説明

導電性接着ペースト及び電子部品搭載基板

【課題】安価な金属粉を用い、大気雰囲気下での加熱硬化過程を経ても、接着性及び導電性に優れる導電性接着ペーストを提供する。
【解決手段】 エポキシ樹脂とイミダゾール誘導体を含有するバインダ成分(A)、銅粉又は銅合金粉の表面が部分的に銀で被覆された金属粉(B)及び単官能のアルカンチオール(C)を含む導電性接着ペーストであって、前記単官能のアルカンチオール(C)を金属粉(B)に対し0.0001〜5重量%含むことを特徴とする導電性接着ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着ペーストおよびそれを用いた電子部品搭載基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性接着ペーストの導電成分として銀、銅、ニッケル等の金属粉末が用いられている。
【0003】
しかしながら、銀を用いた導電性接着ペーストは、導電成分である銀が高価であること、マイグレーションと称する銀の電析が生じて絶縁不良が発生し易い等の欠点がある。そこで、マイグレーションを改善でき、銀より安価な銅を主導電成分とし、銅の表面酸化を抑制した導電性接着ペーストが種々提案されている。銅の酸化防止剤としては、脂肪酸アミド、アントラセン又はその誘導体、ハイドロキノンの誘導体、フェニレンジアミン誘導体、高級脂肪酸アミン、不飽和脂肪酸等があるが、高湿度下における導電性変化が大きいという欠点があった。
【0004】
そこで、特許文献1に記載されているように、イミダゾール誘導体を金属粉に塗布し高湿度下における導電性変化を抑制する方法が考えられた。イミダゾール誘導体は金属粉の表面に塗布することにより、金属の表面でキレート化合物を作って銅と酸素の接触を妨げ銅の酸化を防止する。しかしながら、硬化促進剤としてイミダゾール誘導体を含む熱硬化性樹脂を使用した導電性接着ペーストでは、大気雰囲気下での加熱硬化過程において、銅表面に生成されたイミダゾール誘導体とのキレート化合物により導通が阻害され、さらにキレート化合物の生成により硬化促進剤が不足し、硬化が阻害されるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−218006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、安価な金属粉を用い、大気雰囲気下での加熱硬化過程を経ても、接着性及び導電性に優れる導電性接着ペースト及び電子部品搭載基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(1)エポキシ樹脂とイミダゾール誘導体を含有するバインダ成分(A)、銅粉又は銅合金粉の表面が部分的に銀で被覆された金属粉(B)及び単官能のアルカンチオール(C)を含む導電性接着ペーストであって、前記単官能のアルカンチオール(C)を金属粉(B)に対し0.0001〜5重量%含むことを特徴とする導電性接着ペーストに関する。
【0008】
また、本発明は、(2)前記金属粉(B)は、その表面が前記単官能のアルカンチオール(C)で被覆されてなるものである前記(1)記載の導電性接着ペーストに関する。
【0009】
また、本発明は、(3)基板と電子部品とが導電部材により接続された構造を有する電子部品搭載基板であって、前記導電部材が前記(1)又は(2)に記載の導電性接着ペーストを硬化してなる電子部品搭載基板に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安価な金属粉を用い、大気雰囲気下での加熱硬化過程を経ても、接着性及び導電性に優れる導電性接着ペースト及び電子部品搭載基板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電子部品搭載基板の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の電子部品搭載基板の他の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の導電性接着ペーストは、エポキシ樹脂とイミダゾール誘導体を含有するバインダ成分(A)、銅粉又は銅合金粉の表面が部分的に銀で被覆された金属粉(B)及び単官能のアルカンチオール(C)を含む導電性接着ペーストであって、前記単官能のアルカンチオール(C)を金属粉(B)に対し0.0001〜5重量%含むことを特徴とする。
【0013】
以下、本発明の導電性接着ペーストに含まれる各成分について説明する。
【0014】
バインダ成分(A)
本発明におけるバインダ成分(A)は、エポキシ樹脂(a1)とイミダゾール誘導体(a2)を含有するものである。
【0015】
エポキシ樹脂(a1)
本発明で用いられるエポキシ樹脂(a1)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールADなどとエピクロルヒドリンとから誘導されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0016】
このような化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるAERX8501(旭化成工業株式会社製、商品名)、R−301(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名)、YL−980(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名);ビスフェノールF型エポキシ樹脂であるYDF−170(東都化成株式会社製、商品名);ビスフェノールAD型エポキシ樹脂であるR−1710(三井石油化学工業株式会社製、商品名);フェノールノボラック型エポキシ樹脂であるN−730S(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)、Quatrex−2010(ダウ・ケミカル社製、商品名);クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であるYDCN−702S(東都化成株式会社製、商品名)、EOCN−100(日本化薬株式会社製、商品名);多官能エポキシ樹脂であるEPPN−501(日本化薬株式会社製、商品名)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社製、商品名)、VG−3010(三井石油化学工業株式会社製、商品名)、1032S(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名);ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であるHP−4032(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名);脂環式エポキシ樹脂であるEHPE−3150、CELー3000(共にダイセル化学工業株式会社製、商品名)、DME−100(新日本理化株式会社製、商品名)、EX−216L(ナガセ化成工業株式会社製、商品名);脂肪族エポキシ樹脂であるW−100(新日本理化株式会社、商品名);アミン型エポキシ樹脂であるELM−100(住友化学工業株式会社製、商品名)、YH−434L(東都化成株式会社製、商品名)、TETRAD−X、TETRACC(共に三菱瓦斯化学株式会社製、商品名);レゾルシン型エポキシ樹脂であるデナコールEX−201(ナガセ化成工業株式会社製、商品名);ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEX−211(ナガセ化成工業株式会社製、商品名);ヘキサンディネルグリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEX−212(ナガセ化成工業株式会社製、商品名);エチレン・プロピレングリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEXシリーズ(EX−810、811、850、851、821、830、832、841、861(いずれもナガセ化成工業株式会社製、商品名));下記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂E−XL−24、E−XL−3L(共に三井東圧化学株式会社製、商品名))等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【化1】

【0017】
(一般式(I)中、aは0〜5の整数を示す。)
また、エポキシ樹脂(a1)として、1分子中にエポキシ基を1個だけ有するエポキシ化合物(反応性希釈剤)を含んでもよい。このようなエポキシ化合物は、本発明の導電性接着ペーストの特性を阻害しない範囲で使用されるが、エポキシ樹脂全量に対して0〜30重量%の範囲で使用することが好ましい。このようなエポキシ化合物の市販品としては、PGE(日本化薬株式会社製、商品名)、PP−101(東都化成株式会社製、商品名)、ED−502、ED−509、ED−509S(旭電化工業株式会社製、商品名)、YED−122(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名)、KBM−403(信越化学工業株式会社製、商品名)、TSL−8350、TSL−8355、TSL−9905(東芝シリコーン株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0018】
イミダゾール誘導体(a2)
本発明では、イミダゾール誘導体(a2)を必須成分として用いることにより、他の硬化促進剤を用いる場合に比べて、最も少量での短時間に硬化することが可能になる。
【0019】
本発明で用いられるイミダゾール誘導体(a2)は、エポキシ樹脂の硬化促進剤として用いられているものであれば特に限定されず、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(シアノエチルアミノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテイト、又は、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
イミダゾール誘導体(a2)の配合割合は、バインダ成分(A)全量を基準として2〜18重量%であることが好ましく、5〜10重量%であることがより好ましい。イミダゾール誘導体の配合割合が2重量%未満の場合は、十分な硬化が得られず接着力が低下する傾向があり、また18重量%を超える場合は、粘度上昇により作業性が悪くなる、あるいは未反応のイミダゾール誘導体により導電性が悪くなる傾向がある。
【0021】
硬化促進剤(a3)
上記イミダゾール誘導体は、いわゆるエポキシ樹脂の硬化促進剤として作用するが、これ以外の硬化促進剤(a3)を併用してもよい。例えば、有機ボロン塩化合物であるEMZ・K、TPPK(共に北興化学工業株式会社製、商品名)、三級アミン類又はその塩であるDBU、U−CAT102、106、830、840、5002(いずれもサンアプロ社製、商品名)、ジシアンジアミド、下記一般式(II)で表される二塩基酸ジヒドラジドであるADH、PDH、SDH(いずれも日本ヒドラジン工業株式会社製、商品名)、エポキシ樹脂とアミン化合物の反応物からなるマイクロカプセル型硬化剤であるノバキュア(旭化成工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【化2】

【0022】
(一般式(II)中、Rはm−フェニレン基、p−フェニレン基等の2価の芳香族基、或いは炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。)
このような硬化促進剤(a3)は、本発明の導電性接着ペーストの特性を阻害しない範囲で使用されるが、エポキシ樹脂に対して0〜30重量%の範囲で使用することが好ましい。
【0023】
硬化剤(a4)
本発明では、さらに硬化剤を併用することもできる。このような硬化剤としては、総説エポキシ樹脂(エポキシ樹脂技術協会)のp117〜209に例示されるようなものを広く使用することができる。具体的には、例えば、フェノールノボラック樹脂であるH−1(明和化成株式会社製、商品名)、VR−9300(三井東圧化学株式会社製、商品名);フェノールアラルキル樹脂であるXL−225(三井東圧化学株式会社製、商品名);下記一般式(III)で表されるp−クレゾールノボラック樹脂であるMTPC(本州化学工業株式会社製、商品名);又はアリル化フェノールノボラック樹脂であるAL−VR−9300(三井東圧化学株式会社製、商品名);下記一般式(IV)で表される特殊フェノール樹脂であるPP−700−300(日本石油化学株式会社製、商品名);等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【化3】

【0024】
(一般式(III)中、Rは低級アルキル、アリル基などの炭化水素基を示し、bは1〜5の整数を示す。)
【化4】

【0025】
(一般式(IV)中、Rは低級アルキル基を示し、Rは水素又は炭化水素基を示し、cは2〜4の整数を示す。)
硬化剤(a4)の使用量は、エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基1.0当量に対して、硬化剤(a4)中の反応活性基の総量が0.3〜1.2当量となる量であることが好ましく、0.4〜1.0当量となる量であることがより好ましく、0.5〜1.0当量となる量であることが特に好ましい。上記反応活性基の総量が0.3当量未満であると、接着力が低下する傾向があり、1.2当量を超えるとペーストの粘度が上昇し、作業性が低下する傾向がある。上記反応活性基は、エポキシ樹脂と反応活性を有する置換基のことであり、例えば、フェノール性水酸基等が挙げられる。
【0026】
金属粉(B)
本発明で用いられる金属粉(B)は、銅粉又は銅合金粉の表面が部分的に銀で被覆された金属粉(銀被覆銅粉又は銀被覆銅合金粉)である。言い換えれば、銅粉又は銅合金粉の一部を露出して、表面が大略銀で被覆された状態の金属粉である。銅粉又は銅合金粉の一部を露出させないで全面に銀を被覆した金属粉を用いると耐マイグレーション性が悪くなる。なお、銅粉又は銅合金粉の表面の露出面積が大きすぎると、銅粉の酸化により導電性が低下する傾向がある。
【0027】
そのため、銅粉又は銅合金粉の表面の露出面積は、耐マイグレーション性、露出部の酸化、導電性等の点から、銅粉又は銅合金粉の全表面の1〜70%の範囲であることが好ましく、10〜60%の範囲であることがより好ましく、10〜55%の範囲であることがさらに好ましい。ここでいう、銅粉又は銅合金粉の表面の露出面積は、銅粉又は銅合金粉を軽く圧縮して上面を平らにならした銅粉又は銅合金粉の凝集物を作製し、その表面をXPS(X線光電子分光分析装置)で元素分析を行い銅の割合を求めることにより測定することができる。
【0028】
銅粉又は銅合金粉としては、アトマイズ法で作製された粉体を用いることが好ましく、銅粉又は銅合金粉の粒径は小さいほど金属粉の接触確率が高くなり高導電性が得られるために好ましい。例えば、銅粉又は銅合金粉の平均粒径は、1〜20μmの範囲であることが好ましく、1〜10μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0029】
銅粉又は銅合金粉の表面に銀を被覆する方法としては、置換めっき、電気めっき、無電解めっき等の方法があり、銅粉又は銅合金粉と銀との付着力が高いこと及びランニングコストが安価であることから、置換めっきで被覆することが好ましい。銅粉又は銅合金粉の表面を部分的に銀で被覆する手法としては、銀めっき銅粉又は銀めっき銅合金粉をボールミル中で一定時間撹拌し、表面の一部に銅を露出させる方法が挙げられる。
【0030】
銅粉又は銅合金粉の表面への銀の被覆量が多すぎるとコストが高くなるとともに、耐マイグレーション性が低下し、少なすぎると導電性が低下する傾向がある。そのため、銀の被覆量は、銅粉又は銅合金粉に対して(銅粉又は銅合金粉と銀との合計重量を基準としたときの銀の重量として)5〜25重量%の範囲であることが好ましく、10〜23重量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明で用いられる銅粉又は銅合金粉の表面が部分的に銀で被覆された金属粉は、通常、略球状の前記金属粉と扁平状の前記金属粉との混合粉、又は、略球状若しくは扁平状の前記金属粉の単独粉からなるものである。ここで、「略球状の金属粉」とは、「球状の金属粉」も含む概念である。これらの金属粉は導電性接着ペーストの粘度、塗布面積、膜厚、接合部材等の接合の仕様や要求特性により、組み合わせや比率が異なってくる。
【0032】
例えば、平面方向の導電性を良好なものとするためには、金属粉同士の接触面積、配向等の点から、金属粉としては扁平状の金属粉を用いることが好ましい。一方、断面方向の導電性を良好なものとするためには、断面方向に対する単一粒子が占める体積が増えるので、金属粉としては略球状の金属粉を用いることが好ましい。
【0033】
また、接着強度についても、接合の仕様によって異なるが、一般的に基材に対して平滑に塗布した導電性接着ペーストでは、金属粉として扁平状の金属粉を用いた場合の方が、略球状の金属粉を用いた場合よりも高い値を示す傾向がある。
【0034】
例えば、導電性接着ペーストを用いて銅箔にリードフレームを接合する場合、導電性、接着強度、作業性、信頼性等の点から、金属粉として、略球状の金属粉と扁平状の金属粉との比率が、重量比で略球状の金属粉:扁平状の金属粉が40:60〜98:2の範囲となるように混合した混合粉を用いることが好ましい。このような混合粉を用いることで、良好な結果が得られている。
【0035】
なお、金属粉として扁平状の金属粉を主として用いた場合、導電性接着ペーストの粘度は高くなり、反面、略球状の金属粉を主として用いた場合、扁平状の金属粉を主として用いた場合より粘度が低くなり作業性がよくなる。
【0036】
また、金属粉として略球状の金属粉を主として用いた場合と扁平状の金属粉を主として用いた場合の導電性接着ペーストの粘度を同一にする場合は、略球状の金属粉の比率を扁平状の金属粉の比率より高くすることができる。すなわち、所定の粘度の導電性接着ペーストを作製する際に、金属粉として略球状の金属粉を主として用いた場合には、扁平状の金属粉を主として用いた場合よりも、導電性接着ペースト中の金属粉の比率を高くすることができる。
【0037】
さらに、金属粉として用いられる略球状の金属粉は、長径の平均粒径が1〜20μm、アスペクト比が1〜1.5、タップ密度が4.5〜6.2g/cm、相対密度が50〜95%及び比表面積が0.1〜1.0m/gの範囲のものであることが好ましい。一方、扁平状の金属粉は、長径の平均粒径が5〜30μm、アスペクト比が3〜20、タップ密度が2.5〜5.8g/cm、相対密度が27〜63%及び比表面積が0.4〜1.3m/gの範囲のものであることが好ましい。
【0038】
ここで、略球状の金属粉及び扁平状の金属粉のそれぞれについて、平均粒径が上記範囲の上限値を超えると、金属粉の接触確率が低下するため導電性が低下する傾向があり、平均粒径が上記範囲の下限値未満であると、粘度が高くな
り、接着力が低下する傾向がある。
【0039】
また、アスペクト比が上記範囲の上限値を超えると、粘度が高くなり、接着力が低下する傾向があり、アスペクト比が上記範囲の下限値未満であると、導電性が低下する傾向がある。
【0040】
また、タップ密度が上記範囲の上限値を超えると、導電性が低下する傾向があり、タップ密度が上記範囲の下限値未満であると、粘度が高くなり、接着力が低下する傾向がある。
【0041】
また、相対密度が上記範囲の上限値を超えると、導電性が低下する傾向があり、相対密度が上記範囲の下限値未満であると、粘度が高くなり、接着力が低下する傾向がある。
【0042】
さらに、比表面積が上記範囲の上限値を超えると、接着力が低下する傾向があり、比表面積が上記範囲の下限値未満であると、導電性が低下する傾向がある。
【0043】
上記平均粒子径は、50体積%の粒子径であり、マスターサイザー・レーザー散乱型粒度分布測定装置(マルバーン社製)を用いて測定することにより求めることができる。
【0044】
上記アスペクト比とは、金属粉の粒子の長径(μm)と短径(μm)との比(長径/短径)をいう。このアスペクト比は以下の手順で測定することができる。まず、粘度の低い硬化性樹脂中に金属粉の粒子を入れてよく混合した後、静置して粒子を沈降させるとともにそのまま樹脂を硬化させて硬化物を作製する。次いで、得られた硬化物を垂直方向に切断し、その切断面に現れる粒子の形状を電子顕微鏡で拡大して観察する。そして、少なくとも100の粒子について一つ一つの粒子の長径/短径を求め、それらの平均値をもってアスペクト比とする。
【0045】
ここで、短径とは、上記切断面に現れる粒子について、その粒子の外側に接する二つの平行線の組み合わせを、粒子を挾むように選択し、これらの組み合わせのうち最短間隔になる二つの平行線の距離である。一方、長径とは、上記短径を決する平行線に直角方向の二つの平行線であって、粒子の外側に接する平行線のうち、最長間隔になる二つの平行線の距離である。これらの四つの線で形成される長方形は、粒子がちょうどその中に納まる大きさとなる。
【0046】
上記タップ密度は、JIS Z−2540に従い、金属粉100gをメスシリンダーに入れ、1000回タップを行い、投入した重量100gと600回タップ後のメスシリンダーが示す体積から換算して求めることができる。
【0047】
上記相対密度は次式から求めることができる。
【0048】
相対密度(%)=(タップ密度/真密度)×f×100
(ただしfは実測値による補正係数である。)
本発明の導電性接着ペーストにおける金属粉(B)とバインダ成分(A)との配合比率(%)、導電粉(B):バインダ成分(A)は、体積比率(体積%)で20:80〜60:40であることが好ましい。前記金属粉(B)の体積比率が20体積%未満では導電性が悪くなる傾向があり、60体積%を超えるとバインダ成分(A)の減少に伴って接着力が低下する傾向がある。接着性、導電性、作業性の面から、前記体積比率(体積%)は、30:70〜50:50であることがより好ましい。
【0049】
単官能アルカンチオール(C)
本発明では単官能のアルカンチオール(C)を前記金属粉(B)に対し0.0001〜5重量%含むことが重要である。単官能のアルカンチオールを含有することにより、銅粉又は銅合金粉の露出表面を単官能のアルカンチオールが保護し、銅とイミダゾール誘導体の接触を妨げキレート化合物の生成を防止し、その結果、導電性接着ペーストの接着性及び導電性が低下するのを防ぐのである。前記単官能のアルカルチオール(C)の含有量が0.0001重量%未満では、銅粉又は銅合金粉の露出表面を十分に保護することが出来ないため、導電性の低下を抑えることが出来ず、また5重量%を超えると、導電性接着ペーストのポットライフや接着力が低下する。前記単官能のアルカルチオール(C)の含有量は金属粉の平均粒径、金属粉の形状、金属粉表面の露出面積、単官能のアルカンチオールの種類などに応じて適宜選択されるが、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜5重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%である。
【0050】
本発明で用いるアルカンチオールは、チオール基を1つ有するものであり、複数のチオール基を有するものはイミダゾール誘導体と同様に銅表面の導通を阻害するため用いることができない。
【0051】
本発明で用いられる単官能のアルカンチオールは、アルキル基を構成する炭素数が8以上18以下であることが好ましく、12以上18以下であることがより好ましい。前記炭素数が7以下の単官能のアルカンチオールは取り扱い難くい傾向にあり、炭素数が19以上の単官能のアルカンチオールは入手し難い傾向にある。
【0052】
好ましい単官能のアルカンチオールの具体例としては、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、テトラデカンチオール、ペンタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、ヘプタデカンチオール、オクタデカンチオールなどが挙げられる。
【0053】
本発明の導電性接着ペーストは単官能のアルカンチオール(C)を含有するものであるが、単官能のアルカンチオール(C)は、バインダ成分(A)及び金属粉(B)と混合して用いてもよいし、金属粉(B)の表面を被覆して用いてもよい。金属粉(B)の露出表面を単官能のアルカンチオール(C)が保護し、銅とイミダゾール誘導体の接触を妨げキレート化合物の生成を防止するという効果をより高めるという観点から、単官能のアルカンチオール(C)は金属粉(B)の表面を被覆して用いることが好ましい。
【0054】
単官能のアルカンチオール(C)を、バインダ成分(A)及び金属粉(B)と混合して用いる場合は、金属粉の表面に均一に単官能のアルカンチオールを吸着させやすい観点から、まず単官能のアルカンチオール(C)とバインダ成分(A)を混合した後に金属粉(B)と混合することが好ましい。バインダ成分(A)と単官能のアルカンチオール(C)を混合する方法としては、一括又は分割して撹拌器、らいかい器、3本ロール、プラネタリーミキサー等の分散・溶解装置を適宜組み合わせて用い、必要に応じて加熱して混合、溶解、解粒混練又は分散する等の方法がある。
【0055】
金属粉(B)の表面を単官能のアルカンチオール(C)で被覆する方法としては、金属粉(B)をフレーク状に処理する際にアルカンチオール(C)を添加する方法、アルカンチオール(C)の有機溶媒溶液に金属粉(B)を浸漬し、有機溶媒を気化除去する方法、金属粉(B)を浸漬したアルカンチオール(C)の有機溶媒溶液を濾過して金属粉(B)を分離する方法、金属粉(B)を浸漬したアルカンチオール(C)の有機溶媒溶液をデカンテーションにより分離する方法等がある。有機溶媒としては、特に制限はないが、エタノール、ブチルセルソルブ、エチルカルビトール又はブチルエチルカルビトールなどが好ましい。
【0056】
単官能のアルカンチオール(C)は、金属粉(B)の表面に対し、分子間力で結合し、その表面を被覆していると考えられる。金属粉(B)表面を被覆する単官能のアルカンチオール(C)の量は、金属粉(B)に対し0.0001〜5重量%の範囲であることが好ましく、0.001〜5重量%の範囲がより好ましい。前記アルカンチオールの量が0.0001重量%未満では、金属粉の露出表面を十分に保護することが出来ないため、導電性の低下を抑えにくくなり、また5重量%を超えると、導電性接着ペーストのポットライフや接着力が低下する傾向にある。
【0057】
添加剤
本発明の導電性接着ペーストには、必要に応じて、可撓剤、カップリング剤、界面活性剤、消泡剤、靭性改良剤及びイオントラップ剤等の添加剤を適宜添加することができる。以下、これらの添加剤について説明する。
【0058】
本発明の導電性接着ペーストには応力緩和の目的で可撓剤を使用することができる。可撓剤の例としては、液状ポリブタジエン(宇部興産株式会社製「CTBN−1300×31」、「CTBN−1300×9」、日本曹達株式会社製「NISSO−PB−C−2000」)などが挙げられる。可撓剤は、受動部品と基板上の電極とを接着したことによって発生する応力を緩和する効果がある。可撓剤は、通常、エポキシ樹脂100重量部とするとき、0〜500重量部添加するのが好ましい。
【0059】
本発明の導電性接着ペーストには、接着力向上の目的で、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製「KBM−573」等)や、チタンカップリング剤等のカップリング剤を使用することができる。また、濡れ性を向上する目的で、アニオン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤等の界面活性剤を使用することができる。さらに、シリコーン油等の消泡剤を使用することができる。上記カップリング剤、界面活性剤、消泡剤は、それぞれ単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができ、その使用量としては、金属粉100重量部に対して0〜10重量部が好ましい。
【0060】
本発明の導電性接着ペーストには、ペースト組成物の作製時の作業性及び使用時の塗布作業性をより良好ならしめるため、必要に応じて希釈剤を添加することができる。これらの希釈剤としては、ブチルセロソルブ、カルビトール、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、α−テルピネオール等の比較的沸点の高い有機溶剤が好ましい。その使用量は導電性接着ペースト全量を基準として0〜30重量%の範囲で使用することが好ましい。
【0061】
本発明の導電性接着ペーストには、さらに必要に応じてウレタンアクリレート等の靭性改良剤、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の吸湿剤、酸無水物等の接着力向上剤、無機イオン交換体等のイオントラップ剤等を適宜添加することができる。
【0062】
本発明の導電性接着ペーストは、バインダ成分(A)、金属粉(B)及び単官能のアルカンチオール(C)を、必要に応じて添加される添加剤等とともに、一括又は分割して撹拌器、らいかい器、3本ロール、プラネタリーミキサー等の分散・溶解装置を適宜組み合わせ、必要に応じて加熱して混合、溶解、解粒混練又は分散する等して均一なペースト状として得ることができる。この際、単官能のアルカンチオール(C)は、予めバインダ成分(A)と混合してもよいし、金属粉(B)を被覆する形態で用いてもよい。
【0063】
本発明の電子部品搭載基板は、基板と電子部品とが導電部材により接続された構造を有する電子部品搭載基板であって、前記導電部材が本発明の導電性接着ペーストを硬化してなるものである。以下、本発明の電子部品搭載基板について、図1及び2を用いて説明する。
【0064】
図1は、本発明の電子部品搭載基板の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すように、電子部品搭載基板は、基板5上に形成された基板接続端子4と、電子部品1に接続されている電子部品接続端子2とが、導電部材3により電気的に接続された構造を有している。そして、導電部材3は、上述した本発明の導電性接着ペーストを硬化させたものとなっている。
【0065】
本発明の導電性接着ペーストを用いて電子部品1と基板5とを接着させるには、まず基板5の基板接続端子4上に導電性接着ペーストをディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法等により塗布する。次いで、電子部品接続端子2を有する電子部品1を、電子部品接続端子2と基板接続端子4とが導電性接着ペーストを介して電気的に接続されるように基板5に圧着し、その後オーブン又はリフロー炉等の加熱装置を用いて導電性接着ペーストを加熱硬化することにより行うことができる。
【0066】
本発明の導電性接着ペーストを加熱硬化させるための熱硬化プロセスにおいて、加熱温度(T)は80〜200℃であることが好ましく、加熱時間(t)は1〜10分間であることが好ましい。このような熱硬化プロセスにより、導電部材3により基板5と電子部品1とが接続された構造の電子部品搭載基板を得ることができる。かかる電子部品搭載基板は、本発明の導電性接着ペーストを用いるとともに、上記熱硬化プロセスにより導電性接着ペーストの硬化を行うことで形成されているため、良好な導電性を得ることができる。
【0067】
また、本発明の電子部品搭載基板は、図1に示した構造に限定されず、例えば、図2に示す構造を有していてもよい。図2に示す電子部品搭載基板は、基板5上に形成された基板接続端子4と、電子部品1に接続されているリード6とが、本発明の導電ペーストを硬化させてなる導電部材3により電気的に接続された構造を有している。
【実施例】
【0068】
次に実施例を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0069】
実施例、及び比較例で用いた材料は、下記の方法で作製したもの、あるいは入手したものである。作製方法の例として実施例1および比較例5を示すが、その他の実施例、及び比較例の樹脂組成、配合比は表1に示すとおりであり、作製方法に関しては実施例1および比較例5と同様である。
【0070】
実施例1
YDF−170(東都化成株式会社製商品名、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:170)70重量部と、PP−101(東都化成株式会社製商品名、アルキルフェニルグリシジルエーテル、エポキシ当量:230)20重量部と、2PZ−CN(四国化成工業株式会社製商品名、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)10重量部とを混合し、3本ロールを3回通してバインダ成分を調製した。
【0071】
次に、アトマイズ法で作製した平均粒径が5.1μmの球状銅粉(日本アトマイズ加工株式会社製、商品名SFR−Cu)を希塩酸及び純水で洗浄した後、水1リットルあたりAgCN80g及びNaCN75gを含むめっき溶液で球状銅粉に対して銀の被覆量が18重量%(球状銅粉及び銀の合計重量を基準としたときの銀の重量が18重量%)になるように置換めっきを行い、水洗、乾燥して銀めっき銅粉を得た。
【0072】
この後、2リットルのボールミル容器内に上記で得た銀めっき銅粉750g及び直径が5mmのジルコニアボール3kgを投入し、40分間回転させて、1000回のタッピングによるタップ密度が5.93g/cm、相対密度が93%、比表面積が0.26m/g、アスペクト比が平均1.3及び長径の平均粒径が5.5μmの、球状銅粉の表面が部分的に銀で被覆された(球状銅粉の表面の一部が露出した)略球状銀被覆銅粉である金属粉(b1)を得た。なお、このとき球状銅粉の表面の露出面積の割合を、走査型オージェ電子分光分析装置により測定したところ、銀めっき銅粉の表面の全面積を基準として20%であった。
【0073】
ドデカンチオール5重量部をエタノール100重量部に溶解した溶液に、金属粉(b1)100重量部を投入し、1時間撹拌した。その後、吸引漏斗でろ過してエタノール溶液を除去して乾燥させ、ドデカンチオールを被覆した金属粉(b1)を得た。
【0074】
次に、上記で得たバインダ成分100重量部に対し、ドデカンチオールを被覆した金属粉(b1)570重量部(金属粉(b1)及びバインダ成分の合計体積を基準とした金属粉(b1)の体積比率:35体積%)を加えて混合し、三本ロールを3回通した後、真空撹拌らいかい機を用いて500Pa以下で10分間脱泡処理を行うことにより、導電性接着ペーストを得た。
【0075】
実施例2〜5、及び比較例1〜4
上述したように、表1に示す組成とした以外は実施例1と同様にして、実施例2〜5及び比較例1〜4の導電性接着ペーストを得た。なお表1に示した材料の詳細は下記の通りである。
【0076】
5重量%オクタデカンチオール被覆金属粉(b1):実施例1におけるドデカンチオール10重量部に替えてオクタデカンチオール10重量部を用いること以外は、実施例1と同様に操作して作製した。
【0077】
C17Z:2−ヘプタデシルイミダゾール(四国化成工業株式会社製商品名)
C11Z−A:2,4−ジアミノ−6−〔2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン(四国化成工業株式会社製商品名)
2E4MZ−A:2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン(四国化成工業株式会社製商品名)
比較例5
YDF−170(東都化成株式会社製商品名、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:170)70重量部と、PP−101(東都化成株式会社製商品名、アルキルフェニルグリシジルエーテル、エポキシ当量:230)20重量部と、2PZ−CN(四国化成工業株式会社製商品名、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)10重量部とを混合し、3本ロールを3回通してバインダ成分を調製した。
【0078】
次に、アトマイズ法で作製した平均粒径が5.1μmの球状銅粉(日本アトマイズ加工株式会社製、商品名SFR−Cu)を希塩酸及び純水で洗浄した後、水1リットルあたりAgCN80g及びNaCN75gを含むめっき溶液で球状銅粉に対して銀の被覆量が18重量%(球状銅粉及び銀の合計重量を基準としたときの銀の重量が18重量%)になるように置換めっきを行い、水洗、乾燥して銀めっき銅粉を得た。
【0079】
この後、2リットルのボールミル容器内に上記で得た銀めっき銅粉750g及び直径が5mmのジルコニアボール3kgを投入し、40分間回転させて、1000回のタッピングによるタップ密度が5.93g/cm、相対密度が93%、比表面積が0.26m/g、アスペクト比が平均1.3及び長径の平均粒径が5.5μmの、球状銅粉の表面が部分的に銀で被覆された(球状銅粉の表面の一部が露出した)略球状銀被覆銅粉である金属粉(b1)を得た。なお、このとき球状銅粉の表面の露出面積の割合を、走査型オージェ電子分光分析装置により測定したところ、銀めっき銅粉の表面の全面積を基準として20%であった。
【0080】
ドデカンチオール10重量部をエタノール100重量部に溶解した溶液に、金属粉(b1)100重量部を投入し1時間撹拌後、エタノールを気化して除去し、ドデカンチオールを被覆した金属粉(b1)を得た。
【0081】
次に、上記で得たバインダ成分100重量部に対し、ドデカンチオールを被覆した金属粉(b1)570重量部(金属粉(b1)及びバインダ成分の合計体積を基準とした金属粉(b1)の体積比率:35体積%)を加えて混合し、三本ロールを3回通した後、真空撹拌らいかい機を用いて500Pa以下で10分間脱泡処理を行うことにより、導電性接着ペーストを得た。
【0082】
比較例6
ドデカンチオール10重量部に替えてオクタデカンチオール10重量部を用いること以外は、比較例5と同様に操作して、導電性接着ペーストを得た。
【0083】
前記実施例1〜5及び比較例1〜6に係る導電性接着ペーストの特性を下記の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0084】
(1)体積抵抗率:1mm×50mm×0.03mmに形成した上記導電性接着ペーストを、最高到達温度が約200℃、加熱時間は10分となるようにリフロー炉(古河電気工業株式会社製、サラマンダ XNA−645PC)を設定し、大気雰囲気下において硬化させ試験片を作製した。作製した試験片を用いて四端子法で体積抵抗率を測定した。
【0085】
(2)せん断接着力:上記導電性接着ペーストをパラジウムめっきリードフレーム(PPF、ランド部:10mm×8mm)上に約0.2mgを塗布し、この上に2mm×2mmのシリコンチップ(厚さ0.4mm)を圧着し、最高到達温度が約200℃、加熱時間は10分となるようにリフロー炉(古河電気工業株式会社製、サラマンダ XNA−645PC)を設定し、大気雰囲気下において加熱処理を行った。これを万能型ボンドテスタ(デイジ社製、4000シリーズ)を用い、測定スピード500μm/s、測定高さ120μm、室温(約25℃)でのせん断強さ(MPa)を測定した。
【表1】

【0086】
実施例1と比較例1、実施例3と比較例2、実施例4と比較例3、実施例5と比較例4を比較すると分かるように、ドデカンチオールを添加することにより導電性が向上する。実施例2と比較例1を比較すると分かるように、オクタデカンチオールを添加することにより導電性が向上する。
【0087】
実施例1と比較例5を比較すると分かるように、ドデカンチオールの添加量が多すぎると、接着力が低下する。実施例2と比較例6を比較すると分かるように、オクタデカンチオールの添加量が多すぎると、接着力が低下する。
【符号の説明】
【0088】
1 電子部品
2 電子部品接続端子
3 導電部材
4 基板接続端子
5 基板
6 リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂とイミダゾール誘導体を含有するバインダ成分(A)、銅粉又は銅合金粉の表面が部分的に銀で被覆された金属粉(B)及び単官能のアルカンチオール(C)を含む導電性接着ペーストであって、前記単官能のアルカンチオール(C)を金属粉(B)に対し0.0001〜5重量%含むことを特徴とする導電性接着ペースト。
【請求項2】
前記金属粉(B)は、その表面が前記単官能のアルカンチオール(C)で被覆されてなるものである請求項1記載の導電性接着ペースト。
【請求項3】
基板と電子部品とが導電部材により接続された構造を有する電子部品搭載基板であって、前記導電部材が請求項1又は2に記載の導電性接着ペーストを硬化してなる電子部品搭載基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−245938(P2009−245938A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57842(P2009−57842)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】