説明

導電部材へのチップ部品接続構造

【課題】ハンダ付けや接着剤を用いることなくチップ部品を導電部材に容易に接続することのできる導電部材へのチップ部品接続構造を提供する。
【解決手段】互いに幅方向に間隔をおいて配置された複数の第1の導電部材1を絶縁性の保持部材2によって保持するとともに、複数のチップ部品3の一端をそれぞれ各第1の導電部材1に導通させ、各第1の導電部材の他端に導通する第2の導電部材4を保持部材2に装着することにより、各チップ部品3が第1の導電部材1と第2の導電部材4に導通した状態で保持されるようにしたので、ハンダ付けや接着剤を用いることなく各チップ部品3を各導電部材1,4に接続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用の圧力センサや回転磁気センサ等の各種機器の製造に用いられ、導電部材にチップ部品を接続したものを樹脂でインサート成形するための導電部材へのチップ部品接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車用の圧力センサを製造する場合、端子となる複数の導電部材をインサート成形した樹脂成形品をセンサのハウジング内に組み込み、センサの感圧素子と各導電部材とを接続するようにしている。その際、各導電部材にはコンデンサ等のチップ部品をハウジング内でハンダ付けしているが(例えば、特許文献1参照)、樹脂製のハウジング内ではハンダごてを使用することができないため、チップ部品を導電性エポキシ等の接着剤で各導電部材に接続している。また、導電性エポキシで接続する場合は、導電性を高めるために接続面に銀メッキが用いられるが、銀メッキはマイグレーションを生じやすいため、チップ部品の周囲に封止用のエポキシ樹脂を充填する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−128274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、チップ部品をハウジング内で接続する作業や封止用のエポキシ樹脂を充填する作業は煩雑であるとともに、エポキシ樹脂が硬化するまでに長時間を要するため、生産性を低下させるという問題点があった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ハンダ付けや接着剤を用いることなくチップ部品を導電部材に容易に接続することのできる導電部材へのチップ部品接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る導電部材へのチップ部品接続構造は、前記目的を達成するために、第1の導電部材を絶縁性の保持部材によって保持するとともに、チップ部品の一端を第1の導電部材に導通させ、チップ部品の他端に導通する第2の導電部材を保持部材に装着することにより、チップ部品が第1の導電部材と第2の導電部材に導通した状態で保持されるように構成している。
【0007】
これにより、第2の導電部材を保持部材に装着することにより、チップ部品が第1の導電部材と第2の導電部材に導通した状態で保持されることから、ハンダ付けや接着剤を用いることなくチップ部品を第1及び第2の導電部材に接続することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハンダ付けや接着剤を用いることなくチップ部品を第1及び第2の導電部材に接続することができるので、接続作業を極めて容易に行うことができる。この場合、チップ部品が第1及び第2の導電部材に固着されていないので、例えば二次成形の際に高温の樹脂からの熱が加わっても、チップ部品と導電部材との線膨張率の差による接続部の剥離やクラック、或いはチップ部品の破損を発生させることがないという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すチップ部品接続構造の斜視図
【図2】チップ部品接続構造の側面断面図
【図3】チップ部品接続構造の組立工程を示す分解斜視図
【図4】チップ部品接続構造の組立工程を示す分解斜視図
【図5】変形例を示すチップ部品接続構造の組立工程の分解斜視図
【図6】本発明の第2の実施形態を示すチップ部品接続構造の組立工程の分解斜視図
【図7】本発明の第3の実施形態を示すチップ部品接続構造の斜視図
【図8】チップ部品接続構造の側面断面図
【図9】チップ部品接続構造の組立工程を示す分解斜視図
【図10】チップ部品接続構造の電子回路の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図4は本発明の第1の実施形態を示すものである。同図に示すチップ部品接続構造は、例えば自動車用の圧力センサや回転磁気センサ等の各種機器の製造に用いられるものである。
【0011】
本実施形態のチップ部品接続構造は、互いに幅方向に間隔をおいて配置された複数の第1の導電部材1を絶縁性の保持部材2によって保持するとともに、複数のチップ部品3の一端をそれぞれ各第1の導電部材1に導通させ、各チップ部品3の他端に導通する第2の導電部材4を保持部材2に装着することにより、各チップ部品3が第1の導電部材1と第2の導電部材4に導通した状態で保持されるように構成されている。
【0012】
各第1の導電部材1は、平板状に延びる導電性の金属からなり、図示しない相手側接続部と接続される端子として用いられる。
【0013】
保持部材2は、互いに結合可能な第1の分割部材2a及び第2の分割部材2bからなり、各分割部材2a,2bはそれぞれ合成樹脂の成形品によって形成されている。
【0014】
第1の分割部材2aは、横長の直方体状に形成され、各第1の導電部材1の上方に配置されるようになっている。第1の分割部材2aには各チップ部品3をそれぞれ収容する部品収容部としての複数の部品収容孔2cが設けられ、部品収容孔2cは上端及び下端を第1の分割部材2aの上面及び下面に開口するように第1の分割部材2aを上下方向に貫通している。第1の分割部材2aの前面及び背面には、第2の導電部材4が係合する第1の係合突部2dが幅方向一対ずつ突設され、各第1の係合突部2dは上端側が傾斜面をなすように形成されている。また、第1の分割部材2aの幅方向両側面には、第2の分割部材2bが係合する第2の係合突部2eがそれぞれ突設され、各第2の係合突部2eは下端側が傾斜面をなすように形成されている。
【0015】
第2の分割部材2bは、各第1の導電部材1がそれぞれ係合する複数の溝2fを上面に有し、各第1の導電部材1の下方に配置されるようになっている。第2の分割部材2bの幅方向両側には上方に延びる側壁部2gが設けられ、各側壁部2gには第1の分割部材2aの各第2の係合突部2eがそれぞれ係合する係合孔2hが設けられている。
【0016】
各チップ部品3は、例えばコンデンサ、抵抗、バリスタ、インダクタ等の電子部品からなる。チップ部品3は、所期の電気的特性を有する素材によって形成された板状の部品本体3aと、部品本体3aの幅方向両端側にそれぞれ設けられた一対の電極3bとからなり、各電極3bは部品本体3aの幅方向両端部を覆うように形成されている。
【0017】
第2の導電部材4は導電性の金属板からなり、保持部材2の上面、前面及び背面を覆うように形成されている。第2の導電部材4は、上壁部4a、前壁部4b及び後壁部4cからなり、前壁部4b及び後壁部4cには、第1の分割部材2aの各第1の係合突部2dがそれぞれ係合する係合孔4dが幅方向一対ずつ設けられている。
【0018】
本実施形態においては、図3に示すように保持部材2の第1の分割部材2aと第2の分割部材2bとの間に各第1の導電部材1を配置し、第1の分割部材2aと第2の分割部材2bとを互いに係合することにより、各第1の導電部材1が保持部材2に保持される。その際、各第1の導電部材1を第2の分割部材2bの各溝2fに係合するとともに、第1の分割部材2aを第2の分割部材2bの各側壁部2g間に挿入すると、各側壁部2gが弾性変形しながら第1の分割部材2aの各第2の係合突部2eを乗り越え、各第2の係合突部2eが第2の分割部材2bの各係合孔2hに係合する。次に、図4に示すように各チップ部品3をそれぞれ各電極3bが上下に位置する向きで保持部材2の各部品収容孔2cに上方から挿入する。その際、各チップ部品3の一端(下方の電極3b)と第1の導電部材1との間に導電性の弾性部材としてのコイル状のスプリング5を介装する。続いて、保持部材2に第2の導電部材4を装着する。その際、第2の導電部材4の前壁部4b及び後壁部4cの間に保持部材2の第1の分割部材2aを挿入すると、前壁部4b及び後壁部4cが弾性変形しながら第1の分割部材2aの各第1の係合突部2dを乗り越え、各第1の係合突部2dが第2の導電部材4の各係合孔4dに係合する。これにより、図2に示すように第2の導電部材4が各部品収容孔2c内のチップ部品3の他端(上方の電極3b)に当接するとともに、チップ部品3と第1の導電部材1との間のスプリング5が圧縮され、スプリング5の復元力により、各チップ部品3の上方の電極3bが第2の導電部材4に圧接しながら導通し、各チップ部品3の下方の電極3bがそれぞれ各第1の導電部材1にスプリング5を介して導通する。
【0019】
このように、本実施形態によれば、互いに幅方向に間隔をおいて配置された複数の第1の導電部材1を絶縁性の保持部材2によって保持するとともに、複数のチップ部品3の一端をそれぞれ各第1の導電部材1に導通させ、各チップ部品3の他端に導通する第2の導電部材4を保持部材2に装着することにより、各チップ部品3が第1の導電部材1と第2の導電部材4に導通した状態で保持されるようにしたので、ハンダ付けや接着剤を用いることなく各チップ部品3を各導電部材1,4に接続することができ、接続作業を極めて容易に行うことができる。この場合、各チップ部品3が各導電部材1,4に固着されていないので、例えば二次成形の際に高温の樹脂からの熱が加わっても、チップ部品3と導電部材1,4との線膨張率の差による接続部の剥離やクラック、或いはチップ部品3の破損を発生させることがないという利点もある。
【0020】
また、複数のチップ部品3の一端をそれぞれ複数の第1の導電部材1に導通させるとともに、第2の導電部材4を各チップ部品3の他端に導通させるようにしたので、複数のチップ部品3を各導電部材1,4に同時に導通させることができ、相手側接続部が複数ある場合でも接続作業を容易に行うことができる。
【0021】
更に、保持部材2にチップ部品3を収容する部品収容部2cを設けたので、チップ部品3を保持部材2に確実に位置決めすることができ、組立作業を容易に行うことができる。
【0022】
また、保持部材2を互いに結合可能な第1及び第2の分割部材2a,2bによって形成し、各分割部材2a,2b間に各第1の導電部材1を配置して各分割部材2a,2bを結合することにより、各第1の導電部材1が保持部材2に保持されるようにしたので、部品の組み立てによって各第1の導電部材1と保持部材2とを一体化することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0023】
更に、第1の導電部材1とチップ部品3との間に導電性のスプリング5を圧縮状態で介装したので、チップ部品3をスプリング5の復元力によって各導電部材1,4に圧接することができ、チップ部品3と各導電部材1,4とを確実に導通させることができる。尚、スプリング5に代えて、例えば板バネやブロック状の導電性ゴム等、他の導電性の弾性部材を用いることも可能である。
【0024】
また、保持部材2及び第2の導電部材4に互いに係合する第1の係合突部2d及び係合孔4dを設けたので、保持部材2への第2の導電部材4の装着をネジ止めや接着を用いることなく行うことができ、組立作業の効率化に極めて有利である。
【0025】
尚、前記実施形態では、全てのチップ部品3に、コンデンサ、抵抗、バリスタ、インダクタ等、所期の電気的特性を有する素材によって形成された部品本体3aを有するチップ部品を用いたものを示したが、図5に示すように各チップ部品のうちの一つを全体が導電性材料からなるチップ部品6を用いることにより、一つの第1の導電部材1をチップ部品6によって第2の導電部材4に短絡させるようにすれば、その第1の導電部材1をアース電極として用いることができる。
【0026】
また、前記第1の実施形態では、スプリング5によってチップ部品3を各導電部材1,4に圧接させるようにしたものを示したが、スプリング5を設ける代わりに、図6に示す第2の実施形態のように、第2の導電部材4の上壁部4aに複数の弾性片部4eを設け、各弾性片部4eをチップ部品3の上方の電極3bに圧接させるようにすれば、部品点数を少なくすることができる。この場合、各弾性片部4eは上壁部4aの一部を下方に切り起こすことによって形成されているが、例えば第2の導電部材4の肉厚を薄くして上壁部4a自体が弾性変形するようにしてもよい。また、第1の導電部材1の一部を弾性変形可能に形成し、チップ部品3の下方の電極3bに圧接させるようにしてもよい。
【0027】
更に、前記第1の実施形態では、保持部材2を第1及び第2の分割部材2a,2bによって形成したものを示したが、図7乃至図9に示す第3の実施形態のように、保持部材2を合成樹脂のインサート成形によって各第1の導電部材1と一体に形成するようにすれば、保持部材2の成形時に各第1の導電部材1と保持部材2とを一体化することができ、生産性の向上を図ることができる。尚、第3の実施形態における保持部材2の他の構成は、第1及び第2の分割部材2a,2b以外は第1の実施形態と同様である。
【0028】
図10は本発明のチップ部品接続構造における電子回路の構成例を示すもので、例えば図5に示すように2つのチップ部品3にコンデンサを用いるとともに、他の一つのチップ部品として全体が導電性材料からなるチップ部品6を用いた場合の等価回路図を示すものである。
【0029】
また、図10ではチップ部品3にコンデンサを用いたものを例示したが、前述したように、コンデンサ以外にも、抵抗、バリスタ、インダクタ等、所期の電気的特性を有する素材によって形成された各種のチップ部品を用いることができるので、複数種類のチップ部品を用いて様々な電子回路を構成することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…第1の導電部材、2…保持部材、2c…部品収容孔、3…チップ部品、4…第2の導電部材、4e…弾性片部、5…スプリング、6…チップ部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電部材を絶縁性の保持部材によって保持するとともに、
チップ部品の一端を第1の導電部材に導通させ、
チップ部品の他端に導通する第2の導電部材を保持部材に装着することにより、チップ部品が第1の導電部材と第2の導電部材に導通した状態で保持されるように構成した
ことを特徴とする導電部材へのチップ部品接続構造。
【請求項2】
前記保持部材を互いに結合可能な複数の分割部材によって形成し、各分割部材間に第1の導電部材を配置して各分割部材を結合することにより、第1の導電部材が保持部材に保持されるように構成した
ことを特徴とする請求項1記載の導電部材へのチップ部品接続構造。
【請求項3】
前記保持部材を合成樹脂のインサート成形によって第1の導電部材と一体に形成した
ことを特徴とする請求項1記載の導電部材へのチップ部品接続構造。
【請求項4】
前記保持部材にチップ部品を収容する部品収容部を設けた
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の導電部材へのチップ部品接続構造。
【請求項5】
前記第1及び第2の導電部材の少なくとも一方とチップ部品との間に導電性の弾性部材を圧縮状態で介装した
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の導電部材へのチップ部品接続構造。
【請求項6】
前記第1及び第2の導電部材の少なくとも一方をチップ部品に圧接するように弾性変形可能に形成した
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の導電部材へのチップ部品接続構造。
【請求項7】
前記保持部材及び第2の導電部材に互いに係合する係合部を設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の導電部材へのチップ部品接続構造。
【請求項8】
複数の各チップ部品の一端をそれぞれ複数の第1の導電部材に導通させるとともに、
第2の導電部材を各チップ部品の他端に導通させた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の導電部材へのチップ部品接続構造。
【請求項9】
前記各チップ部品のうちの一部のチップ部品に、第1の導電部材と第2の導電部材とを短絡するチップ部品を用いた
ことを特徴とする請求項8記載の導電部材へのチップ部品接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−226902(P2012−226902A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92058(P2011−92058)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(390012977)イリソ電子工業株式会社 (76)
【出願人】(509012577)有限会社MTEC (14)
【Fターム(参考)】