説明

巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置

【課題】 電気的突極性を持たない巻線界磁式同期機でも磁極位置センサ無しでの磁極位置検出を可能にする。
【解決手段】 電機子巻線に所望の交番電圧Vqh(あるいは交番電流)を注入する交番信号発生器1と、同期機4の界磁電流Ifを検出する界磁電流センサ5(あるいは界磁巻線の端子電圧を検出する界磁電圧センサ)と、前記界磁電流センサ5(あるいは界磁電圧センサ)が検出する界磁電流If(あるいは界磁電圧)に含まれる前記の注入された交番電圧Vqh(あるいは交番電圧)と同周波数の成分を利用して同期機の回転子磁極位置θを検出する磁極位置検出器6を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転子の界磁巻線により界磁磁界を発生する巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
同期電動機を磁極位置センサなしで駆動するセンサレス制御方式は、センサがないことによるコスト低減、信頼性向上、装置の小型化などのメリットがある。従来、同期電動機を磁極位置センサなしで駆動するための磁極位置検出装置では、電動機の電気的突極性(電動機の回転子位置により電機子巻線端子間のインダクタンスが変化する現象)を利用して磁極位置を検出するため、電動機の電機子巻線に交番電圧を印加し、発生する交番電機子電流を利用した磁極検出が行われており(例えば特許文献1)、同装置は、回転子の界磁巻線により界磁磁界を発生する巻線界磁式同期機に対しても適用できる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−245981号公報(2頁右46行〜3頁左5行、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の同期電動機の磁極位置検出装置は、例えば円筒型回転子を持つ同期機など対象となる巻線界磁式同期機が電気的突極性を持たない場合には、磁極位置を検出することができないという問題点があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、電気的突極性を持たない巻線界磁式同期機に対しても有効な磁極位置検出装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置は、電機子巻線に交番信号を注入した時に界磁巻線に発生する交番信号を検出して磁極検出を行う、あるいは、界磁巻線に交番信号を注入した時に電機子巻線に発生する交番信号を検出して磁極検出を行うものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、電機子巻線と界磁巻線の相互作用を利用して磁極検出を行うので、対象となる巻線界磁式同期機が電気的突極性を持たない場合でも、磁極位置を検出することができ、電気的突極性を持たない巻線界磁式同期機を磁極位置センサなしで運転することが可能になる。特にモータ・変換器一体型の装置において、磁極位置センサのスペースが不要になって装置設計における構成の自由度が増すと共に、磁極位置センサのスペースをモータおよび変換器の放熱のために利用でき、設計上有利になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、以下の実施の形態では、界磁巻線の交番信号を検出する検出器は、界磁電流を検出する場合は界磁電流センサとし、界磁電圧を検出する場合は界磁電圧センサとして説明する。また、電機子巻線の交番信号を検出する検出器は、電機子電流を検出する場合は電機子電流センサとし、電機子電圧を検出する場合は電機子電圧センサとして説明する。
実施の形態1.
【0009】
図1は本発明の実施の形態1による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置の基本的な構成を示す図である。巻線界磁式同期機4は電気的突極性を有する必要は無いが、電気的突極性を有していても良い。交番信号発生器1による交番電圧指令VqhはVdh=0である直交方向の電圧指令とともに座標変換器2に入力され、三相電圧指令Vu,Vv,Vwに変換されて電機子側電力変換器3により巻線界磁式同期機4の電機子巻線に印加される。巻線界磁式同期機4の界磁巻線に流れる電流Ifは界磁電流センサ5により検出され、この界磁電流Ifは磁極位置検出器6に入力されて検出磁極位置θが求められ、この検出磁極位置θに従って座標変換器2は座標変換を行う。
【0010】
図2は本発明の実施の形態1による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置の動作を示すベクトル図である。回転子の界磁巻線方向がd0軸、その直交方向がq0軸であり、d0軸が電機子巻線U相に対して成す角度が真の磁極位置θ0である。これに対して、磁極検出座標系dq軸が電機子巻線U相に対して成す角度が検出磁極位置θである。図2に示すように真の磁極位置θ0と検出磁極位置θが一致しない状態では、q軸上に電機子巻線より交番電圧Vqhを加えると、その交番電圧は実際の界磁巻線軸であるd0軸方向にも印加される。電機子巻線と界磁巻線は電磁気的に結合しているので、d0軸方向の電機子巻線に交番電圧Vqhが印加されると界磁巻線にも交番電圧Vfhが発生して、結果として界磁巻線に交番電流が発生する。一方、真の磁極位置θ0と検出磁極位置θが一致している場合には、q軸上に電機子巻線より交番電圧Vqhを加えても、その交番電圧はd0軸方向成分を持たないので界磁巻線には交番電圧は印加されず、結果として交番電流も発生しない。図2より分かるように、界磁巻線に作用する交番電圧Vfhは(1)式で表される。
Vfh = Vqh・sin(θ−θ0) (1)
【0011】
界磁巻線には、(1)式に示された交番電圧Vfhに応じた交番電流が発生するので、この交番電流が0になるように検出磁極位置θを操作すれば、真の磁極位置θ0と検出磁極位置θを一致させることが出来る。図3は磁極位置検出器6の内部構造を示したものである。基準信号発生器7は、界磁巻線に発生する交番電流と同じ周波数および位相を持つ、電流基準信号Ifpを発生する。界磁電流Ifと電流基準信号Ifpとを乗算器8で乗算することにより、交番電流の振幅に比例した誤差信号eθが得られる。磁極追従制御器9は誤差信号eθが0になるよう、検出磁極位置θを操作するコントローラであって、例えば積分器あるいはPI制御器である。
【0012】
図4は交番電圧Vqh、電流基準信号Ifp、界磁電流If、および誤差信号eθの波形の関係を示す図である。電機子q軸に印加される交番電圧Vqhに対して、電流基準信号Ifpは周波数が同じで振幅が1、位相はインピーダンスに応じてVqhに対してシフトし、例えば交番する周波数が電機子および界磁の回路時定数より十分大きい場合、位相シフトはほぼ90°である。界磁電流信号Ifは界磁用の直流成分に交番電流が加わった波形であり、誤差信号eθはオフセットを持つ交番波形である。図4に示すように、界磁電流Ifは直流成分を含むので、磁極位置検出器6に入力する際には、ハードウェアあるいはソフトウェアによる、ハイパスあるいはバンドパスフィルタを通過した信号を使用する様にすると、磁極検出信号処理に際しての電流検出分解能や演算分解能の面で有利である。また、誤差信号eθには交番成分による脈動が含まれるので、この信号を磁極追従制御器に入力する際には、交番電圧周期の1/2、あるいはその倍数の区間での平均値(図4中に点線で図示)を用いるようにすると、検出磁極位置の不要な振動を除くことができる。
【0013】
図5に、真の磁極位置θ0と検出磁極位置θのずれと、誤差信号eθ(平均化した値)の関係を示す。図より分かるように、二つの信号は0付近ではほぼ比例関係(ただし比例係数keは負)にあり、誤差信号eθを用いて、θ−θ0を0に調節するような制御系を容易に構成することが出来ることが理解される。なお上記の比例係数keは電機子および界磁電流による磁気飽和で値が変化し、結果として磁極位置検出器の応答が変化するが、あらかじめ電機子および界磁電流(あるいは電機子鎖交磁束でも良い)と比例係数keの変化の関係を把握しておき、これを補正するような係数を誤差信号に乗ずるような仕組みを備えて、運転条件による磁極位置検出器の応答変化をなくすことが出来るようにしても良い。
【0014】
なお、図5に示したように、真の磁極位置θ0と検出磁極位置θのずれは、−90°〜90°の区間で1対1の対応を示す。これより、あらかじめ図5に示す関係をテーブル等の形で記憶しておけば、誤差信号eθより直ちに真の磁極位置θ0と検出磁極位置θのずれを求めることが出来、積分器等の磁極追従制御器を用いなくても上記テーブルを参照することにより真の磁極位置θ0を算出することが可能であるので、この方法により磁極位置を求めることも出来、磁極検出の応答性が向上する。
【0015】
以上のように、電機子側に交番電圧を注入して界磁側の交番電流を検出することにより、電気的突極性を持たない巻線界磁式同期機においても、磁極位置センサを用いることなく磁極位置を検出することが可能になる。
【0016】
さらに以上の説明では、電機子側に交番電圧を注入して界磁側の交番電流を検出する方法について説明したが、電機子側に交番電圧を注入して界磁側の交番電圧を検出することによっても磁極位置を検出することができる。この場合、(1)式に示したように、界磁巻線に作用する交番電圧Vfhを直接検出すれば良い。具体的には図1に示した構成において界磁電流センサ5のかわりに界磁巻線の端子間電圧を検出する界磁電圧センサを設け、この界磁電圧センサの検出した検出界磁電圧Vfdを界磁電流Ifの代わりに磁極位置検出器6に入力すればよい。なお界磁電流Ifと検出界磁電圧Vfdに含まれる交番成分は、電機子側に注入する交番電圧Vqhに対する位相が界磁電流の場合と異なるので、電機子側に交番電圧を注入して界磁側の交番電圧を検出して磁極位置検出を行う際の基準信号発生器7は、検出界磁電圧Vfdと同じ位相を持つ電圧基準信号Vfpを発生する必要がある。図6は交番電圧Vqh、電圧基準信号Vfp、界磁検出電圧Vfd、および誤差信号eθの波形の関係を示す図である。
【0017】
以上のように、電機子側に交番電圧を注入して界磁側の交番電圧を検出することにより、電気的突極性を持たない巻線界磁式同期機においても、磁極位置センサを用いることなく磁極位置を検出することが可能になるとともに、同期機の界磁巻線のインピーダンス特性の影響を受けることなく交番成分を検出することができる。
【0018】
図7に本発明の実施の形態1による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置を適用した、同期機制御系の構成を示す。同期機4の電機子に流れる電流Iu,Iv,Iwは電機子電流センサ10により検出され、座標変換器11によりdq軸座標上の電流Id,Iqに変換される。電機子電流制御器12は上位コントローラ(図示せず)からのdq軸電流指令値Id*,Iq*と、実際のdq軸電流Id,Iqより、dq軸電圧指令Vd,Vqを算出する。q軸電圧指令Vqには交番信号発生器1による交番電圧指令Vqhが加算器13により加えられる。交番電圧加算後のq軸電圧指令Vq'とd軸電圧指令Vdは座標変換器2に入力されて三相電圧指令Vu,Vv,Vwに変換され、電機子側電力変換器3により巻線界磁式同期機4の電機子巻線に印加される。また、巻線界磁式同期機4の界磁巻線に流れる電流Ifは界磁電流センサ5により検出され、界磁電流制御器14は上位コントローラ(図示せず)からの界磁電流指令If*と実際の界磁電流Ifより界磁電圧指令Vfを算出し、同電圧が界磁側変換器15により巻線界磁式同期機4の界磁巻線に印加される。一方、検出された界磁電流Ifは磁極位置検出器6に入力されて検出磁極位置θが求められ、この検出磁極位置θに従い座標変換器2,11は座標変換を行う。以上のように構成された同期機制御系において、磁極位置検出を行う各部の働きは図1の場合と同様であって、同期機制御系と一体となった形で磁極位置検出を行うことが出来る。なお注入する交番電圧の影響を避けるため、電機子電流制御器12に入力するdq軸電流Id,Iqから、ローパスあるいはバンドパスフィルタを用いて交番電圧周波数成分を除去しても良い。同様に、界磁電流制御器14に入力する界磁電流Ifからも、ローパスあるいはバンドパスフィルタを用いて交番電圧周波数成分を除去しても良い。
【0019】
さらに以上の説明では、電機子側に交番電圧を注入する方法について説明したが、電機子側に交番電流を注入して界磁側の交番電流を検出する方法でも磁極位置を検出することができ、交番電圧を注入する場合に比べて同期機の電機子巻線のインピーダンスの影響を受けることなく所望の振幅の交番電流を発生させることが出来、安定した検出を行うことが出来る。図8に電機子側に交番電流を注入して界磁側の交番電流を検出する方法による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置を適用した、同期機制御系の構成を示す。図8の構成においては、交番信号発生器1による交番電流指令Iqhは上位コントローラ(図示せず)からのq軸電流指令値Iq*に加算器13により加算され、交番電流加算後のq軸電流指令Iq*'が算出されて電機子電流制御器12に入力される。注入された交番電流により界磁電流Ifには同じ周波数の交番電流が発生し、この交番電流を図7同様に検出して磁極位置を検出することができる。なおこの場合も、磁極位置検出器6内で使用する電流基準信号Ifpは発生する界磁電流の交番成分と同じ位相を持つ信号を使用する必要がある。図9にこの場合の交番電流指令Iqh、電流基準信号Ifp、界磁電流If、および誤差信号eθの波形の関係を示す。
【0020】
以上のように、電機子側に交番電流を注入して界磁側の交番電流を検出することにより、電気的突極性を持たない巻線界磁式同期機においても、磁極位置センサを用いることなく磁極位置を検出することが可能になるとともに、同期機の電機子巻線のインピーダンスの影響を受けることなく所望の振幅の交番電流を発生させることが出来、安定した検出を行うことができる。
【0021】
なお電機子側に交番電流を注入して界磁側の交番電圧を検出する方法でも、図8に示した交番電流の注入方法と、先に説明した界磁電圧センサを用いる検出法を組み合わせることにより、磁極位置を検出することが可能であって、同期機の電機子巻線のインピーダンスの影響を受けることなく所望の振幅の交番電流を発生させることが出来、安定した検出を行うことが出来るとともに、同期機の界磁巻線のインピーダンス特性の影響を受けることなく交番成分を検出することができる。
この場合においても、磁極位置検出器内で使用する電流基準信号Vfpは発生する界磁電圧Vfdの交番成分と同じ位相を持つ信号を使用する必要がある。図10にこの場合の交番電流指令Iqh、電圧基準信号Vfp、検出界磁電流Vfd、および誤差信号eθの波形の関係を示す。
【0022】
以上のように、電機子側に交番電流を注入して界磁側の交番電圧を検出することにより、電気的突極性を持たない巻線界磁式同期機においても、磁極位置センサを用いることなく磁極位置を検出することが可能になるとともに、同期機の電機子巻線のインピーダンスの影響を受けることなく所望の振幅の交番電流を発生させることが出来、安定した検出を行うことが出来、さらに同期機の界磁巻線のインピーダンス特性の影響を受けることなく交番成分を検出することができる。
なお、実際の界磁電流あるいは検出界磁電圧には、電機子側の交番電圧あるいは交番電流により発生する交番電圧あるいは交番電流以外に、界磁側変換器(PWMアンプあるいはサイリスタ変換器など)が発生する周期的な電圧あるいは電流の脈動が存在する場合がある。磁極位置検出において、これらの界磁側変換器による脈動の影響を避けるには、電機子側から印加する交番電圧あるいは交番電流の周波数を、変換器による脈動の周波数のn分の1(nは2の倍数)にすればよい。
【0023】
図11、12に、図4に示した交番電圧Vqh、電流基準信号Ifp、界磁電流If、および誤差信号eθの波形の関係において界磁電流に周期的な脈動が存在する場合の波形を示す。図11は交番電圧Vqhの周波数が前期周期的脈動の周波数のn分の1(n=2)の関係にある場合であり、図12は交番電圧Vqhの周波数が前期周期的脈動の周波数のn分の1(n=2)の関係にない場合である。それぞれの図において、界磁電流Ifは正弦波状の成分(図と同じ)とノコギリ波状の周期的変動成分の和である波形となり、誤差信号eθには周期的変動成分の影響による乱れが現れる。図11の場合、基準信号Ipfの1周期内に偶数回の界磁側変換器による周期的脈動が含まれるようになり、誤差信号処理によりこれらの偶数回の脈動は大きさが同じで符号が逆転するため、誤差信号を基準信号1周期(あるいはその整数倍)で平均化することにより同脈動の影響をなくすことができる。これに対して図12の場合、基準信号Ipfの1周期内に表れる界磁側変換器による周期的脈動は一定しないので、誤差信号を基準信号の周期で平均化しても前記周期的脈動の影響をなくすことはできない。
【0024】
以上のように、電機子側から印加する交番電圧あるいは交番電流の周波数を、変換器による脈動の周波数のn分の1(nは2の倍数)にすることにより、磁極位置検出に対する界磁側変換器が発生する周期的な電圧あるいは電流の脈動の影響を避けることができる。
【0025】
実施の形態2.
また以上の実施の形態では、交番信号を電機子側に注入して界磁側で検出する方法の磁極位置検出装置について説明したが、逆に交番信号を界磁側に注入して電機子側で検出する方法でも磁極位置検出を行うことができる。
図13は本発明の実施の形態2による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置の動作を示すベクトル図である。図のように真の磁極位置θ0と検出磁極位置θが一致しない状態では、d0軸上に界磁巻線より交番電圧Vfhを加えると、電機子巻線と界磁巻線は電磁気的に結合しているので、その交番電圧は電機子巻線の制御座標軸であるq軸方向にも印加され、結果として電機子q軸に交番電流が発生する。一方、真の磁極位置θ0と検出磁極位置θが一致している場合には、d0軸上に界磁巻線より交番電圧Vfhを加えても、その交番電圧は電機子q軸方向成分を持たないので電機子q軸に交番電流は発生しない。
以上の界磁電圧と電機子q軸電流の関係は、実施の形態1における電機子q軸電圧と界磁電流の関係と類似しているので、同様の方法により磁極位置検出装置を構成することができる。
【0026】
図14に本発明の実施の形態2による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置を適用した、同期機制御系の構成を示す。図7では、交番電圧指令Vfhは加算器13により界磁電流制御器14から出力される界磁電圧指令Vfに加えられて、交番電圧加算後の界磁電圧指令Vf'が界磁巻線に印加される。電機子電流Iu,Iv,Iwは座標変換器11によりdq軸座標上の電流Id,Iqに変換される。上記のようにq軸電流Iqに含まれる交番成分を用いて磁極検出を行うことが出来るので、磁極位置検出器6にはq軸電流Iqが入力されて検出磁極位置θが求められ、この検出磁極位置θに従い座標変換器2,11は座標変換を行う。なお、実施の形態2における磁極位置検出器6の構成は、図3に示す構成において入力信号を界磁電流Ifから電機子q軸電流Iqに変えたものである。
【0027】
以上に述べた実施の形態2の磁極位置検出装置においては、交番電圧は界磁巻線に注入されるので、電機子電圧に交番電圧注入分の余裕を確保する必要が無く、同期機の電機子側の電源利用率を向上することができる。
【0028】
また実施の形態2においても、上述のように界磁側に交番電圧を注入して電機子側の交番電流を検出する方法だけでなく、界磁側に交番電圧を注入し電機子側の交番電圧を電機子電圧センサにより検出する方法でも磁極位置検出装置を構成することは可能であって、同期機の電機子巻線のインピーダンスの影響を受けることなく交番成分を検出することができる。
また、界磁側に交番電流を注入し電機子側の交番電流を検出する方法でも磁極位置検出装置を構成することは可能であって、同期機の界磁巻線のインピーダンス特性の影響を受けることなく所望の振幅の交番電流を発生させることが出来、安定した検出を行うことができる。
また、界磁側に交番電流を注入し電機子側の交番電圧を検出する方法でも磁極位置検出装置を構成することは可能であって、同期機の電機子巻線のインピーダンスの影響を受けることなく交番成分を検出することができ、また同期機の界磁巻線のインピーダンス特性の影響を受けることなく所望の振幅の交番電流を発生させることが出来、安定した検出を行うことができる。
【0029】
なお上記の場合、電機子電圧検出値のかわりに電機子電圧指令を用いても、電気子電流制御の応答が十分高い場合には磁極位置の検出ができる。
また実施の形態2の場合でも、実施の形態1同様に、界磁側から印加する交番電圧あるいは交番電流の周波数を、電機子側変換器が発生する電圧あるいは電流の脈動の周波数のn分の1(nは2の倍数)にすることにより、磁極位置検出に対する前記脈動の影響を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置の基本的な構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置の動作を示すベクトル図である。
【図3】図1の磁極位置検出器の内部構造を示す構成図である。
【図4】本発明の実施の形態1による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置における交番電圧、電流基準信号、界磁電流、および誤差信号の波形の関係を示す図である
【図5】本発明の実施の形態1による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置における、真の磁極位置、検出磁極位置ずれ、および誤差信号の関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置における交番電圧、電圧基準信号、界磁電流、および誤差信号の波形の関係を示す図である
【図7】本発明の実施の形態1による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置を適用した同期機制御系の構成を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1による電機子側に交番電流を注入して界磁側の交番電流を検出する方法による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置を適用した同期機制御系の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1による電機子側に交番電流を注入して界磁側の交番電流を検出する方法による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置における交番電流指令、電流基準信号、界磁電流、および誤差信号の波形の関係を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1による電機子側に交番電流を注入して界磁側の交番電圧を検出する方法による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置における交番電流指令、電圧基準信号、界磁電圧、および誤差信号の波形の関係を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置における交番電圧、電流基準信号、界磁電流、および誤差信号の波形の関係を示す図であって、界磁電流に界磁側変換器が発生する周期的変動が含まれ、かつ交番電圧の周波数が前記周期的脈動の周波数のn分の1(n=2)の関係にある場合を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態1による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置における交番電圧、電流基準信号、界磁電流、および誤差信号の波形の関係を示す図であって、界磁電流に界磁側変換器が発生する周期的変動が含まれ、かつ交番電圧の周波数が前記周期的脈動の周波数のn分の1(n=2)の関係にない場合を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態2による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置の動作を示すベクトル図である。
【図14】本発明の実施の形態2による巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置を適用した同期機制御系の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 交番信号発生器、3 電機子側変換器、4 巻線界磁型同期機、5 界磁電流センサ、6 磁極位置検出器、10 電機子電流センサ、13 加算器、 15 界磁側変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線界磁式同期機と、この同期機の電機子巻線に所望の交番信号を注入する交番信号発生器と、前記交番信号により前記同期機の界磁巻線に発生する交番信号を検出する交番信号検出器と、前記界磁巻線に含まれている、前記電機子巻線に注入される交番信号と同じ周波数成分を利用して同期機の回転子磁極位置を検出する磁極位置検出器を備えることを特徴とする巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置。
【請求項2】
巻線界磁式同期機と、この同期機の界磁巻線に所望の交番信号を注入する交番信号発生器と、前記交番信号により前記同期機の電機子巻線に発生する交番信号を検出する交番信号検出器と、前記電機子巻線に含まれている、前記界磁巻線に注入される交番信号と同じ周波数成分を利用して同期機の回転子磁極位置を検出する磁極位置検出器を備えることを特徴とする巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置。
【請求項3】
注入する交番信号は、電流あるいは電圧であることを特徴とする請求項1又は2に記載の巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置。
【請求項4】
検出する交番信号は、電流あるいは電圧であることを特徴とする請求項3に記載の巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置。
【請求項5】
電機子巻線に注入する交番信号の周波数を、界磁側変換器が発生する界磁電圧あるいは界磁電流の脈動の周波数のn分の1(nは2の倍数)にすることを特徴とする請求項1又は3に記載の巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置。
【請求項6】
界磁巻線に注入する交番信号の周波数を、電機子側変換器が発生する電機子電圧あるいは電機子電流の脈動の周波数のn分の1(nは2の倍数)にすることを特徴とする請求項2又は3に巻線界磁式同期機の磁極位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−136123(P2006−136123A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322213(P2004−322213)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】