説明

廃棄ガス処理方法

【課題】高価で複雑な設備を用いることなく、有害物質を含む廃棄ガスを浄化して大気中に放出可能な廃棄ガス処理方法を提案すること。
【解決手段】生廃棄物処理システム100では、熱交換器6およびガスエンジン10からの排気が排気処理塔7に送り込まれる。排気処理塔7の燃焼筒71にはゼットガスバーナー72が配置されており、ここを通る排気はゼットガス炎に晒されて1000℃乃至4000℃の超高温で燃焼し、そこに含まれている有害物質が除去されて浄化される。浄化後の排ガスは冷却塔30で冷却された後に大気中に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオキシンなどを含む排煙、NOx、SOxなどの有害汚染物質を含む排出ガス、病院などの空気浄化システムから排出される揮発性有機化合物などの有害物質を含む排出ガスなどを無公害化して大気中に放出する廃棄ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼却施設では、排出ガスから、ダイオキシンその他の有害物質を除去するために各種の装置が設置される。たとえば、排煙中には、ガス状の大気汚染物質であるNOx、SOx、ダイオキシン、重金属ガス、ハロゲン化合物などが含まれている場合が多い。このような大気汚染物質を除去するために、従来においては、ダイオキシンが発生しないように廃棄物を高温で完全燃焼させるようにするとともに、発生した排ガスに含まれている有害物質を、集塵機、脱硫装置、脱硝装置などによって除去するようにしている。たとえば、特許文献1、2には、このような排煙処理方法が開示されている。
【0003】
また、ごみ焼却施設では、一次燃焼炉における生塵の燃焼により発生した燃焼ガスを二次燃焼炉に導入して高温で燃焼することによりダイオキシンなどの有害物質を除去するようにしている。
【特許文献1】特開平9−173768号公報
【特許文献2】特開平10−80617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ダイオキシンなどの有害物質が発生しないように廃棄物を完全燃焼させるためには燃焼温度を800℃以上にする必要があり、焼却炉を大型化する必要がある。また、各種の有害物質を除去するための設備は高価であり、十分な除去性能を確保することも困難である。
【0005】
本発明の課題は、二次燃焼炉における燃焼により燃焼ガスから確実に有害物質を除去してクリーンな排ガスを大気中に放出可能な燃焼ガス処理方法を提案することにある。
【0006】
また、本発明の課題は、廃棄ガスに含まれる有害物質を、廉価で簡単な設備により確実に除去できる廃棄ガス処理方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の燃焼ガス処理方法は、
一次燃焼炉における燃焼により発生する燃焼ガスを二次燃焼炉に導入し、
この二次燃焼炉内において、水素および酸素を体積比で2対1の割合で混合した水素酸素混合ガスを燃料とするガスバーナーの火炎を前記燃焼ガスに照射して、当該燃焼ガスを燃焼させることにより、当該燃焼ガスに含まれている有害物質を熱分解し、
二次燃焼炉で発生する排ガスを大気中に放出することを特徴としている。
【0008】
ここで、前記二次燃焼炉内での燃焼温度を、約1000℃から約4000℃までの範囲内の値とすることが望ましい。
【0009】
また、前記二次燃焼炉で発生する前記排ガスを約200℃以下に冷却し、冷却により生成する固形物を除去した後に大気中に放出することが望ましい。
【0010】
次に、本発明の廃棄ガス処理方法は、
ダイオキシンなどの大気汚染物質を含む廃棄ガスを燃焼室に導く導入工程と、
燃焼室に導入された廃棄ガスに水素酸素混合ガスを燃料とするガスバーナーの炎を照射して、当該廃棄ガスを燃焼させる燃焼工程と、
燃焼により生ずる燃焼排ガスを冷却する冷却工程と、
冷却後の排ガスを大気中に放出する放出工程とを有していることを特徴としている。
【0011】
ここで、水素酸素混合ガスは一般的にブラウンガスとして知られているものであり、本願人によってもゼットガスという商品名で生成しているものである。この混合ガスは、水を電気分解することにより生成された水素ガスおよび酸素ガスをそのまま混合して得られた体積比で水素2と酸素1の水素酸素混合ガスである。
【0012】
水素2と酸素1の混合ガス(ブラウンガス)は米国特許第4081656号明細書に開示されている。ブラウンガスは水の電気分解により得られる非爆発性の水素酸素混合体であり、その燃焼温度は理論値として3450℃になる。この混合ガスは、1970年初頭にブルガリア生まれのコール・ブラウン教授によって発明されたものである。ブラウンガスの特徴は、水素の体積2に対して酸素の体積1という割合が正確に維持されれば安全に混合(燃焼)できるという点にあり、また、貯蔵しておくことも可能である。
【0013】
水素酸素混合ガスの炎を処理対象の廃棄ガスに照射すると、超高温(1000℃〜4000℃)となり、廃棄ガスに含まれている不完全燃焼物を完全燃焼させ、総ての物を溶解する。また、水素酸素混合ガス自体が酸素を保有しているので、空気のない所でも、燃焼を継続することができる。更に、本発明で使用する水素酸素混合ガス(以下、「ゼットガス」と呼ぶ。)は表1のような特性がある。
【0014】
【表1】

【0015】
ゼットガスは、化石燃料又は化石ガスに比し表1の特性を有するので、廃棄ガスの燃焼時に有害物質を生成せず、水を生成するだけである。したがって、燃焼後には有害物質を含まない浄化された排ガスが得られる。
【0016】
ゼットガスによって燃焼させた後に得られる燃焼排ガスは高温であるので、冷却工程において、約200℃以下に冷却した後に大気中に放出することが望ましい。
【0017】
また、必要に応じて、冷却後の排ガスを放出する前に、排ガスに含まれる異物を除去する異物除去工程を行うようにしてもよい。たとえば、冷却によって生じた粒状物を除去することが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の廃棄ガス処理方法では、ゼットガス炎を処理対象の燃焼ガス、廃棄ガスに照射して超高温で燃焼させるようにしている。これにより、有害物質が除去されて清浄化された排ガスを大気中に放出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明を適用した生塵焼却施設を示す概略構成図である。生塵焼却施設200は、焼却物201が投入される一次燃焼炉202と、一次燃焼炉202で得られた一次燃焼物(燃焼物および燃焼ガス)203が導入され、これらを二次燃焼する二次燃焼炉204と、二次燃焼炉204から発生する排ガス205を処理して大気中に排出する排ガス処理部206とを有している。排ガス処理部206を介して排ガス207が大気中に放出される。
【0021】
二次燃焼炉204には、二次バーナーとして複数本のゼットガスバーナー211が配置されている。ゼットガスバーナー211には、ゼットガス発生器212において発生したゼットガス213が供給される。二次燃焼炉204においては、一次燃焼物および燃焼ガスがゼットガス炎に晒されて1000℃乃至4000℃の超高温で燃焼する。この結果、排気に含まれている不完全燃焼物が完全燃焼して、有害物質が熱分解される。二次燃焼炉204から排出される排ガス205は次段の排ガス処理部206において概ね200℃以下に冷却され、バグフィルタなどを通った後に大気中に放出される。
【0022】
次に、図2を参照して、本発明を適用した生廃棄物処理施設の実施の形態を説明する。生廃棄物処理施設100においては、まず、生廃棄物の集積槽1からコンベア2により、生廃棄物が定量ずつ取り出されて炭化炉3に供給される。炭化炉3内において、過熱器4から送られる過熱蒸気により生廃棄物が加熱処理されて、炭化物5aと、200℃〜300℃の高温排気5bが生成する。
【0023】
生成された高温排気5bは、熱交換器6を経て100℃位の低温排気6aとされた後に排気処理塔7に送り出される。排気は排気処理塔7において有害物質が除去されて清浄化され、次に、冷却塔30において冷却された後に、矢印36で示すように大気中に放出する。
【0024】
炭化炉3で生成された炭化物5aはガス化炉8に送られて、500℃〜800℃のゼットガスバーナー9Aで加熱されて、可燃ガス9aと残滓9bが生成される。可燃ガス9aはガスエンジン10に供給され、このガスエンジン10により発電機11が駆動され発電が行われる。ガスエンジン10からの排気37は、矢印で示すように排気処理塔7に導かれて、有害物質が除去されて清浄化される。浄化後の排ガスは冷却塔30を介して冷却された後に大気中に放出される。発電機11で発生した電力はゼットガス発生器12に供給され、当該ゼットガス発生器12においてゼットガス12aが生成される。
【0025】
一方、ガス化炉8の残渣は溶融炉14に排出され、ここにおいて、ゼットガスバーナー9Bで溶融された後に処理室38に移送される。処理室38に移送された溶融残渣は、風砕により1mm〜5mmの大きさに粉砕され、セメント製造時の材料又はコンクリート材料とされる。
【0026】
ここで、排気処理塔7は、燃焼筒71と、複数のゼットガスバーナー72とを備えている。ゼットガスバーナー72には、ゼットガス発生器12において発生したゼットガス12aが分配器13を介して供給される。熱交換器6およびガスエンジン10から排出される排気6a、37は、排気処理塔7の燃焼筒71を通過する際にゼットガス炎73に晒されて1000℃乃至4000℃の超高温で燃焼する。この結果、排気に含まれている不完全燃焼物が完全燃焼して、ダイオキシンなどの有害物質を含まない清浄化された排気が得られる。この高温の排気は、次段の冷却塔30を通って概ね200℃以下に冷却された後に大気中に放出される。
【0027】
(ゼットガス発生器)
図3はゼットガス発生器12およびその電極板を示す概略構成図である。このゼットガス発生器12は図1に示すゼットガス発生器212としても用いられるものである。ゼットガス発生器12の電解槽17内には、多数の電極板15が縦に並列設置されている。各電極板15は電導板16a、16bによって夫々プラス極と、マイナス極を形成している(図3(b))。電解槽17の下部には、送水パイプ27の一端が連結され、送水パイプ27の他端は、電解水の水槽18に連結されている。電解水は、通常のように、清水に通電用液、たとえば酸を入れて電気分解し易くしてある。
【0028】
電解槽17の上部には排水パイプ19の一端が連結され、排水パイプ19の他端は、電解水の水槽18の上部に収容されている分離匣20に収容されている。この分離匣20は、排水中に混入している水素ガス及び酸素ガスと、水とを分離する目的で設けられている。水槽18の上部には、分離された水素ガスと酸素ガスの混合ガスの排出パイプ21が連結されている。
【0029】
各電極板15に通電し、送水パイプ27のポンプ22を始動すると、電気分解されて生成した水素ガス、酸素ガスおよび水が、排水パイプ19から矢印23で示す方向に取り出され、分離匣20で気液分離される。分離された水素ガスおよび酸素ガスの混合ガスは、排出パイプ21から矢印35のように分配器13に送られ、分配器から必要箇所に分配される。
【0030】
なお、図3において、24は電解水の水槽18への送水パイプ、25は水位計測室、26は水位計、28は給排気パイプ、29は連通孔、30は磁化水にする為の電磁石、31は電磁バルブ、32は超音波発振器、33は電極板のスペーサー取付ピン、34はスペーサーである。
【0031】
本例のゼットガス発生器の構成は一例であり、他の構成を採用することも可能である。要は、水素ガスと酸素ガスを混合したゼットガスを効率よく生成できればよい。また、本例の電極も最も一般的な形態(電極の並列型)のものであり、他の形状・構造とすることを妨げない。要は、効率よく水を電気分解できればよい。
【0032】
また、各電極には水素ガス又は酸素ガスが気泡となって生成するが、ポンプ22の送水量により、電解水の流速を調整し、発生したガスの気泡を可及的速やかに取り除くようにすれば、電気分解の効率を更に向上させることできる。
【0033】
(その他の実施の形態)
上記の例は本発明を生廃棄物処理施設から排出される排気を浄化するために適用したものである。本発明は、それ以外の産業廃棄物の焼却炉からの排煙の浄化にも同様に適用可能である。また、病院などの換気システムから排出されるトルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物を含む排気の浄化にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用した生塵焼却施設の概略構成図である。
【図2】本発明を適用した生廃棄物処理施設の概略構成図である。
【図3】(a)は図2のゼットガス発生器の概念図であり、(b)は電極の一部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 生廃棄物
2 コンベア
3 炭化炉
4 過熱器
5 炭化物
6 熱交換器
7 排気処理塔
8 ガス化炉
9 ゼットガスバーナー
10 ガスエンジン
11 発電機
12 ゼットガス発生器
13 分配器
14 溶融炉
15 電極
16a、16b 導電板
17 電解槽
18 水槽
19 排水パイプ
20 分離匣
21 排出パイプ
22 ポンプ
30 冷却塔
71 燃焼筒
72 ゼットガスバーナー
100 生廃棄物処理施設
200 生塵焼却施設
201 燃焼物
202 一次燃焼炉
203 一次燃焼物
204 二次燃焼炉
205 排ガス
206 排ガス処理部
207 排ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次燃焼炉における燃焼により発生する燃焼ガスを二次燃焼炉に導入し、
この二次燃焼炉内において、水素および酸素を体積比で2対1の割合で混合した水素酸素混合ガスを燃料とするガスバーナーの火炎を前記燃焼ガスに照射して、当該燃焼ガスを燃焼させることにより、当該燃焼ガスに含まれている有害物質を熱分解し、
二次燃焼炉で発生する排ガスを大気中に放出することを特徴とする燃焼ガス処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼ガス処理方法において、
前記二次燃焼炉内での燃焼温度を、約1000℃から約4000℃までの範囲内の値とすることを特徴とする燃焼ガス処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の燃焼ガス処理方法において、
前記二次燃焼炉で発生する前記排ガスを約200℃以下に冷却し、
冷却後の排ガスに含まれる固形物を除去した後に大気中に放出することを特徴とする燃焼ガス処理方法。
【請求項4】
ダイオキシンなどの大気汚染物質を含む廃棄ガスを燃焼室に導く導入工程と、
燃焼室に導入された廃棄ガスに水素酸素混合ガスを燃料とするガスバーナーの炎を照射して、当該廃棄ガスを燃焼させる燃焼工程と、
燃焼により生ずる燃焼排ガスを冷却する冷却工程と、
冷却後の排ガスを大気中に放出する放出工程とを有しており、
前記水素酸素混合ガスとして、水を電気分解することにより生成された水素ガスおよび酸素ガスをそのまま混合して得られた体積比で水素2と酸素1の水素酸素混合ガスを用いることを特徴とする廃棄ガス処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の廃棄ガス処理方法において、
前記燃焼工程での燃焼温度は、約1000℃から約4000℃までの範囲内の値とすることを特徴とする廃棄ガス処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の廃棄ガス処理方法において、
前記冷却工程では、燃焼排ガスを約200℃以下に冷却することを特徴とする廃棄ガス処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の廃棄ガス処理方法において、
前記放出工程に先立って、冷却後の排ガスに含まれる異物を除去する異物除去工程を有し、
当該異物除去工程は、脱硝工程、集塵工程および脱硫工程のうちの少なくとも一つの工程を含むことを特徴とする廃棄ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−292011(P2008−292011A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135236(P2007−135236)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(505162571)株式会社Z・E・T (1)
【Fターム(参考)】