説明

帯電装置、画像形成装置、帯電装置の制御方法、制御プログラム、及び当該制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】放電が起こりにくい状況であっても、必要なイオン量を安定して供給することができる帯電装置を提供する。
【解決手段】二次転写前帯電装置3では、画像形成制御部42または温度・湿度センサ41により、二次転写前帯電装置3の状態に関する状態情報が取得される。そして、この取得された状態情報に基づき、電圧制御部33が、放電電極22と誘導電極23との間への印加電圧の条件を設定あるいは変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられ、像担持体上に形成された静電潜像をトナーによって現像し、これを印字媒体上に転写定着させる画像形成プロセスにおける帯電装置、およびそれを備える画像形成装置等に関するものである。更に詳しくは、誘電体の表裏に放電電極と誘導電極とを配置し、両者間に高圧交番電圧を印加して沿面放電を生じさせ、所望極性のイオンを取り出して、被帯電体(例えば感光体)を帯電させたり、像担持体(例えば感光体や中間転写体)上のトナー像を転写対象物(例えば中間転写体や記録紙)への転写前に帯電させたりする帯電装置、画像形成装置、帯電装置制御方法、制御プログラム、及び当該制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置においては、感光体を帯電させる帯電装置、感光体等に形成されるトナー像を記録用紙等に静電的に転写させる転写装置、感光体等に静電的に接触する記録用紙等を剥離させる剥離装置などに、コロナ放電方式の帯電装置がよく用いられている。
【0003】
このようなコロナ放電方式の帯電装置としては、一般に、感光体や記録用紙等の被帯電物に対向する開口部を有するシールドケースと、このシールドケース内部に張設される線状あるいは鋸歯状の放電電極とを備えている。そして、放電電極に高電圧を印加することでコロナ放電を発生させて被帯電物を一様に帯電させる所謂コロトロンや、放電電極と被帯電物との間にグリッド電極を設け、このグリッド電極に所望の電圧を印加することで被帯電物を一様に帯電させる所謂スコロトロンなどが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このコロナ放電方式の帯電装置を、中間転写体や記録紙等の転写媒体に転写する前のトナー像を帯電するための転写前帯電装置に利用したものが、例えば特許文献2、3に開示されている。特許文献2,3に開示された技術によれば、像担持体に形成されたトナー像内に帯電量のばらつきがあっても、転写前にトナー像の帯電量を均一にするので、トナー像を転写するときの転写余裕度の低下を抑え、トナー像を転写媒体に安定して転写することができる。
【0005】
しかしながら、上述した従来の帯電装置は複数の問題を抱えている。第一に、帯電装置として放電電極のみならずシールドケースやグリッド電極等が必要である。また、放電電極と帯電対象物との間一定の距離(10mm)を確保する必要がある。そのため、帯電装置を設置するためのスペースが多く必要となる。一般に一次転写部周辺には現像装置や一次転写装置、二次転写部前には感光体や二次転写装置等が配置されており、転写前帯電装置を配置するためのスペースは少ない。そのため、従来のコロナ放電方式の帯電装置ではレイアウトが非常に困難となる、といった問題がある。
【0006】
また第二に、従来のコロナ放電方式の帯電装置では、オゾン(O)や窒素酸化物(NOx)等の放電生成物が大量に生成される、という問題がある。オゾンが大量に生成されると、オゾン臭の発生、人体に対する有害な影響、強い酸化力による部品劣化等の問題を引き起こす。また、窒素酸化物が生成されると、窒素酸化物が感光体にアンモニウム塩(硝酸アンモニウム)として付着し、異常画像の原因になるといった問題が生じる。特に、通常用いられている有機感光体(OPC)は、オゾンやNOxによりシロ抜けや像流れ等の画像欠陥を生じやすい。
【0007】
このようなことから、転写部位が複数存在するような中間転写方式のカラー画像形成装置では、全ての転写部位(複数の一次転写部位、および二次転写部位)の上流に転写前帯電装置を設けることは、転写前にトナー像の帯電量を均一にする点から好ましいものの、実際上、オゾンやNOxの発生量の問題から困難であった。
【0008】
また、オゾンレス化の目的で、近年、感光体自体を帯電する帯電装置として、導電性ローラや導電性ブラシによる接触帯電方式が採用されてきている。しかし、接触帯電方式によってトナー像を乱さずに帯電させることは困難である。従って、転写前帯電装置には、非接触のコロナ放電方式のものを用いることになる。だが、接触帯電方式を搭載した画像形成装置に従来のコロナ放電方式による転写前帯電装置を設けた場合、オゾンレスという特徴は発揮されない。
【0009】
なお、オゾン発生量を低減させるための技術として、例えば特許文献4には、ほぼ一定のピッチで所定の軸方向に並べられた多数の放電電極と、放電電極に放電開始電圧以上の電圧を印加するための高圧電源と、高圧電源の出力電極と放電電極との間に設置された抵抗体と、放電電極と近接し該放電電極と被帯電物との間の位置に設置されたグリッド電極と、グリッド電極にグリッド電圧を印加するためのグリッド電源とを備え、放電電極とグリッド電極とのギャップを4mm以下にすることで放電電流を低減してオゾン発生量を低減する帯電装置が開示されている。
【0010】
しかしながら、特許文献4に開示された技術では、放電電流を低減することによってオゾン発生量を低減することはできるものの、それでもなおオゾンの低減量が十分でなく、1.0ppm程度のオゾンが発生してしまう。また、放電生成物やトナー、紙粉等が放電電極に付着したり、放電エネルギーによって放電電極の先端が磨耗・劣化したりすることにより、放電が不安定になるという別の問題もある。さらに、放電電極の形状から放電電極に付着した放電生成物やトナー、紙粉等をクリーニングするのが困難である。
【0011】
その上、放電電極と被帯電物とのギャップが狭いために、複数の放電電極のピッチに起因する長手方向(放電電極のピッチ方向)の帯電ばらつきが生じやすいという問題もある。ここで、帯電ばらつきを解消するために放電電極ピッチを小さくすることが考えられるが、その場合には放電電極数が増えて製造コストが増大してしまう。
【0012】
上記のような従来の帯電装置の課題を解決するため、例えば特許文献5には、誘電体を間に介して、外周辺に尖頭形の凸部を備えた放電電極と誘導電極とを配設し、この電極間に高圧交番電圧を印加することでイオンを発生させる(以後、このタイプの帯電方式を沿面放電方式と称する)イオン発生素子(沿面放電素子)を備えた帯電装置が開示されている。この沿面放電方式の帯電装置は、シールドケースやグリッド電極等がないため小型である。また、放電面がフラットであることからクリーニングがしやすく、メンテナンス性にも優れている。また、特許文献6には、沿面放電方式を用いた帯電装置で、安定する帯電が行えるよう、温度と湿度の環境情報に基づいてイオン発生器近傍の温度を制御する装置が開示されている。
【特許文献1】特開平6−11946号公報(公開日:1994年1月21日)
【特許文献2】特開平10−274892号公報(公開日:1998年10月13日)
【特許文献3】特開2004−69860号公報(公開日:2004年3月4日)
【特許文献4】特開平8−160711号公報(公開日:1996年6月21日)
【特許文献5】特開2003−249327(公開日:2003年9月5日)
【特許文献6】特開2004−157447(公開日:2004年6月3日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、沿面放電方式の帯電装置でのイオン発生量のバラつきは温度以外の条件でも影響するため、特許文献6に記載された技術のように温度制御を行うだけでは安定した放電特性が得られないとうい問題がある。
【0014】
本発明は上記問題に鑑み、その目的は、高湿環境条件や、各電極の経時劣化後であっても、つまり、放電が起こりにくい状況であっても、必要なイオン量を安定して供給することができる帯電装置、画像形成装置、帯電装置制御方法、制御プログラム、及び当該制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の帯電装置は、上記課題を解決するために、放電電極と誘導電極とが誘電体を挟んで対向して設けられており、上記放電電極と上記誘導電極との間に交番電圧を印加して、沿面放電を発生させることで取り出されるイオンによって被帯電物質を帯電させる帯電装置であって、当該帯電装置の使用されている状態を示す状態情報を取得する状態情報取得手段と、上記状態情報取得手段が得た状態情報に基づき、上記放電電極と上記誘導電極との間へ印加する交番電圧である印加電圧の条件を設定あるいは変更する電圧制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0016】
上記構成によると、帯電装置の状態情報に応じて、上記放電電極と上記誘導電極との間への印加電圧を設定あるいは変更できる。よって、例えば高湿環境条件や各電極の経時劣化後といった、放電が起こりにくくイオン発生量が少なった場合でも、それに対応させて印加電圧を変えることで、そのときの帯電に必要なイオン量を供給することができる。また、帯電装置が備えつけられる画像形成装置の印字モード、特に速度変化を伴う場合には、単位時間当たりの供給イオン量を変化させる必要があるが、このような場合にも、本発明の上記構成により、必要なイオン量を供給できるように動作させることができる。よって、常に帯電に必要なイオン量を安定して供給することができる。
【0017】
なお、帯電装置の状態情報とは、例えば、帯電装置の周囲の温度・湿度、帯電装置の使用期間、帯電装置が帯電する被帯電物の移動速度が挙げられるが、帯電装置の使用されている状態を示す情報であれば、どのような情報であっても構わない。
【0018】
本発明に係る帯電装置では、上記状態情報取得手段が、上記状態情報として当該帯電装置の使用環境の温度および湿度を検知し取得する手段である場合、上記電圧制御手段は、上記温度および湿度に基づき、上記印加電圧の絶対値の最大値を設定あるいは変更してもよい。
【0019】
上記構成によると、帯電装置の使用環境の温度および湿度に基づき、印加電圧の絶対値の最大値を設定あるいは変更する。よって、帯電装置の使用されている環境の温度および湿度が変化しても、それに対応させて印加電圧の条件を変更することで、必要なイオン量を安定して供給することができる。
【0020】
高湿環境では、印加電圧値自体を上げないと放電が安定しない場合がある。なお、放電しにくい条件では、周波数を上げてもイオン量は増えにくい。ここで、印加電圧を上げるとオゾン発生量は増加する傾向にあるが、高湿環境ではオゾンは発生しにくいため、本発明の上記構成を用いることの実用上問題とならない。逆に低湿環境では放電はしやすくなるが、オゾンが発生しやすくなるが、本発明の上記構成により、印加電圧を下げることで適正なイオン量供給と、オゾン発生量軽減を行うことができる。
【0021】
本発明に係る帯電装置では、上記被帯電物が当該帯電装置に対して移動するものであり、上記状態情報取得手段が、上記状態情報として上記被帯電物の移動速度を取得する手段である場合、上記電圧制御手段は、上記移動速度に基づき、上記印加電圧の周波数を設定あるいは変更してもよい。
【0022】
被帯電物の移動速度によって、所定の電荷量を与えるのに必要なイオン電流値(単位時間当たりの供給イオン量)は異なる。印加電圧(印加電圧値自体)を変化させても供給イオン量を制御できるが、印加電圧を上げると素子の劣化が進みやすく、また下げると放電自体が不安定になる懸念がある。しかし、本発明に係る帯電装置では、上記構成によって、被帯電物の移動速度情報に基づき印加電圧の周波数を設定あるいは変更することができるため、同一の環境条件、または同一の経時使用条件(同一の使用期間)ならば、同じ印加電圧で周波数を変化させることで供給イオン量を制御することができる。よって、安定にイオンを発生できかつ、無用な劣化を抑えることができ、帯電装置の長寿命化にも寄与できる。
【0023】
本発明に係る帯電装置では、上記状態情報取得手段が、上記状態情報として当該帯電装置の使用期間情報を取得する手段である場合、上記電圧制御部は、当該帯電装置の使用期間の増大に応じて上記印加電圧の周波数を増加させ、当該周波数が一定値以上になると上記印加電圧の絶対値の最大値を増加させてもよい。
【0024】
上記構成によると、帯電装置の使用期間情報に基づき、使用期間が増大した場合には、印加電圧の周波数を増加させ、この周波数が一定値以上になると印加電圧の絶対値の最大値を増加させる。上記使用期間情報としては、例えば、帯電装置あるいは帯電装置が取り付けられている画像形成装置の累積使用時間や、累積印刷枚数等を利用した情報であってもよい。
【0025】
ここで、装置を使用することによる劣化(ライフ劣化)に対しては、放電が安定して行われている環境条件にあるならば、周波数増加によりイオン量を増加させ、周波数設定の上限に達した後、印加電圧を上げてイオン発生量を補正するほうが望ましい。これは、不要な印加電圧の増加は装置の寿命を縮める恐れがあるからである。本発明に係る帯電装置は、上記構成のように、先に周波数を上げて、劣化により従来の印加電圧では安定して放電できなくなった際に印加電圧増加を行うため、装置の長寿命化に有効である。
【0026】
本発明に係る画像形成装置は、静電潜像担持体を帯電させる帯電装置として、上記いずれかの帯電装置を、備えることを特徴としている。
【0027】
静電潜像担持体を帯電させる装置に本発明の帯電装置を用いることで、静電潜像担持体を安定した帯電量で適切に帯電させることができる。また、さらに本発明の帯電装置は、沿面放電方式を利用しているためコンパクトな画像形成装置を提供できる。
【0028】
また、本発明に係る画像形成装置は、担持体上に担持されたトナーに電荷を与える転写前帯電用の帯電装置として、上記いずれかの帯電装置を備えることを特徴としている。
【0029】
転写前帯電用の帯電装置として本発明の帯電装置を用いることで、転写前のトナーに対して好適に適切に帯電することができ、転写効率の向上や、転写均一性の向上を図ることができる。さらに本発明の帯電装置は、沿面放電方式を利用しているためコンパクトであるので、転写前トナーの帯電を限られたスペースで行うことができ、画像形成装置の縮小化を図ることができる。
【0030】
本発明に係る帯電装置の制御方法は、放電電極と誘導電極とが誘電体を挟んで対向して設けられており、上記放電電極と上記誘導電極との間に交番電圧を印加して、沿面放電を発生させることで取り出されるイオンによって被帯電物質を帯電させる帯電装置の制御方法であって、上記帯電装置の状態に関する状態情報を取得する状態情報取得ステップと、上記状態情報取得ステップで得た情報に基づき、上記放電電極と上記誘導電極との間への印加電圧の条件を設定あるいは変更する電圧制御ステップと、を含むことを特徴としている。
【0031】
上記方法によると、放電が起こりにくい状況であっても、必要なイオン量を安定して供給することができ、上記した本発明に係る帯電装置と同様の効果を奏する。
【0032】
なお、上記帯電装置をコンピュータによって実現してもよい。この場合には、上記いずれかの帯電装置の電圧制御手段としてコンピュータを機能さるための制御プログラム、また、それを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に含まれる。
【0033】
上記制御プログラムおよび上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体も、上記した帯電装置と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の帯電装置は、以上のように、帯電装置の使用されている状態を示す状態情報を取得する状態情報取得手段と、上記状態情報取得手段が得た状態情報に基づき、上記放電電極と上記誘導電極との間へ印加する交番電圧である印加電圧の条件を設定あるいは変更する電圧制御手段とを備えている。
【0035】
上記構成によると、帯電装置の状態情報に応じて、上記放電電極と上記誘導電極との間への印加電圧を設定あるいは変更できる。よって、例えば高湿環境条件や各電極の経時劣化後といった、放電が起こりにくくイオン発生量が少なった場合でも、それに対応させて印加電圧を変えることで、そのときの帯電に必要なイオン量を供給することができる。また、帯電装置が備えつけられる画像形成装置の印字モード、特に速度変化を伴う場合には、単位時間当たりの供給イオン量を変化させる必要があるが、このような場合にも、本発明の上記構成により、必要なイオン量を供給できるように動作させることができる。よって、常に帯電に必要なイオン量を安定して供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の帯電装置およびこれを備えた画像形成装置についての一実施形態を、図1〜9に基づいて具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0037】
まず、本実施形態における画像形成装置の全体構成について説明する。図2は、本実施形態の画像形成装置100の概略構成を示す断面図である。この画像形成装置100は、いわゆるタンデム式で、かつ、中間転写方式のプリンタであり、フルカラー画像を形成できる。
【0038】
図2に示すように、画像形成装置100は、4色(C・M・Y・K)分の可視像形成ユニット50a〜50d、転写ユニット40、及び定着装置14を備えている。
【0039】
転写ユニット40は、中間転写ベルト15(トナー像担持体)と、この中間転写ベルト15の周囲に配置された4つの一次転写装置12a〜12d、二次転写前帯電装置3、二次転写装置16、及び転写用クリーニング装置17を備えている。
【0040】
中間転写ベルト15は、可視像形成ユニット50a〜50dによって可視化された各色のトナー像が重ね合わせて転写されるとともに、転写されたトナー像を記録紙Pに再転写するためのものである。具体的には、中間転写ベルト15は無端状のベルトであり、一対の駆動ローラ及びアイドリングローラによって張架されているとともに、画像形成の際には所定の周速度(本実施形態では83.5〜225mm/s)に制御されて搬送駆動される。
【0041】
一次転写装置12a〜12dは、可視像形成ユニット50a〜50dごとに設けられており、感光体ドラム7の表面に形成されたトナー像とは逆極性のバイアス電圧が印加されることにより、トナー像を中間転写ベルトへ転写する。それぞれの一次転写装置12a〜12dは、対応する可視像形成ユニット50a〜50dと中間転写ベルト15を挟んで反対側に配置されている。
【0042】
二次転写前帯電装置3は、中間転写ベルト15に重ね合わせて転写されたトナー像を再帯電させるためのものであり、詳細については後述するが、本実施形態では、イオンを放出することによってトナー像を帯電させる。
【0043】
二次転写装置16は、中間転写ベルト15上に転写されたトナー像を、記録紙Pに対して再転写する装置であり、中間転写ベルト15に接して設けられている。転写用クリーニング装置17は、トナー像の再転写が行われた後の中間転写ベルト15の表面をクリーニングする装置である。
【0044】
なお、転写ユニット40の中間転写ベルト15の周囲には、中間転写ベルト15の搬送方向上流から一次転写装置12a〜12d、二次転写前帯電装置3、二次転写装置16、転写用クリーニング装置17の順で各装置が配置されている。
【0045】
二次転写装置16の記録紙P搬送方向下流側には、定着装置14が設けられている。定着装置14は、二次転写装置16によって記録紙P上に転写されたトナー像を記録紙Pに定着させる装置である。
【0046】
また、中間転写ベルト15には、4つの可視像形成ユニット50a〜50dがベルトの搬送方向に沿って接して設けられている。4つの可視像形成ユニット50a〜50dは、用いるトナーの色が異なっている点以外は同一構成であり、それぞれ、イエロー(Y)・マゼンタ(M)・シアン(C)・ブラック(K)のトナーが用いられる。以下では、可視像形成ユニット50aのみについて説明し、その他の可視像形成ユニット50b〜50dについては説明を省略する。これに伴い、図2では、可視像形成ユニット50aにおける部材しか図示していないが、他の可視像形成ユニット50b〜50dも可視像形成ユニット50aと同様の部材を有している。
【0047】
可視像形成ユニット50aは、感光体ドラム(像担持体)7と、この感光体ドラム7の周りに配置された潜像用帯電装置4、レーザ書き込みユニット(図示せず)、現像装置11、一次転写前帯電装置2、クリーニング装置13などを備えている。
【0048】
潜像用帯電装置4は、感光体ドラム7の表面を所定の電位に帯電させる装置である。潜像用帯電装置4の詳細については後述するが、本実施形態では、潜像用帯電装置4から放出するイオンによって感光体ドラムを帯電させる。
【0049】
レーザ書き込みユニットは、外部装置から受信した画像データに基づいて、感光体ドラム7にレーザ光を照射(露光)し、均一に帯電された感光体ドラム7上に光像を走査して静電潜像を書き込むものである。
【0050】
現像装置11は、感光体ドラム7の表面に形成された静電潜像にトナーを供給し、静電潜像を顕像化してトナー像を形成するものである。
【0051】
一次転写前帯電装置2は、感光体ドラム7の表面に形成されたトナー像を転写前に再帯電させるためのものである。一次転写前帯電装置2の詳細については後述するが、本実施形態では、イオンを放出することによってトナー像を帯電させる。
【0052】
クリーニング装置13は、中間転写ベルト15にトナー像を転写した後の感光体ドラム7上に残留したトナーを除去・回収して感光体ドラム7上に新たな静電潜像およびトナー像を記録することを可能にするものである。
【0053】
なお、可視像形成ユニット50aの感光体ドラム7の周囲には、感光体ドラム7の回転方向上流から、潜像用帯電装置4、レーザ書き込みユニット、現像装置11、一次転写前帯電装置2、一次転写装置12a、クリーニング装置13の順で各装置が配置されている。
【0054】
次に、画像形成装置100の画像形成動作について説明する。可視像形成ユニットの動作については、上記した可視像形成ユニット50aの構成部材(参照符号がふられているもの)を用いて説明するが、可視像形成ユニット50b〜50dでも同様の動作が行われる。
【0055】
まず、画像形成装置100は、図示しない外部装置から画像データを取得する。また、画像形成装置100の図示しない駆動ユニットが、感光体ドラム7を図2に示した矢印の方向に所定の速度(本実施形態では83.5〜225mm/s)で回転させるとともに、潜像用帯電装置4が感光体ドラム7の表面を所定の電位に帯電させる。
【0056】
次に、取得した画像データに応じてレーザ書き込みユニットが感光体ドラム7の表面を露光し、感光体ドラム7の表面に上記画像データに応じた静電潜像の書き込みを行う。続いて、感光体ドラム7の表面に形成された静電潜像に対して、現像装置11がトナーを供給する。これにより、静電潜像にトナーを付着させてトナー像が形成される。
【0057】
このようにして感光体ドラム7の表面に形成されたトナー像を、一次転写前帯電装置2が再帯電させる。そして、一次転写装置12aに感光体ドラム7の表面に形成されたトナー像とは逆極性のバイアス電圧が印加されることにより、一次転写前帯電装置2により再帯電させられたトナー像を中間転写ベルトへ転写する(一次転写)。
【0058】
可視像形成ユニット50a〜50dが上記動作を順に行うことにより、中間転写ベルト15には、Y,M,C,Kの4色のトナー像が順に重ね合わされる。
【0059】
重ねあわされたトナー像は、中間転写ベルト15によって二次転写前帯電装置3まで搬送され、搬送されたトナー像に対して、二次転写前帯電装置3が再帯電を行う。そして、再帯電が行われたトナー像を担持する中間転写ベルト15を、二次転写装置16が図示しない給紙ユニットから給紙された記録紙Pに対して圧接し、トナーの帯電とは逆極性の電圧が印加されることにより、記録紙Pにトナー像が転写される(二次転写)。
【0060】
その後、定着装置14がトナー像を記録紙Pに定着させ、画像の記録された記録紙Pが図示しない排紙ユニットに排出される。なお、上記の転写後に感光体ドラム7上に残存したトナーは、クリーニング装置13によって、また、中間転写ベルト15上の残存したトナーは転写用クリーニング装置17によって除去・回収される。
【0061】
なお、画像形成処理での印字速度(被帯電物の移動速度)は、画像形成装置100の操作パネルでのユーザによる入力や、使用する用紙Pの種類などによって、画像形成制御部42により設定される。また、画像形成制御部42によって、累積使用時間や累積印刷枚数が計測されているものとする。さらに、温度・湿度センサ41により、画像処理が行われる環境の温度および湿度が検知される。
【0062】
以上の動作により、画像形成装置100は、記録紙Pに適切な印刷を行うことができる。
【0063】
次に、転写前帯電装置の構成について詳細に説明する。上述した一次転写前帯電装置2、潜像用帯電装置4、二次転写前帯電装置3は、設置される位置が異なっている点以外は同一であり、同じ構成の装置となっている。なお、潜像用帯電装置4では、帯電電位を制御するためのグリッド電極を以下で説明するイオン発生素子(沿面放電素子)1と感光体ドラム7との間に配置してもよい。このグリッド電極の位置は感光体ドラム7からは約1mm程度、イオン発生素子1からは2〜10mm程度隔てて配置するのがよい。以下では、二次転写前帯電装置3の詳細を説明し、一次転写前帯電装置2および潜像用帯電装置4については詳細な説明を省略する。
【0064】
図1は、中間転写ベルト15近傍に配置されている二次転写前帯電装置3の全体システム図、図3(a)は二次転写前帯電装置3の有するイオン発生素子1の側面図であり、図3(b)は二次転写前帯電装置3の有するイオン発生素子1の正面図である。
【0065】
図1に示すように、二次転写前帯電装置3は、イオン発生素子1、対向電極31、高圧電源32、電圧制御部(電圧制御手段)33を備えている。
【0066】
イオン発生素子1は、誘電体21、放電電極22、誘導電極23、コート層(保護層)24を有しており、放電電極22と誘導電極23との間の電位差に基づいて発生する放電(放電電極22付近で誘電体21の沿面方向に生じるコロナ放電)により、イオンを発生させる。
【0067】
誘電体21は略長方形状の上部誘電体21aと下部誘電体21bとを貼り合わせた平板状で構成されている。誘電体21の材料としては、有機物であれば耐酸化性に優れた材料が好適である。例えばポリイミドまたはガラスエポキシ等の樹脂を使用することができる。また、誘電体21の材料として無機物を選択するのであれば、マイカ集製材やアルミナ、結晶化ガラス、フォルステライト、ステアタイト等のセラミックを使用することができる。なお、耐食性の面を考えれば、誘電体21の材料として無機系のもののほうが望ましく、さらに成形性や後述する電極形成の容易性、耐湿性の低さ等を考えれば、セラミックを用いて成形するのが好適である。また、放電電極22と誘導電極23との間の絶縁抵抗が均一であることが望ましいため、誘電体21の材料内部の密度バラツキが少なく、誘電体21の絶縁率が均一であればあるほど好適である。誘電体26の厚みは、50〜250μmが好ましいが、この数値に限定はされない。
【0068】
放電電極22は誘電体21(上部誘電体21a)の表面に誘電体21と一体的に形成されている。放電電極22の材料としては、例えばタングステンや銀、ステンレスのように導電性を有するものであれば、特に制限なく使用することができる。ただし、放電によって溶融や飛散する等の変形を起こさないものであることが条件となる。放電電極22は誘電体21の表面からの深さ(誘電体21の表面より誘導電極23側に放電電極22を設ける場合)、あるいは厚み(誘電体21の表面より突出して放電電極22を設ける場合)が、均一であるほうが望ましい。なお、本実施形態では、放電電極22の材料としてタングステン及びステンレスを使用する。
【0069】
放電電極22の形状は、中間転写ベルト15の移動方向と直交する方向に均一に伸びた形状であればいずれの形状であってもよい。ただし、誘導電極23との電界集中が起こりやすい形状とするほうが、放電電極22と誘導電極23との間に印加する電圧が低くても、上記両電極間で放電させることができるので、できればそのほうが望ましい。本実施形態では、放電電極22の形状は、図3(b)に示すような櫛歯状となっており、放電を起こしやすくしている。
【0070】
誘導電極23は、誘電体21の内部(上部誘電体21aと下部誘電体21bとの間)に形成され、放電電極22に対向して配置される。これは、放電電極22と誘導電極23との間の絶縁抵抗は均一であることが望ましく、放電電極22と誘導電極23とは並行であることが望ましいからである。このような配置により、放電電極22と誘導電極23との距離(以下、電極間距離と称する)が一定となるので、放電電極22と誘導電極23との間の放電状態が安定し、イオンを好適に発生させることが可能となる。この構成では、放電電極22と誘導電極23とが上部誘電体21aを挟んで対向して配置されている。なお、誘導電極23は、誘電体21を1層として、誘電体21の裏面に設けても問題ないが、この場合は、誘電体の表面を伝って、放電電極22と誘導電極23とがリークしないよう、印加電圧に対し十分な沿面距離を確保するか、或いは放電電極22や誘導電極23を絶縁性のコート層(保護層)で被覆する必要がある。
【0071】
誘導電極23の材料としては、放電電極22と同様に、例えばタングステンや銀、ステンレスのように導電性を有するものであれば、特に制限なく使用することができる。本実施形態では、誘導電極23の材料としてタングステン及びステンレスを用いる。誘導電極の形状については後述するが、その一端にはヒータ電源34が接続され、もう一端はグランドに接続されている。そして、ヒータ電源34により誘導電極23に所定の電圧(ここでは12V)が印加されることで、誘導電極23がジュール熱により発熱するよう構成されている。このように、誘導電極23を発熱させることで、誘電体21が昇温(本実施例では約60℃)し、誘電体21の吸湿を抑制することができ、高湿環境下でも安定してイオンを発生させることができる。誘電体21がセラミックの場合、誘電体21自体は吸湿しないものの、誘電体21の表面が結露すると、放電特性が低下することから、ヒータの発熱より結露を防止、或いは結露を解消することは有効である。
【0072】
なお、放電電極22および誘導電極23は、銅、金、ニッケル等にてメッキされていることが望ましい。メッキすることで、電極としてのライフが延びると共に強度を高めることができる。
【0073】
コート層24は、放電電極22を覆うように誘電体21上に形成されるものであり、例えばアルミナ(酸化アルミニウム)やガラス、シリコン等で形成されている。
【0074】
ここで、イオン発生素子1の製造方法について説明するが、製造方法は以下の方法、数値に限定されることはない。まず、厚さ0.2mmのアルミナシートを所定の大きさ(例えば、幅8.5mm×長さ320mm)に切断し、2つの略同一の大きさを有するアルミナの基材を形成し、これらを上部誘電体21a及び下部誘電体21bとする。次に、上部誘電体21aの上面に、櫛歯状にタングステンをスクリーン印刷し、放電電極22を上部誘電体21aと一体成形する。一方、下部誘電体21bの上面に、U字状にタングステンをスクリーン印刷し、誘導電極23を下部誘電体21bと一体成形する。さらに、上部誘電体21aの表面に、放電電極22を覆うようにアルミナのコート層24を形成して、放電電極22を絶縁コートする。そして、上部誘電体21aを介して放電電極22と誘導電極23とが対向するように、上部誘電体21aの下面と下部誘電体21bの上面とを重ね合わせた後、圧着を行う。その後、これを炉に入れて1400〜1600℃の非酸化性雰囲気で焼成する。このようにして、本実施形態のイオン発生素子1を容易に製造することができる。なお、焼成前シートの圧着の順番や回数は、放電電極印刷前でも良いし、コート層形成前後でも構わない。
【0075】
対向電極31は、本実施形態ではステンレス製の板状形状となっており、中間転写ベルト15を介してイオン発生素子1と対向する位置に、中間転写ベルト15の裏面側(トナー像が形成されない側)に密着するよう配置される。そして、対向電極電源35を介してグランドに接続されている。
【0076】
対向電極電源35は、対向電極31に所定の電圧を印加する構成となっている。ここで、対向電極電源35には、帯電に必要な放電電流が供給されているかを確認するため、電流計が取り付けられている。具体的には1〜100kΩ程度の抵抗を対向電極31と接地電位との間に挿入し、その間の電圧を検出することで電流量を測定する。しかし、使用条件変化によるイオン発生素子1の放電特性変化が分かっている場合、このような回路は省略することも可能である。
【0077】
このような対向電極電源35は、放電電極22からの放電を生じ易くするために配されるものであり、対向電極31の電位を変化させることで、イオン発生素子1近傍で発生したイオンの取り出し量を変化させることができる。しかし必ずしも必要なものではなく、省略することができる。
【0078】
高圧電源(電圧印加回路)32は、電圧制御部33の制御により、イオン発生素子1の放電電極22と誘導電極23との間に図4に示すような電圧を供給するようになっている。印加電圧はVpp:2〜4kV、オフセットバイアスVdcは−1〜−2kV、周波数fは500〜2kHzのパルス波が用いられる。パルス波のDutyは高圧側時間が10〜50%となるようになっている。VppとVdcとを適宜設定することで、最大電圧V2を任意に設定可能としており、イオン発生素子1の特性および使用環境に応じて安定した放電を行えるように設定可能である。なお、印加電圧の波形は正弦波でも構わない、放電の効率、特に高湿条件での放電性能を考慮すると、パルス波の方が良好である。
【0079】
上記の構成の高圧電源32を動作させ、放電電極22と誘導電極23との間に交流高電圧を印加すると、放電電極22と誘導電極23との間の電位差に基づいて、放電電極22近傍で沿面放電(コロナ放電)が起こる。これにより、放電電極22の周囲の空気をイオン化することでマイナスイオンを発生させ、中間転写ベルト15上のトナー像を所定の帯電量(ここでは約−30μC/g)に帯電させる。
【0080】
また、高圧電源32は電圧制御部33に接続されている。電圧制御部(電圧制御手段)33は、高圧電源の印加電圧の大きさ、周波数を制御するものである。具体的には、電圧制御部33は、上記画像形成制御部(状態情報取得手段)42より設定される、画像形成時の状態に関する条件(使用期間、移動速度)を参照し、または、上記温度・湿度センサ(状態情報取得手段)41が検知した温度および湿度の値を参照し、交番電圧の周波数や振幅(以下Vpp)や、DCオフセットバイアス(以下Vdc)を制御する。つまり、電圧制御部33は、帯電装置(ここでは、二次転写前帯電装置3)の使用されている状態を示す状態情報により、交番電圧の条件を設定あるいは変更を行う。電圧制御部33は、例えば、上記状態情報と交番電圧(印加電圧)の条件(大きさ、周波数)とを対応づけたテーブルをもっており、これを参照に交番電圧の条件を設定あるいは変更を行うようになっていてもよい。
【0081】
電圧制御部33からの制御信号が高圧電源32に送られ、イオン発生素子1に交番電圧が印加される。このように、高圧電源32の印加電圧の条件を、二次転写前帯電装置3の使用されている状態(画像形成時の状態)に基づいて制御することにより、イオン発生素子1の環境条件の変化、経時変化、あるいは、画像形成装置100の印字速度の変化に対して、常に最適な量のイオンをトナー像に供給できる。
【0082】
なお、本実施形態では、図1に示すように、二次転写前帯電装置3に、画像形成制御部42の、印字速度についての設定部、累積使用時間や累積印刷枚数が計測部、および、湿度・温度センサ41が、二次転写前帯電装置3の使用されている状態を示す状態情報を取得する状態情報取得手段として、含まれるものとする。また、電圧制御部33が画像形成制御部42に含まれていてもよい。
【0083】
次に、電圧制御部33が行う帯電装置(ここでは、二次転写前帯電装置3)の使用されている状態について、具体的に説明する。
【0084】
(印字時の環境が変化した場合)
印字時の環境条件(温度および湿度)が変化した場合について、図5−8を用いて説明する。図5は印字時の環境条件が変化した場合の、印加電圧の条件の変更方法(制御方法)について説明するための説明図である。
【0085】
ここでは印字時の環境条件が変化した場合についての変更について説明する。高温高湿(HH)環境下では、イオン発生素子1表面の水分量が多く、沿面抵抗が低下する傾向にある。そのため、電圧を印加しても表面水分による時定数の影響で、放電電極22と誘電体21との間の電位差が十分に大きくならず、放電が不安定となる場合がある。前述のようにヒータを作用させて水分除去を行うことによりある程度の効果はある。しかし、放電均一性なども考慮すると不十分である。そこで、図6の(b)に示す常温常湿の標準的環境状態から、図6の(c)に示すようにDCオフセットバイアスVdcの絶対値を増加させ、最大電圧V2の絶対値を高めることで、誘電体21電位(誘導電極23電位)との電位差を大きくして放電を安定化させることが可能となる。
【0086】
一方、低温低湿(LL)環境では、上記とは逆に放電が起こりやすい。そのため、不必要に印加電圧を大きくすると、オゾン発生を促進したり、イオン発生素子1のダメージが大きくなったりする懸念がある。そのため、図6の(a)に示すようにVdcの絶対値を下げて、V2の絶対値を低くすることで、必要なイオン量が得られる設定にすると好適である。なお、上記の高温高湿環境下では、オゾン発生が起こりにくいことと、放電電極22と誘電体21間の実質的な電位差が小さめになるために、イオン発生素子1への電気的なダメージが少なく、印加電圧が増大することの弊害は、実用上問題とならない。Vdcを可変にすることは、比較的簡易な回路構成でかつ低コストにできる点で有用である。
【0087】
また、印加電圧の条件の変更方法としては、上記Vdcの変更以外に、図7に示すように交番電圧振幅Vppを変化させても良い。この場合、図7の(c)に示す常温常湿の標準的環境状態から、HH環境では図7の(c)に示すようにVppを大きく、LL環境では図7の(a)に示すようにVppを小さく設定することで、Vdcを変更した場合と同様の効果が得られる。Vppを変更させるメリットは、V2の増加による放電電極22から誘電体21への放電と、逆側の放電、すなわち放電により誘電体21上に乗った電荷が再び放電電極22側へ移動する放電が活発に起こるため、発生イオン量をより効果的に増大させることができることである。
【0088】
さらに別の変更方法として、図8のように、上記のVdcの変更とVppの変更とを組み合わせても良い。この場合のメリットは、イオン発生量自体を変化させるだけでなく、中心電位であるVdcが変化しているため、対向電極31とのバイアス電界を任意に設定でき、発生イオンを対向電極31へ導く量も制御できることである。
【0089】
(被帯電物の移動速度が変化した場合)
電圧制御部33の行う制御に関して、印字条件のうち、印字速度、すなわち被帯電物(ここではトナー像)の移動速度が変化した場合について説明する。ある任意の環境条件や帯電装置の使用履歴においては、放電を安定させる条件は印加電圧値でほぼ決まる。ここで、被帯電物の移動速度が異なるときは、単位時間当たりの供給イオン量を変化させる必要がある。しかし、印加電圧値自体を上げると素子の劣化を促進する恐れがあり、印加電圧値を下げると放電が不安定になる。そのため、印加電圧自体は変化させず、印加電圧の周波数を変化させることで対応するのが望ましい。図9に周波数を変化させた場合の一例を示す。図9の(b)は、印字速度が中程度(例えば167mm/s)の場合の周波数であるとする。印字速度が高速条件(例えば225mm/s)では図9の(c)のように、図9の(b)と比べて印加電圧値自体は変化させず周波数を高め、逆に低速条件(例えば83.5mm/s)では図9の(a)のように、図9の(b)と比べて印加電圧値自体は変化させず周波数を下げるように制御すればよい。
【0090】
(デバイス特性変化があった場合の制御)
電圧制御部33の行う制御に関して、ライフ劣化時、すなわち経時によるデバイス特性変化時について説明する。
【0091】
長期の使用により、誘電体21の劣化や、放電生成物の付着、各電極の磨耗などによってイオン発生素子1が劣化し、放電能力が低下していく。比較的軽度の劣化の場合は、印加電圧の周波数を増加させることで必要イオン量を発生させることができる。逆に、印加電圧自体を大きくする設定を、劣化の初期、つまり使用の早期に行うと、イオン発生素子1に電気的なダメージを与え、劣化を早めてしまう恐れがある。しかしながら、使用期間が増大し、劣化度合いが進行すると、同じ印加電圧値では放電が安定しなくなる場合がある。このような場合には、印加電圧値自体を上げて、放電を起こしやすくする対応が必要である。
【0092】
そこで、本実施形態では、使用期間情報を取得し、使用期間の増大に応じて上記印加電圧の周波数を増加させ、当該周波数が一定値以上になると上記印加電圧の絶対値の最大値を増加させる。なお、上記使用期間情報としては、例えば、累積使用時間を測定結果あるいは、累積印刷枚数を計測結果、から取得することができる。
【0093】
図5のライフ補正の矢印はこのような補正方法を表したものである。ここで、一定の周波数までしか上げない理由の一つに、高圧電源の性能面の制約がある。すなわち、高周波まで対応させる場合、コストやスペースが増大するからである。また電圧の立ち上がり特性の観点から、高周波になると波形の鈍りが大きくなり、所望の印加電圧波形を与えられなくなるからである。よって、使用する高圧電源32の特性に応じて、周波数補正をどこまで行うのかを適宜設定すればよい。また、使用するデバイス(帯電装置)の特性によっても、周波数補正をどこまで行い、電圧補正をどのように行うのかは異なるため、そのデバイスの寿命や特性に応じて適宜設定すればよい。
【0094】
以上では、印字時の諸条件の変化時、被帯電物の移動速度の変化時、ライフ劣化時の場合の制御について説明したが、もちろん、上記した各制御を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0095】
ここで、二次転写前帯電装置3の電圧制御部33は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。つまり、二次転写前帯電装置3は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである二次転写前帯電装置3の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記二次転写前帯電装置3に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0096】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0097】
また、二次転写前帯電装置3を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0098】
以上、本発明に係る帯電装置の構成および制御方法について、二次転写前帯電装置3を用いて説明した。本発明に係る帯電装置を、一次転写前帯電装置2あるいは潜像用帯電装置4として利用する場合も、基本的に、構成および制御方法は二次転写前帯電装置3と同じである。ただし、二次転写前帯電装置3の場合、被帯電物は中間転写ベルトのトナー像であるが、潜像用帯電装置4の場合は、感光体ドラムが被帯電物となる。また、一次転写前帯電装置2の場合は、感光体ドラム7上のトナー像が被帯電物となる。また、一次転写前帯電装置2、潜像用帯電装置4では、対向電極31は設けられない。また、上記したように、潜像用帯電装置4の場合、感光体ドラム7との間にグリット電極を設けてもよい。
【0099】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0100】
また、本明細書で示した数値範囲以外であっても、本発明の趣旨に反しない合理的な範囲であれば、本発明に含まれることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、電子写真方式を用いる画像形成装置において、感光体や中間転写体などの像担持体上に形成されるトナー像を転写前に帯電させるための転写前帯電や、感光体を帯電させる潜像用帯電、或いは現像装置内のトナーの帯電を補助するトナーの予備帯電等を行う帯電装置として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明に係る帯電装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の要部構成を示す説明図である。
【図3】(a)は本発明に係る帯電装置の有するイオン発生素子の側面図、(b)は本発明に係る帯電装置の有するイオン発生素子の正面図である。
【図4】印加電圧の一例を示す図である。
【図5】印字時の環境条件が変化した場合の、印加電圧の条件の変更についての説明図である。
【図6】DCオフセットバイアスの絶対値を変更させたときの印加電圧を示す図である。
【図7】交番電圧振幅を変更させたときの印加電圧を示す図である。
【図8】DCオフセットバイアスの絶対値の変更と交番電圧振幅の変更とを組み合わせたときの印加電圧を示す図である。
【図9】周波数を変更させたときの印加電圧を示す図である。
【符号の説明】
【0103】
1 イオン発生素子
2 一次転写前帯電装置(帯電装置)
4 潜像用帯電装置(帯電装置)
3 二次転写前帯電装置(帯電装置)
7 感光体
15 中間ベルト
21 誘電体
21a 上部誘電体
21b 下部誘電体
22 放電電極
23 誘導電極
24 カバー層
31 対向電極
32 高圧電源
33 電圧制御部(電圧制御手段)
34 ヒータ電源
35 対向電極電源
41 温度・湿度センサ(状態情報取得手段)
42 画像形成制御部(状態情報取得手段)
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と誘導電極とが誘電体を挟んで対向して設けられており、上記放電電極と上記誘導電極との間に交番電圧を印加して、沿面放電を発生させることで取り出されるイオンによって被帯電物質を帯電させる帯電装置であって、
当該帯電装置の使用されている状態を示す状態情報を取得する状態情報取得手段と、
上記状態情報取得手段が得た状態情報に基づき、上記放電電極と上記誘導電極との間へ印加する交番電圧である印加電圧の条件を設定あるいは変更する電圧制御手段とを備えたことを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
上記状態情報取得手段が、上記状態情報として当該帯電装置の使用環境の温度および湿度を検知し取得する手段である場合、
上記電圧制御手段は、上記温度および湿度に基づき、上記印加電圧の絶対値の最大値を設定あるいは変更することを特徴とする請求項1記載の帯電装置。
【請求項3】
上記被帯電物が当該帯電装置に対して移動するものであり、
上記状態情報取得手段が、上記状態情報として上記被帯電物の移動速度を取得する手段である場合、
上記電圧制御手段は、上記移動速度に基づき、上記印加電圧の周波数を設定あるいは変更することを特徴とする請求項1または2に記載の帯電装置。
【請求項4】
上記状態情報取得手段が、上記状態情報として当該帯電装置の使用期間情報を取得する手段である場合、
上記電圧制御部は、当該帯電装置の使用期間の増大に応じて上記印加電圧の周波数を増加させ、当該周波数が一定値以上になると上記印加電圧の絶対値の最大値を増加させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の帯電装置。
【請求項5】
静電潜像担持体を帯電させる帯電装置として、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の帯電装置を、備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
担持体上に担持されたトナーに電荷を与える転写前帯電用の帯電装置として、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の帯電装置を、備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
放電電極と誘導電極とが誘電体を挟んで対向して設けられており、上記放電電極と上記誘導電極との間に交番電圧を印加して、沿面放電を発生させることで取り出されるイオンによって被帯電物質を帯電させる帯電装置の制御方法であって、
上記帯電装置の状態に関する状態情報を取得する状態情報取得ステップと、
上記状態情報取得ステップで得た情報に基づき、上記放電電極と上記誘導電極との間への印加電圧の条件を設定あるいは変更する電圧制御ステップと、
を含むことを特徴とする帯電装置の制御方法。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の帯電装置の電圧制御手段としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の制御プログラムを記録した、コンピュータ読取可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−14784(P2009−14784A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173381(P2007−173381)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】