説明

工作機械の異常復旧支援システム及び支援方法

【課題】工作機械の運転中に異常が発生したとき、オペレータがその原因を探し出して正常状態に復旧する作業を支援する技術に関し、異常メッセージや推定原因リストの表示及び状態センサの異常判定値を常に最適なものに更新する技術手段を提供する。
【解決手段】工作機械メーカに設置されたサーバー1と、ユーザ側に設置されている多数の工作機械2のNC装置4とをインターネット6で接続して、各工作機械2・・・の異常発生状態及びその原因をサーバー1に収集して蓄積し、その蓄積されたデータに基づいて異常メッセージ及び推定原因リストの内容や状態センサの異常判定値の設定値を適切なものに更新し、当該更新されたデータをインターネット6を通じて各機械のNC装置4に配信して、個々のNC装置4に設定されているこれらのデータを上書き更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械の運転中に異常が発生したとき、オペレータがその原因を探し出して正常状態に復旧する作業を支援する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
NC(数値制御)工作機械のNC装置は、PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)を備えており、NC工作機械が行う動作の殆どは、このPMCによるシーケンス制御で制御されている。シーケンス制御は、制御対象となる機械(工作機械)に動作指令を与え、機械からその動作の完了信号を受けた後、次の動作指令を与えることを基本とする制御で、機械にはそれぞれの動作の完了や実行状態を検出するセンサが設けられている。
【0003】
例えば、旋盤におけるワークの装填から加工動作の開始までの動作では、ローダからチャックへのワークの挿入完了信号を受けてチャック閉動作を指令し、チャック閉完了信号を受けてローダにワークのアンクランプ及び退避を指令し、ローダから退避完了信号を受けて主軸回転開始と刃物台の高速接近を指令し、主軸が定常回転に達したこと及び刃物台が加工開始位置に到達した信号を主軸モータ及び刃物台送りモータのサーボアンプから受けて切削液の供給開始を指令し、切削液の供給確認信号を受けて切削工程の開始を指令するという具合である。
【0004】
このような制御を行うために、NC工作機械には各種のセンサが設けられている。上記の例でいえば、ローダの状態を検出するセンサ、チャックの開状態及び閉状態を検出するセンサ、主軸回転数を検出するセンサ、切削液の供給を検出するセンサ、刃物台の位置を検出するセンサなどであり、具体的な検出機器としては、リミットスイッチ、チャック開閉用の油圧回路に設けた圧力スイッチ、回転検出用のエンコーダ、切削液の流路に設けた流量計、刃物台送りモータのサーボアンプなどである。このシーケンス制御において、NC装置が機械にある動作を指令してから、予め設定した所定時間が経過しても、その動作の完了信号ないし実現信号が戻ってこないと制御を次のステップ(工程)に進めることができなくなり、機械は異常停止する。
【0005】
また、工作機械には、機械の状態を検出するセンサも設けられている。例えば主軸軸受部の温度を検出している温度センサ、切削液タンクや作動油タンクの液面を検出している液面センサ、モータの電流を検出している電流計などである。機械が正常に動作しているときは、これらのセンサの検出値は所定のレベル以下、あるいは所定のレベル範囲に維持されており、検出値が所定のレベルを超えると、事故が発生する危険が生ずる。例えば、主軸軸受の温度が異常に高くなったときは、原因として潤滑油の供給の不良、主軸軸受の損傷、過大な切削負荷などが考えられ、ベアリングの焼きつきや工具折損などの事故が発生する危険がある。そこでこれらの状態センサには、異常判定値を予め設定しておき、その異常判定値を超えたときに、機械を停止させるという制御が行われている。
【0006】
今日の一般的なNC工作機械では、上記のような原因で機械が異常停止すると、NC装置のモニタにどのような異常が発生したか、及び推定されるその原因が表示されるようになっている。図3及び4は、NC旋盤が異常停止したときにNC装置のモニタに表示される表示例を示した図で、図3では、Tコード(工具のクランプアンクランプ?)が指令されたにも関わらず、その完了信号が戻ってこないために機械(制御)が停止していること及びその原因として1.〜4.に列記された原因が予測されることが表示されている。また、図4のものは、Mコードにより自動ドア開を指令した後、所定時間経過しても機械からドア開確認用のリミットスイッチからドア開の検出信号が返ってこないときに表示される表示の例で、1.〜4.にその推定原因が表示されている。
【0007】
機械が異常停止したとき、オペレータは、モニタに表示されたこれらの表示を参照して機械の状態を調査し、可能ならばその原因を自ら発見して復旧し、また、不可能であれば当該機械やNC装置のメーカに連絡して復旧を依頼したり、復旧方法を聞いたりするのである。
【0008】
NC装置のモニタにこのような異常状態及び推定原因リストを表示するためには、個々の機械のNC装置にどのような異常が生じたかを判定する異常判定手段及び各異常状態に対応する異常メッセージと推定原因リストの記憶手段(データテーブル)が備えられていなければならない。異常判定手段は、NC装置から出された指令と当該指令に対応して機械から返される応答(完了信号が返ってこないという応答も含む)から、また、状態センサの検出値と予め設定されている異常判定値の値との比較から、どの異常状態であるかを判定し、当該異常状態に対応する異常メッセージと推定原因リストをデータテーブルから検索して、それらをモニタに表示する。
【0009】
なお、上記のように工作機械の異常メッセージとその原因をモニタに表示する技術(特許文献1)や通信ネットワークを通じてサーバーと複数のNC装置との間で稼動情報を送受信する技術(特許文献2、3)及び通信ネットワークを通じて工作機械の異常状態を復旧する技術(特許文献4)などが既に提案されている。
【特許文献1】特開2004‐265034号公報
【特許文献2】特開2004‐265034号公報
【特許文献3】特開2004‐272414号公報
【特許文献4】特開平11‐119815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
モニタに表示する異常メッセージ及び推定原因リストの内容は、機械出荷時に機械メーカ側で設定される。また、機械に取り付けた温度センサなどの状態センサの異常判定値も機械出荷時に機械メーカ側で設定される。モニタに推定原因リストが表示されると、オペレータは、通常、リストの1番目から順にその表示に従ったチェックを行う。そこで推定原因リストは、発生頻度の高い原因順に表示している。異常発生の頻度は、主に経験によって定められるもので、それぞれの機械について、過去に生じた異常状態及びその原因データの集積を基にして推定原因リストの表示内容及びその表示順序が決定されている。
【0011】
そのため、全く新しく設計された機械や改良された機械、あるいはユーザの要求によって特殊な機能を付加した特殊仕様の機械などでは、原因別による異常発生の頻度が変化するということが起り、また、状態センサの異常判定値についても、従前の機械とは異なるレベルで判定しないと故障の危険が高くなる、あるいはより高いレベルに設定しても、故障発生のおそれがないというようなことが起こる。これらは当該機械をある程度の期間使用することによって初めて明らかになるものである。また、ユーザの業務形態の変化や就労形態の変化により、機械に作用する負荷が変化するとか、機械の運転状態が変化するということが起る。このような変化が起ると、原因別の異常発生頻度も変化し、従来はあまり起らなかった原因での異常が高い頻度で発生してくるということもある。
【0012】
前述したように、異常発生時にモニタに表示される内容は、機械出荷時に機械メーカ側で設定され、出荷後これを変更するためには、メーカの技術者がユーザ側に出向いて設定変更を行うという作業が必要であった。そのため、頻繁に設定変更を行うことができず、発生頻度の高い原因が推定原因リストの下位に表示されたままであったり、より低く設定すべき状態センサの異常判定値が高いままになっていたりするという問題があった。
【0013】
この発明は、このような問題を解決するためになされたもので、異常メッセージや推定原因リストの表示及び状態センサの異常判定値を常に最適なものに更新する技術手段を提供することにより、工作機械の異常修復をより適時・適切に行うことができるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、工作機械メーカに設置されたサーバー1と、ユーザ側に設置されている多数の工作機械2のNC装置4とをインターネット6で接続して、各工作機械2・・・の異常発生状態及びその原因をサーバー1に収集して蓄積し、その蓄積されたデータに基づいて異常メッセージ及び推定原因リストの内容や状態センサの異常判定値の設定値を適切なものに更新し、当該更新されたデータをインターネット6を通じて各機械のNC装置4に配信して、個々のNC装置4に設定されているこれらのデータを上書き更新することにより、上記課題を解決したものである。
【0015】
サーバー1に収集された異常履歴から状態センサ31・・・の異常判定値を決定すること、及び異常メッセージや推定原因リストをどのような内容に更新するかは、メーカ側の技術者が行い、サーバー1に新たな設定値や表示データを入力して記憶させる。更新されたデータの配信は、自動配信プログラムを用いてそれぞれの機械のNC装置4に自動的に配信される。
【0016】
この発明の異常修復支援システムは、複数のNC工作機械2と、インターネット6を介してこれらの機械のNC装置4のそれぞれに接続されたメーカ側のサーバー1とで構成される。個々の工作機械本体3のそれぞれは、状態センサ31・・・及びNC装置4から指令された動作の完了ないし実行状態を検出する確認センサ32・・・を備えている。個々のNC装置4は、状態センサ31・・・の異常判定値を記憶する判定値メモリ41・・・と、異常判定手段43によって判定されるそれぞれの異常状態に対応する異常メッセージ及び推定原因リストのデータテーブル46とを備えている。個々のNC装置4は、従来から一般的に設けられている異常履歴メモリ42、異常メッセージ及び推定原因リストを表示するモニタ52、異常原因がなにであったかをオペレータに入力させる原因入力手段44を備えている。入力された異常原因は、異常履歴メモリ42に記憶される。異常履歴メモリ42には、異常発生日時、発生した異常の種類、異常発生時の状態センサの検出値及びPMC状態(最後に発せられた指令とそのときの確認センサの信号)、オペレータによって入力された異常原因などのデータが記憶されている。更にNC装置4には、インターネット6を介してメーカ側のサーバー1とデータを送受信する受信手段47及び異常履歴メモリ42のデータの送信手段45、サーバーから更新された異常判定値及び異常メッセージと推定原因リストを受信して判定値メモリ41及びデータテーブル46を上書きする上書き手段48を備えている。
【0017】
メーカ側のサーバー1は、多数のNC装置4から受信した異常履歴データをデータベース形式で記憶した異常履歴テーブル12と、個々の機械ごとに又は同一種類の機械ごとに当該機械に設けた状態センサ31・・・の更新された異常判定値を記憶する更新判定値メモリ11・・・と、同一種類の機械ごとにそれぞれの異常状態に対応する異常メッセージと推定原因リストとを記憶する更新データテーブル16と、更新判定値メモリ11の値及び更新データテーブル16の異常メッセージと推定原因リストの作成・更新手段18と、更新判定値メモリのデータ及び更新データテーブル16のデータを通信ネットワーク6を介して対応する機械のNC装置4に送信する送信手段17とを備えている。
【0018】
サーバー1と遠隔地に設置された複数の工作機械をそれぞれ制御しているNC装置4とをインターネット6で接続し、当該複数のNC装置が記憶している異常履歴データを収集して前記サーバーに記憶させる。異常原因別に整理された上記異常履歴データ及びメーカーの試験加工などによって収集されたデータから、メーカーの技術者は、各工作機械ないし同一種類の工作機械ごとに異常発生状態を調査し、必要なときは、新たな異常判定値で更新判定値メモリ11の内容を書換え、データテーブル46のデータを書換える。書換えられた更新判定値メモリ11の内容及び更新データテーブル16のデータは、インターネット6を介してそれぞれの対応機械のNC装置に転送されて、当該NC装置の判定値メモリ41の内容及びデータテーブル46のデータを上書き更新する。
【0019】
ユーザー側の工作機械2ののオペレータは、工作機械が異常停止してその異常メッセージ及び推定原因リストが表示されたとき、表示された推定原因リストに従って機械ないしNC装置の状態チェックを行う。異常原因が発見されたときは、その異常原因を取除き、異常原因が何であったかをNC装置に入力して機械を再起動する。異常発生時の状態センサ31・・・の検出値及びPMC51の状態は、入力された異常原因と共に異常履歴メモリ42に記憶され、適時、インターネット6を介してサーバー1に送信される。サーバー1は、送られてきた異常履歴データを異常履歴テーブル12に追加記録する。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、過去にユーザに納品された工作機械2について、その異常を判定する判定値を、多数の同種機械の異常発生履歴や機械出荷後のメーカの試験などに基づいて更新された最新のものとすることができ、常に最新のデータに基づいて異常検出を行わせることができ、機械のより安全で効率的な運転を確保できる。また、過去に納品された工作機械において、異常停止したときの原因の発見や修復を支援するための表示内容を常に最新のものにしておくことができ、過去にユーザ側に設置された工作機械に異常が生じたときの復旧をより短時間で行うことができるようになるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に図面を参照して、この発明の実施形態を説明する。この発明の異常復旧支援システムは、工作機械メーカに設置されたサーバー1と、複数のユーザ側に設置されたNC工作機械2・・・と、これらを接続する公衆通信網(インターネット)6で構成される。各NC工作機械2は、機械本体3と、当該機械を制御するNC装置4とを備えており、各NC装置4は、PMC51及びモニタ52を備えている。
【0022】
図2には、機械本体3として旋盤が模式的に示されており、21はベッド、22は主軸台、23は主軸モータ、24は主軸先端のチャック、25はチャック開閉シリンダ、26ははタレット刃物台、27は切削液供給パイプ、28は刃物台29のZ軸送りモータである。機械本体3には、主軸軸受の温度を検出する温度センサ31a、ベッドの温度を検出する温度センサ31b、刃物台の振動を検出する振動センサ31cなどの状態センサ31が設けられており、これらの状態センサ31の検出信号は、NC装置4に入力されている。NC装置4には、状態センサ31・・・のそれぞれに対応して、その異常判定値を記憶する判定値メモリ41・・・を備えている。
【0023】
また、機械本体3には、ドアの開閉を検出するリミットスイッチ32a、ワークのクランプアンクランプを検出する圧力スイッチ32b、切削液の供給停止を検出する流量計32cなどの各種の確認センサ32が設けられており、これらの確認センサ32・・・の信号は、NC装置4のに入力されている。確認センサ32・・・の出力信号は、PMCの動作を規定するもので、PMC51が次の制御を実行するための条件が整っているかどうかは、確認センサ32・・・の出力を参照して判定される。機械が動作しているその時々のPMC状態は、機械に設けられている各種のアクチュエータ(モータ、油圧切換弁、圧力設定器など)への動作指令とこれらの確認センサ及びサーボアンプ33で検出されている指令信号とフィードバック信号との差信号などによって決定される。
【0024】
PMC51は、NC装置4に読み込まれた加工プログラム53及び加工プログラムに記述されたコードを実行させるために予めNC装置に登録されているマクロプログラム54に基づいて動作する。PMC51は、これらのプログラムに記述された動作を機械本体3に指令し、その動作完了信号を確認センサ32・・・やサーボアンプ33・・・から受け取った後、次のステップへと制御を進めている。
【0025】
機械本体3あるいはNC装置4に何らかのトラブルが発生すると、PMC51から指令信号が出力されたにも関わらず、その動作の完了信号が戻ってこないために機械が停止したままになる、あるいはNC装置4が次の動作指令を出すことができないという状態が起こる。この異常状態が生じたときの対応のために、NC装置4には異常判定手段43と、判定された各異常状態ごとに異常メッセージと推定原因リストを記憶するデータテーブル46を備えている。異常判定手段43は、状態センサ31・・・の検出信号とPMC状態とを常時監視しており、状態センサ31・・・の検出信号が異常判定値を超えたとき及びPMC状態が異常状態となったとき(PMCから指令された動作信号の完了信号が確認センサ32・・・やサーボアンプ33・・・から戻ってこない)が発生したとき、その異常状態の種類ごとに予め登されている異常メッセージと推定原因リストをモニタ52に表示する。この表示態様は、前述した図3及び図4に示したようなものである。
【0026】
この発明の異常復旧支援システムにおいては、異常状態が発生したときに、そのときの各状態センサ31・・・の検出値とPMC状態を記憶する異常履歴メモリ42及び当該異常履歴メモリの内容を通信ネットワーク6を介してサーバー1に送信する送信手段45とを備えている。一方、サーバー1は、複数のNC装置4から送られてくる異常状態データを受信する受信手段15と、受信したデータを体系的に記憶する異常履歴テーブル12とを備えている。体系的にとは、各工作機械ごとに及び各異常状態ごとに受信したデータを検索可能なデータベース形式で記憶するということである。
【0027】
サーバー1は、異常履歴テーブル12に蓄積されたデータの管理プログラムや解析プログラムを備え、これらのプログラムを利用して異常データを解析しその結果を表示するモニタ13を備えている。サーバー1には、ユーザ側に設置した機械やNC装置の品番ないしバージョンごとに機械に設けられている状態センサ31・・・の異常判定値を記憶する更新判定値メモリ11・・・及び異常メッセージと推定原因リストを記憶する更新データテーブル16を備えている。メーカのオペレータは、そのモニタ13に表示された異常履歴の解析結果に基づいて更新判定値メモリ11・・・や更新データテーブル16・・・の内容を書き換えることができる。サーバー1は、書き換えられた更新判定値メモリ11・・・や更新データテーブル16・・・の内容を通信ネットワーク6を通じて対応する工作機械のNC装置4に送信する送信手段17を備えている。一方、ユーザ側のNC装置4は、サーバー1から受信した判定更新値及び異常メッセージと推定原因リストで判定値メモリ41・・・及びデータテーブル46を上書きする上書き手段48を備えている。
【0028】
ユーザ側の技術者は、随時又はメーカから連絡を受けたときに、NC装置4を通信ネットワーク6を通してサーバー1に接続し、サーバーの更新判定値メモリ11・・・及び更新データテーブル16から、当該機械に対応する更新データを読み込んで当該NC装置の判定値メモリ41とデータテーブル46を上書きすることができる。これにより異常判定のための状態センサ31・・・の判定値及び異常が生じたときの異常メッセージと推定原因リストの内容や表示順を最新のものに更新することができる。
【0029】
サーバー1は、異常履歴データを機械ごとに記憶することができる。また、推定原因リストは、個々の異常状態ごとにテーブル形式で記憶し、そのテーブルのレコードごとに発生頻度に関連した数字を登録しておくことができる。一方、サーバー1は、ユーザ側の複数の機械全体について異常状態ごとにその異常原因の発生頻度を解析することができ、その頻度に基づいてテーブル形式で記憶した異常原因ごとに多数の工作機械全体としての発生頻度に関連した数値を登録しておくことができる。前者の数値は個々の機械についての異常原因の発生頻度を表し、後者の数値は同一品番の総ての機械についての異常原因の発生頻度を表すことになる。そこで例えば個々の機械の発生頻度を示す数字と機械全体の異常原因の発生頻度との中間値で個々の機械に対する異常原因の重みづけをし、これを発生頻度順にソートして当該機械のデータテーブル46を上書きするという処理も可能である。このような処理によれば、個々の機械の特性と同一仕様の多数の機械の特性とを勘案した異常判定値の更新や推定原因リストの表示順の更新を行うことがを可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】システム全体を示すブロック図
【図2】工作機械側のブロック図
【図3】異常停止時のモニタの表示例を示した図
【図4】異常停止時のモニタの他の表示例を示した図
【符号の説明】
【0031】
1 サーバー
2 工作機械
4 NC装置
6 インターネット
15 データ受信手段
16 更新データテーブル
17 データ送信手段
31 状態センサ
41 判定値メモリ
42 異常履歴メモリ
43 異常判定手段
44 原因入力手段
45 データの送信手段
46 データテーブル
47 データ受信手段
48 上書き手段
51 PMC
52 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバー(1)を設置し、当該サーバーと多数の工作機械(2)のそれぞれを制御しているNC装置(4)とをインターネット(6)で接続し、サーバー(1)に記憶された異常発生推定原因リストのデータを当該インターネットを介して各NC装置に送信し、当該送信したデータで各工作機械に記憶されている推定原因リストを更新することを特徴とする、工作機械の異常復旧支援方法。
【請求項2】
各工作機械(2)で発生した発生原因を含む異常履歴データをインターネット(6)を介してサーバー(1)に送信し、サーバー(1)は上記送信されたデータをデータベース形式で記憶することを特徴とする、請求項1記載の異常復旧支援方法。
【請求項3】
サーバー(1)に各工作機械に設けた状態センサ(31)・・・の異常判定更新値を記憶し、記憶した異常判定更新値を前記インターネット(6)を介して各NC装置(4)に送信し、当該送信した異常判定更新値で各NC装置(4)に記憶されている異常判定値を更新することを特徴とする、請求項1記載の工作機械の異常復旧支援方法。
【請求項4】
サーバー(1)と、通信ネットワーク(6)を介してこのサーバーに接続された複数のNC装置(4)と、各NC装置で制御されている工作機械(2)とを備え、
前記サーバー(1)は、通信ネットワーク(6)を経由してそれぞれのNC装置(4)とデータを送受信する送受信手段(15,17)と、各異常状態毎の推定原因リストの記憶手段(16)とを備え、
NC装置(4)は、異常状態別の異常メッセージ及び推定原因リストの記憶手段(46)と、異常メッセージ及び推定原因リストを表示するモニタ(52)と、異常判定手段(43)と、通信ネットワーク(6)を経由するデータ送受信手段(45,47)と、推定原因リストの更新手段(48)とを備え、請求項1記載の方法を実施する、異常復旧支援システム。
【請求項5】
サーバー(1)と、インターネット(6)を介してこのサーバーに接続された複数のNC装置(4)と、各NC装置で制御されている工作機械本体(3)とを備え、
前記サーバーは、通信ネットワークを経由してそれぞれのNC装置(4)とデータを送受信する送受信手段(15,17)と、受信したデータの記憶手段(12)と、各工作機械(2)に設けた状態センサ(31)・・・の異常判定値の記憶手段(41)と、各異常状態毎の推定原因リストの記憶手段(46)とを備え、
NC装置(4)は、工作機械に設けた状態センサ(31)・・・の異常判定値を記憶した判定値メモリ(41)と、異常状態別の異常メッセージ及び推定原因リストの記憶手段(46)と、異常メッセージ及び推定原因リストを表示するモニタ(52)と、異常判定手段(43)と、異常原因の入力手段(44)と、異常発生時のPMC(51)の状態及び各状態センサ(31)・・・の検出値及び入力された異常原因データを記憶する異常履歴メモリ(42)と、通信ネットワーク(6)を経由するデータ送受信手段(45,47)と、判定値メモリ(41)の内容及び推定原因リストの更新手段(48)とを備え、
請求項3記載の方法を実施する、異常復旧支援システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−175793(P2009−175793A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10722(P2008−10722)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000212566)中村留精密工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】