説明

廃棄物処理装置

【課題】発電量を制御して電力費用の負担を低減すること。
【解決手段】本発明は、廃棄物を熱分解する熱分解反応器3から排出される熱分解カーボンが貯留される貯留容器37と、この貯留容器内の熱分解カーボンを切り出す切出機39と、熱分解反応器3から排出される熱分解ガスと切出機39から切り出される熱分解カーボンを燃焼する燃焼炉7と、この燃焼炉7から排出される燃焼排ガスの熱を回収して発電する発電手段31と、この発電手段に要求される発電量を燃焼排ガスの排ガス流量に基づいて制御する制御手段45とを備え、制御手段は、排ガス流量を切出機の切り出し量により制御するとともに、排ガス流量の設定流量を時間帯に応じて切り替えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を熱分解処理して可燃性物質を燃焼処理する廃棄物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみなどの一般廃棄物や廃プラスチックなどの可燃物を含む産業廃棄物の処理装置として、廃棄物を熱分解反応器に入れて低酸素雰囲気中で加熱して熱分解し、熱分解反応器から排出される熱分解ガスと不揮発性成分の熱分解カーボンとを燃焼炉に導いて燃焼処理する廃棄物処理装置が知られている。この燃焼炉の下流側には、高温空気加熱器や廃熱回収ボイラなどの熱回収手段が設けられ、ここで回収された廃熱は、熱分解の熱源や発電などに利用されている。
【0003】
ところで、このような廃棄物処理装置は、通常、廃棄物の性状の変動などに伴い、燃焼炉から発生する燃焼排ガスの排ガス流量が変動する。ここで、排ガス温度は、燃焼温度が管理されているため、比較的安定しているが、廃棄物の性状や処理量などが変化して排ガス量が減少すると、高温空気加熱器で加熱される空気の温度が低下したり、発電量が低下するなど、廃棄物処理装置の全体の運転状態が不安定になるおそれがある。
【0004】
そこで、熱分解カーボンの焼却炉への切出量に基づいて排ガス流量を設定流量に制御するようにした廃棄物処理装置が開示されている(特許文献1参照。)。このように排ガス流量を制御することにより、熱回収量や発電量を所定の範囲に保つことができるので、廃棄物処理装置全体の運転を安定化できる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−226921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようにして発電された電力は、通常、廃棄物処理装置を運転維持するために消費され、余剰電力は外部に売電する一方、不足電力は買電により賄われる。ここで、売電及び買電における電力単価は、日中よりも夜間の方が低廉のため、日中の発電量を増加させ、できるだけ買電量を少なくする、或いはできるだけ売電量を増やすことが求められている。
【0007】
しかしながら、特許文献1によれば、燃焼排ガスの排ガス流量が所定の範囲に保たれているから、例えば、日中の時間帯だけ排ガス流量を増やして発電量を増加させるという排ガス流量の制御ができない。
【0008】
本発明は、発電量を制御して電力費用の負担を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、廃棄物を熱分解する熱分解反応器と、この熱分解反応器から排出される熱分解カーボンが貯留される貯留容器と、この貯留容器内の熱分解カーボンを切り出す切出機と、熱分解反応器から排出される熱分解ガスと切出機から切り出される熱分解カーボンを燃焼する燃焼炉と、この燃焼炉から排出される燃焼排ガスの熱を回収して発電する発電手段と、この発電手段に要求される発電量を燃焼排ガスの排ガス流量に基づいて制御する制御手段とを備え、この制御手段は、排ガス流量を切出機の切り出し量により制御するとともに、排ガス流量の設定流量を時間帯に応じて切り替えることを特徴としている。
【0010】
この発明によれば、例えば、基準となる排ガス流量に対し、日中の時間帯の設定流量を大きく設定し、夜間の時間帯の設定流量を小さく設定することにより、夜間に切り出される熱分解カーボンの量は減少し、日中に切り出される熱分解カーボンの量は増加する。つまり、夜間の間に日中の熱分解カーボンの増加分が貯留容器に貯えられる。これにより、日中は、排ガス流量が増加して発電量が増えるため、買電量を少なくすることができ、余剰になったときは、売電することができる。一方、夜間は、排ガス流量が減少して発電量が減るため、買電料が増えることがあるが、日中よりも電力料金が低廉のため、トータルの電力費用の負担を小さくできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発電量を制御して電力費用の負担を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用してなる廃棄物処理装置の一実施形態について図1を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなる廃棄物処理装置の構成を示す図である。
【0013】
本実施形態の廃棄物処理装置は、粉砕された廃棄物1を熱分解して熱分解ガスと熱分解残渣を生じさせる横型回転ドラムで構成された熱分解反応器3と、熱分解反応器3に接続されて熱分解反応器3から排出された熱分解ガスと熱分解残渣を分別する分離装置5と、分離装置5で分別された熱分解ガスと熱分解残渣から分別された熱分解カーボンとを燃焼させる燃焼溶融炉7と、燃焼溶融炉7から排出される燃焼排ガスと循環空気を熱交換させる高温空気加熱器9と、燃焼排ガスから熱回収する廃熱回収ボイラ11と、燃焼排ガスの流量を検出する流量計43と、流量計43の検出値を入力して熱分解カーボンを燃焼溶融炉7へ切り出す切出量を制御する制御装置45を備えて構成される。
【0014】
次に、このように構成される廃棄物処理装置の動作を説明する。
【0015】
粉砕された廃棄物が熱分解反応器3に供給され、例えば300〜600℃(通常は450℃)程度に加熱されて熱分解されると、熱分解ガスと熱分解残渣が生成される。ここで、廃棄物1の処理量は、通常、所定の範囲に管理されるため、熱分解ガスと熱分解残渣の生成量も所定の範囲に保たれている。
【0016】
熱分解反応器3で生成された熱分解ガスは、分離装置5から供給ラインL1を介して燃焼溶融炉7のバーナに供給されて燃焼される。この燃焼により発生した高温の燃焼排ガスは、高温空気加熱器9に導かれ、伝熱管内を流れる空気を加熱した後、廃熱回収ボイラ11に導かれる。廃熱回収ボイラ11は、燃焼排ガスの熱により水を加熱して蒸気を発生させる。本実施の形態では、燃焼溶融炉7の廃熱は、高温空気加熱器9と廃熱回収ボイラ11により熱回収されるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
廃熱回収ボイラ11から排出された燃焼排ガスは、減温塔13に導かれて、例えば散水などにより冷却される。減温塔13から排出された燃焼排ガスは、除塵用バグフィルタ15、脱塩用バグフィルタ17を順に通過して清浄な燃焼排ガスとなり、誘引送風機19に吸引されて、煙突21から大気中へ排出される。
【0018】
誘引送風機19から排出される燃焼排ガスの流路は、誘引送風機23を介して燃焼溶融炉7に接続されている。また、燃焼溶融炉7には、押込送風機25から燃焼用空気が供給されるようになっている。誘引送風機23及び押込送風機25は、図示しない制御器によって制御され、燃焼溶融炉7の燃焼温度が所定の温度、つまり不燃物が溶融する温度(例えば、1300℃)に維持されている。
【0019】
高温空気加熱器9で加熱された空気は、循環ラインL2を介して熱分解反応器3に供給され、熱分解用の熱源として使用された後、循環ラインL2に設けられた誘引送風機27によって高温空気加熱器9に戻される。廃熱回収ボイラで生成された蒸気は、蒸気ドラム29で気液分離され、ここにおいて分離された蒸気が蒸気タービン31に供給されて発電機33を駆動させ、発電に利用される。
【0020】
一方、分離装置5で分離された熱分解残渣は、分離装置5から冷却ドラム33に供給されて冷却される。冷却ドラム33から排出された熱分解残渣は、分別設備35に導かれて、熱分解カーボンと、鉄及びアルミなどの不燃物とに分別される。分別された粉粒状の熱分解カーボンは、貯留容器のカーボンホッパ37へ搬送されて一時貯留される。カーボンホッパ37に貯留された熱分解カーボンは、切出機39により供給機41へ切り出され、この切出し量は、制御装置45によって制御される。切出機39には、ロータリーフィーダなどが用いられ、制御装置45から出力された信号により、切出し羽根の回転数が制御されるようになっている。
【0021】
供給機41に切り出された熱分解カーボンは、供給ラインL3を介して燃焼溶融炉7に供給される。熱分解カーボンに含まれた不燃物は、燃焼溶融炉7において溶融されて溶融スラグとなり、炉底部から水槽44に落下して固化される。
【0022】
次に、廃棄物処理装置の発電量の制御について説明する。
【0023】
図2に制御フローを示す。排ガス流量は熱分解ガスと熱分解カーボンの燃焼量(処理量)に依存する。ここで、燃焼溶融炉に供給される熱分解ガスの量は、廃棄物の熱量の変化に大きく影響を受けて変動することから、それにあわせて熱分解カーボンの切出量を変化させることにより、排ガス流量が安定するため、熱回収して発生する蒸気量が安定し、その結果、安定した発電量を得ることができる。
【0024】
このとき、熱分解カーボンの切出量が変化すると、排ガス量の応答は比較的速いが、ボイラ蒸気量とタービン発電量の応答時間は非常に遅くなる。そのため、図4に示すように、熱分解カーボンの切出量で発電量を直接制御しようとすると、熱分解カーボンの切出量が排ガス流量を制御することに加えて、発電量も同様に制御することになるため、応答時間の遅れが大きくなり、制御が不安定になるおそれがある。
【0025】
これに対し、本実施の形態では、図5に示すように、排ガス流量を目標値として熱分解カーボンの切出量を制御し、発電量と排ガス流量の関係を予め設計条件として定めておき、流量計43で計測された排ガス流量が、所望の発電量に応じて定められた設定流量となるように、制御装置45から切出機39へ回転数の信号を出力し、熱分解カーボンの切出量を制御するようにしている。これにより、排ガス流量は、例えば、熱分解ガスのガス量や熱量の変動と関係なく設定流量に制御されるから、所望の発電量を安定して得ることができる。なお、排ガス流量は、誘引送風機19の入口側の排ガス流量を検出しているが、燃焼排ガスの流量を測定するのであれば、この位置に限定されるものではない。
【0026】
また、排ガス流量は、設定時刻などに応じて設定流量を自動又は手動で適宜切り替えることが可能になっている。例えば、基準となる排ガス流量に対し、日中の時間帯の設定流量を大きく設定し、夜間の時間帯の設定流量を小さく設定することにより、制御装置45は、設定された時間帯ごとに、排ガス流量が設定流量になるように、所定の回転数の信号を切出機39へ出力する。
【0027】
これによれば、夜間の時間帯に、熱分解カーボンの切出量を少なくして、余った熱分解カーボンをカーボンホッパ37に貯えておくことができるため、日中の時間帯に、切出量が増えた分の熱分解カーボンを確保することができる。これにより、日中の時間帯は排ガス流量が増加して発電量を増やすことができるから、買電量を減らすことができ、電力に余剰が生じたときは売電することができる。一方、夜間は、切出量の減少に伴い、発電量が減少するため、買電料は増えるが、日中よりも電力料金が低廉のため、トータルの電力費用の負担を少なくできる。
【0028】
図3は、発電電力、排ガス流量、熱分解カーボン量、熱分解ガス量について、日中と夜間の時間帯における推移の一例を説明する図である。ここで、熱分解カーボン量、熱分解ガス量とは、いずれも燃焼溶融炉に供給される量を示している。
【0029】
日中の時間帯は、排ガスの設定流量が夜間よりも大きく設定されるため、熱分解カーボン量は夜間よりも多くなっている。また、熱分解ガス量は、廃棄物の性状変化などにより増加と減少を繰り返すが、排ガス流量に基づいて熱分解カーボン量を制御しているため、熱分解ガス量の変動にかかわらず、排ガス流量は安定している。
【0030】
このように本実施の形態では、排ガスの設定流量に基づいて、熱分解カーボンの切出量を制御するようにしているから、例えば、廃棄物の熱量が変動しても安定して所望の発電量を得ることができ、廃棄物処理装置の運転状態を安定化させることができる。また、排ガスの設定流量は時間帯に応じて切り替えられるから、日中の発電量を増加させて、買電量を減らすことができ、余剰のときは売電量を増やすことができる。また、夜間は、日中よりも電力料金が低廉であるから、買電料が増えても、結果として、トータルの電力費用の負担を小さくすることができ、経済的である。
【0031】
また、本実施の形態では、熱分解反応器と燃焼溶融炉を組み合わせた例について説明したが、熱分解カーボンの供給を制御できる構成であれば、この例に限らず、他の構成のプラントにおいても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用してなる廃棄物処理装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】本発明を適用してなる廃棄物処理装置の発電量の制御を説明するフロー図である。
【図3】本発明を適用してなる廃棄物処理装置において、発電電力、排ガス流量、熱分解カーボン量、熱分解ガス量について日中と夜間の時間帯における推移の一例を説明する図である。
【図4】従来の廃棄物処理装置の発電量の制御を説明するフロー図である。
【図5】本発明を適用してなる廃棄物処理装置の発電量の制御を説明するフロー図である。
【符号の説明】
【0033】
3 熱分解反応器
7 燃焼溶融炉
11 熱回収ボイラ
31 蒸気タービン
33 発電機
37 カーボンホッパ
45 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を熱分解する熱分解反応器と、該熱分解反応器から排出される熱分解カーボンが貯留される貯留容器と、該貯留容器内の前記熱分解カーボンを切り出す切出機と、前記熱分解反応器から排出される熱分解ガスと前記切出機から切り出される前記熱分解カーボンを燃焼する燃焼炉と、該燃焼炉から排出される燃焼排ガスの熱を回収して発電する発電手段と、該発電手段に要求される発電量を前記燃焼排ガスの排ガス流量に基づいて制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記排ガス流量を前記切出機の切り出し量により制御するとともに、前記排ガス流量の設定流量を時間帯に応じて切り替えることを特徴とする廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−241123(P2008−241123A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82414(P2007−82414)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】