説明

廃水の水銀除去方法

イオン性、有機および水銀元素を、炭化水素処理からの廃水ストリームなどの水性ストリームから除去する方法。本方法は、四つの主な工程を含む。先ず、水銀沈殿剤が、ストリームへ添加されて、水銀の溶解イオン性種が、水不溶形態へ転化される。これらの沈殿された固体の大部分、並びに他形態の微粒子水銀が、引続いて、ガス浮選により除去される。浮選工程に続いて、更なる微粒子および沈殿されたイオン性水銀の除去が、媒体ろ過を用いて達せられ、最後に、活性炭が、残留する溶解イオン性水銀種、並びに元素および有機形態の水銀を除去する働きをする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水銀を、廃水ストリームから除去するための方法に関し、特に、水銀を、石油製油所および他の石油処理施設からの廃水ストリームから除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界のある地域で生産される天然ガスおよび原油は、水銀を、それらの処理に問題を生じさせるのに十分な量で含む。例えば、東南アジアのある地域で生産される天然ガスから誘導された炭化水素コンデンセートは、水銀を、1000ppbwを超えて含むことがあり、一方アルゼンチンのある地域からの原油は、水銀を、2000ppbwをはるかに超えて含む。水銀を高いレベルで有するガスおよび油井からの生産水はまた、地下産生域における水と油またはガスとの接触の直接的な結果として高レベルの水銀を含むため、環境への排出ができない。ガスおよび油の処理に付随する廃水ストリームはまた、プロセス水ストリームと炭化水素ストリームとの接触から生じる水銀を含み得る。接触は、例えば、窒素化合物などの他の汚染物を除去するのに水または水性処理ストリームを用いることによって起こり得る。
【0003】
水銀は、イオン性、元素、微粒子、および有機物を含むいくつかの形態で存在し得る。原油は、例えば、水銀元素を含んでもよいが、これは、種々のプロセス装置で酸化されて、水溶性塩(Hg、Hg2+)および錯体が製造されてもよい。加えて、嫌気性菌は、微粒子形態の懸濁水銀を、水溶性有機形態へ転化することができ、そのために二つの溶媒種の間の移動が容易に起こる。
【0004】
水銀の存在は、二種の問題をもたらす。第一に、水銀は、処理装置の金属を、アマルガムを形成することによって腐食させるおそれがある。これは、石油化学装置および天然ガス処理設備に見出されるエチレン分離装置などの極低温施設における、コールドボックスなどの、アルミニウムおよびアルミニウム合金で作られた部材にとって、特に注目すべき問題である。また、装置に水銀が存在すると、使用後に、有害廃棄物としての処理を指示され得る。水銀の毒作用はまた、処理触媒の寿命を縮め得る。
【0005】
第二に、水銀は、消滅されることができないが、単に、一つのストリームから他へ移動されることができる元素不純物として、しばしば、プロセス水ストリームに入るであろう。これは、ストリームとの直接接触によって、例えば、プロセスストリームの洗浄中に、またはその使用から生じるであろう。最近の研究では、原油中の水銀の20%ほどが、製油所の廃水ストリームに入ることができると示されている。いずれの場合も、次第に厳しくなる環境規制から、水銀を、それが環境へ排出されることができる前に、水から除去することが必要とされる。最近の環境規制では、排出目標を0.1ppbw程度に設定している場合がある。水銀を含有する原油および他の石油ストリームを取扱う際の問題点は、次第に、高品質の原油の不足が、高レベルの水銀を含む原油の供給の使用につながっているという事実によって悪化される。
【0006】
現在では、いくつかの技術が、水銀を、廃水および生産水ストリームから除去するのに利用可能である。水中の水銀を処理するのに利用可能な主な商業技術は、数種の商業的に利用可能な沈殿剤の一つ(通常、硫化高分子)を添加して、溶解イオン性水銀が沈殿され、それが、ガスまたは空気浮選により除去される工程からなる。この種の技術は、特許文献1(Coleman)に記述される。この方法は、廃水中に見出されるバルク水銀(Hg2+としてのイオン性種)を除去するのに効果的であるものの、それは、存在し得る全ての水銀種を除去することができない。これには、不溶性微粒子水銀化合物、水銀元素(Hg(0))(それ自体としてか、または水中に少量で溶解されるかのいずれかで存在する)、および有機水銀(主に、モノメチルおよびジメチル水銀)が含まれる。かなりの量の水銀または多数の異なる種が存在し、排出規制が低い場合には、既存の技術は、恐らくは、環境遵守を達成するのに必要な水銀量を除去しない。
【0007】
水性ストリームを処理して、水銀および他の重金属が除去されるための他の提案は、特許文献2(Napier)、特許文献3(Cody)、特許文献4(Sarangapani)および特許文献5(Zhuang)に見出される。pH調整を伴う予備ろ過、および凝集および後ろ過を伴う硫化物沈殿は、特許文献2の方法で用いられる。特許文献3に記載される方法は、有機クレー収着剤を用いる。これは、次いで、水から分離されることができる。これは、除去された金属を含む。連続使用に対してより良好に適合された処理は、特許文献4に記載される。これは、一連の次亜塩素酸塩酸化、ろ過、および活性炭を用いる有機物の除去を用いる。特許文献5に記載される方法においては、リグニン誘導体が、初めに用いられて、水銀または他の金属との錯体化合物が形成され、その後凝固剤が用いられて、凝集塊が形成される。これは、次いで、スラッジとして分離される。しかし、これらの方法は、それ自体、多くの廃水ストリーム中の水銀を、規制遵守に必要なレベルへ除去するのに十分であることを示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,635,182号明細書
【特許文献2】米国特許第4,814,091号明細書
【特許文献3】米国特許第5,667,694号明細書
【特許文献4】米国特許第6,165,366号明細書
【特許文献5】米国特許第7,092,202号明細書
【特許文献6】米国特許第5,500,133号明細書
【特許文献7】米国特許第5,523,002号明細書
【特許文献8】米国特許第5,658,487号明細書
【特許文献9】米国特許第5,164,095号明細書
【特許文献10】米国特許第5,510,040号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、水銀を、水性ストリーム(例えば、廃水、生産水、プロセスストリーム)から除去するための処理技術を提供することである。これは、この金属を、それが存在する形態(イオン性であるか、元素であるか、微粒子であるか、または有機物であるか)に係わらず、水銀汚染物を、環境への負荷に対して許容可能なレベルへ効果的に除去することを目的として、除去するのに効果的である。
【0010】
本発明の実施形態による処理は、四つの主な除去工程を含む。先ず、水銀沈殿剤(溶解イオン性種の水銀を目標とし、それらを水不溶形態へ転化する)が、水性ストリームへ添加される。これらの沈殿された固体の大部分、並びにいくらかの微粒子水銀および炭化水素汚染物が、次いで、引続いて、浮選により除去される。これは、通常、溶解空気、導入空気、または導入ガス浮選として運転される。沈殿された固体の除去に続いて、更なる微粒子および沈殿されたイオン性水銀の除去が、ろ過によって、好適には媒体フィルターを用いて達成される。最後に、活性炭が、仕上げ工程として作用して、残留する溶解イオン性水銀種、並びに元素および有機形態の水銀が除去される。処理工程の組合せにより、以前には不可能と考えられていた、水からの水銀の除去レベルの達成が可能である。
【0011】
イオン性および非イオン性形態の水銀を、本発明の一態様に従って、水性ストリームから除去するための方法には、水溶性水銀沈殿剤を、水性ストリームへ添加して、ストリーム中に存在する溶解水銀化合物と反応させ、水銀化合物の水不溶性沈殿物を形成する工程が含まれる。非イオン性形態の水銀(これはまた、水性ストリーム中に存在する)には、有機水銀化合物および/または水銀元素が含まれ得る。水銀化合物の水不溶性沈殿物は、次いで、水性ストリームから、浮選によって、存在し得る炭化水素と共に分離される。分離された水性溶液は、次いで、フィルターを通過して、残留する沈殿水銀化合物が除去され、水銀レベルが低減された水ろ過物が形成される。ろ過物は、次いで、活性炭に通されて、残留する溶解イオン性水銀種、並びに元素および有機形態の水銀が除去される。
【0012】
水銀沈殿物は、ストリーム中に存在する溶解水銀化合物と反応して、水銀の水不溶硫化物を形成する化合物を含んでもよい。水銀沈殿剤は、好適には、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属多硫化物、アルカリ土類金属硫化物、アルカリ土類金属多硫化物を含んでもよい。他の水銀沈殿剤には、チアゾール、アルカリ金属チオカルバメート、アルカリ金属ジチオカルバメート、アルカリ金属キサンテート、およびアルカリ金属トリチオカルボネートが含まれる。水溶性水銀沈殿剤の好ましい種類は、高分子ジチオカルバメートである。
【0013】
媒体フィルターは、例えば、砂−無煙炭といった二重媒体フィルターを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による水銀除去方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の次の好ましい実施形態は、例示として記載される。全ての表示される比率および割合は、別に示されない限り、重量によるものである。
【0016】
図1に示されるように、水銀を含有する水性ストリームは、ライン10を経て、本発明の処理のための処理装置に入る。そこで、それは、ライン11から入る水溶性水銀沈澱剤の注入水性ストリームと合流する。二つのストリームの混合時には、これは、典型的には、フローライン中で容易に起こるが、反応は、溶解イオン性水銀を、溶液から沈澱するように生じる。ストリームは、次いで、浮選タンク12中に進み、そこで沈澱された固体は、従来方式で、浮選によって分離される。浮選タンクからの液体は、次いで、ライン13を通ってフィルター14へ進み、そこで残留する沈澱されたイオン性水銀微粒子が除去される。得られるろ過物は、次いで、ライン15を通って、活性炭仕上げ工程のための槽16へ進み、そこで残留する溶解イオン性水銀は、元素および有機水銀と共に、残留する炭化水素を伴って除去される。全ての水銀種を実質的に含まない水は、次いで、ライン17を通って処理装置を出て、他の処理工程に進むことができる。これは、化学的酸素要求量を低減するための、必要または所望の、例えばバイオ処理であってもよく、または、ストリームが既に適用可能な規制に適合している場合には、環境へ排出されてもよい。
【0017】
本水銀除去方法は、水銀を含有する水性ストリーム(廃水および生産水ストリームを含む)に適用可能である。上記されるように、これらの水性ストリームは、しばしば、水銀含有炭化水素の製造および精製に、並びにこれらの炭化水素から作製される石油化学ストリームの製造に付随する。水性ストリームは、製造域の近くで生じるか、または逆に、炭化水素が、出荷前に水銀を除去するように処理されていない場合には、遠隔処理地で生じ得る。本方法は、試験によって、水銀レベル60,000ng/l(ナノグラム/リットル、60ppbに等しい)以下を含む処理ストリームに効果的であることが示されている。しかし、水銀ppmレベル程度を有する処理ストリームは、実行可能であることが予測される。
【0018】
本水銀除去方法に従って、水銀種を含む水性ストリームは、最初の沈澱工程へ付されて、イオン性形態の可溶性水銀化合物が、後に物理的手段によって除去され得るように不溶性状態へ転化される。この目的のために、水銀沈澱剤、即ち溶解水銀カチオン(通常、Hg)と反応するであろう化合物が、本方法のこの工程において、水性ストリームと接触される。接触は、沈澱剤溶液を水性ストリームへ単に添加し、水本体全体で十分な接触を確実にするように混合することによって、達成されてもよい。水銀沈澱剤と水ストリームとの混合は、例えば、凝析剤タイプの混合タンク、接触トレーを有する塔、向流接触装置、または他の装置(添加される沈澱剤溶液を分散し、それを、水銀含有水ストリーム全体で均一に分配する)などによって達成されてもよいものの、これらは、一般には、沈澱剤と溶解水銀種との反応が迅速に生じることから、必要ではないであろう。通常、沈澱剤の溶液を、通常の流速(しかし、良好な混合が達成されることを確実にする)で、水性流れストリームへ添加して、沈澱剤と溶解イオン性水銀との反応が生じさせられれば十分である。これは、高乱流域(ポンプの吸気側など)において達成されてもよい。しかし、液溜めが、浮選タンクの入口に存在して、凝析剤または凝集剤が混合される場合には、これは、好都合には、沈澱剤を注入するための場所として用いられて、良好な混合が浮選工程前に確実にされることができる。凝析剤または凝集剤が、水銀沈澱剤処理と一緒に添加される場合には、相容性を確実にするように注意しなければならない。例えば、アニオン沈澱剤およびカチオン凝析剤が、一緒に用いられる場合には、少なくとも30秒間の混合が、注入時点の間に提供されて、生成物の間の有害な相互作用が防止されるべきである。水銀沈澱剤は、好ましくは、溶液の形態で用いられ、そのために水性ストリームとの、容易かつ効果的な混合が可能にされる。
【0019】
水銀沈澱剤の一種は、硫化物を含む。これは、溶解水銀イオンと反応して、不溶性水銀硫化物の沈澱物が形成される。硫化物沈澱剤の好ましい種類は、硫化水素、アルカリ金属硫化物(硫化ナトリウムおよびアルカリ金属多硫化物、アルカリ土類金属硫化物、アルカリ土類金属多硫化物)などの水溶性硫化物を含む。これは、経済的でありかつ商業的に入手可能である。水銀を硫化物形態で沈澱するのに用いられてもよい他の物質には、チアゾール、アルカリ金属チオカルバメート、アルカリ金属ジチオカルバメート、アルカリ金属キサンテート、およびアルカリ金属トリチオカルボネート(トリチオ炭酸ナトリウム(NaCS)など)が含まれる。沈澱剤の適切な量は、経験的に決定されてもよい。
【0020】
毒性が少なく、かつ大きくて早く沈降する凝集塊をまた形成する金属補集剤の必要性を満たすために、非常に効率的な金属キレート化高分子が、商業的に入手可能になっている。これらは、本方法の水銀沈澱剤として有用である。このタイプの水溶性高分子には、ポリジチオカルバメートが含まれる。これは、本方法で効果的に用いられてもよく、水銀自体または毒性処理剤のいずれをも排出する危険性が低減される。このタイプの高分子は、例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9および特許文献10に記載され、現在では、Betz−Dearborn Inc.およびNalco Inc.によって、それぞれ商品名METCLEAR(商標)2405およびNALMET(商標)で市販される。このタイプの沈澱剤は、綿状沈澱をもたらすその能力の点で、本方法で用いるのに好ましい。これは、再度、凝析剤および凝集剤が添加されてもよいものの、引続くガス浮選工程において容易に分離されることができる。水銀60ppb以下を含むストリームにおいては、水溶性高分子ジチオカルバメートを30ppm以下の量で用いることは、実質的に水銀を除去するのに適切であることが見出されている。しかし、全ての場合においては、イオン性水銀汚染物のレベルに対する必要量は、経験的に、または供給業者の指示によって決定されるべきである。
【0021】
水銀沈澱剤は、通常、ほぼ中性、または僅かにアルカリ状態で用いられ、8に近い値が典型的である。但し、より低い、およびより高いpH値は、許容されることができる。選択された沈澱剤のモル量は、除去されるべき水銀イオンの量に少なくとも等しくあるべきであり、僅かに過剰量が、好ましくは存在する。しかし、大幅に過剰の沈澱剤(硫化ナトリウムなど)を用いることは、それらが、本方法による水銀の除去を阻害する水溶性の水銀硫化物錯体の形成を導き得ることから、回避されるべきである。加えて、過剰量の硫化物およびこのタイプの他の沈澱剤は、水を排出する際に、許容量を超えるであろう。これらの沈澱剤のあるものは、それ自体が毒性であり得ることから、それらが、排出される廃水中に存在しないことを確実にするように注意されなければならない。過剰量の沈澱剤を用いない他の理由は、残量が、炭素上に吸着される傾向があり、早期に炭素床を負荷し終わるであろうことである。沈澱剤の最適量は、この理由で、水銀含有量を二桁以上超えないようにすべきである。沈澱工程中の温度は、適切には、10℃〜40℃(約50°F〜100°F)の範囲であることができる。但し、この範囲外の温度は、除かれるべきではない。沈澱工程中の平均滞留時間は、反応が、液体本体を通して生じ、沈澱剤が完全に形成することを可能にするのに十分に長くあるべきである。標準的には、10〜20分が、適切かつ十分であろう。
【0022】
水銀と沈澱剤(硫化物、多硫化物、メルカプタン、チオカルボネート、チオカルバメート、およびキサンテートなど)との反応によって形成される金属錯体の沈澱物は、通常、容易には沈降またはろ過しない微細固体の形態であり、この理由で、目詰まりしやすく、および殆どのろ過系を通過さえしてもよい。凝析剤または凝集剤の添加は、通常、好ましい高分子ジチオカルバメート沈澱剤を用いる場合でさえ、次のガス浮選工程において、これらの懸濁固体の効果的な除去を達成するのに好ましい。加えて、凝析剤または凝集剤は、炭化水素および/または懸濁固体を含まない高レベルの流入物と共に使用する際に必要とされて、これらの汚染物を除去し、水銀沈澱剤との有害な相互作用を防止するのに役立ち得る。適切な凝析剤および凝集剤は、有機または無機であるか、若しくはその二つの組合せであり、高分子であるか、アニオンまたはカチオンのいずれかであってもよい。通常、高分子電解質(アルミン酸ナトリウム、アルミニウム三水和物、および塩化鉄など)として分類されることができる。高分子有機凝析剤および凝集剤には、ポリアクリルアミド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)高分子、DADMAC−ポリアクリルアミド、およびエピクロロヒドリンジメチルアミン(EPI−DMA)ポリアミンが含まれる。用いられる場合には、これらの物質は、従来の量で添加されてもよい。これらの凝析剤および凝集剤は、典型的には、ストリームに、浮選による処理の前に添加される。それらは、本方法で用いられ続けて、沈澱された水銀化合物の分離が促進されてもよい。凝析剤または凝集剤の量は、沈澱された水銀化合物の量が多くはないことから、一般には、懸濁固体を除去するための既存の慣例に一致する。典型的には、約50ppm以下が、凝析剤または凝集剤の性質に従って用いられ、殆どの場合に、25ppm未満が十分であろう。例えば、10ppmである。
【0023】
沈澱剤、および任意の凝析剤または凝集剤の添加に続いて、水性ストリームおよび不溶性水銀化合物の沈澱物は、浮選タンク12に送られ、そこで大部分の沈澱物は、浮選によって除去される(これには、溶解空気、導入空気、または導入ガス浮選が含まれ、標準的には、それらである)。浮選技術および装置は、周知である。本方法の一部として用いられてもよいものに類似のガス浮選装置の例は、特許文献1に見出される。浮選を用いて、沈澱された水銀化合物は、スラッジ中に凝縮される。これは、水相から除去され、従来の固体処理方法に従って、廃棄のために送られることができる。浮選工程は、従って、沈澱/浮選で除去された他の金属(鉛、カドミウム、ニッケル、および銅を含む)と共に、水性ストリームの水銀含有量を凝縮するように機能する。浮選工程はまた、水中に存在してもよい炭化水素を除去してもよい。通常、存在する炭化水素は、フロート(気泡様の作用によって、水の表面まで運び上げられる)で運び去られるであろう。揮発性炭化水素が、存在する可能性が高い場合には、密閉された浮選タンクが用いられるべきである。
【0024】
小さすぎて浮選によって除去されない微粒子水銀の更なる除去は、次いで、浮選に続く媒体ろ過によって行われる。このために、処理された水性ストリームは、ライン13を経て浮選タンク12から、ろ過装置14へ除去される。ろ過プロセスは、装置を通過する水の量、および非常に細かく分割された水銀粒子を水から除去する必要性に適したフィルターを用いて行われることができる。機械的フィルターおよび膜マイクロフィルターの使用が企図されてもよいものの、媒体フィルターが、通常は好ましいであろう。媒体ろ過は、細かく分割された不活性固体(砂または無煙炭など)の床を用いて行われる。これは、浮選によって除去されない微粒子水銀およびいかなる残留する沈澱物も保持する。床の粒径は、沈澱/浮選工程で達成される凝集塊径に従って選択されるべきである。通常、媒体フィルターは、床の上部に最大粒径の媒体を有し、床を通って粒径が徐々に減少するであろう。ダウンフロー二重媒体フィルターは、他のタイプのフィルターもまた用いられてもよいものの、多量の水を処理するその能力の点で、好ましいタイプである。逆洗機能が、好ましくは組み込まれるべきである。この大きさの媒体粒径が、他の媒体フィルターについて適切であろうものの、底部に砂(粒径0.4〜0.6mm)、および上部に無煙炭(粒径0.85〜0.95mm)を有する二重媒体フィルターが、特に好ましい。約3リットル/m/分(約9ガロン/ft/分)以下の流速が、本方法の二重媒体フィルターで用いるのに好適であり、類似の速度は、他の媒体について典型的であろう。
【0025】
ろ過された水性ストリームは、再度、活性炭の床を通ってろ過されて、いかなる残留する溶解イオン性水銀種、並びに元素および有機形態の水銀もが除去される。炭素は、可能性のある痕跡種(元素並びに有機物)を除去するのに効果的であること、並びに微粒子物質に対する最終的な保護床として機能することが見出されている。本技術の顕著な特徴は、炭素が、溶解有機物または化学的酸素要求量(COD)に対してより、水銀に対して、より選択的であることである。その結果、床は、活性炭ろ過物のCODの増大によって示されるように、有機物を除去する能力が消失した後でさえも、水銀除去に対して活性があるままである。
【0026】
この工程で最も好ましい炭素のタイプは、平均粒径0.8〜1.0mmを有する粒状活性炭である。但し、この範囲超および未満の粒径が、好適であると見出されてもよい。好ましいタイプの炭素は、標準的な瀝青炭ベースの活性炭である。この種類の炭素は、Calgon Carbon Corporation(Pittsburgh,PA)、Fresh Water Systems(Greenville,SC)、およびRes−Kem Corp(Media,PA)などの供給業者から、幅広く、商業的に入手可能である。ダウンフロー型を用いる粒状炭素床を通る流量は、典型的には、1〜2リットル/m/分(約3〜5ガロン/ft/分)であることができる。最低二つの連続する活性炭カラムが好ましく、リード/仕上げ形態の運転である。この形態においては、リード床の破過は、許容されることができ、これは、リード床が、より長くオンラインで留まり、より高度に負荷されることを可能にする。仕上げ床は、いかなる残留する水銀をも除去して、水銀を含まない流出物が可能にされる。リード床が消費された後、それは、新鮮な炭素と交換され、その際仕上げ床になる。粉状活性炭(PAC)(引続く固体分離段で除去される)を、PACを有するスラリー接触反応器において用いることは、費用、および更なる固体分離段を用いることなく微粒子を除去する能力の両点から、あまり好ましくないであろう。他の選択肢は、既存の活性化スラッジ生物的処理装置へのPACの添加であろう。
【0027】
パイロット試験が行われて、石油製油所からの廃水の水銀を除去することに関して、水銀沈澱剤および媒体フィルターの効果が確認された。これは、IAF(導入空気浮選)装置からの流出物を水銀でスパイクして、高濃度水銀の原油を運転する際に予想される廃水が模擬されることによって行った。試験廃水は、試験では、イオン性水銀(塩化水銀)30wppbでスパイクされ、沈殿タンクへ送られて沈澱固体のいくらかの除去が可能になる前に、種々の量の水銀沈澱剤(GE BetzのMetClear(MR2405))で処理された。いくつかの試験においては、カチオン凝析剤(GE BetzのKlaraid(CDP1337))が添加されて、遊離炭化水素/懸濁固体およびMetClearの間の相互作用が最小にされ、並びに製造されたピン凝集塊の沈降が向上された。沈降タンクからの流出物は、次いで、砂および無煙炭を含む媒体フィルターを通ってろ過された。水銀レベルは、沈澱剤の添加前、および媒体フィルターの前後で測定された。6週間の試験により、最適の薬品注入速度で、96%の水銀除去が、水銀沈澱剤を用いて達成されることができたことが確認された。媒体フィルターを加えることによって、99%を超える溶解イオン性水銀の除去が達成され、処理された廃水中の全てのレベルは、検知限界の0.1wppb未満であった。空気浮選工程を追加することは、沈澱された固体を、フィルター床へ入る前に高度に除去することによって、フィルター運転を向上(フィルターの運転期間を延長)することを予想されることができた。
【0028】
結果を、次の表1に示す。
【0029】
【表1−1】

【0030】
【表1−2】

【0031】
活性炭の使用は、有機水銀に対する効果的な防護であり、これはまた、パイロットプラント試験によって確認された。試験においては、IAF廃水が、有機水銀(水銀アルキルジチオカルバメートとして)30ppbおよび60ppbでスパイクされて、高水銀含有量の原油およびガスに付随する、予想される水性ストリーム組成が模擬された。スパイクされた廃水は、砂および無煙炭の二重媒体ろ過装置を通して処理された。これには、単一の活性炭カラムが続く。水銀のレベルは、媒体フィルターを通過する前、炭素カラムを通過する前、および炭素カラムの後で測定された。加えて、化学的酸素要求量(COD)のレベルがまた、CODまたは水銀が選択的に吸収されるであろうか否かを決定するために測定された。完全な水銀除去は、COD破過(溶解有機化合物の破過)の後でさえ、保持されたことが発見された。この7週間の試験において、出口水銀のレベル0.1wppb未満(検知限界)は、一貫して達成され、炭素寿命は、商業運転に十分であることが示された。
【0032】
添加された有機水銀30ppbを用いて試験した結果を、次の表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
有機水銀60ppbを添加して得られた結果を、次の表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
水銀の除去に対する炭素の選択性を、化学的酸素要求量(COD)をもたらす有機物の除去に比較して、次の表4に示す。これは、上記の表3に識別される運転から、必然的に得られる。結果から、CODは、有機水銀と同程度まで減少しないことが示される。これは、水銀の除去に対して選択性があることを示す。
【0037】
【表4】

【0038】
等温試験を、溶解イオン性水銀(塩化水銀)、有機水銀(ジエチル水銀)、および水銀元素を用いて行って、水銀の異なる形態に対する効果が確認された。試験から、炭素は、溶解形態の水銀のそれぞれを除去する能力を有すると示されたことが確認された。但し、炭素の能力は、種により異なる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性および非イオン性形態の水銀を、水性ストリームから除去する方法であって、
(i)水性ストリームに水銀沈殿剤を添加して、前記ストリーム中に存在する溶解イオン性水銀化合物と反応させ、水銀化合物の水不溶性沈殿物を形成する工程;
(ii)沈殿した前記水銀化合物を、ガス浮選により前記ストリームの水から分離する工程;
(iii)前記ストリームから分離された水を、媒体フィルターを通過させて、残留する微粒子物質を除去し、水銀レベルが低減された水のろ過物を形成する工程;および
(iv)前記ろ過物を活性炭に通して、残留する水銀を除去する工程
を含むことを特徴とする水銀の除去方法。
【請求項2】
前記水性ストリーム中に存在する前記非イオン性形態の水銀は、有機水銀化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性ストリーム中に存在する前記非イオン性形態の水銀は、水銀元素を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水銀沈殿剤は、前記ストリーム中に存在する前記溶解水銀化合物と反応して、水銀の水不溶性硫化物が形成される化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記水銀沈殿剤は、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属多硫化物、アルカリ土類金属硫化物またはアルカリ土類金属多硫化物を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水銀沈殿剤は、チアゾール、アルカリ金属チオカルバメート、アルカリ金属ジチオカルバメート、アルカリ金属キサンテートまたはアルカリ金属トリチオカルボネート化合物を含み、
前記水銀沈殿剤は、前記ストリーム中に存在する前記溶解水銀化合物と反応して、水銀の水不溶性化合物を形成する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記水銀沈殿剤は、水溶性高分子ジチオカルバメートを含み、前記ジチオカルバメートは、前記ストリーム中に存在する前記溶解水銀化合物と反応して、水銀の水不溶性化合物を形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記水性ストリームは、60ppbw以下の量の水銀を含み、添加される前記水溶性高分子ジチオカルバメートの量は、50ppmw以下であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
添加される前記水溶性高分子ジチオカルバメートの量は、30ppmw以下であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水銀沈殿剤が前記水性ストリームへ添加された際のpHは、6〜9の範囲に維持されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記水銀沈殿剤が前記水性ストリームへ添加された際の温度は、10℃〜40℃の範囲に維持されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記沈殿物が形成される際に、前記ストリームに凝析剤または凝集剤が添加されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記凝析剤または凝集剤の量は、25ppm未満であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記媒体フィルターは、二重媒体フィルターを含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記二重媒体フィルターは、砂床/無煙炭床を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記二重媒体フィルターは、底部に粒径0.4〜0.6mmの砂、および砂の上部に粒径0.85〜0.95mmの無煙炭を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記フィルターを通る流速は、3リットル/m/分以下であることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記活性炭は、平均粒径0.8〜1.0mmの粒状活性炭を含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記活性炭は、瀝青炭ベースの活性炭を含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記粒状炭素を通る流速は、1〜2リットル/m/分であることを特徴とする請求項18に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−527287(P2010−527287A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508385(P2010−508385)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/006066
【国際公開番号】WO2008/143819
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】