説明

導電性ローラ

【目的】
セル径の非常に小さい独立気泡の導電性スポンジを弾性層として用いた導電性ローラを提供することである。
【構成】
この発明に係わる導電性ローラは、芯金12と、この芯金の外周を取り巻くように配設されたエマルジョン組成物から調製された少なくとも独立気泡型のシリコーンエラストマー製の導電性多孔質体層24と、を具備することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、芯金の外周面を導電性多孔質体層で被覆した導電性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機・プリンタ・ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置において、現像方法として、キャリアとトナーとを混合した二成分現像剤を用いた二成分現像方式と、磁性又は非磁性一成分現像剤を用いる一成分現像方式とがある。
【0003】
二成分現像方式は大型の装置と複雑な制御とを必要とするので、最近の複写機,プリンター等の小型化への対応として、一成分現像方式が多く採用されている。そして、この一成分現像方式の中でも、非磁性一成分現像剤を用いた現像方式が小型化、カラー化、低価格化が可能なため、広く用いられるようになってきた。
【0004】
この非磁性一成分現像方式の現像部に使用される導電性ローラとしては、帯電ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、トナークリーニングローラなどが広く知られている。
【0005】
最近、この非磁性一成分現像方式の中で、現像ローラを感光体と接触させて現像を行う非磁性一成分接触現像方式が広く採用されているが、この非磁性一成分接触現像方式の現像ローラは、表面に胆持したトナーを感光体表面に押付けながら現像するために、現像ローラと感光体との間にニップを得る必要があり、金属製の芯金の外周に導電性弾性層を被覆して使用されていたが、特に近年の高速化への対応として、現像ローラと感光体とのニップをさらに広くする必要が出てきた。そのため導電性弾性層の硬度を低硬度化し広いニップを得るために、導電性弾性層に導電性スポンジが使用された。
【0006】
しかし、従来からある導電性スポンジは、発泡剤を用いてスポンジ体とした導電性発泡スポンジなので、特許文献1に示すように、導電性発泡スポンジ空間部(以下,単にセルという)をランダムに選んだ10個のセルの平均直径が40μm以上のものである。
【特許文献1】特開2001−64434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、特許文献1に記載導電性スポンジのセルの平均直径が40μm以上の数値は、近年のトナーの平均粒径が10μm以下となっているである事と比較して非常に大きいものである。この結果、現実として現像ローラの弾性層にこの導電性発泡スポンジを使用すると、この導電性発泡スポンジの外周面に露出したセル内にトナーがすっぽり入り込んでしまい、感光体へトナーを均一に押付けることが出来ず、均一な現像を行うことが難しかった。
【0008】
また、この特許文献1に記載の導電性発泡スポンジはセル同士ががつながった構造(連続気泡)の割合が多いものである。このため、現像ローラの弾性層としてこのような連続気泡の導電性発泡スポンジを使用した場合、トナーがセルの内部まで深く入り込んでしまい短期間に現像ローラとして使用できなくなるので、この導電性発泡スポンジを現像ローラに使用することは難しかった。
【0009】
この発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、この発明の目的は、セル径の非常に小さい独立気泡の導電性スポンジを弾性層として用いた導電性ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した問題点を解決し、目的を達成するため、この発明に係わる導電性ローラは、請求項1の記載によれば、芯金と、この芯金の外周を取り巻くように配設されたエマルジョン組成物から調製された少なくとも独立気泡型のシリコーンエラストマー製の導電性多孔質体層と、を具備することを特徴としている。
【0011】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項2の記載によれば、前記導電性多孔質体層は、50μm以下の径を有するセルが全セル数の50%以上を占め、かつ60%以上の単泡率を有するシリコーンエラストマーから形成されていることを特徴としている。
【0012】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項3の記載によれば、式(A):0≦(m−n)/m≦0.5(ここで、mは、セルの長径を表し、nは、セルの短径を表す)で示される関係を満たすセルが、全セル数の50%以上を占めることを特徴としている。
【0013】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項4の記載によれば、式(B):0≦(m−n)/n≦0.5で示される関係をも満たすセルが、全セル数の50%以上を占めることを特徴としている。
【0014】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項5の記載によれば、前記シリコーンエラストマーは、30μm以下の平均セル径を有することを特徴としている。
【0015】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項6の記載によれば、前記シリコーンエラストマーは、80%以上の単泡率を有することを特徴としている。
【0016】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項7の記載によれば、前記セルの径が0.1μm〜70μmの範囲内にあることを特徴としている。
【0017】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項8の記載によれば、前記導電性多孔質体が、硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材、界面活性作用を有するシリコーンオイル材、および水を含有する油中水型エマルジョン組成物から調製されたものであることを特徴としている。
【0018】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項9の記載によれば、前記導電性多孔質体は、導電剤により抵抗を調整されていることを特徴としている。
【0019】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項10の記載によれば、前記導電剤は、電子導電剤またはイオン導電剤である事を特徴としている。
【0020】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項11の記載によれば、前記導電性多孔質体の外周には、被覆層が設けられている事を特徴としている。
【0021】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項12の記載によれば、前記被覆層は、導電剤により電気抵抗を調整されてた導電性被覆層であることを特徴としている。
【0022】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項13の記載によれば、前記導電剤は、電子導電剤またはイオン導電剤である事を特徴としている。
【0023】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項14の記載によれば、前記被覆層は、塗布される事により配設されていることを特徴としている。
【0024】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項15の記載によれば、前記被覆層はチューブ状に構成され、被覆される事により配設されていることを特徴としている。
【0025】
また、この発明に係わる導電性ローラは、請求項16の記載によれば、現像ローラである事を特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、平均セル径が非常に小さく独立気泡の導電性シリコーンスポンジを導電性弾性層として用いた導電性ローラが提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、この発明に係わる導電性ローラのゴム材料であるエマルジョンを調製したシリコーンエラストマー多孔質体および導電性シリコーンエラストマー多孔質体の一実施例、及び、この導電性シリコーンエラストマー多孔質体を用いた本発明に係わる導電性ローラの一実施例としての現像ローラを説明するものとする。
【0028】
尚、以降の説明の順序としては、先ず、この発明に係わる導電性ローラのゴム材料である発泡体ではないシリコーンエラストマー多孔質体の一実施例、更に詳細には、エマルジョンから調製されるシリコーンエラストマー多孔質体および導電性シリコーンエラストマー多孔質体を説明し、次に、この発明に係わる導電性ローラの具体例として、1成分非磁性接触現像装置に用いられる現像ローラを説明し、最後に導電性シリコーンエラストマー多孔質体を用いた現像ローラの具体例を説明するものとする。
【0029】
先ず、この発明で用いられる多孔質体の構造、及び、このエマルジョンから調製された多孔質体の製造方法を、以下に詳細に説明する。
【0030】
先ず、上述した多孔質体は、この実施例においては、独立気泡型のシリコーンエラストマー多孔質体であり、更に詳細には、シリコーンエラストマーで作られた母体(マトリックス)とこの母体中に分散・分布した多数の閉じたセル(独立気泡)を含むものと表現することができる。
【0031】
また、このシリコーンエラストマー多孔質体は、50μm以下の径を有するセルが全セル数の50%以上を占め、かつ60%以上の単泡率を有することを特徴とする実質的に独立気泡型のシリコーンエラストマー多孔質体である。
【0032】
以後詳述するが、独立気泡数の割合の指標となる単泡率が、60%未満であると、多孔質体の強度が弱くなる。
【0033】
さらに、このシリコーンエラストマー多孔質体は、セルの径が0.1〜70μmの範囲内にあり得、さらにセルの径は、0.1〜60μmの範囲内にあり得る。また、本発明のシリコーンエラストマー多孔質体は、50μm以下の径を有するセルが全セル数の80%以上を占めることができるものである。
【0034】
このシリコーンエラストマー多孔質体では、下記式(A)
(A):0≦(m−n)/m≦0.5
(ここで、mは、セルの長径を表し、nは、セルの短径を表す)で示される長径と短径との関係を満たすセルが、全セル数の50%以上を占めることができるものである。
【0035】
ここで、式(A)は、セルがどの程度真球に近いか(真球度)を表す尺度である。このシリコーンエラストマー多孔質体においては、下記式(B)によって与えられる条件をも満足するセルが、全セル数の80%以上を占めることができる。
(B):0≦(m−n)/n≦0.5
【0036】
ここで、セルの長径mとは、シリコーンエラストマー多孔質体の断面に現れる各セルについて、そのほぼ中心を通る、セルの輪郭上の最大2点間直線距離を意味し、短径nとは、各セルについて、そのほぼ中心を通る、セルの輪郭上の最小2点間距離を意味する。より具体的には、シリコーンエラストマー多孔質体の任意の断面をSEMで撮影し、100〜250個程度のセルが存在する領域で各セルの長径mと短径nを計測する。この計測は、ノギスを用いて手作業で行うことができる。なお、平均セル径は、画像処理により行うこともできる。画像処理は、例えば、TOYOBO製解析ソフト「V10 for Windows(登録商標)95 Version1.3」を用いて行うことができる。
【0037】
各セルの径は、各セルの長径mと短径nの和を2で除した値に相当する。いうまでもなく、セルが真球の場合には、m=nとなる。
【0038】
更に、このシリコーンエラストマー多孔質体は、30μm以下、さらには10μm以下の平均セル径を有することができる。
【0039】
上記100〜250個程度のセルが存在する領域におけるセルサイズ特性が、多孔質体全体のセルサイズ特性を表すほど、本発明の多孔質体は、セル径が均一である。いいかえると、本発明の多孔質体は、その任意断面において、100〜250個のセルが存在する矩形領域において、上記本発明で規定するセルサイズ特性(セルサイズ、平均セルサイズ、50μm以下のセルサイズを有するセルの占める割合、真球度等)を示す。このような断面積の任意領域におけるセルサイズ特性は、多孔質体の全体のセルサイズ特性、例えば、160mm(幅)×400mm(長さ)×15mm(厚さ)までの大きさの多孔質体の全体のセルサイズ特性を表し得ることが確認されている。従来、100〜250個のセルが存在する矩形領域において、本発明で規定するセルサイズ特性を示す多孔質体は存在しなかった。
【0040】
既述のように、このシリコーンエラストマー多孔質体は、実質的に独立気泡型のものである。多孔質体の全セル数のうち、閉じたセル(独立気泡)がどの程度の割合で存在するかは、「単泡率」で表現することができる。この単泡率は、以下の実施例の項で説明したように測定することができる。本発明のシリコーンエラストマー多孔質体は、60%以上の単泡率を有することができ、さらには80%以上の単泡率を有することができる。
【0041】
このシリコーンエラストマー多孔質体は、基本的に、硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材、および水を含有する油中水型エマルジョンから製造することができる。その際、液状シリコーンゴム材が低い粘度を有する場合には、液状シリコーンゴム材と水を十分に攪拌し、エマルジョンを生成させ、その後すぐに加熱して硬化させることができる。しかしながら、本発明のシリコーンエラストマー多孔質体は、硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材および水とともに、界面活性作用を有するシリコーンオイル材を含有する油中水型エマルジョンから好適に製造することができる。
【0042】
上述した液状シリコーンゴム材は、加熱により硬化してシリコーンエラストマーを生成するものであれば特に制限はないが、いわゆる付加反応硬化型液状シリコーンゴムを使用することが好ましい。付加反応硬化型液状シリコーンゴムは、主剤となる不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと架橋剤となる活性水素含有ポリシロキサンを含む。不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンにおいて、不飽和脂肪族基は、両末端に導入され、側鎖としても導入され得る。そのような不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンは、例えば、下記式(1)で示すことができる。
【0043】
【化1】

【0044】
式(1)において、R1は、不飽和脂肪族基を表し、各R2は、C1〜C4低級アルキル基、フッ素置換C1〜C4低級アルキル基、またはフェニル基を表す。a+bは、通常、50〜2000である。R1によって表される不飽和脂肪族基は、通常、ビニル基である。各R2は、通常、メチル基である。
【0045】
活性水素含有ポリシロキサン(ハイドロジェンポリシロキサン)は、不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンに対し架橋剤として作用するものであり、主鎖のケイ素原子に結合した水素原子(活性水素)を有する。水素原子は、活性水素含有ポリシロキサン1分子当たり3個以上存在することが好ましい。そのような活性水素含有ポリシロキサンは、例えば、下記式(2)で示すことができる。
【0046】
【化2】

【0047】
式(2)において、R3は、水素またはC1〜C4低級アルキル基を表し、R4は、C1〜C4低級アルキル基を表す。c+dは、通常、8〜100である。R3およびR4で表される低級アルキル基は、通常、メチル基である。
【0048】
これら液状シリコーンゴム材は、市販されている。なお、市販品では、付加反応硬化型液状シリコーンゴムを構成する不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと活性水素含有ポリシロキサンとは別々のパッケージで提供され、以後詳述する両者の硬化に必要な硬化触媒は、活性水素含有ポリシロキサンに添加されている。いうまでもなく、液状シリコーンゴム材は、2種類以上を併用して用いることができる。
【0049】
界面活性作用を有するシリコーンオイル材は、エマルジョン中に水を安定に分散させるための分散安定剤として作用するものである。すなわち、この界面活性作用を有するシリコーンオイル材は、水に対し親和性を示すとともに、液状シリコーンゴム材に対しても親和性を示すものである。このシリコーンオイル材は、エーテル基等の親水性基を有することが好ましい。また、このシリコーンオイル材は、通常3〜13、好ましくは4〜11のHLB値を示す。より好ましくは、HLB値が3以上異なる2種類のエーテル変性シリコーンオイルを併用する。その場合、さらに好ましくは、7〜11のHLB値を有する第1のエーテル変性シリコーンオイルと、4〜7のHLB値を有する第2のエーテル変性シリコーンオイルとを組み合わせて使用する。いずれのエーテル変性シリコーンオイルも、ポリシロキサンの側鎖にポリエーテル基を導入したものを用いることができ、例えば、下記式(3)で示すことができる。
【0050】
【化3】

【0051】
式(3)において、R5は、C1〜C4低級アルキル基を表し、R6は、ポリエーテル基を表す。e+fは、通常、8〜100である。R5で表される低級アルキル基は、通常、メチル基である。また、R6により表されるポリエーテル基は、通常、(C24O)x基、(C36O)y基、または(C24O)x(C36O)y基を含む。主に、x、yの数により、HLB値が決定される。これら界面活性作用を有するシリコーンオイル材は市販されている。
【0052】
水は、いうまでもなく、上記油中水型エマルジョン中において、粒子(水滴)の形態で不連続相として分散して存在する。後に詳述するように、この水粒子の粒径が、本発明のシリコーンエラストマー多孔質体のセル(気泡)の径を実質的に決定する。
【0053】
上述の油中水型エマルジョンは、液状シリコーンゴム材を硬化させるために、硬化触媒を含有することができる。硬化触媒としては、それ自体既知のように、白金触媒を用いることができる。白金触媒の量は、白金原子として、1〜100重量ppm程度で十分である。硬化触媒は、シリコーンエラストマー多孔質体を製造する際に上記油中水型エマルジョンに添加してもよいが、上記油中水型エマルジョンを製造する際に配合することもできる。
【0054】
上記した油中水型エマルジョンにおいて、液状シリコーンゴム材100重量部に対し、界面活性作用を有するシリコーンオイル材を0.2〜5.5重量部の割合で、水を10〜250重量部の割合で使用することが、水分散安定性に特に優れたエマルジョンを得る上で好ましい。そのような水分散安定性に優れたエマルジョンを使用することにより、良好な多孔質体をより一層安定に製造することができる。
【0055】
また、界面活性作用を有するシリコーンオイル材が、前記した第1のエーテル変性シリコーンオイルと前記第2のエーテル変性シリコーンオイルとの組合せからなる場合、液状シリコーンゴム材100重量部に対し、第1のエーテル変性シリコーンオイルを0.15〜3.5重量部の量で、第2のエーテル変性シリコーンオイルを0.05〜2重量部の量(合計0.2〜5.5重量部)で用いることが好ましい。また、液状シリコーンゴム材が不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと活性水素含有ポリシロキサンとの組合せからなる場合、前者と後者の重量比は、6:4〜4:6であることが好ましい。
【0056】
また、このシリコーンエラストマー多孔質体は、その用途に応じて、種々の添加剤を含有することができる。そのような添加剤としては、着色料(顔料、染料)、)充填材(シリカ等)、を例示することができる。これら添加剤は、上記油中水型エマルジョンに配合することができる。さらに、上記油中水型エマルジョンは、例えば、脱泡を容易にすること等を目的としてエマルジョンの粘度を調整するために、分子量の低い、非反応性のシリコーンオイルを含有することができる。上記油中水型エマルジョンは、1cSt〜20万cStの粘度を有すると、脱泡が容易に行え、取り扱いに都合がよい。
【0057】
上記油中水型エマルジョンは、種々の方法により製造することができるものである。一般的には、液状シリコーンゴム材、界面活性作用を有するシリコーンオイル材、および水を、必要に応じてさらなる添加剤とともに、混合し、十分に撹拌することによって製造される。液状シリコーンゴム材が、不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと活性水素含有ポリシロキサンとの組合せにより提供される場合には、不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと界面活性作用を有するシリコーンオイル材の一部を混合・撹拌して第1の混合物を得、他方活性水素含有ポリシロキサンと界面活性作用を有するシリコーンオイル材の残りを混合・撹拌して第2の混合物を得ることができる。ついで、第1の混合物と第2の混合物を混合・撹拌しながら、徐々に水を添加して、撹拌することにより所望のエマルジョンを得ることができる。
【0058】
いうまでもなく、上記油中水型エマルジョンの製造方法はこれに限定されるものではない。液状シリコーンゴム材、界面活性作用を有するシリコーンオイル材、および水、並びに必要に応じて添加される添加剤の添加順序は、どのようなものでもよい。好適な油中水型エマルジョンを形成させるための撹拌は、例えば、300rpm〜1000rpmの攪拌器回転速度で行うことができる。エマルジョン形成後、油中水型エマルジョンを、加熱することなく、例えば真空減圧機を用いて、脱泡処理に供してエマルジョン中に存在する空気を除去することができる。
【0059】
上記したように油中水型エマルジョンを用いてシリコーンエラストマー多孔質体を製造するためには、硬化触媒の存在下に、上記油中水型エマルジョンを液状シリコーンゴム材の加熱硬化(一次加熱)条件に供することができる。一次加熱では、エマルジョン中の水を揮発させることなく、液状シリコーンゴム材を加熱硬化させるために、130℃以下の加熱温度を用いることが好ましい。一次加熱の際の加熱温度は、通常、80℃以上であり、加熱時間は、通常、5分〜60分程度である。この一次加熱により、液状シリコーンゴム材が硬化し、エマルジョン中の水粒子をエマルジョン中の状態のまま閉じ込める。硬化したシリコーンゴムは、以下述べる二次加熱による水分の蒸発の際の膨張力に耐える程度までに硬化する。
【0060】
次に、水粒子を閉じ込めた硬化シリコーンゴムから水分を除去するために、二次加熱を行う。この二次加熱は、70℃〜300℃の温度で行うことが好ましい。加熱温度が70℃未満では水の除去に長時間を要し、加熱温度が300℃を超えると、硬化したシリコーンゴムが劣化し得る。70℃〜300℃の加熱では、1時間〜24時間で水分は揮発除去される。二次加熱により水分が揮発除去されるとともに、シリコーンゴム材の最終的な硬化も達成される。揮発除去された水分は、硬化したシリコーンゴム材(シリコーンエラストマー)中に、水粒子の粒径にほぼ等しい径を有するセルを残す。
【0061】
このように、このシリコーンエラストマー多孔質体は、発泡現象を伴うことなく上記したように油中水型エマルジョンから製造することができる。また、上記した油中水型エマルジョン中の水粒子は、一次加熱により硬化したシリコーンゴムに閉じ込められ、二次加熱の際には、単に揮発するだけである。
【0062】
次に、上述した多孔質体を複数の実施例により、より具体的に説明するが、この多孔質体は、これらの実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0063】
以下の例においてシリコーンエラストマー多孔質体の単泡率は以下のようにして求めた。
<単泡率の測定>
本発明のシリコーンエラストマー多孔質体は、表面張力が高く、そのセルは微細であるため、水が侵入しにくい。そこで、シリコーンエラストマー多孔質体の水に対する濡れ性を向上させるために、界面活性剤を用いる。
【0064】
すなわち、製造したシリコーンエラストマー多孔質体の表層(表面から約1.0mm程度)を除去し、除去後の多孔質体の重量(吸水前多孔質体重量)を測定する。この多孔質体を水100重量部と親水性シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイル(信越化学社製KF−618))1重量部との混合溶液に浸漬し、減圧(70mmHg)下で10分間放置する。その後、大気圧に戻し、混合溶液から多孔質体を取り出し、多孔質体表面に付着している水をきれいに拭き取り、多孔質体の重量(吸水後多孔質体重量)を測定する。下記式から吸水率、連泡率、単泡率を順次算出する。
【0065】
吸水率(%)={(吸水後多孔質体重量−吸水前多孔質体重量)/吸水前多孔質体重量}×100
連泡率(%)=(多孔質体比重×吸水率/100)/{混合溶液の比重−(多孔質体比重/シリコーンエラストマーの比重)}×100
単泡率(%)=100−連泡率(%)。
【0066】
ここで、シリコーンエラストマーの比重は、液状シリコーンゴム材をそのまま硬化させたものの比重であり、製品カタログにも記載されている。
【0067】
実施例1
この実施例1では、液状シリコーンゴム材として、信越化学社から入手した液状シリコーンゴム(商品名KE−1353)を用いた。この液状シリコーンゴムは、活性水素含有ポリシロキサン(粘度:16Pa・S)と、ビニル基含有ポリシロキサン(粘度:15Pa・S)とが別々のパッケージとして提供され、ビニル基含有ポリシロキサンには、触媒量の白金触媒が添加されているものであった。以下、前者をシリコーンゴムA剤、後者をシリコーンゴムB剤と表示する。活性水素含有ポリシロキサンは、各R4がメチル基である上記式(2)の構造を有し、他方ビニル基含有シリコーンオイルは、各R1がビニル基であり、各R2がメチル基である上記式(1)の構造を有する。また、分散安定剤としては、いずれも信越化学社製ポリエーテル変性シリコーンオイルであるKF−618(HLB値:11);以下、「分散安定剤I」)およびKF−6015(HLB値:4);以下、分散安定剤II)を用いた。本実施例で用いた液状シリコーンゴム材から得られるシリコーンエラストマー自体の比重は、1.04である(カタログ値)。
【0068】
50重量部のシリコーンゴムA剤に、0.7重量部の分散安定剤Iと0.3重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Aを調製した。他方、50重量部のシリコーンゴムB剤に、0.7重量部の分散安定剤Iと0.3重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Bを調製した。
【0069】
得られた混合物Aと混合物Bを混合し、ハンドミキサーで3分間撹拌しながら、10重量部の水を添加した後、さらに2分間撹拌した。この混合物をハンドミキサーで撹拌しながら、90重量部の水を徐々に添加し、エマルジョンを調製した。
【0070】
得られたエマルジョンを真空減圧機内で脱泡させ、混入空気を除去した後、深さ6mmの圧縮成形金型に流し込み、プレス盤を用いて、設定温度100℃で30分間加熱(一次加熱)し、成形した。得られた成形体(多孔質体前駆体)を電気炉中、150℃で5時間加熱(二次加熱)し、水を除去した。こうして、長さ42mm、幅20mm、厚さ6mmの矩形板状のシリコーンエラストマー多孔質試験片を作製した。この試験片を幅方向に切断し、その切断面をSEMで観察し、セルの長径および短径をノギスで測定し、セルサイズ特性を求めた。また、この試験片について単泡率を測定した。結果を下記表1に示す。また、本実施例で得られた多孔質エラストマーの比重を測定したところ、0.66であり、硬度(Asker−C)は、40であった。なお、本試験片の切断面のSEM写真(倍率100倍)を図1に示す。このように、非常に微細で、均一なセル径を有する独立気泡型多孔質体が得られた。
【0071】
実施例2
この実施例2では、液状シリコーンゴム材として、東レ・ダウコーニング社から入手した液状シリコーンゴム(商品名DY35−7002)を用いた。この液状シリコーンゴムは、活性水素含有ポリシロキサン(粘度:15Pa・S)と、ビニル基含有ポリシロキサン(粘度:7.5Pa・S)とが別々のパッケージとして提供され、ビニル基含有ポリシロキサンには、触媒量の白金触媒が添加されているものであった。以下、前者をシリコーンゴムA剤、後者をシリコーンゴムB剤と表示する。活性水素含有ポリシロキサンは、各R4がメチル基である上記式(2)の構造を有し、他方ビニル基含有シリコーンオイルは、各R1がビニル基であり、各R2がメチル基である上記式(1)の構造を有する。また、分散安定剤としては、上記分散安定剤I分散安定剤IIを用いた。本実施例で用いた液状シリコーンゴム材から得られるシリコーンエラストマー自体の比重は、1.03である(カタログ値)。
【0072】
50重量部のシリコーンゴムA剤に、0.7重量部の分散安定剤Iと0.3重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Aを調製した。他方、50重量部のシリコーンゴムB剤に、0.7重量部の分散安定剤Iと0.3重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Bを調製した。
【0073】
得られた混合物Aと混合物Bを混合し、ハンドミキサーで3分間撹拌しながら、10重量部の水を添加した後、さらに2分間撹拌した。この混合物をハンドミキサーで撹拌しながら、90重量部の水を徐々に添加し、エマルジョンを調製した。
【0074】
このエマルジョンを用いて、実施例1と同様にしてシリコーンエラストマー多孔質体試験片を作製し、実施例1と同様にセルサイズ特性を測定し、単泡率を測定した。結果を下記表1に併記する。本実施例で得られた多孔質エラストマーの比重を測定したところ、0.55であり、硬度(Asker−C)は、56であった。なお、本試験片の切断面のSEM写真(倍率100倍)を図2に示す。このように、極めて微細で、均一なセル径を有する独立気泡型多孔質体が得られた。
【0075】
実施例3
この実施例3では、上述した実施例2で用いたシリコーンゴムA剤とシリコーンゴムB剤とを混合し、ハンドミキサーで3分間撹拌しながら、10重量部の水を添加した後、さらに2分間撹拌した。この混合物をハンドミキサーで撹拌しながら、90重量部の水を徐々に添加し、エマルジョンを調製した。
【0076】
このエマルジョンを用いて、実施例1と同様にしてシリコーンエラストマー多孔質体試験片を作製し、実施例1と同様にセルサイズ特性を測定し、単泡率を測定した。結果を下記表1に併記する。なお、本実施例で得られた多孔質エラストマーの比重を測定したところ、0.53であり、硬度(Asker−C)は、58であった。
【0077】
実施例4
この実施例4では、上述した実施例2で用いた液状シリコーンゴム材と、東レ・ダウコーニング社から入手した液状シリコーンゴム(商品名DY35−615)を用いた。この液状シリコーンゴムDY35−615は、活性水素含有ポリシロキサン(粘度:113Pa・S)と、ビニル基含有ポリシロキサン(粘度:101Pa・S)とが別々のパッケージとして提供され、ビニル基含有ポリシロキサンには、触媒量の白金触媒が添加されているものであった。以下、前者を本シリコーンゴムA剤、後者を本シリコーンゴムB剤と表示する。活性水素含有ポリシロキサンは、各R4がメチル基である上記式(2)の構造を有し、他方ビニル基含有シリコーンオイルは、各R1がビニル基であり、各R2がメチル基である上記式(1)の構造を有する。
【0078】
このシリコーンゴムA剤と実施例2で用いたシリコーンゴムA剤との体積比50:50の混合物50重量部に、0.7重量部の分散安定剤Iと0.3重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Aを調製した。他方、本シリコーンゴムB剤と実施例2で用いたシリコーンゴムB剤との体積比50:50の混合物50重量部に、0.7重量部の分散安定剤Iと0.3重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Bを調製した。
【0079】
得られた混合物Aと混合物Bを混合し、ハンドミキサーで3分間撹拌しながら、10重量部の水を添加した後、さらに2分間撹拌した。この混合物をハンドミキサーで撹拌しながら、90重量部の水を徐々に添加し、エマルジョンを調製した。
【0080】
このエマルジョンを用いて、実施例1と同様にしてシリコーンエラストマー多孔質体試験片を作製し、実施例1と同様にセルサイズ特性を測定し、単泡率を測定した。結果を下記表1に併記する。なお、本実施例で用いた液状シリコーンゴム材から得られるシリコーンエラストマー自体の比重は、1.07であった。また、本実施例で得られた多孔質体の比重は、0.60であり、硬度(Asker−C)は、35であった。
【0081】
比較例1
富士ゼロックス社製プリンタAble 1405から加圧ローラを取り外し、その弾性層であるシリコーンエラストマー多孔質体(発泡剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリルを用いて発泡させたもの)から試験片を切り出した。この試験片について、実施例1と同様に、セルサイズ特性と単泡率を測定した。結果を下記表1に併記する。なお、本試験片の切断面のSEM写真(倍率100倍)を図3に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
次に、導電性シリコーンエラストマー多孔質体について説明する。この導電性シリコーンゴム多孔質体とは、上述したシリコーンゴム多孔質体中に導電剤が均一に分散され、体積抵抗率として1×103Ωcmから1×1012Ωcm程度に調整することができる。
【0084】
導電剤は、上述の液状シリコーンゴムA剤やシリコーンゴムB剤それぞれに混合分散して導電性シリコーンゴム多孔質体とすることができるが、導電剤を上述の混合物Aや混合物Bを作る際に混合分散することもでき、導電剤を混合物Aと混合物Bを混合させエマルジョンに調整すときに混合分散させることも出来る。
【0085】
上記の導電剤は、いうまでもなく、上記油中水型エマルジョン中において混合分散して存在する。この導電剤が、本発明の導電性シリコーンエラストマー多孔質体の導電性を実質的に決定する。この導電剤は、例えば、電子導電剤(カーボンブラック、金属粉末、導電性ウィスカー等)やイオン導電剤(多価アンモニウム塩、アルカリ金属塩素酸塩等)又はそれらの複合させて使用することができる。
【0086】
(現像ローラ12の説明)
この発明の一実施例に係わる現像ローラ10は、非磁性1成分接触現像を行う現像ローラに好適に使用されるものである。
【0087】
この発明の一実施例に係わる現像ローラ10は、後述する製造方法により製造されるものであり、図4に示すように、芯金12と、この芯金12の外周に、プライマー22を介してこれを取り巻くように配設された導電性シリコーンエラストマー多孔質体層24とを備えている。
【0088】
ここで、上述した導電性シリコーンエラストマー多孔質体層24は、少なくとも独立気泡を含むシリコーンエラストマー、即ち、独立気泡型のシリコーンエラストマーと導電剤から構成されている。そして、この導電性シリコーンエラストマー多孔質体層24は、図示しない外径研磨装置により加工されている。具体的には、現像ローラの外径は、8mm〜50mm程度になるように、加工されている。
【0089】
因みに、このシリコーンエラストマー多孔質体は、この一実施例のように、現像ローラに適用されるだけでなく、帯電ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、ドラムクリーニングローラなどにも使用することができる。いずれのローラも基本構成は同じであり、芯金の周りに、導電性シリコーンエラストマー多孔質体からなる弾性層を有する構成であれば良い。弾性層の厚さは、個々のローラにより異なるが、一般的に、0.1mm〜20mm程度であり、長さは通常、400mm程度である。基材の外径も、個々のローラにより異なるが、通常、5mm〜50mm程度である。
【0090】
実施例5
まず、直径14mm、ゴム面長235mmの芯金12を金型内にセットし、実施例4のエマルジョンにカーボンブラックを混合分散させたエマルジョンを金型内に注入し加熱硬化した後、図示しない外径研磨装置にて導電性シリコーンエラストマー多孔質体層16の外径を所定の数値、例えば、外径寸法としての20.0mmになるように、その外周面を研削加工して現像ローラを得た。
【0091】
得られた現像ローラの導電性シリコーンエラストマー多孔質体層24の一部分を試験片として切り出し、実施例1と同様にセルサイズ特性と単泡率を測定したところ、平均セル径10μm,単泡率99%、であった。また厚さ1mmのシート上の試験片を作成し体積抵抗率を測定したところ、5×10Ωcmとなった。なお体積抵抗率の測定はアドバンテスト社製抵抗計R8340を用いた。
【0092】
また、得られた現像ローラを、ブラザー工業社製プリンターHL−1850に組み込み通紙を行い、得られた画像の評価試験を行った。目視による評価で、良好な画像が得られた場合を○、良好な画像が得られなかった場合を×、とした。併せて連続通紙を3000枚行い耐久性の確認を行なった。得られた評価結果を表2に示す。
【0093】
比較例2
実施例5と同じ芯金を用い、信越化学工業社製シリコーンゴムKE−951Uと硬化剤、化学発泡材、及び、カーボンブラックを混練し、これをゴム押し出し機を用いて芯金に被覆して金型にセットし、200℃で40分一時硬化を行い、次いで210℃で10時間のエージング処理を行ない、得られた導電性シリコーンゴム発泡体からなる導電性スポンジ層を研磨して外径20.0mmの現像ローラを得た。
【0094】
得られた現像ローラの導電性スポンジ層から試験片を切り出し、実施例1と同様にセルサイズ特性と単泡率を測定したところ、平均セル径230μm、単泡率85%であった。実施例5と同様に体積抵抗率を測定したところ7×10Ωcmであった。本比較例で用いたシリコーンゴム材から得られるシリコーンエラストマー自体の比重は、1.18であった。また本比較例で得られた多孔質体の比重は0.44であり硬度(Asker−C)は、38であった。
【0095】
本比較例の現像ローラを実施例5と同じプリンターに組み込んで、画像の評価試験を行った結果を下記表2に併記する。
【0096】
【表2】

【0097】
このように、平均セル径が200μm以上の導電性シリコーンスポンジはトナーの平均粒径10μm以下と比べて非常に大きいために、現像ローラの弾性層に使用することができないが、本発明の導電性シリコーンエラストマー多孔質体は平均セル径が30μm以下と非常に微細で独立気泡のため、現像ローラの弾性層として使用することができ、十分な耐久性も併せ持っていることが分った。
【0098】
この発明に係わる導電性ローラは、上述の構成に限定される事なく、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である事は、言うまでもない。以下に、導電性ローラの他の実施例の構成を、添付図面を参照して説明する。尚、以下の説明において、上述した構成と同一部分には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0099】
(現像ローラの他の構成例の説明)
例えば、上述した現像ローラ10においては、芯金12と導電性シリコーンエラストマー多孔質体層24の構成で使用するように説明したが、この現像ローラ10は、このような構成に限定される事なく、例えば導電性シリコーンエラストマー多孔質体層の外周面に被覆層28を設け、トナーとの離型性を向上させたり、被覆層28を導電化することで、現像ローラ全体としての電気抵抗値の調整をすることもできる。そして、この被覆層の電気抵抗値を調整するために導電剤を用いることができる。この導電剤は、例えば、電子導電剤(カーボンブラック、金属粉末、導電性ウィスカー等)やイオン導電剤(多価アンモニウム塩、アルカリ金属塩素酸塩等)又はそれらを複合させて使用することができる。また、この被覆層28は、塗布する事により成形しても良いし、チューブ状として被覆層28とすることも出来る。
【0100】
(導電性ローラの他の適用例の説明)
また、この発明に係わる導電性ローラを、現像ローラに適用した場合につき説明したが、このような適用に限定される事なく、この発明に係わる導電性ローラを、帯電ローラやトナー供給ローラや転写ローラややクリーニングローラなどに適用しても良いことは言うまでもない。
【0101】
また、上述した製造方法の一実施例の手順において、現像ローラを形成するために、芯金16を金型内にセットし、この芯金16の外周に導電性多孔質体の原材料としてのエマルジョンを注入して金型内で芯金16の外周に導電性シリコーンエラストマー多孔質体層24を被覆するように説明したが、この発明は、このような手順に限定されることなく、予め、中心部に挿通孔が形成された円筒状の導電性シリコーンエラストマー多孔質体を形成しておき、この円筒状の導電性多孔質体に芯金16を挿通することにより、現像ローラを形成するようにしても良いことは、言うまでもない。要は、芯金16の外周に導電性多孔質体層22が形成されているものであれば、その形成手順を何等問わないものである。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施例1で作製したシリコーンエラストマー多孔質体の断面のSEM写真である。
【図2】実施例2で作製したシリコーンエラストマー多孔質体の断面のSEM写真である。
【図3】比較例1のシリコーンエラストマー多孔質体の断面のSEM写真である。
【図4】この発明に係わる導電性ローラを、現像ローラに適用した場合の構成を示す断面図である。
【図5】この発明に係わる導電性ローラを、現像ローラに適用した場合の他の適用例の構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0103】
10 現像ローラ
12 芯金
22 導電性多孔質体層のプライマー
24 導電性多孔質体層
26 被覆層のプライマー
28 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、
この芯金の外周を取り巻くように配設されたエマルジョン組成物から調製された少なくとも独立気泡型のシリコーンエラストマー製の導電性多孔質体層と、
を具備することを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記導電性多孔質体層は、50μm以下の径を有するセルが全セル数の50%以上を占め、かつ60%以上の単泡率を有するシリコーンエラストマーから形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
式(A):0≦(m−n)/m≦0.5
(ここで、mは、セルの長径を表し、nは、セルの短径を表す)で示される関係を満たすセルが、全セル数の50%以上を占める事を特徴とする請求項2に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
式(B):0≦(m−n)/n≦0.5
で示される関係をも満たすセルが、全セル数の50%以上を占める事を特徴とする請求項3に記載の導電性ローラ。
【請求項5】
前記シリコーンエラストマーは、30μm以下の平均セル径を有することを特徴とする請求項2に記載の導電性ローラ。
【請求項6】
前記シリコーンエラストマーは、80%以上の単泡率を有することを特徴とする請求項2に記載の導電性ローラ。
【請求項7】
前記セルの径が0.1μm〜70μmの範囲内にあることを特徴とする請求項2に記載の導電性ローラ。
【請求項8】
前記導電性多孔質体が、硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材、界面活性作用を有するシリコーンオイル材、および水を含有する油中水型エマルジョン組成物から調製されたものであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項9】
前記導電性多孔質体は、導電剤により電気抵抗を調整されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項10】
前記導電剤は、電子導電剤またはイオン導電剤である事を特徴とする請求項9に記載の導電性ローラ。
【請求項11】
前記導電性多孔質体の外周には、被覆層が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項12】
前記被覆層は、導電剤により電気抵抗を調整されている導電性被覆層であることを特徴とする請求項10に記載の導電性ローラ。
【請求項13】
前記導電剤は、電子導電剤またはイオン導電剤である事を特徴とする請求項11に記載の導電性ローラ。
【請求項14】
前記被覆層は、塗布される事により形成されていることを特徴とする請求項11に記載の導電性ローラ。
【請求項15】
前記被覆層は、チューブ状に構成され、被覆される事により配設されていることを特徴とする請求項11に記載の導電性ローラ。
【請求項16】
前記導電性ローラは、現像ローラであることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の導電性ローラ。

【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−301237(P2006−301237A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121957(P2005−121957)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000227412)日東工業株式会社 (99)
【Fターム(参考)】