説明

岩石、コンクリート等のための回転衝撃式穿孔用ビット

【課題】穿孔側に開口した薄壁筒形穿孔体106と実質的に半径方向に延在するビット底20とビット取付のために軸方向に設けられたビットシャンク101とから成る、岩石、コンクリート等を回転衝撃による穿孔するためのビットを提案する。
【解決手段】ビット底20が半径方向の外郭を備え、その外郭が曲線推移に従い、その曲線推移が少なくとも一変曲点を有する。更にビット底20が半径方向に最小で延在する外郭を有するビットにおいて、ビット底の外郭が半径方向に外側の上り坂の曲線セグメントにて筒形穿孔体に連絡している。本発明は更に、穿孔さるべき材料の破砕のために内面の輪郭から突出したビット底の内面の少なくとも一つの隆起19または穿孔屑排出溝109と穿孔体106の外郭の多様な勾配とを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に穿孔すべき側に開口している薄壁筒形穿孔体と、実質的に半径方向に延在しているビット底と、ビットを取り付けるために軸方向に設けられたビットシャンクとを備える、岩石、コンクリート等を穿孔するための回転衝撃式穿孔用ビットに関する。
【背景技術】
【0002】
ビット底が実質的に直線で、回転軸に対し垂直であり、又は穿孔側に僅かに傾斜し半径方向に外向きに延在した穿孔用ビットは既に公知である。通常、ビット底の外郭は実質的にビット底の内面の輪郭に従う。
【0003】
作動時、回転衝撃による穿孔時に穿孔機で励振される衝撃運動が、最善可能な方式でビットシャンク、ビット底を介して筒形穿孔体の開口端面側の穿孔側に伝達されなければならない。しかし公知の従来技術では、衝撃運動の伝達時に穿孔性能を著しく減じるような、大きな伝達損が生じうる。
【0004】
更に上記従来技術では穿孔されるべき材料に薄壁筒形穿孔体が回転衝撃により突入する場合に、一般に更なる短所が現われる。通常、筒形穿孔体の長さで決定される穿孔深さに達する直前に、例えば岩石のかけらのような既に剥離した穿孔材料が、広く平らなビット底と固定されている穿孔される材料との間に挟まり、穿孔体の全長まで更に突入することを阻止することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は特に回転衝撃による穿孔時のビットの最適化の問題が基礎になっている。実質的にビットシャンク上へ加えられる衝撃エネルギーは、既述の如くなるべく高い効率で、即ち少ない損失で岩石の破砕に変換されなければならない。衝撃エネルギーの変換の問題は、例えば出願人の特許公報DE 30 49 135 C2に開示されている。一般にビットの開発は、衝撃エネルギーをなるべく少ない損失で穿孔仕事に変換するために、慣性質量が全体に少なくされることにある。従ってビット底、ビットシャンク及び特にクラウン部壁セグメントも、僅かな慣性反力(Tragheits-Gegenkrafte) を生じるように、常に小質量、即ちより薄く形成される。しかしながら、特にビット底のより薄い壁セグメントに生じうる振動が穿孔性能に不利に作用してはならない。特に穿孔ツール内に定常波を生じさせ且つエネルギーを騒音放射又は加熱に消費する振動が生じてはならない。従って、全体に壁の薄いビットは、大きな衝撃ストレスに曝されるかぎり、振動工学的にも最適化されなければならない。
【0006】
通常又は従来の薄壁ビットは、一般にクラウン部外郭の運搬螺旋をもたない。特にクラウン部の壁の厚さが約5mmである薄壁ビットでは、クラウン部の壁厚の著しい減少につながりかねず、通常の穿孔屑溝は形成できない。出願人のDE−OS 27 35 368ではクラウン部領域に穿孔屑の搬出に役立つ外面運搬螺旋を有する岩石ビットが示されている。またこの従来技術水準からも、壁厚を余り減じないように、ビットの穿孔屑溝が極く浅く形成されていることがわかる。この公報は、なるべく少なく保たれるべき、穿孔プロセスで生じる穿孔ツールの縦振動に関する。この場合、騒音放射も少なく保たれなければならない。
【0007】
浅く形成されている運搬螺旋溝は、少ない穿孔屑運搬しかできないという短所がある。従って、本発明は、極く薄い壁に形成されているビットの振動特性によって最適な動力伝達並びに穿孔屑運搬が改善された効率で行なわれるように、ビットに運搬螺旋を設けることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、公知のビットの短所を無くし且つ特にビットの効率又は穿孔特性を振動制御の観点から改善することにある。このような目的を達成するため本発明は、実質的に穿孔側に開口している薄壁筒形穿孔体と、実質的に半径方向に延在しているビット底と、ビットを取り付けるために軸方向に設けられたビットシャンクとを備え、岩石、コンクリート等を穿孔するための回転衝撃式穿孔用ビットであって、ビット底が半径方向の外郭を有し、該外郭が曲線推移に従って形成され、該曲線推移が少なくとも一つの変曲点を有することを特徴とするビットを提供する。
【0009】
ビット底の外郭を決定する曲線推移は連続微分可能関数によって表わされ、ビットシャンクから丸みを介して外方向に減衰する振動である。ビット底の内面の輪郭は、曲線推移に従って形成され、該曲線推移は少なくとも一つの変曲点を有する。
【0010】
ビット底の実質的に半径方向のセグメントは、内面の輪郭が外郭に従い、その半径方向外側のセグメントの壁厚は筒形穿孔体の壁厚の領域にある。ビット底の外郭及び/又は内郭を決定する曲線推移は、各々線形セグメントにより実現されている。
【0011】
さらに、本発明は、実質的に穿孔側に開口している薄壁筒形穿孔体と、実質的に半径方向に延在しているビット底と、ビットを取り付けるために軸方向に設けられたビットシャンクとを備える、岩石、コンクリート等を穿孔するための回転衝撃式穿孔用ビットであって、ビット底が半径方向の外郭を有し、該外郭が半径方向に最小で延在し、ビット底がその外郭の半径方向に外側に上り坂の曲線セグメントにて筒形穿孔体に連絡しているビットを提供している。
【0012】
この場合も、ビット底の外郭を決定する曲線推移は連続微分可能関数で表わされ、ビット底が有する内郭は半径方向に最小で延在する。ビット底の実質的に半径方向のセグメントの内面の輪郭は外郭に従い、その少なくとも半径方向外側のセグメントの壁厚は筒形穿孔体の壁厚の領域にある。
【0013】
ビット底の外郭及び/又は内郭を決定する曲線推移は各々線形セグメントで実現されている。ビット底の内面の輪郭は、曲線推移に従って形成され、該曲線推移は少なくとも一つの変曲点を有する。
【0014】
また、本発明は、実質的に穿孔側に開口している薄壁筒形穿孔体と、実質的に半径方向に延在しているビット底と、ビットを取り付けるために軸方向に設けられているビットシャンクとを備える、岩石、コンクリート等を穿孔するための回転衝撃式穿孔用ビットであって、穿孔されるべき材料を破砕するために内面の輪郭から突出した少なくとも一つの隆起をビット底の内面に備えているビットを提供する。
【0015】
ビット底の内面の輪郭から突出した隆起は、環状隆起であり、これは楕円形の隆起でもよい。このような隆起は全周で多数に寸断され、その高さは多様に形成されていてもよい。円錐形空室を形成するために、ビットシャンクの方向に斜め上方へ中央のドリルを収納するための穴まで、半径方向内部領域のビット底の内面の輪郭が延在している。
【0016】
さらに、本発明は、同軸上のビットシャンクを有する鉢形穿孔体又はクラウン部を備え、鉢形ビット部の外部筒形壁部が穿孔屑を運搬するために外側表面に運搬螺旋を有する、岩石、コンクリート等を穿孔するための回転衝撃式穿孔用ビットであって、ビットの外面運搬螺旋が穿孔屑排出溝を備え、該穿孔屑排出溝が端面側端部の領域で最も緩やかな勾配を成し、排出溝の勾配がビットシャンク端部に向けて溝幅の広がりに沿って高まり且つ背側突条幅がビットの実質上の全体の高さでほぼ一定であるビットを提供している。
【0017】
溝深さは所定の壁厚を有する薄壁クラウン部では一定又は多様であり且つ該壁厚は3.5〜5mmである。穿孔ヘッドの領域の穿孔屑溝の勾配は2〜4°であり、該勾配は運搬螺旋の背側領域で連続的又は非連続的に10〜15°の値に高まる。
【0018】
運搬螺旋の溝幅は、運搬螺旋のビットシャンク側領域へ向けて広くなり、ビットの実質的領域の運搬螺旋突条の背側幅は一定又はほぼ一定であるか又は極く僅かに広くなっている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の核心は、ビットが岩石、コンクリート等を穿孔するための回転衝撃による穿孔に使用され、実質的に穿孔側に開口している薄壁筒形穿孔体と、実質的に半径方向に延在しているビット底と、ビットを取り付けるために軸方向に設けられているビットシャンクとを備え、ビット底が半径方向の外郭をもち、その外郭が少なくとも一つの変曲点を有する曲線推移によって形成されることである。ビット底のこのような形状により、穿孔機で励振される衝撃運動は極く少ない損失で筒形ビットへ伝達される。本発明によるビット底は、物理的に見て、従来形式のビット底より伝達損が少ない。一方、これは、本発明のビット底の弾性的な振動特性に帰結しうる。他方、本発明によるビットは、従来技術に比べ、軸方向に均整のとれた質量形状を有する。特に、水平に延在しているビット底の形状がビットシャンクから続いているので、ビットシャンクとビット底間の境界位置に断面隆起が存在し、従って、回転軸に対し垂直に位置する小円板要素に対応する質量隆起が存在する。結果として従来形式ではこの位置で衝撃起動パルスが一部反射され一部減衰されるので、穿孔体までの衝撃運動の伝達において著しい伝達損が生じるが、本発明によるビット底では、ビットシャンクからビット底への移行域に、従来形式の断面隆起とそれによる質量隆起が無く、本発明によるビットのビットシャンクと筒形穿孔体との間の移行域の質量分布は一様であり、ビットシャンクが本発明によるビット底によって穿孔体に対して振動運動を実行できるので、公知の形式に対し50%までの穿孔性能の改善が達成される。
【0020】
ビット底の外郭を決定する曲線推移が連続微分可能関数であれば特に効果的である。段及び角を回避することによって、ビットの耐用期間が向上でき、一様な連続微分可能曲線分布がCNC旋盤で容易に製造できる。ビット底の外郭を決定する曲線推移がビットシャンクから丸みを介して外方向へ減衰する振動である場合、極く一様な質量分布がビットシャンクからビット底を介し穿孔体まで達成され、穿孔機の衝撃パルスの伝達時には、わずかな伝達損しか生じない。
【0021】
ビット底の内面の輪郭が少なくとも一つの変曲点を有する曲線推移に従って形成される場合、ビット底の外面と同様な曲線推移が達成でき、好ましくは、実質的に半径方向のセグメントの内面の輪郭は外郭に従う。これにより、製造材料が節約できる。
【0022】
更にビット底の少なくとも半径方向外側のセグメントの壁厚が、筒形穿孔体の壁厚の領域にある場合、ビット底は筒形穿孔体の壁厚によって形成されるので、30%まで材料が節約でき、優れた穿孔性能をもたらすビットの極く一様な質量分布が達成できる。
【0023】
同様にビット底の外郭及び/又は内郭を決定する曲線推移が各々線形セグメントで実現されれば効果的である。ビット底が半径方向に最小で延在し、その外郭の半径方向に外側に上り坂の曲線セグメントにて筒形穿孔体に連絡している場合、ビットは相対的に小さな直径を有する。その場合ビット底の外郭は、完全にそのままの曲線推移で実施されるのではなく、変曲点到達する以前で既に形穿孔体に移行する。上記理由から、このビット底の輪郭の曲線推移に対しても穿孔性能が著しく改善される。
【0024】
同様にビット底の内側に、穿孔されるべき材料を破砕するための内面の輪郭から突出した少なくとも一つの隆起を備えている場合、穿孔されるべき材料へ穿孔体が突入した時に、岩石のかけらは最大穿孔深さに到達する直前にビット底内面の隆起で破砕しうるので、次の穿孔プロセスは阻止されず、ビットはその最大穿孔深さに達することができる。
【0025】
更にビット底の内面の輪郭から突出した隆起が環状隆起であれば効果的である。特に実質的に半径方向のセグメントのビット底の内面の輪郭が外郭に従うならば、その環状隆起は請求項1又は独立請求項8のビット底の実施例の簡単な方式で形成できる。勿論同様に環状隆起又は楕円隆起又は多数に寸断した隆起を追加的にビット底の内面に設けてもよい。
【0026】
ビット底の内面の輪郭が半径方向内部領域では円錐形空室形成のために例えばセンタ穴ドリルの収納箇所までビットシャンク方向に斜め上方へ延在している場合、ビット底の内面の輪郭から突出している少なくとも一つの隆起により、より小さな岩石のかけらが前もって破砕されることによって生じる穿孔屑は、最大穿孔深さに到達する前に円錐形空室内へ寄せられるので、ビットは全穿孔深さに突入できるのみならず、より深い穿孔深さでの穿孔屑の突燃(Verpuffungen)が阻止される。
【0027】
本発明による運搬螺旋の形成によって、ビットの効率が更に改善できるという効果がある。この場合、運搬螺旋レイアウトが振動工学的且つ時間毎の穿孔屑の体積運搬率に関して改善される。即ち出願人EP 0 126 409による従来技術から、通常の岩石穿孔ツールでは運搬螺旋の断面隆起とそれによる振動の基本的問題が明らかになった。穿孔ツールでは運搬螺旋の溝底と突条間の等距離の断面隆起を避けるために、運搬螺旋全長の溝勾配を多様化させることが特に提案された。しかしながら、これはドリル幾何学及び特に運搬螺旋幾何学に関し、平螺旋形ビットとは異なる。
【0028】
従って、本発明によるビットでは、外面運搬螺旋が穿孔屑排出溝を備える運搬螺旋構造が実現され、一方その穿孔屑排出溝がシャンク端部に向けて高まる勾配を成す。これで穿孔ツール端面から出発する穿孔屑溝幅が連続して広くなる。また、運搬螺旋突条の背側幅は、小さく、一定でなければならない。
【0029】
本発明によるビットにおいて穿孔屑溝は例えば1〜1.5mmと浅く、多様であり、高まる勾配に従って連続的又は非連続的に広くなり、この場合穿孔屑溝の容積も増大する。しかしながら、同時に通常の穿孔ツールに比べてビットの背側螺旋の相対的な幅広の突条は、広範囲にわたり概ね一定でなければならない。
【0030】
このように、運搬螺旋に等距離に隆起が生じることが避けられるので、特に対応するエネルギー吸収の定常波も生じない。従って、騒音放射も低減可能である。更に常に特に連続拡大する穿孔屑溝と連続増大する穿孔屑溝容積とにより、穿孔屑の迅速な排出が達成される。この処置で振動工学特性の最適化は、ビット底と側壁領域とに相対的に薄い壁厚を採択を可能にし、それが全体に小質量にする。振動特性の最適化は、穿孔屑の改善された運搬特性で、その質量低減を可能にする。刃領域のツールヘッドのより深い溝深さと場合によりシャンク方向に連続して浅くなる溝深さとを有する溝深さの多様性は、同様に緩やかな溝勾配領域の溝容積の増大とシャンク端部へ向けて厚くなる壁厚でビットの強化となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1のグラフに示されている異なる三つの曲線推移2、3、4によって、異なる三つの直径のビットの底の外郭が決定される。グラフにおいて水平x軸は半径方向を表し、垂直y軸は軸方向を表す。曲線推移は連続微分可能関数1で解析的に表わすことができる。曲線推移2は例えば直径80mmのビットの底の外郭の半径方向形状に使用でき、曲線推移3は直径90mmのビットに、且つ曲線推移4は直径100mmのビットに使用できる。同様にグラフに記載した表5には、各曲線推移を求めるために、関数1の付属パラメータb2、b3、c3が示されている。三つの曲線推移は減衰する振動を示す。曲線推移2は、一つの変曲点を有し、曲線推移3又は4は、より大きなビット直径に適合するために二つの変曲点を有する。
【0032】
図2には本発明のビットの第一実施例が回転軸における断面図によって示されている。ビットは、ビットシャンク6、ドリル収納用穴7、ビット底8、及び穿孔側に開口している薄壁筒形穿孔体9を備えている。ビット底8の外郭及び内郭は減衰する振動に相当する曲線推移をなしている。ビット底8の実質的に半径方向セグメントの壁厚が穿孔体9の壁厚の領域にある。本実施例においてビットは一つの部品で形成されているが、多くの部品から形成されてもよい。ビット底8の内郭は、最大穿孔深さに到達する直前に穿孔されるべき材料を破砕するために、内面の輪郭から突出した環状隆起10を有する。環状隆起10はビット底8の内郭又は外郭の曲線推移によって決定される。穿孔屑を収納するために、ビット底8の内面の輪郭は、半径方向内部領域に円錐形の空室12を形成するように、ドリル収納用穴7まで斜め上方へ延在している。
【0033】
図3には本発明の第二実施例による、より小さな直径のビットが示されている。このビットは、第一実施例と同様に、ビットシャンク13、ドリル収納用穴14及びビット底15を有するが、ビット底15は第一実施例とは異なり、減衰する錐形の振動から成るので、変曲点を持たないが、半径方向に最小である外郭を備え、その外郭の上り坂の曲線セグメントにおいて、筒形穿孔体16に連絡している。第一実施例と同様に、第二実施例は円錐形空室17及び環状隆起18を備える。
【0034】
図4には、本発明の第三実施例による約80mmの平均直径を有するビットが示されている。図4に示されているように、ビットには環状隆起19が設けられ、ビット底20の外郭は変曲点を有する曲線推移を形成している。回転衝撃による穿孔時の回転中に、ビット100に軸方向の衝撃が加えられる。穿孔機で励振される衝撃運動は、ビットシャンク6、13、101及びビット底8、15、20を介して穿孔体9、16、106へ伝達される。本発明の実施例によるビット底は、ビットシャンク6、13、101に基づく穿孔体9、16、106の振動運動を可能にする。従って、衝撃波は極く僅かしか減衰されない。穿孔体9、16、106が穿孔されるべき材料へ突入すると、最後に、環状隆起10、18、19によって、例えば既に剥離した岩石のかけらは、前もって破砕され、円錐形空室12、17に収容される。従って、本発明によるビットは、その穿孔深さまで突入可能である。
【0035】
図4及び図5に示されているビット100は、同軸上のビットシャンク101、鉢形穿孔体即ち鉢形クラウン部102を備え、クラウン部102の端面の、シャンク101と反対側の穿孔ヘッド103は、ワーク加工のために公知の刃104を有する。ビットシャンク101は、壁の薄いビット底20を介して壁の薄い筒形穿孔体106へ移行し、穿孔体106の外郭107は穿孔屑運搬螺旋108を有する。特に単純に形成されている運搬螺旋108は、コア直径D2を有し、各々、幅がn1〜n4である螺旋形の穿孔屑運搬溝109と、外径D1を有し、各々、幅がr1〜r4であり、軸方向に続いている運搬螺旋突条110とから成る。
【0036】
ビットの外径又は公称直径DNは穿孔体106の端面に刃104を設けることによって決定される。外径DNは、運搬螺旋突条110の外径から成る穿孔屑運搬螺旋108の外径D1より若干大きい。図4に示されているように、穿孔屑運搬溝109は外径D2を有し、このような直径又は半径の差から溝の深さtが形成される。穿孔屑運搬溝109の深さtは1〜1.5mmの範囲にある。筒形穿孔体106の壁の厚さsは5mmである。これは公称直径DN80mmのビットに該当する。
【0037】
溝深さtは一定又は可変にすることができる。実施例において、溝の容積を増大させるために、穿孔ヘッド103のより深いt1を選択することができる。溝の深さは、シャンク端部に向けて値t2に連続的に低減し、壁の厚さを同時に拡大することによって、螺旋のコアが強化される。従って、ビット全体が強化される。図4の第三実施例においてt1=1.5mm、t2=1mmであるが、実施例によって、別の値に設定することができる。
【0038】
更に図4に示されているように、穿孔屑運搬溝109は、多様な勾配α1〜α4を有し、α1の値は1〜3°であり、勾配がビット底20の方へ向かって大きくなることによって、角度は増加し、α5の値は10〜15°になる。運搬螺旋溝の初端111は、簡略して示されている刃104の上方に極く緩やかな勾配で位置しているので、ビットの前領域で大きなフリーカット(Freischnitt) が生じる。先頭の穿孔屑運搬螺旋溝109´よりも端面側に位置する壁セグメント112は、運搬螺旋突条110の外径に相当する外径D1を有する。このように直径が拡大された領域は、刃104を収納するために、壁を厚く形成することによって、その構造が強化されている。
【0039】
穿孔ヘッド103の穿孔屑運搬溝109´の勾配角度α1が緩やかであるため、図4に示されているように、最下の運搬螺旋突条110´は、極細の突条幅r1を有するが、突条幅r1は、急速により大きな値r2又はr3に広がる。運搬螺旋突条110の突条幅rを全体にできる限り細くすることによって、運搬螺旋溝初端111を除いて、運搬螺旋突条110の背側の幅r2〜r5は極く僅かに増加するか又は増加することなく、ほぼ一定に抑えられる。一方これで十分に穿孔屑が収納でき、穿孔屑が、次第に大きくなる勾配によって迅速に排出される。断面長方形の穿孔屑溝の深さtは実質上、浅いにもかかわらず、穿孔屑が停滞することはない。
【0040】
図4に示されている特に好適な実施例では以下の技術データが実現される。ビット100の公称直径DNは、縁部に設けられている刃104の突起に従っており、80mmに設定されている。運搬螺旋突条110の外径D2は76mmである。これらの寸法は、溝の深さtが約1〜1.5mmになるように調整される。
【0041】
穿孔体106の内径D3は68mmであり、内径113と運搬螺旋突条110の外径D1との間で測定される壁の厚さsは3.5〜5mmとなる。溝の初端111は下縁部114から3〜5mmの高さh3に位置する。ビットの端面側の溝幅は4〜6mmであるn1から、連続的に増加し、n4は10〜15mmである。この場合、突条幅r2〜r5は5mmの一定値を有する。
【0042】
下縁部114からビット底20までの高さh1は75mmで、下縁部114からビット底20の内側までの高さh2は68mmである。図4に示されている各穿孔屑運搬溝109の上フランク115は、20°の角度βを有する斜面を形成する。下フランク116は比較的、鋭角的で、表面に対して半径方向又は垂直に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ビットの底の形成に用いられる複数の曲線推移のグラフである。
【図2】ビット底の曲線推移が半径方向に二つの変曲点を有する、本発明の第一実施例によるビットの軸方向の断面図である。
【図3】ビット底が半径方向に最小に延在する、本発明の第二実施例によるビットの軸方向の断面図である。
【図4】本発明の第三実施例による多様な螺旋を備えたビットの部分破断図である。
【図5】図4に示されているビットの破断がない状態の側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 連続微分可能関数2、3、4 曲線推移6 ビットシャンク7 ドリル収納用穴8 ビット底9 筒形穿孔体10 環状隆起11 半径方向内部領域12 円錐形空室13 ビットシャンク14 ドリル収納用穴15 ビット底16 筒形穿孔体17 円錐形空室18、19 環状隆起20 ビット底100 ビット101 ビットシャンク102 クラウン部103 穿孔ヘッド104 刃106 筒形穿孔体107 外郭108 穿孔屑運搬螺旋109 穿孔屑運搬溝109´ 先頭の穿孔屑運搬溝110 運搬螺旋突条110´ 最下の運搬螺旋突条111 運搬螺旋溝初端112 壁セグメント113 内径114 下縁部115 上フランク116 下フランク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に穿孔側に開口している薄壁筒形穿孔体(9、16、106)と、実質的に半径方向に延在しているビット底(8、15、20)と、ビットを取り付けるために軸方向に設けられたビットシャンク(6、13、101)とを備え、岩石、コンクリート等を穿孔するための回転衝撃式穿孔用ビットであって、ビット底が半径方向の外郭を有し、該外郭が曲線推移(2、3、4)に従って形成され、該曲線推移が少なくとも一つの変曲点を有することを特徴とするビット。
【請求項2】
ビット底(8、15、20)の外郭を決定する曲線推移(2、3、4)が連続微分可能関数(1)によって表わされることを特徴とする請求項1記載のビット。
【請求項3】
ビット底の外郭を決定する曲線推移(2、3、4)がビットシャンクから丸みを介して外方向に減衰する振動(1)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のビット。
【請求項4】
ビット底(8、15、20)の内面の輪郭が曲線推移(2、3、4)に従って形成され、該曲線推移(2、3、4)が少なくとも一つの変曲点を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のビット。
【請求項5】
ビット底の実質的に半径方向のセグメント(8、15、20)の内面の輪郭が外郭に従うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のビット。
【請求項6】
ビット底の少なくとも半径方向に外側のセグメントの壁厚が筒形穿孔体の壁厚の領域にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のビット。
【請求項7】
ビット底の外郭及び/又は内郭を決定する曲線推移が各々線形セグメントにより実現されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のビット。
【請求項8】
実質的に穿孔側に開口している薄壁筒形穿孔体と、実質的に半径方向に延在しているビット底(8、15、20)と、ビットを取り付けるために軸方向に設けられたビットシャンク(6、13、101)とを備える、岩石、コンクリート等を穿孔するための回転衝撃式穿孔用ビットであって、ビット底が半径方向の外郭を有し、該外郭が半径方向に最小で延在し、ビット底(15)がその外郭の半径方向に外側に上り坂の曲線セグメントにて筒形穿孔体(16)に連絡していることを特徴とするビット。
【請求項9】
ビット底(15)の外郭を決定する曲線推移が連続微分可能関数で表わされることを特徴とする請求項8に記載のビット。
【請求項10】
ビット底が内郭を有し、該内郭が半径方向に最小で延在することを特徴とする請求項1、4、8又は9のいずれか一つに記載のビット。
【請求項11】
ビット底(15)の実質的に半径方向のセグメントの内面の輪郭が外郭に従うことを特徴とする請求項8〜10のいずれか一つに記載のビット。
【請求項12】
ビット底(15)の少なくとも半径方向外側のセグメントの壁厚が筒形穿孔体の壁厚の領域にあることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一つに記載のビット。
【請求項13】
ビット底の外郭及び/又は内郭を決定する曲線推移が各々線形セグメントで実現されていることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一つに記載のビット。
【請求項14】
ビット底(8、15、20)の内面の輪郭が曲線推移(2、3、4)に従って形成され、該曲線推移(2、3、4)が少なくとも一つの変曲点を有することを特徴とする請求項8、9、10、12、13のいずれか一つに記載のビット。
【請求項15】
実質的に穿孔側に開口している薄壁筒形穿孔体(9、16、106)と、実質的に半径方向に延在しているビット底(8、15、20)と、ビットを取り付けるために軸方向に設けられているビットシャンク(6、13、101)とを備える、岩石、コンクリート等を穿孔するための回転衝撃式穿孔用ビットであって、穿孔されるべき材料を破砕するために内面の輪郭から突出した少なくとも一つの隆起(10、18、19)をビット底の内面に備えていることを特徴とするビット。
【請求項16】
ビット底の内面の輪郭から突出した隆起が環状隆起(10、18、19)であることを特徴とする請求項15記載のビット。
【請求項17】
ビット底の内面の輪郭から突出した隆起が楕円形の隆起であることを特徴とする請求項15又は16記載のビット。
【請求項18】
隆起が全周で多数に寸断されていることを特徴とする請求項16又は17に記載のビット。
【請求項19】
ビット底の内面の輪郭から突出した隆起の高さが多様に形成されていることを特徴とする請求項15〜18の一つに記載のビット。
【請求項20】
円錐形空室(12、17)を形成するために、ビットシャンクの方向に斜め上方へ中央のドリルを収納するための穴(7、14)まで、半径方向内部領域(11)のビット底の内面の輪郭が延在することを特徴とする請求項15又は19に記載のビット。
【請求項21】
同軸上のビットシャンクを有する鉢形穿孔体又はクラウン部を備え、鉢形ビット部の外部筒形壁部が穿孔屑を運搬するために外側表面に運搬螺旋を有する、岩石、コンクリート等を穿孔するための回転衝撃式穿孔用ビットであって、ビットの外面運搬螺旋が穿孔屑排出溝(109)を備え、該穿孔屑排出溝(109)が端面側端部(114)の領域で最も緩やかな勾配を成し、排出溝(109)の勾配がビットシャンク端部に向けて溝幅の広がりに沿って高まり且つ背側突条幅(r)がビットの実質上の全体の高さ(h2)でほぼ一定であるビット。
【請求項22】
溝深さtが壁厚(s)の薄壁クラウン部(102)では一定又は多様であり且つ該壁厚(s)が3.5〜5mmであることを特徴とする請求項21記載のビット。
【請求項23】
穿孔ヘッドの領域の穿孔屑溝の勾配α1が2〜4°の値を有し、該勾配が運搬螺旋の背側領域で連続的又は非連続的に10〜15°の値α4に高まることを特徴とする請求項22又は21に記載のビット。
【請求項24】
運搬螺旋(109)の溝幅(n)が運搬螺旋のビットシャンク側領域へ向けて広くなることと、ビットの実質的領域の運搬螺旋突条の背側幅(r)が一定又はほぼ一定であるか又は極く僅かに広くなることを特徴とする請求項21〜23のいずれか一つに記載のビット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上のビットシャンクを有する鉢形穿孔体又はクラウン部を備え、鉢形ビット部の外部筒形壁部が穿孔屑を運搬するために外側表面に運搬螺旋を有する、岩石、コンクリート等を穿孔するための回転衝撃式穿孔用ビットであって、ビットの外面運搬螺旋が穿孔屑排出溝(109)を備え、該穿孔屑排出溝(109)が端面側端部(114)の領域で最も緩やかな勾配を成し、排出溝(109)の勾配がビットシャンク端部に向けて溝幅の広がりに沿って高まり且つ背側突条幅(r)がビットの実質上の全体の高さ(h2)でほぼ一定であるビット。
【請求項2】
溝深さtが壁厚(s)の薄壁クラウン部(102)では一定又は多様であり且つ該壁厚(s)が3.5〜5mmであることを特徴とする請求項1記載のビット。
【請求項3】
穿孔ヘッドの領域の穿孔屑溝の勾配α1が2〜4°の値を有し、該勾配が運搬螺旋の背側領域で連続的又は非連続的に10〜15°の値α4に高まることを特徴とする請求項1又は2に記載のビット。
【請求項4】
運搬螺旋(109)の溝幅(n)が運搬螺旋のビットシャンク側領域へ向けて広くなることと、ビットの実質的領域の運搬螺旋突条の背側幅(r)が一定又はほぼ一定であるか又は極く僅かに広くなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載のビット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−96048(P2006−96048A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311667(P2005−311667)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【分割の表示】特願平8−44912の分割
【原出願日】平成8年3月1日(1996.3.1)
【出願人】(596029007)ハヴェラ プロープスト ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】Hawera Probst GmbH
【Fターム(参考)】