説明

平版印刷版原版

【課題】赤外光に対し優れた感光性を有すると共に、耐刷性、現像性及び経時安定性に優れた平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】支持体上に、ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体を含有する下塗り層と、(A)光又は熱によりラジカルを発生する化合物、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー、及び(D)赤外線吸収剤を含有するネガ型記録層と、を順次積層してなることを特徴とする平版印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版に関し、特に、コンピュータ等のディジタル信号から直接製版できる、所謂、ダイレクト製版用の平版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるレーザーの発展は目ざましく、特に、近赤外線から赤外線領域に発光領域を持つ個体レーザーや半導体レーザーでは、高出力・小型化が進んでいる。したがって、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
【0003】
前述の赤外線領域に発光領域を持つ赤外線レーザーを露光光源として使用する、赤外線レーザー対応ネガ型平版印刷版原版は、赤外線吸収剤、ラジカル発生剤、及び重合性化合物を含有する感光性組成物からなるネガ記録層を有し、光又は熱により発生したラジカルを開始剤として重合反応を生起させることにより、露光部の記録層を硬化させて画像部を形成する、又は、赤外線吸収剤が染料の場合には、赤外線を吸収した染料からの電子移動により発生したラジカルを開始剤として重合反応を生起させることにより、露光部の記録層を硬化させて画像部を形成するという記録方式を利用している。
【0004】
また、レゾール樹脂、ノボラック樹脂、赤外線吸収剤、及び光酸発生剤の組み合わせからなる感光性組成物や平版印刷版が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。更に、特定の重合体、光酸発生剤、及び近赤外増感色素の組み合わせからなる平版印刷版が開示されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
これらの開示されている感光性組成物や平版印刷版は、光酸発生剤より発生した酸を開始剤として硬化反応を生起させて、硬化部(画像部)を形成するという機構を有している。
【0005】
上記したような光重合開始剤或いは光酸発生剤を用いた硬化反応により画像部を形成する感光性組成物に対しては、近赤外領域に充分高い感光性を付与するのは難しく、特に、赤外レーザー光を用いた走査露光に適用するには感光性が不足していた。
また、光重合開始剤或いは光酸発生剤を用いた硬化反応は、露光のみでは不十分な場合が多い。このため、上記したような感光性組成物を平版印刷版原版に適用した場合には、露光後或いは現像処理後に加熱処理して、硬化反応を促進完結させる必要があり、加熱処理は重要な製版工程であった。
【0006】
しかしながら、加熱処理は生産効率を低下させるのみではなく、品質を不安定にする要因を含んでいる。例えば、露光部/未露光部の溶解性の差を一定に保つのは難しく、十分な加熱が行われなければ現像液により露光部までが溶解する場合があり、逆に、加熱温度が高すぎる場合には未露光部が部分的に不溶化し、現像が十分に行われない場合がある等の問題点があった。
【0007】
そこで、これら課題に対し、近赤外領域に充分高い感光性、即ち、優れた感度を有し、結果として、加熱処理やオーバーコート層を必要としない、走査露光可能な感光性組成物及び平版印刷版材料が開示されている(例えば、特許文献5〜8参照)。しかしながら、これらの平版印刷版材料は、耐刷性、現像性及び経時安定性に関しては、不充分であった。
【特許文献1】特開平7−20629号公報
【特許文献2】特開平7−271029号公報
【特許文献3】特開平11−212252号公報
【特許文献4】特開平11−231535号公報
【特許文献5】特開2001−290271号公報
【特許文献6】特開2002−278081号公報
【特許文献7】特開2003−29408号公報
【特許文献8】特開2003−43687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、赤外光に対し優れた感光性を有すると共に、耐刷性、現像性及び経時安定性に優れた平版印刷版原版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の平版印刷版原版により達成された。
即ち、本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体を含有する下塗り層と、(A)光又は熱によりラジカルを発生する化合物、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー、及び(D)赤外線吸収剤を含有するネガ型記録層と、を順次積層してなることを特徴とする。
【0010】
本発明の作用は明確ではないが以下のように推測される。
本発明における、前記側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する重合体を含有する下塗り層により、ネガ型記録層と支持体との密着をより強固なものとし、耐刷性に優れたものとすると推測される。またアルカリ可溶性に優れるとともに、経時によるアルカリ可溶性に変化がなく、経時安定性(生保存性)を改良し得るものと推測される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、赤外光に対し優れた感光性を有すると共に、現像性及び経時安定性に優れた平版印刷版原版を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体を含有する下塗り層と、(A)光又は熱によりラジカルを発生する化合物、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー、及び(D)赤外線吸収剤を含有するネガ型記録層と、を順次積層してなることを特徴とする。
ここで「順次積層してなる」とは、支持体上に、下塗り層とネガ型記録層とがこの順に設けられることを指し、目的に応じて設けられる他の層(例えば、バックコート層、オーバーコート層等)の存在を否定するものではない。
以下、本発明の平版印刷版原版に含有される各部材について順次説明する。
【0013】
(ネガ型記録層)
本発明の平版印刷版原版におけるネガ型記録層は、(A)光又は熱によりラジカルを発生する化合物、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー、及び(D)赤外線吸収剤を含有する。
【0014】
〔(A)光又は熱によりラジカルを発生する化合物(ラジカル発生剤)〕
本発明に用いられる光又は熱によりラジカルを発生する化合物(以下、適宜、ラジカル発生剤と称する。)は、光又は熱によりラジカルを発生し得る化合物であれば、如何なる化合物を用いることができる。
ラジカル発生剤としては、例えば、有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換された化合物(例えば、s−トリアジン化合物及びオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物等のトリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物が挙げられる。)、ヘキサアリールビスイミダゾール、チタノセン化合物、ケトオキシム化合物、チオ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
【0015】
本発明においては、これらのラジカル発生剤の中でも、特に、有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換化合物が好ましく用いられる。更に好ましくは、有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物を組み合わせて用いることである。
前記有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記一般式(1)で表されることが好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
一般式(1)中、R11、R12、R13及びR14は、各々同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、又は複素環基を表し、R11、R12、R13及びR14の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0018】
前記有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンが同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオン及びカチオン性増感色素が挙げられる。
前記オニウムイオンとしては、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ヨードニウムイオン及びホスホニウムイオンが挙げられる。
【0019】
前記有機ホウ素塩として、前記有機ホウ素アニオンとアルカリ金属イオン又はオニウムイオンとの塩とを用いる場合には、別に増感色素(本発明においては(D)赤外線吸収剤が該当する。)を添加することで、色素が吸収する光の波長範囲での感光性を付与することが行われる。
また、有機ホウ素塩として、有機ホウ素アニオンとカチオン性増感色素との塩を用いる場合には、該カチオン性増感色素の吸収波長に応じて感光性が付与される。しかし、この場合においても、更に、アルカリ金属イオン又はオニウムイオンと有機ホウ素アニオンとの塩を併せて含有するのが好ましい。
【0020】
本発明に用いられる有機ホウ素塩としては、前記一般式(1)で表される有機ホウ素アニオンを含む塩が好ましく、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオン及びオニウムイオンが好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとオニウムイオンとの塩であり、具体的には、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。
特に好ましい有機ホウ素塩の具体例として、(BC−1)〜(BC−6)を下記に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下の具体例において、Meはメチルを、n−Buはn−ブチルを、t−Buはt−ブチルを、Phはフェニルを示す。
【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
本発明の平版印刷版原版は、上述のラジカル発生剤の他に、他のラジカル発生剤を併用してもよい。他のラジカル発生剤としては、トリハロアルキル置換化合物が好ましく挙げられる。
トリハロアルキル置換化合物とは、具体的には、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物として、s−トリアジン誘導体及びオキサジアゾール誘導体、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0024】
トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物の特に好ましい具体例として、(T−1)〜(T−15)を、トリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい具体例として、(BS−1)〜(BS−10)を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
本発明の平版印刷版原版において、他の好ましいラジカル発生剤として、有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、クメンヒドロペルオキシド、第3ブチルヒドロペルオキシド、ジクロルペルオキシド、ジ第3ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、及び下記に示す構造を有する化合物等が挙げられる。
【0029】
【化7】

【0030】
上述したようなラジカル発生剤の含有量の総量は、後述する(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体に対して、1〜100質量%の範囲で含まれることが好ましく、更には1〜40質量%の範囲で含まれることが好ましい。
また、他の好ましいラジカル発生剤の含有量は、(A)光又は熱によりラジカルを発生する化合物1質量部に対して、0.1〜1.0質量部であることが好ましい。
【0031】
〔(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体(バインダーポリマー)〕
本発明において、バインダーポリマーとして用いられる、ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体(以下、「特定重合体」という場合がある。)とは、ビニル基が置換したフェニル基が直接若しくは連結基を介して主鎖と結合したものである。該連結基としては、特に限定されず、任意の基、原子、又はそれらが複合した基が挙げられる。
【0032】
また、前記フェニル基は、当該ビニル基の他に、置換可能な基若しくは原子で置換されていてもよく、かかる置換可能な基若しくは原子としては、具体的に、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。更に、前記ビニル基は、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていてもよい。
前記ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体は、下記一般式(2)で表される基を側鎖に有する重合体である。
【0033】
【化8】

【0034】
一般式(2)中、Zは連結基を表し、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等を表し、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていてもよい。Rは置換可能な基又は原子を表す。nは0又は1を表し、mは0〜4の整数を表し、kは1〜4の整数を表す。
【0035】
一般式(2)で表される基について更に詳細に説明する。
一般式(2)においてZで表される連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R)−、−C(O)−O−、−C(R)=N−、−C(O)−、スルホニル基、下記に示す基、及び複素環構造等が、単独若しくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR及びRは、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基は、更に、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0036】
【化9】

【0037】
前記Zで表される連結基が複素環構造の場合の具体例としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらの複素環構造は更に、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0038】
また、Rで表される置換可能な基又は原子としては、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が挙げられ、更に、これらの基又は原子は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0039】
前記一般式(2)で表される基の具体例として、(K−1)〜(K−20)を以下に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0040】
【化10】

【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
【化13】

【0044】
前記一般式(2)で表される基の中でも、下記に示す構造を有するものが特に好ましい。即ち、一般式(2)におけるR及びRが水素原子で、Rが水素原子若しくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)であるものが好ましい。更に、Zで表される連結基としては、複素環構造を含むものが好ましく、kは1又は2であるものが好ましい。
【0045】
本発明における特定重合体は、アルカリ性水溶液に可溶性を有することが好ましい態様である。そのため、本発明における特定重合体は、ビニル基が置換したフェニル基(好ましくは、前記一般式(2)で表される基)を有するモノマーに加え、カルボキシル基含有モノマーを共重合成分として含む共重合体であることが特に好ましい。
【0046】
この場合、特定重合体におけるビニル基が置換したフェニル基(一般式(2)で表される基)を有するモノマーの割合としては、特定重合体の全組成100質量%中に対して、1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。前記特定重合体におけるビニル基が置換したフェニル基を有するモノマーの割合が1質量%以上であると、その導入の効果が顕著に認められる。また、95質量%以下であると、共重合体がアルカリ水溶液に充分に溶解する。
【0047】
更に、特定重合体におけるカルボキシル基含有モノマーの割合は、同じく5質量%以上99質量%以下であることが好ましい。前記カルボキシル基含有モノマーの割合が5質量%以上であると、特定重合体がアルカリ水溶液に充分に溶解する。
【0048】
また、共重合成分として用いられるカルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等のような例が挙げられる。
【0049】
また、本発明における特定重合体は、かかる特定共重合体を構成する共重合成分として、側鎖に安息香酸を含有するポリアセタール、カルボキシベンズアルデヒド変性ポリビニルアルコールなどを用いることにより、カルボキシル基を含有させてもよい。
【0050】
本発明におけるビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体は、カルボキシル基を有するモノマー以外にも共重合体中に他のモノマー成分を導入して多元共重合体としてもよい。こうした場合に、共重合体中に組み込むことができ得るモノマーとしては、例えば、
スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類;
メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アリールエステル或いはメタクリル酸アルキルアリールエステル類;
メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有するメタクリル酸エステル類;
メタクリル酸−2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基を含有するメタクリル酸エステル類;
これらのメタクリル酸エステル類に対応するアクリル酸エステル類;
【0051】
ビニルホスホン酸等のリン酸基を有するモノマー類;
アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基を有するモノマー類;
ビニルスルホン酸及びその塩、アリルスルホン酸及びその塩、メタリルスルホン酸及びその塩、スチレンスルホン酸及びその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類;
4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類;
4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等の4級アンモニウム塩基を有するモノマー類;
アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド誘導体;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、
メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
その他、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等の各種モノマーを、適宜、使用することができる。
【0052】
これらのモノマーの特定重合体中に占める割合としては、先に述べた特定重合体組成中における一般式(2)で表される基を有するモノマー及びカルボキシル基含有モノマーの好ましい割合が保たれている限りにおいて任意の割合で導入することができる。
【0053】
特定重合体の分子量については好ましい範囲が存在し、重量平均分子量で1000〜100万の範囲であることが好ましく、1万〜30万の範囲にあることが特に好ましい。
【0054】
本発明に係る一般式(2)で表される基を側鎖に有する重合体の具体例として、(P−1)〜(P−13)を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。尚、以下の構造式中、数字は、共重合体の全組成100質量%中における各繰り返し単位の質量%を表す。
【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
【化16】

【0058】
【化17】

【0059】
【化18】

【0060】
本発明に使用されるバインダーポリマーとしての(B)特定重合体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらバインダーポリマーは、画像部の強度(膜性、膜強度)や画像形成性の観点から、ネガ型記録層の全固形分に対し、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%の割合で添加される。
また、本発明における(B)特定重合体は、効果を損なわない範囲において、従来公知の他のバインダーポリマーと混合して用いることもできる。
【0061】
〔(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー(重合性化合物)〕
本発明の平版印刷版原版において、重合性化合物として用いられる、ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー(以下、特定モノマーと称する。)は、前述した(A)ラジカル発生剤より発生するラジカルにより生成するスチリルラジカル同士の再結合により効果的に架橋を行うため、これらの成分を含む本発明の感光性組成物は、高感度で、加熱処理を必要としないネガ型記録層に好ましく用いることができる。
本発明における特定モノマーは、代表的には、下記一般式(3)で表される化合物である。
【0062】
【化19】

【0063】
一般式(3)中、Zは、連結基を表し、R21、R22及びR23は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等を表し、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていてもよい。R24は置換可能な基又は原子を表す。mは0〜4の整数を表し、kは2以上の整数を表す。
【0064】
一般式(3)で表される化合物について更に詳細に説明する。Zの連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R)−、−C(O)−O−、−C(R)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環構造、及びベンゼン環構造等の単独若しくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR及びRは、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0065】
で表される連結基が複素環構造である場合の複素環構造としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらの複素環構造は更に、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0066】
また、前記R24で表される置換可能な基又は原子としては、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が挙げられ、更に、これらの基又は原子は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0067】
前記一般式(3)で表される化合物の中でも、下記に示す構造を有するものが好ましい。即ち、一般式(3)におけるR21及びR22が水素原子で、R23が水素原子若しくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)で、kが2〜10の整数である化合物が好ましい。
以下に一般式(3)で表される化合物の具体例として、(C−1)〜(C−11)を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0068】
【化20】

【0069】
【化21】

【0070】
【化22】

【0071】
本発明に使用される重合性化合物としての(C)特定モノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記した特定モノマーの添加量は、上述した(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体(バインダーポリマー)1質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下の範囲で含まれることが好ましく、0.05質量部以上1質量部以下の範囲で含まれることが特に好ましい。
【0072】
また、本発明における(C)特定モノマーは、効果を損なわない範囲において、従来公知の他の重合性化合物と混合して用いることもできる。
前記他の重合性化合物としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
【0073】
また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、さらにハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0074】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0075】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等が挙げられる。
【0076】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等が挙げられる。
【0077】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等が挙げられる。
【0078】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等が挙げられる。
【0079】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等が挙げられる。
【0080】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0081】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等が挙げられる。
【0082】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有すものをあげる事ができる。
【0083】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(i)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R51)COOCH2CH(R52)OH (i)
(ただし、一般式(i)中、R51及びR52は、HまたはCHを示す。)
【0084】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0085】
さらに、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0086】
その他の重合性化合物の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号公報、特公平1−40337号公報、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌 vol. 20、No. 7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0087】
前記他の重合性化合物は、(C)特定モノマー1質量部に対して、0.1質量部以上0.9質量部以下の範囲で含まれることが好ましい。
【0088】
〔(D)赤外線吸収剤〕
本発明に用いられる赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能及び励起電子を発生する機能を有している。赤外線吸収剤が光を吸収した際、前述した(A)ラジカル発生剤が分解し、ラジカルを発生する。
本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760nm〜1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料であることが好ましい。
【0089】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0090】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0091】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0092】
好ましく用いられる赤外線吸収剤としての染料の具体例として、(S−1)〜(S−14)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
【化23】

【0094】
【化24】

【0095】
【化25】

【0096】
また、ここで例示した赤外線吸収剤(カチオン性増感色素)の対アニオンを、前述したように、有機ホウ素アニオンに置換した赤外線吸収剤も同様に用いることができる。
これらの染料は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の平版印刷版原版において、赤外線吸収剤としての染料の含有量は、ネガ型記録層1m当たり、3〜300mgが好ましく、10〜200mg/mがより好ましい。
【0097】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0098】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0099】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0100】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この好ましい粒径の範囲において、感光性組成物中における顔料の優れた分散安定性が得られ、また、平版印刷版原版に適用した場合には、均一なネガ型記録層が得られる。
【0101】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0102】
これらの赤外線吸収剤としての顔料は、ネガ型記録層における均一性や、ネガ型記録層の耐久性の観点から、ネガ型記録層に含まれる全固形分に対し、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加する。
【0103】
本発明におけるネガ型記録層には、以上の必須成分(A)〜(D)の他に、更にその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましいその他の成分に関し例示する。
【0104】
〔重合禁止剤〕
本発明におけるネガ型記録層においては、ネガ型記録層の製造中或いは保存中において、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、即ち、(C)特定モノマー(重合性化合物)の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、ネガ型記録層中の全不揮発性成分に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0105】
また、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程でネガ型記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、ネガ型記録層中の全不揮発性成分に対して、0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0106】
〔着色剤〕
更に、本発明におけるネガ型記録層には、その着色を目的として染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、染料、顔料の使用が好ましい。具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。着色剤としての染料及び顔料の添加量はネガ型記録層中の全不揮発性成分に対して、0.5質量%以上5質量%以下が好ましい。染料の場合、対アニオンとしてハロゲンイオンを含まないものが好ましい。
【0107】
〔その他の添加剤〕
本発明におけるネガ型記録層には更に目的に応じて、ホスフィン、ホスホネート、ホスファイト等の酸素除去剤や還元剤、退色防止剤、界面活性剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防カビ剤、帯電防止剤やその他種々の特性を付与する添加剤を希釈溶剤等と混合して使用してもよい。
【0108】
また、硬化皮膜の物性を改良するための無機充填剤や、その他可塑剤、ネガ型記録層表面のインク着肉性を向上させ得る感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、(B)特定重合体(バインダーポリマー)と(C)特定モノマーとの合計質量に対し、一般的に10質量%以下の範囲で添加することができる。
また、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するために、UV開始剤や、熱架橋剤等の添加も行うことができる。
【0109】
更に、重合を促進する目的で、アミンやチオール、ジスルフィド等に代表される重合促進剤や連鎖移動剤等を添加することができる。それらの具体例としては、例えば、N−フェニルグリシン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルアニリンなどが挙げられる。
【0110】
本発明におけるネガ型記録層は、(D)赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱及び/又は光により、(A)光又は熱によりラジカルを発生する化合物からラジカルが発生する。そして、発生したラジカルを開始剤として、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマーの重合反応が連鎖的に生起し、硬化する。また、本発明においては、バインダーポリマーとして(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体を用いているため、(A)成分から発生したラジカルによりスチリルラジカルが生成し、スチリルラジカル同士で再結合し、効果的に架橋を行うため、形成された皮膜は疎水的な特性を有し、耐現像性に優れた表面を得られることから優れた特性の硬化皮膜を形成しうるという機能を有している。
【0111】
これらのことから、このような(A)〜(D)成分を含む本発明におけるネガ型記録層は、(A)光又は熱によりラジカルを発生する化合物と、(D)赤外線吸収剤と、の組み合わせにより、高感度化を達成することができると共に、大気中の酸素の影響を防止するオーバーコート層を設けなくとも十分に硬化が可能であり、かつ、露光後の加熱処理を行う必要のないことが特徴として挙げられる。
また、本発明におけるネガ型記録層は、更に、特定重合体がカルボン基含有モノマーを共重合成分として含む重合体であると、該カルボン基含有モノマーに起因して、高いアルカリ可溶性と、その持続性に優れることから、生保存性(経時安定性)が良好となるという効果を奏する。
【0112】
本発明におけるネガ型記録層は、既述の(A)光又は熱によりラジカルを発生する化合物、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー、及び(D)赤外線吸収剤を種々の有機溶剤に溶かして、後述する下塗り層上に塗布することにより設けられる。
ここで使用する溶媒としては、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
【0113】
前記ネガ型記録層の被覆量(厚さ)は、主に、ネガ型記録層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性に影響し得るもので、用途に応じ適宜選択することが望ましい。
本発明の主要な目的である走査露光用平版印刷版原版としては、耐刷性、感度等の観点から、その被覆量は乾燥後の質量で0.1〜10g/mの範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜5g/mである。
【0114】
[ネガ型記録層の物性]
本発明の平版印刷版原版におけるネガ型記録層の物性としては、pH10〜13.5のアルカリ現像液に対する未露光部の現像速度が80nm/sec以上、かつ、該アルカリ現像液の露光部における浸透速度が100nF/sec以下であることが好ましい。
なお、ここで、pH10〜13.5のアルカリ現像液による現像速度とは、ネガ型記録層の膜厚(m)を現像に要する時間(sec)で除した値であり、アルカリ現像液の浸透速度とは、導電性支持体上に前記ネガ型記録層を製膜し、現像液に浸漬した場合の静電容量(F)の変化速度を示す値である。
以下に、本発明における「アルカリ現像液に対する現像速度」及び「アルカリ現像液の浸透速度」の測定方法について詳細に説明する。
【0115】
[アルカリ現像液に対する現像速度の測定]
ここで、ネガ型記録層のアルカリ現像液に対する現像速度とは、ネガ型記録層の膜厚(m)を現像に要する時間(sec)で除した値である。
本発明における現像速度の測定方法としては、質量に示すように、アルミニウム支持体上に未露光のネガ型記録層(図1中では感光層と表記)を備えたもの(図1中では感材と表記)をpH10〜13.5の範囲の一定のアルカリ現像液(30℃)中に浸漬し、ネガ型記録層の溶解挙動をDRM干渉波測定装置で調査した。図1に、ネガ型記録層の溶解挙動を測定するためのDRM干渉波測定装置の概略図を示す。本発明においては、640nmの光を用い干渉により膜厚の変化を検出した。現像挙動がネガ型記録層表面からの非膨潤的現像の場合、膜厚は現像時間に対して徐々に薄くなり、その厚みに応じた干渉波が得られる。また、膨潤的溶解(脱膜的溶解)の場合には、膜厚は現像液の浸透により変化するため、きれいな干渉波が得られない。
【0116】
この条件において測定を続け、ネガ型記録層が完全に除去され、膜厚が0となるまでの時間(現像完了時間)(s)と、ネガ型記録層の膜厚(μm)より、現像速度を以下の式により求めることができる。この現像速度が大きいものほど、現像液により容易に膜が除去され、現像性が良好であると判定する。
(未露光部の)現像速度=〔ネガ型記録層厚(μm)/記録完了時間(sec)〕
【0117】
[アルカリ現像液の浸透速度の測定]
また、アルカリ現像液の浸透速度とは、導電性支持体上に前記ネガ型記録層を製膜し、現像液に浸漬した場合の静電容量(F)の変化速度を示す値である。
本発明における浸透性の目安となる静電容量の測定方法としては、図2に示すように、pH10〜13.5の範囲の一定のアルカリ現像液(28℃)中にアルミニウム支持体上に所定の露光量にて露光を行ない、硬化したネガ型記録層(図2中では記録層と表記)を備えたものを一方の電極として浸漬し、アルミニウム支持体に導線をつなぎ、他方に通常の電極を用いて電圧を印加する方法が挙げられる。電圧を印加後、浸漬時間の経過に従って現像液が支持体とネガ型記録層との界面に浸透し、静電容量が変化する。
【0118】
この静電容量が変化するまでにかかる時間(s)と、ネガ型記録層の膜厚(μm)より以下の式により求めることができる。この浸透速度が小さいものほど、現像液の浸透性が低いと判定する。
(露光部の)現像液浸透速度=
〔ネガ型記録層厚(μm)/静電容量変化が一定になるまでに要する時間(s)〕
【0119】
本発明におけるネガ型記録層の好ましい物性としては、上記測定によるpH10〜13.5のアルカリ現像液による未露光部の現像速度が、好ましくは80〜400nm/secであり、同様のアルカリ現像液のネガ型記録層に対する浸透速度は90nF/sec以下であることが好ましい。また、上記測定によるpH10〜13.5のアルカリ現像液による未露光部の現像速度が、更に好ましくは90〜200nm/secであり、同様のアルカリ現像液のネガ型記録層に対する浸透速度は80nF/sec以下であることが好ましい。現像速度の上限値、或いは、浸透速度の下限値には、特に制限はないが、両者のバランスを考慮するに、未露光部の現像速度は90〜200nm/secの範囲であることがより好ましく、アルカリ現像液のネガ型記録層に対する浸透速度は80nF/sec以下であることが好ましい。
【0120】
ネガ型記録層の未露光部の現像速度や硬化後のネガ型記録層に対するアルカリ現像液の浸透速度の制御は、常法により行うことができるが、代表的なものとしては、未露光部の現像速度の向上には、親水性の化合物の添加が有用であり、露光部への現像液浸透抑制には、疎水性の化合物の添加する手段が有用である。
本発明において、上述の本発明に係るネガ型記録層を構成する各成分(本発明の感光性組成物成分)の含有量などを調整することで、ネガ型記録層の現像速度、現像液の浸透速度を上記の好ましい範囲に容易に制御することができる。また、本発明におけるネガ型記録層は、この物性値の範囲とすることが好ましい。
【0121】
(下塗り層)
本発明の平版印刷版原版は、ネガ型記録層と支持体との密着をより強固なものとし、耐刷性に優れたものとするために、ネガ型記録層と支持体との間に下塗り層が形成される。
本発明における下塗り層は、ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体を含有する。該ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体としては、少なくとも、(a1)ビニル基が置換したフェニル基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位、(a2)支持体表面と相互作用する官能基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位、及び(a3)親水性官能基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位、を有する共重合体であることが好ましい。
【0122】
(a1)ビニル基が置換したフェニル基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位
前記共重合体におけるビニル基が置換したフェニル基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a1)」ともいう)としては、下記一般式(2)で表される繰り返し単位が好ましい。ただし、下記一般式(2)は、既述のネガ型記録層の(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体における一般式(2)と同義である。
【0123】
【化26】

【0124】
本発明の平版印刷版原版は、下塗り層が、ネガ型記録層が含有する重合体が有する繰り返し単位と、同じ繰り返し単位を有する重合体を含有することが、ネガ型記録層と下塗り層との密着性を向上させる観点から特に好ましい。
【0125】
(a2)支持体表面と相互作用する官能基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位
支持体表面と相互作用する官能基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a2)」ともいう)としては、下記一般式(A2)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0126】
【化27】

【0127】
一般式(A2)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。Lは−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。Qは支持体表面と相互作用する官能基(以下、「特定官能基」という場合がある。)を表す。
【0128】
前記特定官能基としては、具体的には支持体表面のSi−OH、Si−O、Al3+、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等と共有結合、イオン結合、水素結合、極性相互作用、ファンデルワールズ相互作用などの相互作用が可能な基が挙げられる。特定官能基の具体例を以下に挙げる。
【0129】
【化28】

【0130】
前記特定官能基の具体例中、R11〜R13はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基、またはアルケニル基を表し、MおよびMはそれぞれ独立に、水素原子、金属イオン又はアンモニウムイオンを表し、Xはカウンターアニオンを表す。
これらのなかでも特定官能基としては、アンモニウム基、ピリジニウム基等のオニウム塩基、リン酸エステル基、ホスホン酸基、ホウ酸基、アセチルアセトン基などのβ−ジケトン基などが好適である。
【0131】
一般式(A2)において、Lは−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。
組み合わせからなるLの具体例として、下記L1〜L18を挙げることができる。なお、下記具体例において左側が主鎖に結合し、右側が特定官能基に結合する。
L1:−CO−NH−二価の脂肪族基−O−CO−
L2:−CO−二価の脂肪族基−O−CO−
L3:−CO−O−二価の脂肪族基−O−CO−
L4:−二価の脂肪族基−O−CO−
L5:−CO−NH−二価の芳香族基−O−CO−
L6:−CO−二価の芳香族基−O−CO−
L7:−二価の芳香族基−O−CO−
L8:−CO−二価の脂肪族基−CO−O−二価の脂肪族基−O−CO−
L9:−CO−二価の脂肪族基−O−CO−二価の脂肪族基−O−CO−
L10:−CO−二価の芳香族基−CO−O−二価の脂肪族基−O−CO−
L11:−CO−二価の芳香族基−O−CO−二価の脂肪族基−O−CO−
L12:−CO−二価の脂肪族基−CO−O−二価の芳香族基−O−CO−
L13:−CO−二価の脂肪族基−O−CO−二価の芳香族基−O−CO−
L14:−CO−二価の芳香族基−CO−O−二価の芳香族基−O−CO−
L15:−CO−二価の芳香族基−O−CO−二価の芳香族基−O−CO−
L16: −CO−NH−
L17: −CO−O−
L18: −二価の芳香族基−
【0132】
(a3)親水性官能基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位
親水性官能基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a3)」ともいう)は、親水性官能基が、−COOM、−SO、−OH、−OSO、−CONR、−P(=O)(OM、又は−(RO)−Rであることが好ましい。ここで、Mは、水素原子、金属イオン又はアンモニウムイオンを表し、R及びRは、各々独立して、水素原子又はアルキル基を表し、Rは、2価の炭化水素基を表し、nは、1〜100の整数を表す。
繰り返し単位(a3)は、下記一般式(A3)で表されることが好ましい。
【0133】
【化29】

【0134】
式中、R〜RおよびLは、前記一般式(A2)におけるR〜RおよびLと同義である。Wは下記基を表す。
【0135】
【化30】

【0136】
上述のWにおいて、Mは前記一般式(A2)におけるMと同義である。
およびRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。
は2価の炭化水素基を表す。
nは1〜100の整数を表す。
【0137】
下塗り層が含有する共重合体の分子量としては、重量平均分子量で500〜100,000の範囲が好ましく、700〜50,000の範囲がより好ましい。
また、下塗り層が含有する共重合体を構成するモノマーにおける、繰り返し単位(a1)の比率は、5〜80モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましい。
【0138】
更に、下塗り層が含有する共重合体を構成するモノマーにおける、繰り返し単位(a2)の比率は、5〜80モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましい。
更に又、下塗り層が含有する共重合体を構成するモノマーにおける、繰り返し単位(a3)の比率は、5〜80モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましい。
【0139】
本発明において用いられる共重合体の具体例として、(A−1)〜(A−21)を以下に示すが、これらに限定されるものではない。尚、(A−1)〜(A−21)において、数字は、共重合体の全組成100モル%中における各繰り返し単位のモル%を表す。尚、(A−1)〜(A−21)の重量平均分子量は何れも約50000である。
【0140】
【化31】

【0141】
【化32】

【0142】
【化33】

【0143】
【化34】

【0144】
【化35】

【0145】
【化36】

【0146】
【化37】

【0147】
【化38】

【0148】
【化39】

【0149】
本発明において、これらの共重合体を下塗り層に用いる場合は、通常該共重合体を溶剤で希釈して用いる。溶媒としては、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、THF、DMF、1−メトキシ−2−プロパノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒が挙げられ、特にアルコール類が好ましい。これらの有機溶媒は混合して用いることもできる。
【0150】
この場合の下塗り層塗布液の濃度としては、0.001〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%であり、さらに好ましくは0.05〜1質量%である。下塗り層には、必要に応じて後述する界面活性剤を添加してもよい。
【0151】
また、下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/mであるのが好ましく、3〜30mg/mであるのがより好ましい。
【0152】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版の支持体としては、従来公知の、平版印刷版原版に使用される親水性支持体を限定無く使用することができる。
使用される支持体は寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙若しくはプラスチックフィルム等が含まれ、これらの表面に対し、必要に応じ親水性の付与や、強度向上等の目的で、適切な公知の物理的、化学的処理を施してもよい。
【0153】
特に、好ましい支持体としては、紙、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられ、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度にすぐれた表面を提供できるアルミニウム板は更に好ましい。また、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
【0154】
本発明における支持体として好適なアルミニウム板とは、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属板であり、純アルミニウム板の他、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又はアルミニウム(合金)がラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルム又は紙の中から選ばれる。以下の説明において、上記に挙げたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体をアルミニウム支持体と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがあり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。本発明では純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のもの、例えば、JIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などを適宜利用することができる。
【0155】
また、本発明に用いられるアルミニウム支持体の厚みは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさ及びユーザーの希望により適宜変更することができるが、取り扱い性やCTP露光装置内でのジャミングの発生などの観点から、0.25mm〜0.55mmが好ましく、0.3〜0.50mmがより好ましい。
更に、本発明に好適なアルミニウム支持体は、下記に示すような表面形状を有していることが好ましい。
【0156】
[アルミニウム支持体の表面形状]
本発明におけるアルミニウム支持体は、表面形状のファクターである、Ra、ΔS、a45が、それぞれ、下記条件(i)〜(iii)を満たすことが好ましい。
(i) Ra:0.2〜0.40μm
(ii) ΔS:35〜85%
(iii) a45:25〜55%
ここで、Raは、表面粗さを表す。
ΔSは、近似三点法により求められる実面積Sと、幾何学的測定面積Sとから、下記式により求められる。
ΔS(%)=(S−S)/S×100
a45は、波長0.2μm以上2μm以下の成分を抽出して得られる傾斜度45゜以上の部分の面積率を表す。
以下、これらの表面形状について詳細に説明する。
【0157】
(i)Raは表面粗さを表す。ここで、アルミニウム支持体の表面粗さ(Ra)とは、アルミニウム圧延方向に対し直角方向の中心線平均粗さ(算術平均粗さ)をいい、蝕針計で測定した粗さ曲線から、その中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、それに直交する軸をY軸として、粗さ曲線をY=f(X)で表したとき、下記式で与えられた値をμm単位で表したものである。(Lの決定及び平均粗さの計測はJIS B 0601に従う。)
【0158】
【数1】

【0159】
一般に保水性を向上させるには、表面粗さを大きくすることが有効であるが、表面粗さを大きくすると局所的に深い凹が生じ易くなり、深い凹部は現像不良の原因となるためポツ残膜が生じやすくなるため、Raは下記に示す範囲であることを要する。
即ち、本発明においては、Raは0.20〜0.40μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.20〜0.35μmの範囲であり、更に好ましくは0.25〜0.35μmの範囲である。
【0160】
ΔSは、後に詳述するように、原子間力顕微鏡を用いて支持体表面の50×50μmを512×512点測定して求められる3次元データから、近似三点法により求められる実面積Sと、幾何学的測定面積(見掛け面積)Sとから、下記式により求められる。
ΔS(%)=(S−S)/S×100
表面積比ΔSは、幾何学的測定面積Sに対する粗面化処理による実面積Sの増加の程度を示すファクターである。
【0161】
ΔSが大きくなると、ネガ型記録層との接触面積が大きくなり、結果として耐刷性を向上させることができるため、ΔSは下記に示す範囲であることが好ましい。
即ち、本発明においては、ΔSは35〜85%の範囲であることが好ましく、より好ましくは40〜85%の範囲であり、更に好ましくは40〜80%の範囲である。
【0162】
a45は、後に詳述するように、原子間力顕微鏡を用いて支持体表面の50×50μmを512×512点測定して求められる3次元データから、波長0.2μm以上2μm以下の成分を抽出して得られる傾斜度45゜以上の部分の面積率を表す。
傾斜度45゜以上の斜面の面積率(急峻度)a45は、支持体表面の微細な形状のとがり具合を表すファクターである。具体的には、支持体表面の凹凸の中で、一定角度以上の大きさの傾斜を有する面積の実面積に対する割合を表す。
【0163】
傾斜度45゜以上の斜面の面積率(急峻度)a45は、ネガ型記録層と支持体との密着性を優れたものとし、耐刷性を向上させるためには、より大きくするのが好ましい。一方、非画像部におけるインキの引っ掛かりを抑制し、耐汚れ性を向上させるためには、より小さくするのが好ましい。これらのことから、a45は下記の範囲であることが好ましい。
即ち、本発明においては、a45は25〜55%の範囲であることが好ましく、より好ましくは30〜55%の範囲であり、更に好ましくは30〜50%の範囲である。
【0164】
本発明におけるアルミニウム支持体において、ΔS、a45を求める方法は、以下の通りである。
【0165】
(1)原子間力顕微鏡による表面形状の測定
本発明においては、ΔS、a45を求めるために、まず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)により表面形状を測定し、3次元データを求める。
測定は、例えば、以下の条件で行うことができる。即ち、アルミニウム支持体を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用する。カンチレバーは共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのもの(SI−DF20、NANOPROBE社製)を用い、DFMモード(Dynamic ForceMode)で測定する。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求める。
計測の際は、表面の50×50μmを512×512点測定する。XY方向の分解能は1.9μm、Z方向の分解能は1nm、スキャン速度は60μm/secとする。
【0166】
(2)3次元データの補正
ΔSの算出には、上記(1)で求められた3次元データをそのまま用いるが、a45の算出には、上記(1)で求められた3次元データから波長0.2μm以上2μm以下の成分を除去する補正をしたものを用いる。この補正により、平版印刷版原版に用いる支持体のような深い凹凸を有する表面をAFMの探針で走査した場合に、探針が凸部のエッジ部分に当たって跳ねたり、深い凹部の壁面に探針の尖端以外の部分が接触したりして生じるノイズを除去することができる。
補正は、上記(1)で求められた3次元データを高速フーリエ変換をして周波数分布を求め、次いで、波長0.2μm以上2μm以下の成分を除去した後、フーリエ逆変換をすることにより行う。
【0167】
(3)各ファクターの算出
・ΔSの算出
上記(1)で求められた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sとする。表面積比Δ
Sは、得られた実面積Sと幾何学的測定面積Sとから、下記式により求められる。S
は幾何学的測定面積であり、S=L×Lで求められ、本発明においてはL=L=5
0μmである。
ΔS(%)=(S−S)/S×100
【0168】
・a45の算出
上記(2)で補正して得られた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形と基準面とのなす角を全データについて算出し、傾斜度分布曲線を求め、一方で、該微小三角形の面積の総和を求めて実面積とする。傾斜度分布曲線より、実面積に対する傾斜度45度以上の部分の面積の割合a45を算出する。
【0169】
本発明において、上述した表面形状を有するアルミニウム支持体は、後述の表面処理が施されることで作製することができる。
以下、アルミニウム支持体に施される表面処理について説明する。
【0170】
(粗面化処理)
粗面化処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレインなどがある。更に、塩酸又は硝酸電解液中で電気化学的に粗面化する電気化学的粗面化方法、及び、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立でするポールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を粗面化するブラシグレイン法のような機械的粗面化法を用いることができ、上記粗面化方法を単独或いは組み合わせて用いることもできる。
【0171】
その中でも粗面化に有用に使用される方法は、塩酸又は硝酸電解液中で化学的に粗面化する電気化学的方法であり、適する陽極時電気量は50C/dm〜400C/dmの範囲である。更に具体的には、0.1〜50%の塩酸又は硝酸を含む電解液中、温度20〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度10A/dm〜50A/dmの条件で交流及び/又は直流電解を行うことが好ましい。
【0172】
このように粗面化処理したアルミニウム支持体は、酸又はアルカリにより化学的にエッチングされてもよい。好適に用いられるエッチング剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等であり、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50%、20〜100℃である。エッチングのあと表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸は硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。
【0173】
特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65質量%の硫酸と接触させる方法及び特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。
以上のように処理された後、処理面の表面形状のファクターである、Ra、ΔS、a45が、それぞれ、前記条件(i)〜(iii)を満たしていれば、特に方法条件はこれらに限定されない。
【0174】
(陽極酸化処理)
以上のようにして処理され酸化物層を形成したアルミニウム支持体には、その後に陽極酸化処理がなされる。
陽極酸化処理は、硫酸、燐酸、シュウ酸若しくは硼酸/硼酸ナトリウムの水溶液が単独若しくは複数種類組み合わせて電解浴の主成分として用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分は勿論含まれても構わない。更には第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、3成分とは、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオンやアンモニウムイオン等に陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、硼酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては0〜10000ppm程度含まれてもよい。陽極酸化処理の条件は、処理によって作製される陽極酸化皮膜量が0.5〜10.0g/m、より好ましくは1.0〜5.0g/mの範囲であり、通常電解液の主成分となる酸の濃度は30〜500g/リットル、処理液温10〜70℃で、電流密度1〜40A/mの範囲で直流又は交流電解によって処理されることが好ましい。
【0175】
(親水化処理)
前記支持体表面の親水化処理としては、広く公知の方法が適用できる。特に好ましい処理としては、シリケート又はポリビニルホスホン酸等による親水化処理が施される。皮膜はSi又はP元素量として2〜40mg/m、より好ましくは4〜30mg/mで形成される。塗布量はケイ光X線分析法により測定できる。
【0176】
上記の親水化処理は、アルカリ金属ケイ酸塩、又はポリビニルホスホン酸が1〜30質量%、好ましくは2〜15質量%であり、25℃のpHが10〜13である水溶液に、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム支持体を、例えば、15〜80℃で0.5〜120秒浸漬することにより実施される。
【0177】
前記親水化処理に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。
【0178】
アルカリ土類金属塩又は第IVB族金属塩は、単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10質量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0質量%である。また、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。
更に、特公昭46−27481号、特開昭52−58602号、特開昭52−30503号に開示されているような電解グレインを施した支持体と、上記陽極酸化処理及び親水化処理を組合せた表面処理も有用である。
【0179】
[バックコート層]
本発明の平版印刷版原版には、支持体の裏面に、必要に応じて、バックコート層が設けられてもよい。かかるバックコート層としては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OCなどの珪素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから与られる金属酸化物の被覆層が耐現像性に優れており特に好ましい。
【0180】
<製版>
本発明の平版印刷版原版を製版するために、少なくとも、露光及び現像のプロセスが行われる。
本発明の平版印刷版原版を露光する光源としては、赤外線レーザーが好適なものとして挙げられ、また、紫外線ランプやサーマルヘッドによる熱的な記録も可能である。
中でも、本発明においては、波長750nmから1400nmの赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーにより画像露光されることが好ましい。レーザーの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。平版印刷版原版に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cmであることが好ま
しい。露光のエネルギーが10mJ/cm以上であると、ネガ型記録層の硬化が十分に進行する。また、露光のエネルギーが300mJ/cm以下であると、ネガ型記録層がレーザーアブレーションされ、画像が損傷することもない。
【0181】
本発明における露光は光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.1以上であることが好ましい。
【0182】
本発明に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0183】
本発明の平版印刷版原版は、露光された後、現像処理される。かかる現像処理に使用される現像液としては、pH14以下のアルカリ水溶液が特に好ましく、より好ましくはアニオン系界面活性剤を含有するpH8〜12のアルカリ水溶液が使用される。例えば、第三リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムなどの無機アルカリ剤が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は、単独若しくは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0184】
また、本発明の平版印刷版原版の現像処理においては、現像液中にアニオン界面活性剤1〜20質量%加えるが、より好ましくは、3〜10質量%で使用される。少なすぎると現像性が悪化し、多すぎると画像の耐摩耗性などの強度が劣化するなどの弊害が出る。アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリルアルコールサルフェートのナトリウム塩、ラウリルアルコールサルフェートのアンモニウム塩、オクチルアルコールサルフェートのナトリウム塩、例えば、イソプロピルナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、イソブチルナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、ポリオキシエチレングリコールモノナフチルエーテル硫酸エステルのナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、メタニトロベンゼンスルホン酸のナトリウム塩などのようなアルキルアリールスルホン酸塩、第2ナトリウムアルキルサルフェートなどの炭素数8〜22の高級アルコール硫酸エステル類、セチルアルコールリン酸エステルのナトリウム塩などの様な脂肪族アルコールリン酸エステル塩類、例えば、C1733CON(CH)CHCHSONaなどのようなアルキルアミドのスルホン酸塩類、例えば、ナトリウムスルホコハク酸ジオクチルエステル、ナトリウムスルホコハク酸ジヘキシルエステルなどの二塩基性脂肪族エステルのスルホン酸塩類などが含まれる。
【0185】
また、必要に応じてベンジルアルコール等の水と混合するような有機溶媒を現像液に加えてもよい。有機溶媒としては、水に対する溶解度が約10質量%以下のものが適しており、好ましくは5質量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニルプロパノール、1,4−フェニルブタノール、2,2−フェニルブタノール、1,2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘクサノール、4−メチルシクロヘクサノール及び3−メチルシクロヘクサノール等を挙げることができる。有機溶媒の含有量は、使用時の現像液の総質量に対して1〜5質量%が好適である。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶媒の量が増すにつれ、アニオン界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これはアニオン界面活性剤の量が少ない状態で、有機溶媒の量を多く用いると有機溶媒が溶解せず、従って良好な現像性の確保が期待できなくなるからである。
【0186】
また、更に必要に応じ、消泡剤及び硬水軟化剤のような添加剤を含有させることもできる。硬水軟化剤としては、例えば、Na、Na、Na、NaP(NaOP)PONa、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、アミノポリカルボン酸類(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩)、他のポリカルボン酸類(例えば、2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2一ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩など)、有機ホスホン酸類(例えば、1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリメチレンホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩など)を挙げることができる。このような硬水軟化剤の最適量は使用される硬水の硬度及びその使用量に応じて変化するが、一般的には、使用時の現像液中に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲で含有させられる。
【0187】
更に、自動現像機を用いて、平版印刷版原版を現像する場合には、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。この場合、米国特許第4,882,246号に記載されている方法で補充することが好ましい。また、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号、同57−7427号の各公報に記載されている現像液も好ましい。
【0188】
このようにして現像処理された平版印刷版原版は、特開昭54−8002号、同55−115045号、同59−58431号等の各公報に記載されているように、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を含む不感脂化液で後処理されてもよい。本発明の平版印刷版原版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0189】
本発明の平版印刷版原版の製版においては、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱、若しくは、全面露光を行うことが有効である。
現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができるが、十分な画像強化作用が得られ、且つ、支持体や画像部における熱による損傷を抑制するといった観点から、通常は加熱温度が200〜500℃の範囲で実施される。
【0190】
以上の処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
なお、印刷に供された平版印刷版の汚れは、プレートクリーナーにより除去することができる。印刷時、版上の汚れ除去のため使用するプレートクリーナーとしては、従来より知られているPS版用プレートクリーナーが使用され、例えば、CL−1,CL−2,CP,CN−4,CN,CG−1,PC−1,SR,IC(富士写真フイルム株式会社製)等が挙げられる。
【実施例】
【0191】
以下、本発明を以下の実施例に従って説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
まず、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、及び、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマーの代表的な化合物の合成例を以下に示す。
【0192】
[合成例1:(B)特定重合体(P−1)の合成例]
ビスムチオール(2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾール)150gを600mlのメタノール中に懸濁させ、冷却しながらトリエチルアミン101gを徐々に添加し、均一な溶液を得た。室温下に保ちながらp−クロロメチルスチレン(セイミケミカル製、CMS−14)を10分に亘り滴下し、更に3時間攪拌を続けた。反応生成物が次第に析出し、攪拌後に氷浴に移し内温を10℃まで冷却した後、吸引濾過により生成物を分離した。メタノールにより洗浄を行い、真空乾燥器内で1昼夜乾燥することで収率75%で下記に示す化合物(モノマー)を得た。
【0193】
【化40】

【0194】
上記のモノマー40gを、攪拌機、窒素導入管、温度計、還流冷却管を備えた1リッター4ツ口フラスコ内にとり、メタクリル酸70g及びエタノール200ml、蒸留水50mlを加え、攪拌しながら水浴上でトリエチルアミン110gを添加した。窒素雰囲気下で内温を70℃になるよう加熱し、この温度でアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1g添加し、重合を開始した。6時間加熱攪拌を行い、その後重合系を室温まで冷却した。一部(を取り出し、希塩酸を加えてpHを3程度に調整し、これを水中にあけることで下記に示す構造の重合体(ポリマー)を得た。
【0195】
【化41】

【0196】
上記の重合体の一部を取り出した残りの重合体溶液中に、1,4−ジオキサン100g及びp−クロロメチルスチレンを23g加え、室温で更に15時間攪拌を続けた。その後、濃塩酸(35〜37%水溶液)80〜90gを加え、系のpHが4以下になったことを確認後、3リッターの蒸留水中に全体を移した。析出した重合体を濾過により分離し、蒸留水にて洗浄を繰り返した後、真空乾燥器内で1昼夜乾燥した。これにより、収率90%で目的とする(B)特定重合体の具体例として挙げた(P−1)を得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定により、重量平均分子量9万(ポリスチレン換算)の重合体であり、更に、プロトンNMRによる解析により(B)特定重合体(P−1)の構造を支持するものであった。
【0197】
[合成例2:(C)特定モノマー(C−5)の合成例]
チオシアヌル酸89gをメタノール1.5リッターに懸濁し、冷却しながら水酸化カリウム84gを溶解した30%水溶液を徐々に加え、均一な溶液を得た。これに、室温下でp−クロロメチルスチレン230gを内温が40℃を越えないよう徐々に滴下した。添加後まもなく生成物が析出してくるが攪拌を続け、3時間攪拌を行った後に吸引濾過により生成物を分離した。メタノールにより洗浄を行い、真空乾燥器内で一昼夜乾燥を行った後、90%の収率で(C)特定モノマーの具体例として挙げた(C−5)を得た。
【0198】
(実施例1〜7)
[支持体の作製]
厚さ0.30mm、幅1030mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて、以下に示す表面処理を行った。
【0199】
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(f)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
【0200】
(a)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃でエッチング処理を行い、アルミニウム板を5g/m溶解した。その後
水洗を行った。
(b)温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後水洗した。
【0201】
(c)60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。この時の電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%、アンモニウムイオン0.007質量%含む)、温度30℃であった。交流電源は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが2msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時
の電気量の総和で250C/cmであった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を
分流させた。その後水洗を行った。
【0202】
(d)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を35℃で行い、アルミニウム板を0.2g/m
解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットのエッジ部分を溶解し、エッジ部分を滑らかにした。その後水洗した。
(e)温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後スプレーによる水洗を行った。
【0203】
(f)硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、温度33℃、電流密度が5(A/dm)で、50秒間陽極酸化処理を行った。その後水洗を行
った。この時の陽極酸化皮膜質量が2.7g/mであった。
【0204】
このようにして得られたアルミニウム支持体の表面粗さRa、表面積比ΔS、急峻度a45は、それぞれ、Ra=0.27(測定機器;東京精密(株)製サーフコム、蝕針先端径2ミクロンメーター)、ΔS=75%、a45=44%(測定機器;セイコーインスツルメンツ社製SPA300/SPI3800N)であった。
【0205】
[下塗り層の形成]
上記で作製した支持体上に、表1に示す共重合体を含む5質量%メタノール溶液を塗布した後、100℃、10秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量10mg/mの下塗り層を形成した。尚、表1の共重合体の構造の欄には、既述の下塗り層が含有するビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体の具体例として挙げた構造の符号を示す(実施例1〜7)。
【0206】
[ネガ型記録層の形成]
次に、下記記録層塗布液を調製し、該記録層塗布液を、上記の下塗り層を形成したアルミニウム支持体に、乾燥後の厚みが1.4μmになるように塗布し、70℃の乾燥器内で5分間乾燥を行い、平版印刷版原版[CTP−1]〜[CTP−7]をそれぞれ得た。
【0207】
<記録層塗布液>
・(A)ラジカル発生剤(BC−6) 2.0質量部
・(A)ラジカル発生剤(T−4) 2.0質量部
・(B)特定重合体(P−1) 10.0質量部
・(C)特定モノマー(C−5) 3.5質量部
・(D)赤外線吸収剤(S−4) 0.5質量部
・エチルバイオレッドのクロライド塩 0.3質量部
・ジオキサン 70.0質量部
・シクロヘキサン 20.0質量部
【0208】
なお、上記記録層塗布液に使用した(A)〜(D)の成分は、それぞれ、前述した具体例として記載されているものを指す。
【0209】
(比較例1〜3)
実施例1において、下塗り層の形成に用いた共重合体を、下記共重合体(B−1〜B−3)に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1の平版印刷版原版[CTP−8〜CTP−10]をそれぞれ得た。尚、共重合体(B−1〜B−3)において、数字は、共重合体の全組成100モル%中における各繰り返し単位のモル%を表す。
【0210】
【化42】

【0211】
(比較例4)
実施例1において、ネガ型記録層の形成に用いた(B)特定重合体を下記構造のP−14に、(C)特定モノマーを下記構造のC−12、に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例4の平版印刷版原版[CTP−11]を得た。
【0212】
【化43】

【0213】
[評価]
(1.感度(感光性)の評価)
上記のようにして得られた実施例及び比較例の平版印刷版原版[CTP−1]〜[CTP−8]のそれぞれに対し、下記の方法で感度を評価した。
平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter3244VXにて、解像度175lpiの50%平網画像を、外面ドラム回転数150rpm、出力を0〜8Wの範囲でlogEで0.15ずつ変化させて露光した。なお、露光は25℃50%RHの条件下で行った。
露光後、メタケイ酸ソーダを6質量%溶解した現像液で、30℃10秒の現像を行った。現像して得られた平版印刷版の平網画像が50%を示す最小露光エネルギーを平版印刷版原版の感度として求めた。評価結果を表1に示す。
【0214】
(2.現像性の評価)
得られた実施例及び比較例の平版印刷版原版[CTP−1]〜[CTP−8]のそれぞれに対し、下記の方法で現像性を評価した。
上記感度の評価にて指標となった、最小露光エネルギーにて露光し、上記感度の評価時と同じ条件で現像して得られた平版印刷版の非画像部の濃度を、マクベス反射濃度計RD−918を使用して測定した。また、30℃7秒の条件で現像を行った他は、同様にして露光及び現像を行い、得られた平版印刷版の非画像部の濃度も同様に測定し、これらの非画像部の濃度の差Δfog(=fog10秒−fog7秒)を求め、現像性の指標とした。Δfogの値が小さいほど現像性がよいことになる。評価結果を表1に示す。
【0215】
(3.経時安定性(生保存性)の評価)
得られた実施例及び比較例の平版印刷版原版[CTP−1]〜[CTP−8]のそれぞれに対し、下記の方法で経時安定性を評価した。
平版印刷版原版を、25℃40%RHで2時間調湿した後、アルミクラフトに包装し、60℃で3日間保存した。その後、上記感度の評価にて指標となった、最小露光エネルギーにて露光し、上記感度の評価時と同じ条件で現像して得られた平版印刷版の非画像部濃度を、マクベス反射濃度計RD−918を使用し測定した。また、作製直後の平版印刷版原版についても、同様の方法で露光・現像を行い、非画像部の濃度を測定した。本実施例においては、これらの非画像部の濃度の差Δfogを求め、経時安定性の指標とした。Δfogの値が小さいほど経時安定性がよく、0.02以下が実用上問題ないレベルである。評価結果を表1に示す。
【0216】
(4.耐刷性の評価)
得られた実施例及び比較例の平版印刷版原版[CTP−1]〜[CTP−8]のそれぞれに対し、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter3244VXにて、解像度175lpiの80%平網画像を、出力8W、外面ドラム回転数206rpm、版面エネルギー100mJ/cmで露光した。露光後、メタケイ酸ソーダを6質量%溶解した現像液で、30℃10秒の現像を行った。そして、得られた平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて、1万枚印刷する毎に、富士写真フイルム(株)社製マルチクリーナーにより版材の表面からインクを拭き取る作業を繰り返しつつ印刷を行い、刷了枚数を耐刷性の指標とした。評価結果を表1に示す。
【0217】
【表1】

【0218】
表1から明らかなように、実施例1〜7における本発明の平版印刷版原版は、感度、現像性、及び経時安定性のいずれにおいても優れていることが判明した。
これに対し、比較例の平版印刷版原版は、実施例1〜7と比較して、耐刷性、現像性及、経時安定性のいずれかが劣っており、実用上問題があるレベルであることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】ネガ型記録層の溶解挙動を測定するためのDRM干渉波測定装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】現像液のネガ型記録層への浸透性を評価するのに用いられる静電容量の測定方法の一例を示す概略構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体を含有する下塗り層と、(A)光又は熱によりラジカルを発生する化合物、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー、及び(D)赤外線吸収剤を含有するネガ型記録層と、を順次積層してなることを特徴とする平版印刷版原版。
【請求項2】
前記下塗り層が含有するビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体が、少なくとも、(a1)ビニル基が置換したフェニル基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位、(a2)支持体表面と相互作用する官能基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位、及び(a3)親水性官能基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位、を有する共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
前記(a3)の繰り返し単位が有する親水性官能基が、−COOM、−SO、−OH、−OSO、−CONR、−P(=O)(OM、又は−(RO)−R(ここで、Mは、水素原子、金属イオン又はアンモニウムイオンを表し、R及びRは、各々独立して、水素原子又はアルキル基を表し、Rは、2価の炭化水素基を表し、nは、1〜100の整数を表す。)からなる群より選ばれる何れかの基であることを特徴とする請求項2に記載の平版印刷版原版。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−249877(P2008−249877A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89302(P2007−89302)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】