説明

導電性付与剤及び導電性材料

【課題】熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂、ゴムまたは粘着剤などへ混練する際に、相溶性良く簡便に混練可能で、安価な導電性付与剤を提供する。
【解決手段】イオン性液体である式〔1〕の化合物等のピリジン誘導体のオニウム塩と過塩素酸塩とをポリエーテルポリオールに溶解してなる導電性付与剤。


(式中、Rは炭素数3〜18のアルキル基を、Rは炭素数1〜3のアルキル基を、Aは酸成分を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂、ゴムまたは粘着剤などに添加し、導電性を付与するために用いる導電性付与剤及び該導電性付与剤が添加されてなる導電性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂、ゴムまたは粘着剤等に導電性付与剤が添加されてなる導電性材料は、防塵シート、帯電防止フィルム、除電マット、帯電防止床材などの導電性シート、電子写真式プリンターや複写機の導電性ロール(帯電ロール、現像ロール、転写ロールなど)、磁気記録媒体用基材、半導体用素材、液晶ディスプレイなどの保護フィルムなどに用いられている。
【0003】
従来、導電性付与剤に使用されるイオン導電剤として、過塩素酸リチウムが知られている(例えば特許文献1参照)。過塩素酸リチウムは、他のイオン導電剤と比較して帯電防止性、すなわち導電性に優れ、さらに安価であるためコスト的に非常に有利なイオン導電剤であるが、該化合物は消防法に定める危険物第1類に属する酸化性固体であり、可燃物と混合すると発熱、発火の危険性があるため、取り扱い上、特段の注意を要し、樹脂等への添加量が制限される。すなわち、導電性に優れた導電性材料を得るべく、高濃度の過塩素酸リチウムを添加した導電性付与剤の製造は、安全面から困難を伴うものである。
【0004】
近年、イオン導電剤として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムやトリス(トリスフルオロメタンスルホニル)メタン酸リチウム等の含フッ素有機アニオン塩類を用いた導電性付与剤が提案されている(例えば特許文献2参照)。該化合物は、導電性が高く、熱的安定性に優れ、取り扱いが容易である一方、高価である。
【0005】
従って、熱可塑性樹脂またはゴム等へ、イオン導電剤を高濃度で混練させた場合でも、発熱、発火の危険性がなく、取り扱いが容易で、かつ価格的に安価な導電性付与剤が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−176255号公報
【特許文献2】特開2002−146178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂、ゴムまたは粘着剤などへ混練する際に、高濃度でイオン導電剤を含有させた場合においても安全であり、相溶性良く簡便に混練することができ、安価で生産性に優れた導電性付与剤を提供することである。および導電性、耐熱性に優れ、樹脂あるいはゴム等表面へのブリードが改善された導電性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題に鑑み、本発明者らは鋭意検討した結果、イオン導電剤として、特定のイオン性液体であるピリジン誘導体のオニウム塩と過塩素酸塩とをポリエーテルポリオールに溶解してなる導電性付与剤が、前記課題を解決し得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(14)に示すものである。
【0010】
(1)イオン性液体と過塩素酸塩類から選択される少なくとも1種とがポリエーテルポリオールに溶解されてなる導電性付与剤において、該イオン性液体がピリジン誘導体のオニウム塩であることを特徴とする導電性付与剤。
【0011】
(2)前記ピリジン誘導体のオニウム塩が、一般式〔1〕及び/または一般式〔2〕で表される化合物であることを特徴とする(1)に記載の導電性付与剤。
【0012】
【化1】

(式中、Rは炭素数3〜18のアルキル基を、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。Aは酸成分を表す。)
【0013】
【化2】

(式中、Rは炭素数3〜18のアルキル基を、R及びRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を表す。Aは酸成分を表す。)
【0014】
(3)前記ピリジン誘導体のオニウム塩の酸成分Aが、パーフルオロアルカンスルホン酸、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド酸、トリス(パーフルオロアルカンスルホニル)メチド酸からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする(1)または(2)に記載の導電性付与剤。
【0015】
(4)前記ピリジン誘導体のオニウム塩の酸成分Aが、トリフルオロメタンスルホン酸又は、ビス(トリフルオロメタン)スルホニルイミド酸、トリス(トリフルオロメタン)スルホニルメチド酸の少なくとも1種であることを特徴とする(1)または(2)に記載の導電性付与剤。
【0016】
(5)前記過塩素酸塩が、アルカリ金属塩及び/またはアルカリ土類金属塩であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか1項に記載の導電性付与剤。
【0017】
(6)前記過塩素酸塩が、過塩素酸リチウムであることを特徴とする(1)から(4)のいずれか1項に記載の導電性付与剤。
【0018】
(7)(1)から(6)のいずれか1項に記載の導電性付与剤において、過塩素酸塩とピリジン誘導体のオニウム塩との重量混合比が1:10〜10:1の範囲であることを特徴とする導電性付与剤。
【0019】
(8)(1)から(7)のいずれか1項に記載の導電性付与剤において、ピリジン誘導体のオニウム塩と過塩素酸塩とからなる導電性付与剤が、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレン−ポリオキシアルキレングリコールグラフト共重合体からなる群の少なくとも1種のポリエーテルポリオールに溶解されてなり、かつ該ポリエーテルポリオールとピリジン誘導体のオニウム塩との総重量100重量部に対して、過塩素酸塩が0.1〜20重量部含有されてなることを特徴とする導電性付与剤。
【0020】
(9)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(1)から(8)のいずれか1項に記載の導電性付与剤が、0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【0021】
(10)ゴムまたはエラストマー100重量部に対し、(1)から(8)のいずれか1項に記載の導電性付与剤が、0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【0022】
(11)紫外線硬化型樹脂100重量部に対し、(1)から(8)のいずれか1項に記載の導電性付与剤が、0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【0023】
(12)粘着剤100重量部に対し、(1)から(8)のいずれか1項に記載の導電性付与剤が、0.1〜50質量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【0024】
(13)(9)から(12)のいずれか1項に記載の導電性材料を用いて作成されたことを特徴とする導電性樹脂フィルム。
【0025】
(14)(9)から(12)のいずれか1項に記載の導電性材料を用いて作成されたことを特徴とするコーティング組成物。
【発明の効果】
【0026】
本発明の導電性付与剤は、イオン導電剤としてイオン性液体と過塩素酸塩とが含有されてなり、特定のイオン性液体であるピリジン誘導体のオニウム塩を用いたことにより、樹脂等への相溶性、特にポリエーテルポリオールとの相溶性に優れた導電性付与剤が得られ、該導電性付与剤から成型される導電性材料は、樹脂あるいはゴム表面へのブリードによる汚染が低減されるという効果を有する。また、安価な過塩素酸塩とイオン性液体であるピリジンのオニウム塩とからなるイオン導電剤を含有させることによって、高イオン濃度でも安全性を損なうことない導電性付与剤が得られ、該導電性付与剤を用いた導電性材料は導電性が高く、かつ、耐熱性、経済性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の導電性付与剤について詳細に説明する。
【0028】
本発明は、イオン導電剤として、過塩素酸塩と、イオン性液体であるピリジン誘導体のオニウム塩とがポリエーテルポリオールに溶解されてなることを特徴とする導電性付与剤である。本発明に用いられるピリジン誘導体のオニウム塩は、常温で液状を呈するイオン性液体であり、このピリジン誘導体のオニウム塩は導電性、耐熱性に優れ、また、樹脂等との相溶性、特にポリエーテルポリオールとの相溶性に優れる。
【0029】
ピリジン誘導体のオニウム塩においては、前記一般式〔1〕及び/または一般式〔2〕で表されるピリジン誘導体のオニウム塩が特に好適である。
【0030】
本発明に用いられるピリジン誘導体のオニウム塩としては、具体的にN−イソプロピル−3−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩、N−n−ブチル−3−メチルピロリジニウムビストリフルオロメタンスルホン酸塩、N−n−ブチル−3−メチルピロリジニウムトリス(パーフルオロアルカンスルホニル)メチド酸塩、N−n−ヘキシル−3−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩、N−n−オクチル−3−エチルピロリジニウムビストリフルオロメタンスルホン酸塩などが挙げられる。
【0031】
イオン性液体であるピリジンのオニウム塩を構成する酸成分Aは、該オニウム塩が常温で液状を呈するイオン性液体となるものであれば特に限定されない。そのような酸成分Aとして具体的に、パーフルオロアルカンスルホン酸、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド酸、トリス(パーフルオロアルカンスルホニル)メチド酸などが挙げられる。
【0032】
前記パーフルオロアルカンスルホン酸としては、具体的には、トリフルオロメタンスルホン酸(CFSO)、パーフルオロエタンスルホン酸(CSO)、パーフルオロブタンスルホン酸(CSO)などがあげられる。
【0033】
また、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド酸としては、具体的には、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸((CFSO2)N)、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド酸((CSO2)N)、ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミド酸((CSO2)N)などがあげられる。
【0034】
また、トリス(パーフルオロアルカンスルホニル)メチド酸としては、具体的には、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド酸((CFSO2)3C)、トリス(パーフルオロエタンスルホニル)メチド酸((CSO2)3C)、トリス(パーフルオロブタンスルホニル)メチド酸((CSO2)3C)などがあげられる。
【0035】
前記例示した酸成分Aのなかでも、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタン)スルホニルイミド酸及びトリス(トリフルオロメタン)スルホニルメチド酸は、導電性が高く、耐熱性に優れ、より好ましい。
【0036】
また、本発明に使用されるもう一方のイオン導電剤である過塩素酸塩類としては、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等のアルカリ金属塩及び過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カルシウム等のアルカリ土類金属塩があげられ、これらの中でも過塩素酸リチウムは、ポリエーテルポリオール中に溶解させることで、高い導電性を発現することができ、また、安価であることからより好ましい。
【0037】
本発明の導電性付与剤中に溶解させるイオン導電剤において、イオン導電剤中の過塩素酸塩の割合が多くなると、危険性が増大することから、過塩素酸塩とピリジン誘導体のオニウム塩との配合割合は、通常、重量混合比が、1:10〜10:1、好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:3〜3:1の範囲である。また、過塩素酸塩の配合割合がこの範囲より小さくなる場合、イオン性液体の割合が多すぎてブリードする恐れがあり、また、そのような組成は高価になる。
【0038】
以上のように導電性が高く安価な過塩素酸塩と、導電性が高く、発熱、発火等の危険性がなく、取り扱いの容易なピリジン誘導体のオニウム塩とを、所定の割合で配合し、ポリエーテルポリオールに溶解させることにより、安全性が高く、経済性に優れ、高導電性の導電性付与剤が得られる。
【0039】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコールブロック共重合体及びポリエチレン−ポリオキシアルキレングリコールグラフト共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることにより、導電性を高めるとともに、熱可塑性樹脂またはゴムへの相溶性を向上させることができ好ましい。ポリエーテルポリオールとピリジン誘導体のオニウム塩との総重量100重量部に対して、過塩素酸塩が0.1から20重量部含有されてなることが、安全性の面から好適である。
【0040】
次に、本発明の導電性材料について、以下に説明する。
【0041】
本発明は、熱可塑性樹脂、ゴムまたはエラストマー、紫外線硬化型樹脂または粘着剤100質量部に対し、本発明の導電性付与剤が、0.1〜50質量部添加されてなることを特徴とする導電性材料である。
【0042】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリアクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、エポキシ樹脂等があげられる。得られる導電性材料の導電性に優れる点から、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも1種が好ましい。
【0043】
また、本発明に用いられるゴムまたはエラストマーとしては、ウレタンゴム、アクリルゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン/エチレンオキサイド共重合体ゴム、シリコンゴム、フルオロオレフィン/ビニルエーテル共重合体ウレタンゴム、スチレン/ブタジエン共重合体ゴム及びそれらの発泡体からなる群から選ばれる少なくとも1種があげられる。
【0044】
本発明に用いられる紫外線硬化型樹脂に導電性付与剤を含有させる方法としては、本発明のイオン導電剤を含有するポリエーテルポリオールをジイソシアネート類と反応させることによりウレタン化し、ついで単官能基あるいは多官能基を有するアクリレートと反応させることによってポリウレタンアクリレートからなる紫外線硬化型樹脂を得ることができる。また、本発明のイオン導電剤を含有するポリエーテルポリオールをアクリル酸またはメタクリル酸と脱水エステル化反応させることによっても得ることが可能である。
【0045】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコールとポリオキシプロピレングリコールのブロック共重合体などがあげられる。ジイソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどがあげられる。また、アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートなどがあげられる。
【0046】
また、本発明に用いられる粘着剤としてはゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。ゴム系粘着剤としては天然ゴム、SBR、あるいはポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレンなどのブロック共重合体からなる粘着剤が挙げられる。アクリル系粘着剤としてはアクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸エチル、アクリル酸などからなる粘着剤、及びエネルギー線硬化性無溶剤型アクリル系粘着剤の原料としてはラウリルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート、エチルアクリレートなどが挙げられる。
【0047】
本発明の導電性材料は、前記熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂、ゴムまたはエラストマー、粘着剤等に、本発明の導電性付与剤を所定量添加、混練し、フィルム状、シート状あるいはロール状等に成形することにより得られる。
【0048】
また、本発明の導電性付与剤と、熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂、ゴムまたは粘着剤とを、可溶性溶媒に溶解させることにより、コーティング組成物として用いることができ、該コーティング組成物を、樹脂フィルム、ガラス等の基材に塗布した後、乾燥、硬化させることにより、これら基材表面に導電性塗膜を形成させることが可能である。
【0049】
前記熱可塑性樹脂、ゴム、紫外線硬化型樹脂または粘着剤100質量部に対し、本発明の導電性付与剤が、0.1〜50質量部添加されてなることを特徴とする導電性材料において、イオン導電剤の添加量が0.1質量部未満の場合、導電性材料の導電性が不十分となる場合があり、また、50質量部より超の場合、導電性は十分であるが、ブリードや滲みだしが発生しやすくなる場合がある。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を、実施例によりさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例により、なんら限定されない。なお実施例中、「部」は「重量部」を表す。
【0051】
実施例1
ポリエーテルポリオールであるポリエチレン−ポリオキシエチレングリコールグラフト共重合体(住友化学工業(株)、スミエード300G)(以下、「PE−PEG共重合体」と略記する。)80部に、イオン導電剤である過塩素酸リチウム10部とピリジン誘導体のオニウム塩として、N−ブチル−3−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下、「BMPTFSI」と略記する。)10部を加えた後、温度70℃で加熱混練し導電性付与剤を得た。
【0052】
ついで、熱可塑性樹脂であるポリウレタン樹脂(大日本インキ化学工業(株)、パンデックスT−8190N)(以下、「PU」と略記する。)90部に、先に得られた導電性付与剤10部を添加し、テストロール機(日新科学(株)製、HR−2型)中、温度100℃で加熱、混練させて、厚さ1mmの導電性シートを得た。
【0053】
得られた導電性シートの温度25℃、湿度40%における表面抵抗を、表面抵抗測定機(三菱化学(株)製、HT−210)を用いて測定した。また、表面のブリード性の確認は、導電性シートを2つに折り曲げ、温度40℃、湿度80%の環境下100日間放置した後、導電性付与剤の滲みだし、ヘイズ(塗膜の白濁)の有無を目視で観察することによって行った。結果を、表1に示す。
【0054】
実施例2
ポリエーテルポリオールであるPE−PEG共重合体(スミエード300G)85部に、イオン導電剤である過塩素酸リチウム10部とN−オクチル−3−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩(以下「OMPTFMS」と略記する)5部とを加えた後、温度70℃で加熱混練し導電性付与剤を得た。
【0055】
ついで、熱可塑性樹脂であるメタクリル樹脂(三菱レーヨン(株)、アクリペットIR H−70)(以下、「PMMA」と略記する。)90部に、先に得られた導電性付与剤10部を添加し、テストロール機中、温度180℃で加熱、混練させて、厚さ1mmの導電性シートを得た。
【0056】
得られた導電性シートについて、実施例1と同様にして、評価した。結果を表1に示す。
【0057】
実施例3
発泡性ゴムであるウレタン(日本ポリウレタン工業(株)、商品名:ニッポラン5119)(以下、「U」と略記する。)90部に、実施例1と同様にして得られた導電性付与剤10部を添加し、温度110℃で加熱、混練させて発泡及び架橋させた後、成型用金型に流し込んで、厚み12mmの導電性ゴム成型体を得た。
【0058】
得られた導電性ゴム成型体について、実施例1と同様にして、評価した。結果を表1に示す。
【0059】
実施例4
発泡性ゴムであるエピクロルヒドリン((株)ダイソー、エピクロマーCG−102)(以下、「EP」と略記する。)90部に、実施例2と同様にして得られた導電性付与剤10部を添加し、ついで、温度100℃で加熱、混練させて発泡及び架橋させた後、成型用金型に流し込んで、厚み12mmの導電性ゴム成型体を得た。
【0060】
得られた導電性ゴム成型体について、実施例1と同様にして、評価した。結果を表1に示す。
【0061】
比較例1
イオン導電剤に過塩素酸リチウム10部とイオン性液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(以下、「EMImTFSI」と略記する。)10部を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性シートを得た。得られた導電性シートについて、実施例1と同様にして、評価した。結果を表1に示す。実施例1から実施例4との比較において、EMImTFSIを用いた場合、表面抵抗値は同等であったが、ポリエーテルポリオールとの相溶性が悪く、ブリードが発生した。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例5
ポリエーテルポリオールであるポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコールのブロック共重合体(日本油脂(株)、プロノン201)(以下、「PEO−PPO共重合体」と略記する。)80部に、イオン導電剤として、過塩素酸リチウム15部とN−n−ヘキシル−3−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩(以下、「HMPTFMS」と略記する。)20部を添加、溶解させ、導電性付与剤を得た。
【0064】
得られた導電性付与剤115部に、硬化剤としてトリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業 (株))35部を添加し、さらに有機溶媒として、メチルエチルケトン100部を添加、溶解させて、コーティング組成物を得た。
【0065】
該コーティング組成物を、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記する。)フィルム上に、バーコーター(#20コーティングロッド)を用いて塗布後、乾燥、硬化させて、厚み5μmのウレタン樹脂からなる導電性塗膜を形成させた。
【0066】
得られた導電性フィルムについて、実施例1と同様にして、評価した。結果を表2に示す。
【0067】
実施例6
ポリエーテルポリオールであるPEO−PPO共重合体(三洋化成工業(株)、ニューポールPE−62)80部に、イオン導電剤である過塩素酸リチウム20部と、N−n−ブチル−3−エチルピロリジニウムビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド酸塩(以下、「BEPTFSI」と略記する。)20部を添加、溶解させ、導電性付与剤を得た。
【0068】
得られた導電性付与剤120部に、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株))35部を添加し、さらに溶媒として、メチルエチルケトン100部を添加、溶解させて、コーティング組成物を得た。
【0069】
該コーティング組成物を用い、実施例5と同様にして、PETフィルム上に厚み5μmのウレタン樹脂からなる導電性被膜を形成させ、得られた導電性フィルムを評価した。結果を、表2に示す。
【0070】
比較例2
イオン導電剤に過塩素酸リチウム15部とEMImTFSI20部を用いた以外は、実施例5と同様にしてウレタン樹脂からなる導電性被膜を形成させた。得られた導電性フィルムについて、実施例5及び実施例6との比較において、EMImTFSIを用いた場合、表面抵抗値は同等であったがブリードが発生した。
【0071】
【表2】

【0072】
危険物確認試験
実施例7
ポリエーテルポリオールであるPEO−PPO共重合体75部に、イオン導電剤である過塩素酸リチウム10部とOMPTFMS15部とを加えた後、温度80℃で加熱、混練させて導電性付与剤を得た。
【0073】
得られた導電性付与剤について、消防法の危険物確認試験に準じて、熱分析試験(示差走査熱量測定)をおこなった。本試験は、標準物質(2,4−ジニトロトルエンと過酸化ベンゾイル)の発熱開始点及び発熱量を同装置により測定し、発熱開始温度及び発熱量が、標準物質よりもとめられた危険性の基準以上である場合を危険性ありと判定するものである。導電性付与剤の組成比及び危険物確認試験結果を表4に示す。
【0074】
比較例3
実施例7において、PEO−PPO共重合体90部に、イオン導電剤である過塩素酸リチウム10部を用いた以外は、実施例7と同様にして導電性付与剤を得、危険物確認試験をおこなった。結果を表4に示す。
【0075】
比較例4
実施例7において、PEO−PPO共重合体80部に、イオン導電剤である過塩素酸リチウム20部を用いた以外は、実施例7と同様にして導電性付与剤を得、危険物確認試験をおこなった。結果を表3に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
表3の危険物確認試験結果から、イオン導電剤として過塩素酸リチウムのみを10部添加(比較例3)した場合、危険性なしの判定であったが、表面抵抗値は高く、導電性が不十分であった。一方、同20部添加(比較例4)した場合は表面抵抗値が低下するものの発熱量が高くなり、危険性ありの判定となった。これに対して、過塩素酸リチウム10部及びOMPTFMS15部を混用させて添加した本発明の導電性付与剤(実施例7)は危険性なしの判定であり安全性が高く、かつ高イオン導電剤濃度のため、表面抵抗値の低い導電性材料を与える優れた導電性付与剤である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の導電性付与剤は、イオン導電材である過塩素酸塩類及びイオン性液体であるピリジン誘導体のオニウム塩が所定の割合で配合されており、該導電性付与剤は樹脂等への相溶性が良く、耐熱性に優れ、表面へのブリードによる汚染が低減されるという効果を有し、導電性が高く、樹脂あるいはゴムに混練させても発熱、発火の危険性がなく、経済性にも優れた導電性付与剤である。
【0079】
また、本発明の導電性付与剤を用いてなる導電性材料は、耐ブリード性、耐熱性、帯電防止性に優れ、長期間安定した特性を持続でき、また透明性にも優れているので、防塵シート、除電マット及び帯電防止床材などの導電性シート、帯電防止フィルム、帯電防止剥離フィルム、各種ディスプレイの帯電防止剤、粘着剤、導電性塗料、導電性コーティング剤、電子写真式プリンターや複写機の導電性ロール(帯電ロール、クリーニングロール、現像ロールなど)、ポリマー2次電池などの電気化学デバイス用電解質、磁気記録媒体用基材、半導体用素材、液晶ディスプレイの保護フィルムなどへ適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性液体と過塩素酸塩類から選択される少なくとも1種とがポリエーテルポリオールに溶解されてなる導電性付与剤において、該イオン性液体がピリジン誘導体のオニウム塩であることを特徴とする導電性付与剤。
【請求項2】
前記ピリジン誘導体のオニウム塩が、一般式〔1〕及び/または一般式〔2〕で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の導電性付与剤。
【化1】

(式中、Rは炭素数3〜18のアルキル基を、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。Aは酸成分を表す。)
【化2】

(式中、Rは炭素数3〜18のアルキル基を、R及びRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を表す。Aは酸成分を表す。)
【請求項3】
前記ピリジン誘導体のオニウム塩の酸成分Aが、パーフルオロアルカンスルホン酸、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド酸、トリス(パーフルオロアルカンスルホニル)メチド酸からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電性付与剤。
【請求項4】
前記ピリジン誘導体のオニウム塩の酸成分Aが、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタン)スルホニルイミド酸、トリス(トリフルオロメタン)スルホニルメチド酸の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電性付与剤。
【請求項5】
前記過塩素酸塩が、アルカリ金属塩及び/またはアルカリ土類金属塩であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の導電性付与剤。
【請求項6】
前記過塩素酸塩が、過塩素酸リチウムであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の導電性付与剤。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の導電性付与剤において、過塩素酸塩とピリジン誘導体のオニウム塩との重量混合比が1:10〜10:1の範囲であることを特徴とする導電性付与剤。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の導電性付与剤において、ピリジン誘導体のオニウム塩と過塩素酸塩とからなる導電性付与剤が、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレン主鎖とポリオキシアルキレングリコール側鎖とを有するポリエーテルポリオールからなる群の少なくとも1種のポリエーテルポリオールに溶解されてなり、かつ該ポリエーテルポリオールとピリジン誘導体のオニウム塩との総重量100重量部に対して、過塩素酸塩が0.1〜20重量部含有されてなることを特徴とする導電性付与剤。
【請求項9】
熱可塑性樹脂100重量部に対し、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の導電性付与剤が、0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【請求項10】
ゴムまたはエラストマー100重量部に対し、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の導電性付与剤が、0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【請求項11】
紫外線硬化型樹脂100重量部に対し、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の導電性付与剤が、0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【請求項12】
粘着剤100重量部に対し、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の導電性付与剤が、0.1〜50質量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【請求項13】
請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の導電性材料を用いて作成されたことを特徴とする導電性樹脂フィルム。
【請求項14】
請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の導電性材料を用いて作成されたことを特徴とするコーティング組成物。

【公開番号】特開2007−70420(P2007−70420A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257224(P2005−257224)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】