説明

導電性部材及びこの導電性部材を用いたプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置

【課題】初期及び経時にわたって放電余裕度が高く、低温低湿環境において不均一な放電による画像不良が抑止される導電性部材及びこの導電性部材が適用された帯電部材を用いた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】導電性部材101を構成する電気抵抗調整層104を、少なくともポリアミドエラストマーとポリオレフィンブロックポリマーとを含有する熱可塑性樹脂と、過塩素酸塩類から選択される少なくとも1種及び含フッ素有機アニオン塩類から選択される少なくとも1種を含む複数の塩とからなる樹脂組成物により構成し、初期及び経時にわたって放電余裕度を高めるようにした。このため、低温低湿環境においても導電性部材101からの不均一な放電が抑止されるほか、通電の際の電解質塩の分極による導電性低下が小さくなり長期にわたって使用されても導電性部材101からの不均一な放電が抑止されるものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性部材及びこの導電性部材を用いたプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式には、像担持体である感光体ドラムに対して帯電処理を行う帯電部材や、感光体ドラム上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として、導電性部材が用いられている。
【0003】
図1は画像形成装置の概略図である。この画像形成装置は、静電潜像が形成される感光体ドラム11と、感光体ドラム11に対して帯電処理を行う帯電部材としての帯電ローラ12と、感光体ドラム11の静電潜像にトナー15を付着させる現像ローラ14と、感光体ドラム11上のトナー像を記録媒体17に転写処理する転写ローラ16と、転写処理後の感光体ドラム11をクリーニングするクリーニングブレード18を有するクリーニング部材21と、を備えている。なお、19は感光体ドラム11上に残留したトナーがクリーニングによって除去された排トナー、20は現像装置63を示す。また、図1では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、省略されている。
【0004】
この画像形成装置による画像形成では、先ず、帯電ローラ12により感光体ドラム11の表面11aが負の高電位に帯電される。
【0005】
続いて、この表面11aが露光光により露光される。この露光によって表面11aの各電位が受光量に応じた電位分布となり、これによって静電潜像が表面11aに形成される。
【0006】
続いて、感光体ドラム11が回転して、表面11aのうち静電潜像が形成された部分が現像ローラ14を通過すると、表面11aに電位分布に応じたトナーが付着し、これによって静電潜像がトナー像として可視化される。
【0007】
続いて、転写ローラ16によって、所定のタイミングで給送される記録媒体17に対してトナー像が転写され、トナー像が転写された記録媒体17は、定着ユニット(不図示)に向かって矢印Bの方向へ搬送されていく。
【0008】
そして、記録媒体17に対するトナー像の転写後、感光体ドラム11の表面11aに残留するトナーがクリーニングブレード18により除去されてクリーニングされると共にクエンチングランプ(不図示)により電荷が除去されて次回の作像処理の準備が行なわれる。
【0009】
ここで、画像形成装置1における一般的な帯電方式として、帯電ローラ12を感光体ドラム11に接触させる接触帯電方式が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0010】
しかしながら、接触帯電方式には、次に掲げる問題がある。
【0011】
(1)帯電ローラ12の構成物質が帯電ローラ12から染み出して感光体ドラム11の表面に固着し、この固着が進行すると感光体ドラム11の表面11aに帯電ローラ12の跡が残る。
【0012】
(2)帯電ローラ12に交流電圧を印加した際に、感光体ドラム11に接触している帯電ローラ12が振動して帯電音が起こる。
【0013】
(3)感光体ドラム11の表面11aのトナーが帯電ローラ12に固着して帯電性能が低下する。特に、上記(1)に示す帯電ローラ12の構成物質の染み出しが生じると、トナーの固着が増して帯電性能が大きく低下する。
【0014】
(4)帯電ローラ12を構成している物質が感光体ドラム11に固着し易い。
【0015】
(5)感光体ドラム11を長期間駆動しないと、帯電ローラ12に永久変形が生じる。
【0016】
このような問題に対処するため、帯電ローラ12を、感光体ドラム11に接触させずに近接させる近接帯電方式が考案されている(例えば、特許文献4参照)。近接帯電方式では、帯電ローラ12と感光体ドラム11との最近接距離(以下、間隙という)を50μm〜300μmに設定し、両者を対向させた状態で帯電ローラ12に電圧を印加することによって感光体ドラム11を帯電させる。この近接帯電方式では、帯電ローラ12と感光体ドラム11とが接触していないので、接触帯電方式で問題となる上記(1)、(3)、(4)、(5)の問題が解消される。
【0017】
接触帯電方式で用いられている帯電ローラ12は、芯金の周囲に加硫ゴム等の弾性体が被覆された構成になっている。これは、接触帯電方式にあっては、感光体ドラム11を均一に帯電させるため、感光体ドラム11に対して帯電ローラ12が均一に接触することが要求されるからである。
【0018】
一方、近接帯電方式において、感光体ドラム11を均一に帯電させるべく、接触帯電方式のように弾性体を用いて帯電ローラ12を構成すると、次に掲げる不具合が生じる。
(1)感光体ドラム11−帯電ローラ12間の間隙を形成させるべく、帯電ローラ12の両端の非画像領域にスペーサ等の間隙保持部材を介在させて近接状態を図る必要があるが、弾性体で形成された帯電ローラ12にあっては、弾性体の変形に起因して間隙を均一に保つことが困難となる。その結果、帯電電位変動や、それに起因する画像ムラが生じる。
(2)弾性体を形成する加硫ゴム材料は、経時変化してへたり、変形が生じやすく、そのため経時変化により間隙の大きさが変動する。
【0019】
この不具合を解消するために、非弾性体である熱可塑性樹脂を用いることが考えられる。熱可塑性樹脂により感光体ドラム11と帯電ローラ12との間の間隙を均一できるからである。
【0020】
ところで、帯電ローラ12による感光体ドラム11の表面11aの帯電メカニズムは、帯電ローラ12と感光体ドラム11との間の微小放電によるパッシェンの法則に従った放電であることが知られている。このため、感光体ドラム11を所定の帯電電位に保持する機能を得るためには、熱可塑性樹脂の電気抵抗値を半導電性領域(106Ωcm〜109Ωcm程度)に制御する必要がある。この電気抵抗値の制御方法として、熱可塑性樹脂中にカーボンブラック等の導電性顔料を分散させる方法が知られている。
【0021】
しかしながら、感光体ドラム11の電気抵抗調整層を、導電性顔料を用いて半導電性領域に設定しようとすると、電気抵抗値のばらつきが大きくなる。その結果、部分的に帯電不良が起こるか或いは電子伝導により局所放電(リーク放電)が発生し、画像欠陥を誘起させるという問題が生じる。
【0022】
一方、電気抵抗値を制御する別の手段として、イオン導電性材料を用いることが考えられる。イオン導電性材料は、マトリックス樹脂中に分子レベルで分散するため、導電性顔料が分散するものに比べて抵抗値のばらつきが小さくなる。この場合でも、部分的な帯電不良は生じ得るが、その帯電不良は画像品質の観点からは問題にはならない。
【0023】
しかしながら、電解質塩のような低分子量のイオン導電性材料は、マトリックス樹脂の表面へのブリードアウト(染み出し)が生じ易いという性質がある。このため、帯電ローラ12の表面においてトナーが固着し、画像不良を引き起こしてしまう。このブリードアウトを避けるためには、高分子型イオン導電性材料を用いることが考えられる。高分子型イオン導電性材料が、マトリックス樹脂中に分散固定化され、もって表面へのブリードアウトが起こり難いものとなるからである。
【0024】
高分子型イオン導電材料としては、ポリアミド系エラストマー等が使用されているが、高分子型イオン導電材料のみでは感光体ドラム11に関する電気抵抗調整層の抵抗値が高く半導電性領域に制御することができない。このため、高分子型イオン導電材料に電解質塩を加えて、電気抵抗調整層に良好な導電性を付与する方法が用いられている。この電解質塩としては、一般的に過塩素酸ナトリウムや過塩素酸リチウム等の過塩素酸塩、有機ホスホニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等の含フッ素有機アニオン塩が用いられる(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特開昭63−149668号公報
【特許文献2】特開平1−2111779号公報
【特許文献3】特開平1−267667号公報
【特許文献4】特開平3−240076号公報
【特許文献5】特開2005−85601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、高分子型イオン導電性材料にあっては、周辺雰囲気中の水素イオン、水酸化物イオンが導電経路に介在することから、空気中の水分量によってその導電性が大きく左右される。特に、低温低湿環境では導電性が著しく低下することにより、抵抗調整層中のイオン導電性材料や電解質塩の分散ムラが導電性の差として顕著に現われる。その結果、帯電ローラ12から感光体ドラム11への放電が不均一となり、画像不良を引き起こしてしまう。従って、低温低湿環境での不均一な放電の発生を防止するため、電気抵抗調整層の導電性を高め、放電余裕度を向上させることが必要であるが、過塩素酸塩や含フッ素有機アニオン塩だけでは導電性の付与が不十分となり、不均一な放電は避けられないといった問題がある。
【0026】
そこで、電解質塩として、過塩素酸塩と含フッ素有機アニオン塩を添加することにより、放電余裕度を向上させて、低温低湿環境において不均一な放電が発生しないことを見出した。また、過塩素酸塩の場合は、経時使用の通電で電解質塩の分極による、導電性の低下が大きく、長期にわたって使用すると、低温低湿環境以外でも前述の不均一な放電が発生してしまったが、過塩素酸塩と含フッ素アニオン塩を添加した処方では、通電による導電性の低下が小さいため、長期にわたって使用されても、放電余裕度の高い状態が保たれて、不均一な放電が発生しないことを見出した。
【0027】
以上から、過塩素酸塩と含フッ素有機アニオン塩を添加した処方では、放電余裕度が大幅に向上することにより、初期及び経時で不均一な放電による画像不良が生じないことを見出した。
【0028】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、初期及び経時にわたって放電余裕度が高く、低温低湿環境において不均一な放電による画像不良が抑止される導電性部材及びこの導電性部材が適用された帯電部材及びこの帯電部材を用いたプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した導電性部材は、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、この電気抵抗調整層の両端部に形成されるとともにこの電気抵抗調整層と異なる材質の間隙保持部材とを備え、この間隙保持部材によって前記電気抵抗調整層と像担持体との間を一定の間隙に保持する導電性部材であって、
前記電気抵抗調整層は、少なくともポリアミドエラストマーとポリオレフィンブロックポリマーとを含有する熱可塑性樹脂と、過塩素酸塩類から選択される少なくとも1種及び含フッ素有機アニオン塩類から選択される少なくとも1種を含む複数の塩とからなる樹脂組成物により構成したことを特徴とする。
【0030】
請求項2に記載した導電性部材は、請求項1に記載の導電性部材であって、前記含フッ素有機アニオン塩は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムとトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムとのうちから選ばれた少なくとも1種以上の塩であることを特徴とする。
【0031】
請求項3に記載した導電性部材は、請求項1又は請求項2に記載の導電性部材であって、前記熱可塑性樹脂に親和性を有するグラフトコポリマーを溶融混練したことを特徴とする。
【0032】
請求項4に記載した発明の特徴部分は、前記導電性部材に係る熱可塑性樹脂に、主鎖にポリカーボネート樹脂を有し且つ側鎖にアクリロニトリル-スチレン-グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマーを溶融混練させたことである。
【0033】
請求項5に記載した導電性部材は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の導電性部材であって、前記像担持体を帯電させることを特徴とする。
【0034】
請求項6に記載したプロセスカートリッジは、請求項5に記載の導電性部材を有することを特徴とする。
【0035】
請求項7に記載した画像形成装置は、請求項6に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
よって、請求項1に記載した発明に係る導電性部材では、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、この電気抵抗調整層の両端部に形成されるとともにこの電気抵抗調整層と異なる材質の間隙保持部材とを備え、この間隙保持部材によって前記電気抵抗調整層と像担持体との間を一定の間隙に保持する導電性部材であって、前記電気抵抗調整層は、少なくともポリアミドエラストマーとポリオレフィンブロックポリマーとを含有する熱可塑性樹脂と、過塩素酸塩類から選択される少なくとも1種及び含フッ素有機アニオン塩類を含有することにより、導電性部材の放電余裕度が向上して、低温低湿環境において、不均一な放電による、画像不良を防止することができる。また、通電での電解質塩の分極による、導電性低下が小さいため、導電性部材が長期にわたって使用されても、前述の不均一な放電の発生を防止することができる。
【0037】
請求項2に記載した発明に係る導電性部材では、前記含フッ素有機アニオン塩は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムとトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムとのうちから選ばれた少なくとも1種以上の塩という、導電性の高いリチウム塩を用いることでより高い放電余裕度を得ることが可能となる。
【0038】
請求項3に記載した発明に係る導電性部材では、熱可塑性樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(A)に親和性を有するグラフトコポリマーとを溶融混練することで、緻密な分散状態を作り出すことができるので、導電性が向上し不均一な放電による画像不良を防止することができる。
【0039】
請求項4に記載した発明に係る導電性部材では、前記グラフトコポリマーが、主鎖にポリカーボネート樹脂を有して側鎖にアクリルニトリル-スチレン-グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマーであり、このグラフトコポリマーを相溶化剤として作用させることで、溶解混練時の加熱により熱可塑性樹脂(A)と強固に結合させ、分散状態を均一化し、導電性が向上する。
【0040】
請求項5に記載した発明に係る導電性部材は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の導電性部材を近接帯電方式用の帯電部材として用いることで、長期間に渡って優れた画像品質を得ることができる。
【0041】
請求項6に記載した発明に係るプロセスカードリッジは、請求項5に記載の帯電部材を用いることで、長期間に渡って優れた画像品質を得ることができるプロセスカードリッジとすることができる。
【0042】
請求項7に記載した発明に係る画像形成装置は、請求項6に記載のプロセスカートリッジを用いることで、長期間に渡って優れた画像品質がえられる近接帯電方式の画像形成装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0044】
図2は本実施形態に係る画像形成装置の概略図である。図3は本実施形態に係る画像形成装置における画像形成部の概略図である。図4は本実施形態に係る帯電装置及びこの帯電装置を用いたプロセスカートリッジの概略図である。図5は本実施形態に係る帯電ローラの配置を示す図である。
【0045】
画像形成装置1は、表面に感光層を有するドラム状であってイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応する分の個数分の像担持体(感光体)61と、各像担持体61の周面をほぼ一様に帯電する帯電装置100と、帯電された像担持体61にレーザ光で露光して静電潜像を形成する露光装置70と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像剤をそれぞれ収容し、像担持体61上の静電潜像に対応するトナー像を形成する4つの現像装置63と、像担持体61上のトナー像を転写する4つの1次転写装置62と、像担持体61上のトナー像が転写されるベルト状の中間転写体50と、中間転写体50のトナー像を記録媒体(記録紙)上に転写する2次転写装置51と、中間転写体50のトナー像が転写される記録媒体上のトナー像を定着させる定着装置80と、さらに、各像担持体61上に転写後残留するトナーをそれぞれ除去する4つのクリーニング装置64とを備える。
【0046】
記録紙は、記録紙を収納する給紙カセット21…のひとつから、1枚ずつ搬送経路を搬送ローラでレジストローラ23まで搬送され、ここで、像担持体61上のトナー像と同期を計って転写位置に搬送される。
【0047】
画像形成装置1の露光装置70は、帯電装置100により帯電された像担持体61に光を照射して、光導電性を有する像担持体61上に静電潜像を形成する。光Lは、蛍光灯、ハロゲンランプ等のランプ、LED、LD等の半導体素子によるレーザ光線等であっても良い。ここでは、図示しない画像処理部からの信号により像担持体61の回転速度に同期して照射される場合は、LDの素子を用いる。
【0048】
現像装置63は、現像剤担持体を有し、現像装置63内に貯蔵されたトナーを供給ローラで攪拌部に搬送して、キャリアを含む現像剤と混合・攪拌し、像担持体61に対向する現像領域に搬送し、このときに、トナーは正又は負極性に帯電され、このトナーが像担持体61の静電潜像に転移して現像される。現像剤は、磁性又は非磁性の一成分現像剤又はこれらを併せて使用するものであっても良いし、湿式の現像液を用いるものであっても良い。
【0049】
1次転写装置62は、像担持体61上の現像されたトナー像を中間転写体50の裏側からトナーの極性と反対の極性の電場を形成して、中間転写体50に転写する。1次転写装置62は、コロトロン、スコロトロンのコロナ転写器、転写ローラ、転写ブラシのいずれの転写装置であっても良い。
【0050】
その後、給紙装置22から搬送されてくる記録媒体と同期させて、再度2次転写装置51による転写で記録媒体上にトナー像を転写する。ここで、最初の転写が中間転写体50ではなく、記録媒体に直接転写する方式であっても良い。
【0051】
定着装置80は、記録媒体上のトナー像を、加熱及び/又は加圧して記録媒体上にトナー像を固定して定着させる。ここでは、1対の加圧・定着ローラの間を通過させ、このときに熱・圧力をかけて、トナーの結着樹脂を溶融しながら定着させる。定着装置80は、ローラ状ではなく、ベルト状であっても良いし、ハロゲンランプ等で熱照射により定着させるものであっても良い。
【0052】
像担持体61のクリーニング装置64は、転写されずに像担持体61上に残留したトナーをクリーニングして除去し、次の画像形成を可能にする。クリーニング装置64は、ウレタン等のゴムによるブレード、ポリエステル等の繊維によるファーブラシ等のいずれの方式であっても良い。
【0053】
以下、この発明の画像形成装置1の動作について説明する。
【0054】
読み取り部30では、原稿搬送部36の原稿台上に原稿をセットするか、又、原稿搬送部36を開いてコンタクトガラス31上に原稿をセットし、原稿搬送部36を閉じて原稿を押さえる。そして、不図示のスタートスイッチを押すと、原稿搬送部36に原稿がセットされている場合にはその原稿がコンタクトガラス31上へと搬送した後、コンタクトガラス31上に原稿がセットされた場合には直ちに、第1読み取り走行体及び第2読み取り走行体32、33が走行する。
【0055】
そして、第1読み取り走行体32で光源から光を発光するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2読み取り走行体33に向け、第2読み取り走行体33のミラーで反射して結像レンズ34を通して読取りセンサであるCCD35に受光させて画像情報を読み取る。読み取った画像情報を制御部に送る。制御部は、読み取り部30から受け取った画像情報に基づき、画像形成部60の露光装置70内に配設された図示しないLD又はLED等を制御して像担持体61に向けて、書き込みのレーザ光Lを照射させる。この照射により、像担持体61の表面には静電潜像が形成される。
【0056】
給紙部20は、多段に備える給紙カセット21から給紙ローラにより記録媒体を繰り出し、繰り出した記録媒体を分離ローラで分離して給紙路に送り出し、画像形成部60の給紙路に記録媒体を搬送ローラで搬送する。この給紙部20以外に、手差し給紙も可能となっており、手差しのための手差しトレイ、手差しトレイ上の記録媒体を手差し給紙路に向けて一枚ずつ分離する分離ローラも装置側面に備えている。レジストローラ23は、それぞれ給紙カセット21に載置されている記録媒体を1枚だけ排出させ、中間転写体50と2次転写装置51との間に位置する2次転写部に送る。画像形成部60では、読み取り部30から画像情報を受け取ると、上述のようなレーザ書き込みや、現像プロセスを実施させて像担持体61上に潜像を形成させる。
【0057】
現像装置63内の現像剤は、図示しない磁極により汲み上げて保持され、現像剤担持体上に磁気ブラシを形成する。さらに、現像剤担持体に印加する現像バイアス電圧により像担持体61に転移して、その像担持体61上の静電潜像を可視化して、トナー像を形成する。現像バイアス電圧は、交流電圧と直流電圧を重畳させている。次に、トナー像に応じたサイズの記録媒体を給紙させるべく、給紙部20の給紙ローラのうちの1つを作動させる。また、これに伴なって、駆動モータで支持ローラの1つを回転駆動して他の2つの支持ローラを従動回転し、中間転写体50を回転搬送する。同時に、個々の画像形成ユニットでその像担持体61を回転して像担持体61上にそれぞれ、ブラック・イエロー・マゼンタ・シアンの単色画像を形成する。そして、中間転写体50の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体50上に合成トナー像を形成する。
【0058】
一方、給紙部20の給紙ローラの1つを選択回転し、給紙カセット21の1つから記録媒体を繰り出し、分離ローラで1枚ずつ分離して給紙路に入れ、搬送ローラで画像形成装置1の画像形成部60内の給紙路に導き、この記録媒体をレジストローラ23に突き当てて止める。そして、中間転写体50上の合成トナー像にタイミングを合わせてレジストローラ23を回転し、中間転写体50と2次転写装置51との当接部である2次転写部に記録媒体を送り込み、この2次転写部に形成されている2次転写バイアスや当接圧力などの影響によってトナー像を2次転写して記録媒体上にトナー像を記録する。ここで、2次転写バイアスは、直流であることが好ましい。画像転写後の記録媒体は、2次転写装置の搬送ベルトで定着装置80へと送り込み、定着装置80で加圧ローラによる加圧力と熱の付与によりトナー像を定着させた後、排出ローラ41で排紙トレイ40上に排出する。
【0059】
ここで、本発明の導電性部材が帯電部材として用いられる場合について、帯電装置100で詳細に説明する。
【0060】
図4は、本発明の帯電装置100及び、プロセスカートリッジの構成を示す概略図である。プロセスカートリッジとは、少なくとも、像担持体61と帯電装置100、クリーニング装置64を含むものであり、図4の様に、現像装置63が含まれる場合もある。プロセスカートリッジは、それ自体が一体で画像形成装置1に着脱自由なものである。
【0061】
図3に基づいて説明すると、像担持体61の表面は画像形成領域が非接触で配置された帯電部材101により一様に帯電され、画像(潜像)形成後に現像によって可視化され、トナー像が記録媒体に転写される。記録媒体に転写されずに像担持体61上に残ったトナーは、補助クリーニング部材64d(図4参照)によって回収される。その後、像担持体61の表面へのトナー及び、トナー構成材料の付着を防止するために、固体潤滑剤64aを塗布部材64bで像担持体61上に一様に塗布し滑剤層を形成する。その後、クリーニング部材64cで補助クリーニング部材64dで回収しきれなかったトナーを回収し、排トナー回収部へ搬送する。
【0062】
補助クリーニング部材64dは、ローラ形状、ブラシ形状があり、固体潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類、ポリテトラフルオロエチレン等、像担持体61上の摩擦係数を低減して、非粘着性を付与できるものであれば良い。クリーニング部材は、シリコン、ウレタン等のゴムによるブレード、ポリエステル等の繊維によるファーブラシ等が挙げられる。
【0063】
帯電装置100は、帯電部材101の汚染を除去するためのクリーニング部材102を備える。クリーニング部材102の形状は、ローラ状、パッド形状でもよいが、本発明ではローラ形状とした。クリーニング部材102は、帯電装置100の図示しないハウジングに設けられる軸受107に嵌合され(図5参照)、回転可能に軸支される。このクリーニング部材102は、帯電部材101に当接して、外周面をクリーニングする。帯電部材101の表面にトナー、紙粉、部材の破損物等の異物が付着すると、電界が異物部分に集中するために優先的に放電が生ずる異常放電を起こす。逆に、電気的絶縁性の異物が広い範囲に付着すると、その部分では放電が生じないために、像担持体61に帯電斑が生ずる。このため、帯電装置100には帯電部材101の表面をクリーニングするクリーニング部材102を設けることが好ましい。クリーニング部材102としては、ポリエステル等の繊維によるブラシ、メラミン樹脂等の多孔質(スポンジ)のようなものを用いることができる。クリーニング部材102は、帯電部材101に連れ回り、線速差を持って回転、離間して間欠等の形式で回転させても良い。
【0064】
また、帯電装置100は、帯電部材101に電圧を印加する電源を備える。電圧としては、直流電圧だけでも良いが、直流電圧と交流電圧を重畳した電圧が好ましい。帯電部材101の層構成が不均一な部分がある場合には、直流電圧のみを印加すると像担持体61の表面電位が不均一になることがある。重畳した電圧では、帯電部材101表面が等電位となり、放電が安定して像担持体61を均一に帯電させることができる。重畳する電圧における交流電圧は、ピ−ク間電圧を像担持体61の帯電開始電圧の2倍以上にすることが好ましい。帯電開始電圧とは、帯電部材101に直流のみを印加した場合に像担持体61が帯電され始めるときの電圧の絶対値である。これにより、像担持体61から帯電部材101への逆放電が生じ、そのならし効果で像担持体61をより安定した状態で均一に帯電させることができる。また、交流電圧の周波数は像担持体61の周速度(プロセススピード)の7倍以上であることが望ましい。7倍以上の周波数にすることにより、モアレ画像が(目視)認識できなくなる。この発明の実施例では、補助クリーニング部材64dはブラシローラ、滑剤はステアリン酸亜鉛をブロック状に形成し、塗布部材であるブラシローラに、バネ等の加圧部材で加圧することにより、塗布ローラで固体潤滑剤ブロックから削り取った固体潤滑剤を像担持体61へ塗布するような構成である。クリーニング部材102はウレタンブレードを用いカウンター方式とした。また、帯電部材101のクリーニング部材102は、メラミン樹脂のスポンジローラを用いて、帯電部材101と連れ回りで回転させる方式とすることにより、帯電部材101の表面の汚れを良好にクリーニングできる。
【0065】
図5は、この発明の導電性部材である帯電部材101と、像担持体61の感光層領域及び、画像領域、非画像領域の位置関係を示す概略図である。
【0066】
帯電装置100は、像担持体61に対向して配設される帯電部材101と、帯電部材101を清掃するクリーニング部材102と、帯電部材101に電圧を印加する不図示の電源と、帯電部材101を像担持体61に加圧して接触させる不図示の加圧スプリングとを少なくとも備える。
【0067】
帯電部材101は、図4及び図5に示すように、像担持体61に微少間隙Gを持たせて対向して配設される。帯電部材101と像担持体61の間隙Gは、間隙保持部材103を帯電部材101の非画像形成領域に当接させて形成する。感光層領域に間隙保持部材103を当接させることにより、感光層の塗布厚がばらついても、間隙のばらつきを防止することができる。
【0068】
帯電部材101は、図5に示すように、導電性支持体(芯軸)106と、この導電性支持体106上に形成された電気抵抗調整層104と、この電気抵抗調整層104の両端部に設けた間隙保持部材103とを備えている。そして、電気抵抗調整層104上には、トナー及びトナー添加剤が付着しにくいように、表面層105が形成されている。
【0069】
帯電部材101の形状は、特に限定されず、ベルト状、ブレード(板)状、半円柱状で固定されて配設されていても良い。また、帯電部材101の形状が円柱状で、両端をギア又は軸受で回転可能に支持されていても良い。このように、帯電部材101は、像担持体61への最近接部から、像担持体61移動方向の上下流に漸次離間する曲面で形成されていると、像担持体61をより均一に帯電させることができる。像担持体61に対向する帯電部材101が、先鋭な部分があると、その部分の電位が高くなるために優先的に放電が開始され、像担持体61の均一な帯電が困難になる。従って、円柱状の形状で、曲面を有することで均一な像担持体61の帯電が可能になる。
【0070】
また、帯電部材101の放電している表面は強いストレスを受ける。放電が常に同じ面で発生するので、その劣化が促進され、さらに、削り落ちることがある。そのために、帯電部材101の全面を放電する面として使用できるのであれば、回転させることで、早期の劣化を防止することで、長期にわたって使用することができる。
【0071】
帯電部材101と像担持体61との間隙Gは、間隙保持部材103により100μm以下、特に、5〜70μm程度の範囲にする。これにより、帯電装置100の作動時における異常画像の形成を抑えることができる。間隙Gが、100μm以上では、像担持体61に到達するまでの距離も長くなることで、パッシェンの法則の放電開始電圧が大きくなり、さらに、像担持体61までの放電空間が大きくなることで、像担持体61を所定の帯電をさせるためには放電による放電生成物が多量に必要となり、これが画像形成後も放電空間に多量に残留し、像担持体61に付着して、像担持体61の経時劣化を促進する原因になる。また、この間隙Gが小さいと、像担持体61までの到達距離も短く、放電エネルギーも小さくても像担持体61を帯電させることができる。しかし、帯電部材101と像担持体61により形成される空間が狭くなり、空気の流が悪くなってしまう。そのために、放電空間で形成された放電生成物はこの空間内に滞留するために、間隙Gが大きい場合と同様に、画像形成後も放電空間に多量に残留し、像担持体61に付着して、像担持体61の経時劣化を促進する原因になる。従って、放電エネルギーを小さくして放電生成物の生成を少なくし、かつ、空気が滞留しない程度の空間を形成することが好ましい。そのために、間隙Gは、100μm以下であって、5〜70μmの範囲にすることが好ましい。これにより、ストリーマ放電の発生を防止し、放電生成物の生成を少なくして像担持体61に堆積する量を少なくして、斑点状の画像斑・像流れを防止することができる。
【0072】
ここで、像担持体61上に現像後に残留するトナーは、像担持体61に対向して設けられるクリーニング装置64によりクリーニングされるが、完全に除去するのは困難であり、極わずかのトナーがクリーニング装置を通過し、帯電装置100へと搬送されてくる。このときに、トナーの粒径が間隙Gより大きいと、トナーは回転する像担持体61や帯電部材101により摺擦されて熱を帯び、帯電部材101に融着することがある。このトナーが融着した部分は、像担持体61に近くなるために優先的に放電が生ずる異常放電を起こす。従って、間隙Gは、画像形成装置1に用いられるトナーの最大粒径よりも大きいことが好ましい。
【0073】
また、帯電部材101は、図4、図5に示すように、帯電装置100の図示しないハウジングの側板に設けられる軸受107に嵌合され、軸受107には従動しない摩擦係数の低い樹脂による軸受107に設ける圧縮バネ108により像担持体61の表面61aの方向に押圧されている。これにより、機械的振動、芯金の偏位があっても一定の間隙Gを形成することができる。押圧する荷重は、4〜25Nにする。好ましくは、6〜15Nにする。帯電部材101は、軸受107で固定されていても、回転するときの振動、帯電部材101の偏心、その表面の凹凸により間隙Gの大きさが変動し、間隙Gが適正な範囲からはずれる場合があり、このために、経時的には像担持体61の劣化を促進することになる。ここで、荷重とは、間隙保持部材103を通して像担持体61に加わるすべての荷重を意味する。これは、帯電部材101の両端に設けられる圧縮バネ108の力、帯電部材101とクリーニング部材102の自重等により調整できる。荷重が小さいと、帯電部材101の回転時による変動、駆動するギア等の衝撃力による跳ね上がりを抑えることができない。荷重が大きいと、帯電部材101と嵌合する軸受107との摩擦が大きくなり、経時的な摩耗量を大きくして変動を促進することになる。従って、荷重を4〜25N、好ましくは、6〜15Nの範囲にすることにより、間隙Gを適正な範囲にして、放電生成物の生成を少なくして像担持体61に堆積する量を少なくして像担持体61の寿命を延ばし、かつ、斑点状の異常画像・画像流を防止することができる。
【0074】
間隙保持部材103は、間隙保持部材103の一部が電気抵抗調整層104と高低差を有している。間隙Gを形成する方法としては、電気抵抗調整層104と間隙保持部材103を切削、研削等の除去加工により同時加工することにより形成することができる。間隙保持部材103と抵抗調整層104を同時加工することにより、間隙Gを高精度に形成することが可能となる。
【0075】
間隙保持部材103の電気抵抗調整層104と隣接する部分の高さを、電気抵抗調整層104の高さと同一、もしくは低く形成することで、間隙保持部材103と像担持体61との接触幅が低減され、導電性部材101と像担持体61との間隙Gを高精度にすることができる。このようにすることで、間隙保持部材103の電気抵抗調整層104側の端部の外表面が像担持体61に当接することを防止することができ、この端部を介して隣接する電気抵抗調整層104が像担持体61に接触してリーク電流が発生してしまうことを防止することが可能となる。また、間隙保持部材103の電気抵抗調整層104側の端部を低く加工することによって、この部分を、除去加工を行う際の切削刃等の逃げ代(逃げ加工)とすることができる。なお、逃げ代(逃げ加工)の形状は、間隙保持部材103の端部の外表面が像担持体61に当接しないような形状であるならばどのような形状であっても良い。更に、表面層105をコーティングする際のマスキングを電気抵抗調整層104と間隙保持部材103の境界に施すことは、ばらつきを考慮すると制御が難しく、段差を形成する際に、電気抵抗調整層104と同一もしくは、低く形成された間隙保持部材103の端部まで表面層105を形成することで、電気抵抗調整層104上に確実に表面層105を形成することができる。
【0076】
間隙保持部材103の必要な特性としては、感光体61との間隙を環境及び、長期(経時)に渡って安定して形成することであり、そのためには、吸湿性、耐摩耗性が小さい材料が望ましい。また、トナー及び、トナー添加剤が付着しにくいことや、感光体61と当接し、摺動するために、感光体61を摩耗させないということも重要であり、種々の条件に応じて、適宜選択されるものである。
【0077】
具体的には、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂、ポリカーボネート(PC)、ウレタン、フッ素(PTFE)等が挙げられる。特に、間隙保持部材103を確実に固定するためには、接着剤を塗布して接着することもできる。また、間隙保持部材103は絶縁性材料が好ましく、体積固有抵抗で1013Ωcm以上であることが好ましい。
【0078】
上記のように絶縁性が必要である理由は、感光体61とのリーク電流の発生を無くすためである。間隙保持部材103は、成型加工により成形されたものである。
【0079】
電気抵抗調整層104はイオン導電による導電機構を得るために、分子中に少なくともポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーを含有する熱可塑性樹脂(A)と、過塩素酸塩及び含フッ素有機アニオン塩を含有する樹脂材料より構成される。
【0080】
電気抵抗調整層104にイオン導電性が必要な理由は、一般的にカーボンブラックのような電子導電系の導電剤を用いた場合、電荷がカーボンブラックを通して像担持体61へ放電するために、カーボンブラックの分散状態に起因した微小な放電ムラが生じやすく、高画質化の妨げとなる。特に高電圧印加時はこの現象が顕著となる。
【0081】
イオン導電材料としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩のような低分子量の塩があるが、通電のため、分極してブリードアウトしやすい。そこで、高分子型イオン導電材料として、エーテル基を含む固体状のポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーが用いられる。
【0082】
分子中にエーテル基を有することにより、エーテル結合に含まれる酸素原子等により塩が安定化され、高い導電性を得ることが可能となる。この構成ではマトリクスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化されるので、導電性顔料を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う導電性のバラツキが生じない。また高分子材料であるため、ブリードアウトが生じ難い。高分子型イオン導電材料としては、エーテル基を有する液状のポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドのようなポリエーテルポリオール類も挙げられるが、高分子型イオン導電材料が液状の場合、熱可塑性樹脂中に高分子型イオン導電材料を均一に分散させることができないため、固体状のポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーを用いることが必要となる。
【0083】
ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーは、一般に親水性、疎水性グレードに大別され、特性が大きく異なる。そのため、目的の特性を得るために、複数のグレードをブレンドすることも可能である。
【0084】
ただし、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーを含む熱可塑性樹脂材料のみでは、導電性部材として使用するための導電性を得ることができないため、電解質塩を併用することにより、導電性を向上させることができる。
【0085】
電解質塩としては、過塩素酸塩が最も一般的であり、その他に有機ホスホニウム塩や含フッ素有機アニオン塩等も用いられている。
【0086】
しかしながら、一般的にイオン導電による導電機構では、周辺雰囲気中の水素イオン、水酸化物イオンの関与する反応が導電経路の一部を担っている。そのため、空気中の水分量が導電性に与える影響が高く、導電性の環境変動が非常に大きい。具体的には、低温低湿環鏡で導電性の低下が顕著となるので、電気抵抗調整層104中のイオン導電材料、電解質塩の分散状態が導電性の差として、現われるようになる。
【0087】
その結果、帯電ローラ12から感光体61への放電が不均一となり、画像不良となる。具体的には、アナログハーフトーン画像を出力した場合に、白ポチとなって現れる。この低温低湿環境での不均一な放電の発生を防止するためには、電気抵抗調整層104の導電性を高め、放電余裕度を向上させることが必要であるが、過塩素酸塩や有機ホスホニウム塩だけでは導電性の付与が不十分である。
【0088】
そのため、これまでは不均一な放電の発生を避けるためには、印加電圧を過大に高めることにより、放電電流を上げて不均一な放電の発生を防止することが行なわれてきたが、高電圧を印加することにより、電気抵抗調整層104の通電劣化によるクラック発生や、増加した放電生成物が導電性部材に付着したことに起因する画像不良の発生等、帯電ローラ耐久性低下の要因となっていた。
【0089】
そこで、電気抵抗調整層104の処方検討を行なってきた結果、過塩素酸塩と含フッ素有機アニオン塩を添加することにより、低温低湿環境での放電余裕度が向上して、不均一な放電が発生しないことを見出した。
【0090】
また、過塩素酸塩単独の場合は、通電により電解質塩が分極しやすく、それによる電気抵抗調整層104の導電性低下が顕著である。そのため、経時で不均一な放電が発生しやすくなり、長期にわたって使用した場合には、低温低湿以外の環境においても、前述の不均一な放電が発生することが分かった。
【0091】
それに対して、過塩素酸塩と含フッ素有機アニオン塩を添加した場合は、通電による導電性低下が小さいため、長期にわたって使用されても、高い放電余裕度が維持され、不均一な放電が発生しないことを見出した。
【0092】
電解質塩としては、カチオンのイオン半径が小さいほど、イオンが移動し易くなり、電気抵抗調整層104の導電性が向上する。その点で、過塩素酸塩と含フッ素有機アニオン塩が適しており、カチオンの大きい有機ホスホニウム塩を用いることは出来ない。複数の系列の塩を添加した場合、過塩素酸塩と含フッ素有機アニオン塩では、ポリマー組成物中に分散された場合にそれぞれの導電経路に対して障害とはならないため、単独で添加した場合と比較して、塩の全配合量が同じであっても、複数の系列を添加した方が高い導電性が得られることを見出した。そのため、それぞれの塩は低添加量でも十分な効果を発揮する。
【0093】
過塩素酸塩としては、一般的に用いられているものであれば、使用することは可能であるが、導電性を考慮すると、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩から選ばれた塩であることが望ましい。その中でも、特に過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0094】
含フッ素有機アニオン塩としては、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が望ましい。上記陰イオンを有した塩は、フルオロ基(−F)およびスルホニル基(−SO2−)による強い電子吸引効果によって電荷が非局在化するため、陰イオンが安定なポリマー組成物中で高い解離度を示し、高いイオン導電性を実現できる。中でも、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドのアルカリ金属塩、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドのアルカリ金属塩およびフルオロアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩等は抵抗値の低下を容易に達成可能であり、望ましい。
【0095】
具体的には、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(Li(CF3SO2)N)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム(K(CFSO2N)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム(Na(CFSO2N)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウム(Li(CFSO2)C)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウム(K(CFSO2)C)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドナトリウム(Na(CFSO2)C)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(Li(CFSO2))、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(K(CFSO))、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(Na(CFSO))が挙げられる。特に、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、およびトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムの導電度の高いリチウム塩が好ましい。電気抵抗調整層104に上記したような導電性の高いリチウム塩を用いることで、電気抵抗調整層104がより高い放電余裕度を得ることが可能となる。
【0096】
過塩素酸塩、含フッ素有機アニオン塩は、高分子型イオン導電材料に添加して混練することにより、所定の割合に配合することが可能であり、それぞれ1種以上の電解質塩をブレンドして添加することもできる。
【0097】
また、過塩素酸塩を含有する高分子型イオン導電材料としては、例えば、チバスペシャルティケミカルズ製の「IRGASTAT P18」として、含フッ素有機アニオン塩を含有する高分子型イオン導電材料として、例えば、三光化学工業(株)の「サンコノール」シリーズとして入手することが可能である。塩の配合量としては、高分子型イオン導電材料中に0.01〜20重量%の割合で配合されていることが望ましい。配合量が0.01重量%よりも低い場合は、導電性が不足してしまい、20重量%よりも高い場合は、樹脂組成物中に均一に分散させることが困難となる。電気抵抗調整層104の体積固有抵抗は10Ωcm〜10Ωcmであることが望ましい。10Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、10Ωcmよりも体積固有抵抗が低いと、感光体全体への電圧集中によるリークが生じてしまう。
【0098】
また、本発明で用いられるような導電性部材は、部品の高精度化を達成するためは、切削、研削のような、機械加工が必要となる。ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーは柔らかく、機械加工しにくいという課題がある。
【0099】
そこで、必要に応じて、これらの樹脂より硬度が高い、他の熱可塑性樹脂(B)とブレンドすることが可能である。硬度が高くなることにより、機械加工性が向上する。
【0100】
高硬度の熱可塑性樹脂(B)は特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール等のエンジニアリングプラスチック等であれぱ、成形加工が容易であり好ましい。
【0101】
配合量については、電気抵抗調整層104の導電性を損なわない範囲であれば、目的の機械加工性に応じて設定することが可能である。
【0102】
電気抵抗調整層104の導電性を向上させる際には、導電樹脂材料、電解質塩の選定と共に、分散状態の制御も重要となる。電解質塩の分散状態が粗い場合には、低温低湿環境で分散状態に起因した不均一な放電が発生しやすく、画像不良となってしまう。そのため、分散状態の徽密化を目的として、相溶化剤を添加することが望ましい。
【0103】
そのような相溶化剤としては、前述のポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーを含有する熱可塑性樹脂(A)に親和性を有するグラフトコポリマー(C)が挙げられる。具体的には、主鎖にポリカーボネート樹脂を、側鎖にアクリロニトリルースチレンーグリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマーを用いる。このグラフトコポリマーは、側鎖に含まれるアクリロニトリルースチレンーグリシジルメタクリレート共重合体が、アクリロニトリル成分及びスチレン成分と反応基であるグリシジルメタクリレート成分から成る。
【0104】
反応基のグリシジルメタクリレートは成分を溶融混練する際の加熱により、エポキシ基が熱可塑性樹脂(A)のエステル基やアミノ基と反応し、熱可塑性樹脂(A)と強固に化学的結合をするので、このグラフトコポリマーを添加することで、グラフトコポリマーを相溶化剤として作用させて、電解質塩の分散状態を均一かつ徽密化することができる。
【0105】
それにより、電解質塩の分散不良に伴う不均一な放電の発生を防止することができる。グラフトコポリマーの量は熱可塑性樹脂(A)に対して1〜15重量%に設定することで分散状態を徽密化させることができる。
【0106】
また、熱可塑性樹脂(A)を高硬度の熱可塑性樹脂(B)とブレンドした場合にも、このグラフトコポリマー(C)が相溶化剤として機能を果たす。主鎖のポリカーボネート樹脂は有極性基、ジオキシ基の鎖をもつ分子構造のため、分子間引力が非常に強い。
【0107】
このため、力学的強度・クリープ特性などに優れ、特に衝撃強度は他プラスチックと比較して卓越している。また比較的低吸水であるため、吸水変動に伴う体積変動が少ない。これらの特性により、グラフトコポリマー(C)の主鎖としてポリカーボネート樹脂を使用した系では、使用時の機械的・電気的ストレス・経時や環境での体積変動によるクラックが生じ難い。
【0108】
更に、側鎖のアクリロニトリル成分及びスチレン成分は、熱可塑性樹脂(B)との相溶性が良好である。そのため、グラフトコポリマー(C)は、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)間の親和性が低い場合でも、相溶化剤として機能し、熱可塑性樹脂(A)、 熱可塑性樹脂(B)の分散状態を均一かつ織密化する。それにより、熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)の分散不良に伴うウェルド部(樹脂同士の結合部分)の導電ムラや、使用時の電気的・機械的ストレスや経時・環境での体積変動により、電気抵抗調整層104のウェルド部分に発生するクラックを抑制することができる。その結果、主鎖の効果と合わせて強度的に優れた混練系の樹脂組成物を形成することができる。
【0109】
樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。電気抵抗調整層104としての導電性支持体106上への形成は、押出成形や射出成形等の手段で導電性支持体106に上記半導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。
【0110】
導電性支持体106上に電気抵抗調整層104のみを形成して導電性部材を構成すると、電気抵抗調整層104にトナー及び、トナーの添加剤等が固着して性能低下する場合がある。このような不具合は、電気抵抗調整層104に表面層105を形成することで、防止することができる。表面層105の抵抗値は電気抵抗調整層104のそれよりも大きくなるように形成され、それによって感光体欠陥部への電圧集中、異常放電(リーク)を回避することができる。
ただし、表面層105の抵抗値を高くしすぎると帯電能力や転写能力が不足してしまうため、表面層105の体積固有抵抗としては、電気抵抗調整層104の体積固有抵抗の1000倍以下にすることが好ましい。
【0111】
表面層105を形成する材料としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が非粘着性に優れ、トナー固着防止の面で好ましい。また表面層105の電気抵抗調整層104上への形成は、上記表面層105の構成材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の種々のコ一ティング方法で行う。膜厚については、10〜30μm程度が望ましい。
【0112】
表面層105の材料は、1液性、2液性どちらも使用可能であるが、硬化剤を併用する2液性塗料にすることより、耐環境性、非粘着性、離型性を高めることが出来る。2液性塗料の場合、塗膜を加熱することにより、樹脂を架橋・硬化させる方法が一般的である。しかしながら、電気抵抗調整層104は熱可塑性樹脂のため、高い温度で加熱することができない。2液性塗料としては、分子中に水酸基を有する主剤及び、水酸基と架橋反応を起こす、イソシァネート系樹脂を用いることことが有効である。
【0113】
イソシァネート系樹脂を用いることにより、100℃以下の比較的低温で架橋・硬化反応が起こる。トナーの非粘着性から検討を進めた結果、シリコーン系樹脂でトナーの非粘着性が高い樹脂であることを確認し、特に、分子中にアクリル骨格を有するアクリルシリコーン樹脂が良好である。
【0114】
導電性部材は電気特性(抵抗値)が重要であるため、表面層105を導電性にする必要がある。導電性の形成方法は、樹脂材料中に導電剤を分散することにより可能である。導電性としては、特に制約を受けるものではなく、例えば、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、 FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用力ーボン、酸化処理等を施したカラー用カーボン、熱分解カーボン、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及び、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられる。また、導電性付与材として、イオン導電性物質もあり、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質、更に、エチルトリフエニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩、変性脂肪酸ジメチルアンモニウムエトサルファート、ステアリン酸アンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート等の有機イオン性導電性物質がある。
【0115】
以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づき説明する。
【0116】
<実施例1>
ステンレスからなる導電性支持体である芯軸106(外径8mm)に、下記処方1を220℃で溶融混練した樹脂組成物(体積固有抵抗:2×lO8Ωcm)を、射出成形により被覆して電気抵抗調整層104を形成した。
【0117】
処方1
A-1:IRGASTAT P18(チバスペシャルティケミカルズ製)30重量部
A-2:TPAE一H151(富士化成工業製)30重量部
(以上、ポリアミドエラストマー、A―1は過塩素酸塩類含有)
B:ABS樹脂(デンカABS GR-0500、電気化学工業製)40重量部
A-1、A-2、 Bの混合物100重量部に対して、
C:ポリカーボネートーグリシジルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体
(モディパーC L440-G、日本油脂製)4.5重量部
(グラフトコポリマー)
D:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS、森田化学工業製)3重量部(含フッ素有機アニオン塩類)
次いで、電気抵抗調整層104の両端部に、高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックHD HY540、日本ポリエチレン製)からなるリング状の間隙保持部材103を挿入し、芯軸106及び電気抵抗調整層104と接着した。
【0118】
次いで切削加工によって間隙保持部材103の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層104の外径を12.00mmに同時仕上げを行なった。
【0119】
次いで電気抵抗調整層104の表面に、アクリルシリコン樹脂(3000VH-P、川上塗料製)、イソシアネート系硬化剤、及びカーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×109Ω)により膜厚約10μmの表面層105を形成し、焼成工程を経て、導電性部材101を得た。
【0120】
<実施例2>
ステンレスからなる芯軸106(外径8mm)に、下記処方2を220℃で溶融混練した樹脂組成物(体積固有抵抗:2×109Ωcm)を、射出成形により被覆して電気抵抗調整層104を形成した。
【0121】
処方2
A-1:IRGASTAT Pl8(チバスペシャルティケミカルズ製)30重量部
A-2:TPAE-10HP(富士化成工業製)30重量部
(以上、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマー、A-1は過塩素酸塩類含有)
B:ABS樹脂(デンカABS GR-3000、電気化学工業製)40重量部
A-1、A-2、 Bの混合物100重量部に対して、
C:ポリカーボネートーグリシジルメタクリレートースチレンーアクリロニトリル共重合体
(モディパーCL440-G、E本油脂製)4.5重量部
(グラフトコポリマー)
D:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI、森田化学工業製)1重量部(含フッ素有機アニオン塩類)
以下、実施例1と同様の後工程を経て、導電性部材101を得た。
<実施例3>
ステンレスからなる芯軸106(外径8mm)に、下記処方3を230℃で溶融混練した樹脂組成物(体積固有抵抗:3×10Ωcm)を、射出成形により被覆して電気抵抗調整層104を形成した。
【0122】
処方3
A-1:サンコノールTBX-65(三光化学工業製)70重量部
(以上、ポリアミドエラストマー、A-1はトリフルオロメタンスルホン酸リチウム含有)
B:ポリカーボネート樹脂(ユーピロンH-4000、三菱エンジニアリングプラスチックス製)30重量部
A-1、Bの混合物100重量部に対して、
C:ポリカーボネートーグリシジルメタクリレートースチレンーアクリロニトリル共重合体
(モディパーCL.440-G、日本油脂製)4.5重量部
(グラフトコポリマー)
D:過塩素酸リチウム(三津和化学薬品製)3重量部
(過塩素酸塩類)
以下、実施例1と同様の後工程を経て、導電性部材101を得た。
【0123】
<実施例4>
ステンレスからなる芯軸106(外径8mm)に、下記処方4を220℃で溶融混練した樹脂組成物(体積固有抵抗:4×108Ωcm)を、射出成形により被覆して電気抵抗調整層104を形成した。
【0124】
処方4
A-1:IRGASTAT P18(チバスペシャルティケミカルズ製)30重量部
A-2:サンコノールTBX-310(三光化学工業製)30重量部
(以上、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマー、A-1は過塩素酸塩類含有、A-2はトリフルオロメタンスルホン酸リチウム含有)
B:ABS樹脂(デンカABS GR一0500、電気化学工業製)40重量部
A-1、A-2、 Bの混合物100重量部に対して、
C:ポリカーボネートーグリシジルメタクリレートースチレンーアクリロニトリル共重合体 (モディパーC L440-G、日本油脂製) 9重量部
(グラフトコポリマー)
以下、実施例1と同様の後工程を経て、導電性部材を得た。
【0125】
<実施例5>
ステンレスからなる芯軸106(外径8mm)に、下記処方5を220℃で溶融混練した樹脂組成物(体積固有抵抗:3×10Ωcm)を、射出成形により被覆して電気抵抗調整層104を形成した。
【0126】
処方5
A-1:ペバックスMV1041(アルケマ製)60重量部
(以上、ポリアミドエラストマー)
B:HI-PS樹脂(H450、東洋スチレン製)40重量部
A-1、Bの混合物100重量部に対して、
C:ポリカーボネートーグリシジルメタクリレートースチレンーアクリロニトリル共重合体
(モディパーC L440-G、日本油脂製)4.5重量部
(グラフトコポリマー)
D:過塩素酸リチウム(三津和化学薬品製)3重量部
(過塩素酸塩類)
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiBETI、キシダ化学製)1重量部
(含フッ素有機アニオン塩類)
以下、実施例1と同様の後工程を経て、導電性部材101を得た。
<比較例1>
ステンレスからなる芯軸(外径8mm)に、下記処方6を溶融混練を行わずに、射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成した。
【0127】
処方6
A-1:IRGASTAT P 18(チバスペシャルティケミカルズ製)60重量部
(以上、ポリアミドエラストマー、A-1は過塩素酸塩類含有)
B:ABS樹脂(デンカABS GR-3000、電気化学工業製)40重量部
以下、実施例1と同様の後工程を経て、導電性部材を得た。
【0128】
<比較例2>
ステンレスからなる芯軸(外径8mm)に、下記処方7を溶融混練を行わずに、射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成した。
【0129】
処方7
A-1:ペバックス5533(アルケマ製)60重量部
(以上、ポリアミドエラストマー、A-1は過塩素酸塩類含有)
B:ABS樹脂(デンカABS GR-0500、電気化学工業製)40重量部
A-1、Bの混合物100重量部に対して、
D:ETPP-1(日本化学工業製)3重量部
(有機ホスホニウム塩類)
以下、実施例1と同様の後工程を経て、導電性部材を得た。
【0130】
<比較例3>
ステンレスからなる芯軸(外径8mm)に、下記処方8を、まず70℃で加熱し、次いで減圧脱水させて得た樹脂組成物を、溶融混練を行わずに、射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成した。
【0131】
処方8
A-1:ポリエチレンオキシド(アデカポリエーテルP-400、アデカ製)20重量部(以上、ポリエーテルポリオール類)
B:ABS樹脂(テクノABS 170、テクノポリマー製)80重量部
A-1、Bの混合物100重量部に対して、
D:過塩素酸リチウム(三津和化学薬品製)2重量部
(過塩素酸塩類)
トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS、森田化学工業製)3重量部
(含フッ素有機アニオン塩類)
以下、実施例1と同様の後工程を経て、導電性部材を得た。
【0132】
<比較例4>
ステンレスからなる芯軸(外径8mm)に、下記処方8を、まず70℃で加熱し、次いで減圧脱水させて得た樹脂組成物を、溶融混練を行わずに、押出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成した。
【0133】
処方8
A-1:ポリプロピレンオキシド(エクセノール2020、旭硝子製)30重量部
(以上、ポリエーテルポリオール類)
B:ABS樹脂(テクノABS 110、テクノポリマー製)70重量部
A-1、Bの混合物100重量部に対して、
D:過塩素酸リチウム(三津和化学薬品製)3重量部
(過塩素酸塩類)
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI、森田化学工業製)1重量部(含フッ素有機アニオン塩類)
以下、実施例1と同様の後工程を経て、導電性部材を得た。
【0134】
表1に実施例および比較例の構成比較表を示す。
【0135】
【表1】

【0136】
<試験1>
実施例1〜5及び比較例1〜4の導電性部材101を低温低湿環境(10℃15%RH)に3 日間放置後、帯電ローラ101の抵抗測定を行なった。次に、図2に示した画像形成装置1を使用して、低温低湿環境(10℃15%RH)で画像評価を行った。帯電ローラ101に印加する電圧はDC=−600V、AC Vpp=2.2kV(周波数=2.2kHz)とし、不均一な放電による画像不良の有無を評価した。
【0137】
表2に評価結果を示す。
【0138】
【表2】

【0139】
実施例の帯電ローラ101では導電性が高く、低抵抗のため、良好な画像が得られたが、比較例の帯電ローラでは導電性が低く、高抵抗のため不均一な放電による画像不良が発生した。比較例2の帯電ローラは、非常に高抵抗のため、画像出力が出来なかった。
【0140】
<試験2>
次に、図2に示した画像形成装置1を改造した加速試験装置を用いて、(23℃、50%RH)の評価環境で帯電ローラの通紙無し状態での通電空回し試験を120時間(150,000枚の複写に相当)行なった。その後、低温低湿環境(10℃15%RH)で抵抗測定を行ない、通電前後での抵抗変化量を調べた。この際、帯電ローラに印加する電圧はDC=―700V、AC Vpp=2.7kV(周波数=3kHz)とした。次に、通電後のローラを(10℃15%RH)の評価環境で、試験1と同様の画像評価を行なった。
【0141】
試験結果を表3及び図6に示す。
【0142】
【表3】

【0143】
実施例のローラは、抵抗変動量が小さいため、通電後の画像評価でも良好な画像が得られたが、比較例のローラは抵抗変動量が大きく、導電性が低下しているため、画像不良が発生した。
【0144】
比較例2のローラは、非常に高抵抗のため、画像出力が出来なかった。
【0145】
本実施例と比較例とを比較すると、表2に示すように、低温低湿環境下においても、抵抗値で1.0×10以上の差があり、本発明の導電性部材の放電余裕度が高いことが判る。また、抵抗の変動量について比較すると、図6および表3に示すように、本発明の導電性部材の抵抗変動量が低いことが判る。つまり、本発明の画像形成装置1では、不均一な放電が発生することがなく、画像不良となることがない。
【0146】
また、本発明の画像形成装置1の導電性部材に、過塩素酸塩と含フッ素有機アニオン塩を添加したため、通電での電解質塩の分極による導電性部材の導電性低下が小さくなり、この導電性部材が長期に渡って使用されても、前述の不均一な放電の発生を防止することができる。
【0147】
また、上記の含フッ素有機アニオン塩に、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムとトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムとのうちから選ばれた少なくとも1種以上の塩という、導電性の高いリチウム塩を用いることにより、導電性部材が高い放電余裕度を得ることが可能となる。
【0148】
また、熱可塑性樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(A)に親和性を有するグラフトコポリマーとを溶融混練することで、緻密な分散状態を作り出すことができるので、導電性が向上し不均一な放電による画像不良を防止することができる。
【0149】
さらに、上記グラフトコポリマーが、主鎖にポリカーボネート樹脂を有して側鎖にアクリルニトリル-スチレン-グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマーであり、このグラフトコポリマーを相溶化剤として作用させることで、溶解混練時の加熱により熱可塑性樹脂(A)と強固に結合させ、分散状態を均一化し、導電性が向上する。
【0150】
そして、上記の導電性部材を近接帯電方式用の帯電部材として用いることで、長期間に渡って優れた画像品質を得ることができる。
【0151】
さらに、プロセスカードリッジに、この帯電部材を用いることで、長期間に渡って優れた画像品質を得ることができるプロセスカードリッジを得ることができる。
【0152】
そして、このプロセスカートリッジを画像形成装置1に用いることで、長期間に渡って優れた画像品質がえられる近接帯電方式の画像形成装置1を得ることができる。
【0153】
以上、本発明の導電性部材、この導電性部材が適用された帯電ローラ101、この帯電ローラ101を用いたプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置1について説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0154】
例えば、本発明の導電性部材は、帯電ローラ101として用いられるのみならず、通電される材料から構成されるものであれば適用できる。例えば、上述のように、感光体ドラム上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として、この導電性部材を適用することができる。
【0155】
加えて、その構成に関し、像担持体61と間隙Gを有して設けられて通電を受けて該像担持体61を帯電させる電気抵抗調整層104と、該電気抵抗調整層104を支持する導電性支持体106と、前記像担持体61と電気抵抗調整層104との間隙Gを一定に保持する間隙保持部材103と、を備えるものであれば、以上説明したものに限られず、その構成は適宜変更することができる。
【0156】
また、帯電ローラ101は、像担持体61と間隙Gを有して設けられて通電を受けて該像担持体61を帯電させる電気抵抗調整層104と、該電気抵抗調整層104を支持する導電性支持体106と、前記像担持体61と電気抵抗調整層104との間隙Gを一定に保持する間隙保持部材103と、を備えるものであれば、以上説明したものに限られず、その構成は適宜変更することができる。
【0157】
さらに、プロセスカートリッジは、前記帯電ローラ11と、帯電した像担持体61が露光されて形成される静電潜像を可視像化する現像装置63とを備え且つ前記像担持体61を格納したものであれば、以上説明したものに限られず、その構成は適宜変更することができる。
【0158】
そして、画像形成装置1は、前記プロセスカートリッジと、帯電した像担持体61を露光することにより静電潜像を形成する露光装置70を備えるものであれば、以上説明したものに限られず、その構成は適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本実施形態で示した帯電ローラ101に適用された電気抵抗調整層104は、発光素子の光Lを用いた方式(レーザー方式)の画像形成装置1に対して適用したが、ファクシミリ等の電子写真方式を採用した画像形成装置に対しても適用できる。即ち、画像の形成にあたって導電性部材が用いられる画像形成装置であれば適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】画像形成装置の概略図。
【図2】本発明の導電性部材を帯電部材として用いた場合の帯電装置、プロセスカートリッジを用いる画像形成装置の構成を示す概略図。。
【図3】図2に示す画像形成装置の画像形成部を示す概略図。
【図4】本発明の帯電装置及び、プロセスカートリッジの構成を示す概略図。
【図5】本発明の導電性部材である帯電部材と、像担持体の感光層領域及び、画像領域、非画像領域の位置関係を示す概略図。
【図6】試験2の結果を示し、実施例1〜5および比較例1〜4で得られた導電性部材の低湿低温環境下における経時的な電気抵抗変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0161】
1 画像形成装置
10 画像形成部
20 給紙部
21 給紙カセット
22 給紙装置
23 レジストローラ
30 読み取り部
31 コンタクトガラス
32、33 読み取り走行体
34 レンズ
35 CCD
36 自動原稿搬送装置
40 排紙収納部
41 排紙ローラ
50 中間転写体
51 2次転写装置
52 中間転写ベルトクリーニング装置
60 画像形成部
61 像担持体
62 1次転写装置
63 現像装置
63a 現像剤担持体
64 クリーニング装置
64a 固体潤滑剤
64b 固体潤滑剤塗布部材
64c クリーニング部材
64d 補助クリーニング部材
70 露光装置
80 定着装置
・ 帯電装置
101 帯電ローラ(導電部材、帯電部材),
103 間隙保持部材,
104 電気抵抗調整層,
106 導電性支持体,
G 間隙.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、この電気抵抗調整層の両端部に形成されるとともにこの電気抵抗調整層と異なる材質の間隙保持部材とを備え、この間隙保持部材によって前記電気抵抗調整層と像担持体との間を一定の間隙に保持する導電性部材であって、
前記電気抵抗調整層は、少なくともポリアミドエラストマーとポリオレフィンブロックポリマーとを含有する熱可塑性樹脂と、過塩素酸塩類から選択される少なくとも1種及び含フッ素有機アニオン塩類から選択される少なくとも1種を含む複数の塩とからなる樹脂組成物により構成されていることを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記含フッ素有機アニオン塩は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムとトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムとのうちから選ばれた少なくとも1種以上の塩であることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂に親和性を有するグラフトコポリマーを溶融混練したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記グラフトコポリマーは、主鎖にポリカーボネート樹脂を有して側鎖にアクリロニトリル-スチレン-グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマーであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の導電性部材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の導電性部材は、前記像担持体を帯電させることを特徴とする導電性部材。
【請求項6】
請求項5に記載の導電性部材を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−134011(P2009−134011A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309236(P2007−309236)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】