説明

差動式アクチュエータ、同差動式アクチュエータを構成機構とする差動式クラッチおよび車両用駆動力伝達装置

【課題】被アクチュエータをクラッチ機構とし差動式アクチュエータをカム機構とする車両用駆動力伝達装置において、条件に応じて従動側の車輪への伝達トルクを小さくして、騒音、振動、粗い乗り心地等、振動騒音現象の問題を回避し、併せて、駆動系の加熱問題を解消し、燃費の向上を図る。
【解決手段】差動式アクチュエータであるカム機構10bを、両カム部材15,16の一方に連結する入力部材の回転による遠心力に応じて、カムボール17をカム溝19の第1のカム溝部19aと第2のカム溝部19b間を移動するように構成して、カムボール17を、入力部材の回転速度が小さい場合には第1のカム溝部19aに位置させて入力部材の角加速度に応じた推力を発生させ、入力部材の回転速度が大きい場合には第2のカム溝部19bに位置させて入力部材の角加速度によらない小さな推力を発生させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動式アクチュエータ、当該差動式アクチュエータを一構成機構とする差動式クラッチ、および、当該差動式アクチュエータを一構成機構とする車両用駆動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被アクチュエータを作動させるためのアクチュエータの一形式として、互いに同軸的かつ相対回転可能に位置して対向する一対のカム部材と、これらカム部材間に設けたカム溝に介在するカムボールを有する形式の差動式アクチュエータがある。当該形式の差動式アクチュエータは、所謂カム機構であって、両カム部材の相対回時にカム溝内を転動するカムボールによって両カム部材を軸方向に離間して推力を発生させるもので、当該推力を被アクチュエータに作動力として付与すべく機能する。しかして、当該形式の差動式アクチュエータには、対象とする被アクチュエータを所望のタイミングで作動させることや、被アクチュエータを所望の作動態様に作動させることが要請される。かかる要請に対処すべき差動式アクチュエータについては、多板クラッチを被アクチュエータとする差動式クラッチの形態で、「トルク伝達装置」なる名称で提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
当該トルク伝達装置は、四輪駆動車を構成する速度差感応型動力伝達装置と並列して使用されて、当該動力伝達装置の作動態様を補足すべく機能するものである。当該トルク伝達装置を構成する差動式アクチュエータにおいては、第1のカム部材は入力側トルク伝達部材に連結され、かつ、第2のカム部材は入力側トルク伝達部材および出力側トルク伝達部材とは非連結状態で第1のカム部材に対向して位置し、第2のカム部材を遠心ウェイトとしても機能させて、遠心ウェイトに遠心力が作用している場合には被アクチュエータである多板クラッチが結合し、かつ、遠心ウェイトに遠心力が作用していない場合には多板クラッチの結合が解除されるように構成されている。
【0004】
当該トルク伝達装置は、車両の加速時や減速時に回転加速度が生じると、等速回転を維持しようとする第2のカム部材(遠心ウェイト)の慣性を受けてカムボールが動作して多板クラッチを結合させ、入力側トルク伝達部材と出力側トルク伝達部材とをトルク伝達可能に連結する。
【0005】
このように機能する当該トルク伝達装置を、四輪駆動車の後輪側のトルク伝達軸間に介在すれば、車両の発進時のように前後輪間に発生する回転差が小さい場合でも、回転加速度が生じると直ちに後輪側に駆動力が伝達されて、車両は四輪駆動走行状態を形成して、車両をスムーズに発進させることができる。また、車両が悪路を走行中に前輪が空転したような場合のように、前後輪間に大きな回転差が生じたときには、後輪側にそれだけ大きな駆動力が迅速に伝達され、車両の悪路からの脱出性が大幅に向上する。
【0006】
従って、当該トルク伝達装置を速度感応型動力伝達装置と並列して使用すれば、回転差の発生時はトルク伝達装置がトルク伝達を行い、差動回転速度が大きくなって回転加速度が下がると、多板クラッチの結合が解除されて、トルク伝達は速度感応型動力伝達装置に引き継がれる。当該トルク伝達装置は、このように、速度感応型動力伝達装置と併用されて、速度感応型動力伝達装置の機能を効果的に補足する。
【特許文献1】特開平9−296833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、当該形式の差動式アクチュエータにおいては、対象とする被アクチュエータによっては、さらに種々の作動態様が採れるように、被アクチュエータを作動することを要請されることがある。例えば、被アクチュエータが後輪側のトルク伝達軸を構成する入力軸と出力軸間に介在して、これら両軸間のトルク伝達可能な連結を断続する差動式クラッチや、同差動式クラッチを構成機構とする駆動力伝達装置である場合には、入力軸の角速度変化(角加速度)を利用してトルク伝達特性を増減させるように作動させて、トラクション性能の確保と、タイトコーナブレーキングの回避の両立を可能にすることが要請される。
【0008】
従って、本発明の目的は、差動式クラッチや、同差動式クラッチを構成機構とする駆動力伝達装置において、車両の駆動側の車輪がスリップを生じるような低中速急発進時等には、従動側の車輪への伝達トルクを大きくして、トラクション性能を確保し得るようにするとともに、高速走行時における急峻な回転速度変化を伴う高速制動時等の車両走行状態、または、入力軸と出力軸間に差動回転は存在するものの、急峻な回転速度変化を伴わないタイトコーナ旋回時、高速定常走行時、応急用タイヤ(所謂テンパタイヤ)装着時等の車両走行状態では、従動側の車輪への伝達トルクを小さくして、騒音、振動、粗い乗り心地等、振動騒音現象(NVH)の問題を回避することができるようにすることにあり、併せて、上記した各作動態様を有して、駆動系の加熱問題を回避し、燃費の向上を図ることができるようにすることにある。
【0009】
本発明では、被アクチュエータを、上記した各作動態様を採ることができるように作動させる差動式アクチュエータ、当該差動式アクチュエータを一構成機構とする差動式クラッチ、および、当該差動式アクチュエータを一構成機構とする車両用駆動力伝達装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、差動式アクチュエータ、当該差動式アクチュエータを一構成機構とする差動式クラッチ、および、当該差動式アクチュエータを一構成機構とする車両用駆動力伝達装置に関する。
【0011】
本発明に係る差動式アクチュエータは、互いに同軸的かつ相対回転可能に位置して対向する一対のカム部材と、これらカム部材間に設けたカム溝に介在するカムボールを有し、前記両カム部材の相対回転時に前記カム溝内を転動する前記カムボールによって前記両カム部材を軸方向に離間して推力を発生させ、同推力を被アクチュエータに作動力として付与する形式の差動式アクチュエータである。
【0012】
しかして、本発明に係る差動式アクチュエータにおいては、前記カム溝は、前記両カム部材の周方向に延びる第1のカム溝部と、同第1のカム溝部の一部を基点として前記両カム部材の半径方向の外周側に延びる第2のカム溝部を一体に有し、前記カムボールが遠心力の作用によって、前記第1のカム溝部と前記第2のカム溝部間を移動可能に構成され、かつ、前記カムボールと前記カム溝のカムボール転動面との接触角であるカム角度は、前記第2のカム溝部のカム角度が前記第1のカム溝部のカム角度に比較して大きく設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る差動式アクチュエータにおいては、前記カム溝を構成する第2のカム溝部を、前記第1のカム溝部の周方向の略中央部から前記両カム部材の径方向の外周側に延びる構成として、同第2のカム溝部の周方向の幅を、前記第1のカム溝部の周方向の幅に比較して幅狭に形成するようにすることができる。また、本発明に係る差動式アクチュエータにおいては、前記カムボールと前記カム溝のカムボール転動面との接触角であるカム角度を、前記両カム部材の相対回転の一方向側と他方向側で互いに異なるように構成することができる。
【0014】
また、本発明に係る差動式アクチュエータにおいては、前記両カム部材のカム溝に介在する前記カムボールを、所定のバネ力にて前記両カム部材の径方向の外周側への移動を規制して、非作動時には、同カムボールを前記第1のカム溝部内に位置させるように構成することができる。また、本発明に係る差動式アクチュエータにおいては、前記カム溝を構成する第2の溝部の両カム部材間の溝幅を、前記両カム部材の半径方向の外周側に漸次幅拡になるように形成することができる。
【0015】
本発明に係る差動式クラッチは、本発明に係る差動式アクチュエータを一構成機構とする差動式クラッチである。本発明に係る差動式クラッチは、互いに同心的かつ相対回転可能に位置する外側回転部材および内側回転部材と、これら両回転部材が形成するクラッチハウジング内に配置されているクラッチ機構と、前記両回転部材間に配置されて前記クラッチ機構の一側に位置する差動式アクチュエータとを備え、前記差動式アクチュエータを構成する両カム部材は互いに相対回転可能に対向して、これら両カム部材のいずれか一方のカム部材が前記両回転部材の一方に一体回転可能かつ軸方向へ移動可能に連結していて、前記一方のカム部材が軸方向へ移動する移動力を前記クラッチ機構を動作させる作動力とすることを特徴とするものである。
【0016】
本発明に係る差動式クラッチにおいては、被アクチュエータである前記クラッチ機構として、多板式のクラッチ機構を採用することができ、また、粘性流体式のクラッチ機構を採用することができる。被アクチュエータとして多板式のクラッチ機構を採用したものにあっては、前記差動式アクチュエータを構成する前記一方のカム部材を介して、前記クラッチ機構を押圧して同クラッチ機構を摩擦係合し、前記両回転部材を互いにトルク伝達可能に連結すべく機能する構成とすることができる。また、被アクチュエータとして粘性流体式のクラッチ機構を採用したものにあっては、前記差動式アクチュエータを構成する前記一方のカム部材を介して、前記クラッチ機構を構成する各アウタクラッチプレートおよび各インナクラッチプレート間の隙間を規定するバネ部材を押圧して、前記各クラッチプレート間の隙間を調整すべく機能する構成とすることができる。
【0017】
本発明に係る車両用駆動力伝達装置は、本発明に係る差動式アクチュエータを一構成機構とする車両用駆動力伝達装置であって、車両の駆動軸を構成する入力軸と出力軸間に配設されて、前記入力軸のトルクを前記出力軸に伝達すべく機能するものである。本発明に係る車両用駆動力伝達装置は、互いに同心的かつ相対回転可能に位置し前記入力軸または前記出力軸の一方にトルク伝達可能に連結される外側回転部材および他方にトルク伝達可能に連結される内側回転部材と、これら両回転部材が形成するクラッチハウジング内に配置されている多板式のクラッチ機構と、前記両回転部材間に配置されて前記クラッチ機構の一側に位置する差動式アクチュエータとを備えるものである。
【0018】
しかして、本発明に係る車両用駆動力伝達装置で採用されている被アクチュエータである前記クラッチ機構は、前記クラッチハウジングを構成する外側回転部材の内周にスプライン嵌合して軸方向に移動可能に連結された複数のアウタクラッチプレートと、前記クラッチハウジングを構成する内側回転部材の外周にスプライン嵌合して軸方向に移動可能に連結されて前記各アウタプレートとは交互に位置する複数のインナクラッチプレートを有し、前記差動式アクチュエータを構成する両カム部材は互いに相対回転可能に対向して、これら両カム部材のいずれか一方のカム部材が前記両回転部材の一方に一体回転可能かつ軸方向へ移動可能に連結し、前記差動式アクチュエータは、前記一方のカム部材を介して、前記クラッチ機構を押圧して同クラッチ機構を摩擦係合して、前記両回転部材を互いにトルク伝達可能に連結して車両を前後輪駆動走行状態に形成すべく機能することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る差動式アクチュエータにおいては、両カム部材間に介在するカムボールが遠心ウェイトとしても機能し、両カム部材の一方に連結する入力部材の回転による遠心力に応じて、カムボールは、カム溝の第1のカム溝部から第2のカム溝部側に移動するとともに、カム溝の第2のカム溝部から第1のカム溝部側に移動する。すなわち、カムボールは、入力部材の回転速度が小さい場合には第1のカム溝部に位置して、大きな推力を発生させ、また、入力部材の回転速度が大きい場合には第2のカム溝部に位置して、小さな推力を発生させことになる。
【0020】
従って、本発明に係る差動式アクチュエータを利用して、被アクチュエータを作動する場合には、被アクチュエータは、入力部材の回転速度に応じて、所望の作動態様を採ることができる。本発明に係る差動式アクチュエータが作動する被アクチュエータが多板式のクラッチ機構である場合には、クラッチ機構は、付与される推力に応じて摩擦係合力を増減することから、入力部材の回転速度に応じてクラッチの摩擦係合力を変化させることができ、被アクチュエータが置かれた環境に応じて、入力部材から出力部材に伝達されるトルクを調整することができる。また、被アクチュエータが粘性流体式のクラッチ機構である場合には、各クラッチプレートの隙間を規定してるバネ部材に対する押圧力を入力部材の回転速度に応じて変化させることができ、被アクチュエータが置かれた環境に応じて、入力部材から出力部材に伝達されるトルクを調整することができる。
【0021】
本発明に係る差動式アクチュエータにおいて、カム溝を構成する第2のカム溝部を、第1のカム溝部の周方向の略中央部から両カム部材の径方向の外周側に延びる構成として、同第2のカム溝部の周方向の幅を、第1のカム溝部の周方向の幅に比較して幅狭に形成すれば、入力部材の回転速度が大きくなった場合には、カムボールは第1のカム溝部から第2のカム溝部への移動が円滑になされ、トルク伝達を素早く抑えることができるという利点がある。この場合、カムボールを、所定のバネ力にて両カム部材の径方向の外周側への移動を規制して、非作動時には、カムボールを第1のカム溝部内に位置させるように構成すれば、入力部材の回転速度が小さい場合と大きい場合のアクチュエータの作動の応答性、換言すれば、作動の節度感を向上させることができるという利点がある。
【0022】
また、本発明に係る差動式アクチュエータにおいて、カムボールとカム溝のカムボール転動面との接触角であるカム角度を、両カム部材の相対回転の正逆方向で互いに異なるように構成すれば、被アクチュエータが車両の後輪側の駆動軸の途中に配設されるクラッチ機構である場合には、車両の加速時には、強いクラッチ締結力を得ることができるとともに、ブレーキ作動時等車両の減速時には、クラッチ締結力を車両加速時よりも弱くすることができるという利点がある。
【0023】
また、本発明に係る差動式アクチュエータにおいて、第2のカム溝部の両カム部材間の方向の溝幅を、両カム部材の半径方向の外周側に漸次幅拡に形成すれば、被アクチュエータがクラッチ機構である場合、両カム部材の高速回転時における引き摺りトルクを低減させることができるという利点がある。
【0024】
本発明に係る各差動式アクチュエータは、多板式のクラッチ機構や粘性流体式のクラッチ機構を被アクチュエータとする差動式クラッチに好適に採用することができ、これにより、本発明に係る差動式クラッチは、上記した差動式アクチュエータで詳述している各作用効果と同等の作用効果を奏することができる。また、本発明に係る各差動式アクチュエータは、多板式のクラッチ機構を被アクチュエータとする車両用駆動力伝達装置に好適に採用することができる。
【0025】
本発明に係る車両用駆動力伝達装置においては、本発明に係る各差動式アクチュエータを採用して、被アクチュエータである多板式のクラッチ機構を、入力軸の遠心力に応じて作動するように構成したものである。当該駆動力伝達装置においては、前後輪間に回転差が発生していない場合には、クラッチ機構を構成するアウタクラッチプレートとインナクラッチプレートとは一体的に回転していて、クラッチ機構は非作動の状態にあるが、前後輪間に回転差が発生すると、差動式アクチュエータであるカム機構が作動して推力を発生させ、カム機構を構成する両カム部材の一方のカム部材を介して、クラッチ機構を構成する各クラッチプレートを推力に応じて押圧して、各クラッチプレートを互いに摩擦係合する。これにより、外側回転部材と内側回転部材とは、互いにトルク伝達可能に連結され、入力軸に連結する回転部材から出力軸に連結する回転部材側にトルクが伝達され、車両を前後輪駆動走行状態に形成する。
【0026】
このため、当該駆動力伝達装置を搭載する車両においては、トルクの入力軸と出力軸間に差動回転は存在するが、急峻な回転速度変化を伴わないタイトコーナ旋回時、高速定常走行時、応急用タイヤ(所謂テンパタイヤ)装着時等の車両走行状態では、従動側車輪に対する伝達トルクは小さいトルクに維持される。また、高速走行時における急峻な回転速度変化を伴う高速制動時等の車両走行状態では、差動式アクチュエータを構成するカム機構のカムボールは、高速回転による遠心力に基づいて、常態で位置するカム溝の第1のカム溝部から第2のカム溝部に移行しており、このため、小さな推力が発生し、小さい伝達トルクに維持される。これにより、上記した走行状態時の車両における騒音、振動、粗い乗り心地等振動騒音現象(NVH)を大きく抑制することができ、かつ、駆動系の加熱問題を回避し、燃費の向上を図ることができる。
【0027】
一方、当該駆動力伝達装置を搭載する車両において、駆動側の車輪がスリップを生じるような急峻な回転速度変化を伴う低中速急発進等が発生した場合には、差動式アクチュエータを構成するカム機構のカムボールは、常態で位置するカム溝の第1のカム溝部にて大きな推力を発生させる。当該推力は、両カム部材の一方のカム部材を介して、クラッチ機構を構成する各クラッチプレートを強く押圧して、各クラッチプレートを強く結合する。このため、入力軸に連結する回転部材から出力軸に連結する回転部材側には大ききなトルクが伝達されて、車両を前後輪駆動走行状態に形成する。これにより、従動側の車輪への伝達トルクが大きくなって、トラクション性能が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、差動式アクチュエータ、当該差動式アクチュエータを一構成機構とする差動式クラッチ、および、当該差動式アクチュエータを一構成機構とする車両用駆動力伝達装置である。図1〜図3には、本発明に係る車両用駆動力伝達装置の一実施形態を示している。当該駆動力伝達装置は、本発明に係る差動式アクチュエータをアクチュエータとし、多板式のクラッチ機構を被アクチュエータとするもので、車両の駆動軸を構成する入力軸と出力軸間に配設されて、入力軸のトルクを出力軸に伝達すべく機能する駆動力伝達装置である。図4には、当該駆動力伝達装置を搭載した四輪駆動車を示している。
【0029】
当該駆動力伝達装置10は、図4に示すように、前輪駆動をベースとする車両の後輪側への駆動力伝達経路に搭載されて四輪駆動車を構成する。当該四輪駆動車において、トランスアクスル21は、トランスミッション、トランスファおよびフロントディファレンシャルを一体に備えるもので、エンジン22から出力される駆動力を、トランスアクスル21のフロントディファレンシャル23を介して両アクスルシャフト24a,24aに出力して、左右の前輪24b,24bを駆動させるとともに、第1プロペラシャフト25側に出力する。第1プロペラシャフト25は、駆動力伝達装置10を介して第2プロペラシャフト26に連結されていて、駆動力伝達装置10が両プロペラシャフト25,26をトルク伝達可能に連結している場合には、第1プロペラシャフト25の駆動力(トルク)は第2プロペラシャフト26を介してリヤディファレンシャル27に伝達される。リヤディファレンシャル27は、入力された駆動力を両アクスルシャフト28a,28aへ出力して、左右の後輪28b,28bを駆動させる。
【0030】
駆動力伝達装置10は、図1に示すように、被アクチュエータである多板式のクラッチ機構10aと、差動式アクチュエータであるカム機構10bを主要構成機構とするものである。当該駆動力伝達装置10は、軸心を中心として略対称に構成されていることから、図1には、軸心を中心とする一方側の断面のみを示している。
【0031】
駆動力伝達装置10は、外側回転部材であるアウタハウジング11と、アウタハウジング11内に同心的に位置する内側回転部材であるインナシャフト12と、クラッチ機構10aと、カム機構10bにて構成されている。アウタハウジング11は、円筒状のハウジング部11aと、ハウジング部11aの一端開口部を覆蓋するカバー部11bからなる。インナシャフト12は、中空状のシャフトであって、アウタハウジング11のカバー部11bの中心を貫通した状態で、ハウジング部11a内に挿入された状態にあって、アウタハウジング11内にて、回転可能かつ液密的に支持されている。この状態において、アウタハウジング11とインナシャフト12とは、ハウジング11a内をクラッチハウジングに形成している。クラッチ機構10aは、当該クラッチハウジング内に位置し、かつ、カム機構10bは、当該クラッチハウジング内にてクラッチ機構10aの一側に位置している。
【0032】
クラッチ機構10aは、多数のアウタクラッチプレート13と、多数のインナクラッチプレート14を備えている。各アウタクラッチプレート13は、その外周縁にて、ハウジング部11aの内周にスプライン嵌合されて、軸方向へ移動可能に組付けられており、各インナクラッチプレート14は、その内周縁にて、インナシャフト12の外周にスプライン嵌合されて、各アウタクラッチプレート13と交互に位置して、軸方向へ移動可能に組付けられている。
【0033】
差動式アクチュエータであるカム機構10bは、第1のカム部材15、第2のカム部材16、カムボール17、および、バネ部材18にて構成されている。第1のカム部材15は、アウタハウジング11のハウジング部11a内に位置する円盤状のものであって、アウタハウジング11とは相対回転可能になっている。第1のカム部材15は、中心部に所定の直径の貫通孔を有していて、当該貫通孔を挿通しているインナシャフト12とは相対回転可能である。第2のカム部材16は、中心部に所定の直径の貫通孔を有する円盤状のものであって、第1のカム部材15とクラッチ機構10aとの間に位置している。インナシャフト12は、当該貫通孔を挿通しているインナシャフト12とは相対回転可能であって、アウタハウジング11のハウジング部11aの内周にスプライン嵌合されていて、アウタハウジング11の内周に軸方向へ移動可能に連結している。
【0034】
カム機構10bを構成する両カム部材15,16においては、これらの互いに対向する対向面に、周方向に等間隔を保持して複数のカム溝19が設けられている。カム溝19は、両カム部材15,16の対向面に形成されている凹所15a,16aが対向して形成しているもので、図1〜図3に示すように、両カム部材15,16の周方向へ略円弧状に延びる第1のカム溝部19aと、第1のカム溝部19aの周方向の中央部から両カム部材15,16の半径方向の外周側へ延びる第2のカム溝部19bにて構成されている。当該カム溝19においては、カムボール17とカムボール転動面との接触角であるカム角度は、図3(a),(b)にて示すように、第1のカム溝部19aにおけるカム角度θ1に比較して、第2のカム溝部19bにおけるカム角度θ2が大きく設定されている。また、両カム部材15,16の両凹所15a,16aの側壁面15a1,16a1は、両カム部材15,16の径方向の外周側に向かって、互いに漸次離間する傾斜面に形成されている。なお、図3(c)には、第1のカム溝部19aの周方向における左右のカム角度θ3,θ4を互いに非対称に設定した例を示している。
【0035】
当該カム機構10bを構成するバネ部材18は、円弧状に所定長さ延びる細幅で帯状の板バネであって、基端部を第2のカム部材16に植設された状態で、両カム部材15,16の両凹所15a,16a間の径方向の中間を周方向へ所定長さ延びていて、第1のカム溝部19aに位置するカムボール17の第2のカム溝部19b側への移動を、所定のバネ力にて規制している。当該バネ部材18は、カムボール17に大きな遠心力が作用していない常態では、カムボール17を第1のカム溝部19a内に位置すべく機能する。
【0036】
当該駆動力伝達装置10は、アウタハウジング11の他端側の連結壁部11cにて第1プロペラシャフト25にトルク伝達可能に連結され、かつ、インナシャフト12にて第2プロペラシャフト26にトルク伝達可能に連結されて、図4に示すように、車両の後輪側への駆動力伝達経路に搭載されて四輪駆動車を構成する。
【0037】
当該四輪駆動車においては、前後輪間に差動回転が発生した場合には、差動式アクチュエータであるカム機構10bが差動して、アクチュエータであるクラッチ機構10aを差動回転に応じて摩擦係合して、アウタハウジング11とインナシャフト12を、差動回転に応じたトルク伝達状態に連結させる。これにより、第1プロペラシャフト25と第2プロペラシャフト26は、当該駆動力伝達装置10を介して互いにトルク伝達可能に連結し、第1プロペラシャフト25の駆動力を差動回転に応じて第2プロペラシャフト26に伝達して、車両を前後輪24b,28bが共に駆動する四輪駆動走行状態を形成する。
【0038】
しかして、当該車両に搭載されている当該駆動力伝達装置10においては、差動式アクチュエータであるカム機構10bは、被アクチュエータである多板式のクラッチ機構10aを、入力軸である第1プロペラシャフト24の回転速度と角加速度に応じて作動するように構成されている。
【0039】
当該駆動力伝達装置10においては、前後輪24b,28b間に回転差が発生していない場合には、クラッチ機構10aを構成するアウタクラッチプレート13とインナクラッチプレート14とは一体的に回転していて、クラッチ機構10aは非作動の状態にあるが、前後輪24b,28b間に回転差が発生すると、カム機構10bが作動して推力を発生させ、第2のカム部材16を介して、クラッチ機構10aを構成する各クラッチプレート13,14を推力に応じて押圧して、各クラッチプレート13,14を互いに摩擦係合させる。これにより、アウタハウジング11とインナシャフト12とは、互いにトルク伝達可能に連結され、第1プロペラシャフト25から入力される駆動力が第2プロペラシャフト26に伝達され、車両は前後輪駆動走行状態となる。この場合、後輪側に伝達される駆動力は、前後輪24b,28b間の差動回転に応じたものとなる。
【0040】
このため、当該車両においては、前後輪24b,28b間に差動回転は存在するが、急峻な回転速度変化を伴わないタイトコーナ旋回時、高速定常走行時、応急用タイヤ(所謂テンパタイヤ)装着時等の車両走行状態では、従動側である後輪28bに対する伝達トルク(駆動力)は、入力角速度の小さな変化に基づいて小さいトルクに維持される。また、高速走行時における急峻な回転速度変化を伴う高速制動時等の車両走行状態では、カム機構10bを構成するカムボール17は、高速回転による遠心力に基づいて、常態で位置するカム溝19の第1のカム溝部19aからバネ部材18に抗して第2のカム溝部19bに移行しており、このため、当該カム機構10bでは、常態で発生する推力より小さな推力が発生し、小さい伝達トルクに維持される。これにより、上記した前後輪駆動走行状態時の車両における騒音、振動、粗い乗り心地等振動騒音現象(NVH)を大きく抑制することができ、かつ、駆動系の加熱問題を回避し、燃費の向上を図ることができる。
【0041】
一方、当該駆動力伝達装置10を搭載する車両において、駆動側である前輪24bがスリップを生じるような急峻な回転速度変化を伴う低中速急発進等が発生した場合には、カム機構10bを構成するカムボール17は、第1プロペラシャフト25における入力の角速度の大きな変化に基づいて、常態で位置するカム溝19の第1のカム溝部19aにて大きな推力が発生する。当該推力は、第2のカム部材16を介して、クラッチ機構10aを構成する各クラッチプレート13,14を強く押圧して、各クラッチプレート13,14を強く結合する。このため、第1プロペラシャフト25に連結されているアウタハウジング11からインナシャフト12には、差動回転に応じた大きな駆動力が伝達される。これにより、後輪28bへ伝達さる駆動力(伝達トルク)が大きくなって、車両のトラクション性能が確保されることになる。
【0042】
当該車両に搭載されている駆動力伝達装置10においては、差動式アクチュエータであるカム機構10bを構成するカム溝19の第2のカム溝部19bを、第1のカム溝部19aの周方向の略中央部から両カム部材15,16の径方向の外周側に延びる構成として、第2のカム溝部19bの周方向の幅を、第1のカム溝部19aの周方向の幅に比較して幅狭に形成している。このため、第1プロペラシャフト24の回転速度が大きくなった場合には、カムボール17は第1のカム溝部19aから第2のカム溝部19bへの移動が円滑になされ、入力角加速度によるトルク伝達を素早く抑えるという利点があり、また、カムボール17を、バネ部材18の所定のバネ力にて、第2のカム溝部19b側への移動を規制する構成と採っているので、第1プロペラシャフト24の回転速度が小さい場合と大きい場合とでのカム機構10bの作動性の節度感を、一段と向上させることができるという利点がある。
【0043】
また、当該駆動力伝達装置10においては、第2のカム溝部19bの両カム部材15,16間の方向の溝幅を、両カム部材15,16の半径方向の外周側に漸次幅拡に形成しているため、両カム部材15,16の高速回転時には、カムボール17は第2のカム溝部19bにおける最大溝幅の部位に位置することになって、カムボール17の非作動時における、クラッチ機構10aで生じるおそれがある引き摺りトルクを大幅に抑制することができるという利点がある。
【0044】
また、当該駆動力伝達装置10において、カムボール17とカム溝19のカムボール転動面との接触角であるカム角度θを、両カム部材15,16の相対回転の正逆方向で互いに異なるように構成すれば、換言すれば、図3(c)に示すように、両カム部材15,16の周方向における左右のカム角度θ3,θ4を互いに異なる角度に構成すれば、当該車両の加速時には、強いクラッチ締結力を得ることができるとともに、ブレーキ作動時等車両の減速時には、クラッチ締結力を車両加速時よりも弱くすることができるという利点がある。
【0045】
なお、本実施形態では、被アクチュエータとして、多数のアウタクラッチプレート13と多数のインナクラッチプレート14を備える多板式のクラッチ機構10aを採用した例を示しているが、当該クラッチ機構10aに代えて、粘性流体を封入されたビスカスカップリングを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る車両用駆動力伝達装置の一実施形態の略半分を示す断面図である。
【図2】同駆動力伝達装置を構成する差動式アクチュエータであるカム機構を構成する第1のカム部材を図1の矢印2−2線方向に見た正面図(略半分)である。
【図3】同カム機構を構成するカム溝の第1のカム溝部における図2の矢印a−a方向にみた部分断面図(a)、第2のカム溝部における矢印b−b方向にみた部分断面図(b)、および、変形例に係るカム溝の第1のカム溝部における図2の矢印a−a方向にみた部分断面図(c)である。
【図4】同駆動力伝達装置を後輪側への駆動力伝達経路に搭載して形成された四輪駆動車を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0047】
10…駆動力伝達装置、10a…クラッチ機構、10b…カム機構、11…アウタハウジング、11a…ハウジング部、11b…カバー部、11c…連結壁部、12…インナシャフト、13…アウタクラッチプレート、14…インナクラッチプレート、15…第1のカム部材、15a…凹所、15a1…側壁面、16…第2のカム部材、16a…凹所、16a1…側壁面、17…カムボール、18…バネ部材、19…カム溝、19a…第1のカム溝部、19b…第2のカム溝部、θ1〜θ4…カム角度、21…トランスアクスル、22…エンジン、23…フロントディファレンシャル、24a…アクスルシャフト、24b…前輪、25…第1プロペラシャフト、26…第2プロペラシャフト、27…リヤディファレンシャル、28a…アクスルシャフト、28b…後輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同軸的かつ相対回転可能に位置して対向する一対のカム部材と、これらカム部材間に設けたカム溝に介在するカムボールを有し、前記両カム部材の相対回転時に前記カム溝内を転動する前記カムボールによって前記両カム部材を軸方向に離間して推力を発生させ、同推力を被アクチュエータに作動力として付与する差動式アクチュエータであり、前記カム溝は、前記両カム部材の周方向に延びる第1のカム溝部と、同第1のカム溝部の一部を基点として前記両カム部材の半径方向の外周側に延びる第2のカム溝部を一体に有し、前記カムボールが遠心力の作用によって、前記第1のカム溝部と前記第2のカム溝部間を移動可能に構成され、かつ、前記カムボールと前記カム溝のカムボール転動面との接触角であるカム角度は、前記第2のカム溝部のカム角度が前記第1のカム溝部のカム角度に比較して大きく設定されていることを特徴とする差動式アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の差動式アクチュエータにおいて、前記カム溝を構成する第2のカム溝部は前記第1のカム溝部の周方向の略中央部から前記両カム部材の径方向の外周側に延びていて、同第2のカム溝部の周方向の幅は前記第1のカム溝部の周方向の幅に比較して幅狭に形成されていることを特徴とする差動式アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の差動式アクチュエータにおいて、前記カムボールと前記カム溝のカムボール転動面との接触角であるカム角度は、前記両カム部材の相対回転の一方向側と他方向側で互いに異なることを特徴とする差動式アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の差動式アクチュエータにおいて、前記両カム部材のカム溝に介在する前記カムボールは、所定のバネ力にて前記両カム部材の径方向の外周側への移動を規制されていて、非作動時には、前記第1のカム溝部内に位置していることを特徴とする差動式アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の差動式アクチュエータにおいて、前記カム溝を構成する第2のカム溝部の前記両カム部材間の溝幅は、前記両カム部材の半径方向の外周側に漸次幅拡に形成されていることを特徴とする差動式アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の差動式アクチュエータを一構成機構とする差動式クラッチであり、当該差動式クラッチは、互いに同心的かつ相対回転可能に位置する外側回転部材および内側回転部材と、これら両回転部材が形成するクラッチハウジング内に配置されているクラッチ機構と、前記両回転部材間に配置されて前記クラッチ機構の一側に位置する差動式アクチュエータとを備え、前記差動式アクチュエータを構成する両カム部材は互いに相対回転可能に対向して、これら両カム部材のいずれか一方のカム部材が前記両回転部材の一方に一体回転可能かつ軸方向へ移動可能に連結していて、前記一方のカム部材が軸方向へ移動する移動力を前記クラッチ機構を動作させる作動力としていることを特徴とする差動式クラッチ。
【請求項7】
請求項6に記載の差動式クラッチにおいて、前記クラッチ機構は多板式のクラッチ機構であり、前記差動式アクチュエータは、前記一方のカム部材を介して、前記クラッチ機構を押圧して同クラッチ機構を摩擦係合し、前記両回転部材を互いにトルク伝達可能に連結すべく機能することを特徴とする差動式クラッチ。
【請求項8】
請求項6に記載の差動式クラッチにおいて、前記クラッチ機構は粘性流体式のクラッチ機構であり、前記差動式アクチュエータは、前記一方のカム部材を介して、前記クラッチ機構を構成する各アウタクラッチプレートと各インナクラッチプレート間の隙間を規定するバネ部材を押圧して、前記各クラッチプレート間の隙間を調整すべく機能することを特徴とする差動式クラッチ。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の差動式アクチュエータを一構成機構とする車両用駆動力伝達装置であって、車両の駆動軸を構成する入力軸と出力軸間に配設されて、前記入力軸のトルクを前記出力軸に伝達すべく機能する車両用駆動力伝達装置であり、当該駆動力伝達装置は、互いに同心的かつ相対回転可能に位置し前記入力軸または前記出力軸の一方にトルク伝達可能に連結される外側回転部材および他方にトルク伝達可能に連結される内側回転部材と、これら両回転部材が形成するクラッチハウジング内に配置されている多板式のクラッチ機構と、前記両回転部材間に配置されて前記クラッチ機構の一側に位置する差動式アクチュエータとを備え、前記クラッチ機構は、前記クラッチハウジングを構成する外側回転部材の内周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に連結された複数のアウタクラッチプレートと、前記クラッチハウジングを構成する内側回転部材の外周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に連結されて前記各アウタプレートとは交互に位置する複数のインナクラッチプレートを有し、前記差動式アクチュエータを構成する両カム部材は互いに相対回転可能に対向して、これら両カム部材のいずれか一方のカム部材が前記両回転部材の一方に一体回転可能かつ軸方向へ移動可能に連結し、前記差動式アクチュエータは、前記一方のカム部材を介して、前記クラッチ機構を押圧して同クラッチ機構を摩擦係合して、前記両回転部材を互いにトルク伝達可能に連結して車両を前後輪駆動走行状態に形成すべく機能することを特徴とする車両用駆動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−333061(P2007−333061A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164814(P2006−164814)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】