説明

廃棄物の処理方法

【課題】固体廃棄物が回分式に装入される固体廃棄物処理設備における、安定な装入・操業を達成することが可能な固体廃棄物処理設備の装入制御方法の提供。
【解決手段】固体廃棄物を回分式に装入する装入装置とストックラインレベルセンサーとを具え、該レベルセンサーでレベルを感知しなくなった時に該回分装入を行ない、レベルを感知した時に該回分装入を停止する、固体廃棄物を酸素含有ガスを用いて燃焼、ガス化又はガス化改質処理する固体廃棄物処理設備における装入制御方法において、予め、回分装入された固体廃棄物量及び該処理設備に供給された酸素含有ガス量から単位固体廃棄物量を処理するのに必要な酸素含有ガス量を求めておき、これに基づいて、回分装入された1回装入分の理論処理時間を計算して、この理論処理時間を装入停止時間とし、回分装入後、該装入停止時間の間は次の回分装入を行わないことを特徴とする固体廃棄物処理設備の装入制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体廃棄物を燃焼、ガス化又はガス化改質処理する固体廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、廃棄物処理場の不足などが顕在化しており、産業廃棄物あるいは一般廃棄物の多くは、発生したままの姿で、あるいは何らかの事前処理の上、焼却処分され減溶化された後に埋立てなどの最終処分が行われる場合が多い。上記した焼却処分の方法としては様々な方法が挙げられるが、近年、焼却場における発生ガス中のダイオキシンなど有害物質の管理が問題となっており、高温酸化雰囲気で有害物質を分解することが可能な処理方法が求められてきている。
【0003】
このような高温処理が可能な廃棄物処理方法としては例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示された廃棄物処理プロセスが挙げられる。
これらは、廃棄物を圧縮成形後、加熱し、生成した圧縮成形物を溶融、ガス化して燃料ガスを得る廃棄物処理プロセスである。このプロセスでは、先ず、廃棄物投入口から圧縮装置内に所定量供給した廃棄物をバッチ的に圧縮装置によって圧縮して緊密な圧縮成形物とする。次に、この圧縮成形物を外部から加熱された細長いトンネル式の加熱炉(以下トンネル式加熱炉と記す)内へ押し込む。この動作を繰り返すことによって、圧縮成形物がトンネル式加熱炉の装入口から排出口へ順次移動していく。こうして圧縮成形物がトンネル式加熱炉を移動する間に水分は蒸発し、表面は炭化される。
【0004】
トンネル式加熱炉で表面を炭化された圧縮成形物は、高温反応炉装入口から高温反応炉内に装入される。高温反応炉下部には酸素含有ガス供給配管が設置されており、高温反応炉内に酸素含有ガスを供給することにより、圧縮成形物中の可燃分は酸素含有ガスにより燃焼、熱分解してガス化される。ガス改質炉が高温反応炉上部に設けられている場合には、ガス化したガスは高温反応炉上部に直結されたガス改質炉に供給され、不燃分は高温反応炉下部で溶融し、溶融金属および溶融スラグで構成される溶融物となって高温反応炉下部の溶融物排出口から回収される。
【0005】
ガス改質炉下部には酸素含有ガス供給配管が設置されており、ガス改質炉内に酸素含有ガスを供給することにより、高温反応炉から供給された熱分解ガスの一部を燃焼させ、ガス温度を1000℃以上に維持する。ガス改質炉から排出されるガスは、冷却、除塵、脱硫、除湿等のガス精製工程を経て、一酸化炭素と水素を含む燃料用ガスとして回収できる。
【0006】
前記した廃棄物処理設備の場合、高温反応炉下部に酸素含有ガスを一定量で供給していても、廃棄物組成の変動、あるいは供給した酸素含有ガスと圧縮成形物の接触状況等によりガス改質炉へ供給される熱分解ガス量、組成が大きく変動する。例えば、高温反応炉に供給した酸素量に対して熱分解ガスの発生量が少ない場合には、ガス改質炉で一定量の酸素含有ガスを供給していると、熱分解ガスに対する酸素量が過剰となるため、ガス中の可燃性ガス濃度が低下し、ガス中に酸素が残存する懸念がある。ガス改質炉から排出されるガスはガス精製の工程で冷却されるため、上記のようにガス中に酸素が残存していると冷却後のガスに酸素が混合して爆発の危険性がある。
【0007】
この危険性を回避するために実設備では、精製ガス中の可燃性ガス濃度を常に監視し、可燃性ガス濃度が閾値以下になると高温反応炉下部に供給する酸素含有ガス量を低減させるという安全対策が採られている。しかし、高温反応炉下部に供給させる酸素含有ガス量を低減させると廃棄物処理量の低下に繋がってしまう。
これを回避するためには精製ガス中の可燃性ガス濃度が閾値以下になったら、ガス改質炉に供給している酸素含有ガス量を低減させ、精製ガス中の可燃性ガス濃度の低下を防ぐことが考えられる。
【0008】
特許文献4には、廃棄物のガス化溶融炉出側の改質ガス中の可燃性ガスであるHガス濃度を測定してガスカロリーを推定し、推定カロリーが一定値以上になるようにLNGなどの補助燃料を前記溶融炉内に投入する方法が記載されている。しかしながら、Hガス濃度の測定には分析計までのガスサンプリング時間と分析計自身の応答時間が必要で時間遅れが生じるが、実設備での可燃性ガス濃度の変化は非常に短い時間間隔で起こっており、Hガス濃度の測定にかかる時間よりもはるかに短いため、Hガス濃度を指標にガス改質炉へ供給する酸素含有ガス量を変更させる制御は実用的には問題がある。またHガス濃度は可燃性ガスを構成する一成分であるので、可燃性ガス全体のガス酸化度を表している指標とは言い難く、指標としてはガス全体ではなく部分的な指標であると言える。
【0009】
上記の通り、従来は精製ガス中の可燃性ガス濃度低下により高温反応炉下部に供給する酸素含有ガス量を低減させる処置をとっており、廃棄物処理量の低下を避けることができなかった。
また、上記の処理設備においては、高温反応炉内に装入した廃棄物等の装入物の堆積レベル(ストックレベル)を制御する必要があるため、堆積レベルの検知手段を設けて、最大高さを制限する装入制御を行なっているが、廃棄物の性状は比較的短時間のうちに変化することがあり、従来の最大高さを制限するという装入制御方法では安定した操業ができなかった。
【0010】
【特許文献1】特開平6−26626号公報
【特許文献2】特開平6−79252号公報
【特許文献3】特開平7−323270号公報
【特許文献4】特開2003−268387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、固体廃棄物が回分式に装入される固体廃棄物処理設備において、安定な装入・操業を達成することが可能な固体廃棄物処理設備の装入制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、回分装入される1回分の固体廃棄物量と該処理設備に供給される酸素含有ガス量から1回装入分の理論処理時間をあらかじめ計算し、回分装入後に、該1回装入分の理論処理時間で定められる装入停止時間の間は次の回分装入を行わないようにすることにより前記課題が解決できることを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下に記載する通りの固体廃棄物処理設備の装入制御方法である。
【0013】
(1)固体廃棄物を回分式に装入する装入装置とストックラインレベルセンサーとを具え、該レベルセンサーでレベルを感知しなくなった時に該回分装入を行ない、レベルを感知した時に該回分装入を停止する、固体廃棄物を酸素含有ガスを用いて燃焼、ガス化又はガス化改質処理する固体廃棄物処理設備における装入制御方法において、予め、回分装入された固体廃棄物量及び該処理設備に供給された酸素含有ガス量から単位固体廃棄物量を処理するのに必要な酸素含有ガス量を求めておき、これに基づいて、回分装入された1回装入分の理論処理時間を計算して、この理論処理時間を装入停止時間とし、回分装入後、該装入停止時間の間は次の回分装入を行わないことを特徴とする固体廃棄物処理設備の装入制御方法。
(2)前記装入停止時間が前記1回の装入分の理論処理時間の80%〜99%であることを特徴とする上記(1)記載の固体廃棄物処理設備の装入制御方法。
(3)前記固体廃棄物の装入が、前記固体廃棄物を圧縮シリンダーで圧縮するプレス工程と、得られた圧縮成形物を加熱する脱ガス工程と、加熱された圧縮成形物を回分式に装入する装入工程とを行う装入装置によって行われることを特徴とする上記(1)、(2)記載の固体廃棄物処理設備の装入制御方法。
(4)駆動圧力を一定とした圧縮シリンダーを用い、前記回分装入される1回分の固体廃棄物量を、前記圧縮シリンダーの位置情報から求めた圧縮成型物長と該シリンダー断面積から求めた圧縮成型物体積に前記固体廃棄物の平均密度を乗じた値とすることを特徴とする上記(3)記載の固体廃棄物処理設備の装入制御方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によれば、経済的な方法で、回分式で装入される1回分の廃棄物量の変動に起因する操業の変動を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の装入制御方法は、固体廃棄物を酸素含有ガスによって燃焼処理、ガス化処理又はガス化改質処理する固体廃棄物処理設備であって、固体廃棄物を回分式に装入する装入装置とストックラインレベルセンサーとを具え、該レベルセンサーでレベルを感知しなくなった時に該回分装入を行ない、レベルを感知した時に該回分装入を停止するようにした固体廃棄物処理設備に適用できる。
以下では、本発明をガス化改質炉を備えた廃棄物処理設備において適用する場合について説明するが、本発明は、一般の焼却炉、ガス化溶融炉にも適用することができる。
【0016】
図1は従来の廃棄物処理設備を側面図によって示す。図1において、1は廃棄物を回分的(:バッチ的)に加圧、圧縮する圧縮機、2は圧縮用シリンダー、3は圧縮支持盤、4は圧縮された廃棄物(以下圧縮成型物とも記す)を乾燥、熱分解、炭化するためのトンネル式加熱炉(:横型トンネル式加熱炉)、4aは圧縮成型物の乾燥領域、4bは圧縮成型物の熱分解領域、4cは圧縮成型物の炭化領域、4はトンネル式加熱炉4の入口、5は高温反応炉、10a、10iは圧縮成型物、11i、11は炭化した圧縮成型物(以下炭化生成物とも記す)、12は炭化生成物と燃焼残渣の混合物、13は酸素含有ガスの吹き込み口、15は溶融物、15Hは溶融物排出口、20は廃棄物投入口、21は廃棄物投入口の蓋、40はトンネル式加熱炉4で得られた炭化生成物の高温反応炉5内への押出し口(:高温反応炉5内への炭化生成物の装入口)、50は高温反応炉5の排ガス出口、50aは高温反応炉5のガス排出口、fは圧縮成型物10a、10iの移動方向、fは炭化生成物11、11の移動方向、fはトンネル式加熱炉4内で生成した熱分解ガスの流れ方向、fは高温反応炉5内への酸素含有ガスの吹き込み方向、fは圧縮用シリンダー2の移動方向、fは圧縮支持盤3の移動方向、fは廃棄物投入口20の蓋21の回転方向、Lは炭化生成物の高温反応炉5内への押出し口40の下端の高さ、Lは高温反応炉5のガス排出口50aの高さを示す。
【0017】
図1に示す廃棄物処理設備においては、先ず、回分的に廃棄物投入口20から供給した廃棄物を、圧縮機1を用いて圧縮して緊密な圧縮成型物10aとする。次に、この圧縮成型物10aを、外部から加熱された細長いトンネル式加熱炉(:横型トンネル式加熱炉)4内へ押し込む。この際、廃棄物中に含まれていた水分は、上記した圧縮工程で絞り出され、廃棄物と共にトンネル式加熱炉4内に押し込まれる。
圧縮成型物10aの断面形状は、トンネル式加熱炉4の入口4の内壁断面と同形、同一寸法であり、圧縮成型物10aを押し込むと圧縮成型物10aはトンネル式加熱炉4の内壁と接触状態を保ったまま押し込まれる。圧縮成型物10iは、順次新しい圧縮成型物が押し込まれる毎に、トンネル式加熱炉4内を滑りながら移動する。
【0018】
トンネル式加熱炉4は前記したように外部から加熱されており、内部は600℃程度まで昇温され、圧縮成型物10iの移動、昇温過程において、圧縮成型物10iは乾燥、熱分解、炭化する。炭化生成物11nおよび熱分解により発生したガス成分は、1000℃以上に維持された高温反応炉5内へ装入および吹き込まれる。
その後、鉱物分、金属分を含む炭化生成物中の可燃分は、酸素含有ガスによって燃焼してガス化する。この場合、酸素含有ガス中の酸素量を調整することで、発生するガスは一酸化炭素と水素を含む燃料用ガスとして回収できる。また、燃焼によってガス化しない残渣部分は、高温反応炉5内で溶融し、溶融物15となって高温反応炉5下部の溶融物排出口15Hから回収される。
【0019】
高温反応炉5内に装入した廃棄物等の装入物の堆積レベル(ストックレベル)を検知するために堆積レベルの検知手段を設ける。この種のレベル検知手段としては接触式のものと非接触式のものとがあるが、接触式のものは炉内の高温雰囲気による堆積レベル検知端の熱衝撃及び熱損傷、また炉内雰囲気の外部漏洩の防止等の観点からして好適ではない。
【0020】
非接触式による前記検知方式としては、具体的には、音波によるもの、光によるもの、放射線(γ線等)によるものおよび電(磁)波によるものの4種類があるが、高温反応炉上部に直結するガス改質炉の温度が1000℃以上の高温であり、また、熱分解ガスにダスト、すすなどが多く含まれていることから、高炉などで用いられるサウンジング装置は高温のため設置が不可能であり、超音波レベル計はガス中のダスト、すす等により正確な測定が困難である。
そこで、本発明ではγ線または超音波式の透過型のセンサーを廃棄物装入面の上端に設置して最大高さを検知することが好ましい。
【0021】
ところで、従来行われていた最大高さを制限する装入制御では、高温反応炉下部におけるある一定の酸素含有ガス供給量に対して、やや大きめの廃棄物装入速度で廃棄物を装入し、廃棄物高さがレベル計を設置した高さに達した場合に、装入をしばらく停止し、レベルの低下を待ってレベルセンサーでレベルを感知しなくなった時に回分装入を行ない、次いでレベルを感知した時に回分装入を停止するという方法で行われている。この場合の廃棄物の装入速度は、1回当たりの廃棄物装入量と時間当たりの装入回数で決まる。廃棄物ホッパーから圧縮装置内へ供給される廃棄物の量は、圧縮装置の大きさや廃棄物の性状によって決まり、操業者が正確に制御するのは困難であるため、廃棄物の装入速度は時間当たりの装入回数を調節することによって調節している。
【0022】
しかしながら、廃棄物の性状は比較的短時間のうちに変化することがあり、1回当たりの廃棄物装入量は短い周期で変動し、時には毎回大きく異なることもある。
また、廃棄物の堆積層の下部に酸素含有ガスを吹込み燃焼およびガス化をさせると、酸素含有ガス吹込みノズルの前の部分の廃棄物が燃焼およびガス化し、ノズル前に空洞ができる。通常はこの空洞に直上に堆積している廃棄物が降下してきて、順次燃焼およびガス化が進行するが、時折あるいは頻繁にノズル前の空洞の直上の廃棄物がブリッジを形成し、廃棄物が降下しないことがある。同時に酸素含有ガスはブリッジを形成している廃棄物を燃焼させることなく、吹き抜け、廃棄物の堆積層上部へぬけて行く。このような状態では酸素含有ガス供給部に廃棄物がないため、廃棄物の燃焼およびガス化が起こらず、あるいはその量が減少し、廃棄物からの生成ガス量が減少する。このような現象があるときに、廃棄物のレベルを検知して、次の廃棄物装入を行うシステムでは、廃棄物の装入は行われず、ますます、廃棄物からの生成ガス量が低下する。
【0023】
一方、このようなブリッジも少しずつ反応し、あるとき突然ブリッジが崩れ、急激にレベルが低下することがある。このときは酸素含有ガス供給部に急激に可燃物が供給されることとなり、ガス発生量は急増する。同時にレベルが急激に低下したことを検知して、次の回分装入が行われ、ガス発生量の急増を助長することになる。酸素含有ガス吹込み部の空洞が大きい場合には、1回の装入ではレベルが回復せず、複数回間隔をあけずに装入されることがある。
このように、ノズル前に空間が出来、酸素含有ガスが吹きぬけた場合のガス発生量の低下とその後の連続的な廃棄物の装入により、ガス発生量が大幅に変動することになる。
【0024】
このような状況下で前記の最大高さを制限する装入制御を行なうと、一定の酸素含有ガスに対して、廃棄物の供給速度が大きく変動することとなり、熱分解ガス発生量、組成および温度などの変動を大きくする要因となる。
また、レベルを感知しなくなった時に回分装入してもレベルの測定点において回分装入した廃棄物が検知されなければ(例えば回分装入した廃棄物が周辺に転がって堆積するような場合)レベル計は感知せず、その間、数回の回分装入を行なってしまうことがたびたびある。
更に、装入物の荷下がりも廃棄物の場合は不順であるため、装入は数回連続、長時間停止などのかなり不順な装入挙動を示すことがたびたびある。
このようなことが起これば、ガス化改質処理の場合は、発生するガス量が大きく変動してガスの安定的な供給ができない。また、焼却炉が単なるガス化処理炉であっても、装入不順は操業の安定性維持の観点から大きな問題である。
【0025】
そこで、本発明においては上記の事態を回避するために、回分装入される1回分の固体廃棄物量と該処理設備に供給される酸素含有ガス量から1回装入分の理論処理時間をあらかじめ計算し、該回分装入を該1回装入分の理論処理時間で定められる装入停止時間の間は次の回分装入をしないようにした。
前記の装入停止時間を設定するためには、あらかじめ、過去の操業結果より単位固体廃棄物量を処理するのに必要な酸素含有量を求めておく。これは、ある期間の固体廃棄物の処理量(t)で同一期間の酸素含有ガス量を除することにより求めることができる。これを酸素含有ガス原単位S(Nm/t−固体廃棄物)とする。
そうすると、回分装入される一回分の固体廃棄物量をM(t)とし、このときの酸素含有ガスの供給量をF(Nm/s)とすると、1回分の理論処理時間T(s)は次式(1)で表すことができる。
T(s)=S×M/F ・・・・・(1)
【0026】
そして、本発明においては、上記の理論処理時間T(s)を装入停止時間とし、この時間の間は固体廃棄物を装入しないようにする。
このようにすることにより、前記ガス発生量の急増時に連続して廃棄物が供給されることがないため、ガス発生量の変動を大幅に減少させることが出来る。
【0027】
また、この装入停止時間は前記1回の装入分の理論処理時間の80%〜99%とすることが好ましい。
80%以下であるとレベルの上昇速度が速く、高い頻度でレベルセンサー位置に廃棄物を検知した状態となり、1回に装入される廃棄物に対応した理論処理時間ごとの均一な廃棄物供給とならない。一方99%以上では、廃棄物の質が変動した場合、特に、過去の操業で求めた単位廃棄物量を処理するのに必要な酸素量が、そのときの廃棄物の単位量を処理するのに必要な酸素量よりも大きい場合は、廃棄物の炉内の滞留量が減少し、ガス発生量が低下してしまうことが多くなる。
【0028】
固体廃棄物の装入は、固体廃棄物を圧縮シリンダーで圧縮するプレス工程と、得られた圧縮成形物を加熱する脱ガス工程と、加熱された圧縮成形物を回分式に装入する装入工程とからなる装入装置によって行われることが好ましい。
プレス工程で廃棄物が圧縮されていると炉内へ装入した後の廃棄物の飛散が少ないという効果がある他、圧縮成形物によって装入路が塞がれているため炉内圧が高くても可燃性の高温ガスが外部へ漏れないという効果がある。
また、圧縮時のプレス機のストロークは1回分のごみの量によって変化するため、通常プレス機の駆動圧力を一定とし、同じ圧力で廃棄物を圧縮するのが好ましい。
【0029】
上記式(1)における回分装入される1回分の固体廃棄物量は、前記一定駆動圧力の圧縮シリンダーの位置情報から求めた圧縮成型物長と該シリンダー断面積から求めた圧縮成型物体積に前記固体廃棄物の平均密度を乗じた値とすることができる。
上記のようにすれば、圧縮シリンダーの位置情報は簡便に求めることができるので、回分装入量を直接測定する場合に比べて設備を簡略化することができる。
また、廃棄物の供給量を直接測定する場合には、廃棄物ピットから廃棄物ホッパーに投入する際に、クレーンに設置された廃棄物重量測定装置によって測定するが、大規模な測定装置が必要となるため経済的な理由から現実的ではない。
【0030】
シリンダー部に供給した廃棄物量及びごみ質の変化により圧縮率が変化するので、圧縮シリンダーの位置情報から求めた圧縮成型物長も変化する。また、固体廃棄物の平均密度は、ある期間の、クレーン等に設置されている計量器によって計測した廃棄物の供給量を、同一期間の圧縮物体積の合計で除することにより求めることができる。
図1の装置では炉の横方向から固体廃棄物を装入しているが、固体廃棄物の装入は炉の上部方向から装入することもできる。
【実施例】
【0031】
本発明の実施例について以下説明する。
使用した装置は図1に示した、固体廃棄物を酸素含有ガスによって燃焼処理、ガス化処理又はガス化改質処理する固体廃棄物処理設備であって、固体廃棄物を回分式に装入する装入装置とストックラインレベルセンサーとを具え、該レベルセンサーでレベルを感知しなくなった時に該回分装入を行ない、レベルを感知した時に該回分装入を停止するようにした固体廃棄物処理設備である。
図2に本発明を用いない従来の方法で操業を行った比較例の操業パターンを、図3に本発明を用いて操業を実施した実施例の操業パターンを示す。図には廃棄物の装入タイミング、レベルセンサーの信号によるごみの感知または非感知の別および高温反応炉からの排出ガス量の相対値を示した。また図3の実施例においては、固体廃棄物はプレス工程および脱ガス工程を経て炉内へ装入し、駆動圧力を一定とした圧縮シリンダーを用い、前記圧縮シリンダーの位置情報から求めた圧縮成型物長と該シリンダー断面積から求めた圧縮成型物体積に前記固体廃棄物の平均密度を乗じた値を、回分装入される1回分の固体廃棄物量とした。さらに、1回分の理論処理時間の90%を装入停止時間とした。
図2の比較例と対比すると、図3の実施例では廃棄物の装入タイミングがより均等となり、高温反応炉からの排出ガスの変動幅も小さくなり、廃棄物を効率良く、安定的に処理することが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の方法によれば、廃棄物を効率良く、安定的に処理することが可能であるので、都市ごみ等の処理方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の方法が適用される廃棄物処理設備の一例を示す図である。
【図2】比較例における操業パターンを示す図である。
【図3】実施例における操業パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 廃棄物の圧縮機
2 圧縮用シリンダー
3 圧縮支持盤
4 トンネル式加熱炉(:横型トンネル式加熱炉)
4a 圧縮成型物の乾燥領域
4b 圧縮成型物の熱分解領域
4c 圧縮成型物の炭化領域
トンネル式加熱炉の入口
4L トンネル式加熱炉の床部
4U トンネル式加熱炉の天井部
5 高温反応炉
6 ガス改質炉
7 高温反応炉下部
10a 、10i 圧縮成型物
11、11炭化した圧縮成型物(:炭化生成物)
12 炭化生成物と燃焼残渣の混合物
13 酸素含有ガスの吹き込み口
14 酸素含有ガスと可燃性ガスとの混合ガスの吹き込み口
15 溶融物
15H 溶融物排出口
20 廃棄物投入口
21 廃棄物投入口の蓋
40 高温反応器内への炭化生成物の装入口
50 高温反応器の排ガス出口
50a 高温反応器のガス排出口
60 排出ガス
圧縮成型物の移動方向
炭化生成物の移動方向
トンネル式加熱炉内で生成した熱分解ガスの流れ方向
高温反応器内への酸素含有ガスの吹き込み方向
高温反応器内への酸素含有ガスと可燃性ガスとの混合ガスの吹き込み方向
圧縮用シリンダーの移動方向
圧縮支持盤の移動方向
廃棄物投入口の蓋の回転方向
炭化生成物の高温反応器内への押出し口の下端の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体廃棄物を回分式に装入する装入装置とストックラインレベルセンサーとを具え、該レベルセンサーでレベルを感知しなくなった時に該回分装入を行ない、レベルを感知した時に該回分装入を停止する、固体廃棄物を酸素含有ガスを用いて燃焼、ガス化又はガス化改質処理する固体廃棄物処理設備における装入制御方法において、予め、回分装入された固体廃棄物量及び該処理設備に供給された酸素含有ガス量から単位固体廃棄物量を処理するのに必要な酸素含有ガス量を求めておき、これに基づいて、回分装入された1回装入分の理論処理時間を計算して、この理論処理時間を装入停止時間とし、回分装入後、該装入停止時間の間は次の回分装入を行わないことを特徴とする固体廃棄物処理設備の装入制御方法。
【請求項2】
前記装入停止時間が前記1回の装入分の理論処理時間の80%〜99%であることを特徴とする請求項1記載の固体廃棄物処理設備の装入制御方法。
【請求項3】
前記固体廃棄物の装入が、前記固体廃棄物を圧縮シリンダーで圧縮するプレス工程と、得られた圧縮成形物を加熱する脱ガス工程と、加熱された圧縮成形物を回分式に装入する装入工程とを行う装入装置によって行われることを特徴とする請求項1又は2記載の固体廃棄物処理設備の装入制御方法。
【請求項4】
駆動圧力を一定とした圧縮シリンダーを用い、前記回分装入される1回分の固体廃棄物量を、前記圧縮シリンダーの位置情報から求めた圧縮成型物長と該シリンダー断面積から求めた圧縮成型物体積に前記固体廃棄物の平均密度を乗じた値とすることを特徴とする請求項3記載の固体廃棄物処理設備の装入制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−52800(P2009−52800A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219552(P2007−219552)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(593141481)JFE環境ソリューションズ株式会社 (47)
【Fターム(参考)】