説明

廃水処理船

【課題】ハイドロブラスト機の使用により生じた廃水や船舶から排出された含油廃水を回収し浄化処理することにより、廃水処理作業に掛かるコストと時間を低減し、効率的な廃水処理を行うことのできる廃水処理船を提供する。
【解決手段】廃水浄化手段は、研掃手段20の使用によって生じた廃水を回収する廃水回収手段21と、前記廃水回収手段21により回収された廃水を収容する回収タンク11と、前記回収タンク11に収容された廃水のうち、自然分離浮上した上層部の廃水を収容すると共に汚濁物を水分と分離し凝固させる分離凝固手段25、26を有する分離処理タンク12と、前記分離処理タンク12で汚濁物と分離された廃水をフィルタに通して濁度を低減し浄化済廃水を精製する濾過手段31、34、37と、前記濾過手段により濾過された浄化済廃水を収容する浄化済廃水収容タンク16、17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロブラスト機の使用により生じた汚濁廃水や、船舶から排出された含油廃水を回収し浄化処理する廃水処理船に関する。
【背景技術】
【0002】
海上の船舶等からは、様々な種類の廃水が発生する。このため、それらの廃水は、その種類に適した処理を施す必要がある。
例えば、船体を研掃作業する際には、船体表面に高圧水を噴射し、不要な塗料や汚れをはつり取るハイドロブラスト機(特許文献1参照)が使用される。このハイドロブラスト機の使用によって生じた廃水は、船体表面からの剥離物や汚れを汚濁物として含んでいるため、汚濁物を低減するよう浄化処理を行う必要がある。
【0003】
また、船舶においては、船底に溜るビルジ水、水バラスト、タンク船浄水等が排出されるが、それらには油分が含まれる。即ち、船舶から排出される含油廃水は、油分を低減するよう浄化処理を行う必要がある。
従来、これらの廃水は、廃水回収船及び/または廃水回収車によって船舶から回収され、適切な浄化処理施設まで搬送されている。
【特許文献1】特開2002−143611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のように廃水回収船及び/または廃水回収車により浄化処理施設まで廃水を搬送し、そこで浄化処理を行う場合、その作業工程に多くのコストと時間とを要するという課題があった。
特に前記のように種類の異なる廃水を処理する場合には、その種類毎に対応する廃水回収船及び/または廃水回収車と、浄化施設とが必要となり、廃水の種類毎に多くのコストを要していた。
即ち、現状にあっては、船舶において生じた廃水に対する効率的な廃水処理環境が提供されているとは云えない。
【0005】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、ハイドロブラスト機の使用により生じた廃水や船舶から排出された含油廃水を回収し浄化処理することにより、廃水処理作業に掛かるコストと時間を低減し、効率的な廃水処理を行うことのできる廃水処理船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係る廃水処理船は、曳航または自走により航行可能な船体と、前記船体に搭載あるいは別個に用意された、研掃対象に高圧水を噴射する研掃手段と、前記船体に設けられ、前記研掃手段の使用によって生じた廃水を回収し浄化処理する廃水浄化手段とを具備する廃水処理船であって、前記廃水浄化手段は、前記研掃手段の使用によって生じた廃水を回収する廃水回収手段と、前記廃水回収手段により回収された廃水を収容する回収タンクと、前記回収タンクに収容された廃水のうち、自然分離浮上した上層部の廃水を収容すると共に汚濁物を水分と分離し凝固させる分離凝固手段を有する分離処理タンクと、前記分離処理タンクで汚濁物と分離された廃水をフィルタに通して濁度を低減し浄化済廃水を精製する濾過手段と、前記濾過手段により濾過された浄化済廃水を収容する浄化済廃水収容タンクとを備えることに特徴を有する。
【0007】
このような構成により、研掃手段の使用により生じた廃水を、すぐに廃水浄化手段により浄化することができる。
したがって、従来のように廃水回収船及び/または廃水回収車と廃水処理施設を利用した作業工程が不要となり、従来よりも廃水処理にかかるコスト及び時間を低減することができる。
【0008】
また、前記分離凝固手段は、汚濁物を水分と分離し凝固させる凝集剤と、該凝集剤を廃水中に注入する薬注口と、前記凝集剤を廃水中で攪拌するための攪拌機とからなることが好ましい。
このように凝集剤を用いて汚濁物を水分から分離し凝固させることにより、効果的に浄化処理を行うことができる。
【0009】
また、前記浄化済廃水収容タンクに収容された浄化済廃水の濁度を計測する濁度検査手段を備え、前記濁度検査手段により計測された濁度が所定値内の浄化済廃水は、前記研掃手段によって再利用されることが望ましい。
尚、前記濁度検査手段により測定された濁度が所定値より高い浄化済廃水は、前記濾過手段によりさらに濁度が低減されて前記浄化廃水収容タンクに収容され、前記濁度検査手段により再測定された濁度が所定値内であれば前記研掃手段により再利用されることが望ましい。
このように、浄化済廃水を所定の水質検査後、所定の水質レベルを満たしていれば研掃手段において再利用できるため、研掃作業水にかかるコストを低減することができる。
【0010】
また、前記廃水浄化手段は、他の船舶で生じた含油廃水または海上に流出した含油廃水を回収する含油廃水回収手段と、前記回収タンクに収容された含油廃水のうち、自然分離浮上した上層部の油分を捕集する油分捕集手段と、前記油分捕集手段により捕集された含油廃水を、油分と含油水分とに分離する油水分離手段と、前記油水分離手段により分離された油分を収容する廃油収容タンクとをさらに備え、前記油水分離手段により分離された含油水分は、前記濾過手段により残存する油分が低減されて浄化済廃水とされ、前記浄化済廃水収容タンクに収容されることが望ましい。
【0011】
このように廃水浄化手段が、研掃手段の使用により生じた廃水を処理する手段に加え、含油廃水を浄化処理するための手段を備えることにより、例えば他の船舶等から排出される含油廃水に対しても、すぐに回収し、廃水浄化手段により浄化することができる。
したがって、従来のように含油廃水回収船及び/または含油廃水回収車と含油廃水処理施設を利用した作業工程が不要となり、従来よりも含油廃水処理にかかるコスト及び時間を低減することができる。
また、回収タンクや濾過手段等の設備を、研掃手段の使用により生じた廃水の処理と兼用できるため、設備上のコストを低減することができる。
【0012】
また、前記浄化廃水収容タンクに収容された浄化済廃水の油分含有率を測定する油分検査手段を備え、前記油分検査手段により測定された油分含有率が所定値内の浄化済廃水は海上に放流されることが望ましい。
このように構成すれば、浄化した廃水が海に還元できるものかどうかを、その場で判別することができる。
【0013】
また、前記油分検査手段により測定された油分含有率が所定値より高い浄化済廃水は、前記濾過手段によりさらに油分が低減されて前記浄化廃水収容タンクに収容され、前記油分検査手段により再測定された油分含有率が所定値内であれば海上に放流されることが望ましい。
このように構成すれば、廃水を海に還元できる状態にするまで浄化処理することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハイドロブラスト機の使用により生じた廃水や船舶から排出された含油廃水を回収し浄化処理することにより、廃水処理作業に掛かるコストと時間を低減し、効率的な廃水処理を行うことのできる廃水処理船を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。最初に、本発明に係る廃水処理船の第一の実施の形態として、ハイドロブラスト機の使用により生じた汚泥廃水を回収し浄化処理する廃水処理船の形態について説明する。図1は本発明の第一の実施の形態に係る廃水処理船の断面図、図2は図1の廃水処理船の平面図である。
【0016】
図1に示す廃水処理船100は、他の自走式船による曳航により、又は、自走することにより航行可能に形成された平底の船体1を具備し、この船体1には指令室となるキャビン2が設けられている。本実施の形態において廃水処理船100は、研掃手段としてのハイドロブラスト機20を搭載しており、このハイドロブラスト機20を用いて例えば他の船舶の船体を高圧水噴射により研掃できるようになされている。尚、このハイドロブラスト機20は、船体1に備え付けのものに限らず、別個に用意されたものを使用してもよい。また、ハイドロブラスト機20は、一機でも複数機でもよいが、複数機の場合には、それらが船体1に備え付けでも別個に用意されてもよく、或いは、それらの併用でも構わない。
【0017】
また、この廃水処理船100は、ハイドロブラスト機20の使用により生じた廃水を回収して浄化処理する廃水浄化手段を有している。
前記廃水浄化手段は、図1に示すように複数の処理タンクを備えている。先ず、船体1の略中央の位置には、ハイドロブラスト機20の使用により生じた廃水を収容するための回収タンク11が設けられる。この回収タンク11よりも船尾側には、回収された廃水に段階的に浄化処理を施すための分離処理タンク12、濾過後収容タンク13、濾過後収容タンク14が順に隣接して設けられる。また、濾過後収容タンク14よりも船尾側には、清水が貯留されている予備タンク15が設けられている。尚、この予備タンク15の清水は、多角的な使用に用いることができる。
また、回収タンク11よりも船首側には、浄化済廃水を収容するための浄化済廃水収容タンク16、17が順に隣接して設けられている。
【0018】
また、前記廃水浄化手段は、前記回収タンク11の上方に、ハイドロブラスト機20から排出される廃水を回収するための廃水回収手段として、排出された廃水を吸引して回収流路を形成するパイプ21と、パイプ21から送出された廃水を濾過するための金属メッシュフィルタ22を備える。
即ち、ハイドロブラスト機20の使用により生じた廃水は、パイプ21を通過後、金属メッシュフィルタ22によって濾過され、廃水の中で比較的大きな剥離塗料、ダスト等が除去される。そして廃水は、この金属メッシュフィルタ22による濾過後、その下方の回収タンク11に収容されるようになされている。
【0019】
また、前記廃水浄化手段は、回収タンク11から分離処理タンク12に廃水を移送するためのポンプ23、パイプ24と、廃水の中で比較的大きい粒子状の汚濁物を除去するためのフィルタ60とを備え、回収タンク11に回収された廃水はパイプ24の中をポンプ23によって揚水され、フィルタ60により濾過された後、分離処理タンク12に収容されるようになされている。
【0020】
また、分離処理タンク12においては、ハイドロブラスト機20によって生じた廃水中の剥離物(剥離塗料や汚れ)を水分と分離させ凝固させる分離凝固手段を備えており、この分離凝固手段は、剥離物を凝固させる凝集剤と、この凝集剤を注入するための薬注口25と、その凝固反応を促進させるため、廃水を攪拌する攪拌機26とからなる。
尚、分離処理タンク12内において凝固し沈殿した汚泥状の堆積物や回収タンク11内で自然に沈殿した汚泥状の堆積物は、排出ライン27を介して回収車両28により回収されるようになされている。
【0021】
また、前記廃水浄化手段は、分離処理タンク12の廃水を濾過後収容タンク13に移送するためのポンプ29、パイプ30と、濾過手段として、汚泥粒を濾過するためのサンドフィルタ31とを備え、パイプ30の中をポンプ29によって揚水された廃水はサンドフィルタ31を通過後、濾過後収容タンク13に送られるようになされている。
【0022】
さらに、濾過後収容タンク13の廃水を濾過後収容タンク14に移送するためのポンプ32、パイプ33と、濾過手段として、取換えが容易な第一精密カートリッジフィルタ34とを備え、パイプ33の中をポンプ32によって揚水された廃水は第一精密カートリッジフィルタ34を通過後、濾過後収容タンク14に送られるようになされている。
【0023】
また前記廃水浄化手段は、濾過後収容タンク14の廃水を浄化済廃水収容タンク16、17に移送するためのポンプ35、パイプ36と、濾過手段として、浄化済廃水収容タンク16、17の水質に応じて取換えが容易な第二精密カートリッジフィルタ37とを備える。即ち、パイプ39の中をポンプ35によって揚水される廃水は必要に応じて第二精密カートリッジフィルタ37を通過後、浄化済廃水収容タンク16、17に送られるようになされている。
【0024】
尚、図2に示すように、サンドフィルタ31、第一精密カートリッジフィルタ34、第二カートリッジフィルタ37等により多段に濾過処理がなされる濾過手段は、船体に沿って二系統設けられているため、作業効率が向上するようになされている。また、この構成により、一方の系統に故障が生じても他方の系統で処理を継続することができるようになされている。
【0025】
また、浄化済廃水収容タンク16、17に収容される浄化済廃水は、ハイドロブラスト機20において再利用するため、機器への悪影響を避けるよう厳密な浄化処理が必要である。このため、浄化済廃水収容タンク16、17には浄化済廃水の濁度を計測する濁度検知器38(濁度検査手段)が設けられている。
【0026】
さらに浄化済廃水収容タンク16、17においては、収容された浄化済廃水を、ハイドロブラスト機20に移送する、あるいは海上等に放流するためのポンプ39、パイプ40、41が設けられている。即ち、浄化済廃水は、パイプ40の中をポンプ39によって揚水され、ハイドロブラスト機20において再利用できるよう構成されている。また、ハイドロブラスト機20での使用後に残った浄化済廃水収容タンク16、17内の浄化済廃水は、所定の水質検査後、問題がなければパイプ41を通って海上等に放流されるようになされている。
【0027】
続いて、このように構成された廃水処理船100が、例えば他の船舶の船体をハイドロブラスト機20により研掃処理する場合の前記廃水浄化手段による廃水処理工程について図3のフローに基づいて説明する。
【0028】
先ず、廃水処理船100は、浄化済廃水収容タンク16、17内の浄化済廃水を洗浄水として使用したハイドロブラスト機20から使用済みの廃水を回収し、金属フィルタ22を介して回収タンク11に収容する(図3のステップS1)。
ここで、回収タンク11に収容された廃水のうち、比重の重い剥離物等は下層へ沈殿するため、上層部の廃水がパイプ24を通りフィルタ60を介して分離処理タンク12に送出される(図3のステップS2)。
【0029】
分離処理タンク12においては、薬注口25から凝集剤が注入され、廃水中の汚濁物(剥離物や汚れ等)が水と分離され凝固される(図3のステップS3)。この凝固した汚濁物は沈殿し汚泥状の堆積物となって、後で回収車両28により回収される。また、タンク12中では、攪拌機26によって処理液が攪拌され、凝固反応が促進される。
分離処理タンク12において汚濁物と分離された廃水は、相当数の汚泥粒が混入しているため、これらがサンドフィルタ31を介して取り除かれた後、濾過後収容タンク13に送出される(図3のステップS4)。
【0030】
次いで、濾過後収容タンク13中の廃水は、第一精密カートリッジフィルタ34において更に濁度が低減するよう浄化され、濾過後収容タンク14に送出される(図3のステップS5)。
濾過後収容タンク14の廃水は、パイプ36を介して浄化済廃水収容タンク16、17に送出されるが(図3のステップS6)、そこで濁度検知器38が濁度を計測することにより、水質レベル検査が行われる(図3のステップS7)。
【0031】
そして、前記濁度検知器38による水質レベル検査において、計測された濁度が所定値より低く、所定の水質レベルに達している場合、浄化済廃水収容タンク16、17内の浄化済廃水は、ハイドロブラスト機20によって再利用され(図3のステップS8)、その使用後にタンク内に残った浄化済廃水は、所定の検査後、問題がなければ海上等に放流される(図3のステップS9)。
【0032】
一方、計測された濁度が所定値より高く、所定の水質レベルを満たしていない場合には、濾過手段として、図示しない精密カートリッジフィルタによる濾過処理を行うことにより所定の水質レベルを満たすまで浄化がなされる(図3のステップS10)。
また、このように第一精密カートリッジフィルタ34のみで所定の水質レベルまで浄化されない場合には、濾過後収容タンク14から浄化済廃水収容タンク16、17に廃水を移送する際に、第二精密カートリッジフィルタ37により、さらに濾過処理を行うのが好ましい。
【0033】
以上のように本発明に係る第一の実施の形態によれば、廃水処理船100は、その船体1に廃水処理を行う廃水浄化手段が設けられているため、研掃手段であるハイドロブラスト機20の使用により生じた廃水を、すぐに廃水浄化手段により浄化することができる。
したがって、従来のように廃水回収船及び/または廃水回収車と廃水処理施設を利用した作業工程が不要となり、従来よりも廃水処理にかかるコスト及び時間を低減することができる。
また、浄化済廃水をその場で所定の水質検査後、所定の水質レベルを満たしていればハイドロブラスト機20において再利用できるため、研掃作業水にかかるコストを低減することができる。
【0034】
次に、本発明に係る廃水処理船の第二の実施の形態として、前記第一の実施の形態での機能に加え、船舶から排出される含油廃水を浄化処理することのできる廃水処理船の形態について説明する。図4は本発明の第二の実施の形態に係る廃水処理船の断面図である。尚、図4及び以下の説明において、前記した第一の実施の形態での説明で示したものと同一のものについては同じ符号で示し、その詳細な説明は省略する。
【0035】
図4に示す廃水処理船101は、含油廃水を処理するために、廃水浄化手段として図1に示した構造に加え、以下の手段をさらに備える。
先ず、含油廃水回収手段として、他の船舶から排出されたビルジ水、水バラスト、タンク洗浄水等の含油廃水を回収タンク11に回収するための回収ライン44を備える。そして、この回収ライン44には、回収する含油廃水の引火点を計測する引火点試験器45と、回収量を計測する流量計46と、比較的大きいゴミ等を捕集するためのフィルタ47とが設けられている。
【0036】
また、油分捕集手段として回収タンク11内の下層の含油廃水を吸い上げるためのポンプ61、パイプ49と、上層に自然分離浮上した廃油を吸い上げるためのスキマー48及びパイプ51と、パイプ49に吸い上げられた含油廃水を廃油と廃水とに分離する油水分離手段としての油水分離機50とを備えている。油水分離機50には、分離した廃油を排出するためにパイプ51が接続され、パイプ51に排出される廃油は、船尾側に設けられた廃油収容タンク42に収容されるようになされている。また油水分離機50には、分離した廃水を排出するためのパイプ56が接続され、このパイプ56にはフィルタ55が設けられている。そして、フィルタ55によって濾過された廃水は、さらにサンドフィルタ31によって濾過され、濾過後収容タンク13に収容されるようになされている。
【0037】
また、濾過後収容タンク13に収容された廃水の表面に浮上する油分を吸い上げるため、スキマー57及びパイプ58が設けられ、吸い上げられた廃油はパイプ58を通って廃油収容タンク42に収容されるようになされている。
尚、廃油収容タンク42に収容された廃油は、ポンプ52、排出ライン53によって廃油回収車両54に回収されるようになされている。
【0038】
また、濾過後収容タンク13に収容された廃水は、第一精密カートリッジフィルタ34を介して濾過後収容タンク14に収容され、さらに第二精密カートリッジフィルタ37を介して浄化済廃水収容タンク17に収容されるようになされている。
浄化済廃水収容タンク17においては、油分検査手段である油分検知器59が設けられ、この油分検知器59によって、油含有量、COD及びpHの数値が計測され、所定内の油含有量、COD及びpHであるかが検査されるようになされている。
尚、図示するように船体1において、回収タンク11よりも船首側には、清水が貯留されている予備タンク43が設けられている。この予備タンク43の清水は、多角的な使用に用いることができる。
【0039】
続いて、このように構成された廃水処理船101が、例えば他の船舶から回収した含油廃水を浄化処理する場合の廃水処理工程について図5のフローに基づいて説明する。
先ず、回収ライン44によって、他の船舶から排出されたビルジ水、水バラスト、タンク洗浄水等の含油廃水を回収タンク11に回収する(図5のステップS11)。
尚、この回収時において、回収する含油廃水の引火点を引火点試験器45により安全のため計測し、流量計46により回収量を計測する。また、安全性が確認されると、フィルタ47により比較的大きいゴミ等を捕集し、回収タンク11に含油廃水を回収する。
【0040】
回収タンク11においては、比重の大きいスラッジ、ゴミ等が沈殿し、上層部に油分が自然浮上する。そこで、スキマー48により、表面付近の廃油を吸い上げ、廃油収容タンク42に送出する。一方、回収タンク11の下層部の含油廃水は、ポンプ61により揚水し、油分分離機50に送出する(図5のステップS12)。
油水分離機50では、含油廃水を油分(廃油)と水分(廃水)とに分離し、廃油を廃油収容タンク42に送出し、廃水を濾過後収容タンク13に送出する(図5のステップS13)。ここで油水分離機50により分離された廃水は、まだ油分を多く含んでいるため、フィルタ55、サンドフィルタ31によってさらに油分が除去された後、濾過後収容タンク13に収容される。
【0041】
濾過後収容タンク13に収容された廃水は、完全に油分が除去されていないため、タンク内廃水の表面付近に浮遊する油分をスキマー57によって吸い上げ、廃油収容タンク42に送出する(図5のステップS14)。尚、廃油収容タンク42に収容された廃油は、排出ライン53を介し、廃油回収車両54に回収される。
【0042】
次いで、濾過後収容タンク13に収容された廃水は、さらに油分を排除するため、第一精密カートリッジフィルタ34を介して濾過後収容タンク14に収容され、さらに第二精密カートリッジフィルタ37を介して浄化済廃水収容タンク17に収容される(図5のステップS15)。
浄化済廃水収容タンク17においては、油分検知器59によって、油含有量、COD及びpHの数値が計測され、所定内の油含有量であるかが検査され(図5のステップS16)、所定量内であれば海上に放出される(図5のステップS18)。
【0043】
一方、油分検知器59の検査によって、所定量より多くの油分を含んでいる場合には、油含有量が所定量内となるまで、濾過手段である図示しない精密カートリッジフィルタにより濾過され、油分が低減される(図5のステップS17)。
【0044】
以上のように本発明に係る第二の実施の形態によれば、廃水処理船101が有する廃水浄化手段は、前記第一の実施の形態で示した構成に加え、含油廃水を浄化処理するための手段を備える。即ち、一隻の船で種類の異なる廃水の処理に対応することができる。
したがって、廃水処理船101によれば、例えば他の船舶等から排出される含油廃水に対しても、すぐに回収し、廃水浄化手段により浄化することができる。これにより、従来のように含油廃水回収船及び/または含油廃水回収車と含油廃水処理施設を利用した作業工程が不要となり、従来よりも含油廃水処理にかかるコスト及び時間を低減することができる。
また、回収タンク11や濾過手段等の設備を、ハイドロブラスト機20の使用により生じた廃水の処理と兼用できるため、設備上のコストを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、ハイドロブラスト機の使用によって生じた汚濁廃水や、他の船舶で生じた含油廃水等を回収し、浄化処理する廃水処理船に関し、産業廃棄物処理業界において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は本発明の第一の実施の形態に係る廃水処理船の断面図である。
【図2】図2は図1の廃水処理船の平面図である。
【図3】図3は図1の廃水処理船が具備する廃水浄化手段による処理工程の流れを示すフロー図である。
【図4】図4は本発明の第二の実施の形態に係る廃水処理船の断面図である。
【図5】図5は図4の廃水処理船が具備する廃水浄化手段による処理工程の流れを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0047】
1 船体
2 キャビン
11 回収タンク
12 分離処理タンク
13、14 濾過後収容タンク
15 予備タンク
16、17 浄化済廃水収容タンク
20 ハイドロブラスト機(研掃手段)
21 パイプ(廃水回収手段)
22 金属メッシュフィルタ(廃水回収手段)
25 薬注口(分離凝固手段)
26 攪拌機(分離凝固手段)
31 サンドフィルタ(濾過手段)
34 第一精密カートリッジフィルタ(濾過手段)
37 第二精密カートリッジフィルタ(濾過手段)
38 濁度検知器(濁度検査手段)
42 廃油収容タンク
44 回収ライン(含油廃水回収手段)
48 スキマー(油分捕集手段)
49 パイプ(油分捕集手段)
50 油水分離器(油水分離手段)
59 油分検知器(油分検査手段)
100、101 廃水処理船

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曳航または自走により航行可能な船体と、前記船体に搭載あるいは別個に用意された、研掃対象に高圧水を噴射する研掃手段と、前記船体に設けられ、前記研掃手段の使用によって生じた廃水を回収し浄化処理する廃水浄化手段とを具備する廃水処理船であって、
前記廃水浄化手段は、
前記研掃手段の使用によって生じた廃水を回収する廃水回収手段と、前記廃水回収手段により回収された廃水を収容する回収タンクと、前記回収タンクに収容された廃水のうち、自然分離浮上した上層部の廃水を収容すると共に汚濁物を水分と分離し凝固させる分離凝固手段を有する分離処理タンクと、前記分離処理タンクで汚濁物と分離された廃水をフィルタに通して濁度を低減し浄化済廃水を精製する濾過手段と、前記濾過手段により濾過された浄化済廃水を収容する浄化済廃水収容タンクとを備えることを特徴とする廃水処理船。
【請求項2】
前記分離凝固手段は、汚濁物を水分と分離し凝固させる凝集剤と、該凝集剤を廃水中に注入する薬注口と、前記凝集剤を廃水中で攪拌するための攪拌機とからなることを特徴とする請求項1に記載された廃水処理船。
【請求項3】
前記浄化済廃水収容タンクに収容された浄化済廃水の濁度を計測する濁度検査手段を備え、
前記濁度検査手段により計測された濁度が所定値内の浄化済廃水は、前記研掃手段によって再利用されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された廃水処理船。
【請求項4】
前記濁度検査手段により測定された濁度が所定値より高い浄化済廃水は、前記濾過手段によりさらに濁度が低減されて前記浄化廃水収容タンクに収容され、前記濁度検査手段により再測定された濁度が所定値内であれば前記研掃手段により再利用されることを特徴とする請求項3に記載された廃水処理船。
【請求項5】
前記廃水浄化手段は、
他の船舶で生じた含油廃水または海上に流出した含油廃水を回収する含油廃水回収手段と、前記回収タンクに収容された含油廃水のうち、自然分離浮上した上層部の油分を捕集する油分捕集手段と、前記油分捕集手段により捕集された含油廃水を、油分と含油水分とに分離する油水分離手段と、前記油水分離手段により分離された油分を収容する廃油収容タンクとをさらに備え、
前記油水分離手段により分離された含油水分は、前記濾過手段により残存する油分が低減されて浄化済廃水とされ、前記浄化済廃水収容タンクに収容されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された廃水処理船。
【請求項6】
前記浄化廃水収容タンクに収容された浄化済廃水の油分含有率を測定する油分検査手段を備え、
前記油分検査手段により測定された油分含有率が所定値内の浄化済廃水は海上に放流されることを特徴とする請求項5に記載された廃水処理船。
【請求項7】
前記油分検査手段により測定された油分含有率が所定値より高い浄化済廃水は、前記濾過手段によりさらに油分が低減されて前記浄化廃水収容タンクに収容され、前記油分検査手段により再測定された油分含有率が所定値内であれば海上に放流されることを特徴とする請求項6に記載された廃水処理船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−237939(P2007−237939A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63516(P2006−63516)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(505361200)関東砿産株式会社 (4)
【Fターム(参考)】