希薄燃焼エンジンからのNOx排出を低減するための装置および方法
【課題】O2含有ガス流中でH2およびCOを生成する装置および方法を提供する。また、O2含有ガス流、特にディーゼルエンジンなどの希薄燃焼エンジンからの酸素を多く含む排気流からNOxを除去する装置および方法を提供する。
【解決手段】エンジンからの排気流内に燃料を噴射するように構成された燃料噴射器91と、酸化触媒を含み、燃料噴射器91から噴射された燃料とともに排気流を受取るように構成された前燃焼装置92と、燃料改質触媒を含み、前燃焼装置92からの排気流を受取るように構成された燃料燃焼装置94、とを含むシステムであって、前燃焼装置92は、噴射された燃料の第一の部分を燃焼し、噴射された燃料の他の部分を気化するように操作され、燃料燃焼装置94は、H2とCOを形成するように操作される。
【解決手段】エンジンからの排気流内に燃料を噴射するように構成された燃料噴射器91と、酸化触媒を含み、燃料噴射器91から噴射された燃料とともに排気流を受取るように構成された前燃焼装置92と、燃料改質触媒を含み、前燃焼装置92からの排気流を受取るように構成された燃料燃焼装置94、とを含むシステムであって、前燃焼装置92は、噴射された燃料の第一の部分を燃焼し、噴射された燃料の他の部分を気化するように操作され、燃料燃焼装置94は、H2とCOを形成するように操作される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、燃焼プロセスからのNOx排出を低減することに関する。本発明はまた、内燃エンジン、特にディーゼルエンジンなどの希薄燃焼内燃エンジンからの排気物からNOxを除去することに関する。本発明はさらに、炭化水素燃料をH2およびCOを含む還元ガス混合物へと変換する燃料処理、ならびにH2およびCOを使用して酸素を多く含む排気流中のNOxを低減することに関する。
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、2002年11月15日出願の米国仮特許出願第60/426,604号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
世界中の多くの場所で空気の質の向上のために排出規制の強化が続けられている。過去30年にわたって、火花点火式エンジンに関する規制は強化され、許容排出物は実質的に減少している。これらのエンジンは化学量論の空燃比でまたはこれに近い比率で動作し、この結果、一酸化炭素(CO)、不燃焼炭化水素(UHC)ならびにNOおよびNO2の両方を含む窒素酸化物(NOx)の排出を制御するために三元触媒技術が開発されている。三元触媒技術は希薄燃焼エンジンには適用できない。何故なら、排気混合物中に酸素が多すぎるためNOxの還元が妨げられるからである。これは特に、NOxおよび粒子状物質(PM)の排出が非常に高いディーゼルエンジンまたは圧縮点火エンジンにおいて問題となる。これと関連して、米国および世界の多くの国が燃料効率の向上を推進している。ディーゼルエンジンは非常に効率がよく、従って車両にとっては望ましいパワー源である。しかし、法律上の要件を満たすためには高排出を低減させなければならない。ガソリン火花点火式エンジンで要求される排出レベルに達するには、現代のディーゼルエンジンからの排出を、エンジンによるが、10分の1〜50分の1に減らさなければならない。
【0004】
希薄燃焼エンジンは火花点火(SI)および圧縮点火(CI)の両方のエンジンを含む。同等の従来のSIエンジンに比べて、希薄燃焼SIエンジンの場合は20〜25%、CIエンジンの場合は50%、場合によってはこれより高いパーセンテージで燃費が向上する。CIエンジンは高荷重車両で幅広く用いられ、低荷重車両での使用は少ないが成長が予想される。CIエンジンはまた、電力発電機などの定置装置への適用にも幅広く使用される。
【0005】
現在の自動車排出制御技術は主として三元触媒(TWC)を有する触媒コンバーターに基づくものである。この技術は、ほとんど化学量論の空燃比で動作する通常のガソリンエンジンにおいては非常に効果的である。しかし、上述のように、排気ガス内の酸素が過剰であるため希薄燃焼エンジンには適合しない。この不適合性が、希薄燃焼エンジンおよびTWCベースの排出制御技術の両方の主要な限界となっている。ディーゼルエンジンの場合、排出制御システムは、約6〜15%の酸素を含有する排気流からNOxおよびPMを除去しなければならない。
【0006】
多くの様々な技術がこれまで希薄燃焼エンジン排気ガスからのNOx除去について調査を行ってきた。1つの成功した技術としては、還元剤としてアンモニア(NH3)を用いたNOxの選択的な還元がある。アンモニアをNOx量に比例する量で排気流に添加する。次にNOxおよびNH3を含有する排気流を触媒に通し、触媒上でNOxとNH3が選択的に反応してN2を生成する。この技術は、選択触媒還元(SCR)と呼ばれるもので、ガスタービンならびに大型ボイラーおよび炉で広く使用され、NOxのN2への非常に高い変換率を実現することができる。しかし、この技術の1つの欠点はNH3源が必要となるということである。NH3源としては、高圧下で保存される液化NH3か、またはSCR触媒前またはSCR触媒上で分解してアンモニアを生成する尿素水溶液のいずれかであり得る。一般に、NH3−SCR技術は、コスト面でおよびNH3源が必要であるために、大型の定置装置への適用に制限される。加えて、所望のNH3/NOx比を実現するためにはNH3の添加を注意深く制御して、過剰なNH3が大気中に放出されて空気汚染物質レベルを上げるのを防ぐ必要がある。別の欠点は、この技術を用いて車両にアンモニアまたは尿素を供給するためには、どちらかといえば高くつく基盤施設を開発する必要があるということである。これらの理由のため、この技術は、車両または住宅地域に置かれることもあり得る非常に小型のシステムでのNOx制御にとっては好適なアプローチではない。
【0007】
希薄燃焼移動源からのNOx低減のために開発された別の技術としては、Society of Automotive Engineersの論文SAE−950809およびSAE−962051、ならびに米国特許第6,161,378号に記載されているような、NOx吸蔵還元(NSR)システムがある。NSRシステムは、排気系内に吸着剤−触媒ユニットを配置し、排気流はこれを通って流れる。この触媒ユニットは2つの機能、すなわち可逆性NOx吸蔵またはトラッピングおよびNOx還元を提供する。排気ガスがシステムを通って流れる正常なエンジン動作の間、NOxは吸着サイクル中は過剰な酸素の存在下で吸着剤に吸着される。吸着剤成分がNOxで飽和すると、吸着はより完全でなくなり、NOxトラップを出て行くNOxが増え始める。この時点で、排気流の組成物は酸化状態から還元状態に変えられる。これには酸素レベルがゼロまで下がることおよび還元剤を導入することが必要とされる。還元環境では、NOxは吸着剤から脱着され、次に吸着−触媒ユニットに組み込まれている触媒成分によって窒素に還元される。この反応は一般に非常に速い。従って、サイクルの還元部分は非常に短くてよいが、NOx吸着容量のかなりの部分を再生させるのに十分な長さでなければならない。次に排気組成物を通常の酸化状態に戻して、サイクルを繰り返す。この技術にはいくつかの欠点がある。1つの問題点は、排気ガスの還元状態への変換は、排気流中のO2が8〜15%で動作するように設計されているディーゼルエンジンなどの希薄燃焼エンジンにとっては実現が困難であることである。別の問題点は、調査した吸着−触媒成分は非常に安定した硫酸塩を形成し、その結果、燃料中の硫黄によって触媒の作用が損なわれることである。触媒を再生して硫黄を除去することは非常に困難であり、結果的に触媒の性能が低下する。
【0008】
過剰O2を含有する排気流からのNOxの除去に対する見込みのあるアプローチとしては、選択的希薄NOx触媒(「希薄NOx触媒」)と呼ばれる触媒を用いた、COまたは付加した炭化水素などの還元剤によるNOxの選択触媒還元がある。このような触媒は過去20年にわたって広く調査されてきた(例えば、Shelef(1995)Chem.Rev.95:209−225および米国特許第5,968,463号参照)。これまでは、炭化水素を、この成分がエンジン燃料から利用可能であるという理由で、還元剤として使用してきた。一般には、反応性炭化水素を単一の還元剤として使用するか、または反応性炭化水素種が生成されるような方法で燃料をディーゼルエンジンに噴射する、希薄NOx触媒を用いたエンジンテストでは、NOx制御レベルは低く、20〜50%の範囲である。
【0009】
炭化水素はまたNOxをN2に選択的に還元するための良好な還元剤であるということが分かっている。例えば、Costaら(2001)J.Catalysis 197:350−364では、H2を十分に利用して、低温(150〜250℃)で過剰O2の存在下でNOxを触媒還元する還元剤としてのH2の高い活性が報告されている。またEP 1,094,206A2は、希薄NOx触媒システム中で炭化水素還元剤にH2を加えることで、エンジン動力計テストで95%を超えるNOx除去が得られたという有益な結果について述べている。H2/CO混合物もまたこのようなシステムで良好な還元剤であることがわかっている。
【0010】
H2およびH2/CO混合物は、O2含有排気流からのNOxの連続除去のための良好な還元剤であるが、車両などの小型の移動システムでの使用のためにこれらの還元剤を供給する現在の方法は煩雑であり且つ/または高くつく。水素は保存が難しく、H2補給ステーションは現時点では利用可能ではない。ディーゼル燃料からH2またはH2/CO混合物を移動体上で製造することは可能ではあるが、困難であり費用がかかる。
【0011】
NOx還元のための還元剤を移動体上で生成するシステムの例がWO 01/34950に見られる。これは、空気と移動体の積載された炭化水素燃料とを使用して、排気流に添加する還元混合物を生成する部分酸化システムについて述べている。NOxを含む排気流と添加された還元剤とは、過剰O2の存在下でNOxを還元する触媒上で反応する。このような装置の欠点は、触媒の作用を最終的には損なうことになるコークスの形成により長時間にわたって動作するのが困難となり得ることである。また、このシステムは低分子炭化水素を生成し、これはNOxに対する還元剤としてH2より効果的ではない。別のシステムが米国特許第6,176,078号に記載されている。これは、炭化水素燃料から低分子炭化水素とH2とを生成するためにプラズマトロンを使用する。このシステムの欠点としては、エネルギーコストが高いこと、プラズマ発生器用の電子機器回路を含むシステムのコストおよび耐久性の問題がある。米国特許第5,441,401号およびEP 0,537,968A1は、個別の空気および水の取り入れ口をもつ個別のH2発生器の使用について記載している。水は蒸発して触媒を通過するため、非常に純粋でなければならない。これには個別のタンク、供給システムおよび複雑さを必要とする。しかし、このシステムは実現するのは難しく、また車両などの移動システムでのNOxの除去のためには複雑すぎる。別の周知の技術としては、熱交換器および水供給ポンプを有するオートサーマル改質装置(ATR)がある。しかし、このようなシステムは小型化が困難である。加えて、個別の反応システムで液化炭化水素燃料をH2およびCOに変換するプロセスは、1〜30分間という長い起動時間をもつこともあり得る。この結果、NOx還元に還元剤が利用できない時間が長期間生じ、車両のNOx排出レベルが容認できない程に高いままとなる。
【0012】
O2およびH2Oの両方を、適切な触媒の存在下で部分酸化および蒸気改質などの反応を通して、ディーゼル燃料などの炭化水素燃料をH2およびCOに変換するのに使用してもよい。炭化水素燃料を処理してH2およびCOを生成するために既に使用されている1つのアプローチとして、触媒より上流側のガス流に燃料を連続して加えるものがある。この後、燃料含有ガス流が触媒に接触すると、触媒は燃料をH2およびCOに変換する。しかし、連続燃料供給の欠点は、排気流中のO2が高レベルであるため、燃料のH2およびCOへの改質にとって良好な燃料対酸素比では温度が非常に高くなることである。これについて図1に概略的に示す。図1は、様々な当量比(Φ)での反応器温度を時間に対して示す。燃料を酸素含有ガス流、例えば10%のO2を含有するディーゼル排気ガスに加えると、燃料の燃焼の結果熱が放出され温度が上昇する。従って、当量比0.2では、排気ガスは温度を約250℃から約500℃まで上昇させる。当量比0.5では温度は820℃となり、当量比1.0では温度は1230℃となる。当量比が1を超えると、吸熱改質反応のため温度は低下する。従って、当量比2では温度は1042℃となり、当量比3、すなわち非常に濃厚な混合物では、温度は845℃となる。典型的なオートサーマル改質装置は、蒸気改質(吸熱反応)のための熱を供給するために燃焼(発熱反応)を用いることによって等温となるように温度を調節するものであって、3〜4の範囲の当量比で、蒸気対炭素比(S/C1)を約1の値まで上げてO2の濃度を希薄にするために高レベルの蒸気(少なくとも30%)で動作する。このようなシステムでは、触媒上でのコークスの形成(炭素の堆積)を防ぐために蒸気を加える必要がある。しかし、燃料処理システムへの供給原料として水を車両に積載しなければならず、またナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどの水道水中の典型的な不純物はほとんどの改質触媒材料にとって有害であるために水は非常に純粋でなければならないという理由から、蒸気を加えることは望ましくない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の簡単な要旨
本発明は、酸素含有ガス流中で燃料から還元剤を生成し、酸素含有排気流中のNOx排出を低減させる装置、方法および組成物を提供する。
【0014】
1つの局面では、本発明は還元剤を生成する装置を提供する。装置は燃料噴射器と、酸化触媒および改質触媒をもつ触媒ゾーンとを含み、燃料噴射器は、触媒ゾーンより上流側の酸素含有ガス流の少なくとも一部に向けて燃料を噴射して、ガス流が触媒ゾーンを通って流れるときガス流に濃厚および希薄ゾーンを提供するように構成される。1つの実施形態では、装置は、酸素含有ガス流の濃厚ゾーンが触媒ゾーンの入口から出口に向かう方向に流れるとき、濃厚ゾーンの燃料の一部が酸化触媒上で酸化され、また濃厚ゾーンの残りの燃料の少なくとも一部が改質触媒上で改質されて、これによって還元ガス流を生成するように構成される。酸素含有ガス流の濃厚ゾーンでは、付加された炭化水素燃料の一部が酸化触媒上で酸化されて酸素の実質的にすべて(すなわち、約90%を超える量)が消費され、また残りの燃料は改質触媒上で還元剤、例えば炭化水素燃料が使用されるときはH2およびCOに還元され、これによって還元ガス流が生成される。装置は炭化水素燃料を含有する貯留部をさらに備えてもよく、貯留部は燃料噴射器と流体連通しており、また還元ガス流はH2およびCOを含む。
【0015】
1つの実施形態では、希薄ゾーンは付加燃料を含まない。別の実施形態では、希薄ゾーンは1より低い当量比でいくらかの燃料を含む。希薄ゾーンがいくらかの燃料を含む実施形態では、好ましくは希薄ゾーン内の付加燃料の実質的にすべてが、希薄ゾーンが触媒ゾーンを通って流れるとき酸化触媒上で酸化されるか、または後述するように前酸化触媒上で酸化される。
【0016】
いくつかの実施形態では、酸化触媒と改質触媒は同じ組成物である。他の実施形態では、酸化触媒と改質触媒は異なる組成物である。
【0017】
ガス流中に濃厚および希薄ゾーンを作り出すことは、燃料を不連続に噴射してガス流に濃厚および希薄領域を形成することによって実現される。1つの実施形態では、燃料噴射器は炭化水素燃料を酸素含有ガス流に不連続に導入して濃厚および希薄ゾーンを交互に形成するようにされる。多くの場合、濃厚ゾーンおよび希薄ゾーンを形成するための燃料付加期間は濃厚−希薄周期を含み、濃厚−希薄周期は0.1〜10秒毎に繰り返され、また濃厚−希薄周期の濃厚部分は濃厚−希薄周期の約10〜約90%にわたって続く。
【0018】
もしくは、濃厚および希薄ゾーンは、燃料を実質的に連続して噴射する一方で、触媒ゾーンかまたは燃料噴射器のいずれかをガス流の流れに対して移動させることによって、または触媒ゾーンのうちの付加燃料を含むガス流を受け取る部分が変動するように燃料噴射器の噴射角を変更することによって作り出すことができる。1つの実施形態では、燃料噴射器は、燃料を酸素含有ガス流の一部に実質的に連続して導入して濃厚ゾーンを形成するようにされ、また装置は、触媒ゾーンのうちの濃厚ゾーンが流れる部分が経時変更されるように構成される。
【0019】
いくつかの実施形態では、燃料噴射器によって噴射される燃料は、酸化が可能ないずれかの炭化水素化合物かまたは還元が可能ないずれかの炭化水素化合物である。いくつかの実施形態では、炭化水素燃料は、ガス状、液状、酸素化、窒素含有または硫黄含有の炭化水素、もしくはこれらの混合物である。他の実施形態では、炭化水素燃料はガソリンかまたはディーゼル燃料もしくはその混合物である。
【0020】
いくつかの実施形態では、触媒ゾーンは少なくとも1つのモノリシック構造体を含む。多くの場合、モノリシック構造体の表面に酸化および改質触媒がウォッシュコートとして、個別にまたは組み合わせて塗布される。いくつかの実施形態では、酸化および改質触媒はモノリシック構造体の同じ領域に塗布される。別の実施形態では、酸化および改質触媒は構造体の異なる領域に塗布される。1つの実施形態では、酸化触媒は改質触媒の上流側の領域に塗布される。いくつかの実施形態では、モノリシック構造体は、入口面から出口面まで延びる複数のチャネルを含む。1つの実施形態では、モノリシック構造体は金属を含む。別の実施形態では、モノリシック構造体はセラミック材料を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、装置は、酸素含有ガス流の濃厚および希薄ゾーンが触媒ゾーンを通って流れるとき、触媒ゾーンの温度は約450〜約1000℃に維持されるように構成される。
【0022】
1つの実施形態では、ガス流は触媒ゾーンの入口に入る前に、触媒ゾーンより上流側のヒーターまたは熱交換器によって加熱される。ヒーターまたは熱交換器は触媒ゾーンとガス流連通している。
【0023】
さらに別の実施形態では、装置は、燃料噴射器より下流側であって触媒ゾーンより上流側に前酸化触媒を含む。前酸化触媒は酸化触媒を含み、また燃料噴射器は、前酸化触媒を通って流れるガス流の少なくとも一部に燃料を導入し、これによってガス流が前酸化触媒を通って流れるとき燃料噴射器によって導入された燃料の少なくとも一部が酸化されて、ガス流を加熱するように構成される。前酸化触媒を有する装置の1つの実施形態では、装置は前酸化触媒より下流側であって触媒ゾーンより上流側に混合器を含み、装置は、燃料噴射器によって導入され前酸化触媒を通って流れる燃料の一部を蒸発させるように構成され、また混合器は蒸発した燃料をガス流中で、実質的に軸方向の混合は行わずほとんど半径方向に混合するように構成される。前酸化触媒を有する装置の1つの実施形態では、前酸化触媒は、モノリシック触媒構造体のチャネルの一部の内壁の少なくとも一部にコートされる。1つの実施形態では、コートされた触媒を含むチャネルの上記一部は約20〜約80%である。
【0024】
別の局面においては、本発明は、希薄燃焼エンジンの酸素含有排出物中のNOx含有量を低減させる装置を提供する。装置は燃料噴射器と、酸化触媒と改質触媒とを含む第1の触媒ゾーンとを含む。燃料噴射器は、触媒ゾーンより上流側の希薄燃焼エンジンからの酸素含有排気流の少なくとも一部に向けて燃料を噴射して、排気流が第1の触媒ゾーンを通って流れるとき排気流に濃厚および希薄ゾーンを提供するように構成される。装置はさらに、第1の触媒ゾーンより下流側に位置し、還元ガスの存在下でNOxをN2に還元することができる触媒を含む第2の触媒ゾーンを備えている。1つの実施形態では、装置は、酸素含有ガス流の濃厚ゾーンが第1の触媒ゾーンを通って流れるとき、濃厚ゾーンの燃料の一部が酸化触媒上で酸化され、また濃厚ゾーンの残りの燃料の少なくとも一部が改質触媒上で改質されて、これによって還元ガス流が生成されるように構成され、また装置は、排気流の少なくとも一部と第1の触媒ゾーンで生成された還元ガス流の少なくとも一部とが第2の触媒ゾーンを通って流れ、排気流と還元ガス流とが第2の触媒ゾーンを通って流れるとき、NOxが内部に含まれる触媒上でN2へと還元されるように構成される。
【0025】
いくつかの実施形態では、希薄ゾーンは付加燃料を含まない。別の実施形態では、希薄ゾーンは1より低い当量比でいくらかの付加燃料を含む。希薄ゾーンがいくらかの燃料を含む実施形態では、好ましくは希薄ゾーン内の付加燃料の実質的にすべてが、第1の触媒ゾーンの酸化触媒上で、または後述するように前酸化触媒上で酸化される。
【0026】
装置は、炭化水素燃料を含み燃料噴射器と流体連通する貯留部をさらに備え、第1の触媒ゾーンで生成される還元ガス流はH2およびCOを含む。
【0027】
1つの実施形態では、燃料噴射器は、燃料を酸素含有ガス流に不連続に導入して、第1の触媒ゾーンより上流側のガス流に濃厚および希薄ゾーンを交互に形成するように適合される。別の実施形態では、燃料噴射器は、燃料を酸素含有ガス流の一部に実質的に連続して導入して濃厚ゾーンを形成するように適合され、また装置は、第1の触媒ゾーンのうちの濃厚ゾーンが流れる部分が経時変更されるように構成される。
【0028】
いくつかの実施形態では、希薄燃焼エンジンはディーゼルエンジンである。1つの実施形態では、燃料はディーゼル燃料などの炭化水素燃料である。付加燃料が炭化水素燃料である実施形態では、触媒改質反応の生成物はH2およびCOであり、これらは還元剤として使用されて、第2の触媒ゾーンでNOxをN2に還元する。いくつかの実施形態では、第2の触媒ゾーンは希薄NOx触媒を含む。いくつかの実施形態では、装置は、排気流の一部が第1の触媒ゾーンより上流側でスリップ流として分流されるように構成され、また燃料噴射器は、第1の触媒ゾーンより上流側のスリップ流に向けて燃料を噴射するように構成される。多くの場合、スリップ流をもつこのような装置は、排気流の約5〜約25体積%を前記スリップ流へと分流するように構成される。
【0029】
1つの実施形態では、装置は、第1の触媒ゾーンより上流側に前酸化触媒をさらに含み、燃料は前酸化触媒の上流側に噴射される。上述のように、付加燃料の一部は前酸化触媒上で酸化され、これによってガス流が加熱される。
【0030】
いくつかの実施形態では、装置は制御器を備え、制御器は、燃料の噴射を、排気NOx濃度、排気O2濃度、エンジンrpm、エンジントルク、エンジンターボチャージャーブースト、エンジン取り込み空気流量、排気取り込み流量、排気流量および排気温度、またはこれらの組み合わせから選択される関数として制御する。1つの実施形態では、燃料の噴射は、排気NOx濃度の関数として制御され、NOx濃度は排気流中の少なくとも1つのNOxセンサによって決定される。いくつかの実施形態では、装置はエンジン制御ユニットを含む希薄燃焼エンジンより下流側に位置し、制御器はエンジン制御ユニットに組み込まれている。
【0031】
別の局面においては、本発明は還元ガスを生成するプロセスであって、酸素含有ガス流の少なくとも一部に燃料を導入して、ガス流に濃厚および希薄ゾーンを作り出すことであって、濃厚ゾーンの燃料の一部は酸化され、また濃厚ゾーンの残りの燃料の少なくとも一部は改質されて、これによって還元ガスを生成することを包含する。1つの実施形態では、濃厚および希薄ゾーンは、酸化触媒と改質触媒とを含む触媒ゾーンを通って流れる。ガス流の濃厚ゾーンの燃料の一部は酸化触媒上で酸化され、また濃厚ゾーンの残りの燃料の少なくとも一部は改質触媒上で改質されて、還元ガス流を生成する。炭化水素燃料を使用する場合は、還元ガス流はH2およびCOを含む。
【0032】
別の局面においては、本発明は、希薄燃焼エンジン、例えばディーゼルエンジンの酸素含有排出物中のNOx含有量を低減させるプロセスであって、希薄燃焼エンジンからの酸素含有排気流の少なくとも一部に燃料、例えばディーゼル燃料を導入し、これにより排気流に濃厚および希薄ゾーンを作り出すことを包含する。濃厚ゾーンの燃料の一部は酸化され、また濃厚ゾーンの残りの燃料の少なくとも一部は改質されて、これによって還元ガスを生成する。還元ガスの少なくとも一部を用いて、触媒上でNOxをN2に還元する。1つの実施形態では、排気流の濃厚および希薄ゾーンは、燃料噴射器より下流側に位置し酸化触媒と改質触媒とを有する第1の触媒ゾーンを通って流れ、排気流の濃厚ゾーンの燃料の一部は酸化触媒上で酸化され、また前記濃厚ゾーンの残りの燃料の少なくとも一部は改質触媒上で改質されて、これによって還元ガス流を生成する。還元ガスの少なくとも一部は、第1の触媒ゾーンより下流側の第2の触媒ゾーンを通って流れる排気流の少なくとも一部に導入され、第2の触媒ゾーンは還元ガスの存在下でNOxをN2に還元することができる触媒を含み、またNOxは第2の触媒ゾーンにおいてN2へと還元される。1つの実施形態では、燃料はディーゼル燃料などの炭化水素燃料であり、前記還元ガスはH2およびCOを含む。
【0033】
1つの実施形態では、第1の触媒ゾーンを通って流れるガス流の一部は、第1の触媒ゾーンより上流側でスリップ流として分流され、燃料はスリップ流に向けて噴射される。
【0034】
1つの実施形態では、燃料は、第1の触媒ゾーンより上流側に位置する前酸化触媒より上流側に噴射され、上述のように、噴射された燃料の一部は前酸化触媒上で酸化され、これによってガス流が加熱される。
【0035】
別の実施形態では、上述のような装置は希薄燃焼エンジンを有する車両で用いられるように適合される。1つの実施形態では、希薄燃焼エンジンはディーゼルエンジンである。車両は、本発明の装置を、ディーゼルエンジンなどの車両の希薄燃焼エンジンからの排気流の少なくとも一部と接触させた状態で含む場合がある。1つの実施形態では、燃料噴射器によって噴射される燃料は、ディーゼルエンジンを有する車両に搭載されるディーゼル燃料である。
【0036】
1つの局面においては、本発明は、上述のようなH2の生成および/またはNOxの排出を行う装置を含む車両を提供する。例えば、上述のような装置を自動車、トラック、商用車、飛行機などの車両の排気流中に、排気流の少なくとも一部が装置を通って流れるように、車両のエンジンより下流側に配置してもよい。上述のようなNOx排出を低減させる方法は、車両のエンジンより下流側の、車両の排気流中に上述のような本発明の装置を配置することによって提供され得る。車両のエンジンはSIまたはCI希薄燃焼エンジンであり得る。1つの実施形態では、エンジンは希薄燃焼ディーゼルエンジンである。
【0037】
別の局面においては、本発明の装置またはプロセスは、定置電力発電にまたは機械装置を駆動するために使用されるエンジンと共に用いられ得る。
【0038】
さらに別の局面においては、本発明は、酸化触媒および改質触媒を含む、H2およびCOを生成するための触媒組成物を提供する。1つの実施形態では、酸化および改質触媒は同じ触媒作用活性成分を含む。別の実施形態では、酸化および改質触媒は異なる触媒作用活性成分を含む。
【0039】
別の局面においては、本発明は、酸化および改質触媒組成物(単数または複数)が基体の異なる領域かまたは同じ領域にコートされたモノリシック構造体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、様々な当量比(Φ)での燃料処理反応器の定常温度を概略的に示す。
【図2】図2は、排気入口1および出口10と、燃料噴射器3と、噴射燃料の酸化および改質のための触媒ゾーン6と、混合ゾーン4および9とを含む本発明による燃料処理器の1つの実施形態を示す。混合部4および9はサイズが同じであっても異なってもよく、随意に混合の補助または向上のために内部構成品を含んでもよい。
【図3】図3は、燃料を脈動により加える本発明の燃料処理器に関連する様々なパラメータを概略的に示す。図3aは、燃料を脈動により排気流に加えるときの燃料流量を時間に対して示す。図3bは、加えた燃料が触媒により燃焼するときのO2の濃度を時間に対して示す。図3cは、燃料処理器の触媒ゾーンの入口および出口の温度を時間に対して示す。図3dは、加えた燃料が触媒により変質するときのH2およびCOの濃度を時間に対して示す。図3eは、混合後のO2、H2およびCOの濃度を示す。
【図4】図4は、本発明のNOx排出制御装置の1つの実施形態を示す。排気流40の一部はスリップ流41として分流する。噴射器42を通して噴射される燃料は第1の触媒ゾーン44内の排気ガスと反応してH2およびCOを生成する。これらは次に混合46および53されて貫流排気ガスとなる。H2およびCOは第2の触媒ゾーン48でNOxと反応してN2を生成する。
【図5】図5は、本発明の燃料処理器の1つの実施形態を示す。図5Aでは、触媒ゾーン64は複数のチャネルを備えており、燃料は連続して付加され流動している排気ガスと混合した後、回転する触媒構造体の一部に加えられる。図5Bでは、燃料は燃料噴射器71を通して流入ガイド70へと噴射される。図5Cでは、排気流83の一部が回転する触媒85を迂回する。
【図6】図6は、燃料パルスを用いて7%のO2の存在下で触媒によりH2を生成させた実験の結果を示す。図6Aは、様々な燃料噴射回数でのO2の燃焼およびH2の生成を示す。図6Bは、触媒構造体の入口および出口温度を時間に対して示す。
【図7】図7は、H2濃度に及ぼす混合の効果を時間に対して示す。図7Aは、混合に先立って7%のO2の存在下で燃料パルスを増やした結果として生成されたH2の濃度を示す。図7Bは混合後のH2の濃度を示す。
【図8】図8は、本発明の燃料処理器へと分流した排気ガスのいくつかの流量レベルに対する、燃料ペナルティ対化学量論係数の計算値を示す。
【図9】図9は、毎分1250リットルの触媒質量対ガス流量比、触媒質量1000g、パルス回数0.4Hz、当量比約3および10%のO2の場合の、燃料が本発明の燃料処理器の触媒を通って脈動するときの温度対時間を示す。
【図10】図10は、いくつかの異なる触媒質量対ガス流量比に対する、温度変動振幅対動作回数を示す。
【図11】図11は、燃料噴射器91と前酸化触媒92と混合器93と酸化および変質触媒94とを含むNOx排出制御装置の実施形態を示す。
【図12】図12は、還元剤H2およびCOを、希薄NOx触媒を通って流れるガス流に加えることでNOx変換を行う際に、脈動により加える場合と連続して加える場合との変換効率を比較した実験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、希薄燃焼エンジンにおける排出制御を向上させる方法および装置を提供する。特に、本発明は、炭化水素燃料源からH2およびCOを高い効率で生成すること、および過剰なO2の存在下でNOxをN2へと触媒還元するためにこれらの還元剤を使用することに関する。このプロセスは、過剰なO2を含有する排気流を発生させるいかなるエンジンにも適用可能である。本発明の1つの実施形態では、車両搭載の燃料が使用してH2およびCOを生成し、生成したH2およびCOが次に還元剤として働いて車両の排気流中のNOxをN2に変換する。本発明はまた、酸素含有環境内で燃料から還元ガス流を生成する方法および装置を提供する。
【0042】
(炭化水素燃料からH2を生成)
本発明は、O2含有環境内でH2またはH2およびCOを含有する還元ガスを生成する燃料処理装置および方法を提供する。本発明の燃料処理装置から生成される還元混合物は、後述のようにNOx排出を制御するプロセスで、またはバーナーの燃焼炎の安定化または他の汚染物質の選択的除去など他の適用のために使用され得る。
【0043】
本発明の装置は、O2含有ガス流中で還元ガス混合物を生成するために燃料処理器を用いる。いくつかの実施形態では、O2含有ガス流はディーゼルエンジンからの排気流であり、これは一般にO2、CO2、H2OおよびNOxを含有する。
【0044】
燃料処理器は、酸化および改質触媒を有する触媒ゾーンを含む。触媒はガス流の少なくとも一部と接触する。
【0045】
燃料処理器はまた、酸素含有ガス流に燃料を加えるための燃料噴射器を含む。燃料噴射器は、触媒ゾーンを通って流れるガス流に濃厚および希薄ゾーンが形成されるような方法で燃料をガス流に導入する。いくつかの実施形態では、付加される燃料は炭化水素燃料である。
【0046】
本明細書で用いる「当量比」とは、実際の燃料の量と、ガス混合物内に存在するO2のすべてと十分に反応するために必要とされる理論上の化学量論の燃料の量との間の比率を指す。本明細書で用いる「希薄」とは燃料/空気当量比が1.0より小さいことを指し、「濃厚」とは燃料/空気当量比が1.0より大きいことを指す。濃厚ゾーンは、ガス流のうち燃料が加えられた部分の当量比が1.0より大きくなるように燃料を加えるとき流動ガス流中に生成される。希薄ゾーンは、燃料が加えられないとき、またはガス流のうち燃料が加えられた部分の当量比が1より小さくなるような量で燃料を加えるとき生成される。
【0047】
いくつかの実施形態では、O2含有ガス流中に希薄および濃厚状態を交互に生み出すことは、炭化水素燃料などの燃料を脈動により不連続的に加えて、ガス流中に濃厚および希薄ゾーンを交互に形成することによって実現される。他の実施形態では、燃料を実質的に連続して加えて流動するガス流の一部に濃厚混合物を形成する一方で、触媒ゾーンのこの濃厚混合物が流れる部分を連続的にまたは定期的に経時変えていく。
【0048】
濃厚状態では、付加燃料の一部は酸化触媒上でガス流中の酸素により燃焼して熱を放出し、そして残りの付加燃料の少なくとも一部は、燃焼反応で生成されるかまたはガス流中に存在するH2Oと改質触媒上で反応してH2を生成する。すなわち吸熱反応する。燃焼反応により熱が提供され改質触媒の温度を、付加燃料を効率よく改質するのに適切なレベルに上昇させる。炭化水素燃料を使用する場合は、改質反応の生成物はH2およびCOであり、これらは共に希薄NOx触媒上でのNOxの還元などの下流側でのプロセスの還元剤として働き得る。アンモニアを付加燃料として用いる場合は、改質反応の生成物は水素および窒素又は窒素酸化物である。
【0049】
希薄状態では、希薄ゾーンが付加燃料を含まない実施態様では、燃料処理器の触媒ゾーンでは付加燃料による燃焼反応も改質反応も起こらない。
【0050】
他の実施形態では、なんらかの燃料が1より小さい当量比で付加されて酸素含有ガス流中に希薄ゾーンを作り出し、付加的な熱を生成する。このような実施形態での希薄ゾーン内の燃料の所望量は、燃料処理器の触媒の必要とされる温度によって決定される。例えば濃厚ゾーンが大きさが非常に小さいかまたは持続期間が短い場合、もしくはガス流中の酸素レベルが低い場合は、触媒ゾーンを必要な動作温度に維持するためには濃厚ゾーンでの酸素の燃焼によって生成される熱に加えて付加的な熱が必要とされる場合がある。なんらかの燃料を付加して酸素含有ガス流中に1より小さい当量比の希薄ゾーンを形成するこのような実施形態では、希薄ゾーン内の燃料の実質的にすべてが酸化触媒上でガス流中の酸素により燃焼し、付加的な熱を生成する。好ましくは、このような実施形態で生成される付加的な熱の量は、概ね触媒ゾーンの温度を所望の動作温度領域内に維持するのに十分な量である。
【0051】
ガス流の濃厚ゾーン内での改質反応の生成物、例えば炭化水素燃料を用いる場合はH2およびCOは、ガス流の他の成分と共に触媒ゾーンを出て行き、随意に、排出制御のために希薄NOx触媒上でNOxをN2に還元するために下流側のプロセスで使用してもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、燃料処理器によって生成される還元ガスは分別されて実質的に純粋なH2流を生成し得る。例えば蒸留、圧力スイング吸着(PSA)、または選択的な膜(例えば、H2を拡散させる微孔膜)の使用などの分離技術を使用して、改質触媒によって生成される還元ガス混合物の他の成分からH2を分離してもよい。
【0053】
(燃料処理器の概説)
上述のように、本発明は、O2含有ガス流中の付加燃料からH2を生成する燃料処理器を提供する。ディーゼルエンジンなどの希薄燃焼エンジンからの排気ガスは典型的には8〜15%のO2および6〜10%のH2Oを含有する。本発明の燃料処理器は、このような排気流中で、付加された炭化水素燃料から還元剤、例えばH2およびCOを生成するために使用され、生成された還元剤はNOx排出の低減などの下流側のプロセスにおいて還元剤として使用され得る。
【0054】
上述の連続燃料付加の欠点を回避するために、本発明の燃料処理装置は、触媒上を流れるガス流が濃厚状態と希薄状態とを交互に繰り返すように燃料を付加するための燃料噴射器を含む。本明細書で述べる方法で使用されると、燃料を連続して加えた場合に較べて、燃料処理器の触媒にとって、および燃料処理器の触媒から出て行くガス混合物にとってより低い温度が得られる。
【0055】
本発明の燃料処理装置の1つの例示的な実施形態を図2に示す。図2は、燃料噴射器2および混合システム4に接続されるパイプまたはダクト1を含む。ガス流はパイプ1を通ってシステムに流入し、燃料サプライ3によって供給され燃料噴射器2を通して噴射される燃料と混合される。燃料は触媒ゾーン6の入口より上流側のガス流へと噴射される。図3に示す1つの実施形態では、炭化水素燃料が不連続の脈動により混合器4に噴射され、燃料噴射器が燃料をガス流に噴射しているときに濃厚ゾーンを、燃料噴射器が燃料をガス流に噴射していないときに希薄ゾーンを形成する。
【0056】
燃料、例えば炭化水素燃料がこの方法で図3aに示すように加えられるに従って、ガス流中に濃厚および希薄ゾーンが、濃厚ゾーンでは当量比が1より大きく、また希薄ゾーンでは当量比が1より小さくなるように作り出される。図2に示すように、得られる濃厚および希薄ガス混合物は、酸化および改質触媒を含む触媒ゾーン6を通って流れる。このとき、ガス流の濃厚ゾーンの炭化水素燃料は酸化触媒上でガス流中のO2により燃焼し、次にO2の実質的にすべてが消費された後に改質触媒上でH2およびCOに変換される。
【0057】
燃料が噴射され濃厚ゾーンを形成する期間中は、燃料流量は、ガス流のうちの燃料が噴射される部分の当量比が1より大となる、典型的には少なくとも約1.5、多くの場合少なくとも約2となるような流量に設定される。濃厚ゾーンでの当量比が約1であるため、図3bに示すように、O2の実質的にすべてが消費され、触媒ゾーンから出て行くO2レベルは実質的にゼロ、すなわちゼロに近いかまたはゼロに等しい。ガス流中の大量の酸素が燃焼することにより、図3cに示すように、触媒およびガスの温度が、残りの燃料の改質を引き起こすのに必要とされるレベルまで上昇する。燃料が噴射されているとき、燃料/排気混合物は「濃厚」である、すなわち当量比が1より大きいため、また燃料の一部の燃焼により温度が高いため、図3dに示すように、過剰燃料からH2およびCOが形成される。燃料パルスは十分に長いため、O2の十分な燃焼によって生成される熱は図2の酸化および改質触媒6を、改質にとって望ましい温度、一般には約450〜約1000℃、場合によっては約500〜約900℃、多くの場合約550〜約650℃、最も多くの場合約600℃まで加熱する。触媒温度が定常温度まで上昇すると触媒の良好な耐久性には高過ぎるため、定常温度まで上昇する前に燃料は遮断される(図3aの領域12)。
【0058】
ガス流の希薄ゾーンの低温ガスが触媒ゾーンを通って流れると触媒温度は低下する。図3aに示すように、燃料噴射の期間中の燃料流量を所望の当量比に達するように制御して、引き続いて燃料パルスを加えることができる。燃料をこのように脈動させると、図3dに示すように、触媒ゾーンの出口から出て行く排気流中にH2およびCOのパルスが生成され、一方、図3cに示すように、触媒温度は比較的一定のレベルに維持される。
【0059】
排気流7は、随意に、混合器、例えば図2の8を通って、図3eに示すように、比較的定常濃度のH2およびCOを生成する。混合器は随意に触媒ゾーンより上流側に配置して燃料−排気ガス混合物が均一となるように、および/または触媒ゾーンより下流側に配置して排気流中の還元剤の濃度が均一となるようにしてもよい。図2の参照番号4および8によって表されるこのような混合器はサイズが同じでも異なってもよく、様々な形状で構成することができ、またベイン、タブまたは軸方向に大きな再循環ゾーンを生じさせない他の物理的な装置など混合を促進する内部構造又は装置を含むことができる。適切な内部混合器は当業者であれば容易に決定され得る。脈動状態のまたは不連続の還元剤、例えばH2およびCOの濃度が望ましい場合は、図2の混合器8は削除してもよい。
【0060】
1つの実施形態では、図3aに示すように、最初の燃料パルスはその後のパルスより長くして、触媒を所望の温度まで急速に加熱させる。その後のパルスは、比較的一定の触媒温度を維持するために選択された流量、期間および回数とすることができる。別の実施形態では、燃料の脈動は、最初は、すべてのパルスを実質的に等しい期間とし所望の定常回数に設定する。その結果、触媒温度は徐々に定常温度に近づき、またH2およびCO出力は徐々に所望の値に近づくことになる。図3に示す実施形態では、サイクルの希薄部12での燃料流量は実質的にゼロである。他の実施形態では、サイクルの希薄部においてなんらかの燃料が1より小さい当量比で噴射され、これにより、付加燃料が酸化触媒上での燃焼反応で消費されるときサイクルのこの部分において追加の熱を生成することができる。
【0061】
本発明の燃料処理器は上述の例示した実施形態によって限定されない。上述のように燃料を酸素含有ガス流に付加して燃料の効率的な改質のためにガス流中に濃厚および希薄ゾーンを形成することが可能である限り、本発明に従って燃料処理器に対して他の設計を用いてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、燃料を脈動により加えるのではなく、燃料は実質的に連続して加える一方、触媒構造体をガス流の流動方向に対して半径方向に回転させることによって、または触媒ゾーンの一部のみが任意の所定時間に濃厚混合物と接触しその濃厚混合物と接触する部分が経時変更されるように燃料噴射器の位置または噴射角を連続的または定期的に変更することによって、ガス流中に濃厚および希薄ゾーンを形成する。
【0063】
図5Aに示す燃料処理器の1つの実施形態では、燃料は、複数の長手方向のチャネルを有する回転触媒構造体に流れ込むガス流部分に連続して加えられる。これらチャネルは、ガス流が触媒構造体の入口から出口までチャネルを通って流れるように構成されている。チャネルの壁は酸化および改質触媒によりコートされる。燃料を触媒構造体に流れ込むガス流部分に連続して加える一方で、ガス流中で触媒構造体が半径方向に回転するため、燃料を脈動により加えて濃厚および希薄ゾーンが交互に触媒ゾーン全体を通って流れるようにする場合と同じ効果が効果的に得られる。適切な形状を用いることにより、連続的または定期的に変わる触媒構造体部分に周期的な希薄および濃厚状態を作り出す。排気ガスは排気ダクト61を通って燃料処理器60に入り、主チャンバー62を通過して排気ダクト63から出て行く。主チャンバー62内には、例えば図5Aに示すような蜂の巣形状の長手方向のチャネルを有するモノリシックな触媒基体64がある。触媒基体は駆動ユニット66によって駆動されるシャフト65によって回転する。燃料は燃料噴射器67を通って噴射され、噴射パターン68をそしてこれによって輪郭69によって示される領域内でモノリシック構造体と出会う濃厚ゾーンを作り出す。連続燃料噴射速度は、領域69での当量比が1より大、典型的には約2〜約5の範囲内であるように設定される。触媒ゾーンの領域69は触媒構造体が回転するに従って経時変化する。
【0064】
別の実施形態では、図5Bに示すように、燃料はフローガイド70へと連続噴射される。燃料噴射器71は燃料をフローガイドの入口へと噴射し、フローガイドは、燃料と排気ガスとを混合させこの燃料排気混合物が触媒72に入るとき比較的均一な燃料濃度となるようにすることができる。
【0065】
図5aおよび図5bに示す燃料処理器の実施形態は、触媒ゾーン(64、72)と主チャンバー(62、73)との間に気密シールを必要としない。このため回転する触媒(64、72)の設計が非常に簡単になる。触媒構造体を回転させることでシステムが複雑化しまたシステムに追加の構成要素および追加のコストを課すが、このアプローチは、還元剤、例えば炭化水素燃料をガス流に加える場合はH2およびCOを含有する排気ガスの実質的に連続した流れを作り出し、これは残りの排気またはガス流とより容易に混合されるという利点をもつ。
【0066】
別の具現例では、触媒構造体を回転させるのではなく、燃料噴射器67の噴射角を変化させる。噴射角を変化させることによって、濃厚な燃料/空気比の領域が触媒構造体上を回って移動し、図5Aに示すような回転する触媒の動作に効果的に匹敵する。噴射器の噴射角は、噴射器を物理的に動かすことによって、噴射器からの燃料噴射と相互作用して噴射角を効果的に変化させる追加の空気流を用いることによって、または噴射角を変化させる噴射器内の電動部品を用いることによって機械的に変化させることができる。
【0067】
図5Aまたは図5Bに示す燃料処理器60は、排気流の一部を燃料処理器へのスリップ流として分流し、次にH2およびCOなどの改質反応の生成物を生成した後で主流の排気流に再導入する排出制御システムにおいて構成することができる。別のアプローチとしては、図5Cに示すように、排気流のほとんどが触媒構造体を迂回するようにするものがある。全排気流80がダクト81を通って燃料処理器に流入する。流路83によって示されるように排気ガスの大部分が燃料処理器の触媒を迂回して、ダクト84を通って燃料処理器ユニット82から出て行く。各通路に対する流れ抵抗に応じて排気流の一部が燃料処理器の触媒85へと分流する。燃料噴射、および触媒構造体を回転させるかまたは噴射角を変化させる燃料処理器の動作については、実質的に図5Aおよび図5Bに示した燃料処理器システムの場合に述べた通りである。いくつかの実施形態では、燃料処理器ユニット82は、所望の流量が燃料処理触媒を通るように誘導するために主チャンバー86内にバッフルおよび仕切り板を含む。このような仕切り板およびバッフルの適切な設計および構成は当業者であれば容易に決定され得る。
【0068】
図5A、図5Bおよび図5Cに示す実施形態のような実施形態では、触媒構造体は好ましくは触媒を所望の動作温度、一般には約450〜約1000℃、時には約500〜約900℃、多くの場合約550〜約800℃に多くの場合約600℃維持するのに十分な熱質量をもつ。
【0069】
ディーゼル燃料、ガソリン、メタン、灯油、他の炭化水素、アルコールおよびすべての炭化水素含有燃料を含む多くの炭化水素燃料が、本発明の燃料処理器の実施形態のいずれにおいても酸素含有ガス流に付加する燃料として適切である。ガス状、液状、酸素化、窒素含有および硫黄含有の炭化水素を使用してもよい。さらに、本発明の装置において1より大きい当量比での燃焼で水素含有流が生成されるのであれば、アンモニア、硫化水素または他の可燃物質などの非炭素含有燃料を使用してもよい。使用される燃料は、燃焼により適切な量の熱を放出して、改質触媒の温度を、還元剤、例えばH2またはH2およびCOを効率よく生成するのに適切なレベルまで上昇させることが可能でなければならない。特に有利な実施形態では、このアプローチを用いて、希薄燃焼エンジンを持つ車両に搭載される炭化水素燃料をエンジン排気ガスと共に処理して、H2およびCO含有の排気流を生成することができる。
【0070】
(NOx排出制御)
本発明は、燃焼プロセス、特に希薄燃焼内燃機関で起こる炭化水素燃料の燃焼からの酸素含有排出物中のNOx含有量を低減させる排出制御装置および方法を提供する。本発明の装置は、特に、車両ディーゼルエンジンの排気ガス中のNOx排出を減らすのに有用である。本明細書では、「NOx」とは燃焼プロセスにおいて生成される窒素酸化物、特にNOおよびNO2などの内燃機関の排気流中に存在する窒素酸化物を指す。「希薄燃焼」(“lean burn”または“lean burning”)エンジンとは、燃料を酸化させるのに必要な化学量論の空気量より空気が多い空燃比で炭化水素燃料を燃焼させるエンジンを指す。これには、ディーゼルエンジンの場合、15より大きい、典型的には25より大きい空燃質量比が必要である。希薄燃焼ディーゼルエンジンからの排出は、典型的には、排気ガス中に約8〜15%のO2および400〜700ppmのNOxを含む。
【0071】
排出制御装置はまた、排気流と接触し、上述のような燃料処理器の触媒ゾーンより下流側に配置された第2の触媒ゾーンを含む。第2の触媒ゾーンは、O2含有環境内、特に希薄燃焼エンジンの排気中で、燃料処理器によって生成されたH2およびCOを用いて、NOxからN2へ選択的触媒還元することが可能な「希薄NOx触媒」などの触媒を含む触媒組成物を有する。燃料処理器によって生成される還元剤、例えばH2およびCOが第2の触媒ゾーンに達すると、内部の触媒上でNOxがN2に還元されこれによりNOx排出が低減される。
【0072】
本発明は、本発明の排出制御装置を用いて、ディーゼルエンジンでの燃焼などの希薄燃焼プロセスによって生成されるNOxを低減させる方法を提供する。本発明の方法には、O2およびNOx含有の排気流の少なくとも一部に燃料を噴射して排気流中に濃厚および希薄ゾーンを作り出すことを包含する。濃厚および希薄ゾーンは上述のような燃料処理器の触媒ゾーンを通って流れる。燃料処理器の触媒ゾーンは酸化および改質触媒の両方を含む。濃厚ゾーンでは、燃料の一部は酸化され、残りの燃料の少なくとも一部が改質触媒上で改質されて還元剤、例えば炭化水素燃料を用いるときはH2およびCOを生成する。還元剤、例えばH2およびCOは第2の触媒ゾーンより上流側の排気流に導入され、第2の触媒ゾーンの触媒上でNOxと反応してN2を生成し、これによってNOx排出を低減させる。
【0073】
有利な実施形態では、希薄燃焼エンジンを持つ車両に搭載された燃料、例えばディーゼルエンジン駆動車両に搭載されたディーゼル燃料は、本発明の燃料処理器で処理されてH2およびCOを生成し、生成されたH2およびCOが、上述のような排出制御装置の第2の触媒ゾーンの希薄NOx触媒と共にNOx排出レベルを低減させる。
【0074】
図4に概略を示した1つの実施形態では、酸素含有エンジン排気流40の一部を「スリップ流」41として分流する。次に燃料噴射器42を通して燃料をスリップ流のガス流に向けて噴射する。燃料は領域43内でスリップ排気流に加えられ、その混合物が触媒ゾーン44を通って流れて、改質反応生成物、例えばH2およびCOを生成する。これら生成物は次に混合器46および53内で貫流エンジン排気流と混合する。改質生成物、例えばH2およびCOは次に、希薄NOx触媒48上で排気流中のNOxと反応して、触媒を出て行く排気流49内のNOx排出レベルを低減させる。
【0075】
排気流の一部をスリップ流に分流させる実施形態では、スリップ流へと分流され燃料処理器の触媒ゾーンを通る排気量は広い範囲で変えることができる。典型的には、全排気中の約1〜約50%がスリップ流に分流される。燃料処理器を通るガス流量は酸化燃料によって改質温度まで加熱されるため、熱損失および効率低下をもたらす。このため、燃料処理器へと分流される排気流の量を制限するのが好ましい。燃料処理器によって生成される改質生成物、例えばH2およびCOは、52の地点で主排気流に戻されて大きく希釈される。このように大きく希釈されるということは、混合流47での所定の目標濃度に対して45の地点で生成される還元剤の濃度は比例的に高くなければならないということである。例えば、第2の触媒ゾーン47の入口でのH2およびCOが1000ppmであって燃料処理器への分流が5%の場合は、H2およびCOの平均濃度は2%でなければならない。これら2つの要件により、異なる方向への分割比が決まる。
【0076】
図8は、燃料処理器へと分流される排気ガスのいくつかの流量レベルに対しての、燃料ペナルティ対化学量論係数の計算値を示す。これらの計算は、NOx排出レベルが5g/b−hp−hr(ブレーキ馬力時当たりのグラム数)の範囲であり高負荷で動作する典型的なディーゼルエンジンに対して行われた。化学量論係数とは、NOxの各分子を還元するのに必要とされるH2およびCOの比率である。化学量論係数1では、1個のH2分子または1個のCO分子が1個のNOx分子を還元する。図示するように、最も低い燃料ペナルティは、燃料処理器に分流される排気ガスの流量が最も低いとき、および化学量論係数が最も低いときに得られる。理論的な化学量論係数はNOの場合が1、NO2の場合が2であり、効率的な希薄NOx触媒にとっては、化学量論係数は1〜3の範囲であると予想され得る。好ましくは、燃料処理器に分流される排気流量分は体積百分率で約1%〜少なくとも約50%、より好ましくは約3〜約30%、さらにより好ましくは約5〜約25%、最も好ましくは約8〜約15%の範囲である。
【0077】
図4の燃料処理器の触媒構造体44は分流した排気流の流れに対して抵抗を与えるため、いくつかの実施形態は「分割比」すなわちスリップ流へと分流する排気量の貫流排気量に対する比を規制する手段を含む。分割比を規制するのに適した手段の例としては、位置51または52にバルブを配置するなどの様々な手段が含まれる。いくつかの実施形態では、バルブは固定または可変のドアを含むが、排気流のうちの所与の量を燃料処理器50へと誘導することができる他の手段を本発明に従って用いることができる。固定の規制手段もまた使用され得る。固定手段の1つの例としては、位置51と52との間の主排気ダクト内に配置される、オリフィスなどの流量制限器がある。このような制限によって、燃料処理器50の構成要素によってもたらされる制限に匹敵するものとして、主ダクト内の流量制限器によってもたらされる相対的な制限に基づいて、排気流量のうちの所定分を燃料処理器50へと誘導する。位置51と52との間のダクト内に配置される制限器は、固定開口部を持つ固定制限器であっても、バルブまたはドアなどの可変制限器であってもよい。
【0078】
(燃料噴射)
本発明での使用に適した多くの燃料噴射器が当該分野で周知である。本発明のいくつかの実施形態では、加圧燃料が噴射器に供給され、次に噴射器が流量制御バルブを開閉して燃料の流れをオンオフする。このような噴射器は自動車の燃料噴射器として広く開発されてきており、例えば米国特許第6,454,192号、第5,979,866号、第6,168,098号および第5,950,932号に記載されている。このような噴射器は、30〜600psigの範囲の低圧燃料供給を利用し、また電気信号を用いて噴射器内のソレノイドまたはバルブを動かして、燃料の流れを非常に高速に、典型的には0.2〜1ミリ秒の範囲の速度でオンオフさせることができる。このような燃料噴射器は、開口時間比を燃料の流れを制御するように設定した噴射器を非常に高速で開閉することによって、燃料流量を制御する。本発明の装置で使用する場合、この開閉を非常に速くして、燃料の流れを実質的に連続とすることができる。例えば、回数を50〜100Hzとし開口時間比を制御すれば、燃料流量を制御して図3aに示す濃厚パルス中に所望の当量比を得ることができる。燃料噴射器は次に希薄期間中は完全に閉じられる。従って、このような燃料噴射器は2つの回数成分により動作し得る。高い回数成分は、図3aおよび図3dに示す濃厚および希薄期間中に必要な燃料流量を与えるために使用される。噴射器は図3aおよび図3dに示す希薄期間中は実質的にオフにされる。燃料処理器の触媒温度を維持するために希薄期間中にいくらかの燃料流量が所望される場合は、開口時間比を非常に低くして噴射器の高回数動作を行うことで、非常に低い燃料流量が得られる。
【0079】
空気支援噴射器などの他のタイプの噴射器を使用してもよい。空気支援噴射器は加圧空気を利用する。加圧空気は燃料と共に噴射器を通って流れ、これにより所望の燃料滴サイズ、噴射パターンまたは噴射方向を得るか、または燃料をより低い供給圧で利用する。また多数の噴射器を使用してもよい。別の手段としては、噴射手段は、燃料噴射の分散および誘導のために単純なノズルを備えてもよい。このノズルは、燃料をパルスポンプまたは他の手段からのパルスに合わせて供給する燃料ラインに接続される。噴射された燃料は短期間で燃料処理器の触媒に送る必要があり、パイプまたは構成要素の壁に液状で留まったままであるのは不利である。この問題を解決する1つの実施形態は、燃料を触媒表面に直接噴射して、燃料が燃料処理器または排気システムの場合によっては冷たい金属表面と相互作用するのを制限することを包含する。別の実施形態は、燃料を非常に熱い表面に噴射してこれを瞬間蒸発させることを包含する。さらに別の実施形態は、個別の熱いチャンバー内で燃料を予め蒸発させ、その後蒸発した燃料を噴射器を通して放出することを包含する。
【0080】
(燃料と排気ガスとの混合)
改質生成物、例えばH2およびCOの生成のための正しい触媒温度を実現するために、燃料対酸素比は、所望の熱出力レベルを与えて触媒温度を維持し必要レベルのH2およびCOを生成するのに適切な範囲内でなければならない。これには、燃料処理器の触媒より上流側で噴射燃料と排気流とを混合させて、触媒ゾーンに入る前に燃料−排気混合物が適切な均一性レベルを実現することが必要である。当量比の変動を用いて必要な均一性レベルを定義すると、+/−40%の当量比均一性が望ましく、+/−30%が好ましく、+/−20%の均一性が最も好ましい。1つの方法としては、均一の燃料噴射パターンを触媒構造体の入口の面に与える非常に均一な噴射器を使用することがある。この均一な燃料噴射パターンを燃料処理器の触媒を通る均一な排気ガス流と結合させると、燃料処理器の触媒ゾーン入口に比較的均一な燃料濃度が得られる。いくつかの実施形態では、燃料処理器の触媒ゾーンに入る燃料とガス流との混合物は、一部は蒸発し一部は液状の燃料を含む。燃料が十分に蒸発していない場合、燃料ガス混合物が金属表面と接触すると、燃料はこれら表面上に液状膜として集まり、これが効果的な燃料濃度の均一性を低減させる恐れがある。加えて、燃料がゆっくりと蒸発すると、希薄および濃厚ゾーンが変わり、還元剤、例えばH2およびCOを生成するシステムの性能を低減させる恐れがある。好ましくは、燃料噴射器および排気流は、燃料処理器の触媒ゾーンへの入口で実質的に均一な燃料濃度を与えるように構成される。いくつかの実施形態では、触媒ゾーンに入る燃料の少なくとも一部は蒸発せず滴の形状で入る。
【0081】
燃料処理器の触媒ゾーンの入口で所望の燃料濃度を実現する第2の方法は、先ず前燃焼触媒上で燃料を酸素と一部反応させ、これにより燃料−排気混合物の温度を上昇させて燃料を一部または完全に蒸発させる。次にこの蒸発した燃料と排気ガスとの混合物を標準的なガス混合技術で混合して、燃料処理器の触媒のための望ましい当量比均一性を形成する。このようなシステムを図11に概略的に示す。このシステムは、燃料を前酸化触媒92上に噴射する燃料噴射器91を備えた燃料処理システム90を含む。前酸化触媒は燃料の一部をガス流中の酸素により燃焼させて、燃料のいくらかの部分が蒸発するように温度を上昇させる。この蒸発した燃料を次に混合器93によって排気流と混合させて、燃料処理器の酸化/改質触媒94のためのより均一な燃料酸素混合物を形成する。この触媒が次に濃厚サイクル中に還元剤、例えば、H2およびCOを生成する。混合器93は、燃料および排気ガスを高速で混合しまた燃料と空気とが軸方向に混合するのを制限し、これにより濃厚パルス中は高い当量比を維持して燃料のH2およびCOへの改質を最大限にするように設計されている。実質的に軸方向の混合はなくほとんど半径方向に混合することが、一般に濃厚パルスの大きさを維持するためには望ましい。
【0082】
1つの実施形態では、前酸化触媒は、低圧の滴を可能にする開口チャネルを有するウォッシュコートされたモノリシックの蜂の巣状の基体である。前酸化触媒基体は、チャネルの壁が酸化触媒でコートされたセラミックまたは金属製の蜂の巣状構造体である。触媒基体の長さおよびチャネルサイズは如何なるものであってもよいが、燃料の一部のみを反応させて混合物の温度を十分に上昇させ燃料の一部またはすべてを蒸発させることが望ましいため、いくつかの実施形態では、基体長さは短いことが、またはチャネルサイズは大きいことが望ましい。もしくは触媒基体構造体は、米国特許第5,250,489号および第5,512,250号に記載されているように、一方の側のみが酸化触媒でコートされた波形金属片から形成されこれを巻いて螺旋構造とされた金属基体を含む。隣接するチャネル間の壁の一方の側のみに触媒をコートしたこのような構造体は、触媒基体の温度上昇を制限することができる。これは、燃料−排気混合物が均一でない場合に望ましい。このような前燃焼触媒システムで蒸発した燃料の量は少なくとも約50%、好ましくは約70%、最も好ましくは約80%であることが望ましい。いくつかの実施形態では、燃料が排出制御システムの壁上に集まるのを防ぐためには燃料の実質的にすべてが蒸発することが望ましい。
【0083】
(低排気温度での動作)
低い排気温度では噴射された燃料は十分に蒸発しないかもしれない。この制約を克服するために、燃料処理触媒より上流側に電気ヒーターを配置して、排気ガスの燃料処理触媒へと流れる部分を加熱することができる。例えば、図4に示した実施形態では、電気ヒーターはダクト41内に配置して、燃料処理器50へ、すなわち燃料空気混合スペース43を通って燃料処理器の触媒44へと流れている排気ガスを加熱することができる。この電気ヒーターは当該分野で既知の任意の適切なタイプのものでよい。例えば、排気流中に吊るされた電気抵抗ワイヤ、電気加熱された金属片、排気流の流路の壁としての電気加熱された金属壁であればよい。または排気ガスを所望の温度まで加熱するいかなる方法であってもよい。
【0084】
別の方法としては、金属製の触媒基体を用いて電流をこの金属触媒に通すことによって、燃料処理器の触媒の一部を電気加熱するものがある。排気ガス流の一部のみが加熱金属基体によって直接加熱されるように大きなチャネルサイズを用いることによって電力を制限することができる。さらに別の方法としては、燃料処理器の触媒ゾーンを出て行く加熱ガス(図4の45)と燃料処理システムに入るガス(図4の41)との間の熱交換を用いるものがある。この熱交換は、例えばチューブおよびシェル熱交換器、フィンおよびチューブ熱交換器またはパイプ装置を含む、当該分野で周知の多くの方法によって行うことができる。
【0085】
(酸化および改質触媒)
様々な実施形態において、酸化および改質触媒は、容器に入った球粒またはビーズの形状であるか、またはモノリシック構造体の壁にコートされる。本明細書で用いる「モノリス」または「モノリシック構造体」とは、1つまたは複数のチャネルを有する単体の構造体をいう。適用によっては、モノリシック構造体、例えば蜂の巣形状が有利な場合がある。何故なら、例えば車両では、振動により球粒またはビーズ状材料の磨耗および損失が生じる恐れがあるためである。さらに、モノリシック構造体は、典型的には、流れている排気流に対して圧力低下または背圧が低い。モノリスは典型的にはセラミックまたは金属材料よりなり、セラミックまたは金属は、入口の面から構造体を通って出口の面へと到る開口チャネルを形成するように構成され、様々なチャネルまたはセルのサイズおよび形状であってよい。
【0086】
触媒材料は典型的にはゾルすなわち液状担体中のコロイド状分散液の形状とされ、次に金属またはセラミックのモノリシック構造体の内表面に塗布されて、これら内表面上に触媒コーティング層を形成する。モノリシック触媒基体についての検討が、HeckおよびFarrauto,“Catalytic Air Pollution Control−Commercial Technology”,Van Nostrand Reinhold,1995,19−26頁に提示されている。「支持体」または「基体」は触媒組成物を含む材料であり、多くの場合その上にコーティングされる。支持体の一例としては、触媒材料を堆積させる耐熱酸化物などの高表面積多孔性材料がある。「耐熱酸化物」とは、高い表面積、高温での熱安定性または反応流への対薬品性などの好適な望ましい特性を有する、触媒反応種を取り入れるためのベースとして働き得る材料をいう。
【0087】
モノリシック構造体のセルのサイズおよび形状は、特定の適用にとって必要とされる所望の表面積、圧力低下、ならびに熱および質量の伝達係数を得るように選択される。このようなパラメータは当業者であれば容易に確かめ得るものである。本発明によれば、チャネルは製造およびコーティングを容易にするのに適した任意の形状であり得る。例えば、金属基体の場合は、チャネルは波形のものが直線、正弦波または三角形の形状にされ、そして/もしくはヘリンボンまたはジグザグパターンを含む。セラミック基体の場合は、チャネルは例えば正方形,三角形または六角形、もしくは押し出し成形または当該分野で既知の他の製造方法によって形成することができるいかなる形状であってもよい。チャネルの直径は典型的には約0.001〜約0.2インチ、好ましくは約0.004〜約0.1インチの範囲である。
【0088】
いくつかの実施形態では、比較的高い熱質量をもつ金属モノリシック構造体を用いて燃焼熱を保存し、この燃焼熱を燃料パルス間でゆっくりと放出して、触媒および触媒を通る排気ガスの温度を比較的一定のレベルに調節するのを可能にする(図3C)。この調節の一例を図9に示す。図9は、燃料を上述のように脈動させてガス流に加えるときの触媒の平均温度対時間を示す。図9は、1000グラムの質量の触媒に対して毎分1250リットルの触媒質量対ガス流量比、すなわち0.8g/SLPM(排気流の標準リットル/分)で計算された触媒温度を示す。燃料は、当量比が約3で酸素約10%の典型的な排気状態のとき濃厚−希薄周期が0.4Hzとなるように脈動供給される。「濃厚−希薄周期」とは、濃厚プラス希薄パルスの秒単位で表す時間の逆数である。例えば、濃厚パルスが0.5秒、希薄パルスが1.5秒で合計濃厚プラス希薄時間が2秒の場合、濃厚−希薄周期は1/2すなわち0.5Hzである。触媒温度は655〜681℃の間を変動する(約26℃の変動)。これは大きな変動であり、金属構造体の疲労により触媒構造体の寿命を縮めることになる。図10は同じ方法ではあるが広い範囲の触媒質量および回数に対して計算した一連のポイントを示す。3Hzより多い燃料脈動の場合は実行が困難であり、高レベルの燃料ペナルティを引き起こすおそれがある。0.4Hzより少ない回数では、0.5g/SLPMより小さい所定の流量の場合非常に小さな触媒質量をもつシステムでは非常に高い温度の揺れを導く恐れがある。従って、本発明の燃料処理器にとっての所望の濃厚−希薄回数範囲は好ましくは約0.1〜約10Hzであって、これは約10秒〜約0.1秒に対応し、より好ましくは約0.25〜約3Hz、最も好ましくは約0.4〜約2Hzである。加えて、触媒質量の好適な範囲は約0.5g/SLPMより大である。単位流量当たりの触媒質量の上限は所望の開始速度によって決まる。
【0089】
1つの例示的な例では、典型的な円筒状触媒構造体は、300CPSI(セル数/入口断面積の平方インチ)、チャネル高さ0.8mm、触媒コーティング0.6mg/cm2、外寸法直径2×長さ3および重さ約100gの2ミルの薄箔を含む。箔を10ミルまで厚くすることによって、同じ体積で体重を500gまで増やすことができ、さらにより安定した温度プロフィール、もしくはより低い燃料パルス回数またはより高い空間速度で燃料処理器を動作させる能力が提供される。流入するガス流と触媒基体との間で熱容量が大きく異なるため、セラミック基体を用いてもよい。
【0090】
モノリシック構造のチャネル壁表面は触媒層でコートされる。コーティングはウォッシュコートとして塗布されるとよい。本明細書で用いる「ウォッシュコート」とは、例えば、典型的には高露出表面積の支持体と活性の触媒要素との混合物よりなる、モノリシック構造体のチャネル壁などの基体に塗布されるコーティングをいう(HeckおよびFerrauto、上掲)。高表面積の支持体は、典型的には、アルミナまたはジルコニアなどの多孔性不活性酸化物を含む。酸化物支持体は酸化または改質反応に活性の追加の成分を含み得る。酸化および改質触媒の混合物が用いられる。
【0091】
本明細書で用いる「酸化触媒」とは、酸素の存在下で炭化水素を酸化するのに有用な当該分野では既知のいずれの触媒をも指す。本発明で有用な酸化触媒の多くの例が米国特許第5,232,357号に示されている。一般には、触媒組成物は、元素周期表の第VI、VII、VIIIまたはIB族の元素を含む。活性触媒元素としては、Pd、Pt、Rh、Cu、Co、Fe、Ni、Ir、CrおよびMoが含まれる。好ましくは、Pd、Pt、Rh、Co、FeまたはNiが使用される。これらの元素は個別にまたは組み合わせて、また実際の使用においては純粋な元素としてまたはその酸化物として使用され得る。酸化触媒にとっての望ましい特性は、低温で良好な触媒活性を示し、これによって酸化反応が低温で開始されるようにすることである。さもなければ、ガス流が自動車のエンジンの排気ガスである実施形態では、エンジンの動作を変更して排気温度を上昇させなければならない場合もあり、これは燃料経済性において否定的な影響をもつ。「最低動作温度」と呼ばれるこの特性では、付加燃料が排気システム中のO2と反応を始める温度は約250℃より低く、一般には約150℃より低くすべきである。従って、最低動作温度が低い酸化触媒が望ましい。酸化触媒は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウムもしくはこれらの混合物または組み合わせよりなる支持体上に堆積され得る。触媒は随意に他の添加剤または元素を含んでもよい。例としては、酸化セリウムジルコニウムの混合物または固溶体、シリカアルミナ、Ca、Ba、SiまたはLa安定化アルミナおよび当該分野で既知のほかの支持体がある。
【0092】
酸化/還元サイクルを行う酸素吸蔵材料または触媒金属の充填量を大きくすることは、燃料処理器の性能を損なう可能性があるため避けるべきである。このような付加酸素の供給は、脈動燃料サイクルの過渡的な濃厚部分で利用可能な酸素量を増やし、その結果動作温度の上昇および燃料効率の低下を招く恐れがある。
【0093】
触媒はPd、Ptまたは他の活性触媒材料をアルミナまたはジルコニアなどの多孔性支持体に含浸させることによって調製され得る。金属の充填量は典型的には、重量比でウォッシュコート材料全体の約0.1〜約20%、多くの場合約1〜約10%の範囲である。ディーゼル燃料は分子量が高くまた高温で熱分解する性質を持つため、付加ディーゼル燃料の処理で使用される酸化触媒は、水蒸気分解に活性の触媒成分を含んでもよい。適切な添加物の例としては、酸化カルシウム、酸化バリウム、他のアルカリまたはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物などの基本的な酸化物がある。
【0094】
本明細書で用いる「改質触媒」とは、炭化水素燃料からH2およびCOを生成するのに有用な当該分野で既知のいずれの触媒をも指す。有用な改質触媒の例としては、Ni、Ru、Rh、PdおよびPtがある。本発明の実施においては、改質触媒は、希薄燃焼エンジンの正常な動作中でみられる酸化条件の下で安定であり、且つ燃料を付加して炭化水素燃料をH2およびCOに改質するとき非常に高速に反応することが可能でなければならない。好ましくは、Pt、PdまたはPhもしくはこれらの混合物が多孔性酸化物の支持体上に支持される。典型的な触媒の1つの例では、1重量%のRhが多孔性酸化ジルコニウム上に支持される。この触媒は、水中に三塩化ロジウムを溶解させ、次にこの溶液を高表面積、典型的には約15〜約150m2/gの範囲の酸化ジルコニウムに含浸させることによって調製され得る。ロジウムの濃度は典型的には、ロジウムおよび酸化物支持体を含むウォッシュコート触媒固形物全体の約0.1〜約20%の範囲である。多くの場合、ロジウム濃度はウォッシュコート充填量全体の約0.2〜約10%の範囲である。ウォッシュコートは蜂の巣状モノリシック構造体の内部チャネルに、内部の幾何学的表面の約1〜約50mg/cm2、多くの場合約5〜約15mg/cm2の充填量または厚さでコートされ得る。PdおよびPt触媒も同様の方法で調製され得る。
【0095】
酸化触媒および改質触媒は同じ燃料処理器内で組み合わされる。酸化および改質触媒は同じモノリシック構造体の別の領域にまたは別のモノリシック構造体に置かれてもよいし、単一の基体の同じ領域内で組み合わされてもよい。1つの実施形態では、酸化触媒は改質触媒から離れてその上流側に置かれる。別の実施形態では、酸化および改質触媒は組み合わされてモノリシック構造体の内部チャネルに塗布されるウォッシュコートとされる。
【0096】
例示した実施例では、Pd酸化触媒とRh改質触媒とがジルコニア支持体上で組み合わされて、付加燃料を排気流中のO2により燃焼させる酸化活性と、残りの燃料をCOおよびH2へと改質する改質活性とを有する触媒を形成する。1つの実施形態では、Rh成分を高表面積の酸化物支持体に含浸し次にか焼する。これとは別に、Pd成分を高表面積の支持体にコートしてか焼または固定する。これら触媒を混合してPd/Rh酸化/改質触媒を形成する。次にこの触媒を使用してコロイド状ゾルを生成してモノリシック構造体上にウォッシュコートする。別の実施形態では、モノリシック構造体は、入口に酸化触媒および出口に改質触媒を備える。さらに別の実施形態では、燃料処理器は2つの分離したモノリシック構造体を含み、一つ目は入口に酸化触媒のウォッシュコート層を持ち、二つ目は出口に改質触媒のウォッシュコート層を持つ。
【0097】
いくつかの実施形態では、酸化触媒および改質触媒の組成物は同じ触媒作用活性成分、例えばPtおよび/またはPdを含む。別の実施形態では、酸化および改質触媒の組成物は異なる触媒作用活性成分を含む。
【0098】
本発明の様々な実施形態では、燃料処理器は1つ以上のモノリシック構造体を含む。いくつかの実施形態では、燃料処理器は1つのモノリシック構造体を含む。別の実施形態では、燃料処理器は、重なり合うかまたはつながり合った2つ以上のモノリシック構造体を含む。いくつかの実施形態では、モノリシック構造体は入口から出口までの1つのチャネルを含む。別の実施形態では、モノリシック構造体は複数のチャネルを含む。
【0099】
1つの局面では、本発明は、酸化触媒と改質触媒とを含む、H2およびCOを生成するための触媒組成物を有する。別の実施形態では、本発明は、モノリシック構造体を含み、このモノリシック構造体上に、酸化触媒と改質触媒とを含む触媒組成物がコートされているか、または基体の同じ領域かまたは異なる領域に酸化および改質触媒組成物が別々にコートされている。
【0100】
(混合部)
NOx排出制御の実施形態では、NOxをN2に連続して還元するには、希薄NOx触媒は還元剤、例えばH2およびCOの濃度が比較的一定であることを必要とする。このため、還元剤を排気流と混合させるために燃料処理器の下流側に混合器を配置し得る。この混合は、例えば図4に示すように、2つの異なる領域で行うことができる。還元剤パルスは領域46で希薄パルスと混合し、次にこの均一な流れは領域50で主排気流と混合して、位置47で排気流中に還元剤の比較的均一な混合物を生成することができる。もしくは、混合器46は省略して、脈動する還元剤を領域53内で主排気流と混合させることができる。1つの実施形態では、いくつかの燃料噴射サイクルに対応するガス流を混合させる。例えば、燃料処理器50を通る流れが300SLPMで噴射回数が1Hzの場合、必要な混合体積は2周期当たり約30リットルとなる(温度は600℃とする:これは3倍のガス膨張となる)。動作回数が高いほど、H2パルスを混合して定常濃度とするには混合体積を小さくする必要がある。混合容器はH2の燃焼を防ぐため触媒作用が不活性でなければならない。この可能性をさらに回避するために、装置の混合部に入る前に混合容器の壁を冷却するか、または例えば熱交換器を介して排気ガスを冷却するとよい。
【0101】
もしくは、希薄NOx触媒は最適な性能を得るためにH2およびCOのパルスを必要とし得る。この場合には、図4の混合器46は省略して、混合器53を、還元剤を主排気流と半径方向に混合させ軸方向の混合は最小限にして還元剤パルスを維持するように設計される。実施例4で説明し図12に示すように、いくつかの希薄NOx触媒は、還元剤濃度を連続させるよりむしろ還元剤を脈動させる場合により良好に働く。本発明により生成される還元剤パルスは、軸方向の混合を最小限にし、これによってNOxをN2へと還元させる希薄NOx触媒を通って流れる還元剤パルスを最大限にするように設計されたシステムにより維持され得る。
【0102】
(希薄NOx触媒)
いくつかの実施形態では、本発明の装置は、燃料処理器内で生成される還元剤によりNOxを還元するための、図4に48で示す希薄NOx触媒を含む。希薄NOx触媒は、動作の温度領域内でこの反応に対する選択性が良好であること、およびH2燃焼に対する活性が低いことを必要とする。1つの実施形態では、希薄NOx触媒を含む触媒構造体は、触媒構造体の入口(または多層形状の外層)に高温配合物および出口(または内層)に低温配合物という、触媒配合物の組み合わせを含む。
【0103】
希薄NOx触媒の典型的な活性触媒成分としては、Pt、Pd、RhおよびIrが含まれる。高表面積の耐熱性酸化物支持体またはゼオライトを含んでもよい。典型的な耐熱性酸化物支持体としては、アルミナ、および熱安定性を高めるためにSi、Ca、Ba、Ti、Laまたは他の成分などの添加物を加えたアルミナがある。高表面積の支持体は、燃料処理の酸化/改質触媒の場合に上述したものと同様であってよい。さらに、触媒の酸化活性を下げることによって反応の選択性を向上させるために、例えばNa、Co、Mo、K、Cs、Ba、CeおよびLaなどの変更成分を使用してもよい。有用な希薄NOx触媒組成物の例は米国特許第6,109,018号に記載されている。
【0104】
一般に、希薄NOx触媒においてNOxを還元するために、比較的一定の還元剤の流れが用いられることが分かっている。驚くべきことに、我々はH2およびCOの濃度が変動することでNOxの還元が向上することを見出した。これを図12に示す。図12では、H2+COの比較的連続した濃度およびH2+COの脈動する濃度に対してNOxの還元が測定されている。この触媒は、実施例4で後述するが、高表面積アルミナ上に支持され菫青石モノリス上にウォッシュコートとして堆積されるプラチナおよびモリブデンよりなる。H2+COの脈動する濃度により、NOx変換がはるかに広い温度領域に渡って起こる、より高レベルのNOx変換が得られる。
【0105】
いくつかの実施形態では、希薄NOx触媒より下流側に酸化触媒、典型的には低温酸化触媒を配置することによって、非反応COを除去してもよい。いくつかの実施形態では、最低動作温度が低い配合物が用いられる。
【0106】
(制御方策)
本発明の排出制御システムの効率を最適化するために多くの制御方策が用いられ得る。いくつかの典型的な方策としては次のものがある。
・触媒より上流側のNOx濃度、触媒より下流側のNOx濃度、排気ガス中の酸素濃度、排気ガス温度、排気流量、エンジントルク、エンジンrpm、エンジンターボチャージャーブースト、エンジン燃料流量、エンジン取り込み空気流量または他の様々なエンジン動作パラメータを含むパラメータのうちの1つまたはそれ以上を用いて、燃料噴射器への必要燃料流量および噴射器デューティサイクルを計算すること。
・希薄NOx触媒より下流側のNOxセンサを用い、次に燃料を処理器に加えて、所望レベルのNOxを得ること。
・希薄NOx触媒より上流側のNOxセンサをエンジン動作パラメータと組み合わせて用いて、全排気流量を概算すること。NOx濃度を、排気流量、排気酸素レベルおよび排気温度を含む他のパラメータのうちの1つまたはそれ以上と組み合わせることにより、このNOxの流れを還元するのに必要な燃料流量の概算が可能となる。
・NOx生成率または濃度対エンジン動作パラメータのエンジンマップを用いること。エンジン動作パラメータは、rpm、トルク、負荷またはターボチャージャーブーストなどであるがこれらに限定されない。エンジンパラメータはまた、排気流量、従ってNOxの流れ全体およびこのNOxの流れを還元するために必要な燃料流量を概算するためにも用いることができる。エンジン動作パラメータは、rpm、エンジントルク、エンジンターボチャージャーブースト、エンジン燃料流量、エンジン取り込み空気流量、排気温度または他の様々なエンジン動作パラメータを含み得る。
【0107】
制御方策はまた、測定または概算された排気温度を用いて、所望の温度上昇を得るのに必要な燃料を概算することも含み得る。これは上述の制御方策にいずれとも組み合わせることができる。
【0108】
生成されるH2のレベルおよび燃料処理器の触媒の動作温度を制御するために用いられる調整可能なパラメータとしては、サイクルの濃厚期間中に付加される炭化水素燃料の流量、サイクルの希薄期間中に付加される炭化水素燃料の流量、エンジン排ガス再循環(EGR)流量または取り込み空気スロットル設定によって制御または変動が可能なガスまたは排気流中の酸素レベル、希薄および濃厚パルスの回数、およびデューティサイクル(サイクル全体における燃料噴射が「オン」である比率)が含まれる。例えば、例えば1分当たりのモル数におけるH2の所望の流速FH2は、これも例えば1分当たりのモル数における排気流中のNOxの流速FNOxの関数であり、この関数関係は例えば式1に示すように希薄NOx触媒の働きに依存する。
【0109】
FH2=f(FNOx) (式1)
この関数関係は、予想されるプロセス変数をカバーする触媒のエンジンテストまたはリグテストによって決定され得る。プロセス変数の例をいくつか挙げると、触媒温度Tcat、排気ガス温度Texh、排出酸素レベルCO2、排出水濃度CH2O、触媒の寿命Acatなどがある。関数関係は、従属変数のうちの1つまたはそれ以上が式2に示すような関数関係に含まれるという形態をとり得る。
【0110】
FH2=f(FNOx,Tcat,Texh,Acat,CO2,CH2O,Acat) (式2)
式2によって定義される排気流中に必要なH2の流速は、燃料の燃料処理器への供給速度Ffuelによって決定され、よって燃料供給速度は、式3に示すように、所望のH2の流速FH2の関数として定義することができる。
【0111】
Ffuel=f(FH2) (式3)
しかし、燃料流量は酸素を燃焼させて燃料処理器の触媒温度を上昇させるのに十分なものでなければならないため、燃料処理器への燃料供給速度はまた、排気ガス温度Texhおよび濃厚ゾーン内での燃料処理器の触媒の所望の動作温度TFP、燃料処理器を通って流れる排気ガス分FFP、排気流中の酸素濃度CO2、全排気流量Fexhおよび他の可能な変数の関数でもある。従って、燃料流量は、従属変数のうちの1つまたはいくつかが関数関係において実際に使用される式4のような関数関係から計算され得る。
【0112】
Ffuel=f(FH2,Texh,TFP,FFP,Fexh,CO2) (式4)
式3の変数の多くはエンジン動作条件の関数である。例えば、排気流量、排気温度および排気中の酸素濃度は、エンジンrpm Erpm、エンジントルクEtrq、エンジンターボチャージャーブーストEbst、エンジン燃料流量Efuel、エンジン取り込み空気流量Eair、エンジンEGR流量EEGR、エンジンスロットル設定Ethrおよび他の可能な変数の関数であり得る。従って、式3の変数のいくつかをこれらのエンジンパラメータおよび制御ロジックで使用されるパラメータのいくつかに置き換えて、所望の燃料流量Ffuelを決定することができる。これは、エンジン制御コンピュータまたはエンジン制御ユニットECUが既にこれらの値の多くを測定または計算しているか、またはエンジンの正しい動作のためにこれらを実際に設定していることもあり得るため、有利な制御方法であろう。例えば、現在のエンジンはrpm、エンジントルク、ターボチャージャーブーストおよび多くの他の変数を測定し、このような変数をEGR流量、燃料流量、ターボチャージャーブーストなどとして制御または設定している。
【0113】
別の制御方策では、エンジンを、rpmおよびトルクのエンジン動作範囲全体にわたって図表化して、このような変数を入口空気温度または環境温度として含んでもよい。これらの動作範囲にわたって、酸素濃度、NOx濃度、排気流量、排気温度および多くの他の重要な変数を含む排気組成が決定され、必要な燃料流量値を特定するマップが形成される。次にこのマップまたはルックアップテーブルを使用して、任意のエンジン動作条件での必要な燃料流量を決定し、この燃料流量を用いて、濃厚パルスおよびデューティサイクル中の燃料流量を設定する。もしくは、これらの方策の組み合わせを使用することもできる。例えば、エンジン動作パラメータを使用して、高速ルックアップテーブルを用いて排気流中のNOx濃度を決定する。次に単純な関数関係を使用して、rpm、トルク、EGR流量または設定、入口スロットル設定およびターボチャージャーブースト圧などのいくつかのエンジンパラメータ、またはこれらパラメータの部分集合に基づいて燃料供給速度を計算する。
【0114】
ほとんどのアプリケーションでは、エンジンはエンジンrpmおよびトルクが経時変化して過渡的に動作する。これらの場合の燃料噴射速度の制御は、同様に行われるか、または所与のエンジン動作パラメータの変化速度に基づいて遅延期間の付加が必要となるかもしれない。例えば、エンジンrpmが増えるに従って排気流量が増大し、よって燃料処理器の触媒温度を維持するのに必要な燃料流が増大する。しかし、排気流量が増加すると実際のrpmの増加を遅らせるかもしれないため、燃料流には何らかの遅延が必要となるかもしれない。同様に、トルクが増大するに従って、NOxレベルおよび排気流が増大し、燃料処理器への燃料流の増大が必要となるかもしれないが、これらパラメータの両方は定常エンジン動作パラメータに較べて遅れるかもしれない。燃料処理器の触媒への燃料流は、燃料処理器の触媒を通じての温度上昇および生成される還元剤の量が、実際の燃料処理器の触媒入口温度および希薄NOx触媒に入るNOxのレベルと効果的に一致するように調整する必要が生じ得る。
【0115】
以下の実施例は本発明を例示するためのものであって本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0116】
(実施例1)
(触媒調製)
モノリシック構造体を米国特許第5,259,754号に記載されているように調製した。
【0117】
硝酸パラジウムを約0.18gPd/mlの濃度で脱イオン水で希釈し、次に約75m2/gの表面積をもつ酸化ジルコニウム粉末を攪拌しながら加えた。次にこの混合物を溶媒留去させて乾燥させ、得られた粉末を700℃で10時間空気中でか焼した。最終触媒粉末中の最終パラジウム濃度は5.5重量%であった。Pd/ZrO2触媒を水および10重量%の20%酢酸ジルコニウム溶液でスラリー化して固形分約30%のスラリーを形成した。固形酸化物中のPd濃度は5%であった。
【0118】
三塩化ロジウムを約0.04gRh/mlの濃度で脱イオン水に溶かし、次に約75m2/gの表面積をもつ酸化ジルコニウム粉末を攪拌しながら加えた。混合物の攪拌中に20%の水酸化アンモニウム水溶液をpH8となるように加えた。次に混合物を蒸発させて乾燥させ、得られた粉末を700℃で10時間空気中でか焼した。最終触媒粉末中の最終ロジウム濃度は1.1重量%であった。Ph/ZrO2触媒を水および10重量%の20%酢酸ジルコニウム溶液でスラリー化して固形分約30%のスラリーを形成した。固形酸化物中のPh濃度は1%であった。
【0119】
川崎製鉄のRiver Lite 20−5Srストリップ、厚さ0.050mm、幅75mmおよび長さ3m、を波形にしてV形チャネルをヘリンボンパターンで形成した。チャネルは幅約10mm、高さ1.46mmで、ヘリンボン部間の角度は15度とした。この波形箔を900℃で10時間空気中で加熱して表面に酸化アルミニウムの層を形成した。箔上にPd/ZrO2スラリーを吹き付けて、波形箔の両側に3mの長さに沿って25mm幅の触媒コート層を箔の両側の同じ部分をコートして形成した。触媒層は幾何学的な箔金属表面に6mg/cm2の充填量であった。次に箔の両側の残りの非コート金属表面にRh/ZrO2スラリーを約6mg/cm2の充填量で吹き付けた。コートされた触媒を700℃でさらに10時間空気中でか焼した。次に箔を半分に畳んで巻きつけて、長手方向の開口チャネルをもつ非入れ子式螺旋状ロールを形成した。最終的な触媒は直径50mmで約13gの触媒ウォッシュコートを含んだ。
【0120】
(実施例2)
(変動回数で噴射される燃料のH2への触媒変換)
実施例1から得られる触媒を、質量分光計定量トレーサーとしての空気、N2およびHeのためのガス供給および質量流量計、電気ヒーター、エアアシスト水スプレーおよびディーゼル燃料噴射用加圧燃料スプレー(三菱MR560553)を含む流量反応器内に配置した。触媒は、触媒の上流および下流側の熱電対温度センサにより隔離された直径50mmの領域内に配置した。質量分光計のためのサンプリングプローブを触媒出口から約50cm下流側に配置した。
【0121】
空気、窒素および水の流れを合計ガス流量が600SLPMとなるように調整して、5%のH2O、7%のO2、0.3%のHeそしてN2が残りを占める最終組成物を形成した。次に電気ヒーターを用いてこの混合物を270℃まで加熱した。図6に示すような変動パルス回数でディーゼル燃料を噴射した。質量分光計のサンプリングレートは2Hzで、噴射回数は0.4と1Hzとの間で変動させた。図6Aは、時間および燃料パルス回数の関数としてのO2およびH2濃度を、体積パーセントの濃度単位に換算した値で示す。この配置でのサンプリングポイントは、図2の位置7でのサンプリングに相当する燃料処理ユニットのすぐ下流側の位置であった。燃料噴射パルス中は、燃料「オン」の局面で存在するO2のすべてが消費されてH2が生成される。図6Bは、触媒のすぐ下流側の出口面を横断する別々の位置に配置された3つの熱電対によって測定された、触媒出口でのガス温度を示す。これまでの研究によって、ガス温度は触媒温度のいかなる変化にも非常にすばやく応答することが分かっている。燃料処理器を出て行くガス流の温度は、脈動する燃料からの変動を示さずかなり一定であり、従って触媒の熱質量を用いて燃料パルスからの変動を抑制することができるという本発明の概念を実証している。0.4Hzでは温度は約600℃であり、回数が約1Hzまで増えると約725℃まで上昇する。この温度上昇は、燃料と反応するO2量が増えて結果としてより大きな熱放出が得られるためである。
【0122】
(実施例3)
(H2およびCOの連続流を提供する混合の効果)
実施例2と同様の実験を、この場合は22gの触媒を用いチャネル箔高さ8mmで、350SLPMの流量で行った。燃料パルスは0.5Hzであった。燃料処理器の触媒から出た後、得られるガス流を38リットルのステンレススチール製混合チャンバーに入れ、得られる生成物を混合した。質量分光計を用いて、図2の位置7に相当する燃料処理器のすぐ下流側、および図2の位置10に相当する混合体積のすぐ下流側におけるガス流の組成を追跡した。燃料処理器のすぐ下流側のH2濃度を図7Aに、混合体積の下流側のH2濃度を図7Bに示す。これらのデータにより、このような混合体積が、脈動するH2を混合して比較的一定レベルのH2を含むガス流を提供するのに十分であることが示される。これらのテストではCOは監視しなかったが、CO濃度もH2と同じ振る舞いを示すと予想される。
【0123】
(実施例4)
(NOx変換に与える脈動および連続還元剤の効果)
希薄NOx触媒を以下に示すように調製した。約250m2/gの表面積を持つガンマアルミナ粉末に、脱イオン水中に溶解した七モリブデン酸アンモニウムを含浸させ、得られる粉末を600℃で乾燥およびか焼して最終的にアルミナに10重量%のMo充填を行った。次にこの粉末に硝酸プラチナ溶液を含浸させ、600℃で乾燥およびか焼して最終的に0.5%のPt充填を行った。次にこの最終固形物を水と共にボールミルで粉砕して固形分が約30重量%のゾルを形成し、このゾルを菫青石モノリスにコートして600℃で乾燥およびか焼し、ウォッシュコートとしてゾルを約15%含む最終構造体を形成した。直径25mm、高さ75mmの円筒状のこの触媒を、10%のO2、8%のCO2、5%のH2O、10ppmのSO2および600ppmのNOを含有し毎分25リットルで流れるガス流を含むテストシステム内に配置した。この流れにH2およびCOを加えて、流れているガス流中に6000ppmのH2および3000ppmのCOの濃度を形成した。このH2およびCOは、連続流として、または1秒毎に約0.3秒噴射して加えた。希薄NOx触媒より下流側のNOxレベルを監視して、希薄NOx触媒の温度を150から425℃まで変動させて、図12に示すNOx変換カーブを得た。H2およびCOレベルを脈動または変動させた場合にNOx変換が実質的に向上している。
【0124】
本発明を、理解を明確にするために例示および実施例によって幾分詳細に述べたが、本発明の精神および範囲から外れることなく何らかの変更および修正が行われ得ることは当業者には明白であろう。従って、上記の記述は本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、本発明は添付の請求の範囲によって画定される。
【0125】
本明細書において引用したすべての出版物、特許および特許出願は、すべての目的のために、そして個々の出版物、特許および特許出願が参考として援用されるとして特別におよび個別に示されるかの如くに同じ程度に、参考として援用される。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、燃焼プロセスからのNOx排出を低減することに関する。本発明はまた、内燃エンジン、特にディーゼルエンジンなどの希薄燃焼内燃エンジンからの排気物からNOxを除去することに関する。本発明はさらに、炭化水素燃料をH2およびCOを含む還元ガス混合物へと変換する燃料処理、ならびにH2およびCOを使用して酸素を多く含む排気流中のNOxを低減することに関する。
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、2002年11月15日出願の米国仮特許出願第60/426,604号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
世界中の多くの場所で空気の質の向上のために排出規制の強化が続けられている。過去30年にわたって、火花点火式エンジンに関する規制は強化され、許容排出物は実質的に減少している。これらのエンジンは化学量論の空燃比でまたはこれに近い比率で動作し、この結果、一酸化炭素(CO)、不燃焼炭化水素(UHC)ならびにNOおよびNO2の両方を含む窒素酸化物(NOx)の排出を制御するために三元触媒技術が開発されている。三元触媒技術は希薄燃焼エンジンには適用できない。何故なら、排気混合物中に酸素が多すぎるためNOxの還元が妨げられるからである。これは特に、NOxおよび粒子状物質(PM)の排出が非常に高いディーゼルエンジンまたは圧縮点火エンジンにおいて問題となる。これと関連して、米国および世界の多くの国が燃料効率の向上を推進している。ディーゼルエンジンは非常に効率がよく、従って車両にとっては望ましいパワー源である。しかし、法律上の要件を満たすためには高排出を低減させなければならない。ガソリン火花点火式エンジンで要求される排出レベルに達するには、現代のディーゼルエンジンからの排出を、エンジンによるが、10分の1〜50分の1に減らさなければならない。
【0004】
希薄燃焼エンジンは火花点火(SI)および圧縮点火(CI)の両方のエンジンを含む。同等の従来のSIエンジンに比べて、希薄燃焼SIエンジンの場合は20〜25%、CIエンジンの場合は50%、場合によってはこれより高いパーセンテージで燃費が向上する。CIエンジンは高荷重車両で幅広く用いられ、低荷重車両での使用は少ないが成長が予想される。CIエンジンはまた、電力発電機などの定置装置への適用にも幅広く使用される。
【0005】
現在の自動車排出制御技術は主として三元触媒(TWC)を有する触媒コンバーターに基づくものである。この技術は、ほとんど化学量論の空燃比で動作する通常のガソリンエンジンにおいては非常に効果的である。しかし、上述のように、排気ガス内の酸素が過剰であるため希薄燃焼エンジンには適合しない。この不適合性が、希薄燃焼エンジンおよびTWCベースの排出制御技術の両方の主要な限界となっている。ディーゼルエンジンの場合、排出制御システムは、約6〜15%の酸素を含有する排気流からNOxおよびPMを除去しなければならない。
【0006】
多くの様々な技術がこれまで希薄燃焼エンジン排気ガスからのNOx除去について調査を行ってきた。1つの成功した技術としては、還元剤としてアンモニア(NH3)を用いたNOxの選択的な還元がある。アンモニアをNOx量に比例する量で排気流に添加する。次にNOxおよびNH3を含有する排気流を触媒に通し、触媒上でNOxとNH3が選択的に反応してN2を生成する。この技術は、選択触媒還元(SCR)と呼ばれるもので、ガスタービンならびに大型ボイラーおよび炉で広く使用され、NOxのN2への非常に高い変換率を実現することができる。しかし、この技術の1つの欠点はNH3源が必要となるということである。NH3源としては、高圧下で保存される液化NH3か、またはSCR触媒前またはSCR触媒上で分解してアンモニアを生成する尿素水溶液のいずれかであり得る。一般に、NH3−SCR技術は、コスト面でおよびNH3源が必要であるために、大型の定置装置への適用に制限される。加えて、所望のNH3/NOx比を実現するためにはNH3の添加を注意深く制御して、過剰なNH3が大気中に放出されて空気汚染物質レベルを上げるのを防ぐ必要がある。別の欠点は、この技術を用いて車両にアンモニアまたは尿素を供給するためには、どちらかといえば高くつく基盤施設を開発する必要があるということである。これらの理由のため、この技術は、車両または住宅地域に置かれることもあり得る非常に小型のシステムでのNOx制御にとっては好適なアプローチではない。
【0007】
希薄燃焼移動源からのNOx低減のために開発された別の技術としては、Society of Automotive Engineersの論文SAE−950809およびSAE−962051、ならびに米国特許第6,161,378号に記載されているような、NOx吸蔵還元(NSR)システムがある。NSRシステムは、排気系内に吸着剤−触媒ユニットを配置し、排気流はこれを通って流れる。この触媒ユニットは2つの機能、すなわち可逆性NOx吸蔵またはトラッピングおよびNOx還元を提供する。排気ガスがシステムを通って流れる正常なエンジン動作の間、NOxは吸着サイクル中は過剰な酸素の存在下で吸着剤に吸着される。吸着剤成分がNOxで飽和すると、吸着はより完全でなくなり、NOxトラップを出て行くNOxが増え始める。この時点で、排気流の組成物は酸化状態から還元状態に変えられる。これには酸素レベルがゼロまで下がることおよび還元剤を導入することが必要とされる。還元環境では、NOxは吸着剤から脱着され、次に吸着−触媒ユニットに組み込まれている触媒成分によって窒素に還元される。この反応は一般に非常に速い。従って、サイクルの還元部分は非常に短くてよいが、NOx吸着容量のかなりの部分を再生させるのに十分な長さでなければならない。次に排気組成物を通常の酸化状態に戻して、サイクルを繰り返す。この技術にはいくつかの欠点がある。1つの問題点は、排気ガスの還元状態への変換は、排気流中のO2が8〜15%で動作するように設計されているディーゼルエンジンなどの希薄燃焼エンジンにとっては実現が困難であることである。別の問題点は、調査した吸着−触媒成分は非常に安定した硫酸塩を形成し、その結果、燃料中の硫黄によって触媒の作用が損なわれることである。触媒を再生して硫黄を除去することは非常に困難であり、結果的に触媒の性能が低下する。
【0008】
過剰O2を含有する排気流からのNOxの除去に対する見込みのあるアプローチとしては、選択的希薄NOx触媒(「希薄NOx触媒」)と呼ばれる触媒を用いた、COまたは付加した炭化水素などの還元剤によるNOxの選択触媒還元がある。このような触媒は過去20年にわたって広く調査されてきた(例えば、Shelef(1995)Chem.Rev.95:209−225および米国特許第5,968,463号参照)。これまでは、炭化水素を、この成分がエンジン燃料から利用可能であるという理由で、還元剤として使用してきた。一般には、反応性炭化水素を単一の還元剤として使用するか、または反応性炭化水素種が生成されるような方法で燃料をディーゼルエンジンに噴射する、希薄NOx触媒を用いたエンジンテストでは、NOx制御レベルは低く、20〜50%の範囲である。
【0009】
炭化水素はまたNOxをN2に選択的に還元するための良好な還元剤であるということが分かっている。例えば、Costaら(2001)J.Catalysis 197:350−364では、H2を十分に利用して、低温(150〜250℃)で過剰O2の存在下でNOxを触媒還元する還元剤としてのH2の高い活性が報告されている。またEP 1,094,206A2は、希薄NOx触媒システム中で炭化水素還元剤にH2を加えることで、エンジン動力計テストで95%を超えるNOx除去が得られたという有益な結果について述べている。H2/CO混合物もまたこのようなシステムで良好な還元剤であることがわかっている。
【0010】
H2およびH2/CO混合物は、O2含有排気流からのNOxの連続除去のための良好な還元剤であるが、車両などの小型の移動システムでの使用のためにこれらの還元剤を供給する現在の方法は煩雑であり且つ/または高くつく。水素は保存が難しく、H2補給ステーションは現時点では利用可能ではない。ディーゼル燃料からH2またはH2/CO混合物を移動体上で製造することは可能ではあるが、困難であり費用がかかる。
【0011】
NOx還元のための還元剤を移動体上で生成するシステムの例がWO 01/34950に見られる。これは、空気と移動体の積載された炭化水素燃料とを使用して、排気流に添加する還元混合物を生成する部分酸化システムについて述べている。NOxを含む排気流と添加された還元剤とは、過剰O2の存在下でNOxを還元する触媒上で反応する。このような装置の欠点は、触媒の作用を最終的には損なうことになるコークスの形成により長時間にわたって動作するのが困難となり得ることである。また、このシステムは低分子炭化水素を生成し、これはNOxに対する還元剤としてH2より効果的ではない。別のシステムが米国特許第6,176,078号に記載されている。これは、炭化水素燃料から低分子炭化水素とH2とを生成するためにプラズマトロンを使用する。このシステムの欠点としては、エネルギーコストが高いこと、プラズマ発生器用の電子機器回路を含むシステムのコストおよび耐久性の問題がある。米国特許第5,441,401号およびEP 0,537,968A1は、個別の空気および水の取り入れ口をもつ個別のH2発生器の使用について記載している。水は蒸発して触媒を通過するため、非常に純粋でなければならない。これには個別のタンク、供給システムおよび複雑さを必要とする。しかし、このシステムは実現するのは難しく、また車両などの移動システムでのNOxの除去のためには複雑すぎる。別の周知の技術としては、熱交換器および水供給ポンプを有するオートサーマル改質装置(ATR)がある。しかし、このようなシステムは小型化が困難である。加えて、個別の反応システムで液化炭化水素燃料をH2およびCOに変換するプロセスは、1〜30分間という長い起動時間をもつこともあり得る。この結果、NOx還元に還元剤が利用できない時間が長期間生じ、車両のNOx排出レベルが容認できない程に高いままとなる。
【0012】
O2およびH2Oの両方を、適切な触媒の存在下で部分酸化および蒸気改質などの反応を通して、ディーゼル燃料などの炭化水素燃料をH2およびCOに変換するのに使用してもよい。炭化水素燃料を処理してH2およびCOを生成するために既に使用されている1つのアプローチとして、触媒より上流側のガス流に燃料を連続して加えるものがある。この後、燃料含有ガス流が触媒に接触すると、触媒は燃料をH2およびCOに変換する。しかし、連続燃料供給の欠点は、排気流中のO2が高レベルであるため、燃料のH2およびCOへの改質にとって良好な燃料対酸素比では温度が非常に高くなることである。これについて図1に概略的に示す。図1は、様々な当量比(Φ)での反応器温度を時間に対して示す。燃料を酸素含有ガス流、例えば10%のO2を含有するディーゼル排気ガスに加えると、燃料の燃焼の結果熱が放出され温度が上昇する。従って、当量比0.2では、排気ガスは温度を約250℃から約500℃まで上昇させる。当量比0.5では温度は820℃となり、当量比1.0では温度は1230℃となる。当量比が1を超えると、吸熱改質反応のため温度は低下する。従って、当量比2では温度は1042℃となり、当量比3、すなわち非常に濃厚な混合物では、温度は845℃となる。典型的なオートサーマル改質装置は、蒸気改質(吸熱反応)のための熱を供給するために燃焼(発熱反応)を用いることによって等温となるように温度を調節するものであって、3〜4の範囲の当量比で、蒸気対炭素比(S/C1)を約1の値まで上げてO2の濃度を希薄にするために高レベルの蒸気(少なくとも30%)で動作する。このようなシステムでは、触媒上でのコークスの形成(炭素の堆積)を防ぐために蒸気を加える必要がある。しかし、燃料処理システムへの供給原料として水を車両に積載しなければならず、またナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどの水道水中の典型的な不純物はほとんどの改質触媒材料にとって有害であるために水は非常に純粋でなければならないという理由から、蒸気を加えることは望ましくない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の簡単な要旨
本発明は、酸素含有ガス流中で燃料から還元剤を生成し、酸素含有排気流中のNOx排出を低減させる装置、方法および組成物を提供する。
【0014】
1つの局面では、本発明は還元剤を生成する装置を提供する。装置は燃料噴射器と、酸化触媒および改質触媒をもつ触媒ゾーンとを含み、燃料噴射器は、触媒ゾーンより上流側の酸素含有ガス流の少なくとも一部に向けて燃料を噴射して、ガス流が触媒ゾーンを通って流れるときガス流に濃厚および希薄ゾーンを提供するように構成される。1つの実施形態では、装置は、酸素含有ガス流の濃厚ゾーンが触媒ゾーンの入口から出口に向かう方向に流れるとき、濃厚ゾーンの燃料の一部が酸化触媒上で酸化され、また濃厚ゾーンの残りの燃料の少なくとも一部が改質触媒上で改質されて、これによって還元ガス流を生成するように構成される。酸素含有ガス流の濃厚ゾーンでは、付加された炭化水素燃料の一部が酸化触媒上で酸化されて酸素の実質的にすべて(すなわち、約90%を超える量)が消費され、また残りの燃料は改質触媒上で還元剤、例えば炭化水素燃料が使用されるときはH2およびCOに還元され、これによって還元ガス流が生成される。装置は炭化水素燃料を含有する貯留部をさらに備えてもよく、貯留部は燃料噴射器と流体連通しており、また還元ガス流はH2およびCOを含む。
【0015】
1つの実施形態では、希薄ゾーンは付加燃料を含まない。別の実施形態では、希薄ゾーンは1より低い当量比でいくらかの燃料を含む。希薄ゾーンがいくらかの燃料を含む実施形態では、好ましくは希薄ゾーン内の付加燃料の実質的にすべてが、希薄ゾーンが触媒ゾーンを通って流れるとき酸化触媒上で酸化されるか、または後述するように前酸化触媒上で酸化される。
【0016】
いくつかの実施形態では、酸化触媒と改質触媒は同じ組成物である。他の実施形態では、酸化触媒と改質触媒は異なる組成物である。
【0017】
ガス流中に濃厚および希薄ゾーンを作り出すことは、燃料を不連続に噴射してガス流に濃厚および希薄領域を形成することによって実現される。1つの実施形態では、燃料噴射器は炭化水素燃料を酸素含有ガス流に不連続に導入して濃厚および希薄ゾーンを交互に形成するようにされる。多くの場合、濃厚ゾーンおよび希薄ゾーンを形成するための燃料付加期間は濃厚−希薄周期を含み、濃厚−希薄周期は0.1〜10秒毎に繰り返され、また濃厚−希薄周期の濃厚部分は濃厚−希薄周期の約10〜約90%にわたって続く。
【0018】
もしくは、濃厚および希薄ゾーンは、燃料を実質的に連続して噴射する一方で、触媒ゾーンかまたは燃料噴射器のいずれかをガス流の流れに対して移動させることによって、または触媒ゾーンのうちの付加燃料を含むガス流を受け取る部分が変動するように燃料噴射器の噴射角を変更することによって作り出すことができる。1つの実施形態では、燃料噴射器は、燃料を酸素含有ガス流の一部に実質的に連続して導入して濃厚ゾーンを形成するようにされ、また装置は、触媒ゾーンのうちの濃厚ゾーンが流れる部分が経時変更されるように構成される。
【0019】
いくつかの実施形態では、燃料噴射器によって噴射される燃料は、酸化が可能ないずれかの炭化水素化合物かまたは還元が可能ないずれかの炭化水素化合物である。いくつかの実施形態では、炭化水素燃料は、ガス状、液状、酸素化、窒素含有または硫黄含有の炭化水素、もしくはこれらの混合物である。他の実施形態では、炭化水素燃料はガソリンかまたはディーゼル燃料もしくはその混合物である。
【0020】
いくつかの実施形態では、触媒ゾーンは少なくとも1つのモノリシック構造体を含む。多くの場合、モノリシック構造体の表面に酸化および改質触媒がウォッシュコートとして、個別にまたは組み合わせて塗布される。いくつかの実施形態では、酸化および改質触媒はモノリシック構造体の同じ領域に塗布される。別の実施形態では、酸化および改質触媒は構造体の異なる領域に塗布される。1つの実施形態では、酸化触媒は改質触媒の上流側の領域に塗布される。いくつかの実施形態では、モノリシック構造体は、入口面から出口面まで延びる複数のチャネルを含む。1つの実施形態では、モノリシック構造体は金属を含む。別の実施形態では、モノリシック構造体はセラミック材料を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、装置は、酸素含有ガス流の濃厚および希薄ゾーンが触媒ゾーンを通って流れるとき、触媒ゾーンの温度は約450〜約1000℃に維持されるように構成される。
【0022】
1つの実施形態では、ガス流は触媒ゾーンの入口に入る前に、触媒ゾーンより上流側のヒーターまたは熱交換器によって加熱される。ヒーターまたは熱交換器は触媒ゾーンとガス流連通している。
【0023】
さらに別の実施形態では、装置は、燃料噴射器より下流側であって触媒ゾーンより上流側に前酸化触媒を含む。前酸化触媒は酸化触媒を含み、また燃料噴射器は、前酸化触媒を通って流れるガス流の少なくとも一部に燃料を導入し、これによってガス流が前酸化触媒を通って流れるとき燃料噴射器によって導入された燃料の少なくとも一部が酸化されて、ガス流を加熱するように構成される。前酸化触媒を有する装置の1つの実施形態では、装置は前酸化触媒より下流側であって触媒ゾーンより上流側に混合器を含み、装置は、燃料噴射器によって導入され前酸化触媒を通って流れる燃料の一部を蒸発させるように構成され、また混合器は蒸発した燃料をガス流中で、実質的に軸方向の混合は行わずほとんど半径方向に混合するように構成される。前酸化触媒を有する装置の1つの実施形態では、前酸化触媒は、モノリシック触媒構造体のチャネルの一部の内壁の少なくとも一部にコートされる。1つの実施形態では、コートされた触媒を含むチャネルの上記一部は約20〜約80%である。
【0024】
別の局面においては、本発明は、希薄燃焼エンジンの酸素含有排出物中のNOx含有量を低減させる装置を提供する。装置は燃料噴射器と、酸化触媒と改質触媒とを含む第1の触媒ゾーンとを含む。燃料噴射器は、触媒ゾーンより上流側の希薄燃焼エンジンからの酸素含有排気流の少なくとも一部に向けて燃料を噴射して、排気流が第1の触媒ゾーンを通って流れるとき排気流に濃厚および希薄ゾーンを提供するように構成される。装置はさらに、第1の触媒ゾーンより下流側に位置し、還元ガスの存在下でNOxをN2に還元することができる触媒を含む第2の触媒ゾーンを備えている。1つの実施形態では、装置は、酸素含有ガス流の濃厚ゾーンが第1の触媒ゾーンを通って流れるとき、濃厚ゾーンの燃料の一部が酸化触媒上で酸化され、また濃厚ゾーンの残りの燃料の少なくとも一部が改質触媒上で改質されて、これによって還元ガス流が生成されるように構成され、また装置は、排気流の少なくとも一部と第1の触媒ゾーンで生成された還元ガス流の少なくとも一部とが第2の触媒ゾーンを通って流れ、排気流と還元ガス流とが第2の触媒ゾーンを通って流れるとき、NOxが内部に含まれる触媒上でN2へと還元されるように構成される。
【0025】
いくつかの実施形態では、希薄ゾーンは付加燃料を含まない。別の実施形態では、希薄ゾーンは1より低い当量比でいくらかの付加燃料を含む。希薄ゾーンがいくらかの燃料を含む実施形態では、好ましくは希薄ゾーン内の付加燃料の実質的にすべてが、第1の触媒ゾーンの酸化触媒上で、または後述するように前酸化触媒上で酸化される。
【0026】
装置は、炭化水素燃料を含み燃料噴射器と流体連通する貯留部をさらに備え、第1の触媒ゾーンで生成される還元ガス流はH2およびCOを含む。
【0027】
1つの実施形態では、燃料噴射器は、燃料を酸素含有ガス流に不連続に導入して、第1の触媒ゾーンより上流側のガス流に濃厚および希薄ゾーンを交互に形成するように適合される。別の実施形態では、燃料噴射器は、燃料を酸素含有ガス流の一部に実質的に連続して導入して濃厚ゾーンを形成するように適合され、また装置は、第1の触媒ゾーンのうちの濃厚ゾーンが流れる部分が経時変更されるように構成される。
【0028】
いくつかの実施形態では、希薄燃焼エンジンはディーゼルエンジンである。1つの実施形態では、燃料はディーゼル燃料などの炭化水素燃料である。付加燃料が炭化水素燃料である実施形態では、触媒改質反応の生成物はH2およびCOであり、これらは還元剤として使用されて、第2の触媒ゾーンでNOxをN2に還元する。いくつかの実施形態では、第2の触媒ゾーンは希薄NOx触媒を含む。いくつかの実施形態では、装置は、排気流の一部が第1の触媒ゾーンより上流側でスリップ流として分流されるように構成され、また燃料噴射器は、第1の触媒ゾーンより上流側のスリップ流に向けて燃料を噴射するように構成される。多くの場合、スリップ流をもつこのような装置は、排気流の約5〜約25体積%を前記スリップ流へと分流するように構成される。
【0029】
1つの実施形態では、装置は、第1の触媒ゾーンより上流側に前酸化触媒をさらに含み、燃料は前酸化触媒の上流側に噴射される。上述のように、付加燃料の一部は前酸化触媒上で酸化され、これによってガス流が加熱される。
【0030】
いくつかの実施形態では、装置は制御器を備え、制御器は、燃料の噴射を、排気NOx濃度、排気O2濃度、エンジンrpm、エンジントルク、エンジンターボチャージャーブースト、エンジン取り込み空気流量、排気取り込み流量、排気流量および排気温度、またはこれらの組み合わせから選択される関数として制御する。1つの実施形態では、燃料の噴射は、排気NOx濃度の関数として制御され、NOx濃度は排気流中の少なくとも1つのNOxセンサによって決定される。いくつかの実施形態では、装置はエンジン制御ユニットを含む希薄燃焼エンジンより下流側に位置し、制御器はエンジン制御ユニットに組み込まれている。
【0031】
別の局面においては、本発明は還元ガスを生成するプロセスであって、酸素含有ガス流の少なくとも一部に燃料を導入して、ガス流に濃厚および希薄ゾーンを作り出すことであって、濃厚ゾーンの燃料の一部は酸化され、また濃厚ゾーンの残りの燃料の少なくとも一部は改質されて、これによって還元ガスを生成することを包含する。1つの実施形態では、濃厚および希薄ゾーンは、酸化触媒と改質触媒とを含む触媒ゾーンを通って流れる。ガス流の濃厚ゾーンの燃料の一部は酸化触媒上で酸化され、また濃厚ゾーンの残りの燃料の少なくとも一部は改質触媒上で改質されて、還元ガス流を生成する。炭化水素燃料を使用する場合は、還元ガス流はH2およびCOを含む。
【0032】
別の局面においては、本発明は、希薄燃焼エンジン、例えばディーゼルエンジンの酸素含有排出物中のNOx含有量を低減させるプロセスであって、希薄燃焼エンジンからの酸素含有排気流の少なくとも一部に燃料、例えばディーゼル燃料を導入し、これにより排気流に濃厚および希薄ゾーンを作り出すことを包含する。濃厚ゾーンの燃料の一部は酸化され、また濃厚ゾーンの残りの燃料の少なくとも一部は改質されて、これによって還元ガスを生成する。還元ガスの少なくとも一部を用いて、触媒上でNOxをN2に還元する。1つの実施形態では、排気流の濃厚および希薄ゾーンは、燃料噴射器より下流側に位置し酸化触媒と改質触媒とを有する第1の触媒ゾーンを通って流れ、排気流の濃厚ゾーンの燃料の一部は酸化触媒上で酸化され、また前記濃厚ゾーンの残りの燃料の少なくとも一部は改質触媒上で改質されて、これによって還元ガス流を生成する。還元ガスの少なくとも一部は、第1の触媒ゾーンより下流側の第2の触媒ゾーンを通って流れる排気流の少なくとも一部に導入され、第2の触媒ゾーンは還元ガスの存在下でNOxをN2に還元することができる触媒を含み、またNOxは第2の触媒ゾーンにおいてN2へと還元される。1つの実施形態では、燃料はディーゼル燃料などの炭化水素燃料であり、前記還元ガスはH2およびCOを含む。
【0033】
1つの実施形態では、第1の触媒ゾーンを通って流れるガス流の一部は、第1の触媒ゾーンより上流側でスリップ流として分流され、燃料はスリップ流に向けて噴射される。
【0034】
1つの実施形態では、燃料は、第1の触媒ゾーンより上流側に位置する前酸化触媒より上流側に噴射され、上述のように、噴射された燃料の一部は前酸化触媒上で酸化され、これによってガス流が加熱される。
【0035】
別の実施形態では、上述のような装置は希薄燃焼エンジンを有する車両で用いられるように適合される。1つの実施形態では、希薄燃焼エンジンはディーゼルエンジンである。車両は、本発明の装置を、ディーゼルエンジンなどの車両の希薄燃焼エンジンからの排気流の少なくとも一部と接触させた状態で含む場合がある。1つの実施形態では、燃料噴射器によって噴射される燃料は、ディーゼルエンジンを有する車両に搭載されるディーゼル燃料である。
【0036】
1つの局面においては、本発明は、上述のようなH2の生成および/またはNOxの排出を行う装置を含む車両を提供する。例えば、上述のような装置を自動車、トラック、商用車、飛行機などの車両の排気流中に、排気流の少なくとも一部が装置を通って流れるように、車両のエンジンより下流側に配置してもよい。上述のようなNOx排出を低減させる方法は、車両のエンジンより下流側の、車両の排気流中に上述のような本発明の装置を配置することによって提供され得る。車両のエンジンはSIまたはCI希薄燃焼エンジンであり得る。1つの実施形態では、エンジンは希薄燃焼ディーゼルエンジンである。
【0037】
別の局面においては、本発明の装置またはプロセスは、定置電力発電にまたは機械装置を駆動するために使用されるエンジンと共に用いられ得る。
【0038】
さらに別の局面においては、本発明は、酸化触媒および改質触媒を含む、H2およびCOを生成するための触媒組成物を提供する。1つの実施形態では、酸化および改質触媒は同じ触媒作用活性成分を含む。別の実施形態では、酸化および改質触媒は異なる触媒作用活性成分を含む。
【0039】
別の局面においては、本発明は、酸化および改質触媒組成物(単数または複数)が基体の異なる領域かまたは同じ領域にコートされたモノリシック構造体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、様々な当量比(Φ)での燃料処理反応器の定常温度を概略的に示す。
【図2】図2は、排気入口1および出口10と、燃料噴射器3と、噴射燃料の酸化および改質のための触媒ゾーン6と、混合ゾーン4および9とを含む本発明による燃料処理器の1つの実施形態を示す。混合部4および9はサイズが同じであっても異なってもよく、随意に混合の補助または向上のために内部構成品を含んでもよい。
【図3】図3は、燃料を脈動により加える本発明の燃料処理器に関連する様々なパラメータを概略的に示す。図3aは、燃料を脈動により排気流に加えるときの燃料流量を時間に対して示す。図3bは、加えた燃料が触媒により燃焼するときのO2の濃度を時間に対して示す。図3cは、燃料処理器の触媒ゾーンの入口および出口の温度を時間に対して示す。図3dは、加えた燃料が触媒により変質するときのH2およびCOの濃度を時間に対して示す。図3eは、混合後のO2、H2およびCOの濃度を示す。
【図4】図4は、本発明のNOx排出制御装置の1つの実施形態を示す。排気流40の一部はスリップ流41として分流する。噴射器42を通して噴射される燃料は第1の触媒ゾーン44内の排気ガスと反応してH2およびCOを生成する。これらは次に混合46および53されて貫流排気ガスとなる。H2およびCOは第2の触媒ゾーン48でNOxと反応してN2を生成する。
【図5】図5は、本発明の燃料処理器の1つの実施形態を示す。図5Aでは、触媒ゾーン64は複数のチャネルを備えており、燃料は連続して付加され流動している排気ガスと混合した後、回転する触媒構造体の一部に加えられる。図5Bでは、燃料は燃料噴射器71を通して流入ガイド70へと噴射される。図5Cでは、排気流83の一部が回転する触媒85を迂回する。
【図6】図6は、燃料パルスを用いて7%のO2の存在下で触媒によりH2を生成させた実験の結果を示す。図6Aは、様々な燃料噴射回数でのO2の燃焼およびH2の生成を示す。図6Bは、触媒構造体の入口および出口温度を時間に対して示す。
【図7】図7は、H2濃度に及ぼす混合の効果を時間に対して示す。図7Aは、混合に先立って7%のO2の存在下で燃料パルスを増やした結果として生成されたH2の濃度を示す。図7Bは混合後のH2の濃度を示す。
【図8】図8は、本発明の燃料処理器へと分流した排気ガスのいくつかの流量レベルに対する、燃料ペナルティ対化学量論係数の計算値を示す。
【図9】図9は、毎分1250リットルの触媒質量対ガス流量比、触媒質量1000g、パルス回数0.4Hz、当量比約3および10%のO2の場合の、燃料が本発明の燃料処理器の触媒を通って脈動するときの温度対時間を示す。
【図10】図10は、いくつかの異なる触媒質量対ガス流量比に対する、温度変動振幅対動作回数を示す。
【図11】図11は、燃料噴射器91と前酸化触媒92と混合器93と酸化および変質触媒94とを含むNOx排出制御装置の実施形態を示す。
【図12】図12は、還元剤H2およびCOを、希薄NOx触媒を通って流れるガス流に加えることでNOx変換を行う際に、脈動により加える場合と連続して加える場合との変換効率を比較した実験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、希薄燃焼エンジンにおける排出制御を向上させる方法および装置を提供する。特に、本発明は、炭化水素燃料源からH2およびCOを高い効率で生成すること、および過剰なO2の存在下でNOxをN2へと触媒還元するためにこれらの還元剤を使用することに関する。このプロセスは、過剰なO2を含有する排気流を発生させるいかなるエンジンにも適用可能である。本発明の1つの実施形態では、車両搭載の燃料が使用してH2およびCOを生成し、生成したH2およびCOが次に還元剤として働いて車両の排気流中のNOxをN2に変換する。本発明はまた、酸素含有環境内で燃料から還元ガス流を生成する方法および装置を提供する。
【0042】
(炭化水素燃料からH2を生成)
本発明は、O2含有環境内でH2またはH2およびCOを含有する還元ガスを生成する燃料処理装置および方法を提供する。本発明の燃料処理装置から生成される還元混合物は、後述のようにNOx排出を制御するプロセスで、またはバーナーの燃焼炎の安定化または他の汚染物質の選択的除去など他の適用のために使用され得る。
【0043】
本発明の装置は、O2含有ガス流中で還元ガス混合物を生成するために燃料処理器を用いる。いくつかの実施形態では、O2含有ガス流はディーゼルエンジンからの排気流であり、これは一般にO2、CO2、H2OおよびNOxを含有する。
【0044】
燃料処理器は、酸化および改質触媒を有する触媒ゾーンを含む。触媒はガス流の少なくとも一部と接触する。
【0045】
燃料処理器はまた、酸素含有ガス流に燃料を加えるための燃料噴射器を含む。燃料噴射器は、触媒ゾーンを通って流れるガス流に濃厚および希薄ゾーンが形成されるような方法で燃料をガス流に導入する。いくつかの実施形態では、付加される燃料は炭化水素燃料である。
【0046】
本明細書で用いる「当量比」とは、実際の燃料の量と、ガス混合物内に存在するO2のすべてと十分に反応するために必要とされる理論上の化学量論の燃料の量との間の比率を指す。本明細書で用いる「希薄」とは燃料/空気当量比が1.0より小さいことを指し、「濃厚」とは燃料/空気当量比が1.0より大きいことを指す。濃厚ゾーンは、ガス流のうち燃料が加えられた部分の当量比が1.0より大きくなるように燃料を加えるとき流動ガス流中に生成される。希薄ゾーンは、燃料が加えられないとき、またはガス流のうち燃料が加えられた部分の当量比が1より小さくなるような量で燃料を加えるとき生成される。
【0047】
いくつかの実施形態では、O2含有ガス流中に希薄および濃厚状態を交互に生み出すことは、炭化水素燃料などの燃料を脈動により不連続的に加えて、ガス流中に濃厚および希薄ゾーンを交互に形成することによって実現される。他の実施形態では、燃料を実質的に連続して加えて流動するガス流の一部に濃厚混合物を形成する一方で、触媒ゾーンのこの濃厚混合物が流れる部分を連続的にまたは定期的に経時変えていく。
【0048】
濃厚状態では、付加燃料の一部は酸化触媒上でガス流中の酸素により燃焼して熱を放出し、そして残りの付加燃料の少なくとも一部は、燃焼反応で生成されるかまたはガス流中に存在するH2Oと改質触媒上で反応してH2を生成する。すなわち吸熱反応する。燃焼反応により熱が提供され改質触媒の温度を、付加燃料を効率よく改質するのに適切なレベルに上昇させる。炭化水素燃料を使用する場合は、改質反応の生成物はH2およびCOであり、これらは共に希薄NOx触媒上でのNOxの還元などの下流側でのプロセスの還元剤として働き得る。アンモニアを付加燃料として用いる場合は、改質反応の生成物は水素および窒素又は窒素酸化物である。
【0049】
希薄状態では、希薄ゾーンが付加燃料を含まない実施態様では、燃料処理器の触媒ゾーンでは付加燃料による燃焼反応も改質反応も起こらない。
【0050】
他の実施形態では、なんらかの燃料が1より小さい当量比で付加されて酸素含有ガス流中に希薄ゾーンを作り出し、付加的な熱を生成する。このような実施形態での希薄ゾーン内の燃料の所望量は、燃料処理器の触媒の必要とされる温度によって決定される。例えば濃厚ゾーンが大きさが非常に小さいかまたは持続期間が短い場合、もしくはガス流中の酸素レベルが低い場合は、触媒ゾーンを必要な動作温度に維持するためには濃厚ゾーンでの酸素の燃焼によって生成される熱に加えて付加的な熱が必要とされる場合がある。なんらかの燃料を付加して酸素含有ガス流中に1より小さい当量比の希薄ゾーンを形成するこのような実施形態では、希薄ゾーン内の燃料の実質的にすべてが酸化触媒上でガス流中の酸素により燃焼し、付加的な熱を生成する。好ましくは、このような実施形態で生成される付加的な熱の量は、概ね触媒ゾーンの温度を所望の動作温度領域内に維持するのに十分な量である。
【0051】
ガス流の濃厚ゾーン内での改質反応の生成物、例えば炭化水素燃料を用いる場合はH2およびCOは、ガス流の他の成分と共に触媒ゾーンを出て行き、随意に、排出制御のために希薄NOx触媒上でNOxをN2に還元するために下流側のプロセスで使用してもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、燃料処理器によって生成される還元ガスは分別されて実質的に純粋なH2流を生成し得る。例えば蒸留、圧力スイング吸着(PSA)、または選択的な膜(例えば、H2を拡散させる微孔膜)の使用などの分離技術を使用して、改質触媒によって生成される還元ガス混合物の他の成分からH2を分離してもよい。
【0053】
(燃料処理器の概説)
上述のように、本発明は、O2含有ガス流中の付加燃料からH2を生成する燃料処理器を提供する。ディーゼルエンジンなどの希薄燃焼エンジンからの排気ガスは典型的には8〜15%のO2および6〜10%のH2Oを含有する。本発明の燃料処理器は、このような排気流中で、付加された炭化水素燃料から還元剤、例えばH2およびCOを生成するために使用され、生成された還元剤はNOx排出の低減などの下流側のプロセスにおいて還元剤として使用され得る。
【0054】
上述の連続燃料付加の欠点を回避するために、本発明の燃料処理装置は、触媒上を流れるガス流が濃厚状態と希薄状態とを交互に繰り返すように燃料を付加するための燃料噴射器を含む。本明細書で述べる方法で使用されると、燃料を連続して加えた場合に較べて、燃料処理器の触媒にとって、および燃料処理器の触媒から出て行くガス混合物にとってより低い温度が得られる。
【0055】
本発明の燃料処理装置の1つの例示的な実施形態を図2に示す。図2は、燃料噴射器2および混合システム4に接続されるパイプまたはダクト1を含む。ガス流はパイプ1を通ってシステムに流入し、燃料サプライ3によって供給され燃料噴射器2を通して噴射される燃料と混合される。燃料は触媒ゾーン6の入口より上流側のガス流へと噴射される。図3に示す1つの実施形態では、炭化水素燃料が不連続の脈動により混合器4に噴射され、燃料噴射器が燃料をガス流に噴射しているときに濃厚ゾーンを、燃料噴射器が燃料をガス流に噴射していないときに希薄ゾーンを形成する。
【0056】
燃料、例えば炭化水素燃料がこの方法で図3aに示すように加えられるに従って、ガス流中に濃厚および希薄ゾーンが、濃厚ゾーンでは当量比が1より大きく、また希薄ゾーンでは当量比が1より小さくなるように作り出される。図2に示すように、得られる濃厚および希薄ガス混合物は、酸化および改質触媒を含む触媒ゾーン6を通って流れる。このとき、ガス流の濃厚ゾーンの炭化水素燃料は酸化触媒上でガス流中のO2により燃焼し、次にO2の実質的にすべてが消費された後に改質触媒上でH2およびCOに変換される。
【0057】
燃料が噴射され濃厚ゾーンを形成する期間中は、燃料流量は、ガス流のうちの燃料が噴射される部分の当量比が1より大となる、典型的には少なくとも約1.5、多くの場合少なくとも約2となるような流量に設定される。濃厚ゾーンでの当量比が約1であるため、図3bに示すように、O2の実質的にすべてが消費され、触媒ゾーンから出て行くO2レベルは実質的にゼロ、すなわちゼロに近いかまたはゼロに等しい。ガス流中の大量の酸素が燃焼することにより、図3cに示すように、触媒およびガスの温度が、残りの燃料の改質を引き起こすのに必要とされるレベルまで上昇する。燃料が噴射されているとき、燃料/排気混合物は「濃厚」である、すなわち当量比が1より大きいため、また燃料の一部の燃焼により温度が高いため、図3dに示すように、過剰燃料からH2およびCOが形成される。燃料パルスは十分に長いため、O2の十分な燃焼によって生成される熱は図2の酸化および改質触媒6を、改質にとって望ましい温度、一般には約450〜約1000℃、場合によっては約500〜約900℃、多くの場合約550〜約650℃、最も多くの場合約600℃まで加熱する。触媒温度が定常温度まで上昇すると触媒の良好な耐久性には高過ぎるため、定常温度まで上昇する前に燃料は遮断される(図3aの領域12)。
【0058】
ガス流の希薄ゾーンの低温ガスが触媒ゾーンを通って流れると触媒温度は低下する。図3aに示すように、燃料噴射の期間中の燃料流量を所望の当量比に達するように制御して、引き続いて燃料パルスを加えることができる。燃料をこのように脈動させると、図3dに示すように、触媒ゾーンの出口から出て行く排気流中にH2およびCOのパルスが生成され、一方、図3cに示すように、触媒温度は比較的一定のレベルに維持される。
【0059】
排気流7は、随意に、混合器、例えば図2の8を通って、図3eに示すように、比較的定常濃度のH2およびCOを生成する。混合器は随意に触媒ゾーンより上流側に配置して燃料−排気ガス混合物が均一となるように、および/または触媒ゾーンより下流側に配置して排気流中の還元剤の濃度が均一となるようにしてもよい。図2の参照番号4および8によって表されるこのような混合器はサイズが同じでも異なってもよく、様々な形状で構成することができ、またベイン、タブまたは軸方向に大きな再循環ゾーンを生じさせない他の物理的な装置など混合を促進する内部構造又は装置を含むことができる。適切な内部混合器は当業者であれば容易に決定され得る。脈動状態のまたは不連続の還元剤、例えばH2およびCOの濃度が望ましい場合は、図2の混合器8は削除してもよい。
【0060】
1つの実施形態では、図3aに示すように、最初の燃料パルスはその後のパルスより長くして、触媒を所望の温度まで急速に加熱させる。その後のパルスは、比較的一定の触媒温度を維持するために選択された流量、期間および回数とすることができる。別の実施形態では、燃料の脈動は、最初は、すべてのパルスを実質的に等しい期間とし所望の定常回数に設定する。その結果、触媒温度は徐々に定常温度に近づき、またH2およびCO出力は徐々に所望の値に近づくことになる。図3に示す実施形態では、サイクルの希薄部12での燃料流量は実質的にゼロである。他の実施形態では、サイクルの希薄部においてなんらかの燃料が1より小さい当量比で噴射され、これにより、付加燃料が酸化触媒上での燃焼反応で消費されるときサイクルのこの部分において追加の熱を生成することができる。
【0061】
本発明の燃料処理器は上述の例示した実施形態によって限定されない。上述のように燃料を酸素含有ガス流に付加して燃料の効率的な改質のためにガス流中に濃厚および希薄ゾーンを形成することが可能である限り、本発明に従って燃料処理器に対して他の設計を用いてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、燃料を脈動により加えるのではなく、燃料は実質的に連続して加える一方、触媒構造体をガス流の流動方向に対して半径方向に回転させることによって、または触媒ゾーンの一部のみが任意の所定時間に濃厚混合物と接触しその濃厚混合物と接触する部分が経時変更されるように燃料噴射器の位置または噴射角を連続的または定期的に変更することによって、ガス流中に濃厚および希薄ゾーンを形成する。
【0063】
図5Aに示す燃料処理器の1つの実施形態では、燃料は、複数の長手方向のチャネルを有する回転触媒構造体に流れ込むガス流部分に連続して加えられる。これらチャネルは、ガス流が触媒構造体の入口から出口までチャネルを通って流れるように構成されている。チャネルの壁は酸化および改質触媒によりコートされる。燃料を触媒構造体に流れ込むガス流部分に連続して加える一方で、ガス流中で触媒構造体が半径方向に回転するため、燃料を脈動により加えて濃厚および希薄ゾーンが交互に触媒ゾーン全体を通って流れるようにする場合と同じ効果が効果的に得られる。適切な形状を用いることにより、連続的または定期的に変わる触媒構造体部分に周期的な希薄および濃厚状態を作り出す。排気ガスは排気ダクト61を通って燃料処理器60に入り、主チャンバー62を通過して排気ダクト63から出て行く。主チャンバー62内には、例えば図5Aに示すような蜂の巣形状の長手方向のチャネルを有するモノリシックな触媒基体64がある。触媒基体は駆動ユニット66によって駆動されるシャフト65によって回転する。燃料は燃料噴射器67を通って噴射され、噴射パターン68をそしてこれによって輪郭69によって示される領域内でモノリシック構造体と出会う濃厚ゾーンを作り出す。連続燃料噴射速度は、領域69での当量比が1より大、典型的には約2〜約5の範囲内であるように設定される。触媒ゾーンの領域69は触媒構造体が回転するに従って経時変化する。
【0064】
別の実施形態では、図5Bに示すように、燃料はフローガイド70へと連続噴射される。燃料噴射器71は燃料をフローガイドの入口へと噴射し、フローガイドは、燃料と排気ガスとを混合させこの燃料排気混合物が触媒72に入るとき比較的均一な燃料濃度となるようにすることができる。
【0065】
図5aおよび図5bに示す燃料処理器の実施形態は、触媒ゾーン(64、72)と主チャンバー(62、73)との間に気密シールを必要としない。このため回転する触媒(64、72)の設計が非常に簡単になる。触媒構造体を回転させることでシステムが複雑化しまたシステムに追加の構成要素および追加のコストを課すが、このアプローチは、還元剤、例えば炭化水素燃料をガス流に加える場合はH2およびCOを含有する排気ガスの実質的に連続した流れを作り出し、これは残りの排気またはガス流とより容易に混合されるという利点をもつ。
【0066】
別の具現例では、触媒構造体を回転させるのではなく、燃料噴射器67の噴射角を変化させる。噴射角を変化させることによって、濃厚な燃料/空気比の領域が触媒構造体上を回って移動し、図5Aに示すような回転する触媒の動作に効果的に匹敵する。噴射器の噴射角は、噴射器を物理的に動かすことによって、噴射器からの燃料噴射と相互作用して噴射角を効果的に変化させる追加の空気流を用いることによって、または噴射角を変化させる噴射器内の電動部品を用いることによって機械的に変化させることができる。
【0067】
図5Aまたは図5Bに示す燃料処理器60は、排気流の一部を燃料処理器へのスリップ流として分流し、次にH2およびCOなどの改質反応の生成物を生成した後で主流の排気流に再導入する排出制御システムにおいて構成することができる。別のアプローチとしては、図5Cに示すように、排気流のほとんどが触媒構造体を迂回するようにするものがある。全排気流80がダクト81を通って燃料処理器に流入する。流路83によって示されるように排気ガスの大部分が燃料処理器の触媒を迂回して、ダクト84を通って燃料処理器ユニット82から出て行く。各通路に対する流れ抵抗に応じて排気流の一部が燃料処理器の触媒85へと分流する。燃料噴射、および触媒構造体を回転させるかまたは噴射角を変化させる燃料処理器の動作については、実質的に図5Aおよび図5Bに示した燃料処理器システムの場合に述べた通りである。いくつかの実施形態では、燃料処理器ユニット82は、所望の流量が燃料処理触媒を通るように誘導するために主チャンバー86内にバッフルおよび仕切り板を含む。このような仕切り板およびバッフルの適切な設計および構成は当業者であれば容易に決定され得る。
【0068】
図5A、図5Bおよび図5Cに示す実施形態のような実施形態では、触媒構造体は好ましくは触媒を所望の動作温度、一般には約450〜約1000℃、時には約500〜約900℃、多くの場合約550〜約800℃に多くの場合約600℃維持するのに十分な熱質量をもつ。
【0069】
ディーゼル燃料、ガソリン、メタン、灯油、他の炭化水素、アルコールおよびすべての炭化水素含有燃料を含む多くの炭化水素燃料が、本発明の燃料処理器の実施形態のいずれにおいても酸素含有ガス流に付加する燃料として適切である。ガス状、液状、酸素化、窒素含有および硫黄含有の炭化水素を使用してもよい。さらに、本発明の装置において1より大きい当量比での燃焼で水素含有流が生成されるのであれば、アンモニア、硫化水素または他の可燃物質などの非炭素含有燃料を使用してもよい。使用される燃料は、燃焼により適切な量の熱を放出して、改質触媒の温度を、還元剤、例えばH2またはH2およびCOを効率よく生成するのに適切なレベルまで上昇させることが可能でなければならない。特に有利な実施形態では、このアプローチを用いて、希薄燃焼エンジンを持つ車両に搭載される炭化水素燃料をエンジン排気ガスと共に処理して、H2およびCO含有の排気流を生成することができる。
【0070】
(NOx排出制御)
本発明は、燃焼プロセス、特に希薄燃焼内燃機関で起こる炭化水素燃料の燃焼からの酸素含有排出物中のNOx含有量を低減させる排出制御装置および方法を提供する。本発明の装置は、特に、車両ディーゼルエンジンの排気ガス中のNOx排出を減らすのに有用である。本明細書では、「NOx」とは燃焼プロセスにおいて生成される窒素酸化物、特にNOおよびNO2などの内燃機関の排気流中に存在する窒素酸化物を指す。「希薄燃焼」(“lean burn”または“lean burning”)エンジンとは、燃料を酸化させるのに必要な化学量論の空気量より空気が多い空燃比で炭化水素燃料を燃焼させるエンジンを指す。これには、ディーゼルエンジンの場合、15より大きい、典型的には25より大きい空燃質量比が必要である。希薄燃焼ディーゼルエンジンからの排出は、典型的には、排気ガス中に約8〜15%のO2および400〜700ppmのNOxを含む。
【0071】
排出制御装置はまた、排気流と接触し、上述のような燃料処理器の触媒ゾーンより下流側に配置された第2の触媒ゾーンを含む。第2の触媒ゾーンは、O2含有環境内、特に希薄燃焼エンジンの排気中で、燃料処理器によって生成されたH2およびCOを用いて、NOxからN2へ選択的触媒還元することが可能な「希薄NOx触媒」などの触媒を含む触媒組成物を有する。燃料処理器によって生成される還元剤、例えばH2およびCOが第2の触媒ゾーンに達すると、内部の触媒上でNOxがN2に還元されこれによりNOx排出が低減される。
【0072】
本発明は、本発明の排出制御装置を用いて、ディーゼルエンジンでの燃焼などの希薄燃焼プロセスによって生成されるNOxを低減させる方法を提供する。本発明の方法には、O2およびNOx含有の排気流の少なくとも一部に燃料を噴射して排気流中に濃厚および希薄ゾーンを作り出すことを包含する。濃厚および希薄ゾーンは上述のような燃料処理器の触媒ゾーンを通って流れる。燃料処理器の触媒ゾーンは酸化および改質触媒の両方を含む。濃厚ゾーンでは、燃料の一部は酸化され、残りの燃料の少なくとも一部が改質触媒上で改質されて還元剤、例えば炭化水素燃料を用いるときはH2およびCOを生成する。還元剤、例えばH2およびCOは第2の触媒ゾーンより上流側の排気流に導入され、第2の触媒ゾーンの触媒上でNOxと反応してN2を生成し、これによってNOx排出を低減させる。
【0073】
有利な実施形態では、希薄燃焼エンジンを持つ車両に搭載された燃料、例えばディーゼルエンジン駆動車両に搭載されたディーゼル燃料は、本発明の燃料処理器で処理されてH2およびCOを生成し、生成されたH2およびCOが、上述のような排出制御装置の第2の触媒ゾーンの希薄NOx触媒と共にNOx排出レベルを低減させる。
【0074】
図4に概略を示した1つの実施形態では、酸素含有エンジン排気流40の一部を「スリップ流」41として分流する。次に燃料噴射器42を通して燃料をスリップ流のガス流に向けて噴射する。燃料は領域43内でスリップ排気流に加えられ、その混合物が触媒ゾーン44を通って流れて、改質反応生成物、例えばH2およびCOを生成する。これら生成物は次に混合器46および53内で貫流エンジン排気流と混合する。改質生成物、例えばH2およびCOは次に、希薄NOx触媒48上で排気流中のNOxと反応して、触媒を出て行く排気流49内のNOx排出レベルを低減させる。
【0075】
排気流の一部をスリップ流に分流させる実施形態では、スリップ流へと分流され燃料処理器の触媒ゾーンを通る排気量は広い範囲で変えることができる。典型的には、全排気中の約1〜約50%がスリップ流に分流される。燃料処理器を通るガス流量は酸化燃料によって改質温度まで加熱されるため、熱損失および効率低下をもたらす。このため、燃料処理器へと分流される排気流の量を制限するのが好ましい。燃料処理器によって生成される改質生成物、例えばH2およびCOは、52の地点で主排気流に戻されて大きく希釈される。このように大きく希釈されるということは、混合流47での所定の目標濃度に対して45の地点で生成される還元剤の濃度は比例的に高くなければならないということである。例えば、第2の触媒ゾーン47の入口でのH2およびCOが1000ppmであって燃料処理器への分流が5%の場合は、H2およびCOの平均濃度は2%でなければならない。これら2つの要件により、異なる方向への分割比が決まる。
【0076】
図8は、燃料処理器へと分流される排気ガスのいくつかの流量レベルに対しての、燃料ペナルティ対化学量論係数の計算値を示す。これらの計算は、NOx排出レベルが5g/b−hp−hr(ブレーキ馬力時当たりのグラム数)の範囲であり高負荷で動作する典型的なディーゼルエンジンに対して行われた。化学量論係数とは、NOxの各分子を還元するのに必要とされるH2およびCOの比率である。化学量論係数1では、1個のH2分子または1個のCO分子が1個のNOx分子を還元する。図示するように、最も低い燃料ペナルティは、燃料処理器に分流される排気ガスの流量が最も低いとき、および化学量論係数が最も低いときに得られる。理論的な化学量論係数はNOの場合が1、NO2の場合が2であり、効率的な希薄NOx触媒にとっては、化学量論係数は1〜3の範囲であると予想され得る。好ましくは、燃料処理器に分流される排気流量分は体積百分率で約1%〜少なくとも約50%、より好ましくは約3〜約30%、さらにより好ましくは約5〜約25%、最も好ましくは約8〜約15%の範囲である。
【0077】
図4の燃料処理器の触媒構造体44は分流した排気流の流れに対して抵抗を与えるため、いくつかの実施形態は「分割比」すなわちスリップ流へと分流する排気量の貫流排気量に対する比を規制する手段を含む。分割比を規制するのに適した手段の例としては、位置51または52にバルブを配置するなどの様々な手段が含まれる。いくつかの実施形態では、バルブは固定または可変のドアを含むが、排気流のうちの所与の量を燃料処理器50へと誘導することができる他の手段を本発明に従って用いることができる。固定の規制手段もまた使用され得る。固定手段の1つの例としては、位置51と52との間の主排気ダクト内に配置される、オリフィスなどの流量制限器がある。このような制限によって、燃料処理器50の構成要素によってもたらされる制限に匹敵するものとして、主ダクト内の流量制限器によってもたらされる相対的な制限に基づいて、排気流量のうちの所定分を燃料処理器50へと誘導する。位置51と52との間のダクト内に配置される制限器は、固定開口部を持つ固定制限器であっても、バルブまたはドアなどの可変制限器であってもよい。
【0078】
(燃料噴射)
本発明での使用に適した多くの燃料噴射器が当該分野で周知である。本発明のいくつかの実施形態では、加圧燃料が噴射器に供給され、次に噴射器が流量制御バルブを開閉して燃料の流れをオンオフする。このような噴射器は自動車の燃料噴射器として広く開発されてきており、例えば米国特許第6,454,192号、第5,979,866号、第6,168,098号および第5,950,932号に記載されている。このような噴射器は、30〜600psigの範囲の低圧燃料供給を利用し、また電気信号を用いて噴射器内のソレノイドまたはバルブを動かして、燃料の流れを非常に高速に、典型的には0.2〜1ミリ秒の範囲の速度でオンオフさせることができる。このような燃料噴射器は、開口時間比を燃料の流れを制御するように設定した噴射器を非常に高速で開閉することによって、燃料流量を制御する。本発明の装置で使用する場合、この開閉を非常に速くして、燃料の流れを実質的に連続とすることができる。例えば、回数を50〜100Hzとし開口時間比を制御すれば、燃料流量を制御して図3aに示す濃厚パルス中に所望の当量比を得ることができる。燃料噴射器は次に希薄期間中は完全に閉じられる。従って、このような燃料噴射器は2つの回数成分により動作し得る。高い回数成分は、図3aおよび図3dに示す濃厚および希薄期間中に必要な燃料流量を与えるために使用される。噴射器は図3aおよび図3dに示す希薄期間中は実質的にオフにされる。燃料処理器の触媒温度を維持するために希薄期間中にいくらかの燃料流量が所望される場合は、開口時間比を非常に低くして噴射器の高回数動作を行うことで、非常に低い燃料流量が得られる。
【0079】
空気支援噴射器などの他のタイプの噴射器を使用してもよい。空気支援噴射器は加圧空気を利用する。加圧空気は燃料と共に噴射器を通って流れ、これにより所望の燃料滴サイズ、噴射パターンまたは噴射方向を得るか、または燃料をより低い供給圧で利用する。また多数の噴射器を使用してもよい。別の手段としては、噴射手段は、燃料噴射の分散および誘導のために単純なノズルを備えてもよい。このノズルは、燃料をパルスポンプまたは他の手段からのパルスに合わせて供給する燃料ラインに接続される。噴射された燃料は短期間で燃料処理器の触媒に送る必要があり、パイプまたは構成要素の壁に液状で留まったままであるのは不利である。この問題を解決する1つの実施形態は、燃料を触媒表面に直接噴射して、燃料が燃料処理器または排気システムの場合によっては冷たい金属表面と相互作用するのを制限することを包含する。別の実施形態は、燃料を非常に熱い表面に噴射してこれを瞬間蒸発させることを包含する。さらに別の実施形態は、個別の熱いチャンバー内で燃料を予め蒸発させ、その後蒸発した燃料を噴射器を通して放出することを包含する。
【0080】
(燃料と排気ガスとの混合)
改質生成物、例えばH2およびCOの生成のための正しい触媒温度を実現するために、燃料対酸素比は、所望の熱出力レベルを与えて触媒温度を維持し必要レベルのH2およびCOを生成するのに適切な範囲内でなければならない。これには、燃料処理器の触媒より上流側で噴射燃料と排気流とを混合させて、触媒ゾーンに入る前に燃料−排気混合物が適切な均一性レベルを実現することが必要である。当量比の変動を用いて必要な均一性レベルを定義すると、+/−40%の当量比均一性が望ましく、+/−30%が好ましく、+/−20%の均一性が最も好ましい。1つの方法としては、均一の燃料噴射パターンを触媒構造体の入口の面に与える非常に均一な噴射器を使用することがある。この均一な燃料噴射パターンを燃料処理器の触媒を通る均一な排気ガス流と結合させると、燃料処理器の触媒ゾーン入口に比較的均一な燃料濃度が得られる。いくつかの実施形態では、燃料処理器の触媒ゾーンに入る燃料とガス流との混合物は、一部は蒸発し一部は液状の燃料を含む。燃料が十分に蒸発していない場合、燃料ガス混合物が金属表面と接触すると、燃料はこれら表面上に液状膜として集まり、これが効果的な燃料濃度の均一性を低減させる恐れがある。加えて、燃料がゆっくりと蒸発すると、希薄および濃厚ゾーンが変わり、還元剤、例えばH2およびCOを生成するシステムの性能を低減させる恐れがある。好ましくは、燃料噴射器および排気流は、燃料処理器の触媒ゾーンへの入口で実質的に均一な燃料濃度を与えるように構成される。いくつかの実施形態では、触媒ゾーンに入る燃料の少なくとも一部は蒸発せず滴の形状で入る。
【0081】
燃料処理器の触媒ゾーンの入口で所望の燃料濃度を実現する第2の方法は、先ず前燃焼触媒上で燃料を酸素と一部反応させ、これにより燃料−排気混合物の温度を上昇させて燃料を一部または完全に蒸発させる。次にこの蒸発した燃料と排気ガスとの混合物を標準的なガス混合技術で混合して、燃料処理器の触媒のための望ましい当量比均一性を形成する。このようなシステムを図11に概略的に示す。このシステムは、燃料を前酸化触媒92上に噴射する燃料噴射器91を備えた燃料処理システム90を含む。前酸化触媒は燃料の一部をガス流中の酸素により燃焼させて、燃料のいくらかの部分が蒸発するように温度を上昇させる。この蒸発した燃料を次に混合器93によって排気流と混合させて、燃料処理器の酸化/改質触媒94のためのより均一な燃料酸素混合物を形成する。この触媒が次に濃厚サイクル中に還元剤、例えば、H2およびCOを生成する。混合器93は、燃料および排気ガスを高速で混合しまた燃料と空気とが軸方向に混合するのを制限し、これにより濃厚パルス中は高い当量比を維持して燃料のH2およびCOへの改質を最大限にするように設計されている。実質的に軸方向の混合はなくほとんど半径方向に混合することが、一般に濃厚パルスの大きさを維持するためには望ましい。
【0082】
1つの実施形態では、前酸化触媒は、低圧の滴を可能にする開口チャネルを有するウォッシュコートされたモノリシックの蜂の巣状の基体である。前酸化触媒基体は、チャネルの壁が酸化触媒でコートされたセラミックまたは金属製の蜂の巣状構造体である。触媒基体の長さおよびチャネルサイズは如何なるものであってもよいが、燃料の一部のみを反応させて混合物の温度を十分に上昇させ燃料の一部またはすべてを蒸発させることが望ましいため、いくつかの実施形態では、基体長さは短いことが、またはチャネルサイズは大きいことが望ましい。もしくは触媒基体構造体は、米国特許第5,250,489号および第5,512,250号に記載されているように、一方の側のみが酸化触媒でコートされた波形金属片から形成されこれを巻いて螺旋構造とされた金属基体を含む。隣接するチャネル間の壁の一方の側のみに触媒をコートしたこのような構造体は、触媒基体の温度上昇を制限することができる。これは、燃料−排気混合物が均一でない場合に望ましい。このような前燃焼触媒システムで蒸発した燃料の量は少なくとも約50%、好ましくは約70%、最も好ましくは約80%であることが望ましい。いくつかの実施形態では、燃料が排出制御システムの壁上に集まるのを防ぐためには燃料の実質的にすべてが蒸発することが望ましい。
【0083】
(低排気温度での動作)
低い排気温度では噴射された燃料は十分に蒸発しないかもしれない。この制約を克服するために、燃料処理触媒より上流側に電気ヒーターを配置して、排気ガスの燃料処理触媒へと流れる部分を加熱することができる。例えば、図4に示した実施形態では、電気ヒーターはダクト41内に配置して、燃料処理器50へ、すなわち燃料空気混合スペース43を通って燃料処理器の触媒44へと流れている排気ガスを加熱することができる。この電気ヒーターは当該分野で既知の任意の適切なタイプのものでよい。例えば、排気流中に吊るされた電気抵抗ワイヤ、電気加熱された金属片、排気流の流路の壁としての電気加熱された金属壁であればよい。または排気ガスを所望の温度まで加熱するいかなる方法であってもよい。
【0084】
別の方法としては、金属製の触媒基体を用いて電流をこの金属触媒に通すことによって、燃料処理器の触媒の一部を電気加熱するものがある。排気ガス流の一部のみが加熱金属基体によって直接加熱されるように大きなチャネルサイズを用いることによって電力を制限することができる。さらに別の方法としては、燃料処理器の触媒ゾーンを出て行く加熱ガス(図4の45)と燃料処理システムに入るガス(図4の41)との間の熱交換を用いるものがある。この熱交換は、例えばチューブおよびシェル熱交換器、フィンおよびチューブ熱交換器またはパイプ装置を含む、当該分野で周知の多くの方法によって行うことができる。
【0085】
(酸化および改質触媒)
様々な実施形態において、酸化および改質触媒は、容器に入った球粒またはビーズの形状であるか、またはモノリシック構造体の壁にコートされる。本明細書で用いる「モノリス」または「モノリシック構造体」とは、1つまたは複数のチャネルを有する単体の構造体をいう。適用によっては、モノリシック構造体、例えば蜂の巣形状が有利な場合がある。何故なら、例えば車両では、振動により球粒またはビーズ状材料の磨耗および損失が生じる恐れがあるためである。さらに、モノリシック構造体は、典型的には、流れている排気流に対して圧力低下または背圧が低い。モノリスは典型的にはセラミックまたは金属材料よりなり、セラミックまたは金属は、入口の面から構造体を通って出口の面へと到る開口チャネルを形成するように構成され、様々なチャネルまたはセルのサイズおよび形状であってよい。
【0086】
触媒材料は典型的にはゾルすなわち液状担体中のコロイド状分散液の形状とされ、次に金属またはセラミックのモノリシック構造体の内表面に塗布されて、これら内表面上に触媒コーティング層を形成する。モノリシック触媒基体についての検討が、HeckおよびFarrauto,“Catalytic Air Pollution Control−Commercial Technology”,Van Nostrand Reinhold,1995,19−26頁に提示されている。「支持体」または「基体」は触媒組成物を含む材料であり、多くの場合その上にコーティングされる。支持体の一例としては、触媒材料を堆積させる耐熱酸化物などの高表面積多孔性材料がある。「耐熱酸化物」とは、高い表面積、高温での熱安定性または反応流への対薬品性などの好適な望ましい特性を有する、触媒反応種を取り入れるためのベースとして働き得る材料をいう。
【0087】
モノリシック構造体のセルのサイズおよび形状は、特定の適用にとって必要とされる所望の表面積、圧力低下、ならびに熱および質量の伝達係数を得るように選択される。このようなパラメータは当業者であれば容易に確かめ得るものである。本発明によれば、チャネルは製造およびコーティングを容易にするのに適した任意の形状であり得る。例えば、金属基体の場合は、チャネルは波形のものが直線、正弦波または三角形の形状にされ、そして/もしくはヘリンボンまたはジグザグパターンを含む。セラミック基体の場合は、チャネルは例えば正方形,三角形または六角形、もしくは押し出し成形または当該分野で既知の他の製造方法によって形成することができるいかなる形状であってもよい。チャネルの直径は典型的には約0.001〜約0.2インチ、好ましくは約0.004〜約0.1インチの範囲である。
【0088】
いくつかの実施形態では、比較的高い熱質量をもつ金属モノリシック構造体を用いて燃焼熱を保存し、この燃焼熱を燃料パルス間でゆっくりと放出して、触媒および触媒を通る排気ガスの温度を比較的一定のレベルに調節するのを可能にする(図3C)。この調節の一例を図9に示す。図9は、燃料を上述のように脈動させてガス流に加えるときの触媒の平均温度対時間を示す。図9は、1000グラムの質量の触媒に対して毎分1250リットルの触媒質量対ガス流量比、すなわち0.8g/SLPM(排気流の標準リットル/分)で計算された触媒温度を示す。燃料は、当量比が約3で酸素約10%の典型的な排気状態のとき濃厚−希薄周期が0.4Hzとなるように脈動供給される。「濃厚−希薄周期」とは、濃厚プラス希薄パルスの秒単位で表す時間の逆数である。例えば、濃厚パルスが0.5秒、希薄パルスが1.5秒で合計濃厚プラス希薄時間が2秒の場合、濃厚−希薄周期は1/2すなわち0.5Hzである。触媒温度は655〜681℃の間を変動する(約26℃の変動)。これは大きな変動であり、金属構造体の疲労により触媒構造体の寿命を縮めることになる。図10は同じ方法ではあるが広い範囲の触媒質量および回数に対して計算した一連のポイントを示す。3Hzより多い燃料脈動の場合は実行が困難であり、高レベルの燃料ペナルティを引き起こすおそれがある。0.4Hzより少ない回数では、0.5g/SLPMより小さい所定の流量の場合非常に小さな触媒質量をもつシステムでは非常に高い温度の揺れを導く恐れがある。従って、本発明の燃料処理器にとっての所望の濃厚−希薄回数範囲は好ましくは約0.1〜約10Hzであって、これは約10秒〜約0.1秒に対応し、より好ましくは約0.25〜約3Hz、最も好ましくは約0.4〜約2Hzである。加えて、触媒質量の好適な範囲は約0.5g/SLPMより大である。単位流量当たりの触媒質量の上限は所望の開始速度によって決まる。
【0089】
1つの例示的な例では、典型的な円筒状触媒構造体は、300CPSI(セル数/入口断面積の平方インチ)、チャネル高さ0.8mm、触媒コーティング0.6mg/cm2、外寸法直径2×長さ3および重さ約100gの2ミルの薄箔を含む。箔を10ミルまで厚くすることによって、同じ体積で体重を500gまで増やすことができ、さらにより安定した温度プロフィール、もしくはより低い燃料パルス回数またはより高い空間速度で燃料処理器を動作させる能力が提供される。流入するガス流と触媒基体との間で熱容量が大きく異なるため、セラミック基体を用いてもよい。
【0090】
モノリシック構造のチャネル壁表面は触媒層でコートされる。コーティングはウォッシュコートとして塗布されるとよい。本明細書で用いる「ウォッシュコート」とは、例えば、典型的には高露出表面積の支持体と活性の触媒要素との混合物よりなる、モノリシック構造体のチャネル壁などの基体に塗布されるコーティングをいう(HeckおよびFerrauto、上掲)。高表面積の支持体は、典型的には、アルミナまたはジルコニアなどの多孔性不活性酸化物を含む。酸化物支持体は酸化または改質反応に活性の追加の成分を含み得る。酸化および改質触媒の混合物が用いられる。
【0091】
本明細書で用いる「酸化触媒」とは、酸素の存在下で炭化水素を酸化するのに有用な当該分野では既知のいずれの触媒をも指す。本発明で有用な酸化触媒の多くの例が米国特許第5,232,357号に示されている。一般には、触媒組成物は、元素周期表の第VI、VII、VIIIまたはIB族の元素を含む。活性触媒元素としては、Pd、Pt、Rh、Cu、Co、Fe、Ni、Ir、CrおよびMoが含まれる。好ましくは、Pd、Pt、Rh、Co、FeまたはNiが使用される。これらの元素は個別にまたは組み合わせて、また実際の使用においては純粋な元素としてまたはその酸化物として使用され得る。酸化触媒にとっての望ましい特性は、低温で良好な触媒活性を示し、これによって酸化反応が低温で開始されるようにすることである。さもなければ、ガス流が自動車のエンジンの排気ガスである実施形態では、エンジンの動作を変更して排気温度を上昇させなければならない場合もあり、これは燃料経済性において否定的な影響をもつ。「最低動作温度」と呼ばれるこの特性では、付加燃料が排気システム中のO2と反応を始める温度は約250℃より低く、一般には約150℃より低くすべきである。従って、最低動作温度が低い酸化触媒が望ましい。酸化触媒は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウムもしくはこれらの混合物または組み合わせよりなる支持体上に堆積され得る。触媒は随意に他の添加剤または元素を含んでもよい。例としては、酸化セリウムジルコニウムの混合物または固溶体、シリカアルミナ、Ca、Ba、SiまたはLa安定化アルミナおよび当該分野で既知のほかの支持体がある。
【0092】
酸化/還元サイクルを行う酸素吸蔵材料または触媒金属の充填量を大きくすることは、燃料処理器の性能を損なう可能性があるため避けるべきである。このような付加酸素の供給は、脈動燃料サイクルの過渡的な濃厚部分で利用可能な酸素量を増やし、その結果動作温度の上昇および燃料効率の低下を招く恐れがある。
【0093】
触媒はPd、Ptまたは他の活性触媒材料をアルミナまたはジルコニアなどの多孔性支持体に含浸させることによって調製され得る。金属の充填量は典型的には、重量比でウォッシュコート材料全体の約0.1〜約20%、多くの場合約1〜約10%の範囲である。ディーゼル燃料は分子量が高くまた高温で熱分解する性質を持つため、付加ディーゼル燃料の処理で使用される酸化触媒は、水蒸気分解に活性の触媒成分を含んでもよい。適切な添加物の例としては、酸化カルシウム、酸化バリウム、他のアルカリまたはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物などの基本的な酸化物がある。
【0094】
本明細書で用いる「改質触媒」とは、炭化水素燃料からH2およびCOを生成するのに有用な当該分野で既知のいずれの触媒をも指す。有用な改質触媒の例としては、Ni、Ru、Rh、PdおよびPtがある。本発明の実施においては、改質触媒は、希薄燃焼エンジンの正常な動作中でみられる酸化条件の下で安定であり、且つ燃料を付加して炭化水素燃料をH2およびCOに改質するとき非常に高速に反応することが可能でなければならない。好ましくは、Pt、PdまたはPhもしくはこれらの混合物が多孔性酸化物の支持体上に支持される。典型的な触媒の1つの例では、1重量%のRhが多孔性酸化ジルコニウム上に支持される。この触媒は、水中に三塩化ロジウムを溶解させ、次にこの溶液を高表面積、典型的には約15〜約150m2/gの範囲の酸化ジルコニウムに含浸させることによって調製され得る。ロジウムの濃度は典型的には、ロジウムおよび酸化物支持体を含むウォッシュコート触媒固形物全体の約0.1〜約20%の範囲である。多くの場合、ロジウム濃度はウォッシュコート充填量全体の約0.2〜約10%の範囲である。ウォッシュコートは蜂の巣状モノリシック構造体の内部チャネルに、内部の幾何学的表面の約1〜約50mg/cm2、多くの場合約5〜約15mg/cm2の充填量または厚さでコートされ得る。PdおよびPt触媒も同様の方法で調製され得る。
【0095】
酸化触媒および改質触媒は同じ燃料処理器内で組み合わされる。酸化および改質触媒は同じモノリシック構造体の別の領域にまたは別のモノリシック構造体に置かれてもよいし、単一の基体の同じ領域内で組み合わされてもよい。1つの実施形態では、酸化触媒は改質触媒から離れてその上流側に置かれる。別の実施形態では、酸化および改質触媒は組み合わされてモノリシック構造体の内部チャネルに塗布されるウォッシュコートとされる。
【0096】
例示した実施例では、Pd酸化触媒とRh改質触媒とがジルコニア支持体上で組み合わされて、付加燃料を排気流中のO2により燃焼させる酸化活性と、残りの燃料をCOおよびH2へと改質する改質活性とを有する触媒を形成する。1つの実施形態では、Rh成分を高表面積の酸化物支持体に含浸し次にか焼する。これとは別に、Pd成分を高表面積の支持体にコートしてか焼または固定する。これら触媒を混合してPd/Rh酸化/改質触媒を形成する。次にこの触媒を使用してコロイド状ゾルを生成してモノリシック構造体上にウォッシュコートする。別の実施形態では、モノリシック構造体は、入口に酸化触媒および出口に改質触媒を備える。さらに別の実施形態では、燃料処理器は2つの分離したモノリシック構造体を含み、一つ目は入口に酸化触媒のウォッシュコート層を持ち、二つ目は出口に改質触媒のウォッシュコート層を持つ。
【0097】
いくつかの実施形態では、酸化触媒および改質触媒の組成物は同じ触媒作用活性成分、例えばPtおよび/またはPdを含む。別の実施形態では、酸化および改質触媒の組成物は異なる触媒作用活性成分を含む。
【0098】
本発明の様々な実施形態では、燃料処理器は1つ以上のモノリシック構造体を含む。いくつかの実施形態では、燃料処理器は1つのモノリシック構造体を含む。別の実施形態では、燃料処理器は、重なり合うかまたはつながり合った2つ以上のモノリシック構造体を含む。いくつかの実施形態では、モノリシック構造体は入口から出口までの1つのチャネルを含む。別の実施形態では、モノリシック構造体は複数のチャネルを含む。
【0099】
1つの局面では、本発明は、酸化触媒と改質触媒とを含む、H2およびCOを生成するための触媒組成物を有する。別の実施形態では、本発明は、モノリシック構造体を含み、このモノリシック構造体上に、酸化触媒と改質触媒とを含む触媒組成物がコートされているか、または基体の同じ領域かまたは異なる領域に酸化および改質触媒組成物が別々にコートされている。
【0100】
(混合部)
NOx排出制御の実施形態では、NOxをN2に連続して還元するには、希薄NOx触媒は還元剤、例えばH2およびCOの濃度が比較的一定であることを必要とする。このため、還元剤を排気流と混合させるために燃料処理器の下流側に混合器を配置し得る。この混合は、例えば図4に示すように、2つの異なる領域で行うことができる。還元剤パルスは領域46で希薄パルスと混合し、次にこの均一な流れは領域50で主排気流と混合して、位置47で排気流中に還元剤の比較的均一な混合物を生成することができる。もしくは、混合器46は省略して、脈動する還元剤を領域53内で主排気流と混合させることができる。1つの実施形態では、いくつかの燃料噴射サイクルに対応するガス流を混合させる。例えば、燃料処理器50を通る流れが300SLPMで噴射回数が1Hzの場合、必要な混合体積は2周期当たり約30リットルとなる(温度は600℃とする:これは3倍のガス膨張となる)。動作回数が高いほど、H2パルスを混合して定常濃度とするには混合体積を小さくする必要がある。混合容器はH2の燃焼を防ぐため触媒作用が不活性でなければならない。この可能性をさらに回避するために、装置の混合部に入る前に混合容器の壁を冷却するか、または例えば熱交換器を介して排気ガスを冷却するとよい。
【0101】
もしくは、希薄NOx触媒は最適な性能を得るためにH2およびCOのパルスを必要とし得る。この場合には、図4の混合器46は省略して、混合器53を、還元剤を主排気流と半径方向に混合させ軸方向の混合は最小限にして還元剤パルスを維持するように設計される。実施例4で説明し図12に示すように、いくつかの希薄NOx触媒は、還元剤濃度を連続させるよりむしろ還元剤を脈動させる場合により良好に働く。本発明により生成される還元剤パルスは、軸方向の混合を最小限にし、これによってNOxをN2へと還元させる希薄NOx触媒を通って流れる還元剤パルスを最大限にするように設計されたシステムにより維持され得る。
【0102】
(希薄NOx触媒)
いくつかの実施形態では、本発明の装置は、燃料処理器内で生成される還元剤によりNOxを還元するための、図4に48で示す希薄NOx触媒を含む。希薄NOx触媒は、動作の温度領域内でこの反応に対する選択性が良好であること、およびH2燃焼に対する活性が低いことを必要とする。1つの実施形態では、希薄NOx触媒を含む触媒構造体は、触媒構造体の入口(または多層形状の外層)に高温配合物および出口(または内層)に低温配合物という、触媒配合物の組み合わせを含む。
【0103】
希薄NOx触媒の典型的な活性触媒成分としては、Pt、Pd、RhおよびIrが含まれる。高表面積の耐熱性酸化物支持体またはゼオライトを含んでもよい。典型的な耐熱性酸化物支持体としては、アルミナ、および熱安定性を高めるためにSi、Ca、Ba、Ti、Laまたは他の成分などの添加物を加えたアルミナがある。高表面積の支持体は、燃料処理の酸化/改質触媒の場合に上述したものと同様であってよい。さらに、触媒の酸化活性を下げることによって反応の選択性を向上させるために、例えばNa、Co、Mo、K、Cs、Ba、CeおよびLaなどの変更成分を使用してもよい。有用な希薄NOx触媒組成物の例は米国特許第6,109,018号に記載されている。
【0104】
一般に、希薄NOx触媒においてNOxを還元するために、比較的一定の還元剤の流れが用いられることが分かっている。驚くべきことに、我々はH2およびCOの濃度が変動することでNOxの還元が向上することを見出した。これを図12に示す。図12では、H2+COの比較的連続した濃度およびH2+COの脈動する濃度に対してNOxの還元が測定されている。この触媒は、実施例4で後述するが、高表面積アルミナ上に支持され菫青石モノリス上にウォッシュコートとして堆積されるプラチナおよびモリブデンよりなる。H2+COの脈動する濃度により、NOx変換がはるかに広い温度領域に渡って起こる、より高レベルのNOx変換が得られる。
【0105】
いくつかの実施形態では、希薄NOx触媒より下流側に酸化触媒、典型的には低温酸化触媒を配置することによって、非反応COを除去してもよい。いくつかの実施形態では、最低動作温度が低い配合物が用いられる。
【0106】
(制御方策)
本発明の排出制御システムの効率を最適化するために多くの制御方策が用いられ得る。いくつかの典型的な方策としては次のものがある。
・触媒より上流側のNOx濃度、触媒より下流側のNOx濃度、排気ガス中の酸素濃度、排気ガス温度、排気流量、エンジントルク、エンジンrpm、エンジンターボチャージャーブースト、エンジン燃料流量、エンジン取り込み空気流量または他の様々なエンジン動作パラメータを含むパラメータのうちの1つまたはそれ以上を用いて、燃料噴射器への必要燃料流量および噴射器デューティサイクルを計算すること。
・希薄NOx触媒より下流側のNOxセンサを用い、次に燃料を処理器に加えて、所望レベルのNOxを得ること。
・希薄NOx触媒より上流側のNOxセンサをエンジン動作パラメータと組み合わせて用いて、全排気流量を概算すること。NOx濃度を、排気流量、排気酸素レベルおよび排気温度を含む他のパラメータのうちの1つまたはそれ以上と組み合わせることにより、このNOxの流れを還元するのに必要な燃料流量の概算が可能となる。
・NOx生成率または濃度対エンジン動作パラメータのエンジンマップを用いること。エンジン動作パラメータは、rpm、トルク、負荷またはターボチャージャーブーストなどであるがこれらに限定されない。エンジンパラメータはまた、排気流量、従ってNOxの流れ全体およびこのNOxの流れを還元するために必要な燃料流量を概算するためにも用いることができる。エンジン動作パラメータは、rpm、エンジントルク、エンジンターボチャージャーブースト、エンジン燃料流量、エンジン取り込み空気流量、排気温度または他の様々なエンジン動作パラメータを含み得る。
【0107】
制御方策はまた、測定または概算された排気温度を用いて、所望の温度上昇を得るのに必要な燃料を概算することも含み得る。これは上述の制御方策にいずれとも組み合わせることができる。
【0108】
生成されるH2のレベルおよび燃料処理器の触媒の動作温度を制御するために用いられる調整可能なパラメータとしては、サイクルの濃厚期間中に付加される炭化水素燃料の流量、サイクルの希薄期間中に付加される炭化水素燃料の流量、エンジン排ガス再循環(EGR)流量または取り込み空気スロットル設定によって制御または変動が可能なガスまたは排気流中の酸素レベル、希薄および濃厚パルスの回数、およびデューティサイクル(サイクル全体における燃料噴射が「オン」である比率)が含まれる。例えば、例えば1分当たりのモル数におけるH2の所望の流速FH2は、これも例えば1分当たりのモル数における排気流中のNOxの流速FNOxの関数であり、この関数関係は例えば式1に示すように希薄NOx触媒の働きに依存する。
【0109】
FH2=f(FNOx) (式1)
この関数関係は、予想されるプロセス変数をカバーする触媒のエンジンテストまたはリグテストによって決定され得る。プロセス変数の例をいくつか挙げると、触媒温度Tcat、排気ガス温度Texh、排出酸素レベルCO2、排出水濃度CH2O、触媒の寿命Acatなどがある。関数関係は、従属変数のうちの1つまたはそれ以上が式2に示すような関数関係に含まれるという形態をとり得る。
【0110】
FH2=f(FNOx,Tcat,Texh,Acat,CO2,CH2O,Acat) (式2)
式2によって定義される排気流中に必要なH2の流速は、燃料の燃料処理器への供給速度Ffuelによって決定され、よって燃料供給速度は、式3に示すように、所望のH2の流速FH2の関数として定義することができる。
【0111】
Ffuel=f(FH2) (式3)
しかし、燃料流量は酸素を燃焼させて燃料処理器の触媒温度を上昇させるのに十分なものでなければならないため、燃料処理器への燃料供給速度はまた、排気ガス温度Texhおよび濃厚ゾーン内での燃料処理器の触媒の所望の動作温度TFP、燃料処理器を通って流れる排気ガス分FFP、排気流中の酸素濃度CO2、全排気流量Fexhおよび他の可能な変数の関数でもある。従って、燃料流量は、従属変数のうちの1つまたはいくつかが関数関係において実際に使用される式4のような関数関係から計算され得る。
【0112】
Ffuel=f(FH2,Texh,TFP,FFP,Fexh,CO2) (式4)
式3の変数の多くはエンジン動作条件の関数である。例えば、排気流量、排気温度および排気中の酸素濃度は、エンジンrpm Erpm、エンジントルクEtrq、エンジンターボチャージャーブーストEbst、エンジン燃料流量Efuel、エンジン取り込み空気流量Eair、エンジンEGR流量EEGR、エンジンスロットル設定Ethrおよび他の可能な変数の関数であり得る。従って、式3の変数のいくつかをこれらのエンジンパラメータおよび制御ロジックで使用されるパラメータのいくつかに置き換えて、所望の燃料流量Ffuelを決定することができる。これは、エンジン制御コンピュータまたはエンジン制御ユニットECUが既にこれらの値の多くを測定または計算しているか、またはエンジンの正しい動作のためにこれらを実際に設定していることもあり得るため、有利な制御方法であろう。例えば、現在のエンジンはrpm、エンジントルク、ターボチャージャーブーストおよび多くの他の変数を測定し、このような変数をEGR流量、燃料流量、ターボチャージャーブーストなどとして制御または設定している。
【0113】
別の制御方策では、エンジンを、rpmおよびトルクのエンジン動作範囲全体にわたって図表化して、このような変数を入口空気温度または環境温度として含んでもよい。これらの動作範囲にわたって、酸素濃度、NOx濃度、排気流量、排気温度および多くの他の重要な変数を含む排気組成が決定され、必要な燃料流量値を特定するマップが形成される。次にこのマップまたはルックアップテーブルを使用して、任意のエンジン動作条件での必要な燃料流量を決定し、この燃料流量を用いて、濃厚パルスおよびデューティサイクル中の燃料流量を設定する。もしくは、これらの方策の組み合わせを使用することもできる。例えば、エンジン動作パラメータを使用して、高速ルックアップテーブルを用いて排気流中のNOx濃度を決定する。次に単純な関数関係を使用して、rpm、トルク、EGR流量または設定、入口スロットル設定およびターボチャージャーブースト圧などのいくつかのエンジンパラメータ、またはこれらパラメータの部分集合に基づいて燃料供給速度を計算する。
【0114】
ほとんどのアプリケーションでは、エンジンはエンジンrpmおよびトルクが経時変化して過渡的に動作する。これらの場合の燃料噴射速度の制御は、同様に行われるか、または所与のエンジン動作パラメータの変化速度に基づいて遅延期間の付加が必要となるかもしれない。例えば、エンジンrpmが増えるに従って排気流量が増大し、よって燃料処理器の触媒温度を維持するのに必要な燃料流が増大する。しかし、排気流量が増加すると実際のrpmの増加を遅らせるかもしれないため、燃料流には何らかの遅延が必要となるかもしれない。同様に、トルクが増大するに従って、NOxレベルおよび排気流が増大し、燃料処理器への燃料流の増大が必要となるかもしれないが、これらパラメータの両方は定常エンジン動作パラメータに較べて遅れるかもしれない。燃料処理器の触媒への燃料流は、燃料処理器の触媒を通じての温度上昇および生成される還元剤の量が、実際の燃料処理器の触媒入口温度および希薄NOx触媒に入るNOxのレベルと効果的に一致するように調整する必要が生じ得る。
【0115】
以下の実施例は本発明を例示するためのものであって本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0116】
(実施例1)
(触媒調製)
モノリシック構造体を米国特許第5,259,754号に記載されているように調製した。
【0117】
硝酸パラジウムを約0.18gPd/mlの濃度で脱イオン水で希釈し、次に約75m2/gの表面積をもつ酸化ジルコニウム粉末を攪拌しながら加えた。次にこの混合物を溶媒留去させて乾燥させ、得られた粉末を700℃で10時間空気中でか焼した。最終触媒粉末中の最終パラジウム濃度は5.5重量%であった。Pd/ZrO2触媒を水および10重量%の20%酢酸ジルコニウム溶液でスラリー化して固形分約30%のスラリーを形成した。固形酸化物中のPd濃度は5%であった。
【0118】
三塩化ロジウムを約0.04gRh/mlの濃度で脱イオン水に溶かし、次に約75m2/gの表面積をもつ酸化ジルコニウム粉末を攪拌しながら加えた。混合物の攪拌中に20%の水酸化アンモニウム水溶液をpH8となるように加えた。次に混合物を蒸発させて乾燥させ、得られた粉末を700℃で10時間空気中でか焼した。最終触媒粉末中の最終ロジウム濃度は1.1重量%であった。Ph/ZrO2触媒を水および10重量%の20%酢酸ジルコニウム溶液でスラリー化して固形分約30%のスラリーを形成した。固形酸化物中のPh濃度は1%であった。
【0119】
川崎製鉄のRiver Lite 20−5Srストリップ、厚さ0.050mm、幅75mmおよび長さ3m、を波形にしてV形チャネルをヘリンボンパターンで形成した。チャネルは幅約10mm、高さ1.46mmで、ヘリンボン部間の角度は15度とした。この波形箔を900℃で10時間空気中で加熱して表面に酸化アルミニウムの層を形成した。箔上にPd/ZrO2スラリーを吹き付けて、波形箔の両側に3mの長さに沿って25mm幅の触媒コート層を箔の両側の同じ部分をコートして形成した。触媒層は幾何学的な箔金属表面に6mg/cm2の充填量であった。次に箔の両側の残りの非コート金属表面にRh/ZrO2スラリーを約6mg/cm2の充填量で吹き付けた。コートされた触媒を700℃でさらに10時間空気中でか焼した。次に箔を半分に畳んで巻きつけて、長手方向の開口チャネルをもつ非入れ子式螺旋状ロールを形成した。最終的な触媒は直径50mmで約13gの触媒ウォッシュコートを含んだ。
【0120】
(実施例2)
(変動回数で噴射される燃料のH2への触媒変換)
実施例1から得られる触媒を、質量分光計定量トレーサーとしての空気、N2およびHeのためのガス供給および質量流量計、電気ヒーター、エアアシスト水スプレーおよびディーゼル燃料噴射用加圧燃料スプレー(三菱MR560553)を含む流量反応器内に配置した。触媒は、触媒の上流および下流側の熱電対温度センサにより隔離された直径50mmの領域内に配置した。質量分光計のためのサンプリングプローブを触媒出口から約50cm下流側に配置した。
【0121】
空気、窒素および水の流れを合計ガス流量が600SLPMとなるように調整して、5%のH2O、7%のO2、0.3%のHeそしてN2が残りを占める最終組成物を形成した。次に電気ヒーターを用いてこの混合物を270℃まで加熱した。図6に示すような変動パルス回数でディーゼル燃料を噴射した。質量分光計のサンプリングレートは2Hzで、噴射回数は0.4と1Hzとの間で変動させた。図6Aは、時間および燃料パルス回数の関数としてのO2およびH2濃度を、体積パーセントの濃度単位に換算した値で示す。この配置でのサンプリングポイントは、図2の位置7でのサンプリングに相当する燃料処理ユニットのすぐ下流側の位置であった。燃料噴射パルス中は、燃料「オン」の局面で存在するO2のすべてが消費されてH2が生成される。図6Bは、触媒のすぐ下流側の出口面を横断する別々の位置に配置された3つの熱電対によって測定された、触媒出口でのガス温度を示す。これまでの研究によって、ガス温度は触媒温度のいかなる変化にも非常にすばやく応答することが分かっている。燃料処理器を出て行くガス流の温度は、脈動する燃料からの変動を示さずかなり一定であり、従って触媒の熱質量を用いて燃料パルスからの変動を抑制することができるという本発明の概念を実証している。0.4Hzでは温度は約600℃であり、回数が約1Hzまで増えると約725℃まで上昇する。この温度上昇は、燃料と反応するO2量が増えて結果としてより大きな熱放出が得られるためである。
【0122】
(実施例3)
(H2およびCOの連続流を提供する混合の効果)
実施例2と同様の実験を、この場合は22gの触媒を用いチャネル箔高さ8mmで、350SLPMの流量で行った。燃料パルスは0.5Hzであった。燃料処理器の触媒から出た後、得られるガス流を38リットルのステンレススチール製混合チャンバーに入れ、得られる生成物を混合した。質量分光計を用いて、図2の位置7に相当する燃料処理器のすぐ下流側、および図2の位置10に相当する混合体積のすぐ下流側におけるガス流の組成を追跡した。燃料処理器のすぐ下流側のH2濃度を図7Aに、混合体積の下流側のH2濃度を図7Bに示す。これらのデータにより、このような混合体積が、脈動するH2を混合して比較的一定レベルのH2を含むガス流を提供するのに十分であることが示される。これらのテストではCOは監視しなかったが、CO濃度もH2と同じ振る舞いを示すと予想される。
【0123】
(実施例4)
(NOx変換に与える脈動および連続還元剤の効果)
希薄NOx触媒を以下に示すように調製した。約250m2/gの表面積を持つガンマアルミナ粉末に、脱イオン水中に溶解した七モリブデン酸アンモニウムを含浸させ、得られる粉末を600℃で乾燥およびか焼して最終的にアルミナに10重量%のMo充填を行った。次にこの粉末に硝酸プラチナ溶液を含浸させ、600℃で乾燥およびか焼して最終的に0.5%のPt充填を行った。次にこの最終固形物を水と共にボールミルで粉砕して固形分が約30重量%のゾルを形成し、このゾルを菫青石モノリスにコートして600℃で乾燥およびか焼し、ウォッシュコートとしてゾルを約15%含む最終構造体を形成した。直径25mm、高さ75mmの円筒状のこの触媒を、10%のO2、8%のCO2、5%のH2O、10ppmのSO2および600ppmのNOを含有し毎分25リットルで流れるガス流を含むテストシステム内に配置した。この流れにH2およびCOを加えて、流れているガス流中に6000ppmのH2および3000ppmのCOの濃度を形成した。このH2およびCOは、連続流として、または1秒毎に約0.3秒噴射して加えた。希薄NOx触媒より下流側のNOxレベルを監視して、希薄NOx触媒の温度を150から425℃まで変動させて、図12に示すNOx変換カーブを得た。H2およびCOレベルを脈動または変動させた場合にNOx変換が実質的に向上している。
【0124】
本発明を、理解を明確にするために例示および実施例によって幾分詳細に述べたが、本発明の精神および範囲から外れることなく何らかの変更および修正が行われ得ることは当業者には明白であろう。従って、上記の記述は本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、本発明は添付の請求の範囲によって画定される。
【0125】
本明細書において引用したすべての出版物、特許および特許出願は、すべての目的のために、そして個々の出版物、特許および特許出願が参考として援用されるとして特別におよび個別に示されるかの如くに同じ程度に、参考として援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気を生成するように操作されるエンジンと、
前記エンジンからの排気流内に燃料を噴射するように構成された燃料噴射器(91)と、
酸化触媒を含み、前記燃料噴射器(91)から噴射された燃料とともに排気流を受取るように構成された前燃焼装置(92)と、
燃料改質触媒を含み、前記前燃焼装置(92)からの排気流を受取るように構成された燃料燃焼装置(94)、とを含むシステムであって、
前記前燃焼装置(92)は、前記噴射された燃料の第一の部分を燃焼し、前記噴射された燃料の他の部分を気化するように操作され、
前記燃料燃焼装置(94)は、H2とCOを形成するように操作されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
さらに、混合器(93)を含み、これを、前記前燃焼装置(92)の下流で、かつ前記燃料燃焼装置(94)の上流に配置することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記前燃焼装置(92)と前記燃料燃焼装置(94)は、所定長さのパイプによって結合されており、このパイプの長さは、長さ/直径(L/D)の割合を2よりも大きいようにすることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記混合器(93)の少なくとも一部は、ニスの酸化物や炭素質の沈殿物を触媒作用可能な触媒によって被覆されることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記燃料噴射器(91)は、エンジンシリンダーの燃料噴射器であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記前燃焼装置(92)は、比較的に大きな経路と比較的に短い長さを有しており、前記噴射された燃料の一部だけを燃焼することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記前燃焼装置(92)は、鉄ベースの金属合金を有する支持体を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記前燃焼装置(92)は、排気を流通させるように複数の長い経路を有し、この約20%〜約80%だけを酸化触媒で被覆したことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
まず前記前燃焼装置(92)を流れた排気に対してだけ前記燃料燃焼装置(94)が操作されるように、前記燃料燃焼装置(94)と前記前燃焼装置(92)を構成したことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記前燃焼装置(92)は、前記エンジンによって生成される全排気を受取るように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記前燃焼装置(92)の入口面に対して当たるように配向されたスプレーとして前記燃料を噴射するように、前記燃料噴射器(91)を構成したことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
希薄排気流内にH2とCOを生成する方法であって、
前記希薄排気流内に燃料を選択的に噴射して、全体的に濃厚な排気流を形成し、
前燃焼装置(92)を通るように前記全体的に濃厚な排気流を流通させて、
前記前燃焼装置(92)によって、前記噴射された燃料の一部を燃焼させて、
前記前燃焼装置(92)から燃料改質装置(94)まで前記排気流を流通させて、前記燃料改質装置によって、実質的な量のCOとH2を含む還元ガス混合を生成させて、
前記前燃焼装置(92)と前記燃料改質装置(94)間を通る際、前記全体的な濃厚な排気流は混合して、前記燃料改質装置(94)の入口で実質的に均一な混合を提供することを特徴とする方法。
【請求項13】
前記希薄排気流は、圧縮点火エンジン排気であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記燃料は、ディーゼル燃料であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記噴射された燃料の少なくとも約50%は、前記前燃焼装置(92)によって気化されるが、前記前燃焼装置(92)によって燃焼されないことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記前燃焼装置(92)は、燃焼しない燃料の基本的に全てを気化することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記前燃焼装置(92)は、排気を通すように複数の長い経路を有し、この約20%〜約80%だけを酸化触媒で被覆することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記排気流の全ては、前記前燃焼装置(92)を通る前記燃料改質装置(94)によって処理されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
排気流内に実質的に均一な燃料と空気の混合を生成する方法であって、
前燃焼装置(92)の上流に1よりも大きな当量比を提供する割合で、希薄排気流内に燃料を噴射して、
前記排気流を燃料とともに前記前燃焼装置(92)を通るように流通させ、
前記前燃焼装置(92)内で燃料の一部だけを燃焼させ、
前記前燃焼装置(92)から流れる、燃料の他の部分を気化させ、
前記前燃焼装置(92)から長いパイプを通るように前記排気を流通させて、前記パイプは、選択的に静的な混合器(93)を含み、
前記前燃焼装置(92)の下流に実質的に均一な燃料と空気の混合を提供して、この燃料と空気の混合が実質的な量の酸素を含むようにしたことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記長いパイプは、選択的に混合器を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記長いパイプは、長さ/直径(L/D)の割合を2よりも大きいようにすることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記混合器の少なくとも一部は、ニスの酸化物や炭素質の沈殿物を触媒作用可能な触媒によって被覆されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記噴射された燃料の少なくとも約50%は、前記前燃焼装置(92)によって気化されるが、前記前燃焼装置(92)によって燃焼されないことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記前燃焼装置(92)は、燃焼しない燃料の基本的に全てを気化することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記前燃焼装置(92)は、排気を通すように複数の長い経路を有し、この約20%〜約80%だけを酸化触媒で被覆することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項1】
排気を生成するように操作されるエンジンと、
前記エンジンからの排気流内に燃料を噴射するように構成された燃料噴射器(91)と、
酸化触媒を含み、前記燃料噴射器(91)から噴射された燃料とともに排気流を受取るように構成された前燃焼装置(92)と、
燃料改質触媒を含み、前記前燃焼装置(92)からの排気流を受取るように構成された燃料燃焼装置(94)、とを含むシステムであって、
前記前燃焼装置(92)は、前記噴射された燃料の第一の部分を燃焼し、前記噴射された燃料の他の部分を気化するように操作され、
前記燃料燃焼装置(94)は、H2とCOを形成するように操作されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
さらに、混合器(93)を含み、これを、前記前燃焼装置(92)の下流で、かつ前記燃料燃焼装置(94)の上流に配置することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記前燃焼装置(92)と前記燃料燃焼装置(94)は、所定長さのパイプによって結合されており、このパイプの長さは、長さ/直径(L/D)の割合を2よりも大きいようにすることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記混合器(93)の少なくとも一部は、ニスの酸化物や炭素質の沈殿物を触媒作用可能な触媒によって被覆されることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記燃料噴射器(91)は、エンジンシリンダーの燃料噴射器であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記前燃焼装置(92)は、比較的に大きな経路と比較的に短い長さを有しており、前記噴射された燃料の一部だけを燃焼することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記前燃焼装置(92)は、鉄ベースの金属合金を有する支持体を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記前燃焼装置(92)は、排気を流通させるように複数の長い経路を有し、この約20%〜約80%だけを酸化触媒で被覆したことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
まず前記前燃焼装置(92)を流れた排気に対してだけ前記燃料燃焼装置(94)が操作されるように、前記燃料燃焼装置(94)と前記前燃焼装置(92)を構成したことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記前燃焼装置(92)は、前記エンジンによって生成される全排気を受取るように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記前燃焼装置(92)の入口面に対して当たるように配向されたスプレーとして前記燃料を噴射するように、前記燃料噴射器(91)を構成したことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
希薄排気流内にH2とCOを生成する方法であって、
前記希薄排気流内に燃料を選択的に噴射して、全体的に濃厚な排気流を形成し、
前燃焼装置(92)を通るように前記全体的に濃厚な排気流を流通させて、
前記前燃焼装置(92)によって、前記噴射された燃料の一部を燃焼させて、
前記前燃焼装置(92)から燃料改質装置(94)まで前記排気流を流通させて、前記燃料改質装置によって、実質的な量のCOとH2を含む還元ガス混合を生成させて、
前記前燃焼装置(92)と前記燃料改質装置(94)間を通る際、前記全体的な濃厚な排気流は混合して、前記燃料改質装置(94)の入口で実質的に均一な混合を提供することを特徴とする方法。
【請求項13】
前記希薄排気流は、圧縮点火エンジン排気であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記燃料は、ディーゼル燃料であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記噴射された燃料の少なくとも約50%は、前記前燃焼装置(92)によって気化されるが、前記前燃焼装置(92)によって燃焼されないことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記前燃焼装置(92)は、燃焼しない燃料の基本的に全てを気化することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記前燃焼装置(92)は、排気を通すように複数の長い経路を有し、この約20%〜約80%だけを酸化触媒で被覆することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記排気流の全ては、前記前燃焼装置(92)を通る前記燃料改質装置(94)によって処理されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
排気流内に実質的に均一な燃料と空気の混合を生成する方法であって、
前燃焼装置(92)の上流に1よりも大きな当量比を提供する割合で、希薄排気流内に燃料を噴射して、
前記排気流を燃料とともに前記前燃焼装置(92)を通るように流通させ、
前記前燃焼装置(92)内で燃料の一部だけを燃焼させ、
前記前燃焼装置(92)から流れる、燃料の他の部分を気化させ、
前記前燃焼装置(92)から長いパイプを通るように前記排気を流通させて、前記パイプは、選択的に静的な混合器(93)を含み、
前記前燃焼装置(92)の下流に実質的に均一な燃料と空気の混合を提供して、この燃料と空気の混合が実質的な量の酸素を含むようにしたことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記長いパイプは、選択的に混合器を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記長いパイプは、長さ/直径(L/D)の割合を2よりも大きいようにすることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記混合器の少なくとも一部は、ニスの酸化物や炭素質の沈殿物を触媒作用可能な触媒によって被覆されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記噴射された燃料の少なくとも約50%は、前記前燃焼装置(92)によって気化されるが、前記前燃焼装置(92)によって燃焼されないことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記前燃焼装置(92)は、燃焼しない燃料の基本的に全てを気化することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記前燃焼装置(92)は、排気を通すように複数の長い経路を有し、この約20%〜約80%だけを酸化触媒で被覆することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−162236(P2009−162236A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46685(P2009−46685)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【分割の表示】特願2004−553955(P2004−553955)の分割
【原出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【出願人】(390033020)イートン コーポレーション (290)
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【分割の表示】特願2004−553955(P2004−553955)の分割
【原出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【出願人】(390033020)イートン コーポレーション (290)
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
【Fターム(参考)】
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