説明

希土類合金、その製造方法及び熱電変換材料

【課題】原料の入手が容易で、大量生産も可能であり、熱電変換素子としても十分な性能をもつ希土類合金を提供すること。
【解決手段】希土類合金はRE(Fe1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)で表される希土類合金及びRE(Co1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)で表される希土類合金である。これらは熱電変換材料として用いられる。そして前者はp型の変換材料、後者はn型の変換材料となり、これらをp−n接合し、熱電変換素子が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼーベック効果により熱を電気に直接変換する熱電変換素子に好適な希土類合金に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルドスクッテルダイト(Filled Skutterudite)構造を有する熱電変換材料は、従来の熱電変換材料のひとつである、スクッテルダイト型結晶構造を有するCoSb等の金属間化合物の中でも熱伝導度が低いことから、特に高温域での熱電変換材料として有望である。
【0003】
フィルドスクッテルダイト系合金は、一般式がRTPn12(但し、Rは希土類金属、Tは遷移金属、PnはP、As、Sbなどの元素)で表される金属間化合物であり、一般式TPn(但し、Tは遷移金属、PnはP、As、Sbなどの元素)で示されるスクッテルダイト型構造の結晶に存在する空孔の一部に、希土類金属(R)などの質量の大きい原子を充填したものである。
【0004】
また、フィルドスクッテルダイト系熱電変換材料は、遷移金属Tを適切に選択することで、p型およびn型双方を作り分けることができるうえ、異方性がないことから結晶を配向させる必要が無く、製造プロセスが簡略で生産性が優れている。
【0005】
ブロック状のp型およびn型のフィルドスクッテルダイト系熱電変換素子を、直接にあるいは金属導体を介して間接に電気的に接合させ、p−n接合を形成することにより、あるいはp型およびn型のフィルドスクッテルダイト系合金からなる熱電変換材料を、馬蹄形状に接触させてp−n接合を作製し、熱電変換素子のモジュールを作製することができる。さらにp−n接合を有する複数の熱電変換素子をつなぎ合わせて、熱交換器を接合したものが熱電変換システムであり、温度差から電気を取り出すことができる。
【0006】
熱電変換素子の変換性能指数ZTは、おもにゼーベック係数α、電気抵抗率ρ、熱伝導率κ、絶対温度Tとすると、
ZT=αT/κρ
で表すことができる。
【0007】
この式に示されるように、熱電変換素子の性能を向上させるためには、ゼーベック係数の向上、電気抵抗率、熱伝導率の低下が求められる。
しかしながら、これらはウィーデマン・フランツ則に示されるように、熱伝導が電子伝導で支配的な場合には理論的に難しいものとなる。
【0008】
ところが、フィルドスクッテルダイトはスクッテルダイト型構造の結晶の空孔に希土類金属原子を充填することによって、Sbとの弱い結合によって希土類金属原子が振動するため、これがフォノンの散乱中心となり、熱伝導率が低くなると説明されている。
【0009】
また、フィルドスクッテルダイトは希土類元素を含むことによる重フェルミオン的振る舞いに起因した見かけ上大きな有効質量が発現するため、特定元素の添加あるいは置換により電気抵抗の低下とゼーベック係数の向上を同時に図れると指摘されている。
【0010】
具体的に素子の性能を改善する手法として、n型フィルドスクッテルダイト素子YbCoSb12に対しては遷移金属サイトのCoをPtと置換、あるいはCeFeCoSb12の希土類金属サイトのCeをZr、Baと置換すると特性が向上できることが報告されている(特許文献1参照)。p型フィルドスクッテルダイト素子YbFeSb12に対しては、遷移金属サイトのFeをNiで置換すると性能が向上することが知られている。
【特許文献1】特開平11−135840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
熱電変換システムの普及を測るためには、原料の価格を上げずに熱電変換素子の特性を向上させることが不可欠となる。しかし、従来の方法で用いられる金属はいずれも高価かあるいは取り扱いに注意が必要であり、より安価で取り扱いの容易な元素を用いた特性向上が求められる。
【0012】
従来は所定の組成になるように粉末を混合してプラズマ焼結で作製する場合が多く、工業的な大量生産に不向きなほか、微量元素の均一添加による特定サイトの置換が難しかった。
本発明は上記の問題点に鑑み、原料の入手が容易で、大量生産にも適し、熱電変換素子としても十分な性能をもつ新規な希土類合金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は原料合金を溶解し、適度な冷却速度で凝固することでフィルドスクッテルダイト合金をスクッテルダイト相のほぼ単一相で作製できることを見いだした。
【0014】
本発明の方法を採用すれば、微量元素に対しても合金全体に均一で特定サイトの置換を行うことが出来、大量生産に適している。しかし合金の組成によっては素子の性能が十分でない。
【0015】
本発明者はこの生産方法において、素子の性能を上げるべく検討した結果、n型フィルドスクッテルダイト熱電変換材料RE(Co1−ySb12において、REをCeあるいはLaとして0<x≦1、好ましくは0.01≦x≦1、Coを比較的入手が用意で取り扱いが容易な、Cu、Mn、Znのうち少なくとも一種類Mを0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.15の範囲で置換することで熱電変換特性を向上出来ることを見いだした。
【0016】
さらに、p型フィルドスクッテルダイト熱電変換材料に対し、Coを全く使わずにRE(Fe1−ySb12において希土類REのうちCeあるいはLaを0<x≦1、好ましくは0.01〜1の範囲とし、FeをTi、Zr、Sn、Pbのうちの少なくとも一種類Mを0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.15の範囲で置換することで熱電変換特性を向上出来ることを見出した。
本発明は上記の知見に基づきなされたもので以下の発明からなる。
(1) RE(Fe1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)で表される希土類合金。
(2) xが0.01≦x≦1かつyが0.01≦y≦0.15の範囲内であることを特徴とする上記(1)に記載の希土類合金。
【0017】
(3) 結晶構造がスクッテルダイト型結晶構造であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の希土類合金。
(4) 結晶構造がフィルドスクッテルダイト型結晶構造であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の希土類合金。
(5) 希土類合金の平均厚みが、0.1〜2mmである上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の希土類合金
【0018】
(6) 上記(1)〜(5)の何れか1項に記載の希土類合金からなるp型熱電変換材料。
(7) RE(Co1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)で表される希土類合金。
(8) xが0.01≦x≦1かつyが0.01≦y≦0.15の範囲内であることを特徴とする上記(7)に記載の希土類合金。
(9) 結晶構造がスクッテルダイト型結晶構造であることを特徴とする上記(7)または(8)に記載の希土類合金。
【0019】
(10) 結晶構造がフィルドスクッテルダイト型結晶構造であることを特徴とする上記(7)または(8)に記載の希土類合金。
(11) 希土類合金の平均厚みが、0.1〜2mmである上記(7)〜(10)のいずれか1項に記載の希土類合金。
(12) 上記(7)〜(11)の何れか1項に記載の希土類合金からなるn型熱電変換材料。
(13) RE(Fe1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)に示す組成になるよう原料を秤量し、この原料を不活性ガス雰囲気中で溶解後、急冷凝固することを特徴とする希土類合金の製造方法。
(14) 急冷凝固がストリップキャスティング法である上記(13)に記載の希土類合金の製造方法。
(15) 急冷凝固の際の冷却速度が1×10℃/秒以上である上記(13)または(14)に記載の希土類合金の製造方法。
【0020】
(16) RE(Co1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)に示す組成になるよう原料を秤量し、この原料を不活性ガス雰囲気中で溶解後、急冷凝固することを特徴とする希土類合金の製造方法。
(17) 急冷凝固がストリップキャスティング法である上記(16)に記載の希土類合金の製造方法。
(18) 急冷凝固の際の冷却速度が1×10℃/秒以上である上記(16)または(17)に記載の希土類合金の製造方法。
(19) 上記(1)〜(4)の少なくとも1項に記載の希土類合金と上記(7)〜(10)の少なくとも1項に記載の希土類合金とを組み合わせた熱電変換素子。
(20)上記(19)に記載の熱電変換素子を用いた熱電変換モジュール。
(21)上記(19)に記載の熱電変換モジュールを用いた熱電発電装置。
(22)上記(19)に記載の熱電変換モジュールを用いた熱電発電方法。
(23)上記(21)に記載の熱電発電装置を用いた廃熱回収システム。
(24)上記(21)に記載の熱電発電装置を用いた太陽熱利用システム。
(25)上記(19)に記載の熱電変換モジュールを用いたガスセンサ。
(26)上記(21)に記載の熱電変換装置を用いた熱電供給システム。
(27)上記(21)に記載の熱電変換装置を用いた自動車。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、工業的規模において低コストで高効率の熱電変換材料を製造でき、実用レベルの熱電変換素子を提供することが可能となった。
すなわち、本発明によれば、ほぼ均一なフィルドスクッテルダイト系合金を、ストリップキャスト法を用いた鋳造法により大量に簡便に生産できる。
また、希土類金属の中でも資源的な制約が少ないLaやCeを使用しているため、工業的利用価値が高いだけでなく、Pb(鉛)、Te(テルル)等を含まないため、環境負荷低減に有効である。本発明のフィルドスクッテルダイト系合金は、300℃以上の高温域で高い性能を発揮するため、発電量が大きい。さらに、連続製造が可能な急冷鋳造法の採用と粉砕・焼結技術の組み合わせにより、高性能成分であるフィルドスクッテルダイト相のみからなる合金で素子を作成できるので、従来品であるPb−Te系と同等以上の性能を達成でき、高いゼーベック係数と低い電気抵抗を両立することが可能となった。さらに、熱伝導度も低いために熱電変換モジュールをコンパクトにできる。
また、本願発明の好ましい実施態様である熱電変換モジュールは、700℃の高温領域まで使用可能であるので、廃熱利用システムに組み込んだ場合において、熱交換器で回収できる熱量を増加させることができるため、未利用熱量を減らすことができる。すなわち、動作温度を下げるために捨てる熱を減らすことが可能であるために、熱変換効率が大幅に向上し、発電量が顕著に増大する。
コジェネシステムに組み込んだ場合、利用しきれない熱(不要な温水)を電気に変換できることから燃費が向上できるために発電量も大きくなり、熱電発電モジュールの心臓部品として、発電の高効率化に寄与することが可能である。
本発明によって製造された、高性能な熱電素子は工業用各種炉ならびに焼却炉をはじめとする大規模廃熱のみならず、各種コジェネレーション、給湯器、自動車の排ガス、地熱や太陽熱等の自然エネルギー等、小規模ながら未利用な廃熱を熱源として電気に変換する熱電発電モジュールの心臓部品として、発電の高効率化に寄与することが可能となり、地球温暖化対策へも大いに貢献可能である。また、本発明は、ガスセンサ、熱電供給システム、自動車などのいずれについても適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る希土類合金は、RE(Fe1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)である。この合金はp型熱電変換材料として好適に用いられる。そして本発明の希土類合金は、この中にPb、As、Si、Al、Fe、Mo、W、C、O、Nなど不可避不純物を含んでもよく、薄膜、合金、焼結体いずれの形態でも良い。また結晶構造はスクッテルダイト型結晶構造であるのがより好ましい。本発明の希土類合金では、xが0.01より少ないと熱伝導度が悪化して特性が低下し、yが0.15を超えると、ゼーベック係数および電気伝導度両面において著しく低下するため0.15以下が好ましい。またyが0.01未満では添加による性能向上が不十分なので0.01以上が好ましい。上記の範囲内でMを添加すると、ゼーベック係数と電気伝導度の向上が両立できる。
【0023】
また、一方で本発明に係る希土類合金は、RE(Co1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)である。この合金はn型熱電変換材料として好適に用いられる。そしてこの希土類合金は、この中にPb、As、Si、Al、Fe、Mo、W、C、O、Nなど不可避不純物を含んでもよく、薄膜、合金、焼結体いずれの形態でも良い。また結晶構造はスクッテルダイト型結晶構造であるのがより好ましい。この希土類合金では、xが0.01より少ないと熱伝導度が悪化して特性が低下し、yが0.15を超えると、ゼーベック係数および電気伝導度両面において著しく低下するため0.15以下が好ましい。またyが0.01未満では添加による性能向上が不十分なので0.01以上が好ましい。上記の範囲内でMを添加すると、おもにゼーベック係数が向上できたため、性能が向上できる。
【0024】
本発明の希土類合金は、RE(Fe1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)に示す組成になるよう原料を秤量し、この原料を不活性ガス雰囲気中で溶解後、急冷凝固することにより製造することができる。
また、RE(Co1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)に示す組成になるよう原料を秤量し、この原料を不活性ガス雰囲気中で溶解後、急冷凝固することにより製造することができる。
上記二つの急冷方法は図1に示すストリップキャスティング法、その他溶融金属の急冷方法として公知の方法を用いることができる。これらの冷却速度は1400℃から800℃の範囲では1×10℃/秒以上が好ましく、より好ましくは1×10℃/秒以上、1×10℃/秒以下であり、さらに好ましくは、2×10℃/秒以上、1×10℃/秒以下である。1×10℃/秒より遅いと相が分離して粉砕による成分の変動が大きくなり、1×10℃/秒より早いとアモルファスとなり粉砕効率が悪化するため好ましくない。
図1において詳細には、坩堝1からタンディシュ2に溶湯6を投入し、この溶湯6をタンディシュ2から回転中の銅ロール3の外周部に供給して急冷し、合金薄片5を得てこれを回収箱4に回収することで目的の希土類合金からなる薄片を得ることができる。
このような急冷方法を採用すれば、合金薄片の平均厚みは概ね0.1〜2mm程度となるが、好ましくは、0.2〜0.4mm程度になり、最も好ましい急冷速度を採用することで平均厚みは0.25〜0.35mm程度になる。
【0025】
本発明の希土類合金によるp型熱電変換材料と、n型変換材料とを組み合わせ、例えば馬蹄形状に接触させたp−n接合素子を形成することにより、高効率の熱電変換素子を製造することが可能となる。そして、従来の熱電変換素子に対してコスト、資源的にも有利な熱電変換素子を製造することが可能となる。
本発明の熱電変換素子及びモジュールの製造工程を図2に示す。
図2において素子を製造する場合の詳細は、合金原料を溶解して先のストリップキャスト法に代表される方法で鋳造し、得られた合金薄片を粉砕し、目的の形状に成型し、焼結して焼結体とした後にこの焼結体から切断して薄型の素子を製造することができる。
図2においてモジュールを製造する場合の詳細は、先の説明で得られた素子を用意し、取付基板上に複数の電極を間欠的に形成し、各電極間を電気的に接続するように先の素子においてp型の素子とn型の素子を交互に複数接合し、これらの素子上に先の基板と対になるように他の基板を接合し、対になる上下の基板間に複数の素子が電気的に直列接続された形態の熱電変換素子とし、この熱電変換素子を複数接続してモジュール化することにより熱電交換モジュールを得ることができ、その熱電変換モジュールを備える熱電変換システムを得ることができる。
本願発明の好ましい実施態様である熱電変換素子から製造される、熱電変換モジュールおよび熱電変換システムの構成は特に限定されないが、図3のようなシステムが例示できる。この例の熱電変換システム1Bにおいて、熱電変換素子1Aを構成するp型熱電変換素子19Aおよびn型熱電変換素子19Bは、例えば、電気的に直列、あるいは並列に電極10を介し接続されて熱電変換モジュール1Aを構成している。構成された熱電変換素子1Aの高温接触部側は、絶縁体12を介して、廃熱7側の熱交換器13Aに密着させられている。一方、熱電変換素子1Aの低温接触部側は、絶縁体12を介して冷却水8側の熱交換器13Bに密着させられている。
このようにして構成された熱電変換システム1Bでは、高温接触部側および低温接触部側に接続されたp型熱電変換素子19A、n型熱電変換素子19Bのそれぞれに温度差を発生させて、ゼーベック効果に基づく温度差に応じた電気が熱電変換 により発電されることとなり、導線11から電気を取り出すことができる。
本発明によって製造された、熱電変換システムを採用することで、工業用各種炉ならびに焼却炉をはじめとする大規模廃熱のみならず、各種コジェネレーション、給湯器、自動車の排ガス、地熱や太陽熱等の自然エネルギー等を高効率に利用することが可能となる。
また、本発明はこれまで述べてきた用途の他に、ガスセンサ、熱電供給システム、自動車等にも適用することができる。
ガスセンサに本発明を適用する場合は、一例として触媒物質とガスの反応熱を熱電変換モジュールで電気に変換してガスを検知する構造にすることができる。この構造により発熱量および触媒物質の組み合わせで選択的にガスを検知することができる。特に、有機ガスで誤動作が問題となっている水素センサとしては高い性能を発揮することができる。
熱電供給システムに本発明を適用する場合は、一例として発電のために用いた高温の排ガスをさらに熱電変換装置で電力に変換する構成を採用することで、40%の効率を達成することが可能で商用電力より高い効率を発揮することができる。
自動車に本発明を適用する場合は、一例として排気ガスの熱を電気に変換する構成を採用することで発電機を駆動するための電力を軽減することができ、燃料消費量を少なくすることができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。。
(実験例1)
希土類金属としてLaメタル(純度95%以上、残部はCeおよび不可避不純物)を用い、電解鉄(純度99%以上)、Sbメタル(純度99%以上)、および置換用金属M(純度99%以上)を置換率が表1の通りになるように秤量し、1400℃まで0.1MPaのAr雰囲気中で溶解させた。その後、図1に示したストリップキャスト鋳造装置を用いて、横幅85mm、150g/sの注湯量で、周速度0.92m/sの水冷銅ロール上に溶湯を注湯し合金薄片を作製した。合金薄片の平均厚さは0.26〜0.28mmであった。溶湯の1400℃から800℃までの冷却速度は約600℃/秒であった。すなわち、1400℃から800℃までの所要時間は約1秒である。
この合金をディスクミルで200μm以下に粉砕したのち、日本ニューマティック社製ジェットミルNPK−100NPにて窒素気流0.5MPaにて粉砕した。このときのd50は2.5〜4.0μmであった。
得られた粉末を酸素濃度300ppm以下に制御されたグローブボックス中の成型機にて15mm×15mm×30mm程度に成形し、アルゴン気流中で780〜820℃で3h保持して焼結体を得た。
この焼結体から4mm×4mm×15mmのブロックを切り出し、アルバック理工社製熱電特性評価装置ZEM−2にてゼーベック係数、電気伝導度を200〜500℃の範囲で測定し、パワーファクターPf=α/ρを算出した。これらの測定結果のうち、489℃での熱電特性を表1に示す。
表1においてx=1.0、y=0の試料を基準としてパワーファクターが基準より上回った場合には効果有り(○)、基準より下回った場合に効果なし(×)と判定した。
【0027】
(実験例2)
希土類金属としてCeメタル(純度95%以上残部はLaおよび不可避不純物)を用い、Coメタル(純度99%以上)、Sb(純度99%以上)、および置換用金属M(純度99%以上)を置換率が表2の通りになるように秤量し、1400℃まで0.1MPaのAr雰囲気中で溶解させた。その後、図1に示したストリップキャスト鋳造装置を用いて、横幅85mm、150g/sの注湯量で、周速度0.92m/sの水冷銅ロール上に溶湯を注湯し、合金薄片を作製した。平均厚さは実験例1と同様であった。
この合金をディスクミルで200μm以下に粉砕したのち、日本ニューマティック社製ジェットミルNPK−100NPにて窒素気流0.5MPaにて粉砕した。このときのd50は2.5〜4.0μmであった。
得られた粉末を酸素濃度300ppm以下に制御されたグローブボックス中の成型機にて15mm×15mm×30mm程度に成形し、アルゴン気流中で870〜920℃で3h保持して焼結体を得た。
この焼結体から4mm×4mm×15mmのブロックを切り出し、アルバック理工社製熱電特性評価装置ZEM−2にてゼーベック係数、電気伝導度を200〜500℃の範囲で測定し、パワーファクターPf=α/ρを算出した。これらの測定結果のうち、489℃での熱電特性を表2に示す。
表2において、x=1.0、y=0試料を基準としてパワーファクターが基準より上回った場合には効果有り(○)、基準より下回った場合に効果なし(×)と判定した。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
図4は本発明により得られたp型La(Fe1−xSb12フィルドスクッテルダイト熱電変換素子のパワーファクターと温度の関係を示したグラフ、図5は本発明により得られたn型Ce(Co1−xSb12フィルドスクッテルダイト熱電変換素子のパワーファクターと温度の関係を示したグラフである。
図4に示すp型の素子と図5に示すn型の素子のいずれにおいても温度上昇に伴い、パワーファクターの値が向上する傾向が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の希土類合金は熱電変換素子として熱電変換システムに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の希土類合金の製造に用いたストリップキャスト装置の模式図である。
【図2】発熱用熱電素子とモジュールの製造工程の一例を示した図である。
【図3】熱電変換モジュールおよび熱電変換システムの一例を示した図である。
【図4】本発明により得られたp型La(Fe1−xSb12フィルドスクッテルダイト熱電変換素子のパワーファクターと温度の関係を示したグラフである。
【図5】本発明により得られたn型Ce(Co1−xSb12フィルドスクッテルダイト熱電変換素子のパワーファクターと温度の関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0033】
1 坩堝
2 タンディッシュ
3 銅ロール
4 回収箱
5 合金薄片
6 溶湯
7 廃熱
8 冷却水
10 電極
11 導線
12 絶縁板
13A 熱交換器
13B 熱交換器
19A p型熱電変換素子
19B n型熱電変換素子
1B 熱電変換システム




【特許請求の範囲】
【請求項1】
RE(Fe1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)で表される希土類合金。
【請求項2】
xが0.01≦x≦1かつyが0.01≦y≦0.15の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の希土類合金。
【請求項3】
結晶構造がスクッテルダイト型結晶構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の希土類合金。
【請求項4】
結晶構造がフィルドスクッテルダイト型結晶構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の希土類合金。
【請求項5】
希土類合金の平均厚みが、0.1〜2mmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の希土類合金
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の希土類合金からなるp型熱電変換材料。
【請求項7】
RE(Co1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)で表される希土類合金。
【請求項8】
xが0.01≦x≦1かつyが0.01≦y≦0.15の範囲内であることを特徴とする請求項7に記載の希土類合金。
【請求項9】
結晶構造がスクッテルダイト型結晶構造であることを特徴とする請求項7または8に記載の希土類合金。
【請求項10】
結晶構造がフィルドスクッテルダイト型結晶構造であることを特徴とする請求項7または8に記載の希土類合金。
【請求項11】
希土類合金の平均厚みが、0.1〜2mmである請求項7〜10のいずれか1項に記載の希土類合金
【請求項12】
請求項7〜11の何れか1項に記載の希土類合金からなるn型熱電変換材料。
【請求項13】
RE(Fe1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)に示す組成になるよう原料を秤量し、この原料を不活性ガス雰囲気中で溶解後、急冷凝固することを特徴とする希土類合金の製造方法。
【請求項14】
急冷凝固がストリップキャスティング法である請求項13に記載の希土類合金の製造方法。
【請求項15】
急冷凝固の際の冷却速度が1×10℃/秒以上である請求項13または14に記載の希土類合金の製造方法。
【請求項16】
RE(Co1−ySb12(REはLa、Ceのうち少なくとも一種、MはTi、Zr、Sn、Pbからなる群から選ばれた少なくとも一種。0<x≦1、0<y<1)に示す組成になるよう原料を秤量し、この原料を不活性ガス雰囲気中で溶解後、急冷凝固することを特徴とする希土類合金の製造方法。
【請求項17】
急冷凝固がストリップキャスティング法である請求項16に記載の希土類合金の製造方法。
【請求項18】
急冷凝固の際の冷却速度が1×10℃/秒以上である請求項16または17に記載の希土類合金の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜4の少なくとも1項に記載の希土類合金と請求項7〜10の少なくとも1項に記載の希土類合金とを組み合わせた熱電変換素子。
【請求項20】
請求項19に記載の熱電変換素子を用いた熱電変換モジュール。
【請求項21】
請求項19に記載の熱電変換モジュールを用いた熱電発電装置。
【請求項22】
請求項19に記載の熱電変換モジュールを用いた熱電発電方法。
【請求項23】
請求項21に記載の熱電発電装置を用いた廃熱回収システム。
【請求項24】
請求項21に記載の熱電発電装置を用いた太陽熱利用システム。
【請求項25】
請求項19に記載の熱電変換モジュールを用いたガスセンサ。
【請求項26】
請求項21に記載の熱電変換装置を用いた熱電供給システム。
【請求項27】
請求項21に記載の熱電変換装置を用いた自動車。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−89847(P2006−89847A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123536(P2005−123536)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】