説明

尾端クロップ検出装置及び熱間圧延設備

【課題】費用面及びメンテナンス面で好適な構成で、適切に尾端クロップを検出することができる尾端クロップ検出装置およびそれを備えた熱間圧延設備を提供する。
【解決手段】熱間圧延ライン外に、熱間圧延ラインの仕上圧延スタンド間(F3−F4間)を通過する被圧延材7を連続的に撮像するカメラ11を設置する。そして、カメラ11で撮像した被圧延材7の連続画像から被圧延材7の尾端画像を検出し、その尾端画像から被圧延材7の尾端のエッジ部を抽出する。さらに、そのエッジ画像に対して画角合わせ処理を施すことで、圧延方向に対して斜めから見たエッジ画像を圧延方向に対して直交する方向から見た画像に変換し、被圧延材7の尾端クロップ形状を認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延ラインでの圧延時における被圧延材の尾端クロップを検出する尾端クロップ検出装置、及びそれを備えた熱間圧延設備に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延においては、仕上圧延機での圧延時に被圧延材の蛇行がしばしば問題になる。被圧延材の尾端が蛇行すると、圧延スタンドの入側に設置されているサイドガイドに被圧延材が接触し、被圧延材が折れ重なって圧延されてしまう、所謂絞り込みという現象が起こる場合がある。絞り込みによってワークロールが損傷してしまうと、後続の別の被圧延材にその疵が転写されて表面欠陥となるため、当該ワークロールを交換する必要があり、これがライン稼働率の低下を誘発する。このように、仕上圧延機における蛇行は、生産性や表面品質の大きな悪化要因となっている。
【0003】
このような蛇行を防止する技術として、例えば特許文献1の蛇行修正制御がある。この技術は、熱間圧延ライン内に複数設置されたカメラ等の光学的手段により、仕上圧延機にて圧延される被圧延材の先端及び尾端のクロップ(被圧延材の端部のいびつな形状部分)を検出し、幅方向両端の長手方向の伸びの差に基づいて、被圧延材の蛇行を修正すべく圧延スタンドのレベリング量(左右の圧下量差)を制御するものである。
また、クロップ形状認識装置としては、例えば特許文献2に記載の技術もある。この技術は、サイドガイド等の設備により中心位置が調整された被圧延材について、熱間圧延ライン内に設置された板幅計及び速度検出器からの板幅情報及び移動情報により、先端及び尾端のクロップ形状を認識するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−199513号公報
【特許文献2】特公昭63−60841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の技術にあっては、クロップ形状検出用のカメラを熱間圧延ライン内に複数台設置する必要があるが、カメラを撮影環境の悪い熱間圧延ライン内に設置するためには、耐熱及び耐蒸気等の様々な対策を講ずる必要があり、コストが嵩む。さらに、蒸気や受光面への異物混入等によりカメラのメンテナンスが必要となる場合があるが、メンテナンス作業は熱間圧延ライン内で実施する必要があるため、作業性が悪い。また、このようなメンテナンス作業には安全面の確保を講ずる必要があるため、メンテナンス作業時には熱間圧延ラインを停止しなければならず、ライン稼働率が低下する。定期修理など熱間圧延ラインが長時間停止するときにメンテナンス作業を行うようにすることもできるが、この場合、メンテナンスが終了するまでカメラを使用することができないため、その間蛇行修正制御が非作動となってしまう。
【0006】
上記特許文献2に記載の技術にあっては、板幅計が設置されていない熱間圧延設備の場合、新たに板幅計を設置する必要がある。また、板幅計を熱間圧延ライン内に設置する必要があるため、上述した特許文献1に記載の技術と同様に、この場合にも費用面やメンテナンス面で課題がある。さらに、被圧延材の影像が中心位置から片寄っている場合、受光面に異物が混入したことにより中心位置から片寄っているのか、被圧延材が実際に中心位置から片寄っているのかを区別できないため、適切なクロップ形状認識ができないという問題もある。
そこで、本発明は、費用面及びメンテナンス面で好適な構成で、適切に尾端クロップを検出することができる尾端クロップ検出装置およびそれを備えた熱間圧延設備を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る尾端クロップ検出装置は、熱間圧延ラインを搬送される被圧延材の尾端のクロップを検出する尾端クロップ検出装置であって、前記熱間圧延ライン外で且つ該熱間圧延ラインに沿う位置に配置され、前記熱間圧延ライン上の所定の撮像位置を通過する前記被圧延材の表面画像を連続的に撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した前記被圧延材の表面画像に基づいて、前記被圧延材の尾端のクロップを検出する尾端クロップ検出手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このように、熱間圧延ライン外に撮像手段を配置するので、熱間圧延ライン内に配置する場合のように撮像手段に耐熱及び耐蒸気等の対策を講ずる必要がなく、安価な装置で尾端クロップを検出することができる。さらに、熱間圧延ライン外で撮像手段のメンテナンスが可能であるため、ライン稼働中もメンテナンス作業を行うことができる。したがって、メンテナンス作業のためにラインを長時間停止させる必要がなくなり、ライン稼働率を確保することができる。
【0009】
また、上記において、前記尾端クロップ検出手段は、前記撮像手段で撮像した前記被圧延材の連続的な表面画像から、前記被圧延材の尾端を撮像した尾端画像を検出する尾端検出手段と、前記尾端検出手段で検出した尾端画像内におけるエッジ部を抽出するエッジ部抽出手段と、を備え、前記エッジ部抽出手段で抽出したエッジ部に基づいて、前記被圧延材の尾端のクロップを検出することを特徴としている。
このように、被圧延材を連続的に撮像した連続表面画像の輝度情報を解析することで、被圧延材の尾端の形状を適切に検出することができる。
【0010】
さらに、上記において、前記尾端検出手段は、前記撮像手段で撮像した前記被圧延材の連続的な表面画像を2値化処理した2値化連続画像における白色画素の分布が、前記尾端画像の条件を満足する分布となっている領域を前記尾端画像として検出することを特徴としている。
これにより、被圧延材の連続表面画像から精度良く尾端画像を検出することができる。
【0011】
また、上記において、前記撮像手段は、前記熱間圧延ラインの圧延方向での配置位置が、前記被圧延材の撮像位置に対して所定距離オフセットした位置となるように配置されており、前記尾端クロップ検出手段は、前記エッジ部抽出手段で抽出したエッジ部に対応するエッジ画像を、前記撮像手段の配置位置と前記被圧延材の撮像位置との関係に基づいて補正する補正手段を備えることを特徴としている。
これにより、被圧延材の尾端を圧延方向に対して斜め方向から見たエッジ画像を、圧延方向に対して直交する方向から見たエッジ画像に変換し、尾端クロップの有無を判断することができる。したがって、実際には尾端クロップが発生していないにもかかわらず、撮像手段の配置位置と被圧延材の撮像位置との関係によって被圧延材の幅方向の一端側が伸びているように見える場合であっても、尾端クロップが発生していると誤判断してしまうのを防止することができる。
【0012】
さらにまた、上記において、前記尾端クロップ検出手段で検出した尾端クロップをモニタ表示する表示手段をさらに備えることを特徴としている。
これにより、作業者は容易に尾端クロップの形状を認識することができる。
また、本発明に係る熱間圧延装置は、上記の何れかの尾端クロップ検出装置を備え、前記尾端クロップ検出装置によって熱間圧延ラインの仕上圧延スタンド間を通過する前記被圧延材の尾端クロップを検出することを特徴としている。
【0013】
このように、安価でメンテナンスが容易な尾端クロップ検出装置を備えた熱間圧延設備とすることができる。このような熱間圧延設備では、尾端クロップ検出手段で検出した尾端クロップの形状に基づいて、仕上圧延スタンドの作業側と駆動側のロール開度差を制御することが可能となる。そのため、被圧延材の蛇行を防止することができ、生産性や表面品質を確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱間圧延ライン外から、熱間圧延ラインを搬送される被圧延材を撮像し、得られた表面画像を解析することで被圧延材の尾端クロップを検出するので、耐熱及び耐蒸気等の様々な対策を講ずることなく安価で、ライン稼動時もメンテナンスが可能な尾端クロップ検出装置とすることができる。また、温度や水蒸気等の外乱を排除することができるので、精度よく尾端クロップを検出することができる。
また、このような尾端クロップ検出装置を備えた熱間圧延設備とすることで、尾端クロップ検出手段で検出した尾端クロップの形状に基づいて、被圧延材の蛇行防止制御を行うことができるなど、生産性や表面品質を確保した熱間圧延設備とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における尾端クロップ検出装置を備える熱間圧延設備の構成を示す図である。
【図2】画像処理装置12で実行する尾端クロップ検出処理手順を示すフローチャートである。
【図3】尾端検出原理を説明する図である。
【図4】エッジ検出原理を説明する図である。
【図5】画角合わせ前後の視点を示す図である。
【図6】画角合わせ原理を説明する図である。
【図7】本実施形態の動作を説明するための図である。
【図8】本実施形態の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(構成)
図1は、本実施形態における尾端クロップ検出装置を備える熱間圧延設備の構成を示す図である。
図中、符号1は熱間圧延設備である。この熱間圧延設備1は、熱間圧延ライン上流側から加熱炉2、サイジングプレス3、複数の粗圧延スタンド(R1〜R3)からなる粗圧延機4、複数の仕上圧延スタンド(F1〜F7)からなる仕上圧延機5、巻き取り設備6を備えている。また、符号7は被圧延材である。
この熱間圧延設備1は、熱間圧延ラインを搬送される被圧延材7の尾端のクロップを検出する尾端クロップ検出装置10を備える。尾端クロップ検出装置10は、カメラ11と、画像処理装置12と、モニタ13とを備える。
【0017】
カメラ11は、熱間圧延ラインの外部で且つ熱間圧延ラインに沿う位置に設置されており、熱間圧延ライン外から仕上圧延スタンド間の撮像位置(ここでは、第3スタンドF3と第4スタンドF4との間)を通過する被圧延材7の表面画像を連続的に撮像し、被圧延材7の連続画像として取得する。ここで、カメラ11は、熱間圧延ラインの圧延方向での配置位置が、被圧延材7の撮像位置に対して所定距離オフセットした位置となるように配置されているものとする。このカメラ11は、例えば、近赤外線対応カメラであり、仕上圧延スタンド間の被圧延材7の通過速度に応じたシャッター速度(例えば、1/1000s)に設定されている。
【0018】
カメラ11で取得した連続画像は、画像処理装置12に入力される。画像処理装置12は、図示しないCPUやメモリ等を有するマイクロコンピュータやパーソナルコンピュータなどの計算機によって構成され、後述する尾端クロップ検出処理を実行する。この尾端クロップ検出処理により、被圧延材7の連続画像について画像処理を施し、被圧延材7の尾端クロップを検出する。画像処理装置12で検出された尾端クロップの形状は、作業者が認識可能なようにモニタ13に表示する。
【0019】
次に、画像処理装置12で実行する尾端クロップ検出処理について説明する。
図2は、尾端クロップ検出処理手順を示すフローチャートである。
先ずステップS1で、画像処理装置12は、カメラ11で取得した被圧延材7の連続画像を取得し、ステップS2に移行する。
ステップS2では、画像処理装置12は、前記ステップS1で取得した連続画像をもとに尾端検出処理を行う。はじめに、取得した連続画像に対して尾端検出処理の対象範囲を設定し、設定した尾端検出対象範囲の画素毎の輝度情報を得る。そして、尾端検出対象範囲に対して、予め設定した白色画素判定閾値Xを用いて2値化処理を行う。例えば、図3(a)に示す連続画像(原画像)を取得した場合、尾端検出対象範囲αに対して2値化処理を行い、図3(b)に示す2値化画像を得る。
【0020】
次に、2値化した画像において列(幅方向)毎に白色画素数を計測する。すると、例えば図3(c)に示すような、圧延方向を横軸、白色画素数を縦軸とした計測結果が得られる。そして、この尾端検出対象範囲αにおいて、圧延方向最下流(図3では右端)の白色画素数である右端白色画素数、白色画素数が“0”の列の有無、白色画素数の合計をそれぞれ求める。
【0021】
次に、ステップS3では、画像処理装置12は、前記ステップS2の尾端検出処理結果に基づいて、尾端検出対象範囲αの画像が尾端を撮像した尾端画像であるか否かを判定する。具体的には以下の3項目を確認し、すべての条件を満足する場合にその画像を尾端画像と判定する。
[1]右端白色画素数が定数(幅方向の画素数のY%)以上ある。
[2]白色画素数が0個の列がある。
[3]白色画素数の合計が定数Z以上ある。
【0022】
そして、尾端ではないと判定した場合には前記ステップS1に移行し、尾端であると判定した場合にはステップS4に移行する。
ステップS4では、画像処理装置12は、前記ステップS1で取得した連続画像をもとにエッジ検出処理を行う。先ず、取得した連続画像に対してエッジ検出処理の対象範囲を設定し、設定したエッジ検出対象範囲の画素毎の輝度情報を得る。例えば、図4(a)に示す連続画像(原画像)を取得した場合、エッジ検出対象範囲βの画素毎の輝度情報は図4(b)に示すようになる。なお、ここでは説明を簡単にするために、画素を非常に粗くして示している。また、エッジ検出対象範囲βを、上述した尾端検出対象範囲αと同一とする。
【0023】
次に、エッジ検出対象範囲βにおいて、画素毎の水平輝度差を算出する。水平輝度差は、圧延方向下流の数ピクセル(Kpx)の合計輝度値から、圧延方向上流の数ピクセル(Kpx)の合計輝度値を引くことで算出する。すなわち、K=1として図4(b)に示す輝度情報をもとに水平輝度差を算出すると、図4(c)に示す結果が得られる。そして、行(圧延方向)毎に水平輝度差の最大値を選定すると、図4(c)の網かけで示すように、エッジ検出対象範囲βにおけるエッジ部が描写できる。
【0024】
次に、ステップS5では、画像処理装置12は、エッジ画像に対して画角合わせ処理を行う。画角合わせ処理は、圧延方向に対して斜め方向(図5の実線で示す位置)から撮像したオリジナル画像を、圧延方向に対して直交する方向(図5の破線で示す位置)から撮像した画像に変換する処理である。
図6は、画角合わせ原理を示す図である。図6に示すように、先ず、オリジナル画像の圧延方向(x方向)両端のエッジ延長線の交点Pを求める。次に、交点Pを通り画像に対して垂直な直線L1を計算する。次に、交点Pとオリジナル画像の圧延方向最上流で幅方向最も手前の点(引き伸ばし点)Qとを通る直線L2を計算する。最後に、オリジナル画像の各ラインについて、直線L1と直線L2との間の画像を引き伸ばす。なお、画角合わせ処理に際し、正方形等のサンプル板を撮像したサンプル画像から、予め画角合わせ処理のための各ラインの補正量(引き伸ばし量)を決定しておき、当該補正量を用いて上記エッジ画像の画角合わせ処理を行うものとする。
【0025】
次に、ステップS6では、画像処理装置12は、前記ステップS5の画角合わせ処理結果をモニタ13に表示し、ステップS7に移行する。ステップS7では、画像処理装置12は、前記ステップS5の画角合わせ処理結果をメモリに保存し、尾端クロップ検出処理を終了する。
このように、熱間圧延ライン外に設置したカメラ11で、熱間圧延ラインの所定の撮像位置を通過する被圧延材7を連続的に撮像し、被圧延材7の尾端通過時にはこれを検出し、尾端エッジ画像をモニタ13に表示すると共に、画像処理装置12内のメモリに保存する。このとき、カメラ11の配置位置と被圧延材7の撮像位置との位置関係に応じて尾端エッジ画像を補正(画角合わせ処理)する。これにより、作業者はモニタ13に表示された補正後の尾端エッジ画像から、尾端クロップ形状を適切に認識することができる。
【0026】
なお、図1において、カメラ11が撮像手段に対応し、画像処理装置12が尾端クロップ検出手段に対応し、モニタ13が表示手段に対応している。また、図2において、ステップS2が尾端検出手段に対応し、ステップS4がエッジ部抽出手段に対応し、ステップS5が補正手段に対応している。
【0027】
(動作)
次に、本実施形態の動作について説明する。
熱間圧延設備1において、加熱炉2によって数百〜千数百℃に加熱された被圧延材7は、サイジングプレス3によって所定幅にプレスされた後、粗圧延機4及び仕上圧延機5により圧延されて帯状に薄く延ばされる。このとき、熱間圧延ライン外に設置されたカメラ11は、仕上圧延機5の第3スタンドF3と第4スタンドF4との間を通過する被圧延材7を連続的に撮像する。
【0028】
カメラ11で撮像した被圧延材7の表面画像は一定周期で画像処理装置12に入力され、画像処理装置12で尾端検出処理が行われる。仕上圧延機5の第3スタンドF3と第4スタンドF4との間を被圧延材7の中央部が通過しているとき、カメラ11で撮像した被圧延材7の表面画像における尾端検出対象範囲αを2値化処理しても(図2のステップS2)、白色画素数が“0”となる列は存在しない。そのため、画像処理装置12は、このとき撮像した画像は尾端画像ではないと判断する(ステップS3でNo)。
【0029】
その後、被圧延材7の尾端が、仕上圧延機5の第3スタンドF3と第4スタンドF4との間を通過し、カメラ11によって図7(a)の上段に示す画像1(オリジナル画像)が得られたものとする。なお、この図7において、図中上下方向が被圧延材7の幅方向(上側が駆動側、下側が作業側)であり、図中左右方向が被圧延材7の長手方向(右側が下流側、左側が上流側)である。
【0030】
このとき、画像処理装置12は、このオリジナルの画像1に対して2値化処理を行い、2値化画像に基づいて取得した画像1が被圧延材7の尾端画像であるか否かを判定する(ステップS2及びS3)。画像1は尾端画像であるため、2値化画像において、[1]右端白色画素数が定数(幅方向の画素数のY%)以上あり、[2]白色画素数が0個の列があり、[3]白色画素数の合計が定数Z以上あることになる。そのため、画像処理装置12は、この画像1は尾端画像であると判断する(ステップS3でYes)。
【0031】
このように、本実施形態では、被圧延材7を熱間圧延ライン外からカメラ11によって連続的に撮像し、得られた連続画像の輝度情報を解析することで、熱間圧延ライン上の所定の撮像位置(ここでは、仕上圧延機5の第3スタンドF3と第4スタンドF4との間)を通過する被圧延材7の尾端を検出する。その際、連続画像を所定の白色画素判定閾値Xを用いて2値化処理し、2値化画像における白色画素の分布が尾端画像の条件(上記条件[1]〜[3])を満足するときに尾端であると判断する。
【0032】
図8は、尾端検出処理に際し、本実施形態のように2値化処理を行った場合と、2値化処理を行わない場合とで尾端検出率を計測した結果を示している。2値化処理を行わない方法では尾端検出率が94%であったのに対し、2値化処理を行う方法では尾端検出率が100%であった。
本実施形態のように、熱間圧延ラインの仕上圧延スタンド間(F3−F4間)を通過する被圧延材7を撮像する場合、その画像はライン内の温度や水蒸気によって輝度変動が比較的小さいものとなる。そのため、2値化処理を行わずに尾端を検出しようとすると見逃しが発生してしまう。2値化処理を用いて尾端検出処理を行うことで、連続画像から精度良く尾端検出を行うことができる。
【0033】
画像処理装置12は、画像1が尾端画像であると判断すると、この画像1のエッジ部を抽出する(ステップS4)。このとき得られるエッジ画像は、図7(a)の下段に示すようになる。次に、画像処理装置12は、そのエッジ画像に対して画角合わせ処理を行う(ステップS5)。これにより、圧延方向に対して斜めから撮像した画像は、圧延方向に対して直交する方向から撮像した画像に変換される。画角合わせ後のエッジ画像は図7(b)の下段に示すようになる。
【0034】
図7(b)の下段に示すエッジ形状が、被圧延材7の尾端の平面形状である。したがって、画像処理装置12は、この平面形状をモニタ13に表示すると共に(ステップS6)、メモリに記憶する(ステップS7)。図7(b)の下段に示すように、被圧延材7の尾端の平面形状は矩形状となっており、被圧延材7の駆動側及び作業側の何れにおいても伸びが発生していない。そのため、この場合には、作業者はモニタ13に表示される尾端の平面形状から、尾端クロップが発生していないことを認識する。
【0035】
ところで、本実施形態では、カメラ11の圧延方向における配置位置は、被圧延材7の撮像位置に対して所定距離オフセットしており、カメラ11は圧延方向に対して斜め方向から被圧延材7を撮像するため、その撮像角度に応じて被圧延材7の平面形状は斜めに歪む。すなわち、図7(b)に示すように、実際の平面形状が矩形状であったとしても、図7(a)に示すように、オリジナル画像は幅方向における一方の側(ここでは作業側)が長手方向に伸びた形状となる。したがって、オリジナル画像をそのまま被圧延材7の平面画像として採用すると、尾端クロップ形状を正確に認識することができず、尾端クロップが発生していると誤判断してしまう。
これに対して、本実施形態では、オリジナル画像に対して画角合わせ処理を行うことで、圧延方向に対して斜め方向から見た画像を圧延方向に対して直交する方向から見た画像に変換する。そのため、尾端クロップ形状を正確に認識することができる。
【0036】
その後、後続の被圧延材7が熱間圧延ラインを搬送され、その尾端が仕上圧延機5の第3スタンドF3と第4スタンドF4との間を通過し、カメラ11によって図7(c)の上段に示す画像2(オリジナル画像)が得られたものとする。すると、画像処理装置12は、このオリジナル画像2に対して2値化処理を行った結果、画像2が被圧延材7の尾端画像であると判定する(ステップS3でYes)。そのため、画像処理装置12は、この画像2のエッジ部を抽出し(ステップS4)、さらにそのエッジ画像に対して画角合わせ処理を行う(ステップS5)。オリジナル画像のエッジ画像は図7(c)の下段に示すようになり、画角合わせ後のエッジ画像は図7(d)の下段に示すようになる。したがって、画像処理装置12は、図7(d)の下段に示す被圧延材7の尾端の平面形状をモニタ13に表示すると共に(ステップS6)、メモリに記憶する(ステップS7)。
【0037】
作業者はモニタ13に表示される尾端の平面形状を確認し、尾端クロップの有無を判断する。このとき、画像2では、図7(d)の下段に示すように尾端の平面形状が矩形状になっておらず、作業側が長手方向に伸びているため、尾端クロップが発生していると判断することができる。また、このとき、尾端クロップ形状を正確に認識することができる。
【0038】
ところで、熱間圧延ラインを搬送される被圧延材の尾端クロップ形状を認識する際には、熱間圧延ライン内に設置したカメラ等を用いるのが一般的であったが、熱間圧延ライン内は熱や蒸気等の問題により設置環境が悪いため、当該ライン内にカメラを設置するには、カメラに耐熱及び耐蒸気等様々な対策を講ずる必要がある。そのため、その分高いコストを必要とする。また、ライン内でカメラのメンテナンスを行う必要があるため、ライン稼働中はメンテナンス作業を行うことができない。すなわち、メンテナンス作業にはラインの長時間停止が伴うため、生産性が低下する。
【0039】
これに対して、本実施形態では、熱間圧延ライン外に設置したカメラ11によって熱間圧延ラインを搬送される被圧延材7を撮像することで、被圧延材7の尾端クロップを検出することができる。このように、被圧延材7を撮像するカメラ11を設置環境の良い熱間圧延ライン外に設置するので、カメラに耐熱及び耐蒸気等の対策を講ずる必要がなく、その分のコストを削減することができる。また、熱間圧延ライン外でカメラ11のメンテナンス作業を行うことができるので、ライン稼働中もメンテナンスが可能となる。このように、費用面とメンテナンス面とで好適な構成とすることができる。
【0040】
(効果)
このように、上記実施形態では、熱間圧延ライン外に、熱間圧延ラインを搬送される被圧延材を撮像する撮像手段を設置し、被圧延材の尾端クロップを検出するので、撮像手段に対して耐熱及び耐蒸気等の様々な対策を講ずる必要がなくコスト増大を抑制することができると共に、熱間圧延ラインの稼動時においても撮像手段のメンテナンスが可能となる。また、温度や水蒸気等の撮像手段への外乱を排除することができるので、精度よく尾端クロップを検出することができる。
【0041】
さらに、尾端クロップ検出処理に際し、撮像手段で撮像した被圧延材の連続的な表面画像から、被圧延材の尾端を撮像した尾端画像を検出した後、検出した尾端画像内におけるエッジ部を検出するエッジ検出処理を行う。このとき、撮像手段で撮像した前記被圧延材の連続的な表面画像を2値化処理した2値化連続画像における白色画素の分布に基づいて尾端画像を検出するので、熱間圧延ラインを搬送される被圧延材の尾端を精度良く検出することができる。また、尾端画像に対してエッジ検出処理を行うので、尾端クロップ形状を正確に描写することができる。
【0042】
また、エッジ検出処理により得られたエッジ画像を、撮像手段の配置位置と被圧延材の撮像位置との関係に基づいて補正する画角合わせ処理を行い、その結果を被圧延材の平面形状を示すエッジ画像とする。そのため、被圧延材の尾端を圧延方向に対して斜め方向から見たエッジ画像を、圧延方向に対して直交する方向から見たエッジ画像に変換して、尾端クロップの有無を判断することができる。したがって、実際には尾端クロップが発生していないにもかかわらず、撮像手段の配置位置と被圧延材の撮像位置との関係によって被圧延材の幅方向の一端側が伸びているように見える場合であっても、尾端クロップが発生していると誤判断してしまうのを防止することができる。
【0043】
さらに、検出した尾端クロップをモニタ表示する機能を有するので、作業者は容易に尾端クロップの形状を認識することができる。
以上のように、耐熱及び耐蒸気等の様々な対策を講ずることなく安価で、ライン稼動時もメンテナンスが可能な尾端クロップ検出装置とすることができる。また、温度や水蒸気等の外乱を排除することができるので、精度よく尾端クロップを検出することができる。
【0044】
(応用例)
なお、上記実施形態においては、尾端のクロップ形状を認識した後、単にモニタ13に表示する場合について説明したが、認識したクロップ形状に基づいて被圧延材7の蛇行防止制御を行うこともできる。具体的には、認識したクロップ形状からウェッジ比率を求め、該ウェッジ比率に基づいて、蛇行を防止すべく撮像位置よりも下流側の仕上圧延スタンド(ここでは、第4スタンドF4〜第7スタンドF7)の作業側と駆動側のロール開度差を制御すればよい。これにより、被圧延材の尾端の平面形状を幅方向で対称となるように仕上圧延スタンドの作業側と駆動側のロール開度差を修正することができるので、被圧延材の尾端における回り込みのモーメント力の発生を防止することができ、蛇行を防止することができる。
【0045】
また、上記実施形態においては、被圧延材7の撮像位置を仕上圧延スタンドF3−F4間のみとする場合について説明したが、当該撮像位置は複数設けてもよい。この場合、1台のカメラ11で仕上圧延スタンドF3−F4間を撮像した後、カメラ11を移動し、例えば仕上圧延スタンドF6−F7間を撮像することもできる。これにより、カメラ11を複数台設けなくても複数の撮像位置で被圧延材7を撮像することができるので、安価な設備とすることができる。
【符号の説明】
【0046】
1…熱間圧延設備、2…加熱炉、3…サイジングプレス、4…粗圧延機、5…仕上圧延機、6…巻き取り設備、7…被圧延材、10…尾端クロップ検出装置、11…カメラ(撮像手段)、12…画像処理装置(尾端クロップ検出手段)、13…モニタ(表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延ラインを搬送される被圧延材の尾端のクロップを検出する尾端クロップ検出装置であって、
前記熱間圧延ライン外で且つ該熱間圧延ラインに沿う位置に配置され、前記熱間圧延ライン上の所定の撮像位置を通過する前記被圧延材の表面画像を連続的に撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した前記被圧延材の表面画像に基づいて、前記被圧延材の尾端のクロップを検出する尾端クロップ検出手段と、を備えることを特徴とする尾端クロップ検出装置。
【請求項2】
前記尾端クロップ検出手段は、
前記撮像手段で撮像した前記被圧延材の連続的な表面画像から、前記被圧延材の尾端を撮像した尾端画像を検出する尾端検出手段と、
前記尾端検出手段で検出した尾端画像内におけるエッジ部を抽出するエッジ部抽出手段と、を備え、
前記エッジ部抽出手段で抽出したエッジ部に基づいて、前記被圧延材の尾端のクロップを検出することを特徴とする請求項1に記載の尾端クロップ検出装置。
【請求項3】
前記尾端検出手段は、前記撮像手段で撮像した前記被圧延材の連続的な表面画像を2値化処理した2値化連続画像における白色画素の分布が、前記尾端画像の条件を満足する分布となっている領域を前記尾端画像として検出することを特徴とする請求項2に記載の尾端クロップ検出装置。
【請求項4】
前記撮像手段は、前記熱間圧延ラインの圧延方向での配置位置が、前記被圧延材の撮像位置に対して所定距離オフセットした位置となるように配置されており、
前記尾端クロップ検出手段は、
前記エッジ部抽出手段で抽出したエッジ部に対応するエッジ画像を、前記撮像手段の配置位置と前記被圧延材の撮像位置との関係に基づいて補正する補正手段を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の尾端クロップ検出装置。
【請求項5】
前記尾端クロップ検出手段で検出した尾端クロップをモニタ表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の尾端クロップ検出装置。
【請求項6】
前記請求項1〜5の何れか1項に記載の尾端クロップ検出装置を備え、
前記尾端クロップ検出装置によって前記熱間圧延ラインの仕上圧延スタンド間を通過する前記被圧延材の尾端クロップを検出することを特徴とする熱間圧延設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−159431(P2012−159431A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19987(P2011−19987)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】