅延剤量が少ないため、脱型が可能なレベルまで硬化は進むものの、脱型時に型内面と導電性弾性層との間で生じる応力により、形状精度が悪化するという結果になった。比較例2では、導電性液状シリコーンゴムに含まれる硬化反応遅延剤量が多いため、本実施例(比較例)におけるの成形条件では、硬化が完了せず脱型が可能な状態の弾性層を得ることができず、画像濃度ムラの評価を行うことができなかった。このため、表1の画像評価の欄に「−」と示した。
【0064】
上記結果に示されているように、本実施例におけるように硬化反応遅延剤量の異なる導電性液状シリコーンゴムを用いて形成した現像ローラーにおいては、導電性液状シリコーンゴムの熱硬化が不十分であると、所定の寸法形状の現像ローラーが得られない場合が発生する。このような現像ローラーをプロセスカードリッジに装着し、画像評価を実施すると、局所的な画像濃度ムラ等が発生する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の現像ローラーの基本構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態のプロセスカートリッジを用いた画像形成装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0066】
114 導電性ローラー
114a 軸芯体
114b 導電性弾性層
114c 表層
21 像担持体(感光ドラム)
22 帯電装置
23 レーザー光
24 現像装置
25 現像ローラー
26 供給ローラー
27 現像ブレード
28 現像剤(トナー)
29 転写ローラー
30 クリーニングブレード
31 廃トナー容器
32 定着装置
33 紙
34 現像容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の軸芯体と、該軸芯体の外周面上に形成した少なくとも一層の導電性弾性層と、該導電性弾性層の外周面上に形成した少なくとも一層の被覆層を有する導電性ローラーであって、前記導電性弾性層が、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、硬化反応遅延剤を0.01質量部以上、1質量部以下含む導電性液状シリコーンゴムを用いて形成したものであることを特徴とする導電性ローラー。
【請求項2】
前記導電性液状シリコーンゴムの100℃における10%硬化時間T10が、20秒以上80秒以下であることを特徴とする請求項1記載の導電性ローラー。
【請求項3】
請求項1または2記載の導電性ローラーからなる現像ローラー。
【請求項4】
導電性の軸芯体と、少なくとも一層の導電性弾性層と、少なくとも一層の被覆層を有する導電性ローラーの製造方法であって、オルガノポリシロキサン100質量部に対し硬化反応遅延剤を0.01質量部以上、1質量部以下含む導電性液状シリコーンゴムを用いて、インジェクション成形により、前記軸芯体の外周面上に少なくとも一層の前記導電性弾性層を形成して、ローラーを成型する工程、該ローラーを金型から取り外す工程および該ローラーの導電性弾性層の外周面上に少なくとも一層の前記被覆層を形成する工程、を有することを特徴とする導電性ローラーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−225879(P2007−225879A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46681(P2006−46681)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】