説明

帯電部材

【課題】電気抵抗が低く、ロット内・ロット間ばらつきや環境依存性が小さく、長期間、感光体等に圧接して放置した場合でも、感光体の汚染やセット画像不良の発生の無い、帯電部材を提供する。
【解決手段】帯電部材を良導電性の支持体と該支持体上の少なくとも1層以上からなる弾性体層とで形成し、弾性体層は結合ニトリル量が25質量%以上45質量%以下のアクリルニトリル−ブタジエン共重合体を含有するベースゴムに導電性粒子としてカーボンブラックを分散し、カーボンブラックは平均粒子径が20〜40nmの低ストラクチャーカーボンブラックであり、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体の温度100℃でのムーニー粘度をX、弾性体層の200Vで測定した体積抵抗率が1×105Ω・cmとなるカーボンブラックの配合量をYとした場合、下記関係式(1)を満足している。
0.6X ≦ Y ≦ 0.6X+54 ・・・・・・ 式(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置において感光体に当接して使用される帯電部材に関するものである。尚、以下、特に帯電部材の一例として、帯電ローラについてその詳細を記載するが、本発明は、その用途を帯電ローラのみに限定する物ではない。
【背景技術】
【0002】
複写機や光プリンタ等の電子写真装置、静電記録装置等の画像形成装置において、感光体や誘電体等の像担持体面を帯電処理する手段として、近年では接触帯電方式が採用されている。接触帯電方式においては、電圧を印加した帯電する部材(帯電部材とも記載する)を、被帯電体面に近接または接触させて、被帯電体面を帯電処理するもので、一般的には、金属製芯金の軸上に半導電性の弾性体層が形成されたゴムローラ型の帯電ローラが使用される。
【0003】
接触帯電方式で用いられる帯電ローラの弾性体層には、感光体等の被帯電体表面のピンホールや傷などにより生じるリークを防止するために、適度な半導電性が必要である。また、被帯電体を均一に帯電させるためには、帯電部材の電気抵抗値が体積固有抵抗率で1×103Ω・cm以上1×109Ω・cm以下程度の均一な半導電性であることが重要である。そして、この様な電気特性を実現するために、エピクロルヒドリンゴムのような、それ自身が半導電性を有する極性ゴムにイオン導電剤を添加したイオン導電系ゴムにより、弾性体層を構成することが知られている。
【0004】
イオン導電系ゴムは電気抵抗のバラツキが小さく均質なゴムが得られる特徴がある。その一方で、イオン導電剤を配合しないと1×107Ω・cm以下の低抵抗が得られ難く、イオン導電剤が感光体に付着することを防止する為に、比較的厚膜な表面層を設ける必要があった。また、イオン導電系ゴムは温度・湿度の環境によって電気抵抗が大きく変動する問題もある。
【0005】
低抵抗化が可能で環境依存性も小さいゴム組成物としては、ベースゴムにカーボンブラック等の導電粒子を配合した電子導電系の導電性ゴム組成物が知られている。
【0006】
しかしながら電子導電系ゴムはその電気抵抗が導電性粒子の分散状態に強く依存し、その結果、均質な電気抵抗を得ることが困難で、電気抵抗のロット内・ロット間ばらつきが大きい場合があった。
【0007】
また、電子導電系ゴムを弾性体層に使用した帯電部材においては、帯電部材を感光体等に長期間圧接して放置した場合に、その当接部で画像不良を起こす、いわゆるセット画像不良が発生することがあった。
【0008】
電子導電系ゴム組成物で均一な電気抵抗を得る方法としては、特定の範囲の比表面積とDBP吸油量のカーボンブラックを使用する方法(例えば、特許文献1参照。)が開示されている。しかしながら、この方法においてはカーボンブラックとベースゴムとの親和性については示されておらず、セット画像不良についても検討されていない。
【0009】
電気抵抗の均一性を向上させる他の手法として、pH5以下の酸性カーボンブラックを含有する導電部材が開示されている(特許文献2)。しかしpH5以下の酸性カーボンブラックはゴムに配合した場合、抵抗低減効果が小さく、多量配合しないと低抵抗化できない。
【0010】
また、導電性ローラに最適なゴム組成物として、イオン導電性のベースゴムに平均粒径の2/3倍以上のカーボンブラックを添加する方法が開示されている(特許文献3)。しかし、本方法はイオン導電系ゴムの環境依存性を低減することを目的としており、電気抵抗の均一性については言及されていない。また、カーボンブラックの分散状態やベースゴムとの親和性についても言及されておらず、セット画像不良についても検討されていない。
【特許文献1】特開平07-134469号報
【特許文献2】特開2002-23462号報
【特許文献3】特開2001-140855号報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、電気抵抗が低く、ロット内・ロット間ばらつきや環境依存性が小さく、長期間、感光体等に圧接して放置した場合でも、感光体の汚染やセット画像不良の発生の無い、帯電部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は電子導電系ゴムにおけるセット画像不良について調査した結果、セット画像不良は、帯電部材と感光体との当接部での長期変形により、カーボンの配列が変化し、当接部と非当接部とで電気抵抗の差が生じることで発生することが判明した。そして、この対策としては小粒子径・低ストラクチャーのカーボンブラックを高配合・高分散することが効果的であることを見出した。小粒子径・低ストラクチャーのカーボンブラックを高配合・高分散することによって電気抵抗が均一で変形による抵抗変動も小さくなる。そして、小粒子径・低ストラクチャーのカーボンブラックを高分散させる為には、カーボンとの親和性が良好な中高ニトリルゴムをベースポリマーとし、ベースポリマーの粘度と配合するガーボンの特性・配合量に最適値があることを見出した。
【0013】
すなわち本発明に係る帯電部材は以下の通りである。
【0014】
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成した弾性体層とを有する帯電部材であって、
結合ニトリル量が25質量%以上45質量%以下のアクリルニトリル−ブタジエン共重合体を含有するベースゴムに導電性粒子としてカーボンブラックを分散した半導電性ゴムからなり、該カーボンブラックは平均粒子径が20nm以上40nm以下の低ストラクチャーカーボンブラックであり、該半導電性ゴムは該アクリルニトリル−ブタジエン共重合体の温度100℃でのムーニー粘度をX、弾性体層の200Vで測定した体積抵抗率が1×105Ω・cmとなるカーボンブラックの配合量をYとした場合、下記関係式(1)
0.6X ≦ Y ≦ 0.6X+54 ・・・・・・ 式(1)
を満足していること特徴とする帯電部材。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電気抵抗が低く、ロット内・ロット間ばらつきや環境依存性が小さく、長期間、感光体等に圧接して放置した場合でも、感光体の汚染やセット画像不良の発生の無い、帯電部材を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本願発明に係る帯電部材は、
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成した弾性体層とを有する。
【0017】
該弾性体層は、結合ニトリル量が25質量%以上45質量%以下のアクリルニトリル−ブタジエン共重合体を含有するベースゴムに導電性粒子としてカーボンブラックを分散した半導電性ゴムからなる。
【0018】
また該カーボンブラックは、平均粒子径が20nm以上40nm以下の低ストラクチャーカーボンブラックである。
【0019】
更に該半導電性ゴムは、該アクリルニトリル−ブタジエン共重合体の温度100℃でのムーニー粘度をX、弾性体層の200Vで測定した体積抵抗率が1×105Ω・cmとなる前記カーボンブラックの配合量をYとした場合、下記関係式(1)
0.6X ≦ Y ≦ 0.6X+54 ・・・・・・ 式(1)
を満足している。
【0020】
(2)上記の帯電部材は、該アクリルニトリル−ブタジエン共重合体の温度100℃でのムーニー粘度をX、弾性体層の200Vで測定した体積抵抗率が1×105Ω・cmとなるカーボンブラック配合量をYとした場合、下記の関係式(2)
2.6X+19 ≦ Y ≦ 0.6X+40 ・・・・・式(2)
を満足していることが好ましい。
【0021】
(3)また、上記のカーボンブラックは、DBP吸油量が70cm3/100g以上100cm3/100g以下であることが好ましい。
【0022】
(4)また上記のカーボンブラックは、ベースゴム100質量部に対して30質量部以上70質量部以下配合されていることが好ましい。
【0023】
(5)また上記のアクリルニトリル−ブタジエン共重合体は、温度100℃でのムーニー粘度が20以上50以下であることが好ましい。
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図2には、本発明の帯電部材を有する電子写真装置の概略構成を示す。21は被帯電体としての電子写真感光体であり、本例の電子写真感光体は、アルミニウムなどの導電性を有する支持体21bと、支持体21b上に形成した感光層21aを基本構成層とするドラム形状の電子写真感光体である。軸21cを中心に図上時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。
【0025】
1は、電子写真感光体21に接触配置されて電子写真感光体を所定の極性・電位に帯電(一次帯電)する帯電ローラである。帯電ローラ1は、芯金11と、芯金11上に形成した弾性層12とからなり、芯金11の両端部を不図示の押圧手段で電子写真感光体21の回転駆動に伴い従動回転する。
【0026】
電源23で摺擦電源23aにより、芯金11の所定の直流(DC)バイアスが印加されることで電子写真感光体21が所定の極性・電位に接触帯電される。帯電ローラ1で周面が帯電された電子写真感光体21は、次いで露光手段24により目的画像情報の露光(レーザービーム走査露光、原稿画像のスリット露光など)を受けることで、その周面に目的の画像情報に対した静電潜像が形成される。
【0027】
その静電潜像は、次いで、現像部材25により、トナー画像として順次に可視像化されていく。このトナー画像は、次いで、転写手段26により不図示の給紙手段部から電子写真感光体21の回転と同期取りされて適正なタイミングをもって電子写真感光体21と転写手段26との間の転写部へ搬送された転写材27に順次転写されていく。本例の転写手段26は転写ローラであり、転写材27の裏からトナーと逆極性の帯電を行うことで電子写真感光体21側のトナー画像が転写材27に転写されていく。
【0028】
表面にトナー画像の転写を受けた転写材27は、電子写真感光体21から分離されて不図示の定着手段へ搬送されて像定着を受け、画像形成物として出力される。あるいは、裏面にも像形成するものでは、転写部への再搬送手段へ搬送される。
【0029】
像転写後の電子写真感光体21の周面は、前露光手段28による前露光を受けて電子写真感光体ドラム上の残留電荷が除去(除電)される。この前露光手段28には公知の手段を利用することができ、例えばLEDチップアレイ、ヒューズランプ、ハロゲンランプおよび蛍光ランプなどを好適に例示することができる。
【0030】
除電された電子写真感光体21の周面は、クリーニング部材29で転写残りトナーなどの付着汚染物の除去を受けて洗浄面化されて、繰り返して画像形成に供される。
【0031】
帯電ローラ1は面移動駆動される電子写真感光体21に従動駆動させてもよいし、非回転にしてもよいし、電子写真感光体21の面移動方向に順方向または逆方向に所定の周速度をもって積極的に回転駆動させるようにしてもよい。
【0032】
また、露光は、電子写真装置を複写機として使用する場合には、原稿からの反射光や透過光により行われる。あるいは、原稿を読み取り信号化し、この信号に基づいてレーザービームを走査したり、LEDアレイを駆動したり、または液晶シャッターアレイを駆動することにより行われる。
【0033】
本発明の帯電部材を使用しうる電子写真装置としては、複写機、レーザービームプリンター、LEDプリンター、あるいは、電子写真製版システムなどの電子写真応用装置などが挙げられる。本発明の帯電部材は、帯電ローラ以外に、現像部材、転写部材、除電部材や、給紙ローラなどの搬送部材としても使用可能である。
【0034】
本発明の帯電部材は芯金と、その外側に設けられた半導電体層により構成される。図1に本発明の帯電部材の例として、帯電ローラ1の模式図を示す。帯電ローラ1は芯金11とその外周に設けられた弾性体層12とから構成されており、必要によって、弾性体層12の外側に表面層13を設けることも出来る。
【0035】
弾性体層はアクリルニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)を含有するベースゴムに導電粒子としてカーボンブラックを分散させたゴム材料にて構成される。NBRはカーボンブラックとの親和性を高める為、中高ニトリルのものが好ましい。具体的な結合ニトリル量は25質量%以上45質量%であり、結合ニトリル量はJIS K6384(2001年)記載のセミミクロケルダール法によって共重合体中の窒素含有量を測定し、計算により求めることが出来る。ニトリル量が25質量%未満ではベースゴムの極性が小さく、カーボンとの親和性が充分でないために、セット画像不良画像改善効果が充分でない。また、ニトリル量45質量%超では、NBRのガラス転移点が高くなりすぎ、結果的に得られた弾性体が非常に高硬度となってしまう。
【0036】
NBR原料はJIS K6300−1(2001年)に記載の方法で測定した100℃でのムーニー粘度が20以上50以下であることが好ましい。ムーニー粘度が20以上のNBRではカーボンを混練する工程で、充分なせん断力がかかり、カーボンブラックの分散が充分となる。また、ムーニー粘度が50以下のNBRでは、カーボンの分散は良好であり、得られた未加硫ゴム組成物の粘度が適当で、加工性が良好で、結果的に得られた弾性体の電気抵抗が均一となるので好ましい。
【0037】
カーボンブラックは平均粒子径が20nm以上40nm以下の低ストラクチャーカーボンブラックである。平均粒子径が20nm未満ではゴム原料への分散性が極めて悪くなり、電気抵抗の均一性が得られない。平均粒子径が40nm超ではゴムに配合した際の電気抵抗低減効果が小さく、低電気抵抗の弾性体を得る為にカーボンブラックを多量配合する必要があり、結果的に得られた弾性体が非常に高硬度となってしまう。カーボンブラックの平均粒子径は原料から測定する場合は、カーボンブラック試料を超音波洗浄法により周波数200KHzで30分間クロロホルムに分散させたのち、分散試料を支持膜に固定した試料を調整する。または、カーボンブラックが分散されたゴム組成物から測定する場合は、ゴム試料をミクロトームを用いて厚さ100nmの超薄切片を作成し、支持膜に固定した試料を調整する。
【0038】
これらを電子顕微鏡で観察、80000〜100000倍の倍率で撮影し、得られた写真からランダムに100個のカーボンブラック粒子について写真上の直径と写真の拡大倍率により粒子径を計算して算術平均粒子直径を求めることが出来る。使用するカーボンブラックは低ストラクチャーカーボンブラックである。低ストラクチャーカーボンブラックとは具体的には、JIS K6217−4(2001年)に記載の方法で測定したDBP吸油量が50cm3/100g以上160cm3/100g以下のカーボンブラックである。DBP吸油量が50cm3/100g以上のカーボンブラックではゴムに配合した際の電気抵抗低減効果が十分で、低電気抵抗の弾性体を得る為にカーボンブラックを多量配合する必要がない。その結果として得られた弾性体は適当な硬度を有するものとなる。DBP吸油量が160以下のカーボンブラックでは、ゴムの混練や加工工程でのせん断でカーボンブラックのストラクチャー破壊が生じない。その結果、混練条件等の加工時の条件変動でも電気抵抗が変動せず、得られた部材の電気抵抗のロット内・ロット間ばらつきが小さく保てる。更に好ましいDBP吸油量の範囲としては70cm3/100g以上100cm3/100g以下である。
【0039】
本発明で使用するカーボンブラックは JIS K6221(1982年)で測定したpHが6以上9以下であることが好ましい。pH6以上のカーボンブラックではゴムに配合した際の電気抵抗低減効果が十分で、低電気抵抗の弾性体を得る為にカーボンブラックを多量配合する必要がなく、結果的に得られた弾性体が適当な硬度となる。pH9以下のカーボンブラックではゴムに配合した場合に加硫速度が速くなりすぎで未加硫ゴムを成形する際のスコーチ(ヤケ)が発生す恐れがない。
【0040】
本発明に使用されるカーボンブラックの具体的な例(製造会社名、商品名またはグレード名)を以下に示す。
・SUNBLACK200; SUNBLACK280; SUNBLACK285; SUNBLAC K320; SUNBLACK325; SUNBLACK600; SUNBLACK605;SU NBLACK710; SUNBLACK715; SUNBLACK720; SUNBLACK7 25(旭カーボン株式会社製)。
・ニテロン#200、ニテロン#300、ニテロン#200IS、ニテロン#200IN(新日化カーボ ンカーボン株式会社製)。
・ダイアブラックLI、ダイアブラックLH、ダイアブラックI、ダイアブラックHA、ダイアブラック A、ダイアブラックSH、ダイアブラックN234、ダイアブラックII、ダイアブラックN339、 MA7、#3230B、#33、#44、#32、#4000B、#30、#40、#47、#52、 #650B、MA600、#750B(三菱化学株式会社製)。
・シースト3、シースト300、シースト3H、シースト5H、シースト6、シースト600、シースト 116、シースト116HM、シーストKH、シーストN、シーストNH、トーカブラック#7400、トーカ ブラック#4400、トーカブラック#7360SB、トーカブラック#7350/F、トーカブラック#5 500、トーカブラック#7270SB、トーカブラック#7550SB(東海カーボン株式会社製) 。
・Printex L、Printex45(デグサ ジャパン株式会社製)。
【0041】
これらのガーボンブラックはベースゴム100質量部に対して30質量部以上70質量部以下配合されることが好ましい。カーボンブラックの配合量が30質量部以上で、カーボンブラックの濃度が充分となり、変形によるカーボンブラックの配列変化が抑えられ、セット画像不良が発生しなくなる。また、カーボンブラックの配合量が70質量部以下で、得られた弾性体の硬度が適切な範囲となる為好ましい。
【0042】
さらに弾性層の材料には、必要に応じてゴムの配合剤として一般に用いられている充填剤、加工助剤、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、分散剤等を添加することができる。軟化剤、可塑剤等の低分子量の配合剤は感光体汚染を防止するため配合しないことが好ましい。
【0043】
これらの原料の混合方法としては、バンバリーミキサーや加圧式ニーダーといった密閉型混合機を使用した混合方法や、オープンロールのような開放型の混合機を使用した混合方法などを例示することができる。
【0044】
NBRにカーボンブラックを配合して電気抵抗を調整する場合、カーボンブラックの配合量以外に、ゴムの混合時間やNBR原料の粘度によっても、その電気抵抗は変化する。本発明においてはカーボンブラック配合系ゴムの電気抵抗のバラツキを小さくすることを目的としており、そのためゴムの混合時間は出来るだけ長くし、混合後の加工時のせん断により電気抵抗が変動しないようにすることが好ましい。その為にはNBR原料の粘度が高いものを選択した方が混合時に大きなせん断力が生じ、ゴムへのカーボンブラックの分散が進行する。しかし、NBR原料の粘度をあまり高くするとカーボンブラックの分散が進みすぎて電気抵抗が高くなる。そして、所望の電気抵抗を得る為にカーボンブラックを多量配合する必要が生じ、結果的に得られるゴム弾性体の硬度が大きくなる。あるいは、未加硫ゴムの粘度が非常に高くなり、加工性が低下する場合がある。
【0045】
本発明者らは使用するNBR原料の粘度とカーボンブラックの特性、配合量について検討を行った。
その結果、以下の関係式(1)が成り立つ場合に、電気抵抗の均一性が良好で帯電部材用弾性体として最適なゴム組成物が得られることを確認した。
【0046】
0.6X ≦ Y ≦ 0.6X+54 ・・・・・・ 式(1)
尚、上記式(1)において、X:NBR原料の100℃でのムーニー粘度、Y:弾性体層の200Vで測定した体積抵抗率が1×105Ω・cmとなるカーボンブラック配合量である。
【0047】
そして、Yが0.6Xより小さい場合、ゴム中のカーボン濃度が少なく、変形によるカーボンブラックの配列変化が生じ、セット画像不良が発生する場合がある。Yが0.6X+54より大きい場合、カーボンブラックの配合量が多すぎて、得られた弾性体が非常に高硬度となる場合がある。より好ましいYの範囲は以下の関係式(2)で表される範囲である。
【0048】
0.6X+19 ≦ Y ≦ 0.6X+40 ・・・・・式(2)
尚、本発明では、体積抵抗率が1×105Ω・cmとなるカーボンブラック配合量をYとしているが、ここでの体積抵抗率は製造上のバラツキ、測定上のバラツキを考慮して、4.0×104Ω・cm以上3.0×105Ω・cm以下の範囲にあれば良いものとする。
【0049】
このような配合と製造条件により、弾性体層の体積抵抗率は1×103Ω・cm以上1×107Ω・cm、以下、硬度は50°以上85°以下に調整される。
【0050】
弾性体の体積抵抗率が1×103Ω・cm未満では帯電部材の電気抵抗が低くなりすぎ、感光体上にピンホール等の欠陥が生じた場合に、ここに帯電電流が集中して、帯電部材、感光体が破損したり画像不良が発生する、リーク現象が発生する場合がある。また、弾性体層の体積抵抗率が1×107Ω・cm以上では、帯電部材の電気抵抗が高いために、帯電横筋やゴーストといった画像不良が発生しやすい場合がある。
【0051】
また、弾性体層の硬度が50°未満の場合、感光体への当接による帯電部材の変形量が大きくなり、セット画像不良が発生する場合がある。逆に弾性体層の硬度が85°超の場合、帯電部材の硬度があまりに高く、感光体との当接不良が発生したり、長期の使用時にトナーや紙粉等の汚れが帯電部材表面に不均一に付着し、画像不良が発生する場合がある。
【0052】
弾性体層の形成方法としては、以下の方法を挙げることができる。
・未加硫の半導電性ゴム組成物を押出機によりチューブ状に押出成形し、これを加硫缶で加硫成形したも のに芯金を圧入後、表面を研磨して所望の外径とする方法。
・加硫後の半導電性ゴム組成物をクロスヘッドを装着した押出機により、芯金を中心に円筒形に共押出し 、所望の外径の金型内部に固定、加熱し、成形体を得る方法等。
弾性体層の表面はトナーや紙粉等の汚れが付着し難いように、紫外線照射等による表面改質や表面層の形成が行われる。表面層としては、一般的には公知の被覆層が用いられる。被覆層は、例えばバインダー高分子に導電性粒子やイオン性電解質を適量混合して所望の電気抵抗値としたものの膜が挙げられる。ここで、バインダー高分子の具体例は、アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、シリコーン等を含む。また導電性粒子の具体例は、カーボンブラック、グラファイト、酸化物(酸化チタン、酸化錫等、金属(Cu、Ag等)、酸化物や金属を粒子表面に被覆して導電化した導電粒子等をふくむ。
【0053】
またイオン性電解質の具体例は、LiClO4、KSCN、NaSCN、LiCF3SO3等を含む。
前記表面層の他の例としては、オキシアルキレン基を有するポリシロキサンからなるゾル−ゲル膜が挙げられる。
【0054】
表面被覆層の形成方法としては、上記の様な表層材料を溶剤に溶解または分散させた液を、ディッピング、リング塗工、ビーム塗工、ロールコーター、スプレー等の塗工法によって、弾性体層表面にコーティングする方法等を挙げることができる。
【0055】
なお、本発明における帯電ローラには、必要に応じて、弾性体層や表面被覆層以外に、接着層、拡散防止層、下地層、プライマー層等の機能層を設けることもできる。
【実施例】
【0056】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。なお、以下、特に明記しない限り、「部」は「質量部」を意味しており、試薬等は特に指定のないものは市販の高純度品を用いた。
【0057】
<実施例1>
(ゴム材料の調製)
下記の材料を、6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX トーシン社製)にて、充填率70vol%、ブレード回転数30rpmで16分混合して未加硫ゴム組成物を得た。
・ベースゴムとしてNBR(商品名:JSR N230SV JSR社製; 結合ニトリル量35質量% 、ムーニー粘度30.8):100部、
・加工助剤としてステアリン酸亜鉛:1部、
・加硫促進助剤として酸化亜鉛:5部、
・充填剤として炭酸カルシウム(商品名:シルバーW 白石工業社製)、
・導電剤としてカーボンブラック(商品名:トーカブラック#7360SB 東海カーボン社製、平均粒 子径28nm、DBP吸油量87cm3/100g、pH7.5):48部。
【0058】
次いで、下記の材料をロール径12インチのオープンロールにて、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで20分混合した後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行い、弾性体層用の未加硫ゴム組成物を得た。
・上記未加硫ゴム組成物:164質量部、
・架橋剤として硫黄:1.2部、
・加硫促進剤としてテトラメチルチウラムモノスルフィド(商品名:ノクセラーTS、大内新興化学社製 ):1.2部。
【0059】
(弾性体層の形成)
得られた未加硫ゴム組成物を、クロスヘッドを用いた押出成形によって、芯金(直径6mm、長さ252mm)を中心として、同軸状に円筒形に同時に押出し、端部を切断して、芯金の外周に未加硫の導電層と抵抗調整層を積層した仕込形状を作製した。得られた仕込形状を有する材料と、芯金の一体化したものを、熱風炉で160℃、30分の加硫を行った。加硫後、両端を切断し、弾性層部分の軸方向幅を228mmとした後、導電性弾性層部分の表面を回転砥石で研磨することによって、端部直径8.4mm、中央部直径8.5mmのクラウン形状のゴムローラを得た。上記ゴム材料の混合から、押出、研磨までのゴムローラ作成を3回繰返し実施し、各回10本、合計30本の作成ゴムローラについて、電気抵抗の周ムラ、抵抗バラツキ、弾性体層の体積抵抗測定を行った。
【0060】
(電気抵抗周ムラ測定)
図4にゴムローラの電気抵抗測定装置の概略図を示した。ゴムローラ4aは芯金11の両端部を不図示の押圧手段で円柱状のアルミドラム41に圧接され、アルミドラム41の回転駆動に伴い従動回転する。この状態で、ゴムローラ4aの芯金部分11に電源42を用いて直流電圧を印加し、41のアルミドラムに直列に接続した抵抗43にかる電圧から、ゴムローラの電気抵抗を測定した。
【0061】
ゴムローラ1の電気抵抗は、温度23℃、湿度50%R.H.(N/Nとも記載する)環境下で、図4の装置を使用し、芯金とアルミドラムの間に直流200Vの電圧を3秒印加して、最大抵抗と最小抵抗の比から、ローラ電気抵抗の周ムラを測定した。測定は30本のローラ全てについて実施し、その平均値は1.3倍であった。
【0062】
(電気抵抗バラツキ測定)
図4のローラ抵抗測定機を使用した作成ローラ30本の電気抵抗を測定結果から、電気抵抗の最大値の常用対数と最小値の常用対数の差を抵抗バラツキとした。その結果、抵抗バラツキは0.2オーダーであった。
【0063】
(弾性層体積抵抗の測定)
図3に体積抵抗測定装置の概略図を示した。ゴムローラ4aの中央部分には1.5cm幅のアルミシート31が弾性体層と隙間無く密着するように巻きつけられている。この状態で、ゴムローラ4aの芯金部分11に電源42を用いて直流電圧を印加し、31のアルミシートに直列に接続した抵抗43にかる電圧から、弾性体層の電気抵抗を測定した。
【0064】
弾性体層の電気抵抗は、温度23℃、湿度50%R.H.(N/Nとも記載する)環境下で、図3の装置を使用し、芯金とアルミシートの間に直流200Vの電圧を印加して測定した。
【0065】
そして、測定された電気抵抗の値(Ωd)から、ローラ外径8.5mm、アルミシート幅1.5cm、弾性体層厚み1.5mmであるので、以下の式(3)から体積抵抗率(ρd)を求めた。
【0066】
ρd = (Ωd×0.85×π×1.5)/0.15 ・・・・(3)
測定は3回のローラ作成において、各回1本ずつについて行い、その平均値を求めた。その結果、弾性体層の体積抵抗率は1.2×105Ω・cmであった。
【0067】
(硬度の測定)
弾性体層の硬度の測定は、マイクロ硬度計MD−1型(高分子計器株式会社製)を用い、23℃/55%RH環境においてピークホールドモードで測定した。より詳しくは帯電部材を金属製の板の上に置き、金属製のブロックを置いて帯電部材が転がらないように簡単に固定し、金属板に対して垂直方向から帯電部材の中心に正確に測定端子を押し当て5秒後の値を読み取る。これを帯電部材のゴム端部から30〜40mmの位置の両端部及び中央部のそれぞれ周方向に3箇所ずつ、計9箇所を測定し、得られた測定値の平均値を弾性体層の硬度とした。その結果、硬度は72°であった。
【0068】
(表面層の形成)
次に、以下の材料を混合し、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流(120℃)を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物を得た。
・フェニルトリエトキシシラン(PhTES)37.44g(0.156mol(加水分解性シラン化合 物総量に対して48.67mol%相当))、
・グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)21.68g(0.078mol)、
・ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS)13.21g(0.064mol)、
・トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオ ロアルキル基の炭素数6)11.42g(0.022mol)、
・水25.93g、及び
・エタノール71.91g。
・得られた縮合物を2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加して固形分7質量%の縮合物含有アル コール溶液を調製した。
【0069】
上記縮合物含有アルコール溶液100gに対して、光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を0.35gの割合で添加した。さらにエタノールを添加して固形分2質量%の表面層用塗布液を調製した。
【0070】
次に、ゴムローラの弾性層上に表面層用塗布液をリング塗布(吐出量:0.008ml/s(リング部のスピード:30mm/s、総吐出量:0.064ml)した。
【0071】
次に、弾性層上にリング塗布した表面層用塗布液に254nmの波長の紫外線を積算光量が8500mJ/cm2になるように照射し、表面層用塗布液を硬化(架橋反応による硬化)させた。この硬化物を2〜3秒間放置して乾燥させて表面層を形成した。紫外線の照射には、ハリソン東芝ライティング(株)製の低圧水銀ランプを用いた。
【0072】
以上のようにして、支持体、該支持体上に形成された弾性層、および、該弾性層上に形成された表面層(表面層用塗布液を用いて形成したポリシロキサンを含有する層)を有する帯電ローラを作製した。
【0073】
(画像評価)
作製した帯電ローラと電子写真感光体とを、これらを一体に支持するプロセスカートリッジに組み込んだ。このプロセスカートリッジをA4紙縦出力用の電子写真装置(Color LaserJet 3500 ヒューレット・パッカード製)に装着して電子写真画像を形成し、得られた電子写真画像を評価した。
【0074】
画像出力は、15℃/10%RH環境下で行い、A4紙にハーフトーン画像(電子写真感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドットの線を間隔2ドットで描く画像)3000枚出力した。出力画像の評価は、1枚出力時(初期)および3000枚出力後(耐久後)において、出力画像を目視することによって行った。その結果、初期から耐久後まで、帯電ローラ起因の画像不良は見られなかった。
【0075】
また、上記とは別の帯電ローラを組み込んだカートリッジを準備した。帯電ローラと感光体が当接した状態で、このカートリッジを40℃、95%R.H.の環境下で30日間放置した。その後、もう一度、電子写真装置に組込み、25℃/50%RH環境下でハーフトーン画像の出力を行い、過酷環境放置後の画像評価を行った。その結果、帯電ローラの圧縮永久変形による画像不良は認められなかった。
【0076】
尚、上記の画像評価基準は以下のとおりである。
【0077】
○:画像不良が全く出ていないもの。
【0078】
△:画像不良が極わずかに発生したもの。
【0079】
×:画像不良がはっきりと発生したもの。
【0080】
<実施例2>
ベースゴムNBRをJSR社製 N230SL(結合ニトリル量35質量%、ムーニー粘度41.5)、カーボンブラックの配合量を53質量部とした以外は実施例1と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.4倍、抵抗バラツキは0.2オーダー、体積抵抗率は1.4×105Ω・cm、硬度は74°であった。
【0081】
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、耐久画像評価においても、過酷放置後の画像評価においても、帯電ローラ起因の画像不良は見られなかった。
【0082】
<実施例3>
ベースゴムNBRを日本ゼオン社製 Nipol DN3335(結合ニトリル量33質量%、ムーニー粘度34.4)、カーボンブラックの配合量を52質量部とした以外は実施例1と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.4倍、抵抗バラツキは0.3オーダー、体積抵抗率は1.9×105Ω・cm、硬度は75°であった。
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、耐久画像評価においても、過酷放置後の画像評価においても、帯電ローラ起因の画像不良は見られなかった。
【0083】
<実施例4>
ベースゴムNBRを日本ゼオン社製 Nipol DN219(結合ニトリル量33.5質量%、ムーニー粘度24.5)、カーボンブラックの配合量を43質量部とした以外は実施例1と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.2倍、抵抗バラツキは0.3オーダー、体積抵抗率は7.4×104Ω・cm、硬度は72°であった。
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、耐久画像評価においても、過酷放置後の画像評価においても、帯電ローラ起因の画像不良は見られなかった。
【0084】
<実施例5>
ベースゴムNBRをJSR社製 N240S(結合ニトリル量26質量%、ムーニー粘度51.0)、カーボンブラックの配合量を62質量部とした以外は実施例1と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.6倍、抵抗バラツキは0.2オーダー、体積抵抗率は5.3×104Ω・cm、硬度は77°であった。
【0085】
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、耐久画像評価においても、過酷放置後の画像評価においても、帯電ローラ起因の画像不良は見られなかった。
【0086】
<実施例6>
カーボンブラックにシースト600(東海カーボン社製 平均粒子径23nm、DBP吸油量75cm3/100g、pH8.0)を使用し、配合量を43質量部とした以外は実施例1と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.3倍、抵抗バラツキは0.2オーダー、体積抵抗率は1.8×105Ω・cm、硬度は71°であった。
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、耐久画像評価においても、過酷放置後の画像評価においても、帯電ローラ起因の画像不良は見られなかった。
【0087】
<実施例7>
カーボンブラックにシースト300(東海カーボン社製 平均粒子径28nm、DBP吸油量75cm3/100g、pH8.0)を使用し、配合量を59質量部とした以外は実施例1と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.4倍、抵抗バラツキは0.3オーダー、体積抵抗率は1.0×105Ω・cm、硬度は75°であった。
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、耐久画像評価においても、過酷放置後の画像評価においても、帯電ローラ起因の画像不良は見られなかった。
【0088】
<実施例8> カーボンブラックにトーカブラック#5500(東海カーボン社製 平均粒子径25nm、DBP吸油量155cm3/100g、pH5.0)を使用し、配合量を31質量部とした以外は実施例2と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.3倍、抵抗バラツキは0.3オーダー、体積抵抗率は6.2×104Ω・cm、硬度は67°であった。
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、耐久画像評価においては帯電ローラ起因の画像不良は見られなかったものの、過酷放置後の画像評価において、画像の端部に極わずかに帯電ローラの圧縮永久変形に起因すると考えられる黒スジ状の画像不良が見られた。
【0089】
<実施例9>
カーボンブラックにトーカブラック#5500を使用し、配合量を26質量部とした以外は実施例4と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.4倍、抵抗バラツキは0.4オーダー、体積抵抗率は9.2×104Ω・cm、硬度は65°であった。
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、耐久画像評価においては帯電ローラ起因の画像不良は見られなかったものの、過酷放置後の画像評価において、画像の端部に極わずかに帯電ローラの圧縮永久変形に起因すると考えられる黒スジ状の画像不良が見られた。
【0090】
<実施例10>
カーボンブラックにトーカブラック#7550(東海カーボン社製 平均粒子径21nm、DBP吸油量53cm3/100g、pH7.5)を使用し、配合量を65質量部とした以外は実施例1と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.5倍、抵抗バラツキは0.3オーダー、体積抵抗率は4.6×104Ω・cm、硬度は78°であった。
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、過酷放置後の画像評価においては帯電ローラ起因の画像不良は見られなかったものの、耐久画像評価において、帯電ローラ表面の汚れに起因すると考えられる帯電ローラ周期の極わずかな濃度ムラが確認された。
【0091】
<実施例11>
カーボンブラックにトーカブラック#7550を使用し、配合量を66質量部とした以外は実施例2と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.6倍、抵抗バラツキは0.4オーダー、体積抵抗率は6.9×104Ω・cm、硬度は78°であった。
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、過酷放置後の画像評価においては帯電ローラ起因の画像不良は見られなかったものの、耐久画像評価において、帯電ローラ表面の汚れに起因すると考えられる帯電ローラ周期の極わずかな濃度ムラが確認された。
【0092】
<比較例1>
カーボンブラックにケッチェンブラックEC600JD(ライオン社製 平均粒子径34nm、DBP吸油量495cm3/100g、pH9.0)を使用し、配合量を5質量部とした以外は実施例4と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.8倍、抵抗バラツキは1.2オーダー、体積抵抗率は4.0×104Ω・cm、硬度は56°であった。
【0093】
<比較例2>
カーボンブラックにVALCAN XC72(キャボット社製 平均粒子径30nm、DBP吸油量178cm3/100g、pH8.5)を使用し、配合量を22質量部とした以外は実施例2と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.6倍、抵抗バラツキは0.8オーダー、体積抵抗率は4.9×104Ω・cm、硬度は63°であった。
【0094】
<比較例3>
カーボンブラックにシーストG−SO(東海カーボン社製 平均粒子径43nm、DBP吸油量115cm3/100g、pH7.0)を使用し、配合量を75質量部とした以外は実施例2と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.6倍、抵抗バラツキは0.4オーダー、体積抵抗率は1.6×104Ω・cm、硬度は86°であった。
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、耐久画像評価において、帯電ローラ表面の汚れに起因すると考えられる帯電ローラ周期の濃度ムラが確認された。
【0095】
<比較例4>
カーボンブラックにMA11(三菱化学社製 平均粒子径29nm、DBP吸油量64cm3/100g、pH3.5)を使用し、配合量を77質量部とした以外は実施例2と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.7倍、抵抗バラツキは0.4オーダー、体積抵抗率は2.4×105Ω・cm、硬度は86°であった。
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、耐久画像評価において、帯電ローラ表面の汚れに起因すると考えられる帯電ローラ周期の濃度ムラが確認された。
【0096】
<比較例5>
ベースゴムNBRをJSR社製 N250SL(結合ニトリル量20質量%、ムーニー粘度43.0)、カーボンブラックはトーカブラック#5500で配合量を30質量部とした以外は実施例1と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.4倍、抵抗バラツキは0.5オーダー、体積抵抗率は6.8×104Ω・cm、硬度は60°であった。
【0097】
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、過酷放置後の画像評価において、帯電ローラの圧縮永久変形に起因すると考えられる帯電ローラピッチの横黒スジ画像不良が確認された。
【0098】
<比較例6>
ベースゴムNBRをJSR社製 N215SL(結合ニトリル量48質量%、ムーニー粘度45.0)、カーボンブラックはトーカブラック#7360SBで配合量を55質量部とした以外は実施例1と同様にゴム材料の調製を行った。実施例1と同様にして、弾性体層の形成、抵抗周ムラ、抵抗バラツキ、体積抵抗率の測定を行い、表面層を形成して画像評価を行った。その結果、抵抗周ムラは1.5倍、抵抗バラツキは0.4オーダー、体積抵抗率は5.3×104Ω・cm、硬度は89°であった。
【0099】
また、実施例1と同様に表面層を形成し、画像評価を行った。その結果、耐久画像評価において、帯電ローラ表面の汚れに起因すると考えられる帯電ローラ周期の濃度ムラが確認された。
【0100】
以上に述べた評価結果を表1、2にまとめた。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
表からか明らかなように、比較例1、2はカーボンブラックのストラクチャーが大きく、カーボン配合量が少ない為、電気抵抗のバラツキが大きい。比較例3はカーボンブラックの粒子径が大きく、比較例4はカーボンブラックのストラクチャーが小さい為、カーボンブラックの多量配合が必要で、その結果弾性層の硬度が高く、耐久画像評価にて画像不良が発生している。比較例5はNBR原料の結合ニトリル量が低く、カーボンブラックとNBR原料との親和性が低い為、過酷放置後に画像不良が発生している。比較例6はNBR原料の結合ニトリル量が高く、硬度が高い為、耐久画像評価にて画像不良が発生している。
【0104】
実施例1〜11は本発明の範囲であり、電気抵抗の周ムラは1.6倍以下、電気抵抗のバラツキも0.4オーダー以下であり、耐久画像評価、過酷放置後画像評価いずれにおいても画像評価ランクは△以上で実用上問題無い、良好な画像が得られている。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明における帯電ローラの例を説明するための模式的断面図である。
【図2】本発明における電子写真装置の例を説明するための模式的断面図である。
【図3】本発明における弾性層の体積抵抗率測定法を説明するための模式図である。
【図4】本発明におけるゴムローラの抵抗測定法を説明するための模式図である。
【図5】本発明におけるNBR原料のムーニー粘度と体積抵抗率が1×105Ω・cmとなるカーボンブラック配合量との関係を表したグラフである。
【符号の説明】
【0106】
1 帯電ローラ
11 芯金
12 弾性体層
13 表面層
21 像担持体
21a 感光層
21b 導電性支持体
21c 支軸
23 電源
23a 摺擦電源
24 露光手段
25 現像手段
26 転写ローラ
27 転写材
28 前露光手段
29 クリーニング手段
31 アルミシート
41 アルミドラム
42 外部電源
43 基準抵抗
4a ゴムローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成した弾性体層とを有する帯電部材であって、
結合ニトリル量が25質量%以上45質量%以下のアクリルニトリル−ブタジエン共重合体を含有するベースゴムに導電性粒子としてカーボンブラックを分散した半導電性ゴムからなり、該カーボンブラックは平均粒子径が20nm以上40nm以下の低ストラクチャーカーボンブラックであり、該半導電性ゴムは該アクリルニトリル−ブタジエン共重合体の温度100℃でのムーニー粘度をX、弾性体層の200Vで測定した体積抵抗率が1×105Ω・cmとなるカーボンブラックの配合量をYとした場合、下記関係式(1)
0.6X ≦ Y ≦ 0.6X+54 ・・・・・・ 式(1)
を満足していること特徴とする帯電部材。
【請求項2】
該アクリルニトリル−ブタジエン共重合体の温度100℃でのムーニー粘度をX、弾性体層の200Vで測定した体積抵抗率が1×105Ω・cmとなるカーボンブラック配合量をYとした場合、下記の関係式(2)
0.6X+19 ≦ Y ≦ 0.6X+40 ・・・・・式(2)
を満足していること特徴とする請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
該カーボンブラックはDBP吸油量が70cm3/100g以上100cm3/100g以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電部材。
【請求項4】
該カーボンブラックがベースゴム100質量部に対して30質量部以上70質量部以下配合されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項5】
該アクリルニトリル−ブタジエン共重合体は、温度100℃でのムーニー粘度が20以上50以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の帯電部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−299120(P2008−299120A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145627(P2007−145627)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】