説明

床構造

【課題】床衝撃音の遮断性能が良好で施工性を向上させることができる床構造を得る。
【解決手段】大引30上に根太32を介して上床材14が支持されると共に、大引30には、取付ボルト38等を介して動吸振器34の弾性部材40が支持されている。このため、上床材14に振動が加わった場合、この振動は、根太32、大引30、及び取付ボルト38等を介して動吸振器34の弾性部材40へ伝わる。これによって、動吸振器34の弾性部材40が弾性変形し、動吸振器34において弾性部材40に支持された質量体42が振動を吸収するように上下動することで、上床材14から床スラブ12への振動が減衰される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床とされた床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
床構造においては、例えば、床板(床材)の下に大引や根太等の鋼材が水平に渡された組床式の二重床構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような二重床構造では、床衝撃音を吸収するために、例えば、床板にアスファルトシート(遮音シート)を敷設する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平8−475公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来の床構造では、重いアスファルトシートを床全面に敷設することになり、施工性が悪い。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、床衝撃音の遮断性能が良好で施工性を向上させることができる床構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の床構造は、床スラブと、前記床スラブ上に支持される複数の支持脚と、前記支持脚上に渡されて支持される複数の大引と、前記大引上に渡されて支持される床支持部材と、前記床支持部材上に支持され、前記床スラブとの間に間隔をもって配置される床材と、前記大引に支持されて弾性変形可能な弾性部材、及び前記弾性部材に支持される質量体を含んで構成される動吸振器と、を有する。
【0007】
請求項1に記載する本発明の床構造によれば、大引上に床支持部材を介して床材が支持されると共に、大引には、動吸振器の弾性部材が支持されている。このため、床材に振動が加わった場合、この振動は、床支持部材及び大引を介して動吸振器の弾性部材へ伝わる。これによって、動吸振器の弾性部材が弾性変形し、動吸振器において弾性部材に支持された質量体が振動を吸収するように上下動することで、床材から床スラブへの振動が減衰される。大引は、複数の支持脚を介して床スラブ上に支持されているので、減衰された振動は、大引から支持脚を介して床スラブへ伝わる。
【0008】
請求項2に記載する本発明の床構造は、請求項1記載の構成において、前記動吸振器が前記大引の内部に配置されている。
【0009】
請求項2に記載する本発明の床構造によれば、動吸振器が前記大引の内部に配置されているので、床スラブと床材との間に配置される床下構造物と動吸振器との干渉が回避される。このため、施工性が良い。
【0010】
請求項3に記載する本発明の床構造は、請求項1記載の構成において、前記動吸振器が取り付けられると共に前記大引に対して掛け止め可能な係止部が形成された吊下部材を有する。
【0011】
請求項3に記載する本発明の床構造によれば、動吸振器が取り付けられる吊下部材には、大引に対して掛け止め可能な係止部が形成されているので、施工時において、吊下部材に動吸振器が取り付けられた状態で、吊下部材の係止部が大引に対して掛け止めされることで、吊下部材を介した動吸振器の大引への取り付けが容易になる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の床構造によれば、床衝撃音の遮断性能が良好で施工性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る床構造を示す斜視図である(上床材を透視した状態で示す。)。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る床構造を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る床構造における動吸振器の取付状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る床構造における動吸振器の取付状態を示す断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る床構造を示す縦断面図である。
【図6】図5の矢印6方向矢視の拡大断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る床構造を示す縦断面図である。
【図8】図7の矢印8方向矢視の拡大断面図である。
【図9】本発明の第6の実施形態に係る床構造を示す縦断面図である。
【図10】図9の矢印10X方向矢視の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
本発明における床構造の第1の実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印UPは床構造における上方向を示す。
【0015】
図1には、床構造10が上床材14を透視した状態の斜視図で示されている。図1に示される床構造10は、組床式の二重床の構造とされており、例えば、体育館等に適用することができる。
【0016】
図1に示されるように、床構造10は、躯体床となるコンクリート製の床スラブ12と上床材14との間に、床支持構造10A(床下地構造部)を介在させている。床支持構造10Aが介在されることによって床スラブ12と上床材14との間に空間が形成されている。
【0017】
床支持構造10Aは、床スラブ12上に支持される複数の支持脚16を備えている。支持脚16の下部は、金属製(本実施形態では、鋼製)の支持台18によって構成されており、この支持台18は、床スラブ12側が開放された正面視で略ハット形状とされている。なお、本実施形態では、支持脚16の下部が支持台18で構成されているが、支持脚16の下部は、柱状の束(束柱)によって構成されていてもよい。支持台18の一対のフランジ部18Aは、床スラブ12上に配置されて固定手段によって床スラブ12に固定されている。また、支持台18の頂壁部18Bは、調整ボルト20によって貫通されている。
【0018】
調整ボルト20は、支持台18の頂壁部18Bに接する調整ナット22によって螺合されており、直立した状態で支持台18に支持されている。調整ボルト20の軸線方向における一端側となる上端部は、調整ナット24(図2参照)によって螺合されると共に、大引受け金具26に連結されている。
【0019】
大引受け金具26は、一対の側壁26Aが互いに対向する溝状(チャンネル状)に形成されている。大引受け金具26の内側における底部26B側には、緩衝材28(広義には「弾性体」として把握される要素である。)が固着されている。緩衝材28は、ゴム製とされて弾性変形可能であり、振動を減衰させるようになっている。
【0020】
以上説明した支持台18、調整ボルト20、調整ナット22、24(図2参照)、大引受け金具26、及び緩衝材28を含んで支持脚16は構成されている。
【0021】
大引受け金具26の内側において、緩衝材28上には、金属製(本実施形態では、鋼製)の大引30(広義には「ビーム材」として把握される要素である。)が配置されている。大引30は、矩形閉断面を備えた角筒状とされ、複数の支持脚16上に水平方向(床スラブ12に平行な方向)に渡されている。また、支持脚16上に支持される複数の大引30は、所定間隔を開けて互いに平行に配置されている。
【0022】
大引30上には、複数の床支持部材としての根太32(広義には「ビーム材」として把握される要素である。)が渡されて支持されている。根太32の延在方向は、大引30の延在方向に対して、交差(直交)している。根太32は、金属製(本実施形態では、鋼製)とされて断面形状が略ハット状とされ、フランジ部32B、32Cがねじ等の固定手段で大引30に固定されている。
【0023】
また、根太32の頂部32Aは、ねじ等の固定手段で上床材14に固定されている。上床材14は、根太32上に支持され、床スラブ12との間に間隔をもって配置されている。この上床材14は、合板の捨て板14Aを備えると共に、捨て板14A上に床仕上げ材であるフローリング14B(単層フローリング又は複合フローリング)を設けた積層構造となっている。
【0024】
図2に示されるように、大引30の下方側には、動吸振器34(「ダイナミックダンパデバイス」、「制振ダンパ」等ともいう。)が配置されている。動吸振器34は、後述する弾性部材40(ダンパゴム)及び質量体42(錘)を含んで構成されて各大引30に対して吊り下げられ、本実施形態では、互いに隣り合う支持脚16同士の間に複数(本実施形態では支持脚16の近傍及び支持脚16間の中央部に計三個)設置されている。
【0025】
図2の部分拡大図に示されるように、大引30の下面側には、動吸振器34の取付用として取付板36が配置されている。取付板36は、大引30の底部30Bにねじ37等の固定手段によって固定されている。取付板36の中央部には、取付ボルト38の軸線方向一端部(上端部)が取り付けられている。
【0026】
取付ボルト38の軸線方向他端部(下端部)には、略水平に配置された受け座39が取り付けられている。受け座39上には、取付ボルト38の外周側に配設された円筒状の弾性部材40が固着されている。これにより、弾性部材40は、受け座39、取付ボルト38及び取付板36等を介して大引30に支持されている。この弾性部材40は、ゴム製等とされて弾性変形可能であって振動を減衰させるようになっている。
【0027】
弾性部材40上には、取付ボルト38によって貫通された受け部材41が配置されている。受け部材41は、取付ボルト38と同軸に配置されて円筒状を成す円筒部41Aを備えると共に、この円筒部41Aの軸線方向一端部(下端部)から受け座部41Bが同軸的かつ一体に径方向外側へ向けて延設されている。
【0028】
受け部材41の受け座部41Bの下面は、弾性部材40の上面に加硫接着等により固定されている。また、円筒部41Aの外周面には雄ネジ部が形成されている。円筒部41Aの雄ネジ部には、質量体42の上部中央における挿入孔42Aの内周面に形成された雌ネジ部が螺合されており、受け部材41の受け座部41B上に質量体42の上部が配置されている。すなわち、質量体42は、受け部材41を介して弾性部材40に支持されている。
【0029】
この質量体42は、金属製(本実施形態では、鋼製)とされ、下方側が開口された有底略円筒状とされている。質量体42の凹部の内側には既述した弾性部材40が配設されている。これらによって、質量体42は、弾性部材40の弾性変形によって変位して振動を減衰させるようになっている。
【0030】
(施工手順)
次に、図1に示される二重床の床構造10を構成する際の施工手順について説明する。
【0031】
まず、複数の支持脚16を床スラブ12上に固定する。次に、複数の支持脚16上に、大引30を架け渡すように配置すると共に、支持脚16の調整ボルト20及び調整ナット22によって大引受け金具26の高さ位置を調整する。次に、大引30の下面に動吸振器34を吊り下げて固定する。
【0032】
次に、大引30の延在方向に対して、根太32の延在方向が直交するように、大引30上に根太32を配置して固定する。次に、根太32上に捨て板14Aを敷設し、最後に、捨て板14A上にフローリング14Bを敷設する。以上によって、二重床の床構造10が構成される。
【0033】
なお、本実施形態では、大引30を支持脚16上に配置してから動吸振器34を大引30に固定しているが、例えば、動吸振器34を大引30に予め固定しておいてから、当該大引30を支持脚16上に配置してもよく、この場合には、現場での取付け工数が低減される。
【0034】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
図2に示されるように、本実施形態に係る床構造10では、大引30上に根太32を介して上床材14が支持されると共に、大引30には、取付ボルト38等を介して動吸振器34の弾性部材40が支持されている。このため、上床材14に振動が加わった場合、この振動は、根太32、大引30、及び取付ボルト38等を介して動吸振器34の弾性部材40へ伝わる。これによって、動吸振器34の弾性部材40が弾性変形し、動吸振器34において弾性部材40に支持された質量体42が振動を吸収するように上下動することで、上床材14から床スラブ12への振動が減衰される。大引30は、複数の支持脚16を介して床スラブ12上に支持されているので、減衰された振動は、大引30から支持脚16を介して床スラブ12へ伝わる。
【0036】
ここで、対比構造と比較しながら補足説明すると、例えば、床衝撃音の遮断性能を確保するために、上床材にアスファルトシートを敷設するような対比構造では、重いアスファルトシートを床全面に敷設することになるので、施工性が悪く、かつ大幅なコストアップを招くことになる。また、重量が増加することで、建物の耐力の点でも負担が増す。これに対して、本実施形態に係る床構造10では、重いアスファルトシートを床全面に敷設する必要がないので、これらの問題点を解消することができ、軽量化と施工性の向上が実現される。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る床構造10によれば、床衝撃音の遮断性能が良好で施工性を向上させることができる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る床構造について、図3を用いて説明する。図3には、本発明の第2の実施形態に係る床構造における動吸振器34の取付状態が断面図にて示されている。
【0039】
この図に示されるように、本実施形態に係る床構造は、取付ボルト38が大引30を上下に貫通した状態で大引30に固定されている点で、第1の実施形態に係る床構造10(図2参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
図3に示されるように、大引30の頂部30A及び底部30Bには、ボルト挿通孔130A、130Bが貫通形成されており、これらのボルト挿通孔130A、130Bに取付ボルト38が挿通されている。取付ボルト38の軸線方向中間部には、取付ボルト38と同軸的にフランジ状の受け板45が一体に固定されている。この受け板45は、大引30の底部30Bの下面側に配置されている。一方、大引30の頂部30Aの上面側には、押さえ板46が配置されており、この押さえ板46は、取付ボルト38によって貫通されている。また、押さえ板46上には、取付ボルト38の軸線方向一端部(上端部)側に螺合されるナット48が配置されている。
【0041】
この構造では、ナット48が取付ボルト38に螺合されることによって、押さえ板46と受け板45との間で大引30が締め付けられている。この締め付け(締結)によって、動吸振器34が大引30に吊り下げられた状態で取り付けられている。これにより、弾性部材40は、受け座39、取付ボルト38及びナット48等を介して大引30に支持されている。
【0042】
本実施形態に係る床構造を構成する際の施工手順は、第1の実施形態における施工手順と同様である。また、本実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0043】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る床構造について、図4を用いて説明する。図4には、本発明の第3の実施形態に係る床構造における動吸振器34の取付状態が断面図にて示されている。
【0044】
この図に示されるように、本実施形態に係る床構造は、L型鋼52(広義には「連結部材」として把握される要素である。)を介して動吸振器34が大引30に吊り下げられている点で、第1の実施形態に係る床構造10(図2参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1、第2の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
図4に示されるように、大引30の側方には、L型鋼52が配置されている。L型鋼52は、鋼板をプレス加工により縦断面視で略L字状に形成したものであり、縦板部52Aがねじ51等の固定手段によって大引30の側部30C(側面)に固定されている。
【0046】
L型鋼52の下部を構成する水平部52Bの中央部は、取付ボルト38によって貫通されている。また、水平部52Bの下面側には、取付ボルト38によって貫通された受け板53が配置されている。受け板53の下面にはナット54が配置されており、このナット54は、取付ボルト38に螺合されている。また、水平部52Bの上面側には、押さえ板46及びナット48が配置されている。
【0047】
この構造では、ナット48、54が取付ボルト38に螺合されることによって、押さえ板46と受け板53との間でL型鋼52の水平部52Bが締め付けられている。この締め付け(締結)によって、動吸振器34がL型鋼52に吊り下げられた状態で取り付けられており、動吸振器34は、L型鋼52を介して大引30に取り付けられている。すなわち、L型鋼52は、動吸振器34と大引30とを連結している。これにより、弾性部材40は、受け座39、取付ボルト38、ナット48及びL型鋼52等を介して大引30に支持されている。なお、L型鋼52には動吸振器34が複数取り付けられてもよいし、一個取り付けられてもよい。
【0048】
本実施形態に係る床構造を構成する際の施工手順は、第2の実施形態における施工手順とほぼ同様であるが、複数の動吸振器34をL型鋼52に予め取り付けておけば、現場での取付け工数を低減することができる。また、本実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用及び効果が得られる。
【0049】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係る床構造60について、図5及び図6を用いて説明する。図5には、本発明の第4の実施形態に係る床構造60が縦断面図にて示されており、図6には、床構造60の一部が図5の矢印6方向矢視の拡大断面図にて示されている。
【0050】
これらの図に示されるように、第4の実施形態に係る床構造60は、動吸振器34の大引30への取付用として、L型鋼52(図4参照)に代えて、吊下部材としての吊金具62(広義には「連結部材」として把握される要素である。)を備える点で、第3の実施形態に係る床構造とは異なる。他の構成は、第3の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1〜第3の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図5に示されるように、大引30には、支持脚16間に複数(本実施形態では、支持脚16の近傍及び支持脚16間の中央部に計三個)の吊金具62が取り付けられている。図6に示されるように、吊金具62は、略C字状の断面形状とされており、上下方向を含む面を面方向として配置された側板部62Aを備えている。
【0052】
側板部62Aの上部は、大引30の一方の側部30Dの外面に沿って配置されている。また、側板部62Aの上端から直角に曲げられた頂板部62Bは、大引30の頂部30A上に配置されている。さらに、頂板部62Bの先端から下方側へ直角に曲げられたフランジ部62Dは、大引30の他方の側部30Cの上端部外面に接して配置されている。すなわち、吊金具62には、側板部62Aの上部、頂板部62B及びフランジ部62Dにより、大引30に対して掛け止め可能な略フック状の係止部64が形成されている。係止部64において、側板部62Aの上部は、大引30の一方の側部30Dの外面に接した状態でビス63等の固定手段によって固定されている。これにより、吊金具62は、大引30に吊り下げられた状態で取り付けられている。
【0053】
一方、側板部62Aの下端から直角に曲げられた底板部62Cは、頂板部62Bに対して平行に配置されており、底板部62Cの先端から直角に曲げられたフランジ部62Eは、フランジ部62Dに接近する方向へ延設されている。底板部62Cの中央部には、取付ボルト38の挿通用としてボルト挿通孔162Cが貫通形成されている。また、底板部62Cの上面には、ボルト挿通孔162Cの外周部にウエルドナット66が予め固着されている。ウエルドナット66は、取付ボルト38の軸線方向一端部(上端部)側に螺合されている。
【0054】
これによって、動吸振器34は、吊金具62に吊り下げられた状態で取り付けられており、吊金具62を介して大引30に取り付けられている。すなわち、吊金具62は、動吸振器34と大引30とを連結している。これにより、弾性部材40は、受け座39、取付ボルト38、ウエルドナット66及び吊金具62等を介して大引30に支持されている。
【0055】
なお、本実施形態の変形例として、吊金具62のフランジ部62Dが大引30の側部30Cの下端部外面に接する位置まで延設されると共に、大引30の側部30Cの外面に接した状態のフランジ部62Dがビス等の固定手段によって側部30Cに固定されてもよい(後述する第5の実施形態でも同様)。
【0056】
図5に示される二重床の床構造60を構成する際の施工手順は、第3の実施形態における施工手順とほぼ同様であり、大引30を配置した後に、動吸振器34が予め取り付けられた吊金具62を大引30に固定する。その際、作業者は、まず図6に示される吊金具62の係止部64を大引30に掛け止めして(ワンタッチで引っ掛けて)吊り下げ、その後、吊金具62の側板部62Aの上部を大引30の側部30Dにビス63等の固定手段によって固定する。このため、吊金具62を介した動吸振器34の大引30への取り付けが容易になり、取り外しも容易になる。また、本実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用及び効果が得られる。
【0057】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態に係る床構造70について、図7及び図8を用いて説明する。図7には、本発明の第5の実施形態に係る床構造70が縦断面図にて示されており、図8には、床構造70の一部が図7の矢印8方向矢視の拡大断面図にて示されている。
【0058】
これらの図に示されるように、床構造70は、動吸振器34(図6参照)に代えて、動吸振器72(「ダイナミックダンパデバイス」、「制振ダンパ」等ともいう。)を備える点で、第4の実施形態に係る床構造60(図5参照)とは異なる。他の構成は、第4の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1、第4の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
吊金具62の底板部62C上には、動吸振器72が配置されている。動吸振器72は、後述する弾性部材80(ダンパゴム)及び質量体82(錘)を含んで構成されている。
【0060】
図8に示されるように、吊金具62の底板部62Cの中央部は、取付ボルト74によって貫通されている。取付ボルト74の軸線方向一端部(下端部)には、ナット76が螺合されており、ナット76の上面には、受け座77が一体に固定されている。この受け座77は、取付ボルト74によって貫通されており、吊金具62の底板部62Cの下方側に配置されている。
【0061】
これに対して、吊金具62の底板部62Cの上方側には、受け座78が配置されている。受け座78は、取付ボルト74の軸線方向の中間部に一体に固定されており、取付ボルト74に対して同軸的に配置されている。この構造では、ナット76が取付ボルト74に螺合されることによって受け座77、78間で吊金具62の底板部62Cが締め付けられている。これにより、動吸振器72が吊金具62に取り付けられている。
【0062】
受け座78上には、取付ボルト74の外周側に配設された円筒状の弾性部材80が固着されている。これらにより、弾性部材80は、吊金具62の底板部62Cに固定されると共に、受け座78及び吊金具62等を介して大引30に支持されている。換言すれば、吊金具62は、動吸振器72と大引30とを連結している。また、弾性部材80は、ゴム製等とされて弾性変形可能であって振動を減衰させるようになっている。
【0063】
弾性部材80上には、取付ボルト74によって貫通された受け座81が配置されており、受け座81上には、質量体82が配置されている。すなわち、質量体82は、受け座81を介して弾性部材80に支持されている。質量体82は、金属製(本実施形態では、鋼製)とされ、その下部には、取付ボルト74の軸線方向他端部(上端部)が相対移動可能に挿入されている。これらによって、質量体82は、弾性部材80の弾性変形によって変位して振動を減衰させるようになっている。
【0064】
本実施形態に係る床構造70を構成する際の施工手順は、第4の実施形態における施工手順と同様である。また、本実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用及び効果が得られる。
【0065】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態に係る床構造90について、図9及び図10を用いて説明する。図9には、本発明の第6の実施形態に係る床構造90が縦断面図にて示されており、図10には、床構造90の一部が図9の矢印10X方向矢視の拡大断面図にて示されている。
【0066】
これらの図に示されるように、床構造90は、動吸振器72が大引92の内部に配置(内部空間に設置)される点で、第5の実施形態に係る床構造70とは異なる。他の構成は、第5の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1、第5の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
図9に示される大引92は、他の実施形態で示された大引30と同様に配置されている。すなわち、複数の大引92は、それぞれ支持脚16上に渡されて支持されており、各大引92上には複数の根太32が渡されて支持されている。
【0068】
図10に示されるように、大引92は、設置状態で下方側に開口したC型鋼で構成されており、水平に配置される頂部92Aと、頂部92Aの長手方向に直交する方向の両端から直角に曲げられて(垂下されて)互いに平行な側部92B、92Cと、側部92B、92Cの下端から互いに接近する方向へ直角に曲げられた底部92D、92Eと、を備えている。底部92Dの先端と底部92Eの先端との間は一定間隔で離れており、貫通部94とされている。
【0069】
図9及び図10に示されるように、大引92の内部には複数の動吸振器72が配置されている。図9に示されるように、本実施形態では、大引92に対して動吸振器72は、互いに隣り合う支持脚16同士の間に複数(本実施形態では、支持脚16の近傍及び支持脚16間の中央部に計三個)設置されている。
【0070】
図10に示されるように、大引92の貫通部94は、取付ボルト74によって貫通されている。取付ボルト74の軸線方向一端部(下端部)には、ナット76が螺合されており、ナット76の上面には、受け座77が一体に固定されている。この受け座77は、取付ボルト74によって貫通されており、大引92の底部92D、92Eの下方側に配置されている。
【0071】
これに対して、大引92の底部92D、92Eの上方側には、受け座78が配置されている。受け座78は、取付ボルト74の軸線方向の中間部に一体に固定されており、取付ボルト74に対して同軸的に配置されている。ここで、本実施形態では、ナット76が取付ボルト74に螺合されることによって受け座77、78間で大引92の底部92D、92Eが強く締め付けられて(緊結されて)いる。
【0072】
また、受け座78の上方側には、第5の実施形態と同様の構成で、弾性部材80、受け座81、及び質量体82が配置されている。これにより、弾性部材80は、受け座78を介して大引92に支持されている。
【0073】
図9に示される二重床の床構造90を構成する際の施工手順は、動吸振器72を大引92に取り付ける工程を除き、第5の実施形態と同様である。動吸振器72を大引92に取り付ける際には、作業者は、所定位置に配置された大引92の長手方向一端側から大引92の内部に動吸振器72を入れ、動吸振器72を貫通部94(図10参照)の長手方向に沿って配置位置まで移動させる。次に、大引92の下方側から取付ボルト74の軸線方向一端部(下端部)にナット76を螺合させて動吸振器72を大引92に固定する。
【0074】
なお、本実施形態では、大引92を支持脚16上の所定位置に配置した後に大引92に動吸振器72を固定しているが、大引92に動吸振器72を予め固定しておいてから大引92を支持脚16上の所定位置に配置してもよく、このようにすれば、現場での取付け工数を低減できる。また、本実施形態では、大引92がC型鋼とされているが、大引は、矩形閉断面を備えた角筒状とされてかつ動吸振器72を配置する位置に取付ボルト74を挿通させるためのボルト挿通孔が貫通形成された大引であってもよい。
【0075】
本実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用及び効果が得られる。また、本実施形態では、大引92の内側に動吸振器72が配置されることで、床スラブ12と上床材14との間に配置される床下構造物(換気用のダクト等)と動吸振器72との干渉が回避されるので、非常に施工性が良く、低床化も可能となる。
【0076】
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態では、弾性部材40、80がゴム製である場合を例に挙げて説明したが、弾性部材は、例えば、圧縮コイルバネ等のような弾性変形可能な他の弾性部材であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、大引30、92上に根太32が渡されて支持された構造に本発明の床構造が適用されているが、本発明の床構造は、例えば、鋼板等の金属板がプレス加工により略矩形の波板状に形成されたデッキプレートを床支持部材として適用し、デッキプレートが大引上に渡されて支持されると共に、このデッキプレート上に床材が支持された構造に適用されてもよい。
【0078】
さらに、大引30、92において支持脚16間に配置される動吸振器34、72の数は、上記実施形態の例に限定されない。動吸振器34、72の設置数は、床衝撃音の遮断性能の必要とされる改善量に応じて設定することができる。換言すれば、上記実施形態においては、動吸振器34、72の設置数を増やすことによって床衝撃音の遮断性能の改善量がコントロール可能な構造になっている。
【符号の説明】
【0079】
10 床構造
12 床スラブ
14 上床材(床材)
16 支持脚
30 大引
32 根太(床支持部材)
34 動吸振器
40 弾性部材
42 質量体
60 床構造
62 吊金具(吊下部材)
64 係止部
70 床構造
72 動吸振器
80 弾性部材
82 質量体
90 床構造
92 大引

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブと、
前記床スラブ上に支持される複数の支持脚と、
前記支持脚上に渡されて支持される複数の大引と、
前記大引上に渡されて支持される床支持部材と、
前記床支持部材上に支持され、前記床スラブとの間に間隔をもって配置される床材と、
前記大引に支持されて弾性変形可能な弾性部材、及び前記弾性部材に支持される質量体を含んで構成される動吸振器と、
を有する床構造。
【請求項2】
前記動吸振器が前記大引の内部に配置されている請求項1記載の床構造。
【請求項3】
前記動吸振器が取り付けられると共に前記大引に対して掛け止め可能な係止部が形成された吊下部材を有する請求項1記載の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−180575(P2010−180575A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23426(P2009−23426)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】