説明

帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】円周振れを有する被帯電体(感光体等)を用いながらも、被帯電体と帯電部材のギャップの変動による被帯電体の帯電ムラを低減することができる帯電部材を提供する。
【解決手段】本発明は、被帯電体1に対して電気的に非接触で配置され、直流電圧を重畳した交流電圧を印加することにより被帯電体1を帯電する帯電部材において、回転可能なローラ(帯電ローラ)13で構成され、画像形成域内での円周振れが4μm〜80μmの被帯電体1に対して電気的に非接触で配置され、前記ローラ13の表面には高低差が2〜30μmの複数の段差を有し、前記被帯電体1との対向域における前記段差が、前記ローラ13の周方向の距離0.5mmに対して5〜30本存在することを特徴としており、これにより帯電ムラのない帯電が可能な帯電部材と、それを用いた帯電装置、画像形成装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材と該帯電部材を備えた帯電装置、少なくとも像担持体と帯電部材を備えたプロセスカートリッジ、前記帯電部材または帯電装置あるいはプロセスカートリッジを有する画像形成部を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置においては、例えば像担持体である感光体に対して帯電工程、露光工程、現像工程を行うことにより可視像を形成した後、感光体上の可視像を転写工程により転写媒体に転写し、転写媒体に転写された可視像を定着工程により定着して画像形成が行われる。
【0003】
ここで、前記帯電工程では、被帯電体である感光体を帯電するために、従来からスコロトロン帯電器が用いられてきたが、近年では、環境問題からオゾン、窒素酸化物(NOx)等の有害ガスの発生が少なく、装置を小型にすることができる帯電ローラが帯電部材として用いられている。帯電ローラを帯電に用いた場合の帯電機構では、感光体と帯電ローラとの間隔が狭すぎると放電が起らず、パッシェン則ではその空隙は8μmとなっているが、実際には帯電ローラおよび感光体の容量成分が存在するため、20μm以上で放電が開始し、空隙が20μm以上では空隙が広くなればなるほど放電の密度は小さくなる。
【0004】
従来、帯電ローラの抵抗に部分的にムラがある場合には、抵抗値の低い部分に電荷が集中し、局所的に過大電流が流れ帯電ムラが生じるため、抵抗の均一性が望まれている。また、帯電ローラ表面の凹凸に関しては、凸の部分で放電が集中しやすいため表面粗さが小さいものが望まれてきた。感光体と帯電ローラを接触して用いるいわゆる接触帯電においては、放電はニップから少し外側に外れた領域の空隙が20μm以上になったところで起る。帯電ローラに直流電圧を印加して帯電を行う場合、感光体を所定の電位まで帯電させるために、帯電ローラ上の各点から感光体へ放電するチャンスは、パッシェン則に沿う空隙幅を通過する瞬間の1回の正放電のみであるから、帯電ローラ表面に凹凸があると、その凹凸に対応した帯電電位ムラが生じてしまうため、帯電ローラと感光体の相対位置を一定に保てる平滑な帯電ローラが求められてきた。
【0005】
一方、帯電時に帯電ローラに直流電圧に交流電圧を重畳した場合は、周波数に応じて正負放電を繰り返し、帯電電位は印加した直流電圧の値で平衡になるため、必ずしも帯電ローラ表面の形状は平滑である必要性はなくなる。例えば特許文献1(特開2000−75701号公報)では、帯電ローラと感光体とを接触させ帯電を行う画像形成装置において、感光体と帯電ローラの間に凹凸が存在すると、ニップ内に微小空間が形成され放電が発生するため積極的に帯電ローラ表面に凹凸をつけることが検討されている。
しかし、帯電ローラ表面に大きな凹凸をつけた場合、感光体と帯電ローラが接触しているので感光体を傷つける可能性があるため、短期的な感光体の使用ではよいが、感光体の耐久性を考慮すると、帯電ローラは表面が平滑なものの方がやはり好ましい。
【0006】
また、帯電ローラと感光体が接触した状態で画像形成を行うと、転写後の残トナーが完全にクリーニングできていないと、帯電ローラと感光体の間に残トナーが挟まり、帯電ローラに付着して抵抗にバラツキが生じ、感光体の帯電電位のバラツキとなり、画像濃度ムラを引き起こす原因になっていた。そのため特許文献2(特開2004−264792号公報)、特許文献3(特開2002−108059号公報)、特許文献4(特開2005−4000号公報)のように、感光体と帯電ローラの間にギャップを設けて感光体を帯電させる、いわゆる非接触帯電が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−75701号公報
【特許文献2】特開2004−264792号公報
【特許文献3】特開2002−108059号公報
【特許文献4】特開2005−4000号公報
【特許文献5】特開昭52−36016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、放電はギャップの大きさにより発生する密度が変わるため、接触帯電に対して、非接触帯電においては感光体と帯電ローラの間のギャップを正確に制御する必要がある。そのため、従来、非接触帯電においては帯電ローラの表面形状は平滑なものが理想とされてきた。この帯電工程においては、帯電ローラに直流電圧を印加すると同時に交流電圧を重畳して感光体を目標の電圧に帯電させる。帯電ローラに直流電圧に交流電圧を重畳した場合、帯電ローラおよび感光体間で周波数に応じて正負放電を繰り返し感光体の帯電電位は直流電圧の値に平衡化する。このときの帯電のパラメータとしては、印加する交流の電圧と周波数、帯電ローラの抵抗ムラ、感光体の抵抗ムラ、感光体と帯電ローラのギャップとそのギャップのバラツキがある。ギャップのバラツキがある場合、放電密度がギャプにより変化し帯電ムラが起る。
【0009】
ギャップのバラツキが発生する原因として、感光体および帯電ローラの寸法精度、組み付け精度、振動(振れ)が挙げられる。このうち、感光体および帯電ローラの寸法精度は、作製条件を適切なものにすることによってギャップのバラツキには支障ない精度まで上げることが可能である。特に感光体は浸漬塗工の条件を検討することで塗工ムラを数μm以下にすることが可能である。また、組み付け精度についても、スプリングの強度や帯電ローラまたは感光体支持部材の精度を上げることで放電密度のバラツキが問題にならない程度のバラツキを低減することは可能である。
【0010】
一方、感光体の振動(振れ)の低減は非常に困難である。すなわち、感光体の振動(振れ)を抑えるためには、感光体の素管は金属円筒で構成されているので、アルミニウム等の円筒の素管を厚くしたり、円筒の素管やフランジの精度を極限まで高め、且つ円筒の素管とフランジの組み付け精度を上げる必要がある。しかし、感光体に占める素管のコストは非常に高いため、感光体の素管には肉厚のものを使用することはできない。また、一般にフランジはプラスチックで、感光体は金属であり、円筒の素管にフランジを圧入しているため、感光体ドラムとフランジの組み付け精度には限界があり、通常は円周振れが平均10μm程度のものしかできない。特に振れの小さい感光体のみを選別したりフランジを金属にするなどして、振れを最小限にすることも可能であるが、これらの方法では感光体のコストが非常に高いものとなってしまう。ここで、帯電ローラにおいても振れは起るが、帯電ローラは外径が小さい円柱の金属で構成されているため感光体のフレに対して帯電ローラの振れは無視できる。
【0011】
振れがある感光体を帯電する際に、帯電ローラに印加する交流電圧の周波数を大きくすれば、放電頻度が高くなり感光体の帯電電位を均一にすることは可能である。
しかしながら、周波数を大きくしすぎると、感光体および帯電ローラの劣化のスピードが早くなるため、できるだけ周波数は低く設定したい。
【0012】
以上のように、帯電ムラをできるだけ起こさないようにするために、帯電ローラと感光体間のギャップのバラツキの発生原因である、感光体および帯電ローラの寸法精度、組み付け精度を上げ、振動(振れ)を小さくすることは重要であるが、従来技術では感光体の製造コストが高くなってしまうため、低コストで感光体や帯電ローラの劣化を抑え、帯電ムラを低減することは大きな課題となっていた。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされてものであり、従来では感光体等の被帯電体の帯電ムラを無くすためにはコストの高い極力振れのない被帯電体を用いる必要があったが、本発明では、帯電ムラを無くすという課題に対して、コストの安い、多少の振れを有する被帯電体を用いながらも、被帯電体と帯電部材のギャップの変動による被帯電体の帯電ムラを、被帯電体や帯電部材の寿命を短くすることなく低減することができる帯電部材を提供すること目的としている。
【0014】
そして本発明は、前記帯電部材を用いて被帯電体の帯電ムラを低減することができる帯電装置や、前記帯電部材を用いたプロセスカートリッジを提供することを目的とし、さらには、その帯電装置またはプロセスカートリッジを用いて画像濃度ムラを低減した高画質な画像形成装置やカラー画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するため、本発明では以下のような手段を採っている。
本発明の第1の手段は、被帯電体に対して電気的に非接触で配置され、直流電圧を重畳した交流電圧を印加することにより前記被帯電体を帯電する帯電部材において、回転可能なローラで構成され、画像形成域内での円周振れが4μm〜80μmの被帯電体に対して電気的に非接触で配置され、前記ローラの表面には高低差が2〜30μmの複数の段差を有し、前記被帯電体との対向域における前記段差が、前記ローラの周方向の距離0.5mmに対して5〜30本存在することを特徴とする(請求項1)。
【0016】
本発明の第2の手段は、第1の手段の帯電部材において、前記被帯電体との対向域内における該被帯電体とのギャップが、帯電部材と被帯電体が静止している状態で平均10〜150μmであることを特徴とする(請求項2)。
また、本発明の第3の手段は、第1または第2の手段の帯電部材において、前記ローラの表面の段差は、長さ400μm以上連続し、前記ローラの長手方向をX軸として連続する段差をそれぞれXY平面に抜き出してプロットし、該段差を最小二乗法による直線近似したときの相関係数が0.9以下、傾きが−0.5〜0.5であることを特徴とする(請求項3)。
さらに本発明の第4の手段は、第1乃至第3のいずれか一つの手段の帯電部材において、前記ローラの表面に連続した段差が存在し、連続する段差を前記ローラの長手方向をX軸としてXY平面に抜き出してプロットする際のサンプリング回数が、段差1本当たり10点以上であることを特徴とする(請求項4)。
【0017】
本発明の第5の手段は、被帯電体に対して電気的に非接触で配置された帯電部材と、該帯電部材に電圧を印加する電源とを備え、前記帯電部材に直流電圧を重畳した交流電圧を印加することにより前記被帯電体を帯電する帯電装置において、前記帯電部材として、第1乃至第4のいずれか一つの手段の帯電部材を用いたことを特徴とする(請求項5)。
また、本発明の第6の手段は、第5の手段の帯電装置において、前記帯電部材に印加する交流電圧の周波数が800Hz〜2000Hzであることを特徴とする(請求項6)。
【0018】
本発明の第7の手段は、画像形成装置に用いるプロセスカートリッジであって、第1乃至第4のいずれか一つの手段の帯電部材もしくは第5または第6の手段の帯電装置の帯電部材と、被帯電体である像担持体の少なくとも2つを、1つのカートリッジ内に一体的に組付けたことを特徴とする(請求項7)。
【0019】
本発明の第8の手段は、被帯電体である像担持体と、該像担持体を帯電する帯電手段と、前記像担持体に画像を形成する手段とを有する画像形成部を備えた画像形成装置において、前記帯電手段として、第1乃至第4のいずれか一つの手段の帯電部材もしくは第5または第6の手段の帯電装置を備えたことを特徴とする(請求項8)。
また、本発明の第9の手段は、被帯電体である像担持体と、該像担持体を帯電する帯電部材と、前記像担持体に画像を形成する手段とを有する画像形成部を備えた画像形成装置において、前記画像形成部に第7の手段のプロセスカートリッジを用いたことを特徴とする(請求項9)。
さらに本発明の第10の手段は、第8または第9の手段の画像形成装置において、前記画像形成部の画像形成可能な最高な解像度が1000dpi以上であることを特徴とする(請求項10)。
【0020】
本発明の第11の手段は、第8乃至第10のいずれか一つの手段の画像形成装置において、前記画像形成部を複数並設したことを特徴とする(請求項11)。
また、本発明の第12の手段は、第11の手段の画像形成装置において、前記複数の画像形成部で色の異なる画像を形成し、各色の画像を転写媒体に転写してカラー画像を形成することを特徴とする(請求項12)。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、被帯電体に対して電気的に非接触で配置され、直流電圧を重畳した交流電圧を印加することにより前記被帯電体を帯電する帯電部材において、回転可能なローラで構成され、画像形成域内での円周振れが4μm〜80μmの被帯電体に対して電気的に非接触で配置され、前記ローラの表面には高低差が2〜30μmの複数の段差を有し、前記被帯電体との対向域における前記段差が、前記ローラの周方向の距離0.5mmに対して5〜30本存在することを特徴としており、これにより帯電ムラのない帯電が可能な帯電部材と、それを用いた帯電装置を提供することができる。
そして、前記帯電部材または帯電装置を像担持体の帯電手段として用いることにより、帯電ムラのない高画質な画像形成が可能で、安価で且つ像担持体及び帯電部材の酸化劣化が遅く交換頻度の少ないプロセスカートリッジや画像形成装置を提供することができる。
【0022】
さらに本発明によれば、帯電部材の被帯電体との対向域内における該被帯電体とのギャップが、帯電部材と被帯電体が静止している状態で平均10〜150μmであることを特徴としているので、残トナーが帯電部材と被帯電体(像担持体)の間に挟まることによって発生する帯電バラツキや帯電ムラの問題を回避でき、これにより異常画像の問題が回避され、高画質な画像形成が可能なプロセスカートリッジや画像形成装置を提供することができる。
【0023】
また、本発明によれば、前記帯電部材のローラ表面の段差は、長さ400μm以上連続し、前記ローラの長手方向をX軸として連続する段差をそれぞれXY平面に抜き出してプロットし、該段差を最小二乗法による直線近似したときの相関係数が0.9以下、傾きが−0.5〜0.5であることを特徴としているので、被帯電体との対向域(画像形成域)の全体に亘って人の目には認識できない程度まで帯電ムラをなくすことができる。従って、高画質な画像形成を達成でき、低コストで且つ像担持体及び帯電部材の酸化劣化が遅く交換頻度の少ないプロセスカートリッジや画像形成装置を提供することができる。
【0024】
さらにまた、本発明によれば、前記帯電部材のローラ表面に連続した段差が存在し、連続する段差を前記ローラの長手方向をX軸としてXY平面に抜き出してプロットする際のサンプリング回数が、段差1本当たり10点以上であることを特徴としているので、帯電部材の厳密な評価が可能になり、異常画像のない高画質なプロセスカートリッジや画像形成装置を提供することができる。
【0025】
以上のように、本発明によれば、像担持体及び帯電部材の酸化劣化が遅く、交換頻度の少ないプロセスカートリッジや画像形成装置を提供することができ、さらには、酸化性ガスの発生が少なく、環境に優しい高画質な画像形成装置を提供することができる。
そして、本発明によれば、高解像度の画像が形成可能で、高画質、高品質な画像形成装置やカラー画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して詳細に説明する。
本発明者らは、被帯電体である像担持体として、コストの安い、多少振れを有する感光体を用いたとき、感光体とローラ状の帯電部材(以下、帯電ローラと言う)のギャップの変動による、放電のムラ及びそれに伴う感光体の帯電ムラを、感光体や帯電ローラの寿命を短くすることなく如何にして解決するか、という課題を解決するため、感光体と帯電ローラのギャップ変動について詳細に観察した結果、感光体の振れは微細に振動するのではなく、才差運動のように緩やかに振れているため、帯電ローラの表面形状が均一なものであると、ギャップは緩やかに変動することになり、帯電ムラは感光体の周方向に間隔を持ってゆっくりと周期的に生じやすくなり、それに伴う画像の濃度ムラは人の目に気づきやすいものとなるということがわかった。
【0027】
感光体の振れは前述のように感光体のコストの関係で抑えることはできないため、帯電ローラの形状でギャップムラを解消できないものか本発明者らは検討を重ね、帯電ローラ周方向に段差を存在させると放電の起る強さが段差の前後で微妙に変化するため、段差の数が一定以上になれば感光体のフレに伴う緩やかな帯電ムラを解消できることを見出して本発明に到った。
すなわち本発明は、被帯電体(感光体)に対して電気的に非接触で配置され、直流電圧を重畳した交流電圧を印加することにより前記被帯電体(感光体)を帯電する帯電部材において、回転可能なローラで構成され、画像形成域内での円周振れが4μm〜80μmの被帯電体(感光体)に対して電気的に非接触で配置され、前記ローラの表面には高低差が2〜30μmの複数の段差を有し、前記被帯電体(感光体)との対向域における前記段差が、前記ローラの周方向の距離0.5mmに対して5〜30本存在することを特徴とするものである。
【0028】
より具体的に述べると、本発明の画像形成装置に用いる帯電ローラの表面には、複数の段差があり、段差の高低差は2〜30μm、好ましくは3〜20μm、さらに好ましくは4〜15μmである。段差が2μm以下では、段差によってギャップのバラツキを緩和する効果が現れないため好ましくなく、30μm以上では、帯電ローラの段差の最も凹んだ部分は感光体との距離が大きすぎて放電が起き難くなり、その部分も放電を生じさせるためには、帯電ローラに印加する交流の電圧を大きくする必要があり、あまり大きくしすぎると、オゾンの発生量が多くなってしまうため好ましくない。
【0029】
本発明の画像形成装置に用いる帯電ローラの段差は、段差が急激に高低差を持つ幅が10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは0.1〜3μm以下の間で高低差2〜30μmを構成していることが好ましい。
【0030】
本発明の画像形成装置に用いる帯電ローラの表面の一例を図1(a)に示す。図1(a)は、本発明の画像形成装置に用いる帯電ローラの中央部の表面を、三次元走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、SEM像として取り込んだ後、高低差2〜30μmの段差を全て抜き出したものである。図1(a)の水平方向は帯電ローラ長手方向(軸方向)を示し、垂直方向は帯電ローラ周方向を示している。ローラ表面の段差はつながっている必要はないが、つながっていることにより段差が偏在しにくくなる点から、段差はつながっている方がより好ましい。図1(a)の長手方向に垂直な0.5mmの長さの線を引き、周方向0.5mmの長さの線に対して交差する段差の数を数える。この周方向に作図した線を長手方向に走査してそれぞれの箇所の段差の数を数える。図1(b)は、図1(a)の段差の本数に関して、長手方向に走査して数えた場合の帯電ローラの周方向の距離0.5mm当たりの段差の数の推移を示す。図1(a)の帯電ローラの段差の本数は11本から15本まで推移する。同様の方法で、該帯電ローラの両端から50mm内側部分について段差の本数を数えたところ、左端から内側50mm部分で10〜15本、右端から内側50mm部分で11〜16本であった。
【0031】
本発明の帯電ローラ表面の段差の数は5〜30本、好ましくは6〜25本、さらに好ましくは7〜20本の範囲であると効率がよい。段差を有する頻度が周方向の距離0.5mmに対して5本未満になると、帯電ムラを吸収する効果が顕著に現れないため好ましくなく、段差を有する頻度が周方向の距離0.5mmに対して30本以上になると、ローラ表面に欠陥が生じやすく、欠陥部が帯電ムラとなってしまうため好ましくない。
【0032】
本発明の画像形成装置における帯電ローラの周方向の段差の数は、理想的には帯電ローラ表面全体に渡って周方向の距離0.5mmの本数を数えることが好ましいが、帯電ローラ表面に段差が偏在していない限り、帯電ローラ表面の一部の領域内の段差の数を数えれば良く、帯電ローラ表面の一部の領域内について周方向の距離0.5mmに対して抜き出した段差の本数を3〜10箇所数えれば良い。
【0033】
本発明の画像形成装置装置に用いる感光体と帯電ローラは電気的に非接触であり、感光体と帯電ローラのギャップは平均で10〜150μm、好ましくは14〜100μm、さらに好ましくは18〜60μmである。感光体と帯電ローラのギャップの平均が10μm以下では、感光体と帯電ローラが近接しすぎてクリーニングしきれなかったトナーが感光体と帯電ローラとの間に挟まり、筋状の異常画像が発生しやすくなるため好ましくない。また、感光体と帯電ローラのギャップの平均が150μm以上の場合、放電を生じさせるためには、帯電ローラに印加する交流の電圧を大きくする必要があり、電流の電圧を大きくしすぎると、オゾンの発生量が多くなってしまうため好ましくない。
【0034】
本発明の画像形成装置に用いる感光体の画像形成域内での円周振れは4〜80μm、好ましくは7〜50μm、さらに好ましくは8〜30μmである。感光体の円周振れが4μm以下では、感光体の製造コストが非常に高くなってしまうという点で好ましくなく、80μm以上では振れが大きすぎるために、感光体と帯電ローラが激しく接触してしまい感光体を傷つけたり、感光体と帯電ローラが近接しすぎてクリーニングしきれなかったトナーが感光体と帯電ローラとの間に挟まり、筋状の異常画像が発生しやすくなるため好ましくない。
なお、本発明において円周振れとは、JIS B 0621の「半径方向の円周振れ」の定義に従い、感光体の画像形成域での円周振れを測定し、その中で最も大きな値とする。しかし、一般的に感光体の振れは、両端部に近いほど大きくなる傾向にあるため、図8に示すように、感光体の両端(両端とはフランジ部分を含まず、素管の両端)から30mmの2点(X,Y)について測定し、2点(X,Y)での「半径方向の円周振れ」を比較したときの大きい方の値を採用しても構わない。円周振れの測定には、非接触寸法測定装置(株式会社ミツトヨ製、レーザースキャンマイクロメーター)を用い、感光体表面を測定した。また、測定は感光体にフランジを組み付けた状態で行った。
【0035】
帯電ローラ表面の連続する段差の直線性及び傾きによって、発生する人の目に気づきやすい周期的な帯電ムラの吸収及び緩和の機能が大きく異なってくるため、直線性や傾きは規定しておく必要がある。そこで本発明では、ローラ表面の段差について、帯電ローラ長手方向をX軸方向として、XY平面に抜き出した任意のX(Xn)におけるX軸からの距離Ynをサンプリング点数が10点以上になるような間隔でサンプリングしてプロットし、段差を最小二乗法による直線近似したときの相関係数及び傾きを規定する。
【0036】
連続する段差をXY平面に抜き出したときのプロット点の集合は、完全な直線の場合、人の目に気づきやすい周期的ムラとなってしまうため、連続する段差は緩やかに蛇行したものがよく、蛇行の程度はプロット点を最小二乗法によって直線近似したときの相関係数は0.9以下(0以外)、好ましくは0.4以下(0以外)、さらに好ましくは0.1以下(0以外)がよい。
相関係数が0.9以上の場合、直線性が高すぎるため、周期的ムラの緩和に寄与しなくなるため好ましくない。
【0037】
XY平面に抜き出された蛇行した線が、全て長手方向に角度を持たずに伸びている場合にも、人の目に気づきやすい周期的ムラを生じやすいため、連続する段差は角度を持っているものがよく、傾きの程度は、段差を最小二乗法によって直線近似したときの傾きが−0.5〜0.5、好ましくは−0.3〜0.3、さらに好ましくは−0.1〜0.1がよい。傾きが−0.5以下の場合または0.5以上の場合は、周方向のムラができやすくなってしまうため好ましくない。本発明の段差は少なくとも100μm、好ましくは400μmの長さに渡って連続して存在している。
【0038】
本発明の画像形成装置に用いる帯電ローラに印加する交流電圧の周波数は、感光体の線速や、画像形成装置の解像度により適宜選択されるものであるが、特に800〜2000Hzが好ましく、更に好ましくは900〜1700Hz、更に好ましくは1000〜1600Hzが良い。交流電圧の周波数が800Hz以下の場合、帯電ムラが顕著になるため好ましくなく、交流電圧の周波数が2000Hz以上の場合、帯電ローラ及び感光体の劣化が加速するため好ましくない。
【0039】
本発明の画像形成装置においては、モノクロ画像形成、カラー画像形成どちらにおいても高品質の画像形成が可能であるが、特に高品質の画像形成を要求されるカラー画像形成において効果が高く、高品質の画像形成を行いながら、感光体及び帯電ローラの寿命を大幅に伸ばすことができる。本発明の画像形成装置がカラー画像形成可能の場合には、1本の感光体を用い、その感光体上に各色のトナーを現像後、転写媒体(中間転写体あるいは転写紙等の転写材)へ順次、各色の感光体上のトナー像を転写して画像形成を行う方法、または感光体をトナーの色の数用い、各色のトナーを別個の感光体上に現像し、転写媒体(中間転写体あるいは転写紙等の転写材)へ転写して画像形成を行う所謂タンデム型の画像形成装置のどちらにおいても、優れた性能を有する。タンデム型の画像形成装置においては、帯電に伴うオゾン等の酸化性ガスの発生を抑えるためには、帯電ローラによる帯電工程を取る必要があり、本発明の画像形成装置に用いる帯電工程は、帯電条件が緩やかであるため、酸化性ガスの発生量は特に少ない。そのため本発明の画像形成装置は、高画質で高信頼性の画像形成が可能なだけでなく、環境にも優しい優れた画像形成装置である。
【0040】
本発明の帯電ローラを用いた画像形成装置の帯電工程について、図面をもってさらに詳細に説明する。
図2は本発明の一実施形態を示す画像形成装置の概略構成図である。ここに示した画像形成装置100は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの少なくとも2つの機能を備えた複合機などとして構成される。図示していない本体筐体内には、被帯電体となる像担持体の一例である感光体1が配置され、この感光体1は、ドラム状の導電性支持体2の外周面に感光層3が積層された感光体より成る。なお、このようなドラム状の感光体に代えて、複数のローラに巻きかけられて走行駆動されるベルト状の感光体や、誘電体より成るドラム状又はベルト状の感光体を用いることもできる。
【0041】
感光体1の周囲には、電子写真プロセスによる画像形成を行うための帯電装置5、露光装置6、現像装置7、転写装置8、クリーニング装置12、除電装置4が配設されている。また、図示を省略するが、転写装置8の転写材搬送方向上流側には、転写紙P等の転写材を転写部(感光体1と転写装置8の対向部(転写ニップとも言う))に給紙する給紙装置(給紙カセット、給紙ローラ、レジストローラ等)が設けられており、転写装置8の転写材搬送方向下流側には定着装置9と、図示しない排紙装置(排紙ローラ、排紙トレイ等)が設けられている。
【0042】
画像形成動作時には、感光体1は図2における時計方向に回転駆動され、その表面が図中の矢印A方向に移動する。このとき感光体表面に除電装置(例えば除電ランプ)4からの光が照射され、その表面が初期化され、次いで帯電装置5の帯電ローラ13によって感光体表面が所定の極性に帯電される。帯電装置5については後に詳しく説明する。
【0043】
帯電装置5によって帯電された感光体表面には、露光装置6の一例であるレーザ走査式の書き込みユニット(あるいは発光ダイオード(LED)アレイ等を用いた書き込みユニット)から出射する光変調された光束Lが照射され、これによって感光体表面に静電潜像が形成される。次いで、この静電潜像は、現像装置7を通るとき、所定の極性に帯電されたトナーによって、トナー像として可視像化される。
【0044】
一方、感光体1に対置された転写装置(例えば転写ローラ)8と感光体1との間の転写部に、所定のタイミングで、図示しない給紙装置により例えば転写紙より成る転写材Pが給送され、このとき感光体上に形成されたトナー像が転写材P上に静電的に転写される。トナー像を転写された転写材Pは、引き続き定着装置9の定着ローラ10と加圧ロ―ラ11の間を通り、このとき熱と圧力の作用によってトナー像が転写材上に定着され、定着画像が得られる。一方、転写材に転写されずに感光体表面に残された転写残トナーは、クリーニング装置12によって除去され、クリーニング後の感光体表面は除電装置4により除電される。
【0045】
帯電装置5は、移動する被帯電体面(図示した例では感光体)1の表面に対向配置された帯電ローラ13と、その帯電ローラ13に電圧を印加する電源14とを有している。この電源14により、帯電ローラ13に直流電圧を重畳した交流電圧を印加し、帯電ローラ13と感光体1の表面との間に放電を生じさせて該感光体表面を所定の極性に帯電する。
【0046】
図2に示した帯電ローラ13は、円柱状に形成され、その全体がステンレス鋼などの金属とすることもできる。しかし、帯電ローラ13の組み付け時等に、感光体1と接触することにより感光体1を傷つけてしまうことがあるため、円柱状の金属の外側にゴムあるいはプラスチックの材質を被覆した構成のものが用いられる。
【0047】
図2に示した帯電ローラ13は、感光体表面に対して非接触であり、感光体1と帯電ローラ13のギャップGは、平均で10〜150μm、好ましくは14〜100μm、さらに好ましくは18〜60μmで対置されている。感光体1と帯電ローラ13のギャップGの平均が10μm以下では、感光体1と帯電ローラ13が近接しすぎてクリーニングしきれなかったトナーが感光体1と帯電ローラ13との間に挟まり、筋状の異常画像が発生しやすくなるため好ましくない。また、感光体1と帯電ローラ13のギャップの平均が150μm以上の場合、放電を生じさせるためには、帯電ローラ13に印加する交流の電圧を大きくする必要があり、あまり大きくしすぎると、オゾンの発生量が多くなってしまうため好ましくない。
【0048】
図3は、帯電ローラ13を感光体表面から微小ギャップGを開けて対置させるための一構成例を示している。ここに示した帯電ローラ13には、その長手方向(軸21方向)の各端部領域に樹脂のテープや円環等より成るスペーサ20が貼り付けられ、これらのスペーサ20が感光体表面に当接することによって、帯電ローラ13が感光体表面に対して微小ギャップGを保っている。また、ローラ端部にフランジ等を用いて、微小ギャップを確保することもできる。
【0049】
本発明の画像形成装置においては、少なくとも感光体1と帯電ローラ13等を一体にし、交換部品として扱う、所謂プロセスカートリッジの形態にしておくと、メンテナンス性が著しく向上し、大変好ましい。
図5は、プロセスカートリッジを用いた画像形成装置の構成例を示しており、この画像形成装置100では、一つのプロセスカートリッジ101の中に、感光体1、帯電ローラ13、現像装置7、クリーニング装置12、除電装置4を一体に組付けたものであり、このプロセスカートリッジ101は画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されている。従って、感光体1やその周囲の構成部材に不良が生じた場合にもカートリッジごと交換ができ、メンテナンス性が著しく向上する。
【0050】
本発明の帯電ローラ13の表面の段差は2μm以上の高さであるため、レーザ顕微鏡、または、三次元走査型電子顕微鏡(SEM)等により得た高さ情報から、また、触針式面粗さ計等を用いて容易に判別することができる。
帯電ローラ13の表面に効果的な段差を作る方法としては、機械的研削、あるいは引き抜きによる手段により段差を作る方法、帯電ローラ13に用いる樹脂の製造時の体積変化を利用する方法、成型加工における金型の内面に予め段差を形成しておく方法等がある。中でも成型加工において金型の内面に予め段差を設けておく方法は、流し込む金型が一定なため、大量の帯電ローラを生産する場合に、好ましい表面形状を再現性良く作製することができるため好ましい。
【0051】
本発明の画像形成装置に用いる帯電ローラ13の層構成は、導電性支持体上に、高分子層と、表面層から構成されることが好ましい。
導電性支持体は、帯電ローラ13の電極及び支持部材として機能するもので、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金、クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄、導電剤を添加した樹脂、などの導電性の材質で構成される。
【0052】
高分子層としては、10〜10Ωcmの抵抗を有する導電性層であることが好ましく、高分子材料に導電剤を混合して抵抗を調整したものが用いられる。本発明の画像形成装置に用いる帯電ローラ13の高分子層の高分子としては、ポリエステル系、オレフィン系の熱可塑性エラストマー、ポリスチレン、スチレンーブタジエン共重合体、スチレンーアクリロニトリル共重合体、スチレンーブタジエンーアクリロニトリル共重合体等のスチレン系熱可塑性樹脂、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム等、及びこれらのブレンドしたゴム材料が挙げられる。ゴム材料は中でも、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム及びこれらのブレンドゴムが好ましく用いられる。これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0053】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末を挙げることができる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;を挙げることができる。これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、高分子100質量部に対して、1〜30質量部の範囲であることが好ましく、15〜25質量部の範囲であることがより好ましい。一方、上記イオン導電剤の場合は、高分子100質量部に対して、0.1〜5.0質量部の範囲であることが好ましく、0.5〜3.0質量部の範囲であることがより好ましい。
【0054】
前記表面層を構成する高分子材料としては、既述の如く、帯電ローラ13表面のダイナミック超微小硬度が0.04以上0.5以下であれば特に制限されないが、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。
【0055】
これらの中では、トナーとの離型性等の観点から、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミドが好ましく用いられる。上記高分子材料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、当該高分子材料の数平均分子量は、1,000〜100,000の範囲であることが好ましく、10,000〜50,000の範囲であることがより好ましい。
【0056】
表面層は、上記高分子材料に前記導電性弾性層に用いた導電剤や各種微粒子を混合して組成物として形成される。上記微粒子としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物及び複合金属酸化物、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等の高分子微粉体を単独または混合して用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。表面層は、段差の形状を損なわせないように0.5〜12μm、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜8μmがよい。表面層が0.5μm以下では層が薄すぎて表面層が局所的に存在しない部分と表面層が存在する部分ができてしまう等、不均一さが顕著になるため好ましくない。表面層が12μm以上では、表面層が段差を隠してしまうので本発明の目的である段差の存在による帯電ムラの緩和機能を発揮しずらくなる。
【0057】
本発明の画像形成装置に用いる感光体1は、導電性支持体2の上に感光層3が設けられている。感光層の構成は電荷発生材と電荷輸送材を混在させた単層型、あるいは電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、あるいは電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、感光層の上に保護層を設けることもできる。感光層と導電性支持体の間には下引き層が設けられていてもよい。また各層には必要により可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
【0058】
感光体の導電性支持体2としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。ドラム状の支持体としては、直径が20〜150mm、好ましくは、24〜100mm、さらに好ましくは28〜70mmのものを用いることができる。ドラム状の支持体の直径が20mm以下では、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に難しく、ドラム状の支持体の直径が150mm以上では画像形成装置が大きくなってしまい好ましくない。特に、画像形成装置が後述するタンデム型の場合には、複数の感光体を搭載する必要があるため、直径は70mm以下、好ましくは60mm以下であることが好ましい。また、特許文献5(特開昭52−36016号公報)に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0059】
本発明の画像形成装置に用いる感光体の下引層としては樹脂、あるいは白色顔料と樹脂を主成分としたもの、及び導電性基体表面を化学的あるいは電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が例示できるが、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、中でも導電性基体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンを含有させることが最も好ましい。下引層に用いる樹脂としてはポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂、アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂、これらの中の一種あるいは多種の混合物を例示することができる。
【0060】
本発明の画像形成装置に用いる感光体の電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料及び染料や、セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料を使用することができ、電荷発生物質は一種あるいは多種混合して使用することができる。
【0061】
本発明の画像形成装置に用いる感光体の電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等の一種あるいは多種を混合して使用することができる。
【0062】
上記電荷発生層、電荷輸送層の感光層を形成するのに使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができ、適当な結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の光導電性樹脂など一種の結着樹脂あるいは多種と結着樹脂の混合物を挙げることができるが、特にこれらのものに限定されるものではない。
【0063】
酸化防止剤としては、例えば以下のものが使用される。
[モノフェノール系化合物]
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−t−ブチル−4−ヒドロキシニソールなど。
【0064】
[ビスフェノール系化合物]
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
【0065】
[高分子フェノール系化合物]
1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェノール類など。
【0066】
[パラフェニレンジアミン類]
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−tーブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0067】
[ハイドロキノン類]
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0068】
[有機硫黄化合物類]
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
【0069】
[有機燐化合物類]
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0070】
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
【0071】
電荷輸送層中にレベリング剤を添加してもかまわない。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
【0072】
保護層は結着樹脂中に金属、又は金属酸化物の微粒子を分散した層である。結着樹脂としては可視、赤外光に対して透明で電気絶縁性、機械的強度、接着性に優れた物が望ましい。保護層の結着樹脂としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。金属酸化物としては酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。保護層の形成法としては通常の塗布法が採用される。なお、保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。
【0073】
本発明の感光体1を作製する際に用いる溶媒としては、ジクロロメタン等の塩素系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。
【0074】
ドラム状の導電性支持体上に感光層を設けた感光体の両端には、通常、感光体を支持し、本体駆動装置からの回転を伝達するためのフランジが設けてある。フランジは機械的強度に優れるポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド等のエンジニアリングプラスチックが用いられ、機械的強度、剛性、導電性等を制御するために、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維、カーボン、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ等の充填剤や、各種添加剤を混合して用いられる。これらのフランジは、ドラム状の導電性支持体に圧入し、接着剤で固定される。
【0075】
以上、本発明に係る帯電ローラ13及び帯電装置5と、それを用いた画像形成装置100、プロセスカートリッジ101の構成例について説明したが、図2に示したような画像形成装置の感光体1とその周囲の構成部材を含む部分を一つの画像形成部として、この画像形成部を複数並設することにより、タンデム型のカラー画像形成装置を構成することができる。
【0076】
図6は本発明に係るタンデム型のカラー画像形成装置の一例を示す概略構成図であり、転写ベルト30に沿って4つの画像形成部100Y,100M,100C,100Bを並設した例である。各画像形成部100Y,100M,100C,100Bの構成は図2と同様であり、電子写真プロセスによる画像形成を行うための帯電装置5、露光装置6、現像装置7、転写ローラ8、クリーニング装置12、除電装置4が配設されている。なお、各画像形成部100Y,100M,100C,100Bの構成は同じであるが、現像装置7で用いる現像剤(トナー)の色が異なっており、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各色のトナー像が形成される。
【0077】
各画像形成部100Y,100M,100C,100Bの感光体1と転写ローラ8の間には転写ベルト30が介在されており、この転写ベルト30は駆動ローラ31と従動ローラ32に張架されて図中の矢印方向に回動するようになっている。転写ベルト30の下方には、転写紙等の転写材Pを収納した複数段の給紙カセット40A,40Bが配置されており、各給紙カセット40A,40Bに対して、給紙ローラ41と分離搬送ローラ42が設けられている。また、転写ベルト30の転写材搬送方向上流側にはレジストローラ43が設けられており、転写ベルト30の転写材搬送方向下流側には定着装置9と図示しない排紙装置(排紙ローラ、排紙トレイ等)が設けられている。
【0078】
このタンデム型のカラー画像形成装置では、画像形成動作が開始されると、各画像形成部100Y,100M,100C,100Bで図2と同様の除電、帯電、露光、現像の工程を行い、所定の時間差で各感光体1上にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各色のトナー像が形成される。そして、この画像形成にタイミングを合わせて複数段の給紙カセット40A,40Bの一つから給紙ローラ41と分離搬送ローラ42により転写材Pが給紙され、レジストローラ43により転写ベルト30に給送される。転写ベルト30に給送された転写材Pは転写ベルト30に担持され、各画像形成部100Y,100M,100C,100Bの転写部に順次搬送され、各感光体1に形成されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各色のトナー像が転写材Pに順次重ね合わせて転写される。トナー像を転写された転写材Pは、引き続き定着装置9の定着ローラ10と加圧ローラ11の間を通り、このとき熱と圧力の作用によってトナー像が転写材上に定着され、カラー画像が得られる。一方、転写材Pに転写されずに各画像形成部の感光体表面に残された転写残トナーは、クリーニング装置12によって除去され、クリーニング後の感光体表面は除電装置4により除電される。
【0079】
以上、タンデム型のカラー画像形成装置の一例を示したが、このようなタンデム型の画像形成装置においても、少なくとも感光体1と帯電ローラ13等を一体にし、交換部品として扱う、所謂プロセスカートリッジの形態にしておくと、メンテナンス性が著しく向上し、大変好ましい。
図7は、プロセスカートリッジを用いたカラー画像形成装置の構成例を示しており、このカラー画像形成装置では、プロセスカートリッジ102の中に、各画像形成部100Y,100M,100C,100Bの感光体1、帯電ローラ13、現像装置7、クリーニング装置12、除電装置4を一体に組付けたものであり、このプロセスカートリッジ102は画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されている。また、図7の構成例では、露光装置60は、例えば一つの光偏向器と4系統の走査光学系を備えたレーザ走査式の書き込み装置であり、プロセスカートリッジ102外に設置されている。
この図7の構成例では、各画像形成部100Y,100M,100C,100Bの感光体1やその周囲の構成部材に不良が生じた場合にも、カートリッジ102ごと交換ができ、メンテナンス性が著しく向上する。
【0080】
なお、4つの画像形成部100Y,100M,100C,100Bのそれぞれを図5に示したような個別のプロセスカートリッジ101としてもよいが、4つの画像形成部100Y,100M,100C,100Bを一つのプロセスカートリッジ102に収納することにより、4つの画像形成部100Y,100M,100C,100Bの配置関係が固定されるので、各画像形成部間の位置ずれによる色ずれ等の問題を解消することができる。また、メンテナンスや交換後に各画像形成部間の位置調整を行う必要も無くなるので、メンテナンス性をより向上することができる。
【0081】
なお、図6や図7に示す画像形成装置は、転写ベルト30を用いた直接転写方式のタンデム型カラー画像形成装置であるが、転写ベルトを中間転写ベルトに代えて、一旦中間転写ベルトに4色のトナー像を重ね合わせて1次転写した後、中間転写ベルト上のカラートナー像を二次転写部で転写材に一括して転写する中間転写方式の構成としてもよい。
【実施例】
【0082】
次に本発明に係る帯電ローラとそれを用いた画像形成装置の具体的な実施例と比較例を以下に示す。
【0083】
直径30mmのアルミニウムドラム(導電性支持体)上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層及び保護層を、その順に塗布した後、乾燥し、4.5μmの下引き層、0.15μmの電荷発生層、22μmの電荷輸送層、約4.5μmの保護層からなる感光体1を作製した。このとき、保護層の塗工はスプレー法により、それ以外は浸漬塗工法により行った。保護層には、平均粒径0.21μmのアルミナを22.0質量%添加した。作製した感光体の両端にプラスチック製のフランジを圧入した。このようにして、合計120本の感光体を作製した。作製した感光体の画像形成域内での円周振れを測定したところ、平均値が35μm、最小値5.1μm、最大値112μmであった。作製した感光体の中から、円周振れが5.1μm、5.4μm、35μm、36μm、112μmのものを選択した。
【0084】
次にタンデム型のカラー画像形成装置としてリコー製のIPSIO CX400を用い、ブラック用感光体ユニットの帯電ローラ13として、No.1〜No.4の4種類の帯電ローラの試作品を評価した。これらの帯電ローラはゴム系材料にカーボンとイオン導電性材料を混合したものであり、帯電ローラの表面状態を変化させたものである。
【0085】
4種類の帯電ローラ表面の中心および両端についてSEM写真を撮り、それぞれの写真内で周方向の距離0.5mmの線を3箇所引き、線と交差する段差の本数を数え、段差の数を調べたところ、No.1の帯電ローラには段差が存在していなかった。次にNo.2の帯電ローラについて、周方向の距離0.5mmに存在する段差の本数を中心および両端についてそれぞれ3箇所づつ調べたところ、段差が7〜10本存在していた。ここで、SEM写真内で確認できた全ての段差については、3次元SEM(ERA-8900FE;ERIONIX製)を用いて段差の高低差を計測し、段差の高低差が2〜30μmのもののみカウントした。
次にNo.3の帯電ローラについて、周方向の距離0.5mmに存在する段差の本数を中心および両端についてそれぞれ3箇所づつ調べたところ、段差が20〜25本存在していた。
次にNo.4の帯電ローラについて、周方向の距離0.5mmに存在する段差の本数を中心および両端についてそれぞれ3箇所づつ調べたところ、段差が45〜52本存在していた。
【0086】
No.1〜4の帯電ローラの直径は、11.5mmであった。帯電ローラの端部より13mmの位置に、スペーサとして幅10mm、厚さ52μmのギャップテープを貼り付けた。感光体の真上に帯電ローラを配置し、スプリングで帯電ローラを感光体に押付け、感光体の線速185mm/秒で、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1100Hz、振幅1200Vの交流電圧を印加して評価を行った。
【0087】
[比較例1]
上記のブラック用感光体ユニットに、NO.1の帯電ローラと円周振れが5.1μm、35μm、112μmの感光体をそれぞれ組み込み、図4のように、A4の転写紙に4色のハーフトーン画像を2つ並べた画像を5枚づつ出力したところ、円周振れが5.1μmの感光体においては高品質の画像が得られたが、円周振れが35μmの感光体においては濃度ムラがわずかに見られ、円周振れが112μmの感光体においては明らかな濃度ムラが見られた。
【0088】
[実施例1]
比較例1において、帯電ローラをNO.2の帯電ローラに変更して、図4のように、A4の転写紙に4色のハーフトーン画像を2つ並べた画像を5枚づつ出力したところ、円周振れが5.1μmと35μmの感光体においては高品質の画像が得られたが、円周振れが112μmの感光体においては明らかな濃度ムラが見られた。
【0089】
[実施例2]
比較例1において、帯電ローラをNO.3の帯電ローラに変更して、図4のように、A4の転写紙に4色のハーフトーン画像を2つ並べた画像を5枚づつ出力したところ、円周振れが5.1μmと35μmの感光体においては高品質の画像が得られたが、円周振れが112μmの感光体においては明らかな濃度ムラが見られた。
【0090】
[比較例2]
比較例1おいて、帯電ローラをNO.4の帯電ローラに変更して、図4のように、A4の転写紙に4色のハーフトーン画像を2つ並べた画像を5枚づつ出力したところ、円周振れが5.1μmと35μmの感光体においては高品質の画像が得られたが、円周振れが112μmの感光体においては明らかな濃度ムラが見られた。
【0091】
[実施例3及び比較例3]
前記のタンデム型カラー画像形成装置の各色の感光体ユニットにそれぞれ異なる組み合わせで帯電ローラおよび感光体を組み込み、図4のように、A4の転写紙に4色のハーフトーン画像を2つ並べた画像を5枚づつ、計1500枚出力して評価を行い、続けて70000枚出力した後、再度評価を行った。
なお、ブラック用感光体ユニットにはNo.1の帯電ローラと円周振れが5.1μmの感光体を組み込み、シアン用感光体ユニットにはNo.2の帯電ローラと円周振れが35μmの感光体を組み込み、マゼンタ用感光体ユニットにはNo.3の帯電ローラと円周振れが36μmの感光体を組み込み、イエロー用感光体ユニットにはNo.4の帯電ローラと円周振れが5.4μmの感光体を組み込んだ。
【0092】
No.1の帯電ローラと円周振れが5.1μmの感光体を組み込んだブラック用感光体ユニットから現像されたブラックの画像には、1500枚の出力後で濃度ムラがわすかに見られ、70000枚の出力後で明らかな濃度ムラが見られた。
【0093】
No.2の帯電ローラと円周振れが35μmの感光体を組み込んだシアン用感光体ユニットから現像されたシアン画像では、1500枚の出力後および70000枚の出力後で高品質な画像が得られた。
【0094】
No.3の帯電ローラと円周振れが36μmの感光体を組み込んだマゼンタ用感光体ユニットから現像されたマゼンタの画像では、1500枚の出力後および70000枚の出力後で高品質な画像が得られた。
【0095】
No.4の帯電ローラと円周振れが5.4μmの感光体を組み込んだイエロー用感光体ユニットから現像されたイエローの画像では、1500枚の出力後にかすかな横筋が数本見られ、70000枚の出力後では横筋の本数が更に増えた。また、ランニング後の帯電ローラをSEMで観察したところ、帯電ローラ表面に存在していた段差の先端にカケが生じていた。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】(a)は本発明の画像形成装置に用いる帯電ローラの中央部の表面を三次元走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてSEM像として取り込んだ後、高低差2〜30μmの段差を全て抜き出してプロットした図であり、(b)は、(a)の段差の本数に関して、長手方向に走査して数えた場合の帯電ローラの周方向の距離0.5mm当たりの段差の数の推移を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す画像形成装置の概略構成図である。
【図3】本発明の帯電ローラの一例を示す図であって、図2のI方向から見た帯電ローラの概略正面図である。
【図4】A4の転写紙に4色のハーフトーン画像を2つ並べた画像の出力例を示す図である。
【図5】本発明の別の実施形態を示す図であって、プロセスカートリッジを用いた画像形成装置の概略構成図である。
【図6】本発明のさらに別の実施形態を示す図であって、タンデム型のカラー画像形成装置の概略構成図である。
【図7】本発明のさらに別の実施形態を示す図であって、プロセスカートリッジを用いたタンデム型のカラー画像形成装置の概略構成図である。
【図8】感光体の円周振れの測定箇所の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1:感光体(像担持体(被帯電体))
2:導電性支持体
3:感光層
4:除電装置
5:帯電装置
6,60:露光装置
7:現像装置
8:転写装置(転写ローラ)
9:定着装置
10:定着ローラ
11:加圧ロ―ラ
12:クリーニング装置
13:帯電ローラ(帯電部材)
14:電源
20:スペーサ
21:軸
30:転写ベルト
31:駆動ローラ
32:従動ローラ
40A,40B:給紙カセット
41:給紙ローラ
42:分離搬送ローラ
43:レジストローラ
100:画像形成装置
100Y,100M,100C,100B:画像形成部
101、102:プロセスカートリッジ
G:ギャップ
P:転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被帯電体に対して電気的に非接触で配置され、直流電圧を重畳した交流電圧を印加することにより前記被帯電体を帯電する帯電部材において、
回転可能なローラで構成され、画像形成域内での円周振れが4μm〜80μmの被帯電体に対して電気的に非接触で配置され、前記ローラの表面には高低差が2〜30μmの複数の段差を有し、前記被帯電体との対向域における前記段差が、前記ローラの周方向の距離0.5mmに対して5〜30本存在することを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
請求項1記載の帯電部材において、
前記被帯電体との対向域内における該被帯電体とのギャップが、帯電部材と被帯電体が静止している状態で平均10〜150μmであることを特徴とする帯電部材。
【請求項3】
請求項1または2記載の帯電部材において、
前記ローラの表面の段差は、長さ400μm以上連続し、前記ローラの長手方向をX軸として連続する段差をそれぞれXY平面に抜き出してプロットし、該段差を最小二乗法による直線近似したときの相関係数が0.9以下、傾きが−0.5〜0.5であることを特徴とする帯電部材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の帯電部材において、
前記ローラの表面に連続した段差が存在し、連続する段差を前記ローラの長手方向をX軸としてXY平面に抜き出してプロットする際のサンプリング回数が、段差1本当たり10点以上であることを特徴とする帯電部材。
【請求項5】
被帯電体に対して電気的に非接触で配置された帯電部材と、該帯電部材に電圧を印加する電源とを備え、前記帯電部材に直流電圧を重畳した交流電圧を印加することにより前記被帯電体を帯電する帯電装置において、
前記帯電部材として、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の帯電部材を用いたことを特徴とする帯電装置。
【請求項6】
請求項5記載の帯電装置において、
前記帯電部材に印加する交流電圧の周波数が800Hz〜2000Hzであることを特徴とする帯電装置。
【請求項7】
画像形成装置に用いるプロセスカートリッジであって、
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の帯電部材もしくは請求項5または6記載の帯電装置の帯電部材と、被帯電体である像担持体の少なくとも2つを、1つのカートリッジ内に一体的に組付けたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
被帯電体である像担持体と、該像担持体を帯電する帯電手段と、前記像担持体に画像を形成する手段とを有する画像形成部を備えた画像形成装置において、
前記帯電手段として、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の帯電部材もしくは請求項5または6記載の帯電装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
被帯電体である像担持体と、該像担持体を帯電する帯電部材と、前記像担持体に画像を形成する手段とを有する画像形成部を備えた画像形成装置において、
前記画像形成部に請求項7記載のプロセスカートリッジを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求8または9記載の画像形成装置において、
前記画像形成部の画像形成可能な最高な解像度が1000dpi以上であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求8乃至10のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記画像形成部を複数並設したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項11記載の画像形成装置において、
前記複数の画像形成部で色の異なる画像を形成し、各色の画像を転写媒体に転写してカラー画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−128000(P2007−128000A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322747(P2005−322747)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】