説明

帯電装置、カートリッジ、および画像形成装置

【課題】 長寿命化が図られた帯電装置、カートリッジ、および画像形成装置を提供する。
【解決手段】 直流電圧に交流電圧を重畳した印加電圧を帯電ロール用電源231で第1の帯電ロール21に印加するとともに、抵抗検知器232で検知された抵抗値が高抵抗状態に達している場合に、部材制御部233からの指示を受けてアクチュエータ制御部234で第1,第2のアクチュエータ235,236をオンするとともにモータ制御部237でモータ238を回転して、第1の帯電ロール21を第2の帯電ロール22に交換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電装置、カートリッジ、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、帯電ロールを感光体に接触させてその感光体表面を帯電する帯電装置において、帯電に伴って流れる帯電電流が設定値以下の場合には、帯電ロールが寿命に達したと判断して警告を発する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−152766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、長寿命化が図られた帯電装置、カートリッジ、および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の帯電装置は、
電圧が印加され被帯電部材に接触してその被帯電部材に電荷を付与する帯電部材と、少なくとも1つ以上の被帯電部材に接触せず該被帯電部材に電荷を付与していない帯電部材とを有し、
上記被帯電部材に接触している帯電部材の抵抗値を検知する抵抗検知器と、
上記抵抗検知器により検知された抵抗値が予め決められた高抵抗状態に達している場合に、上記被帯電部材に接触している帯電部材を、上記電荷を付与していない帯電部材のうちのひとつの帯電部材と交換する交換機構とを備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の帯電装置は、請求項1の帯電装置において、上記帯電部材が、電流及び又は電圧の直流と交流が重畳されて印加されるものであり、
上記被帯電部材に接触している帯電部材にダミーの交流成分を複数強度で印加し、その被帯電部材における帯電量を直接又は間接に検出し、その帯電量の検出結果に基づいて、その帯電部材に印加されるべき交流成分値を決定する交流決定部と、
上記交流決定部で決定された交流成分値を用いて上記帯電部材に電流及び又は電圧の直流と交流を重畳して印加する印加部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項3の帯電装置は、請求項1記載の帯電装置において、上記複数の帯電部材が、互いに抵抗値の異なるものであり、
上記交換機構が、上記被帯電部材に接触している帯電部材を、その帯電部材よりも抵抗値が高い別の帯電部材に交換するものであることを特徴とする。
【0008】
請求項4のカートリッジは、
表面に像が形成されてその像を保持する像保持体と、
電圧が印加され上記像保持体に接触してその像保持体に電荷を付与する帯電部材と、少なくとも1つ以上の被帯電部材に接触せず該被帯電部材に電荷を付与していない帯電部材とを有し、
上記像保持体に接触している帯電部材の抵抗値を検知する抵抗検知器と、
上記抵抗検知器により検知された抵抗値が予め決められた高抵抗状態に達している場合に、上記像保持体に接触している帯電部材を、上記電荷を付与していない帯電部材のうちのひとつの帯電部材と交換する交換機構とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項5の画像形成装置は、
表面に像が形成されて該像を保持する像保持体と、
電圧が印加され上記像保持体に接触してその像保持体に電荷を付与する帯電部材と、少なくとも1つ以上の被帯電部材に接触せず該被帯電部材に電荷を付与していない帯電部材とを有し、
上記帯電部材により帯電された上記像保持体の表面に像を形成する像形成部と、
上記像保持体に接触している帯電部材の抵抗値を検知する抵抗検知器と、
上記抵抗検知器により検知された抵抗値が予め決められた高抵抗状態に達している場合に、上記像保持体に接触している帯電部材を、上記電荷を付与していない帯電部材のうちのひとつの帯電部材と交換する交換機構とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の帯電装置では、長寿命化が図られている。
【0011】
請求項2の帯電装置では、被帯電体の摩耗を抑制することができる。
【0012】
請求項3の帯電装置では、被帯電体の摩耗を抑制することができる。
【0013】
請求項4のカートリッジでは、長寿命化が図られている。
【0014】
請求項5の画像形成装置では、長寿命化が図られている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態であるプリンタの概略構成図である。
【図2】画像形成が行なわれて第1の帯電ロールの抵抗値が徐々に上昇していき感光体ロールの表面電位が低下する様子を説明するための図である。
【図3】図1に示す帯電装置の構成を示す図である。
【図4】アクチュエータを感光体ロールの長手方向から見た図である。
【図5】アクチュエータのオン,オフ状態を示す図である。
【図6】図1に示すプリンタの、プリント開始の指示を受けてから新しい帯電ロールに交換されるまでの処理のフローを示す図である。
【図7】帯電ロールの寿命と感光体ロールの寿命との関係を示す図である。
【図8】本発明の帯電装置の第2実施形態の構成を示す図である。
【図9】必要最低限の交流電流値を決定する様子を説明するためのグラフである。
【図10】本発明の帯電装置の第3実施形態の構成を示す図である。
【図11】本発明の実施例と比較例との双方の構成および評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態であるプリンタの概略構成図である。
【0018】
図1に示すプリンタ10は、図示しないモータにより矢印A方向に回転することにより循環移動する表面にトナー像が形成される感光体ロール11と、この感光体ロール11の表面に電荷を付与する帯電装置20と、外部から送信されてきた画像データに基づいた露光光を生成する露光器12と、トナーを含む現像剤を収容する現像器13と、記録用紙を収容する記録用紙収容部16と、記録用紙収容部16から記録用紙を引き出して矢印B方向に搬送する用紙搬送部17と、感光体ロール11の表面に形成されたトナー像を、搬送されてきた記録用紙上に転写する転写ロール14と、記録用紙上のトナー像を加熱および加圧することでその記録用紙上にトナー像を定着させる定着器15とを有している。ここで、感光体ロール11と帯電装置20とが、本発明のカートリッジの一実施形態であるカートリッジ30を構成している。
【0019】
帯電装置20は、本発明の帯電装置の第1実施形態であり、この帯電装置20には、感光体ロール11の表面に接触して電荷を付与する第1,第2の帯電ロール21,22と、これら第1,第2の帯電ロール21,22を押圧するための第1,第2のバネ部材23,24と、帯電制御部230とが備えられている。尚、帯電装置20には、第1,第2の帯電ロール21,22の汚れを清掃するための清掃ロールも備えられているが、図面の煩雑化を避けるため、図示省略している。また、第1,第2の帯電ロール21,22は、ともに同じ抵抗値のものが用いられている。
【0020】
現像器13は、トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を収容した現像剤収容体131と、現像剤収容体131中の現像剤を保持して感光体ロール11の表面に対向した状態で回転する現像ロール132を有する。
【0021】
定着器15は、加熱機構を有する定着ロール151と、定着ロール151に対向するように設けられた圧力ロール152を有する。
【0022】
ここで、このプリンタ10における画像形成の動作の流れを簡単に説明する。
【0023】
画像形成にあたっては、先ず、帯電装置20により感光体ロール11の表面に電荷が付与される。次いで、電荷が付与された感光体ロール11の表面に、外部から送信されてきた画像データに基づいた露光光が露光器12により照射されることでこの表面には静電潜像が形成される。さらに、現像器13に収容されている現像剤が現像ロール132の表面に供給され、現像ロール132と感光体ロール11との間の領域に運ばれ、運ばれた現像剤中のトナーにより、感光体ロール11の表面の静電潜像が現像される。この現像により得られたトナー像が、矢印B方向に搬送されてきた記録用紙上に転写ロール14により転写される。その後、トナー像を加熱および加圧する定着器15により記録用紙上のトナー像が溶融されて記録用紙上に定着される。ここで、現像器13と露光器12が、像保持体の表面に像を形成する像形成部の一例を構成している。
【0024】
ところで、画像形成を行なっていくと、帯電装置20が有する帯電ロールの表面は感光体ロール11上の残留トナーや外添剤等により徐々に汚れていく。このため、帯電ロールの抵抗値が徐々に上昇していく。すると、帯電ロールからの感光体ロール11への電荷の供給が少なくなっていき、感光体ロール11の表面電位は、記録用紙上に形成される画像に濃い微細筋が発生するレベルにまで低下する。以下、図2を参照して説明する。
【0025】
図2は、画像形成が行なわれて帯電ロールの抵抗値が徐々に上昇していき感光体ロールの表面電位が低下する様子を説明するための図である。
【0026】
図2の横軸は帯電ロールの抵抗値Rを示す。また、縦軸は感光体ロール11の表面電位Vhを示す。画像形成を行なっていくと、帯電ロールの表面は感光体ロール11上の残留トナーや外添剤等により徐々に汚れていく。このため、帯電ロールの抵抗値が徐々に上昇していく。画像形成が行なわれていき、帯電ロールの抵抗値がR1になった時点では、この帯電ロールの抵抗値は上昇しているものの感光体ロール11の表面電位Vhは維持されている。さらに、画像形成が行なわれて帯電ロールの抵抗値が上昇していくにつれて、帯電ロールからの感光体ロール11への電荷の供給が少なくなっていく。このため、感光体ロール11の表面電位Vhが低下し始めている。さらに、画像形成が行なわれて帯電ロールの抵抗値がR2になると、感光体ロール11の表面電位Vhは、記録用紙上に形成される画像に濃い微細筋が発生するレベルにまで低下することとなる。そこで、本実施形態では、以下に説明するように、帯電装置20に帯電ロールを交換する機構が組み込まれている。
【0027】
図3は、図1に示す帯電装置の構成を示す図である。
【0028】
図3に示す帯電装置20には、第1,第2の帯電ロール21,22と帯電制御部230が備えられている。この図3では、第1,第2の帯電ロール21,22のうち図3で下側に示されている第1の帯電ロール21が感光体ロール11に接触している状態が示されている。
【0029】
帯電制御部230には、第1,第2の帯電ロール21,22に、直流電圧に交流電圧を重畳した印加電圧を印加する帯電ロール用電源231が備えられている。
【0030】
また、帯電制御部230には、感光体ロール11に最初に接触している方の帯電ロール(即ちここでは第1の帯電ロール21)の抵抗値を検知する抵抗検知器232が備えられている。この抵抗検知器232は、帯電ロール用電源231からの印加電圧値と帯電ロールに流れ込む電流値とに基づいて帯電ロールの抵抗値を検知する。
【0031】
また、帯電制御部230には、部材制御部233と、アクチュエータ制御部234と、第1,第2のアクチュエータ235,236と、モータ制御部237と、モータ238とが備えられている。第1,第2のアクチュエータ235,236の底面には、第1,第2のバネ部材23,24が取り付けられている。また、第1,第2のアクチュエータ235,236、第1,第2のバネ部材23,24、モータ238、および第1,第2の帯電ロール21,22は、帯電制御部230に備えられた支持部材230aに取り付けられている。ここで、部材制御部233、アクチュエータ制御部234、第1,第2のアクチュエータ235,236、第1,第2のバネ部材23,24、モータ制御部237、およびモータ238が、本発明の交換機構の一例である交換機構240を構成している。
【0032】
部材制御部233は、抵抗検知器232により検知された第1の帯電ロール21の抵抗値が複数回閾値を超えた場合、第1の帯電ロール21が高抵抗状態に達したと判定する。詳細には、画像形成にあたり、第1の帯電ロール21の表面は、図示しない清掃ロールにより清掃されるものの、感光体ロール11上の残留トナーや外添剤等により徐々に表面が汚れていく。このため、第1の帯電ロール21の抵抗値は徐々に上昇する傾向にある。この抵抗値は、第1の帯電ロール21が回転している状態における抵抗値なので予め定めた閾値に一旦達した場合であっても、例えば回転している途中で残留トナー等が取り除かれてその閾値を下回る場合もある。そこで、部材制御部233は、第1の帯電ロール21の抵抗値の検知を一連の画像形成工程毎(1ジョブ毎)に行なうとともに、今回のジョブで第1の帯電ロール21の抵抗値が閾値を超えた場合であって前回のジョブでも閾値を超えていた場合に、第1の帯電ロール21の抵抗値が高抵抗状態に達したと判定している。尚、これとは別に、本発明の交換機構では、第1の帯電ロール21の抵抗値をもっと煩雑に確認し、抵抗値が閾値を超える頻度が高くなったことをもって高抵抗状態に達したと判定してもよい。
【0033】
第1の帯電ロール21が高抵抗状態に達したと判定した場合、この部材制御部233は、感光体ロール11に接触している第1の帯電ロール21を、第2の帯電ロール22(本発明にいう別の帯電部材の一例)と交換するための指示をアクチュエータ制御部234およびモータ制御部237に行なう。
【0034】
アクチュエータ制御部234は、部材制御部233からの帯電ロール交換の指示を受けると、第1,第2のアクチュエータ235,236をオン状態にする。このアクチュエータ制御部234の動作については、図4,図5を参照して説明する。
【0035】
図4は、アクチュエータを感光体ロールの長手方向から見た図、図5は、アクチュエータのオン,オフ状態を示す図である。
【0036】
図4には、図3に示す支持部材230aに取り付けられた第1のアクチュエータ235が示されている。この第1のアクチュエータ235は、図5に示すように、コイル部235aと、そのコイル部235aに挿脱自在な鉄心部235bを有する。鉄心部235bの底面には、第1のバネ部材23が取り付けられている。尚、図示省略するが、コイル部235a内には、鉄心部235bの上面を感光体ロール11に向けて押し出すバネ部材が取り付けられている。
【0037】
第1のアクチュエータ235は、第1の帯電ロール21が高抵抗状態に達したと判定される以前では、オフ状態にされている。即ち、第1の帯電ロール21のコイル部235aには電流が流れておらず、図5(a)に示すように、鉄心部235bはコイル部235a内に取り付けられたバネ部材により押し出された状態にあり、バネ部材23の先端部は点線Aで示す位置にある。従って、第1の帯電ロール21は、図1,図3に示すように、感光体ロール11に接触している状態にある。
【0038】
ここで、第1の帯電ロール21が高抵抗状態に達したと判定されて、アクチュエータ制御部234が部材制御部233からの帯電ロール交換の指示を受けると、第1のアクチュエータ235は、アクチュエータ制御部234によりオン状態にされる。即ち、コイル部235aに電流が流され、この電流によって発生する磁力で鉄心部235bがコイル部235aの内部に引き込まれる。このため、第1のバネ部材23の先端部は、図5(b)の点線Bで示す位置になる。従って、図4に示すように、第1の帯電ロール21は感光体ロール11から離れた状態となる。
【0039】
再び図3に戻って説明を続ける。第1,第2の帯電ロール21,22が感光体ロール11から離れた状態で、部材制御部233からのモータ回転の指示を受けたモータ制御部237が、モータ238を回転させる。すると、支持部材230aに取り付けられた第1,第2の帯電ロール21,22および第1,第2のアクチュエータ235,236が矢印B方向に回転する。ここで、第1,第2のアクチュエータ235,236はオン状態にある。このため、第1,第2の帯電ロール21,22が感光体ロール11から確実に離れた状態で回転することとなる。第2の帯電ロール22が、図3に示す第1の帯電ロール21の位置になった時点で、第1,第2のアクチュエータ235,236がオフ状態になる。従って、第2の帯電ロール22が感光体ロール11に接触することとなる。このようにして、第1の帯電ロール21が第2の帯電ロール22に交換される。ここで、図1に示すプリンタ10において、プリント開始の指示を受けて画像形成が行なわれていくにつれて第1の帯電ロール21が徐々に汚れていき、その結果第1の帯電ロール21の抵抗値が高抵抗状態であると判定されて新たな第2の帯電ロール22に交換されるまでの処理について、図6を参照して説明する。
【0040】
図6は、図1に示すプリンタの、プリント開始の指示を受けてから新しい帯電ロールに交換されるまでの処理のフローを示す図である。
【0041】
プリント開始の指示を受けて画像形成動作が開始されると、この処理が実行される。先ず、ステップS1において、第1の帯電ロール21の抵抗値を測定する。
【0042】
次に、ステップS2において、測定した抵抗値が複数回連続して閾値を超えたか否かが判定される。測定した抵抗値が複数回閾値を超えていないと判定された場合は、ステップS1に戻る。一方、測定した抵抗値が複数回閾値を超えていると判定された場合は、ステップS3に進む。ステップS3では、高抵抗状態になった第1の帯電ロール21を新しい第2の帯電ロール22に交換して、この処理を終了する。
【0043】
次に、帯電ロールの寿命と感光体ロールの寿命との関係について、図7を参照して説明する。
【0044】
図7は、帯電ロールの寿命と感光体ロールの寿命との関係を示す図である。
【0045】
図7の縦軸は帯電ロールの抵抗値の変化分ΔRを示し、横軸は画像形成工程数を示す。また、図7の横線Aは画像に微細筋が発生する抵抗値を示し、縦線Bは帯電ロールが寿命となる工程数を示し、縦線Cは感光体ロールが寿命となる工程数を示す。
【0046】
画像形成を開始する前の時点では、帯電ロールの抵抗値は初期値R0にある。この初期値R0は、画像形成を開始するにつれて高い値Rへと変化していく。この初期値R0と変化した値Rとの差分(R−R0)をΔRとする。上述したように、画像形成が何度も実行されるにつれて帯電ロールは徐々に汚れていくため、ΔRも大きくなっていく。画像形成が行なわれて帯電ロールの抵抗値が上昇していき、横線Aで示すΔRの位置にまで達すると、画像に微細筋が発生するようになって、帯電ロールが寿命となる。縦線Bは、このように帯電ロールが寿命となるまでの平均的な画像形成工程数を表している。プリンタをさらに使い続けるためには、寿命となったこの帯電ロールを新たな帯電ロールと交換する必要がある。ここで、従来のプリンタでは、カートリッジを新たなカートリッジに交換する旨の指示が例えば液晶画面に表示される。ユーザは、液晶画面に表示された指示を見てカートリッジを交換する。この結果、帯電ロールも新たな帯電ロールに交換されるが、感光体ロールも交換されることになる。しかし、一般に、縦線Cで表わされる感光体ロールの寿命は、上述した縦線Bが表わす帯電ロールの寿命よりも長い。そこで、本実施形態のプリンタ10では、寿命となった帯電ロールが交換機構240(図3参照)で新たな帯電ロール(第2の帯電ロール22)に交換される。そして、交換された新たな帯電ロールで画像形成がさらに行なわれていく。やがて、縦線Cで示す感光体ロールの寿命となる画像形成工程数に達して、感光体ロールを寿命まで使い切ることとなる。
【0047】
次に、第2実施形態について説明するが、第2実施形態の具体的な説明の前に、帯電ロールから感光体ロール11に流れる電流について説明する。
【0048】
帯電ロールで感光体ロール11の表面に電荷を付与するにあたり、帯電ロールには上述したように、直流電圧に交流電圧が重畳された電圧が印加される。これにより、帯電ロールから感光体ロール11に直流電流および交流電流が流れて、感光体ロール11の表面に電荷が付与される。ここで、交流電流が大きいと、感光体ロール11の摩耗量が増加する。一方、交流電流が小さいと感光体ロール11の表面に帯電不良が発生し、この感光体ロール11を用いて形成された画像上に‘白点’等が発生する。そこで、以下に説明する第2実施形態の帯電装置では、感光体ロール11の摩耗量の増加、および帯電不良による‘白点’等の発生の双方が抑えられる交流電流を印加するための帯電制御部が備えられている。この第2実施形態の帯電装置は、上述した第1実施形態の帯電装置20に替えて図1のプリンタ10に搭載可能な帯電装置である。
【0049】
図8は、本発明の帯電装置の第2実施形態の構成を示す図である。
【0050】
尚、図3に示す帯電装置20の構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付し、異なる点について説明する。
【0051】
図8に示す帯電装置40は、図3に示す帯電装置20と比較し、帯電制御部230が帯電制御部430に置き換えられている点が異なっている。
【0052】
帯電制御部430には、電圧印加部438_1と、交流決定部438_2と、電流検出部438_3とが備えられている。
【0053】
電圧印加部438_1は、第1,第2の帯電ロール21,22に、直流電圧に交流電圧を重畳した印加電圧を印加する。
【0054】
電流検出部438_3は、電圧印加部438_1を経由して、感光体ロール11に接触している方の帯電ロールから感光体ロール11に流れ込む電流値を検出する。検出された電流値は、交流決定部438_2に入力され、印加電圧の交流成分の定電流制御に用いられる。また、交流決定部438_2は、入力された電流値に基づいて感光体ロール11の帯電量を検出し、この検出結果に基づいて、帯電ロールに印加されるべき必要最低限の交流電流値を決定する。以下、図9を参照して説明する。
【0055】
図9は、必要最低限の交流電流値を決定する様子を説明するためのグラフである。
【0056】
図9の横軸は、帯電ロールに印加される印加電圧のうちの交流電圧成分の印加により生じた交流電流値Iacを示す。また、縦軸は、感光体ロール11の表面電位Vhを示す。なお、印加電圧のうちの直流電圧成分については、交流電流値Iacの変化に関わらず一定電圧であるものとする。
【0057】
感光体ロール11の表面電位Vhは、実線で示すグラフのように、交流電圧の印加により生じた交流電流値Iacの増加に伴って上昇する。ここで、交流電流値Iacが値A1に到達した以降は、飽和により感光体ロール11の表面電位Vhは一定値に達する。このように一定値に達したときの表面電位Vhは、印加電圧のうちの直流電圧成分に依存した電位である。表面電位Vhがこの一定値に達した時点で、グラフ上の位置Pに、いわゆる‘肩’が出現する。この‘肩’が出現した際に印加していた電流値A1を肩電流値と称する。
【0058】
ここで、上述した帯電不良による‘白点’等の発生を抑えるためには、表面電位Vhが上記の一定値に達していることが必要であり、従って、交流電流値Iacが肩電流値以上となっていることが望ましい。しかし、その一方で、交流電流値Iacを大きくするほど、感光体ロール11の摩耗量は大きくなる。
【0059】
そこで、感光体ロール11の摩耗量を小さく抑えつつ帯電不良による‘白点’等の発生も抑えるためには、理想的に考えるならば、肩電流値(電流A1)に等しい値の交流電流を流しておくことが考えられる。しかし、実際の画像形成においては環境変化などによって肩電流値はばらつくため、本実施形態では、このばらつきがカバーされる程度に肩電流値を上回る電流値A2を流している。この電流値A2は、肩電流値がばらついた場合であっても、帯電不良による‘白点’等の発生が抑えられる余裕を有した上での実質的に必要最低限の電流値である。ここで、肩電流値(電流値A1)と電流値A2との差である上記の余裕のことをIacマージンと称する。
【0060】
また、グラフ上の‘肩’は、感光体ロール11の寿命がつきるまでの間に、画像形成が行なわれていくにつれてグラフ上の位置PからX方向へと移動していくという、方向性を持った経時変化を示す。即ち、肩電流値は、画像形成が行なわれていくにつれて小さくなる傾向にある。そこで、本実施形態では、一連の画像形成工程毎(1ジョブ毎)に肩電流値を求め直し、この肩電流値に対して一定のIacマージンを確保した電流値を、その時点における必要最低限の電流値として設定し直す。
【0061】
さらに、寿命となった帯電ロールを新たな帯電ロールに交換した場合にも、肩電流値が変化するため、再度肩電流値を求め、その肩電流値に対して一定のIacマージンを確保した必要最低限の交流電流値を求め直す。
【0062】
このように、肩電流値に応じた必要最低限の電流値で帯電が行われると、長期にわたり、感光体ロール11の摩耗量と帯電不良による‘白点’等との双方が抑制される。
【0063】
次に第3実施形態の帯電装置について説明する。この第3実施形態の帯電装置も、上述した第1実施形態の帯電装置20に替えて図1のプリンタ10に搭載可能な帯電装置である。
【0064】
第1実施形態の帯電装置20は、感光体ロール11に接触している帯電ロールが寿命になった場合に、この帯電ロールが有する抵抗値と同じ抵抗値を有する新たな帯電ロールに交換する帯電装置の例である。また、第2実施形態の帯電装置40は、第1実施形態の帯電装置20にさらに肩検知機能を具備した帯電装置の例である。しかし、本発明の帯電装置は、肩検知機能を具備することなく、感光体ロール11に接触している帯電ロールが寿命になった場合に、この帯電ロールが有する抵抗値よりも高い抵抗値を有する帯電ロールに交換するものであってもよい。以下、このような帯電装置である第3実施形態の帯電装置について図10を参照して説明する。
【0065】
図10は、本発明の帯電装置の第3実施形態の構成を示す図である。
【0066】
尚、第1実施形態である図3に示す帯電装置20の構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付し、異なる点について説明する。
【0067】
図10に示す帯電装置50は、図3に示す帯電装置20と比較し、第2の帯電ロール22が、第3の帯電ロール52に置き換えられている点が異なっている。
【0068】
図1に示す帯電装置20や図8に示す帯電装置40に備えられた第1,第2の帯電ロール21,22は、ともに同じ抵抗値を有する。一方、この図10に示す帯電装置50に備えられた第3の帯電ロール52は、第1,第2の帯電ロール21,22が有する抵抗値よりも高い抵抗値を有する。この帯電装置50では、感光体ロール11に接触している第1の帯電ロール21が寿命になった場合に、この第1の帯電ロール21が有する抵抗値よりも高い抵抗値を有する第3の帯電ロール52に交換される。また、この帯電装置50では、印加電圧における交流電圧成分は定電圧制御で制御されている。このため、第1の帯電ロール21を第3の帯電ロール52に交換した場合には、感光体ロール11に供給される交流電流値が減少する。このような交流電流値の減少が、前述した‘肩検知’を行なった結果の交流電流値の減少と同程度の減少となるように第3の帯電ロール52の抵抗値が設計されている。この結果、感光体ロール11の摩耗量が抑制されるとともに、帯電不良による‘白点’等の発生も抑制されることとなる。
【0069】
尚、上述した第1,第2,第3の実施形態では、本発明にいう帯電装置として、2本の帯電ロールを用いて、1本目の帯電ロールが寿命であると判定された場合に2本目の帯電ロールに交換する帯電装置20,40,50を例に挙げて説明したが、本発明にいう帯電装置は、3本の帯電ロールを用いて、1本目の帯電ロールが寿命であると判定された場合に2本目の帯電ロールに交換し、さらに2本目の帯電ロールが寿命であると判定された場合に3本目の帯電ロールに交換する帯電装置であってもよい。
【0070】
また、本実施形態では、本発明にいう画像形成装置としてプリンタを例に挙げて説明したが、本発明にいう画像形成装置は複写機やファクシミリであってもよい。
【0071】
さらに、本実施形態では、本発明にいう画像形成装置として、搬送されてきた記録用紙に、転写ロールを用いて感光体ロール上の現像像を直接転写する直接転写方式プリンタを例に挙げて説明したが、本発明にいう画像形成装置は、転写ベルトを介して現像像を記録用紙に転写する間接転写方式の画像形成装置であってもよい。
【0072】
また、本実施形態では、本発明にいう像保持体として、ロール方式を採用した感光体ロールを例に挙げて説明したが、本発明にいう像保持体は、循環ベルト方式を採用した感光体ベルトであってもよい。
【0073】
さらに、本実施形態では、本発明にいうカートリッジとして、感光体ロールと帯電装置を備えた例で説明したが、本発明にいうカートリッジは、感光体ロールと帯電装置に加えて現像器と転写ロールとのうちの1つ以上を備えてもよい。
【0074】
(実施例)
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0075】
図11は、本発明の実施例と比較例との双方の構成および評価結果を示す図である。
【0076】
図11の欄a1,a2,a3には、実施例1,2,3および比較例1,2の構成が示されている。また、図11の欄a4,a5,a6には、実施例1,2,3および比較例1,2の評価結果が示されている。先ず、実施例1,2,3の構成について説明する。
【0077】
実施例1では、図1のプリンタ10の構成を富士ゼロックス社製DocuCentreColor7550型プリンタに適用した改造機を用いて実験を行なった。ここで、欄a1に示す2本の帯電ロールは、図1に示す帯電装置20に備えられた2本の帯電ロール21,22に相当する。
【0078】
実施例2では、実施例1の帯電装置に替えて、図10に示す帯電装置50を用いた。ここで、欄a1に示す2本の帯電ロールは、図10に示す帯電装置50に備えられた2本の帯電ロール21,52に相当する。
【0079】
実施例3では、実施例1の帯電装置に替えて、図8に示す帯電装置40を用いた。ここで、欄a1に示す2本の帯電ロールは、図8に示す帯電装置40に備えられた2本の帯電ロール21,22に相当する。また、欄a3に示す肩検知機能は、図8に示す帯電装置40に備えられた帯電制御部430の役割に相当する。
【0080】
次に、比較例1,2の構成について説明する。
【0081】
比較例1では、実施例1の帯電装置に替えて、1本の帯電ロールを有する帯電装置を用いた。
【0082】
比較例2では、実施例1の帯電装置に替えて、1本の帯電ロールを有するとともに肩検知機能を有する帯電装置を用いた。
【0083】
このような改造機を用いて、低温低湿(10℃、15%RH)の環境下において画像密度5%のチャートを感光体ロールの画像形成工程数(サイクル数と記述する)で400Kサイクル数に達するまで連続してプリントした。このサイクル数は、通常の帯電ロールの寿命を越える長期のサイクル数である。400Kサイクル数のプリント後、ハーフトーン画像10%での画質評価を行なった。この評価結果が図11の欄a4,a5,a6に示されている。以下、詳細に説明する。
【0084】
欄a4には画質の状態が示されている。○印は、ハーフトーン画像上に異常が見つからない状態であったことを示す。△印は、注意して見ると異常があるが実用上は問題ない状態であったことを示す。×印は、一見して異常がわかる状態であったことを示す。
【0085】
欄a5には、帯電ロール上の汚れの有無が示されている。○印は、帯電ロール上に汚れが無かったことを示す。×印は、帯電ロール上に汚れが有ったことを示す。
【0086】
欄a6には、感光体ロールの摩耗率が示されている。この欄a6に示す○印、×印の定義は以下の定義となっている。
【0087】
○印:30nm/Kサイクル数未満(摩耗率小)
×印:30nm/Kサイクル数以上(摩耗率大)
実施例1では、帯電ロール上に汚れはなかったものの感光体ロールの摩耗率は大きかった。画質としては、微細筋はなく濃淡ムラはあるものの、実用上は問題ない状態であった。従って、帯電ロールの交換が、400Kサイクル数という長期の画質維持に貢献することが確認できた。
【0088】
実施例2では、帯電ロール上に汚れがなかった。また、感光体ロールの摩耗率も小さかった。画質としては、微細筋および濃淡ムラの双方について発生がみられず、全く問題ない状態であった。また、実施例3でも、実施例2の評価結果と同じであった。従って、実施例2で用いた高い抵抗値を有する2本目の帯電ロールが肩検知機能の役割を担ったことがわかった。
【0089】
一方、比較例1では、帯電ロール上に汚れが見られ、また感光体ロールの摩耗率も大きかった。ハーフトーン画像上の画質としては、一見して微細筋および濃淡ムラがわかる状態であった。従って、400Kサイクル数が単独の帯電ロールには過酷な長期の運用であることが確認できた。
【0090】
比較例2では、帯電ロール上に汚れがあった。また、感光体ロールの摩耗率は小さかった。画質としては、一見して微細筋がわかる状態であった。従って、肩検知機能を有していても単独の帯電ロールでは400Kサイクル数という長期では画質が維持できないことが確認できた。
【0091】
従って、これら実施例1,2,3および比較例1,2の結果からわかるように、上述した実施形態の構成をプリンタに適用すると、感光体ロールの摩耗率が小さく抑えられるとともに画質欠陥の発生が防止されることが確認された。
【符号の説明】
【0092】
10 プリンタ
11 感光体ロール
12 露光器
13 現像器
14 転写ロール
15 定着器
16 記録用紙収容部
17 用紙搬送部
20,40,50 帯電装置
21 第1の帯電ロール
22 第2の帯電ロール
23 第1のバネ部材
24 第2のバネ部材
30 カートリッジ
52 第3の帯電ロール
131 現像剤収容体
132 現像ロール
151 定着ロール
152 圧力ロール
230,430 帯電制御部
230a 支持部材
231 帯電ロール用電源
232 抵抗検知器
233 部材制御部
234 アクチュエータ制御部
235 第1のアクチュエータ
235a コイル部
235b 鉄心部
236 第2のアクチュエータ
237 モータ制御部
238 モータ
240 交換機構
438_1 電圧印加部
438_2 交流決定部
438_3 電流検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧が印加され被帯電部材に接触して該被帯電部材に電荷を付与する帯電部材と、少なくとも1つ以上の被帯電部材に接触せず該被帯電部材に電荷を付与していない帯電部材とを有し、
前記被帯電部材に接触している帯電部材の抵抗値を検知する抵抗検知器と、
前記抵抗検知器により検知された抵抗値が予め決められた高抵抗状態に達している場合に、前記被帯電部材に接触している帯電部材を、前記電荷を付与していない帯電部材のうちのひとつの帯電部材と交換する交換機構とを備えたことを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記帯電部材が、電流及び又は電圧の直流と交流が重畳されて印加されるものであり、
前記被帯電部材に接触している帯電部材にダミーの交流成分を複数強度で印加し、該被帯電部材における帯電量を直接又は間接に検出し、該帯電量の検出結果に基づいて、該帯電部材に印加されるべき交流成分値を決定する交流決定部と、
前記交流決定部で決定された交流成分値を用いて前記帯電部材に電流及び又は電圧の直流と交流を重畳して印加する印加部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の帯電装置。
【請求項3】
前記複数の帯電部材が、互いに抵抗値の異なるものであり、
前記交換機構が、前記被帯電部材に接触している帯電部材を、該帯電部材よりも抵抗値が高い別の帯電部材に交換するものであることを特徴とする請求項1記載の帯電装置。
【請求項4】
表面に像が形成されて該像を保持する像保持体と、
電圧が印加され前記像保持体に接触して該像保持体に電荷を付与する帯電部材と、少なくとも1つ以上の被帯電部材に接触せず該被帯電部材に電荷を付与していない帯電部材とを有し、
前記像保持体に接触している帯電部材の抵抗値を検知する抵抗検知器と、
前記抵抗検知器により検知された抵抗値が予め決められた高抵抗状態に達している場合に、前記像保持体に接触している帯電部材を、前記電荷を付与していない帯電部材のうちのひとつの帯電部材と交換する交換機構とを備えたことを特徴とするカートリッジ。
【請求項5】
表面に像が形成されて該像を保持する像保持体と、
電圧が印加され前記像保持体に接触して該像保持体に電荷を付与する帯電部材と、少なくとも1つ以上の被帯電部材に接触せず該被帯電部材に電荷を付与していない帯電部材とを有し、
前記帯電部材により帯電された前記像保持体の表面に像を形成する像形成部と、
前記像保持体に接触している帯電部材の抵抗値を検知する抵抗検知器と、
前記抵抗検知器により検知された抵抗値が予め決められた高抵抗状態に達している場合に、前記像保持体に接触している帯電部材を、前記電荷を付与していない帯電部材のうちのひとつの帯電部材と交換する交換機構とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−204470(P2010−204470A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51007(P2009−51007)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】