説明

導電性弾性部材及びそれを用いた画像形成装置

【課題】硬度及び圧縮永久歪が低く、トナーが凝集・融着し難く、表面が削れ難く、耐久性に優れた導電性弾性部材を提供する。
【解決手段】ポリオール及びポリイソシアネートから合成したウレタンプレポリマー、鎖延長剤、触媒、整泡剤並びに導電剤を含む発泡ウレタン原料を機械撹拌発泡して得られる発泡ウレタン製の導電性弾性部材において、前記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールが、平均官能基数が2〜4で且つ分子量が3000〜10000のラクトン変性ポリエーテルポリオールを含み、前記ポリイソシアネートがトリレンジイソシアネート(TDI)であることを特徴とする導電性弾性部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性弾性部材及びそれを用いた画像形成装置に関し、特に電子写真プロセス等に使用され、硬度及び圧縮永久歪が低く、トナーが凝集・融着し難く、表面が削れ難く、耐久性に優れた導電性弾性部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真システムのカラー化、高速化、高画質化、省エネルギー化に伴い、低融点のトナーを使用したカラー・レーザー・プリンターが増えつつある。ここで、低融点のトナーを使用する場合、該低融点のトナーが、各部品間で圧縮又は摩擦を繰り返し受けることによりダメージを受けて、トナーが凝集・融着する等して、画像不良が発生し易いため、低硬度のローラが要求される。
【0003】
しかしながら、従来、通常用いられるウレタンエラストマー製のローラは、ローラのアスカーC硬度が65〜80度と高いため、低融点トナーの凝集・融着を引き起こしやすい。そのため、低融点トナーを使用した電子写真システムにおいては、ローラのアスカーC硬度が40〜60度程度のものが求められている。
【0004】
一方、電子写真システムに低硬度のローラを用いた場合、ローラ表面に感光ドラム、ブレード、供給ローラ等による圧接痕が発生し易いため、低硬度ローラには圧縮永久歪の低い材料を用いる必要がある。しかしながら、低硬度の材料は、圧縮永久歪が大きくなる傾向があるため、硬度及び圧縮永久歪の両方を十分に低くバランスすることが、非常に難しかった(特許文献1〜3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−252947号公報
【特許文献2】特開平9−34216号公報
【特許文献3】特開平9−114190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、硬度及び圧縮永久歪が低く、トナーが凝集・融着し難く、表面が削れ難く、耐久性に優れた導電性弾性部材を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる導電性弾性部材を用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ポリオール及びポリイソシアネートから合成したウレタンプレポリマー、鎖延長剤、触媒、整泡剤並びに導電剤を含む発泡ウレタン原料を機械撹拌発泡して得られる発泡ウレタン製の導電性弾性部材において、ウレタンプレポリマーの合成に特定のポリオール及び特定のポリイソシアネートを用いることで、導電性弾性部材の硬度及び圧縮永久歪を十分に低くでき、該導電性弾性部材を現像ローラとして画像形成装置に用いることで、画像形成装置の画像品質及び耐久性を改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の導電性弾性部材は、ポリオール及びポリイソシアネートから合成したウレタンプレポリマー、鎖延長剤、触媒、整泡剤並びに導電剤を含む発泡ウレタン原料を機械撹拌発泡して得られる発泡ウレタン製の導電性弾性部材において、
前記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールは、平均官能基数が2〜4で且つ分子量が3000〜10000のラクトン変性ポリエーテルポリオールを含み、前記ポリイソシアネートがトリレンジイソシアネート(TDI)であって、
外径φ16mm、芯金径φ8mmのローラでのアスカーC硬度が40〜60度であり、
外径φ16mm、芯金径φ8mmのローラを平板にのせ、ローラ両端に各1000gの荷重をかけ、温度40℃、湿度95%RHの環境下で3日間放置した後、荷重を取り除き30分後の表面変形量が7μm以下であることを特徴とする。ここで、アスカーC硬度及び表面変形量は、外径φ16mm、芯金径φ8mmのローラ形状での値であるが、本発明の導電性弾性部材の形状は、これに限られるものではない。
【0009】
本発明の導電性弾性部材の好適例においては、前記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールが、前記ラクトン変性ポリエーテルポリオール単独、又は前記ラクトン変性ポリエーテルポリオールとその他のポリオールとのブレンドからなる。
【0010】
本発明の導電性弾性部材は、現像ローラとして好適である。
【0011】
また、本発明の画像形成装置は、上記導電性弾性部材を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリオール及びポリイソシアネートから合成したウレタンプレポリマー、鎖延長剤、触媒、整泡剤並びに導電剤を含む発泡ウレタン原料を機械撹拌発泡して得られる発泡ウレタン製の導電性弾性部材において、ウレタンプレポリマーの合成に特定のポリオール及び特定のポリイソシアネートを用いることで、硬度及び圧縮永久歪が十分に低い導電性弾性部材を提供することができる。また、かかる導電性弾性部材を用いた、画像品質及び耐久性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の導電性弾性部材は、ポリオール及びポリイソシアネートから合成したウレタンプレポリマー、鎖延長剤、触媒、整泡剤並びに導電剤を含む発泡ウレタン原料を機械撹拌発泡して得られる発泡ウレタン製の導電性弾性部材であって、前記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールが、平均官能基数が2〜4で且つ分子量が3000〜10000のラクトン変性ポリエーテルポリオールを含み、前記ポリイソシアネートがトリレンジイソシアネート(TDI)であることを特徴とする。なお、上記発泡ウレタン原料には、必要に応じて、その他の公知の添加剤を用いることができる。
【0014】
上記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールは、平均官能基数が2〜4で且つ分子量が3000〜10000のラクトン変性ポリエーテルポリオールを少なくとも含み、その他のポリオールを含んでもよい。ここで、他のポリオールとしては、プロピレンオキサイドやエチレンオキサイドを付加させてなるポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、プロピレンオキサイド変性ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。これらポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。上記ウレタンプレポリマーの合成にラクトン変性ポリエーテルポリオールと他のポリオールをブレンドして用いる場合、ポリオール中のラクトン変性ポリエーテルポリオールの割合は、70質量%以上の範囲が好ましい。該ラクトン変性ポリエーテルポリオールは、例えば、グリセリン等のポリオールにプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加して生成させたポリエーテルポリオールの末端を、ε-カプロラクトン等のラクトンで変性して製造することができ、市販品を利用することもできる。なお、上記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールは、水酸基価が10〜120mgKOH/gの範囲にあるのが好ましい。
【0015】
上記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリイソシアネートは、トリレンジイソシアネート(TDI)である。該TDIには、異性体が複数存在するが、それらの中でも、2,4-トリレンジイソシアネート及び2,6-トリレンジイソシアネートが好ましい。また、本発明に用いるTDIとしては、2,4-トリレンジイソシアネート/2,6-トリレンジイソシアネートが質量比で65/35〜100/0の範囲にあるものが更に好ましい。
【0016】
上記ポリオール及びポリイソシアネートから合成されるウレタンプレポリマーは、NCO(イソシアネート基)含有率が1〜10%の範囲にあるのが好ましい。
【0017】
また、上記発泡ウレタン原料として用いられる鎖延長剤は、上記ウレタンプレポリマー同士を連結する化合物であり、特に限定されるものではなく、従来、発泡ポリウレタン用の鎖延長剤として用いられるものを用いることができる。該鎖延長剤として、具体的には、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、プロピレンオキサイド(PO)変性ポリブタジエンポリオール、ポリブタジエンポリオール及びポリイソプレンポリオール等が挙げられる。これら鎖延長剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。なお、上記鎖延長剤は、水酸基価が10〜1300mgKOH/gの範囲にあるのが好ましい。また、該鎖延長剤の使用量は、上記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)と鎖延長剤の水酸基(OH)とのモル比(NCO/OH)が90/100〜120/100の範囲になるよう、適宜選択されることが好ましい。
【0018】
上記発泡ウレタン原料に用いる触媒は、ウレタン化反応用の触媒であり、例えば、ジブチルスズジラウレート,ジブチルスズジアセテート,ジブチルスズチオカルボキシレート,ジブチルスズジマレエート,ジオクチルスズチオカルボキシレート,オクテン酸スズ等の有機スズ化合物;オクテン酸鉛等の有機鉛化合物;トリエチルアミン,ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類;テトラメチルエチレンジアミン,テトラメチルプロパンジアミン,テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類;ペンタメチルジエチレントリアミン,ペンタメチルジプロピレントリアミン,テトラメチルグアニジン等のトリアミン類;トリエチレンジアミン,ジメチルピペラジン,メチルエチルピペラジン,メチルモルホリン,ジメチルアミノエチルモルホリン,ジメチルイミダゾール等の環状アミン類;ジメチルアミノエタノール,ジメチルアミノエトキシエタノール,トリメチルアミノエチルエタノールアミン,メチルヒドロキシエチルピペラジン,ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類;ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル,エチレングリコールビス(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類等が挙げられる。これら触媒の中でも、有機スズ化合物が好ましい。これら触媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記触媒の使用量は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.001〜2.0質量部の範囲が好ましい。
【0019】
上記発泡ウレタン原料に用いる整泡剤としては、ポリエーテル変性シリコーンオイル等のシリコーン系整泡剤の他、イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活剤等を用いることができる。該整泡剤の使用量は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.5〜5.0質量部の範囲が好ましい。
【0020】
上記発泡ウレタン原料に用いる導電剤としては、導電性カーボン、イオン導電剤、金属酸化物粉末、金属粉末等が挙げられる。これら導電剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。導電剤の使用量は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲が好ましい。
【0021】
本発明の導電性弾性部材は、外径φ16mm、芯金径φ8mmのローラ形状でのアスカーC硬度が40〜60度である。ローラ形状でのアスカーC硬度が上記の範囲を満たすことで、現像ローラ等の弾性部材として十分な硬度を確保しつつ、低融点トナーの凝集・融着を防止することができる。
【0022】
本発明の導電性弾性部材は、外径φ16mm、芯金径φ8mmのローラとして平板に載せ、ローラの両端に各1000gの荷重をかけ、温度40℃、湿度95%RHの環境下で3日間放置した後、荷重を取り除いて30分後のローラ表面の変形量が7μm以下である。本発明の導電性弾性部材は、長期間他の部材に圧接されても、圧接状態から解放することで元の形状に戻りやすく、即ち、圧縮永久歪が小さいため、現像ローラ等の精密部品として好適である。
【0023】
本発明の導電性弾性部材を構成する発泡ウレタンは、上記ウレタンプレポリマー、鎖延長剤、触媒、整泡剤並びに導電剤を含む発泡ウレタン原料を機械撹拌発泡して得られるプレポリマー・メカニカル・フロス法発泡成形ウレタンである。該発泡ウレタンは、発泡剤を用いることなく、ウレタン原料を機械的に撹拌して気泡を混入させる方法で発泡させてなる。本発明の導電性弾性部材は、機械撹拌発泡で得られ、ウレタンプレポリマーの原料として、ポリエーテルポリオール系のラクトン変性ポリエーテルポリオールを使用しているため、発泡倍率が高い。また、発泡ウレタンの形成を、所望の形状の金型内で行うことで、所望の形状の導電性弾性部材を製造することができる。
【0024】
本発明の導電性弾性部材は、画像形成装置の現像ローラとして好適である。この場合、該現像ローラは、上記発泡ウレタン以外に、金属製シャフト等の他の材料を備えてもよい。該現像ローラは、例えば、中心部に金属製のシャフトを配置した所望の形状の金型内に上記ウレタン原料を混合撹拌して注入し、硬化させて製造することができ、更に、該現像ローラの外表面には、熱硬化性塗液を塗布する等して塗膜を形成してもよい。
【0025】
本発明の画像形成装置は、上記の導電性弾性部材を用いることを特徴とし、上記の導電性弾性部材を現像ローラとして備えるのが好ましい。本発明の画像形成装置は、上記導電性弾性部材を用いる以外、特に制限はなく、公知の方法で製造することができる。
【0026】
以下に、図を参照して本発明の画像形成装置を詳細に説明する。図1は、本発明の画像形成装置の一例の部分断面図である。図示例の画像形成装置は、トナー1を供給するためのトナー供給ローラ2と、静電潜像を保持した感光ドラム3と、トナー供給ローラ2と感光ドラム3との間に配置された現像ローラ4と、現像ローラ4の上部に設けられた現像ブレード5と、感光ドラム3の下方に位置する転写部6と、感光ドラム3に隣接して設けられたクリーニング部7とを備える。なお、本発明の画像形成装置は、更に画像形成装置に通常用いられる公知の部品(図示せず)を備えることができる。
【0027】
図示例の画像形成装置においては、トナー供給ローラ2と、現像ローラ4と、感光ドラム3とが、図中の矢印方向に回転することで、トナー供給ローラ2上のトナー1が現像ローラ4を経て感光ドラム3に送られる。トナー1は、現像ローラ4上で現像ブレード5により均一な薄層に整えられ、更に現像ローラ4と感光ドラム3とが接触しながら回転することにより、現像ローラ4から感光ドラム3の静電潜像に付着し、該潜像が可視化する。潜像に付着したトナー1は、転写部6で紙等の記録媒体に転写され、また、転写後に感光ドラム3上に残留するトナー1は、クリーニング部7のクリーニングブレード8によって除去される。本発明の画像形成装置においては、例えば、現像ローラ4に上述の硬度及び圧縮永久歪が低い導電性弾性部材を用いることで、トナー1の融点が通常より低くても、トナー1の凝集・融着が抑制することができ、長期に渡って良好な画像を形成することができる。
【0028】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
グリセリンにプロピレンオキサイドを付加した3官能で分子量3,000のポリエーテルポリオールにラクトンを付加して得られる3官能で分子量4,000のラクトン変性ポリエーテルポリオール(水酸基価42.8mgKOH/g)100質量部と、2,4-トリレンジイソシアネート及び2,6-トリレンジイソシアネートの質量比(2,4-異性体/2,6-異性体)が80/20のトリレンジイソシアネート(TDI-80)23.5質量部とを密閉容器内で60℃で48時間撹拌しながら反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した。なお、得られたウレタンプレポリマーのNCO含有率は、6.6%であった。このウレタンプレポリマー100質量部と、導電性カーボンブラック[電気化学工業社製, デンカブラック]2.0質量部とを減圧下で混合撹拌して、導電性カーボンが分散したウレタンプレポリマーを作製し、これをA成分とした。
【0030】
一方、平均官能基数2.0、分子量400のプロピレンオキサイド付加ポリオール21.0質量部と、平均官能基数3.0、分子量430のプロピレンオキサイド付加ポリオール6.0質量部と、ポリエーテル変性シリコーンオイル(整泡剤)4.0質量部と、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)0.3質量部とを混合撹拌して、混合物を調製し、これをB成分とした。
【0031】
上記A成分とB成分とをメカニカル・フロス発泡機にて、A成分とB成分との流量比(A/B)が102.0/31.3になるようにして撹拌、混合、発泡させ、内面にフッ素樹脂コートを施した内径16.0mmで中央に外径寸法φ8mmの芯金がセットされた筒型に注入した。次に、該筒型の両端を密閉し、110℃の熱風循環オーブンで30分間加熱キュアーした後、筒型から成形品を取り出し、更に、該成形品の表面に熱硬化性塗液を塗布し、60℃で1時間加熱乾燥して、外径寸法がφ16.0mmの導電性ローラを得た。
【0032】
得られた導電性ローラは、室温での抵抗値が104.8Ωで、アスカーC硬度が51度で、フォーム密度が0.52g/cm3であった。この導電性ローラを平板にのせ、ローラ両端に各1000gの荷重をかけ、温度40℃、湿度95%RHの環境下で3日間放置した後、荷重を取り除き30分後のローラ表面の変形量(凹み量)を測定したところ、変形量は4.7μmであった。
【0033】
この導電性ローラを現像ローラとして乾式電子写真装置に組み込み、温度40℃、湿度95%RHの環境下で2週間放置した後、グレー(濃度8%)の画像を印刷したところ、良好な画像が得られた。次に、この乾式電子写真装置を、温度20℃、湿度50%RHの環境下で48時間放置後、グレー(濃度8%)の画像を印刷したところ、良好な画像が得られた。更に連続して10000枚印刷した後、グレーの画像を印刷したところ、トナーの凝集・融着に起因する白スジ等の画像不良はなく、良好な画像が得られた。また、使用したトナーカートリッジを分解し、現像ローラの表面を観察したところ、現像ローラ表面には感光ドラム、現像ブレード、トナー供給ローラ等による圧接痕や削れ等が無いことが分かった。更に、現像ローラの近くのトナーを顕微鏡で観察したところ、トナーは初期状態を維持しており、凝集・融着は観察されなかった。
【0034】
(実施例2)
グリセリンにプロピレンオキサイドを付加した3官能で分子量3,000のポリエーテルポリオールにラクトンを付加して得られる3官能で分子量4,000のラクトン変性ポリエーテルポリオール(水酸基価42.8mgKOH/g)70質量部と、グリセリンにプロピレンオキサイドを付加した3官能で分子量5,100のポリエーテルポリオール(水酸基価33.3mgKOH/g)30質量部と、2,4-トリレンジイソシアネート及び2,6-トリレンジイソシアネートの質量比(2,4-異性体/2,6-異性体)が80/20のトリレンジイソシアネート(TDI-80)23.0質量部とを密閉容器内で60℃で48時間撹拌しながら反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した。なお、得られたウレタンプレポリマーのNCO含有率は、6.6%であった。このウレタンプレポリマー100質量部と、導電性カーボンブラック[電気化学工業社製, デンカブラック]2.0質量部とを減圧下で混合撹拌して、導電性カーボンが分散したウレタンプレポリマーを作製し、これをA成分とした。
【0035】
一方、平均官能基数2.0、分子量400のプロピレンオキサイド付加ポリオール21.0質量部と、平均官能基数3.0、分子量430のプロピレンオキサイド付加ポリオール6.0質量部と、ポリエーテル変性シリコーンオイル(整泡剤)4.0質量部と、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)0.3質量部とを混合撹拌して、混合物を調製し、これをB成分とした。
【0036】
上記A成分とB成分とをメカニカル・フロス発泡機にて、A成分とB成分との流量比(A/B)が102.0/31.3になるようにして撹拌、混合、発泡させ、内面にフッ素樹脂コートを施した内径16.0mmで中央に外径寸法φ8mmの芯金がセットされた筒型に注入した。次に、該筒型の両端を密閉し、110℃の熱風循環オーブンで30分間加熱キュアーした後、筒型から成形品を取り出し、更に、該成形品の表面に熱硬化性塗液を塗布し、60℃で1時間加熱乾燥して、外径寸法がφ16.0mmの導電性ローラを得た。
【0037】
得られた導電性ローラは、室温での抵抗値が104.4Ωで、アスカーC硬度が52度で、フォーム密度が0.51g/cm3であった。この導電性ローラを平板にのせ、ローラ両端に各1000gの荷重をかけ、温度40℃、湿度95%RHの環境下で3日間放置した後、荷重を取り除き30分後のローラ表面の変形量(凹み量)を測定したところ、変形量は6.4μmであった。
【0038】
この導電性ローラを現像ローラとして乾式電子写真装置に組み込み、温度40℃、湿度95%RHの環境下で2週間放置した後、グレー(濃度8%)の画像を印刷したところ、良好な画像が得られた。次に、この乾式電子写真装置を、温度20℃、湿度50%RHの環境下で48時間放置後、グレー(濃度8%)の画像を印刷したところ、良好な画像が得られた。更に連続して10000枚印刷した後、グレーの画像を印刷したところ、トナーの凝集・融着に起因する白スジ等の画像不良はなく、良好な画像が得られた。また、使用したトナーカートリッジを分解し、現像ローラの表面を観察したところ、現像ローラ表面には感光ドラム、現像ブレード、トナー供給ローラ等による圧接痕や削れ等が無いことが分かった。更に、現像ローラの近くのトナーを顕微鏡で観察したところ、トナーは初期状態を維持しており、凝集・融着は観察されなかった。
【0039】
(比較例1)
グリセリンにプロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサイド(EO)とを付加した3官能で分子量5,000、水酸基価34mgKOH/gのポリエーテルポリオール100質量部と、2,4-トリレンジイソシアネート及び2,6-トリレンジイソシアネートの質量比(2,4-異性体/2,6-異性体)が80/20のトリレンジイソシアネート(TDI-80)21.9質量部とを密閉容器内で60℃で48時間撹拌しながら反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した。なお、得られたウレタンプレポリマーのNCO含有率は、6.6%であった。このウレタンプレポリマー100質量部と、導電性カーボンブラック[電気化学工業社製, デンカブラック]2.0質量部とを減圧下で混合撹拌して、導電性カーボンが分散したウレタンプレポリマーを作製し、これをA成分とした。
【0040】
一方、平均官能基数2.0、分子量400のプロピレンオキサイド付加ポリオール20.0質量部と、平均官能基数3.0、分子量430のプロピレンオキサイド付加ポリオール6.0質量部と、ポリエーテル変性シリコーンオイル(整泡剤)4.0質量部と、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)0.3質量部とを混合撹拌して、混合物を調製し、これをB成分とした。
【0041】
上記A成分とB成分とをメカニカル・フロス発泡機にて、A成分とB成分との流量比(A/B)が102.0/31.3になるようにして撹拌、混合、発泡させ、内面にフッ素樹脂コートを施した内径16.0mmで中央に外径寸法φ8mmの芯金がセットされた筒型に注入した。次に、該筒型の両端を密閉し、110℃の熱風循環オーブンで30分間加熱キュアーした後、筒型から成形品を取り出し、更に、該成形品の表面に熱硬化性塗液を塗布し、60℃で1時間加熱乾燥して、外径寸法がφ16.0mmの導電性ローラを得た。
【0042】
得られた導電性ローラは、室温での抵抗値が104.2Ωで、アスカーC硬度が52度で、フォーム密度が0.53g/cm3であった。この導電性ローラを平板にのせ、ローラ両端に各1000gの荷重をかけ、温度40℃、湿度95%RHの環境下で3日間放置した後、荷重を取り除き30分後のローラ表面の変形量(凹み量)を測定したところ、変形量は8.3μmであった。
【0043】
この導電性ローラを現像ローラとして乾式電子写真装置に組み込み、温度40℃、湿度95%RHの環境下で2週間放置した後、グレー(濃度8%)の画像を印刷したところ、現像ローラの長さ方向と同一方向のスジ状の画像不良が確認された。また、使用したトナーカートリッジを分解し、現像ローラの表面を観察したところ、現像ローラ表面に現像ブレード及び感光ドラムとの圧接痕が観測された。次に、この乾式電子写真装置を、温度20℃、湿度50%RHの環境下で48時間放置後、グレー(濃度8%)の画像を印刷したところ、同様に画像にスジ状の不良が確認された。更に連続して10000枚印刷した後、グレーの画像を印刷したところ、現像ローラの長さ方向と同一方向のスジ状の画像不良、現像ローラの長さ方向と直角方向のスジ状の画像不良が確認された。また、使用したトナーカートリッジを分解し、現像ローラの表面を観察したところ、既に観察された現像ブレード及び感光ドラムとの圧接痕の他に、現像ローラの長さ方向と直角方向の白スジが発生した位置に対応する現像ローラの表面に削れがあることが分かった。更に、削れた部分の近くのトナーを顕微鏡で観察したところ、トナーが凝集・融着していた。
【0044】
(比較例2)
グリセリンにプロピレンオキサイドを付加した3官能で分子量5,100、水酸基価33mgKOH/gのポリエーテルポリオール100質量部と、2,4-トリレンジイソシアネート及び2,6-トリレンジイソシアネートの質量比(2,4-異性体/2,6-異性体)が80/20のトリレンジイソシアネート(TDI-80)21.7質量部とを密閉容器内で60℃で48時間撹拌しながら反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した。なお、得られたウレタンプレポリマーのNCO含有率は、6.6%であった。このウレタンプレポリマー100質量部と、導電性カーボンブラック[電気化学工業社製, デンカブラック]2.0質量部とを減圧下で混合撹拌して、導電性カーボンが分散したウレタンプレポリマーを作製し、これをA成分とした。
【0045】
一方、平均官能基数2.0、分子量400のプロピレンオキサイド付加ポリオール20.0質量部と、平均官能基数3.0、分子量430のプロピレンオキサイド付加ポリオール6.0質量部と、ポリエーテル変性シリコーンオイル(整泡剤)4.0質量部と、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)0.3質量部とを混合撹拌して、混合物を調製し、これをB成分とした。
【0046】
上記A成分とB成分とをメカニカル・フロス発泡機にて、A成分とB成分との流量比(A/B)が102.0/31.3になるようにして撹拌、混合、発泡させ、内面にフッ素樹脂コートを施した内径16.0mmで中央に外径寸法φ8mmの芯金がセットされた筒型に注入した。次に、該筒型の両端を密閉し、110℃の熱風循環オーブンで30分間加熱キュアーした後、筒型から成形品を取り出し、更に、該成形品の表面に熱硬化性塗液を塗布し、60℃で1時間加熱乾燥して、外径寸法がφ16.0mmの導電性ローラを得た。
【0047】
得られた導電性ローラは、室温での抵抗値が104.5Ωで、アスカーC硬度が51度で、フォーム密度が0.54g/cm3であった。この導電性ローラを平板にのせ、ローラ両端に各1000gの荷重をかけ、温度40℃、湿度95%RHの環境下で3日間放置した後、荷重を取り除き30分後のローラ表面の変形量(凹み量)を測定したところ、変形量は8.4μmであった。
【0048】
この導電性ローラを現像ローラとして乾式電子写真装置に組み込み、温度40℃、湿度95%RHの環境下で2週間放置した後、グレー(濃度8%)の画像を印刷したところ、現像ローラの長さ方向と同一方向のスジ状の画像不良が確認された。また、使用したトナーカートリッジを分解し、現像ローラの表面を観察したところ、現像ローラ表面に現像ブレード及び感光ドラムとの圧接痕が観測された。次に、この乾式電子写真装置を、温度20℃、湿度50%RHの環境下で48時間放置後、グレー(濃度8%)の画像を印刷したところ、同様に画像にスジ状の不良が確認された。更に連続して10000枚印刷した後、グレーの画像を印刷したところ、現像ローラの長さ方向と同一方向のスジ状の画像不良、現像ローラの長さ方向と直角方向のスジ状の画像不良が確認された。また、使用したトナーカートリッジを分解し、現像ローラの表面を観察したところ、既に観察された現像ブレード及び感光ドラムとの圧接痕の他に、現像ローラの長さ方向と直角方向の白スジが発生した位置に対応する現像ローラの表面に削れがあることが分かった。更に、削れた部分の近くのトナーを顕微鏡で観察したところ、トナーが凝集・融着していた。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から明らかなように、ウレタンプレポリマーの合成に特定のポリオール及びポリイソシアネートを用いて得られた発泡ウレタン製の導電性ローラは、硬度及び圧縮永久歪が低く、該ローラを現像ローラとして用いた画像形成装置は、高温・高湿下でも良好な画像を形成することができると共に、耐久性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の画像形成装置の一例の部分断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 トナー
2 トナー供給ローラ
3 感光ドラム
4 現像ローラ
5 現像ブレード
6 転写部
7 クリーニング部
8 クリーニングブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール及びポリイソシアネートから合成したウレタンプレポリマー、鎖延長剤、触媒、整泡剤並びに導電剤を含む発泡ウレタン原料を機械撹拌発泡して得られる発泡ウレタン製の導電性弾性部材において、
前記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールが、平均官能基数が2〜4で且つ分子量が3000〜10000のラクトン変性ポリエーテルポリオールを含み、前記ポリイソシアネートがトリレンジイソシアネート(TDI)であって、
外径φ16mm、芯金径φ8mmのローラでのアスカーC硬度が40〜60度であり、
外径φ16mm、芯金径φ8mmのローラを平板にのせ、ローラ両端に各1000gの荷重をかけ、温度40℃、湿度95%RHの環境下で3日間放置した後、荷重を取り除き30分後の表面変形量が7μm以下であることを特徴とする導電性弾性部材。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールが、前記ラクトン変性ポリエーテルポリオール単独、又は前記ラクトン変性ポリエーテルポリオールとその他のポリオールとのブレンドからなることを特徴とする請求項1に記載の導電性弾性部材。
【請求項3】
前記導電性弾性部材が現像ローラであることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性弾性部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電性弾性部材を用いた画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−78636(P2006−78636A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260746(P2004−260746)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】